ショベルヘッド世代 -since 1957-

1957XLスポーツスター

先に紹介したモデルKの後継で実質的なスポーツスターの始まりと言えるXL。

一番の変更点はヘッドカバーの形がショベルの形に似ていたことからショベルヘッドと呼ばれるOHVエンジンになった事。

ショベルヘッドエンジン

モデルチェンジの理由はもちろん先代から始まった英国勢に勝つためで、OHV化とショートストローク化で排気量はKHに習って883ccながら42馬力。

他のシリーズと違ってシリンダーとヘッドが鉄な事から『アイアンスポーツ』という俗称が有名ですね。

そんなXLですが手を緩めることなく発売の翌年である1958年には圧縮比を7.5から9まで上げたホットモデルXLHを発売。

ショベルヘッドXLH

更にレースのためのコンペティション(レース用)モデルであるXLHCモデルも同年に登場。

ショベルヘッドXLCH

このXHLCはレース用で保安部品が付いていなかったのですが、55馬力というハイスペックだった事から市場でも話題となり

「市販化(公道化)してくれ」

という要望が多く寄せられた事から市販化された歴史があります。

初期型XLCH

上の写真は初期型(~1962)のスクランブラータイプ。

アイアンスポーツはここからXLHとXLCHの二台体制でしばらく行くことになります。

大きく変わったのは約14年後の1972年でライバルに対抗するため1000cc化などが行われたんですが、そんな中で紹介しておきたいのが1977年に出たXLCRというモデル。

XLCR

これはハーレー界の神様と呼ばれているウィリーGというデザイナーが個人的に造った事が発端のカフェレーサー。

既存のKフレームではなく新作フレームでロングタンクとビキニカウルが特徴的。

日本で有名なZ1-Rと被る事からも分かる通りカフェレーサーブームに合わせたもの。

XLカフェレーサー

ハーレーとしては非常に珍しい純正カフェスタイルとして今では一部に絶大な人気があります・・・が、当時は本当に不人気でした。

後期で9本スポークホイールなどの改良も行われたんですが、それでも人気は全く出ずわずか2年ほどで生産終了。

このモデルのために造ったフレームは通称CRフレームとして生産終了の1979年から全スポスタに引き継ぐ形に。

しかしこのCRフレームも剛性面でお世辞にも出来が良いフレームと呼べるものではなかった為に1982年からは再び新作された30thフレーム(またはエボリューションフレーム)に変更。

XLS

形はそのままにガゼット(補強)を追加し剛性不足を解消したもので、こちらは出来が良く次世代まで使われることになります。

そんなショベルヘッド時代の最後を飾ったのは1983年に出たXLX-61。

XLX-61

圧縮比を上げられた専用エンジンを積んだスペシャルモデル。

AMF傘下から脱して初めて造られたモデルで非常に人気が出ました。AMFについては次のページにて。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

フラットヘッド世代 -since 1952-

フラットヘッド

日本で非常に人気があり多くのハーレー乗りを生み出したであろうハーレーのスポーツスター。

先ページの繰り返しになりますが

「スポーツスターって何」

という所から話すとハーレーの中でもスポーツ志向のモデルの事でまず定義としては

『4カムである事』

が特徴です。

スポーツスターのカムの違い

乱暴な絵ですがエンジンの扉であるバルブを押す役目を持っているカムシャフトと呼ばれる棒が吸気と排気で一本ずつ付いているのが4カム。

言ってしまえばSOHCとDOHCの違いと同じなんですが、ハーレーはOHVといってバルブを動かす(押す)カムシャフトがエンジンの上ではなく下に付いているのが特徴。

スポーツスターのカムの場所

そしてもう一つは『ミッションが一体型になっている事』です。

この2つがスポーツスターの特徴なんですが、名前の通りスポーツ性を高めるために生まれたのが背景にあります。

じゃあそんなスポーツスターの始まりが何処にあるのかと言うと一般的には1952年の『K』が始まりと言われています。

モデルK -since1952-

モデルK

サイドバルブ方式の通称フラットヘッドと呼ばれるエンジンを積んだスポーツモデル。

このエンジン自体は1929年に造られた物がベースなんですが、何故フラットと呼ばれるのかと言うとサイドバルブと書いてあるように我々がよく知るバルブとピストンが向き合う形ではなく横に寄り添うように同じ向きに付いているから。

フラットヘッドエンジン

本当に絵が下手で申し訳ないんですがこんな感じで、カバーを外すとフラット(平面)だからフラットヘッド。

そしてもう一つの始まりであるミッション一体型なんですが、これはエンジンの剛性(ひいては車体剛性)を上げるのが狙い。

モデルKのチラシ

「なんでそんなに性能を上げる必要があるのか」

と今でこそ思いますが、当時のハーレーはどのメーカーよりも速いハイスペックメーカーだったんです。

だから性能を上げる改良を施すのも何の不思議でもない話で、日本の陸王がこのフラットヘッドエンジンをライセンス生産したのも一番高性能だったから。

1950年代のアメリカレース

そんな今では考えられないハーレーなんですが、実はこのモデルKは最初は出す予定じゃなかった。

従来どおりのWLシリーズというモデルを改良し発表したんですが

「これじゃ英国勢に勝てない」

という声が市場から殺到したんです。

というのも当時は終戦と同時にBSAやトライアンフなどのバーチカルツインが輸入されはじめ、性能面で引けを取るようになっていたんですね。

そこで創業者であるダビッドソン兄弟は自分たちで4カム化やミッション一体型などに改造していたモデルをテコ入れとして急遽市販化することに。

モデルK

それがこのモデルK。

フレームも専用のスイングアーム式になっている新作(通称Kフレーム)で30馬力を叩き出すマシン。これがスポーツスターの原型になります。

更に二年後の1954年にはストローク量を上げ750ccだった排気量を883ccにし、38馬力にまでパワーを上げたホットモデルであるKHを発売。

モデルKH

誰もが知っている『パパサン』の元祖モデルです。

パパサンというとファッショナブルなイメージが先行しますが、実はハーレーの中でも非常に歴史が長い排気量なんですね。

ちなみに「パパサン」と言われることを嫌う人も居るのでそこは留意しておく必要があります。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ハーレーの見分け方 ~車名の意味~

ハーレーの見分け方

スポーツスターの系譜を始める前に恥ずかしながら自身がそうなように

「そもそもどれが何かか分からない」

という人も少なからず居られると思うので最初に補足しておこうと思います。

ハーレーと言えば

『FLHC』 『XLCH』『FXWG』

などなどアルファベットが無造作に並んでいるようで、何を示しているのかサッパリ分からないですよね。

でも実はこれ理解できると日本車よりも分かりやすかったりします。

まず大前提としてハーレーは

・ビッグツインエンジン

・スポーツスターエンジン

この二種類のエンジンを使っています。※水冷を除く

そして謎のアルファベットですがもちろん意味があり、頭文字の二文字で三種類に分類する事が出来ます。

【頭文字がFL】

FLシリーズ

いわゆる典型的なハーレーらしいモデルというか歴史ある伝統モデル。

前後16インチのファットタイヤ(例外あり)や、シングルカム(現在はツインカム)な事からV字型に伸びてるプッシュロッドのビッグツインエンジンが特徴。

巨漢なやつは大概これでターミーネーターに登場したモデルもこのFL系。

【頭文字がXL】

XLシリーズ

この系譜の主役で『スポーティなやつ』という名前を持つSPORTSTER。

特徴はシリンダーに沿うように並行に4本伸びているプッシュロッドとミッション一体型となっている(右から見ると)長いクランクケース。

スポーツモデルという事で全体的にハーレーの中では軽量コンパクトで日本でも非常に馴染まれてるモデル。

 

【頭文字がFX】

FXシリーズ

最初に紹介した伝統のFLをベースにXLのフロントを突っ込んだ様なモデル。

FLと同じビッグツインエンジンながらフロントが19~21インチホイールになってるのが特徴。

ローライダーという誰しもが目にしたり耳にしたりした事があるやつもこのFX系。

物凄く大雑把ですがこれが感じの括り。

そしてそこから更にバリエーションのアルファベットが付きます。

【STまたはソフテイル】
サスを隠してリジット風にしたフレームの略称(※)

【Dまたはダイナ】
二本サス仕様フレームの略称(※)

※ビッグツイン特有のフレーム表記

【B】
ブラックやバッドボーイ(ワル)という意味

【C】
カスタムやクラシックという意味

【F】
ファットボーイ(太いタイヤ)という意味

【H】
ハイコンプレッション(高圧縮比)またはHOTの意味
またはハガースタイルという意味

【N】
ナイトスターという意味

【R】
ロードスターまたはレーサーの意味

【S】
スポーツという意味

【T】
ツアーまたはツーリングという意味

【L】
(車体やシート高が)ローという意味

などなどいった感じで例えば

『FXSTF』

となれば

『FXのソフティルのファットボーイ』

という感じ。

要するに

「FL・FX・XLの〇〇仕様です」

という事を表すアルファベットとなっているわけです。

まあ要するに頭文字二文字と違って後に続くアルファベットは例外なども多くあるので深く考えず見た目で判断してよろしいかと。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

R1200GS  -since 2013-

2015年モデル

2013年からのR1200GS。

これまたエンジンが大幅に変更。

まずなんといってもエンジンが水冷化されました。厳密に言うとヘッドは水冷でシリンダー周りは空冷。

更にRシリーズ初となるバランサーを装着し吸排気のポートが前後から上下に変わりました。

2014エンジン

それまでのボクサーは吸排気ポートが前後だったのでインテーク(吸気側)がステップ側にあり邪魔でした。だから吸排気を上下にすることで解決。簡単に書いてますがこれ凄く大変なことです。

他にも電子制御サスだったり前後連動ブレーキABS(これは前から)だったり、出力モードセレクターだったり、可変式スクリーンだったり・・・

ネイキッド

ただ多分こういう構造的な事を言った所でピンと来ないと思うんですよ。もはやそんなの付いてて当たり前な時代でGSだけ特別ってわけじゃないですし。

これは乗ってみないとわからないし、乗ってみるとわかる。

R1200GS壁紙

「転ける気がしない」

R1200GSに乗ったら絶対にみんなこう言うと思う。間違いなく自分のオフロードスキルがソコソコあるかのような錯覚を覚えます。

そして痛い目を見る。オフロードあるある。

2014年モデル

GSが懐が広く安定しているのはテレレバーやパラレバー、そして伝統のボクサーといったBMWの独自技術によるものだったりするんだけど、だからといって”コレがこうだからGSは凄い”っていうのはちょっと違うかと思ってあんまりウダウダと書きませんでした。面倒くさいわけじゃありません。

こっちはビッグタンクのアドベンチャーモデル。スポークとキャストを選べるようになりました。

R1200GS アドベンチャー

系譜を最初から読んでもらえると分かる通りGSは1980の初代、もっというと1970年代の開発時代から会社が傾こうと止まること無く改良進化を続けてたという歴史。ただGSのあるべき姿を追い求める。これを30年以上です。年次改良なんて何回入ってるのかBMW本社ですら正確に把握できてないんじゃないかな。

こう言うとS1000RRの人に怒られるかもしれませんが、S1000RRが売れてるのはBMWだからという理由が少なからずありますが、このR1200GSはBMWだから売れているわけではなくGSだから売れているんです。

R1200GS壁紙

BMWといったらGS。こんな道を走ってみたいですね・・・日本はなぜ島国なんだ。

もしかしたら中にはRTやRSだと言う人も居るかもしれませんが販売台数はGSがトップ。そしてBMWのこれまでのロードマップを見れば分かる通り先進技術もまずGSです。

最後になりましたが、BMWはもっと多くの人にオフロードを楽しんで貰えるようにと2006年から「BMW Motorrad GS TROPHY」というイベントを世界中で行っています。

GSトロフィージャパン

決められたコースと試験に挑戦し順位を争うコース。

優勝すると”日本一のGS乗り”の称号と世界大会への切符を手に入れることが出来ます。

【4バルブGS】【2バルブGS】【HP2 Enduro】【BMW F&G】【BMW以外】【レディースクラス】のクラス分け。

GSトロフィー

他にも初心者向けやスキルアップを目指すコース、自然を楽しむ事を第一としたツーリングコースなど様々なので興味を持たれた方はお近くのBMWディーラーやホームページなどで確認してみてください。

ちなみにどれも泊まり込み合宿で鍛えられる間違いなしです。

エンジン:水冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1170cc
最高出力:
125ps/7750rpm
最大トルク:
12.7kg-m/6500rpm
車両重量:260kg(装)

【関連車種】

Africa Twinの系譜SUPER TÉNÉRÉの系譜V-STROM1000の系譜VERSYS1000の系譜

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R1200GS  -since 2004-

R1200GS

更に排気量が上がった現在進行形R1200GSの五代目モデル。

歴代で最も大幅に生まれ変わったGSであり最も成功したGSでもあります。

エンジン

もう欧米では「とりあえずBMWのR1200GS買っとけ」っていうレベル。

この時点でエンデューロ部門25年間連続トップセールスです。

2007R1200GS

2007年には販売台数10万台を突破という快挙を成し遂げました。GSが人気の主な国はドイツ、アメリカ、フランス、イタリアなど・・・200万のバイクが10万台って。

その中でもドイツがトップセールスなのはまあ母国ですし言うまでもないんですが、ドイツはBMWが25%以上の販売シェアを占めています。これは日本でいうとヤマハ並のシェアなんですが、そのうちの30%強がR1200GS/ADVという事実。ドイツ人は金持ちですね。

でね、このGSで評価されたのは何といってもコンパクトさと軽さ。全面維新で先代が250kgだったのに対して225kgという大幅な軽量化となりました。

アドベンチャーモデル

こちらは後から発売された人気のアドベンチャーモデル。

容量33Lというビッグタンクを積み航続可能距離は脅威の700kmオーバー。東京から本州最北端の青森まで無給油でいけます。

R1200GS

「なんて素晴らしい一日だろう。朝早く起き出し夕方まで走り続けられるとは」

エンジン:空油冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1170cc
最高出力:
98ps/7000rpm
最大トルク:
11.7kg-m/5500rpm
車両重量:225kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R1150GS  -since 1999-

R1150GS

基本的には先代のブラッシュアップモデルになってて空油冷モデルとしてはこれが最後。

エンジンにボアアップと改良が加わり1150(1130cc)となりました。

R1150GSエンジン

更にミッションの6速化もされ、高速巡航性も向上し盤石の体制となったR1150GS。

いまではお馴染みの異型ヘッドライトを始めたのもこれが最初。

ヘッドライト

片眉を上げてるみたいで可愛いですね。実車はまさに戦車ですが。

この頃既にBMWの一番人気車となってたR1150GSだけど、GSの凄いところは代を重ね続けているにも関わらず販売台数が落ちていかないこと。

新しいのが成功すれば成功するほど次期型のハードルというのは上がってしまうんですが、この代も、そして次の代も、そしてそして次の次の代までもBMWは期待を裏切ってない。

アドベンチャー

こちらは後に追加されたアドベンチャーモデル。ブロックタイヤとビッグタンクを積んだモデル。

エンジン:空油冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1130cc
最高出力:
85ps/6750rpm
最大トルク:
10.0kg-m/5250rpm
車両重量:249kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R1100GS  -since 1994-

R1100GS

ここまで来ると当時を知らない人でも見た事あるような気がするのではないでしょうか。

先代までで「GSは人気があった」とか「凄かった」とか言ってましたが、それはオフロード界での話。

あまりオフに精通してない一般ライダーにとってGSというのはBMWのパリダカバイク程度の認知でした。(あくまでも今と比べたらね)

そんな層にまでGSの魅力を知らしめ認知度を大きく押し上げたのがこのR1100GS。

R1100GSエンジン

それまでのOHV空冷エンジンからOHC空油冷4バルブエンジンへ変更。ほかにも先代から改良が加えられたクロススポークにパラレバー、そして新しくテレレバーも採用。そして今ではGSのトレードマークとなった二重フェンダー。

DR800

最初にこれやったのスズキなんですけどね。キョエーって感じでスズキ自身が怪鳥って言ってます。いい加減このネタもしつこいか。

話を戻してパラレバーの話は先代でお話しましたので、今回はこの1100から採用されたテレレバーについて少し。

テレレバー

これはフロントサスペンションの話で上の写真を見てもらうと分かる通り三角形のアームが伸びてフレームとアンダーブラケットを結んでますよね。これがテレレバーです。

一般的というかみんなが知ってるのはテレスコピック方式。アウターチューブとインナーチューブという2つの筒を使う方式。望遠鏡で風景を見るテレスコープから名前を取ってます。

テレスコピック

意外と知られてないんですがこのテレスコピック方式を1番最初に作ったのもBMWなんですよ。そんなBMWがテレスコピック方式と別れを遂げるなんて面白い話ですね。でもそれだけBMWは足に対する研究やこだわりが凄いということ。

R1100GSネイキッド

さてそれに対してテレレバー方式っていうのはテレスコピックとマクファーソンストラット方式の二輪バージョンみたいなもの。車を知ってる人なら聞いたことがあると思いますが要するにサスペンションとダンパーを別体にしている。

ストラット方式

さて何でこんな方式を取っているかというと、みなさん体感してるので知ってると思いますが一般的なテレスコピック方式はブレーキングをするとサスペンションが縮んで前のめりになりますよね。ノーズダイブってやつですが、そうすると実質的にキャスターが立ってホイールベースが短くなり旋回性が上がります。

「コーナー手前でしっかり荷重を前に移して~・・・」

S1000RRフロントフォーク

とか聞きませんか?

それはそういうことなんですがこれには問題もあって、フロントが沈んでいるノーズダイブ状態っていうのはキャスター角(フロントフォークの角度)が立つので旋回性が増すぶん安定性に乏しくなるんです。

これは減速による力にサスペンションの働きが全て取られて緩衝する余力がなくなるから。原理がよくわからない人でもフルブレーキングで路面のギャップを拾ったらガツンと突き上げられ危ないというのは想像がつくと思います。

んでそれをBMWは何とかしようして生み出したのがこのテレレバー方式。上で言った様にノーズダイブする状況を想像してみてください。

テレレバーの動き

こうするとこでブレーキングでのフロントサスの沈み込みを抑えているんです。イヤ本当はこんな単純な動きじゃないんですけどね。ビーマー(死語)は怒らないでね。

terelever

ただもちろんこのテレレバー方式にも弱点があります。

まず第一にアームが増えるので重くなります。さらにアームがタイヤの上を通るので大きいホイールが履けません。オフロードにおいて大きいタイヤが履けないというのは結構致命的(それでも19インチ履いてるんだけどね)です。

じゃあ何でR1100GSはこのテレレバーを採用したのかって話だけど、1100GSはそれまでのGSとは全く異なるバイク。それまでのGSは未舗装をガンガン走るというマルチパーパスというよりビッグオフに近い感じだったんだけど、このR1100GSは未舗装から峠からツーリングから何でもござれの本当の意味でマルチパーパスになった。

R1100gS

これが今までオフロード車に興味のなかったツアラー層にまでウケて評価されました。

このおかげでGSは今では買って間違いない何でも熟せる旅バイクという地位を確立するに至ったわけです。

エンジン:空油冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1084cc
最高出力:
80ps/6750rpm
最大トルク:
9.9kg-m/5250rpm
車両重量:240kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R100/80GS  -since 1987-

R100GS

二代目にあたるR80GSとR100GS。スラッシュが取れて今では馴染み深いGSという名前になりました。先代に比べタンクを大きくすることでラリーレイド感を演出。

当時BMWのパリダカマシンは市販車のR80GSではなくR100GSという特別な車両でした。そして今回そのパリダカモデルと同じ100GSが市販車となって登場というわけ。

この時BMWは既に83~85年三連覇を快挙を成し遂げてました。そんな三連覇マシンと同じバイクが出たんだからラリー好きが飛び跳ねて喜んだのは簡単に想像がつくと思います。

そしてそのR100GSで取り上げる部分があるとするならば他車に先駆けて装着されたこれまた今ではお馴染みのパラレバーでしょうね。

パラレバー

シャフトの下に平行して付いているリンクロッドがそうです。

シャフトドライブっていうのはメンテナンスフリーというメリットがあるんだけどコスト増はもちろんの事トルクリアクションというデメリットもあります。

シャフトドライブは遊びのあるチェーンドライブと違ってアクセルを開けると前ではなく後ろが起きてしまうんです。これをトルクリアクションといいます。

そしてそれを何とかしようとして編み出されたのがこのパラレバー。難しい話になるので割愛しますが、要するにリンクを追加しその力をフレームに逃してる。

「アクセルを開けるとリアが起きるなんて、開けるとリアが沈むチェーンとは逆で面白いな~。」

S1000RR

なんて思ってませんか?それよくある勘違いです。

チェーンドライブはアクセル開けたからといってリアは沈みません。あれはリアが沈んでるんじゃなくてフロントが起きてるんです。前が起きるのをリアが沈んでいると勘違いしちゃってるんですね。

そもそも加速でリアサスが縮んじゃうと転けちゃいます。だからスポーツバイクなんかはアンチスクワット効果を狙った設計をしてます。まあアンチスクワットはコーナリングの話だけどね。>>バイク豆知識:アンチスクワット

R100/80GS 
-since 1990-

1990R100GS

一緒に紹介しちゃうけど1990年にもモデルチェンジが入ってる。このモデルが80/100GSシリーズ最後でもありOHV最後でもある世代。後に再販されるほどの人気でした。

大まかな変更点としてはフレームマウントの角度調整機能付きのスクリーン、大型フェアリング、パイプガード、ダウンタイプのフロントフェンダー。そしてスポークながらチューブレスタイヤを装着可能としたクロススポークホイール。

もちろんパリダカモデルも登場。

R100GS PD

でも実はこの時BMWは既にパリダカから撤退してました。

じゃあなんでこんなバイクを出したのかというと、パリダカを連覇したR100GSに乗りたいという人と、パリダカで勝ちたいから売ってくれというプライベーターがいっぱい居たから。

GSの信頼性がどれだけ高かったかが伺える話ですね。

エンジン:空冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:980cc
最高出力:
60ps/6500rpm
最大トルク:
7.7kg-m/6500rpm
車両重量:210kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R80G/S  -since 1980-

R80G/S

BMWベストセラーバイクであるGSの原点とも呼べるバイクがこのR80G/S。

最初はGSではなくG/Sと文字が分かれていました。GSというのはドイツ語でGelände Sport(ゲレンデシュポルト)の頭文字から取っていて、まあ要するに野山をスポーツって意味。

ちなみにRはRad(バイク)の意味。BMW Motorradって言いますよね。Rシリーズは伝統の水平対向二気筒でBMWの歴史とも言えるシリーズです。

このGSですが非常にリクエストが多かった車種でもあります。まあ当たり前ですけどね。BMWといったらまずこの世界で愛され続けるR1200GSです・・・だから正直いうと書きたくない。

まず最初に話は初代が出る少し前から始まります。

この初代GSが出るちょっと前の1970年代後半、実はBMWは瀕死状態でした。当時BMWの主要市場はアメリカだったのですがドル安によって販売面で大苦戦。

アメリカ貿易委員会

更にアメリカは追い打ちをかけるように1983年にはハーレー救済の一環として700cc以上の輸入二輪車に対し高い関税(45%)を課する事まで始めます。

だからもし80G/Sが生まれヒットしていなかったらBMWは間違いなく破綻していたでしょうね。イギリスの名門トライアンフはこのドル安&関税のダブルパンチに耐え切れずに破綻してしまいました。

R80GSプロトタイプ

ただBMWもこの80G/Sのヒットは偶然ではなく狙っていたようで、1970年代から入念に研究を重ね大事に作っていたようです。上の写真はプロトタイプ。

当時のBMWは日本でいえばメグロの様なメーカーで、官公向けやお金持ち相手の保守的なメーカーでした・・・今もあんま変わらないか?

R

そんなBMWが泥が似合う直線的な無骨バイクを出してきたから世間は少し騒ぎました。

でもこれにもちゃんとワケがあります。突拍子もなく出したわけじゃありません。

R80G/Sカタログ

この頃のBMWはISDEで活躍していたんです。

※ISDEというのはInternational 6 days Enduroの事で文字通り6日間にも及ぶ過酷なラリー。一般的にはシックスデイズと呼ばれています。

ISDT BMW

そんなシックスデイズで活躍していたBMWのワンオフチューニングモデルの市販バージョンがこの80G/Sというわけ。当時ビッグオフといえばXT500を始めとした500cc前後が基本だった中で二気筒797ccは相当なパワーオフ。圧倒的な速さを誇っていました。

1980R80

ただこのG/Sが世界から認められたのはISDE直系レプリカでハイスペックながら車重が186kgしかなかった事が大きい。

ちなみにラリーを知らない人でも知ってるラリーであるパリダカでも勿論優勝しました。

パリダカモデル

その記念に発売された32LビッグタンクのR80G/S PARIS DAKAR。

このバイクの登場によってパリダカも多気筒化が進みました。それくらい速かった。

エンジン:空冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:797cc
最高出力:
50ps/6500rpm
最大トルク:
5.8kg-m/5000rpm
車両重量:186kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

レースの魅力

レースの魅力

皆さんはレースを見たことがあるでしょうか。

今は地上波ではやってもダイジェスト版でスカパーやケーブルを引かないと中継は見れないので恐らく殆どの方が見たこと無いと思います。

F1はよく放送されてるので見たことがある人は多いと思いますが、F1と同じようなモノ・・・と考えるのはちょっと早計です。

F1好きには怒られるかもしれませんがF1等と違いバイクレースは基本的にピットストップが無いので、順位が入れ替わるにはバトルしかありません。

抜いたと思ったら抜き返されるなどゴールするまで常にバトルが起こっていて目を話せない手に汗握る展開がずっと続きます。決してクラッシュや転倒などが見せ場のスポーツではありません。

バイクレース

他にも素晴らしいレースは沢山あるので興味が湧かれたらユーチューブなりCS契約なりでご覧になることをオススメします。

ただ本当に一番オススメしたいのは

『実際に見に行くこと』

です。

MotoGPにしろJSBにしろ鈴鹿8耐にしろ、それこそ角サーキットでやっている地方戦や草レースでも映像で見るのと実際に見るのとでは天と地ほどの差があります。

本当に同じバイクだとは思えない走りを目の当たりにすること間違いなしです。

茂木ホンダブース

さらに大きなレースではメーカーがモーターショーですら見ることが出来ない色んな特設会場を用意してくれるという特典付きです。

茂木ヤマハブース

それに加え用品店なども出店していたりして、その場限りのセール品や限定品が買えたりするバイクモールがあったり。

そっち目的でツーリングがてら足を運んでみるのもいいかもしれませんね。掘り出し物が見つかるかも。

最後に

長文駄文ながらレースやサーキットについて書かせてもらいました。

痴がましい話ですがこれを読んで一人でも多くの人がレースに興味を持ち、観戦や参加といった形でレース業界ひいてはバイク業界を盛り上げてくれる事を切に願います。

FIM(国際モーターサイクリズム連盟)主催 世界三大レース

モトGPオートバイレースの頂
「ロードレース世界選手権 MotoGP(WGP)」
SBK-WSB市販車レースの最高峰
「スーパーバイク世界選手権 SBK(WSB)」
FIM世界耐久選手権耐久性までも試される
「FIM世界耐久選手権 FIM-WEC」

有名なローカルレース

JSB1000世界の国別スーパーバイク選手権
「JSB、AMA、BSC….etc」
マン島TT最も危険で最も崇高なレース
「マン島TTレース」
草レース初心者からベテランまで
「草レース」
ジムカーナ転けた分だけ上手くなる
「ジムカーナ」
サーキットの魅力最後に
レース・サーキットの魅力