RR1000/1200 -since 1987-

RR1000

ビューエルが一番最初に出した市販車がこのRR1000BATTLE TWIN。

皆が思うビューエルのイメージからは大きく掛け離れていると思います。

先に作ったRW750と同様にクロモリ鋼管のトラスフレームという一部のスーパーバイクにしか使われていない贅沢フレームにハーレーのスポーツスターOHVエンジン(XL1000)を積んだマシン。

内部

Buellに詳しい方なら分かると思いますが、恐ろしい事に既に中身はBuellの形が出来上がっている。

しかしこのバイクが誕生したのは実は運が良かった面があります。

というのも当時ハーレーダビッドソンはレースに対し非常に消極的でした。これはCEOだったヴォーン・ビールス氏がアメリカ伝統のサーキット場であるラグナセカのイベントに出席した際に、ハーレー乗りをほとんど見かけなかった事がキッカケ。

RR1000バトルウィン

レースは売上に繋がらないと判断したわけです。この人も元々はエンジニアなんですけどね。

だからAMA(アメリカのレース)の中でも人気だった二気筒レースBOT(バトル・オブ・ツイン)ではドゥカティやビモータが幅を効かせていたんだけど、その事が我慢ならなかったハーレーのオーナーズクラブが身銭を切ることで会社のワークス参戦を後押し。

RR1000バトルウィン

「Lucifer’s Hammer (ルシファーズ ハンマー)」

XR750エンジンをベースに1000ccまで排気量を上げたモデル。84~85年と勝利を収めたアメリカでは伝説のツインレーサーです。

ちなみに漫画:特攻の拓で

『Lucifer’s Hammer (悪魔の鉄槌)』

として名前が取り上げられた事から名前は知っている人も多いかもしれませんが、実はそう単純な意味では無かったりします。

この名前には

「レースなんて道楽に金を使ってるとカミさんから怒られるぞ」

という皮肉、つまり

『悪魔の鉄槌(カミさんの鉄拳)』

という揶揄が込められてる。アメリカならではのユニークさですね。

そんなルシファーズハンマーなんですが、86年は戦闘力不足でドゥカティの伝説マシン851に完敗。そこで白羽の矢が立ったのが天才エンジニアだったエリック。

RR1000とエリック

彼も当時バイクを作るために出資を募っている段階。つまり勝てるバイクが欲しいオーナーズクラブと意図が合致したわけです。

そして誕生したのがルシファーズハンマー2と、その公道モデルRR1000というわけ。

RR1000バトルウィン

惜しくも決勝で転倒し851には勝てませんでしたが、予選ではポールポジションを取る程の速さを見せた事でプライベーター達からの注文が殺到。

ただ残念な事に搭載していたXR1000のエンジンが50機しかハーレーから都合出来なかった事から販売台数は50台のみ。

そのため急遽XLH1200のエンジンを用立ててRR1200も製造。こちらは150台ほど作られたようです。

RR1200バトルウィン

この一件でエリックビューエルという名がアメリカ中に広まることになりました。

エンジン:空冷4サイクルOHV二気筒
排気量:998cc
最高出力:
77ps/5600rpm
最大トルク:
9.8kg-m/4400rpm
車両重量:179kg(乾)
※スペックRR1000

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

創業者Erik Buell

エリックビューエル

ビューエルの創業者であり、技術責任者であり、レーサーでもあったペンシルバニア州生まれのエリックビューエル。

この人がどんな人かといえば

「三度の飯よりもバイクが好きな人」

という感じ。

10代の頃に親から原付を買い与えられた事がキッカケで、バイクを弄り倒す日々とモトクロスレースの日々に明け暮れるように。

頭の方も秀才で地元の名門ピッツバーグ大学に入学。更にはTZ750でプライベートながらレーサーとしても活躍というバイクに関しては才色兼備な人。

レーサーエリックビューエル

「ケニー・ロバーツの前を走ったことがある※本人談」

が武勇伝との事。

エンジニアとしてのエリック

大学で工学士を取得した後、29歳の時にハーレーダビッドソン社へエンジニア(フレーム担当)として入社。その後もハーレーでの仕事とは別にプライベートで開発を続ける日々。

そんなある日、目に止まったのがBartonというイギリスのエンジンメーカーが作っていた水冷2stスクエア四気筒エンジン。

このエンジンに目をつけ、一から開発したクロモリ鋼管のトラスフレームに搭載したレーサーRW750を入社から僅か4年後の1983年に完成させます。

RW750とエリック

ついでにスポーツバイクを作らせてくれないという理由からハーレーを退社。

しかし残念ながらエンジンが駄目すぎて結果は残せませんでした。

ただこの一件以降

「もっと自由にバイクを作りたい。」

ビューエルモーターカンパニー

と考えたエリックはビューエルモーターカンパニーという会社をウィスコンシン州に立ち上げます。

立ち上げといっても大それた物ではなく最初は本当に小さな小さな会社。

ビューエルモーターカンパニー

一番左が事務所でその奥の掘っ立て小屋が工場。右の建物はエリックの自宅。

従業員も僅か3人からのスタートでした。

系譜図
エリックビューエル 創業者
Erik Buell
RR1000/1200 1986年
RR1000/1200
RS1200 1989年
RS1200
S2 1994年
S2 Thunderbolt
S1 1996年
S1 Lightning
S3 1996年
S3/T Thunderbolt
M2 1997年
M2 Cyclone
X1 1999年
X1 Lightning
BLAST 2000年
Blast
XB9シリーズ 2003年
XB9R Firerbolt
XB9S Lightning
XB12シリーズ 2004年
XB12R Firerbolt
XB12S Lightning
XB12X ULYSSES
1125シリーズ 2007年
1125R
1125CR
1125シリーズ 2011年
1190RS
1190シリーズ 2015年
1190SX
1190RX

690DUKE -since 2016-

三代目690DUKE

2016年にモデルチェンジしDUKE5となりました。

またまたフルモデルチェンジ。ホイールがRと同じものになりましたが、それよりエンジンがまた全面的に変わりました。

2016LC4

具体的に言うとただでさえビッグボアショートストロークなのを更にビッグボアショートストローク化。そしてヘッドカバーをマグ化しバルブを吸気直打、排気ローラーロッカーアームに変更。これらのおかげで馬力が更に上がって遂に74馬力に。もういいでしょと言いたくなりますね。

DUKE5ヘッド

でもヘッドにもバランサーが付いたことで馬力は上がってるんだけど過激になったというより更に調教された特性になりました。

サスのオフセットも減らしてトレール幅を増やしたしもう本当にネイキッドになりましたね。いやストファイかな。ここまで来るとビギナーが普通に乗っても超ライトウエイトスポーツとして楽しめるでしょう。マニアは690SMC(スーパーモトコンペティション)を買えって事かな。

DUKE5r

R仕様はお馴染みオレンジホイールにBremboモノブロックキャリパー、WPフルアジャスタブルサスペンションを装備。更にリーンアングル・センサー連動ABS、トラコン、スーパーモト・モードといったOPを標準装備。

DUKE5ボディ

まあ何度もいいますがあくまでもそれまでのDUKEシリーズに比べたら調教されたというわけで、他社と比べたらそれでもぶっ飛んだ特性を持っているのは相変わらず。

ちなみにこんなにピークパワーを追求して軽いLC4エンジンの耐久性を疑問視する人が居るかもしれないけど、これも元がエンデューロ用という事で非常にタフに作られてて、KTM自身も最低10万キロは持つように設計をしてる。

ダカール・ラリー ウィナーリスト

しかもそのLC4と同じ技術で作られているRALLYでKTMはダカール・ラリーにおいて無類の強さを発揮していたり。だから信頼性は証明されてます。

ただ軽量化の一環としてウォーターポンプのインペラがクランクと表裏一体で直結してるので劣化とともにエンジン内にクーラントが入っちゃうっていう持病というか問題点があります。

少し入ったくらいではなんともないタフさを持ってはいますが、放置しておくと大変なので買う人や買ったはラジエーター液の水位に注意してね。

2016duke

終わりに・・・

今シングルエンジンで最大排気量となってるのはこのKTMのDUKEを始めとしたLC4エンジンです。というかシングルエンジン、特に大型ロードスポーツはもう死滅状態です。

日本メーカーも過去にはホンダGBやヤマハSRXといったシングルスポーツはありましたがメーカーもそして消費者も多気筒化に流れ消えてしまいました。

KTMデューク

これは思うに

・カタログスペックで見た場合どうしてもマルチに引けを取る。

・シングル感(鼓動感)が騒音規制に引っ掛かってまうので出しにくい。

・軽さが絶対なシングルスポーツだが軽くするにはアルミやマグといったコスト増に直結する素材を多用しないといけない。

・割に合わない(シングル=安いという消費者の意識)

といった問題点を抱えてるからだと思うわけです。

ただそれでも地をはうように出し続け、今となってはシングルスポーツの代名詞とも言えるほどになったKTMのDUKEシリーズ。

SUPERDUKE1290R

最近ではRC8のVツインエンジンを積んだSUPER DUKEなるものを出し世界で絶賛されていますが

「DUKEと言えば690、DUKEと言えばシングルスポーツ」

DUKEシリーズ

このままビッグシングルスポーツの道を極めていって欲しいものです。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:690cc
最高出力:
73ps/8000rpm
最大トルク:
7.5kg-m/6550rpm
車両重量:148kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

690DUKE -since 2012-

690DUKE

690としては二代目となるDUKE4

R専用だった690ccエンジンが積まれて晴れて690になったのかと思ったら、Rをベースに更に改良を重ねてきた。

ダブルしかもダイレクトイグニッションシステム、それにフル・ライド・バイ・ワイヤー(完全電スロ)で馬力は遂に70馬力へ。690ccのシングルエンジンが70馬力とか。そりゃもう良くも悪くもビッグシングルとは思えないほど低回転域はスッカスカですよ。ピストンのペラペラっぷり見たらもう言葉ないです。

それまでのDUKEのトレードマークの縦目二眼をやめてオーソドックスになりましたね。

デューク3ファミリー

まあファミリー並べてみても明らかにデュークだけ浮いてたからコッチが正解なのか。

ただデザイン面でいうとライトだけじゃなくてボディデザイン全体がモタード調からネイキッド調に変わってますね。それを見ても分かる通り、これまでの蹴り飛ばされる様なDUKEは何だったのかと思えるほど調教され乗りやすく、また疲れにくくなっています。

エンジンも外見も手を加えたもんだから先代から90%近い部品が変わったそうで。

DUKE4R

こっちはRモデル。

アクラポビッチマフラーとマッピングの変更で無印より2馬力アップ。

他にもチューニングされたWPサスにBremboのM50、ホイールにガードやシングルシートなどのパワーパーツを装備。更にABSはZX-10Rやディアベルにも使われているBOSCHのGeneration9でSUPERMOTOモードが追加。当然ながらフレームも先代同様強化されるスペシャルモデル。

デューク4

重ねて言うけどDUKE690はこのモデルから先代以上に扱いやすく多目的に使えるネイキッドへと大変貌を遂げました。

まあそれでもひと度回せば元レース用エンジンという事を思い知らされる魅力は相変わらず持ち合わせてますけどね。690ccで70馬力もあるビッグシングルなんだから当たり前ですけど。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:690cc
最高出力:
70ps/7500rpm
最大トルク:
7.1kg-m/6550rpm
車両重量:149kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

690DUKE -since 2008-

初代690DUKE

ズズッとときは流れて2008年。

今ではお馴染みの690DUKEの初代が誕生しました。620から数えて三代目だからDUKE3。この頃KTMはアメリカのポラリスという会社と提携しています。日本でポラリスって聞いてもピンと来ない人が多いでしょう。

ポラリスインダストリーズはアメリカの企業で元々はスノーモービルなどのメーカーでした。

ポラリス

ところが2000年代後半にRZRというヤマハっぽい名前の四輪バギーを開発しこれが空前絶後の大ヒット。

そんじょそこらの大ヒットとは比べ物にならないほどの大ヒットで、あっという間にパワースポーツ車両(=バイク、スノーモービル、オフロード車などの総称)部門においてヤマハ・スズキ・カワサキ、果てはホンダまで抜いて世界一となりました。

バイク部門ではクルーザーいわゆるアメリカンの生みの親であるインディアンを買収し、更にはヴィクトリーモーターサイクルという自社ブランドも展開。

ヴィクトリーモーターサイクル

アメリカで非常に高い評価を得ている今一番勢いのあるメーカーです。

話がソレましたね。

しかしKTMがまさかクルーザー作ってるメーカーと手を結ぶというのは意外ですね。まあ本業のATVは同じオフロードだから良いのかもしれませんが。ちなみにこの提携は試験的なものでわずか二年ほどですけどね。

その後KTMは2016年現在インドのバジャージ・オートと提携しています。スモールデュークが生まれたのはその影響です。>スモールデュークの系譜

話が戻ってない。

デューク3

新しく生まれ変わった690DUKEですが、久しぶりのフルモデルチェンジということでほぼ変わっていますが、一番はLC4エンジンを新しく設計しなおしたということ。

ああ、トラスフレームもこの代からですね・・・チューブラーフレームって言ったほうがいいのかな。

DUKEとSM

「とにかく軽く」

というモットーはこの新DUKEでも同じで、このフレームなんと重さが9kgしかありません。乾燥重量で148kg・・・凄い。

しかしやっぱり一番はエンジン。

セントラルバランスシャフト

66馬力を発揮するようになった新型LC4はセントラルバランサーシャフトを採用してるのが特徴。

でもそれより感動なのがシリンダーヘッドカバーですよ。

2008LC4エンジン

ヘッドカバーが斜めに組み付けられてるのが分かりますか?

これはバルブクリアランス調整などを容易にできるにようにとのKTMの計らいというかKTMのLC4に対する本気度の現れ。

LC4ヘッド

正にREADY TO RACEです。

しかしDUKEに限った話で言うと新しくなった690はそれまでのDUKEより更にモタードからネイキッド寄りになりました。

デューク3

これは長距離も熟せるようにするためとの事。

でも実は690といいつつ排気量は653ccだったり・・・理由ですか?KTMが90という数字が好きだからです。

そんな中で2011年に足回りとフレームを強化したDUKE Rが登場したんですが、このモデルでストロークが伸ばされ排気量が表記通り690cになりました。

DUKE3 R

Bremboのラジアルモノブロックキャリパーやカーボン製マットガード、R(ファクトリー)の証であり同じように見えて実は剛性が全然違うオレンジフレームなどなど。

でもそんな豪華装備に目が行きがちだけどDUKEの面白いところは必ずしもRが上位互換というわけではないということ。剛性と足の硬さの違いが明確て、ヨレて乗り手を楽しませるDUKEと、カッチリキビキビなRといった感じ。

でもどうせ買うならRがいい・・・って考えちゃうのは消費者のSAGAってやつですね。まあお買い得ですし。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:653cc
最高出力:
65ps/7500rpm
最大トルク:
6.6kg-m/6550rpm
車両重量:148kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

640DUKE -since 1999-

640デューク

DUKEの二代目となる640DUKE。二代目ということでDUKE2とも言われてたりします。

大きな変更点としてはホイールがスポークからアルミ鍛造キャストになったこと。そして何よりセルが付いたこと。やっぱりケッチンの被害が大きかったんでしょうかね。

見た目も大きく変わりました。

DUKE2

この頃のDUKEを知ってる人からするとDUKEと言えばこの縦二ツ目と言う人も多いかもね。ちょっと前までDUKEと言えばこの顔だったから。

デューク2

KTMにあまり詳しくない人のために説明しておくと、DUKEはKTMにとってはスーパーモタードではありません。まあスーパーモタードと言っていいほどのポテンシャルを持っているのは間違いないんだけど、KTMにとってのスーパーモタードはSupermotoというモデル。

640スーパーモト

見た目は似てるけどコッチはカリッカリのモタードバイク。

競技の事を考えてかライトも至ってシンプルなものなのが特徴。

DUKE640オーナーズブック

じゃあDUKEは何なのかと言えばネイキッドです。日本でネイキッドといえばダブルクレードルフレームにツインショックで丸目っていうイメージがあるから違和感あるかもしれないけどね。

他にもオフ仕様のEnduro、アドベンチャー仕様のADVENTUREなどがDUKEと同じように世代ごとにあります。要するにDUKEもそれらも同じLC4ファミリー。

DUKE640カタログ

ただそれら全部紹介するほどの元気も(国内での)需要も無いと思いますので今回はDUKEに絞らせてもらいます。ごめんなさい。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:625cc
最高出力:
55ps/7000rpm
最大トルク:
6.12kg-m/5500rpm
車両重量:145kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

620DUKE -since 1995-

620デューク

KTMが正式に国内市場参入した事と125~390という日本でも人気のあるクラスのDUKEが加わった事もあって結構知名度も出てきた様な気がしないでもないKTMのデュークシリーズ。

ちなみに販売台数で見ると欧州メーカーとしてはPIAGGIOに次いで二位のメーカーだったりするわけですが、そんなKTMのDUKEシリーズの始祖となるのがこの620DUKE。

スモールデュークの方でも言ったと思うけどKTMはほぼオフ専門メーカーで、作るスポーツバイクといえばレース向けのモトクロッサーや山を駆け抜けるエンデューロ車がほとんどだった。

KTMポニー

公道モデルといえばスクーターやロータックス社から買った小排気量エンジンを積んだいわゆる生活バイクが大半。

KTM R100

上の写真はKTMが一番最初に作ったバイクのR100。

そんな中でKTMにとって転機となったのが1980年代後半。エンデューロレースで勝つためにLC4と呼ばれる608ccのビッグシングル水冷エンジンを自社開発します。

600エンデューロ

そして更にこれまで培った技術は市販車でも活かせるハズとしてそのエンジンをベースに作り登場したのがこの620DUKE。

「とにかく軽く」

を合言葉に開発設計されただけあり重量は乾燥でわずか145kg。エンジンはもちろんレースでも使われていた620Enduro(上の写真)をベースにカウンターバランサーを加えて公道向けにチューニングしたもの。

620cc

というか中身は殆ど620ENDUROで、公道向けにチューニングといっても元が超々ショートストロークのレースエンジンなだけあって特性は単気筒とは思えないほどの過激っぷり。でもDUKEがウケたのはこの過激さがあったから。

ビッグシングルといえばトルクに物を言わせてトコトコドコドコという感じが当たり前だった時代に、シングルなのに超ショートストロークで回してナンボ、そして回せば吹っ飛ばされる様な加速というビッグシングルにあるまじき特性。軽さも相まってリスキーさというか頭のネジが外れたライダー向けな感じがウケた。

LC4エンジン

軽くするためにセルすら付けなかったっていうスパルタっぷり。市販車なのにこんなビッグシングルがキックのみってケッチンくらっちゃった人は多いだろうな。

1995DUKE

そしてその特性に相反する可愛い二ツ眼。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:608cc
最高出力:
55ps/7000rpm
最大トルク:
6.12kg-m/5500rpm
車両重量:145kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

スポーツスターの全モデルと年表

スポーツスターの全モデル

スポーツスター(というかハーレー)は毎年必ずと言っていいほど年次改良が入っています。

全てを把握することが難しかったため大きな変更だけ記載しています。すいません。

K -since1952-

モデルK

ハーレー初となるリアサス付きスポーツモデル。

KH -since1954-

モデルKH

モデルKのサイドバルブエンジンをロングストローク化し883ccとしたパパサン(883cc)の始祖。

50周年記念モデルでもある。

KHK -since1955-

KHK

上記KHのレース仕様でサイドバルブエンジンの最終型モデル。

※ここからショベル(アイアン)スポーツスター

XL -since1957-

XL

初めてOHVエンジンを搭載した通称アイアンスポーツの元祖モデル。

XLH -since1958-

XLH

XLをハイコンプ(高圧縮比化)にしたツアラーモデル。

XLCH -since1958-

XLCH

XLのコンペティションホットモデル。

1959:XLHのヘッドライトナセルを採用

1965:XLHのタンク容量をアップ

1966:電装系を12V化&ハム缶

1967:セルモーターを装備

1967;ヘッドライトナセルを小型化

XLH/CH -since1972-

XLH1000

ボアアップにより排気量を1000cc化したモデル。

1973:フロントブレーキをディスク化

1975:ギアチェンジを右から左に変更

XLT1000 -since1977-

XLのツーリングモデル。

XLCR -since1977-

XLCR

新設計フレーム(CRフレーム)のカフェレーサーモデル。

1979:全車CRフレーム化

XLS -since1979-

XLS

リアホイールのサイズを従来の18インチからこれから続く16インチに変更するキッカケとなった3.3ガロンタンクのロードスターモデル。

1982:全車エボ(30th)フレーム化

XLX-61 -since1983-

XLX-61

ハイコンプとシングルシートが施されたアイアンスポーツのラストモデル。

XR1000 -since1983-

XR1000

レース用に造られたXR750フレームにXLXエンジンの限定モデル。

※ここからエボリューションスポーツスター

XLH883/1100 -since1986-

XLCR

エボフレームにエボリューションエンジンを積んだモデル。

XLH883D -since1987-

XLH883D

1100と同じダブルシート仕様883モデル。

XLH883H -since1988-

XLH883H

シート高を抑えたハガースタイルのモデル。

XLH1200 -since1988-

XLCR

ボアアップで1200ccまで拡大した1100の後継モデル。

※同年に全モデルフロントフォークを39mmに大径化

※キャブをバタフライ式からCV式に変更

1991:五速化&電装改良

1991:1200と883Dのみベルトドライブ化

1993:全車ベルトドライブ化

1994:フレーム後部を改良

1995:電子スピードメーター採用

1995:1200のタンクを12.5L化

XL1200S -since1996-

XL1200S

ツインプラグ化(98以降)とダンパー調節機能を付けたスポーツモデル。

1997:883もタンクを12.5L化

XL1200C -since1996-

XL1200C

21インチのフロントホイールを装備したカスタムモデル。

1997:883も12.5L化&リアサス変更

1998:点火モジュール変更とMFバッテリー化

1998:ツインプラグ化(1200Sのみ)

1999:全車フォワードコントロール化

XL883C -since1999-

XL883C

上記カスタムの883モデル。

2000:クランク&カム改良と4POT化

2001:カムとオイルポンプの改良

XL883R -since2002-

XL883R

集合管のリジスポ最終モデル。

2002:ヘッドガスケットやフランジ等を変更

※ここからラバー(ゴム)スポーツスター世代

XL883/C
XL1200/R/C -since2004-

XL883

ラバーマウントフレームに一新された最初のモデル。

XL883L -since2005-

XL883L

ハガーの後継となる更にローシートになったモデル。

2008:全車FI化

XL1200L -since2007-

XL1200L

883のみだったローシート仕様の1200モデル。

XL50 -since2005-

XL50

スポスタ50周年を記念して出された世界限定2000台のモデル。

XL1200N -since2008-

XL1200N

全体をブラック化したメーカーカスタムモデル。

別名ナイトスター。

XL883N -since2009-

XL883N

上記ナイトスターの883モデル。

別名アイアン。

XR1200 -since2009-

XR1200

XRデザインでビューエル譲りのエンジンや足回りを装備したモデル。

XR1200X -since2010-

XR1200X

BPFなどを奢られたXR1200のハイパフォーマンスモデル。

XL883L -since2011-

XLCR

ローの後継モデルで足回りの強化と17リッタータンクを装備したモデル。
別名スーパーロー。

XL1200X -since2011-

XL1200X

ファットタイヤなどでビンデージカスタムされたモデル。

別名48(フォーティーエイト)。

XL1200V -since2012-

XL1200V

70年代に流行ったチョッパーカスタムのモデル。

別名72(セブンティーツー)。

XL1200CA -since2013-

XL1200CA

XL1200Cをベースにストリートドラッガーに仕立てたモデル。

XL1200CB -since2013-

XL1200CB

同じくXL1200Cをベースに現代チョッパースタイルに仕上げたモデル。

XL1200T -since2014-

XL1200T

XL1200のスーパーロー&ツーリングモデル。

XL1200CX -since2016-

XL1200CX

リアを18インチにアップし倒立フォークを装備したカフェレーサーモデル。

XL1200NS -since2018-

XL1200NS

人気が高いアイアン883の1200版となるモデル。

XL1200XS -since2018-

XL1200XS

ブラックとクロームの組み合わせを施したホバースタイルモデル。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ニューブロックヘッド世代 -since 2004-

2005xl883

時代は再び進んで2004年。

初めてフレームとエンジンの両方が同時期に新しくなった第4世代スポーツスター。

何が変わったのかというとエンジンがリジットマウントからラバーマウントに変わったこと。そのため『ラバスポ』とか『ゴムスポ』とか言われています。

エボリューションヘッドエンジン

元々スポーツスターのエンジンを使ってスポーツモデルを造っていたビューエルが開発したラバーマウントを応用した形。

エンジンは基本的にラバーマウント部を設けた程度で大きな変更は無いのですが、フレームの方は対応させるため少し大きめに変更されました。名前もそのままラバーマウントフレームと言われています。

狙いはもちろん振動低減による快適性の向上にあります。

ラバーマウントエンジン

この効果は絶大で非常に好評でした。

それまではリジットフレーム故にエンジンの振動がそのまま乗り手に伝わる事から高速走行は罰ゲームに近かった。

それがラバーマウント化によって心地よい振動は残しつつ大幅に振動を減らした事で可能になったからです。

ハーレー界隈でも全く別物の非常に良く出来たスポーツスターと言われています。

ラバスポ

2007年には排ガス規制に対応するためフューエルインジェクション仕様となり更にメンテナンスフリーに。一部では弄れなくなったとしてFIを外してキャブを付ける猛者も居るようですが。

さて・・・イケイケだったハーレーですが2000年代頃から経営方針が大きく変わったことを知っている人も多いかと思います。

それまでハーレーというと

「自分色に染めていく(カスタムしていく)」

というアメリカのガレージ文化そのままのようなバイクだった。

スポーツスターの全モデル

言ってしまえば新車は『カスタムベース車』という感じですね。

ところが2000年代後半になると

「違法カスタム駄目ゼッタイ」

というスタンスになったんです。

違法なカスタムの依頼、または違法車両の整備などを断る経営方針にガラッと変わった。

それと同時に自社関連のアフターパーツのさらなる拡充を開始。

つまり突っ込んで極端に言うと

「自社公認カスタム以外してくれるな」

と捉えられても仕方ないスタンスに変わったわけです。

スーパーロー1200

これの狙いは

・倫理的な問題

・アフターの収益化

・旧世代との線引き

などの狙いがあるものと思われます。

この流れはラインナップを見ても明白で、それまでスポーツスターは最小限のカスタムしか施していない素モデルがほとんどでした。

スポーツスター2019年モデル

しかし近年はフォーティーエイトやセブンティーツーなど、最初からある程度パッケージングされた一種のファクトリーカスタムが多く出るようになった。

要するに最初から多くの選択をハーレー自身が提供する売り方に変わってきた・・・そしてそれが人気を博してる。

スポーツスターのロゴ

カスタムとの高い親和性から人気だったスポーツスターですが、その立ち位置や付き合い方が大きく変わってきている様です。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル

ブロックヘッド世代 -since 1986-

1957XLスポーツスター

時代はグッと進んで1986年。

この年に登場したのがエボリューションエンジン(通称ブロックヘッドエンジン)を積んだ第3世代スポーツスター。

1000cc一本だった状態から伝統の883ccモデル(XLH883)とボアを拡大した1100cc(XLH1100)の二本立て展開が始まったのもここから。

ブロックヘッドの由来はエンジン主要部品が積み木(ブロック)の様に積まれているような形だから。でも日本ではブロックヘッドと呼ばずに単純にスポーツスターと呼ぶ人が多いですね。

エボリューションヘッドエンジン

というのも何を隠そうこのエンジン今のスポーツスターにも使われているやつだから。

油圧式タペット調整機構を備えたアルミブロックの完全新設計で信頼性も大幅に向上した傑作との呼び声高いエンジンです。

ちなみにこのエボリューションエンジンについて

ホンダとハーレー

「これはホンダと造ったエンジン」

とか

「ホンダがハーレーに技術提供した」

とか聞いたことある人も多いかと・・・これはハーレーが経営危機を迎えたことが背景にあります。

時代を少し遡ることになるのですが、先に話した通りハーレーは1950年代から英国勢と北米市場をかけてバチバチ火花を飛ばしてそれなりに善戦していました。

しかし1960年代になると今度はもっと恐ろしい日本勢が登場し、小排気量を中心に猛烈な勢いでアメリカ市場を食っていったんです。

その事に危機感を覚えたハーレーは1960年にアエルマッキというイタリアの小排気量バイクメーカーを買収し反撃に出るも上手く行かず経営は更に悪化。

ショートスター

これはその一つである『X-90』と呼ばれるモデル。

SportsterならぬShortsterという愛称を持っています。

小排気量の販売が何故失敗したのかというと

「ハーレー=ビッグバイク」

というブランドイメージを損なうとしてディーラーから猛反対して売らなかったから。結局アエルマッキは数年でカジバに売却されました。

そんなこんなで持ち直す事が出来ず弱っていったハーレーを当時盛んだった企業買収による乗っ取りから守るために1969年にアメリカの大手機械メーカーであるAMF(American Machine & foundry)が保護買収。

AMFハーレー

ここから約10年は

『AMF Harley-Davidson』

としてやっていく事になったわけです・・・がハーレーファミリーの間ではこのAMF時代を

「思い出したくもない暗黒時代」

とか言われています。

AMFハーレーダビッドソン

何故そう言われるのかというとAMFはハーレーの経営を立て直すためにリストラを始めとした事業の大幅なスリム化を行ったわけです。

すると優秀な人がどんどんハーレーから居なくなり品質ガタ落ちで故障が耐えなくなった。

というか組み立てすらまともに出来てないまま納車されるレベルで

「乗ってる時間より修理してる時間の方が長い」

とか

「車体価格以上の修理費が掛かる」

とか言われるほど本当に酷いものに。

『ハーレー=壊れる』

というイメージが強くあるのはこのAMF時代の影響が大きいんです。

そんなもんだからブランドは更に失墜。

その一方で小排気量のみだった日本メーカーがCBやZなどで遂に大型バイクでも快進撃を開始。

何度も言いますがハーレーは元々ハイスペックメーカーだったのでそんな中でもXLX-61のエンジンにXR750(ファクトリーマシン)のヘッドを装備したXR1000というホモロゲを出したりして対抗しました。

XR1000

そのおかげでBOTT(二気筒レース)やダートトラックでは戦績を上げたものの、一方で四気筒が相手となるデイトナなどでは分が悪く差は歴然だった。

そんな失態の連続もあって1973年には80%以上を誇っていた850ccオーバークラスのシェアも、1983年にはわずか23%とあまりにも無残な状況に。

さすがにこのままではマズいと創業者の孫を筆頭とした資本家グループが1981年にAMFから買い戻し。

ハーレー再建に打って出ました。

ハーレーの買い戻し

「何より急務は品質改善」

という事で、その際に頼ったのがホンダとされています。

V型エンジンのノウハウとサプライヤーとの関係、組立方式の指南などを指導してもらうことに。

そして登場したのがこのエボリューションエンジンで、シリンダーとヘッドの共締めやビッグツインと部品の共有化など日本車に近い作りになっていたことから

「これはホンダとの合作」

とか言われてるわけです。

ちなみに何処までホンダが噛んだのかは門外不出なのか資料が一切見当たらないので分かりません。

そんなエボリューションエンジンによる品質改善と同時に、幸運なのか根回しなのか当時の大統領だったレーガンが

ハーレー保護法

「700cc以上の輸入バイクの関税を6年間4.4%から49.4%に引き上げる」

というハーレー保護法と呼ばれる関税障壁を1983年から実施した事で業績は大きく改善。

これによりハーレーは復活を遂げたんですが・・・それだけでは終わらなかった。

80年代後半になると上記の理由から人気だった883によるワンメイクレースをAMA(アメリカのレース協会)が正式に開催。

これにより北米で883人気が爆発。

『パパサン』

という言葉と車種が日本国内で広く知れ渡る事になったのは発端はこれ。

その波に乗るように89年にハーレージャパン(日本法人)が設立されハーレーが身近なものとなった事でスポーツスターが更に飛ぶように売れました。一時期883ccにちなんで88万3000円で売られていた事を覚えている人も多いかと。

ミズーリ工場

この三段跳びの様な快進撃によりハーレーは業績改善どころか急成長となり、遂にはスポーツスターのために新たな工場まで建設。

北米650cc以上シェアも1999年には49.5%まで回復し、2000年には過去最高となる年間生産台数20万台を突破とイケイケ状態に。

XL883R

今のハーレーがあるのはこのエボリューションスポーツスターがあったからと言っても過言じゃないというわけです。

ちなみに2003年までのこのスポーツスターはリジットフレームな事から『リジスポ』と言われています。

ハーレーの見分け方ハーレーの見分け方
※ハーレーが分からない人向け
フラットヘッドスポーツスター1952年
フラットヘッド世代
ショベルヘッドスポーツスター1957年
ショベルヘッド世代
ブロックヘッドスポーツスター1986年
ブロックヘッド世代
ニューブロックヘッドスポーツスター2004年
ニューブロックヘッド世代
スポーツスターの全モデルスポーツスターの全モデル