GSX-R750(T/V)-since 1996-

1996GSX-R750

「Built to Win」

遂にツインスパーフレームとなった五代目GSX-R750のT/V型。

それまでほぼ二年毎だったモデルチェンジではなく、四年ぶりとだった事もあり大きく生まれ変わりました。

サイドカムチェーン化に加え、三分割クランクレイアウトなどで更にコンパクトになった新設計エンジン。

そしてフレームもワークスマシンRGV-Γのディメンションを参考に作られたツインスパーフレーム。

GSX-R750T/V

レースや市場の人気に陰りが見えてきた状況を何とか打破するため白紙から設計されただけの事はある大変貌。

遂に油冷でもダブルクレードルフレームでもない、それまでのGSX-R750ブランドと完全に決別する事に。

しかしそのおかげで初代と同じ乾燥重量179kgという圧倒的な軽さ。そしてその軽さから来るハンドリングと速さが非常に高く評価されました。

96GSX-R750カタログ写真

初代と決別する事で初代のインパクトを取り戻した五代目。

新世代とも原点回帰とも取れるモデルですね。

主要諸元
全長/幅/高 2055/720/1135mm
シート高 830mm
車軸距離 1400mm
車体重量 179kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 749cc
最高出力 77ps/10000rpm
[130ps/11500rpm]
最高トルク 6.7kg-m/7500rpm
[8.1kg-m/10000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70R17(58W)
後190/50R17(69W)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.6L
フィルター交換時2.8L
スプロケ 前16|後43
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格 988,000円(税別)
※[]内はEU仕様
系譜図
85 1985年
GSX-R750
(F/G/H)
88 1988年
GSX-R750
(J/K/RK)
90 1990年
GSX-R750
(L/M)
92 1992年
GSX-R750
(WN/WP/SPR)
96 1996年
GSX-R750
(T/V)
98 1998年
GSX-R750
(W)
00 2000年
GSX-R750
(Y)
04 2004年
GSX-R750
(K4/K5)
06 2006年
GSX-R750
(K6/K7)
08 2008年
GSX-R750
(K8/K9/L0)
11 2011年
GSX-R750
(L1~)

GSX-R750(WN/WP/WR/WS/SP)-since 1992-

92R750

「継承される魂」

第二世代の始まりにあたる水冷化された四代目GSX-R750のWN/WP/WR/WS/SP型。

水冷化でW(Water)という文字が追加されたモデルですが、このWは四代目だけで以降のモデルでは付いてなかったりします。

ただこのエンジンはオイルジェットといった油冷によって生まれた機構も合わさっている水冷というより水油冷みたいなエンジン。

92R750

写真がなくて申し訳ないのですが、カウルを向くとそこには油冷としか思えない造形のエンジンが鎮座しています。

さて、このモデルでもう一つ挙げたいのが最後のダブルクレードルフレームということ。

皆さんご存知のようにSSといえばエンジンを挟む様に伸びるツインスパーフレームが一般的で、ダブルクレードルフレームと言えばネイキッドなどの比較的性能を追わないバイクに採用されているタイプですよね。

ツインチューブフレーム

写真はSSではなくメガスポのHAYABUSAですが、まあGSX-R1300みたいな物なんで突っ込まないでください。

実はGSX-R750も早々にツインスパーを検討していました。しかし中々ダブルクレードルフレームを変える事が出来なかったんです。

これが何故かというと

『油冷エンジン×アルミダブルクレードル』

がGSX-R750のアイデンティティだったから。

水冷化を敢行する際に営業サイドから

「ダブルクレードルフレームだけは変えないでくれ」

と懇願されていたんです。

1992GSX-R750

だから簡単にフレームまで変えることは出来なかった。ブランド車にありがちな悩みですね。

その結果がこの水油冷エンジンにダブルクレードルフレームという進化途上の様なGSX-R750というわけ。

R750SPR

94年からはレギュレーションの変更に合わせるために乾式クラッチや大径キャブ、クロスミッションなど予め装備したSPモデルが登場しました。

主要諸元
全長/幅/高 2070/735/1140mm
シート高 830mm
車軸距離 1435mm
車体重量 210kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 749cc
最高出力 77ps/9500rpm
[118ps/11500rpm]
最高トルク 6.8kg-m/7000rpm
[7.4kg-m/8500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58H)
後170/60-17(72H)
バッテリー FTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.9L
交換時3.0L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格 898,000円(税別)
※[]内はEU仕様
系譜図
85 1985年
GSX-R750
(F/G/H)
88 1988年
GSX-R750
(J/K/RK)
90 1990年
GSX-R750
(L/M)
92 1992年
GSX-R750
(WN/WP/SPR)
96 1996年
GSX-R750
(T/V)
98 1998年
GSX-R750
(W)
00 2000年
GSX-R750
(Y)
04 2004年
GSX-R750
(K4/K5)
06 2006年
GSX-R750
(K6/K7)
08 2008年
GSX-R750
(K8/K9/L0)
11 2011年
GSX-R750
(L1~)

GSX-R750(L/M)-since 1990-

90R750

「Direct Access Racing Technology」

三代目となるGSX-R750のL/M型。

ここまでが一般的に第一世代と言われています。

変更点としては

・B/S比の見直し(ロングストローク化)

・マフラーの4to1化

・キャブレターの大径化

・リアタイヤのワイド化

などなど、先に紹介した限定ホモロゲGSX-R750Rに準ずる変更。

GSX-R750M

さらに先代にはなかった倒立フロントフォークを国産750としては初の採用しているのが特徴です。

さて・・・ここまでが第一世代と言われています。

それは油冷エンジンがこのモデルまでだから。

R750油冷ファイナル

正確に言うとこのスラントノーズ一枚レンズになったこの91年M型が最終モデルです。

当時スズキといえば油冷、油冷といえばスズキと言われていました。

GSX-R750M

にも関わらず何故油冷を諦めたのかといえば、レースにおいて限界を迎えたから。

馬力がどんどん上がって発熱量が増えていった事で、オイル高温化による急速な劣化を起こしパワーロスを生じるようになったんです。

SACS

しかしパワーを上げれば上げるほど熱は増える一方・・・だから水冷に舵を切る事となった。

ただしコレはあくまでも夏の耐久レースでの話であって、公道ではあまり関係のない話なんだけどGSX-R750はあくまでもレーサー。

GSX-R750カタログ写真

何よりも速さを取る事は必然だったわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2065/725/1125mm
<2065/725/1145mm>
シート高 790mm
車軸距離 1420mm
車体重量 193kg(乾)
<208kg(乾)>
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 747cc
最高出力 77ps/9500rpm
[115ps/11000rpm]
最高トルク 6.8kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17
後170/60-17
<前120/60-17>
バッテリー FB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.1L
交換時3.2L
フィルター交換時3.4L
スプロケ 前15|後43
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格 839,000円(税別)
※[]内はEU仕様
※<>内は89年式
系譜図
85 1985年
GSX-R750
(F/G/H)
88 1988年
GSX-R750
(J/K/RK)
90 1990年
GSX-R750
(L/M)
92 1992年
GSX-R750
(WN/WP/SPR)
96 1996年
GSX-R750
(T/V)
98 1998年
GSX-R750
(W)
00 2000年
GSX-R750
(Y)
04 2004年
GSX-R750
(K4/K5)
06 2006年
GSX-R750
(K6/K7)
08 2008年
GSX-R750
(K8/K9/L0)
11 2011年
GSX-R750
(L1~)

GSX-R750(J/K/RK)-since 1988-

88R750

「偉大なるディティールの集合体である。」

1988年にフルモデルチェンジされ二代目となったGSX-R750のJ/K型。

カウルデザインが新しくなったのは見て分かる通りで、他にも

・エンジンがショートストローク化

・ホイールベースの大幅な短縮

・前後17インチ化

・新型フレーム

などなど改良は多岐にわたっています。

1988GSX-R750カタログ写真

中でも一番凄いのはフレーム。

新しくなったわけですが、ただ新しくなったわけではありません。

初期型のフレームをベースに更に軽量化しようと試行錯誤を繰り返してる内にある名案が生まれました。

それは

「もういっそレーサー(TT-F1)のフレームを使う方が早いし確実」

というもの。

1989GSX-R750

元々ワークスマシン担当だったメンバーの提案。

それが結論となり、更には企画が通るっていう・・・つまりこのR750は多少の変更は加えつつもレーサー直系なんです。

そして翌年に出たのが一目置かれるR750の中でも更に一目置かれるGSX-R750R(通称RKまたはSP)というモデル。

GSX-R750RK

パッと見はあまり変わらないように見えますが中身はほぼ別物と言えるレース前提のホモロゲマシン。

Φ40スリングショットキャブに4to1マフラー、フレームやスイングアーム補強などなど。

でも一番凄いのはエンジン。

88年モデルがビッグボアショートストローク化(70*48.7から73*44.7)されたのはレース側から要望に応える為だったんだけど、いざレースが始まるとオーバヒートによるトルク低下を招いてしまった。

GSX-R750R

そのため新たにレースの為に70*48.7という初代と同じボアストローク比の新造エンジンをわざわざ造った。

当然ながら先代のエンジンそのままではなく、ピストン・コンロッド・クランクなど全てが専用品かつ選別品。

とってもゴージャスなGSX-R750というわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2055/730/1100mm
{2070/730/1110mm}
シート高 830mm
[785mm]
車軸距離 1405mm
{1400mm}
車体重量 195kg(乾)
{187kg(乾)}
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 747cc
最高出力 77ps/9500rpm
[112ps/11000rpm]
最高トルク 6.8kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58H)
後160/60-17(69H)
{前130/60-17(58H)
後170/60-17(69H)}
バッテリー FB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
JR9C
{CR9EK}
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.8L
交換時4.5L
フィルター交換時4.8L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ530|リンク108
<サイズ530|リンク106>
車体価格 849,000円(税別)
{1,650,000円(税別)}
※[]内はEU仕様
※{}内はGSX-R750R
系譜図
85 1985年
GSX-R750
(F/G/H)
88 1988年
GSX-R750
(J/K/RK)
90 1990年
GSX-R750
(L/M)
92 1992年
GSX-R750
(WN/WP/SPR)
96 1996年
GSX-R750
(T/V)
98 1998年
GSX-R750
(W)
00 2000年
GSX-R750
(Y)
04 2004年
GSX-R750
(K4/K5)
06 2006年
GSX-R750
(K6/K7)
08 2008年
GSX-R750
(K8/K9/L0)
11 2011年
GSX-R750
(L1~)

GSX-R750(F/G/H)-since 1985-

初代R750

「Born to the Circuit, Back to the Circuit」

今も続くGSX-R750の始祖であり、大型スーパースポーツの始まりでもあり、油冷エンジンの始まりでもある初代GSX-R750。

それまではレーサーくらいしか使っていなかったアルミフレームをRG250Γ、GSX-R(400)に次いで採用したトップエンドモデルとして登場。

1986GSX-R750

先に出ていたガンマやGSX-R(400)と違い、GSX-R750は欧州をメインターゲットにした海外向け。

だから恐らく日本よりも向こうの人達の方が忘れられないモデルです。

何が衝撃的って乾燥重量で179kgしかなかった事。

現代ですら軽いと思えるわけですが、当時の750というのは乾燥重量で220kgオーバーが当たり前な時代。

当時のポスター

そんな時代にライバルより40kgも軽いバイクが出たらそりゃ話題になりますよね。

これはいま言ったアルミダブルクレードルフレームが最も大きく寄与しています。

カタログ2

しかし、もう一つ掘って紹介したいのが最初に挙げた油冷エンジンです。

GSX-R750が軽くてスリムだったのはこの油冷エンジンだったのも大きい。

実はGSX-R750のプロジェクトが始まった当初の方向は水冷でした。

しかし水冷にする場合、冷却水の通路(ウォータージャケット)が必要になるのでエンジンが大きく重くなってしまう。

そこで何かいい方法は無いかと考えていた企画責任者の横内さんの耳に入ってきたのがマスタングP-51という戦闘機。

P-51

「”液冷”の戦闘機」

という紹介をされていた。

液冷というのは要するに水冷なんですが、英語で書くと『Liquid cooling』なので液冷でも間違いじゃない。

それを聞いた横内さんが

「液であればいいのであって水である必要は無いんだ」

と閃き、なにか液となるものはないかとエンジンを眺めて目に止まったのがエンジンオイルだった。

オイルの比熱は水の1/10しか無いので普通ならば力不足。

しかしオイルだけにすればウォータージャケットを設ける事が難しい隅々まで行き渡らせる事もできる。

油冷エンジン

更にウォータージャケットが要らないので軽くコンパクトにできる。比熱の小ささは吹き付けて混ぜればいい。

そう考え油冷エンジンの開発が進んだわけです・・・が、なにせ初めて試み。

加えて従来モデルより20%も軽いバイクという目標があったので、既存のGSX750のエンジンをベースにボルト一本に至るまで贅肉と削ぎ落とす事からスタート。

最初は何処に問題が出るのかハッキリさせるためにも

「壊れるまで削る」

というコンセプトを掲げ、チーム総出で削る事に。

そうして完成した油冷一号機を全開100時間の耐久試験に掛けたところ・・・なんと壊れなかった。

SACS

エンジン担当だった桐生さんが

「すいません・・・壊れませんでした。」

と申し訳なさそうに報告してきたんだとか。

GSX-R750フレーム

計算では壊れるハズだったのに何故壊れなかったのか横内さんが調べた所、答えはJIS規格にありました。

鋼材強度を示すJIS規格値は最低値であって、鋼材メーカーがスズキに納入していたものはマージンを取ってそれよりも高い数値だったんです。

これが分かった事で正確な数値を元にした軽量化が大きく捗り、乾燥重量179kgという驚異的な軽さに繋がったというわけ。

初代GSX-R750R

「耐久性は大丈夫なのか」

と思われる方が居るかも知れませんが全く問題なし。

何故そう言い切れるのかと言うと、このGSX-R750はデビューと同時にル・マン24時間耐久レースで優勝したからです。

GSX-R750Rル・マン

ヨシムラとのタッグによるワンツーフィニッシュ。

向こうの人の方が忘れられないというのはこれもあったから。

日本ではあまりメジャーではない耐久レースですが、向こうの人にとってはただのレースではなく祭典みたいなもの。

だからデビュー&デビュートゥウィンでW衝撃なんです。

これはそんなル・マン優勝を記念して発売されたGSX-R750R。

GSX-R750R

市販車初の乾式クラッチ、シングルシート、タンク別体式リアショックなど豪華装備モデルであり、初の100万円超え国産車(税別105万円)でもあります。

“速いけど重い”というナナハンの常識を覆したGSX-R750。

『軽い・速い・壊れない』

と三拍子揃っていたためレース界では

「GSX-R750じゃないと勝てない」

という状況までに。

GSX-R750HB

そして世界中のレース場で活躍した事から、前代未聞だったアルミフレームの製造が追い付かない事態にまで陥りました。

その反響を誰よりも喜んだのはHY戦争で大赤字だったスズキ二輪の再興を任された企画責任者の横内さん・・・。GSX-R750の成功について上から呼び出され褒められると思って行ったら

1985gsx-r750カタログ写真

「なんでこんな凝ったものを造ったんだ」

と怒られたんだそう。

これが今も世界中に根強い人気があるGSX-R750の始まりになります。

主要諸元
全長/幅/高 2110/745/1205mm
{2120/745/1215mm※86年以降モデル}
シート高 765mm
車軸距離 1430mm
{1455mm}
車体重量 179kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 749cc
最高出力 77ps/9500rpm
[107ps/10500rpm]
最高トルク 6.4kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-18(58H)
後140/70-18(66H)
<後150/70-18※87年モデル>
バッテリー FB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.0L
交換時3.6L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前14|後42
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 780,000円(税別)
※[]内はEU仕様
系譜図
85 1985年
GSX-R750
(F/G/H)
88 1988年
GSX-R750
(J/K/RK)
90 1990年
GSX-R750
(L/M)
92 1992年
GSX-R750
(WN/WP/SPR)
96 1996年
GSX-R750
(T/V)
98 1998年
GSX-R750
(W)
00 2000年
GSX-R750
(Y)
04 2004年
GSX-R750
(K4/K5)
06 2006年
GSX-R750
(K6/K7)
08 2008年
GSX-R750
(K8/K9/L0)
11 2011年
GSX-R750
(L1~)

GSX-S1000GT(EK1AA) -since 2022-

2022GSX-S1000GT

「GT Riding Pleasure Personified」

GSX-S1000より遅れること半年後となる2022年2月より発売となったGSX-S1000GT/EK1AA型。

先に出てたGSX-S1000をベースにしつつも

・空力を元にデザインされた新設計のフルフェアリング
・ハンドルをラバーマウント化すると共に幅+22mm&手前に14mm
・積載を考慮した専用設計シートフレーム
・メイン及びタンデムシートの肉厚化
・クルーズコントロール(30~180km/h)
・6.5インチTFTフルカラーメーター
・メーター横に充電用USBソケット(Type-A)
・ETC2.0の標準装備
・スマホ連動アプリSUZUKI mySPIN(電話/地図/音楽/カレンダー)
・ヘルメットホルダー(タンデムシート下)
・GSX-S1000に対して+15万円
・サイドケースを始めとした数々のオプション

などツアラー色を強めたモデルとなっています。

2022GSX-S1000GTオプション

しかし一方でデザインに関してはスーパースポーツも顔負けなほど超攻撃的なルックスに大変貌。

しかも、例えばサイドカウルの張り出し部分は足への風を避けるためなど、単に見た目だけの造形ではなく風洞をしっかり考えられた機能美だったりします。

2022GSX-S1000GTデザイン

加えて嬉しいのが、グランドツアラー化に伴うオプションパーツの充実。

ハイスクリーンやサイドケースはもちろんのこと、タンクバックやプロテクション、エンジンガードやスライダーなどスズキとしては珍しく需要があるアクセサリーを純正で用意しています。

2022GSX-S1000GTオプション

チーフエンジニアの安井さんが

「真のグランドツアラーを目指した」

と仰っている通り、GSX-S1000GTは安心感がかなりある。

例えばライダーの身体的&精神的負担となる要素を可能な限り減らすため

・ハンドルマウントやステップにラバーを装着
・ポジションを更にアップライト化
・電スロによる完全制御

などの改良が各所に見て取れるんですが、一番体感できる違いは比較的スリムでありながらライダーを包み込むよう車体になっている事。

2022GSX-S1000GTオプション

前のりでイケイケの無印と決定的に違う部分はここで、ズシンと車体に鎮座する、まるでBandit1250Fを彷彿とさせるような包容力を持っている。

「リラックスして走れるGSX-R1000」

という感じでしょうか。

2022GSX-S1000GTオプション

昔ブイブイ言わせていたリターンライダーにドンピシャなのではと個人的には思います。

もちろんAモードで回せばGSX-Rが顔を出すし 、店頭でエンジンを掛けてみただけで思わずハンコを押したくなるほどの高音質な給排気サウンドも健在ですけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2140/825/1215mm
シート高 810mm
車軸距離 1460mm
車体重量 226kg(装)
燃料消費率 16.6km/L
※WMTCモード値
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 150ps/11000rpm
最高トルク 10.7kg-m/9250rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,450,000円(税別)
系譜図
GSX-S1000 2015年
GSX-S1000
(GT79A/GT79B)
GSX-S1000F 2015年
GSX-S1000F
(GT79A/GT79B)
2001GSX-S1000 2021年
GSX-S1000
(EK1AA)
GSX-S1000gt 2022年
GSX-S1000GT
(EK1AA)

【関連車種】
VTR1000の系譜FZ1/FAZERの系譜Z1000/Ninja1000の系譜

GSX-S1000(EK1AA) -since 2021-

2021GSX-S1000

「The Beauty of Naked Aggression」

2021年8月に初のフルモデルチェンジを果たし二代目となったGSX-S1000/EK1AA型。

最初に変更点を上げると

・デザインの刷新
・エンジン出力の見直し(EURO5対応)
・ハンドルを23mm広く20mm手前に変更
・新型液晶メーター
・電子制御スロットル
・トラクションコントロールを3段階から5段階へ
・3段階のライディングモード(出力モード)
・双方向クイックシフター
・新型アシストスリッパ―クラッチ

などなどとなっています。

一番目につくのはやはりデザインで、大変貌を遂げました。

フロントフェイス

ヘッドライトはモノフォーカス(小型プロジェクター)式LEDを縦に並べた無機質デザインへと変更。サイドシュラウドもダウンフォースを稼ぐウイングレットを備えています。

ネイキッドにウイングレットなんて要らないだろうとツッコミたくなりますが、元がGSX-R1000と考えれば不思議でもない。ただ恐らくこれの一番の狙いはデザイン。

デザイナーの村上さんいわく

「戦闘機がモチーフ」

との事で、その演出の意味も兼ねているんだと思われます。

GSX-S1000デザイン

ここまでゴリゴリな無機質デザインになったのも納得ですね。

ただそれと同じくらい注視しないといけないのが中身というか性格。具体的にいうと電子制御スロットルです。

電子制御

今さら説明するまでもない話ですが、ライダーがスロットルを捻るとワイヤーが直接スロットルバルブを開く機械式から、捻った量を電気信号に変えてECUに送り、演算してモーターが代わりに開ける電子式なのが電子制御スロットル通称電スロ。

燃料噴射装置(キャブからFI)に次いで、遂にスロットルまで完全制御化に置くという技術革新。

「ライダーとマシンのアクセルを1:1にしない事が可能」

というメリットがあります・・・これ一見すると悪い事のように思えるけどそうじゃない。

一番わかりやすいのが低速域でのシーン。アクセルを一旦閉じてエンジンが低回転になった時にライダーがグイっとアクセルを捻ると、エンジンの吸入が弱いので上手く吸えず重点効率が落ちてしまうモタツキのような問題(オーバーベンチュリ)が起こってしまう。

更にパワーが出ないからと増すようにアクセルを捻ってしまうと、遅れて想定以上のパワーが出てしまい置いて行かれる感覚、俗にいうドン付きが起こる。

これを回避する方法としては

・アクセルを握りこむよう丁寧に早めに開ける

・アクセルを完全には閉じない(フューエルカットを防ぐ)

等の方法があるんですが、頭では分かっていても実行するのは相当上手い人じゃないとなかなか難しい。

エンジン性能曲線

これを電子制御スロットルがカバー(トルクマネジメント)してくれるというわけ。

この恩恵は乗れば一発で分かります。ストリート走行において最も大事である低中速が恐ろしいほどスムーズになっているから。

GSX-S1000リア

ただ電スロ化によるメリットはもう一つあります。それは幅広いエンジン性能の演出。

俗にいうパワーモード切替なんですが、それまでFIやセカンダリスロットルバルブなどによる制御でやっていた事が、メインスロットルバルブでも出来るようになるので幅が物凄く広くなる。

じゃあGSX-S1000/EK1AA型がどうなったかというと、まずAモードは先代と同じく、本当にGSX-R1000(K5)を剥いただけの正真正銘ストリートファイターなハッチャ系。

Bモードはそれを少し穏やかにしている特性。とはいえこれでも十二分に首を持っていかれる。

出力モード

そしてそれを更に穏やかにしたCモード・・・これが目から鱗というか、一番の狙いだったんじゃないかと思うほどの要素。というのも、このCモードはパワーカーブを見てもらうと分かる通り直線的で順当なリッタースポーツバイク的な特性になっている。

何度も言いますがGSX-S1000はGSX-R1000のエンジンがベースなので、パワーバンドに差し掛かった瞬間、2段ロケットのようなえげつない加速をする。

これこそが初代で言われた

『GSX-R1000の牙』

なんですが、そんな特性だから豹が描かれるのも納得な野性味あふれる凶暴性があった。それが今回、先代同様に豹モードはAモードに据え置きつつ、ルーズさは受け入れてくれるCモード、例えるなら野良猫モードが加わったおかげでストリートにおける懐の広さが大きくなった。

The Beauty of Naked Aggression

出力モード切り替え機能自体は珍しくもなんともないんですが、GSX-S1000はあまりにもAモードが牙むき出しだからこそCモードの落差というか高低差が際立っている。

もしかしたら2022年に生産終了となったGSX-S750の受け皿という狙いもあったのかも知れないですね。正直日本のストリートで乗るならS750の方が向いていると思うのですが、やはり心情的な事から試乗ではS1000の方が圧倒的に人気でした。そりゃ誰だって使う使わない関係なく、どうせ乗るなら最速級に乗りたいのが心情というもの。

今回のモデルチェンジは電子制御スロットルと出力モードによって、そこを大きくカバーしてある。

「150馬力の最速級をストリートでストレスなく乗りたい。」

というワガママに最大限応えたモデルチェンジかと。

カタログ写真

ただ一つ難点として、メーターが暗くて見えにくいという問題がありますが、これはきっと

「メーターなんて見るな。本能のままに走れ。」

というスズキからのメッセージではなかろうか。

主要諸元
全長/幅/高 2115/810/1080mm
シート高 810mm
車軸距離 1460mm
車体重量 214kg(装)
燃料消費率 16.6km/L
※WMTCモード値
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 150ps/11000rpm
最高トルク 10.7kg-m/9250rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,300,000円(税別)
系譜図
GSX-S1000 2015年
GSX-S1000
(GT79A/GT79B)
GSX-S1000F 2015年
GSX-S1000F
(GT79A/GT79B)
2001GSX-S1000 2021年
GSX-S1000
(EK1AA)
GSX-S1000gt 2022年
GSX-S1000GT
(EK1AA)

GSX-S1000F(GT79A/GT79B) -since 2015-

GSX-S1000F/GT79A

「BEYOND THE SPORTBIKE」

GSX-S1000のフルカウルバージョンとなるGSX-S1000F/GT79A型。

サスペンションの減衰を少し強めている事とミラー以外はGSX-S1000とほぼ同じになります。

S1000Fデザイン

海外ではネイキッド版であるGSX-S1000が人気な一方、日本ではこのGSX-S1000Fの方が人気との事。

欧州ではストリートファイターとして評価され、日本ではハイスピードツアラーとして評価している面が強いんでしょうが、ただこれがちょっと難しい所というかGSX-S1000Fの誤解されがちな所でもある。

GSX-S1000Fカタログ写真

よくGSX-S1000Fに対する意見というか残念ポイントとして

「積載能力が意外と無い」

「快適装備が乏しい」

という声がある。

V-STROMのような純正パニアケースやアクセサリー電源などがオプションでも用意さておらず、また後付けなどを考慮した造りでもない。この事を残念がる人が結構居るし

「100万ちょっとでコスパ良いんだから仕方ない」

と思ってるオーナーも多いかと。

純正アクセサリー

これ結局なんでかっていうといま言ったように

「GSX-S1000Fをハイスピードツアラーとして見ているから」

にあるわけです・・・が、GSX-S1000Fはそういう狙いで造られたモデルじゃないという事をこの機会に是非とも知ってほしいと思います。

その気持ちは分かるんですがGSX-S1000Fというモデルは公式のPVを見れば分かる通りツアラーとして造ってない。

GSX-S1000FとGSX-R1000

「峠レベルならGSX-R1000を食える速さと楽しさを持ったフルカウルスポーツ」

というのがGSX-S1000Fなんです。

実際のところ企画段階でもキャリアやパニアをどうするかと相当議論されたそうなんですが結局は切り捨てる事にした。パニアなどを前提にするとシートフレームの補強が必須となり結果としてリアが重くなってスポーツ性が損なわれ、結果としてS1000でも話した通り

「GSXという牙が削がれる」

という事に繋がるからです。

GT79A

ヘッドライトのロー点灯が左側だけの片眼なのもそう。

ツアラーだったら少しでも明るい方が使い勝手がいいから両眼にする、でもGSX-S1000Fはツアラーじゃないから片眼。

1000Fヘッドライト

日本では片眼はあまり馴染みがなく好まれない傾向がありますが、欧州などでは片眼点灯は好まれるんですね。

何故なら欧州発祥であるバイクの祭典

『(耐久)レーサーっぽさ』

が出るから。

片眼点灯の耐久レーサー

これは消費電力の削減の狙いも少なからずあるかと・・・だってこのエンジンはギリギリまで詰めて開発されているGSX-R1000だから。

そう、何度も言いますがGSX-S1000Fには世界一速い市販車を決めるレースであるスーパーバイクにおいて2005年の王者に輝いたバイクのエンジンが載ってるんです。

何故それをツアラーと思うのか。

「中低速に振った145馬力でリニアな特性にしちゃったけど電子制御付けてるからセーフでしょ」

とかいうバイクがツアラーなわけはない。

S1000F各色

上の写真は公式のGSX-S1000Fのプロモーション写真なんですが何処か分かりますか・・・これアイリッシュ海に浮かぶマン島です。

あの公道をとんでもない速度で走って競う世界一有名なレースの聖地。なんでここを選んだのかといえばGSX-S1000Fはツアラーじゃないから。

ここを選んだ理由もこういうストリートを速く楽しく走れるバイクという事を念頭に開発されたバイクという事をアピールするためにほかならない。

「このオートバイはフェイクじゃない」

これはチーフエンジニアの佐原さんの言葉。GSX-S1000Fはツアラーじゃないし、SSのデチューンモデルでもない。

BEYOND THE SPORTBIKE

『BEYOND THE SPORTBIKE』

公道においてSSより速く、そして楽しく走れるように造られたロードゴーイングスポーツなんです。

参考
スズキGSX-Sスペシャルコンテンツ各種|GSX-S完全ファイル(ヤエスメディアムック)

主要諸元
全長/幅/高 2115/795/1180mm
シート高 810mm
車軸距離 1460mm
車体重量 214kg(装)
燃料消費率 19.2km/L
[18.7km/L]
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 145ps/10000rpm
[148ps/10000rpm]
最高トルク 10.7kg-m/9500rpm
[10.9kg-m/9500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,080,000円(税別)
[1,098,000円(税別)]
※[]内は17以降(GT79B)

年次改良

2017年:スリッパークラッチ及び3馬力アップ(GT79B型)

2019年:スロットルケーブルガイドをKATANAと同じ物に変更

系譜図
GSX-S1000 2015年
GSX-S1000
(GT79A/GT79B)
GSX-S1000F 2015年
GSX-S1000F
(GT79A/GT79B)
2001GSX-S1000 2021年
GSX-S1000
(EK1AA)
GSX-S1000gt 2022年
GSX-S1000GT
(EK1AA)

GSX-S1000(GT79A/GT79B) -since 2015-

2015GSX-S1000

「The spirit of GSX-R Ready for street」

スズキが2015年に出したGSX-S1000/GT79A型。

最初に主な特徴をあげると

・直列四気筒エンジン

・988cc/145馬力

・3モード+OFF機能付きトラコン

・ABS及びbremboモノブロックキャリパー

・シート高810mm

・多機能フルLCDメーター

などなどで、一言で表すと

『GSX-R1000のストリートバージョン』

と言えるんですが、スズキにしては珍しくスペシャルサイトを作ったりメディア露出が多かったりした事からも分かる通り、これまでにない方向性に力を入れた力作モデル。

GSX-S1000コンセプトデザイン

ロングセラーになっているのも納得という話なんですが、そこら辺を少し解説しようと思います。

ベースとなっているのは2005年に登場した今もなお名車の呼び声高いGSX-R1000のK5型。

K5ネイキッド
内部

ただこうやって並べてみると分かる通りベースとなっているのはほぼエンジンだけで、スイングアームはGSX-R1000/L2のもの、そしてメインフレームはGSX-S1000専用に開発されています。

本当はメインフレームもGSX-R1000の物をそのまま使う予定だったものの、それでは剛性が高すぎてストリートには合わないということで新設計された経緯があります。

S1000デザインスケッチ

そして同時にここにちょっとしたドラマがある。

設計開発が終わりかけた時にデザイン担当の田村さんが

「どうしても納得出来ないからもう一度設計させて」

と本来ならもう修正不可能な土壇場でまた開発をやり直してるんです。何処に納得出来なかったのかというとエンジンを固定するエンジンハンガーと呼ばれる部分。

エンジンハンガー

写真のちょうど真ん中シリンダーブロックの後ろ側。

ここはエンジンとフレームの剛性を橋渡しする非常に重要な部分。だからここを変えるということはフレームやエンジンなどメンバーを全て見直す事になる。それでも作り直すと言い出し実際にやった。

なんでそんな事したのかっていうと

「もっと美しく仕上げたい」

という理由から。そうして作り直されたのがこの起伏あるものの陰影の流れをスムーズにしているエンジンハンガー。

GSX-S1000リアショット

GSX-S1000は外装デザインはもちろんこういった細かいところにまで余念のない意匠が凝らしてある。

それだけあって手掛けたデザイナーの田村さんも

「ここまで色々こだわってデザインさせてもらったのは初めて。凄く思い入れがあるバイクになった。」

との事。

GSX-S1000フロント

まあエンブレムの位置を見れば如何にデザインにこだわったかが分かりますよね。こんなところに付けるなんて早々許される事じゃない。

そしてこれがGSX-S1000がこれまでのモデルとは明らかに違うところ。

スズキのスポーツバイクというと一にも二にも先ず

『絶対的な速さありき』

が当たり前だった。でもGSX-S1000はそういう造りをしていないんです。

これは性能面でもそうで、このGSX-S1000は低中速を太らせるというありきたりなストリート向けの改良をしていない。

エモーショナルGSX-S1000

「どれだけエモーショナルに出来るか」

という事に重点を置いて開発されてる。

例えばストリート志向にする場合カムといってエンジンのバルブを動かす部品を中低速寄りな形状(カムプロフィール)を変更するのがベター。

カムプロフィール

そうやってパワーカーブを良い塩梅に持っていくんです・・・が、GSX-S1000は違った。

「どのカム形状が1番良い音を出すか」

という事を重点に置いて開発してる。カムを変えるということは管楽器でいうところの吹き方を変えること同義なので音色がコロコロ変わるからです。

絶対的な性能を引き出す事を第一にするのではなく音質を引き出すためにカムを変えるという前代未聞な開発。そうして造られたいわば

『高音質カム』

がこのGSX-S1000には積まれてる。ちなみにエキゾーストパイプやサイレンサーなども同様です。

「それでどういう音色を出すようになったのか」

って話ですが、これはエンジンを掛けた瞬間に誰でも分かります。

S1000壁紙

誇張なしで本当に、誰でも、乗るまでもなく分かる。

何故こんな事が出来たのかといえばそれはもちろんGSX-R1000という有り余るパワーを持つエンジンがベースだったから。多少パワーを落としてもストリートなら何の問題も無かったから可能だったという話。

「じゃあ性能は大したこと無いのか」

っていうと145馬力なのを見れば分かる通りそんなことはないのは勿論のこと、性能面でもエモーションにも様々な意匠が施されてる。

例えばGSX-S1000は低域から高域までフラットにトルクが出るようにセッティングされています。それだけ聞くと面白くないと思うかも知れませんが、これはつまり開けたら開けただけ遠慮なく(溜めがなく)スコーンとパワーが出る。徐々にパワーが出るプログレッシブ(二次曲線的)な特性じゃない。

アップライトなポジションのリッターで出だしからずっと捻っただけパワーが出続けるっていうのは言葉で言うのは簡単だけどなかなかクレイジー。

GSX-S1000

スズキがGSX-S1000をヒョウ(豹)に例えているのもここにあります。

元々はもう少しストリートでの使い勝手を考えて万人受けする出力特性にする予定だったものの、その試作機を乗ってみると全くもって楽しくなかった。

「GSX-R譲りの牙が削ぎ落とされている」

という事が分かり、万人受けするストリートファイターという路線を中止。

S1000牙

「GSX-Rの牙を感じ取れるストリートモデルにしよう」

となり、捻れば捻っただけリッター相応のパワーが出るエンジンと、そんな特性を積極的に活かしてアクセルワークでコントロールするハンドリングにした。

だからこれ人によっては落ち着きがないとかアクセルワークがシビアだとか感じるかもしれない。

開発された方々も

「GSX-S1000はベテランがメインターゲット、ビギナー向けにはGSX-S750を開発した。」

と正直に話しています。

つまり逆に言うとリッター慣れしているベテランライダーにはたまらない特性という事でもある。そんなもんだから社内のジムカーナ好きからも

「これはジムカーナ最速車だ」

とか絶賛されたそう。

これがGSX-S1000が豹と言える部分であり、これまでにない方向性に力を入れた力作といえる部分。

GSX-S1000/GT79B

『俊敏かつ可憐かつ獰猛なエモーショナルバイク』

というのがGSX-S1000というわけ。

そんなGSX-S1000はそんな特性と税別100万円ちょっとというコストパフォーマンスが世界中で評価され、2018年時点で世界累計3万台超とスズキとしては本当に久しぶりとなるロングセラービッグバイクになりました。

ちなみにモチーフになってるヒョウですが、古代ローマ時代では

「芳しい香りを放ち、吸ってしまったものを魅了する」

と言われていたんだそう・・・これも本当にGSX-S1000にピッタリですよね。

スズキGSX-S1000

ふらっと寄ったショップでGSX-S1000が出す雰囲気や音に魅了されてしまいハンコを押してしまった人は間違いなく多いかと。

参考
スズキGSX-Sスペシャルコンテンツ各種|GSX-S完全ファイル(ヤエスメディアムック)

主要諸元
全長/幅/高 2115/795/1080mm
シート高 810mm
車軸距離 1460mm
車体重量 209kg(装)
燃料消費率 19.2km/L
[18.7km/L]
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 145ps/10000rpm
[148ps/10000rpm]
最高トルク 10.7kg-m/9500rpm
[10.9kg-m/9500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 1,033,000円(税別)
[1,048,000円(税別)]
※[]内は18以降(GT79B)

年次改良

2017年:スリッパークラッチ及び3馬力アップ(GT79B型)

2019年:スロットルケーブルガイドをKATANAと同じ物に変更

系譜図
GSX-S1000 2015年
GSX-S1000
(GT79A/GT79B)
GSX-S1000F 2015年
GSX-S1000F
(GT79A/GT79B)
2001GSX-S1000 2021年
GSX-S1000
(EK1AA)
GSX-S1000gt 2022年
GSX-S1000GT
(EK1AA)

GSX-R125(DL33B)-since 2018-

GSX-R125/DL33B

「A GSX-R to Revolutionize The Lightweight Class」

GSX-S125から約三ヶ月遅れで登場したGSX-R125/DL33B型。

基本的な部分はGSX-S125/DL32B型のページで紹介した内容とほぼ同じで、相違点として上げられる要素はほぼ2つだけなのです・・・が、このたった2つの要素がSとRを大きく分ける事になっています。

GSX-R125とGSX-S125

一つは見て分かる通りフルカウルになっている事で、S125の方がサイドを張り出すような形にしてボリューム感を出しているのに対し、R125は絞り込んでコンパクトに見える形に。

これはR125の場合、前方投影面積を削ることで少しでも空気抵抗係数を減らし加速や最高速を上げる狙いのため。

GSX-R125の諸元

そしてもう一つはハンドル。

セパレートハンドル化され、ポジションが前傾姿勢のものになっています。跨ってみて結構前傾している事に驚いた人も多いかと思います。

GSX-R125とGSX-S125のポジション

これもライダーを寝かせて前方投影面積を減らすことと、荷重移動を積極的に行いやすくするため。分かりやすく言うと前輪に全てを託して高速コーナーに突っ込んでいくため。

これらの事からも分かる通りGSX-S125が街乗りからワインディングまでのスポーツに焦点を当てているのに対し、GSX-R125はワインディングからサーキットなど高速スポーツに焦点を当てています。

GSX-R125の販促

だからというか余計な話ですが、もしも初バイクやメインバイクとしてGSX-S125かGSX-R125かで悩んでいるなら間違いなくS125をオススメします。理由はS125の方がポジションの自由度が高く、街乗りからツーリングはもちろんミニサーキットまでイケる汎用性能を持っているから。

一方でR125は街乗りならまだしもツーリングなどでポジションのキツさから苦行に感じる可能性が高い・・・でもそれでこそGSX-R125。

サーキット性能

GSX-R125はスーパースポーツだからです。だからこそ、こういう短所があって当たり前。

このモデルはGSX-S125FでもないしGSX125Rでもない。

『GSX-R125』

なんです。

そしてそう名乗るに相応しい正真正銘の125トップパフォーマーになっている。

その証拠にGSX-R125の短所を短所と思わない人たち、スポーツバイクを既に何台も乗り継いでいる人たちや、いわゆるサーキット沼にハマった人たちからはベース車のベストバイとして非常に人気が出ている。

ちなみにGSX-R125の商品企画を担当された中場さんいわくGSX-R125は1991年から発売された125レーサーレプリカである

『RG125Γの再来 ※熱烈スズキGSX-Rより』

をイメージしてこのモデルを企画したとの事。とてつもない軽さと、上まで回すことで初めて無類の速さを誇る辺り、言われてみれば確かに・・・。

ただ個人的にGSX-R125が一番スーパースポーツだなと感じるのは、まだそこまでではないものの、現在進行系で深みに足を踏み入れてしまった人たちの反応だったりします。

GSX-R125のカタログ

「前傾キツいけどカッコいいから許せちゃう」

という反応。これぞ正にスズキが誇るスーパースポーツGSX-Rである証左かと。

主要諸元
全長/幅/高 2000/700/1070mm
シート高 785mm
車軸距離 1300mm
車体重量 134kg(装)
燃料消費率 44.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 15ps/10000rpm
最高トルク 1.1kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/80-17(46S)
後130/70-17(62S)
バッテリー FTZ5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EDX-9S
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L
スプロケ 前14|後45
チェーン サイズ428|リンク122
車体価格 358,000円(税別)
系譜図
GSX-S125 2017年
GSX-S125
(DL32B)
GSX-R125 2018年
GSX-R125
(DL33B)