SR400(RH03J)-since 2010-

RH03J

「日本の、スタンダードです。」

2008年に実施された厳しい排ガス規制で

『空冷×単気筒×400』

という三大要素を全て兼ね備えていた為にカタログ落ちとなってしまったものの、およそ2年の歳月の後に復活した六代目SR400のRH03J型。

SR400wallpaper

ここでも型式は変わらず3HTのままで3HTRから3HTXまでと、2017年モデルから新コードのB0Hとなっています。

大きな変更点としてはキャブからFI(電子制御燃料噴射装置)になった事。

それだけかと思うかも知れませんが、これSRにとっては死活問題。

SR400フューエルポンプ

FIということは燃料を加圧する必要があるので、拳ほどの大きさもある燃料ポンプが必要になる。

スリムなSRにとってこれは非常に重荷。これをもしそのまま燃料タンクに突っ込むとタンクが盛り上がってしまうから。

SR400インジェクション

だからSRはわざわざ電装系の配置を全て見直し、なんとかサイドカバー部にスペースを設けてそこに押し込むことでサイドカバーを左右10mm高くするだけで済ませてある。

排ガスをクリーンにするために欠かせないマフラーもそう。このモデルから触媒とO2センサーを付けたものになり重量が変わりました。

SR400

だから取り付け位置を変える必要が生まれた。

でも単純に変えただけでは”変わってしまう”のでガードを付けたりしてそれを感じさせない様にしている。

しかしここまで電子制御化してもなおキックだけという潔さ。セルも検討したそうですが結局キックだけ。現存する市販車でキックだけってもうSR400だけじゃないかな。

今や伝統化して『儀式』と呼ばれるまでになりました。

キックスタート

ちなみにSRが欲しいけどキックが不安だと思ってる人に断っておきますが、SR400はデコンプ(キックを軽くするレバー)とキックインジケーター(キック位置の目印)が付いているのでかなり簡単です。

慣れると座ったまま3秒で掛けられるくらい簡単。

話を戻しますが、2年もの月日が空いてしまったのはこれら排ガス規制による変更だけでなく、製造ラインの問題も大きく関わっています。

というのも2008年規制で多くのモデルが販売不可になってしまった事を機にヤマハは製造ラインを集約したんですが、SRをそのラインに入れることが出来なかった。

これが何故かというと簡単な話で

B0H

「ハンドメイド過ぎるから」

です。

例えば今どき珍しいクリア塗装のクランクケースは三工程も掛けて手で磨く必要がある。スペシャルエディションになると八工程にもなる。

クランクは組立式だし、マフラーも仕上げは手溶接。そして何より組立に必要な治具もほとんどが昔からの古い専用品。

もっと細かい事を言うと、プロジェクトリーダーの山本さんが悩んだというのがピボットに付いているグリスニップルという今どき考えられない部品。

グリースニップル

グリスニップルというのはグリス注入口が付いたボルトの事なんですが

「これ要るんだろうか・・・」

と悩まれたそう。

これは錆びによる固着(ピボットシャフトが抜けなくなるのを)防止するのが狙いで1983年モデルから付けられたもの。

あくまでも当時の話であって品質が上がった今となっては無くても大丈夫なんでしょうが、悩んだ結果

「変える必要がないならそのままにしよう」

という事で結局そのまま。

35周年

こういう細かいながらも変えていない部分が非常に多いから今どきのバイクと一緒に造るのが難しかった。

それが仇となってしまったわけですが、じゃあどうやったのかというとゴルフカートの製造ラインにねじ込んだんです。

ヤマハのゴルフカート

幸運な事にゴルフカートが4st化に伴い製造ラインが見直されていた。そこで全く部署が違うにも関わらず何とかお願いしてSRも一緒に造ってもらえるように根回し。

復活に少し時間が掛かってしまったのはこれが理由。

最後に。

系譜を読まれて初めてSRが意外と手を加えられている事を知った人も多いかと思います。

ただそう思うのも当たり前な話。

1978と2018

『変えずに変える』

SRはこの難題に四半世紀以上も向き合い、どんなに厳しい時代になろうと逃げずに磨き上げて来たからです。

SINCE1978

今やその歴史の長さから

『ヤマハを体現したバイク』

と言われるまでになったわけですが・・・なんかちょっと安直で伝わり難いですよね。

それより

2018SR400

『ヤマハのクラフトマンシップを体現したバイク』

と言ったほうがしっくり来るかと。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1110mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 174kg(装)
燃料消費率 41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
最高出力 26ps/6500rpm
最高トルク 2.9kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/100-18(54S)
後110/90-18(61S)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6ES
または
W20EPR
推奨オイル ヤマハルーブ
プレミアム/スポーツ/ベーシック
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前19|後56
チェーン サイズ428|リンク130
車体価格 550,000円(税別)
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

SR400(RH01J) -since 2001-

RH01J

「シンプルであること」

五代目SR400ことRH01J型。このRH01Jというのは車検証やフレームに刻印されている車体型式で、これまで言っていた2H6や1JRといったモデルコードではありません。

というのも何故かこのモデルではモデルコードが変わらず先代同様3HTのままだから。(正確には3HTC~3HTS型)

主な変更点としてはキャブレターのセッティングの変更とエアインジェクションによる排ガス規制対応、更にドラムだったブレーキは再びディスクになりました。

初代とは反対の右側に付いてるのが特徴です。

RH01Jカタログ写真

2003年にはイモビアラーム、スロットルポジションセンサー、マフラー構造の変更などのマイナーチェンジが入っています。

少し残念な事にSR400は続いたものの、SR500は21世紀を迎えること無くカタログ落ちとなりました。

SR500最終モデル

ここでちょっとSR500の話をすると、排気量から見ても分かる通り日本の免許制度が変わった後は主に輸出向けとして展開していました。

最初は北米に向けて出していたんですが・・・

「なんだこのバイクは」

と全く理解されず数年でカタログ落ち。

しかしその一方で欧州では保険料の兼ね合いもあり

「気軽に楽しめるファンバイクだ」

として好評でした。

SR500ドイツ

中でもドイツで非常に人気を呼び、なんと意外な事に一時期は日本より売れていました。

ただその欧州向けも1999年モデルを最後に生産終了。

後にSR400が輸出されるようになるんですが、向こうの人からしたら

「なんで400なんだ」

と思っているでしょうね。

あともう一つ話しておかないといけない事があります・・・

SRミヤビ

SRは排ガス規制強化によりこのモデルで一度生産終了を迎える事になるのですが、実はこのRH01J型が誕生する少し前の1995年に一度生産終了しているんです。

理由はエンジンの金型が老朽化して使えなくなってしまったから。

SRのエンジン

もう四半世紀以上に渡って造り続けた故の問題。

金型というのは用意するのにはお金が、所有するのには税金が掛かる物。ロングセラー車の生産終了や部品欠品が相次ぐのはこれが理由です。

でもヤマハはわざわざ新たに金型を用意した・・・それもダメになった四半世紀前の金型と同じものを。

SR400三十周年

これはもう製造ではなくクラフトの域ですよね。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1105mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 168kg(装)
燃料消費率 48.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
最高出力 27ps/7000rpm
最高トルク 3.0kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/100-18(54S)
後110/90-18(61S)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6ES
または
W20EPR
推奨オイル ヤマハ純正オイル
エフェロSJ/SG/SF
10W-40から20W-40まで
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前19|後56
チェーン サイズ428|リンク130
車体価格 450,000円(税別)
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

SR400(1JR/3HT)SR500(1JN/3GW)-since 1985-

四代目SR400

「深化。」

SR史上最大のヒットとなった四代目のSR400/1JRとSR500/1JN型。

主な変更としては、エンジンが再び見直されガスケットのメタル化とカムチェーンのアルミ化でオイルにじみを改善。

1JR

ロッカーアームに焼結チップを採用し、カムにもバーコリューブライトという表面処理をすることで耐摩耗性を更に向上。

ガソリンタンクも2Lアップの14Lとなり、ポリッシュからアルマイト加工の中空アルミリムの前後18インチに変更、サイドスタンドも鍛造になり信頼性と質感を向上。

しかし・・・一番は何と言ってもディスクブレーキからドラムブレーキへの変更ですね。

1JRカタログ写真

おまけにフロントフォークブーツを装着し、ポジションもバックステップ&ハンドル化で前傾気味に。

もはや回帰を通り越して退化と呼べるような変更で一気にトラディショナル感溢れるモデルへとなりました。

ドラム化しても制動距離がディスク時代から変わっていない事にメーカーの意地を感じますが、こうなった事には賛否両論ありました。

1984SR400

今と違ってSRを軽快な街乗りトラッカーとして評価している人たちや、自分たちでトラディショナルにしたいと考えていた人たちが居たからです。

しかし、こうなってほしいと願ったのもまた同じSRユーザー。

1992SR400スペシャルエディション

その声に応えた形となったこの1JR/1JN型は順調に販売台数を増やしていきました。

その人気は目を見張るものがあったため、遂に競合車が現れる様になりトラディショナル(カスタム)ブームが到来。

SR500/1JN

このトラディショナル(カスタム)ブームは本当にSRを救ったと言えるでしょう。

SRはもともとSRXにバトンタッチして終わる予定だったものの、社内から残すべきだという声が多かった事から存続する事になった経緯があるからです。

じゃあそんなブームが訪れた中でSRが生き抜くために何をやったかというと

【1988年(3HT1/3GW1)】

・カムを4度遅らせてマイルドに

・キャブを強制開閉式から負圧式に

・エアクリーナーボックスを拡大

・チェーンを428へダウンし騒音規制に対応

【1991年(3HT3/3GW3)】

・タンクを多重クリアのミラクリエイト塗装に

【1993年(3HT5/3GW4)】

・MFバッテリー化

・CDIや点火コイルの改良

【1994年(3HT6/3GW5)】

・セミエアフォーク廃止

・タンデムベルト廃止

・ACジェネレーターの改良

などなどブームが来ているジャンルとは思えないほどの小変更だけ。それでも1996年には約9000台とSRとしては最大の販売台数を記録。

SR20周年

時代が来よう来まいと、売れようと売れまいとSRはずっとSRのまま。

ヤマハのSRに対するぶれない姿勢はこのモデルで固まったと言えるんじゃないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2085/735/1080mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 153kg(乾)
[153kg(乾)]
燃料消費率 47.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
『12.0L』
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
[499cc]
最高出力 27ps/7000rpm
[32ps/6500rpm]
最高トルク 3.0kg-m/6500rpm
[3.7km-m/5500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50S18
後4.00S18
バッテリー YB7L-B
<GT4B-5>
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6ES
{BPR6ES}
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前16|後47
{前19|後56}
チェーン サイズ530|リンク106
{サイズ428|リンク130}
車体価格 399,000円(税別)
[430,000円(税別)]
※スペックは1JR
※[]内はSR500(1JN)
※{}内は88年以降
※<>内は93以降
※『』内は96以降
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

SR400/SP(34F/34E)SR500/SP(34A/33Y)-since 1983-

三代目SR400

「伝統のビッグシングル」

スポークホイールモデルとキャストホイールモデルを併売する形となった三代目のSR400/SP(34F/34E)とSR500/SP(34A/33Y)型。

併売と言ってもキャストホイールのSPモデルは初年度だけ(一ロッドだけ)で生産終了。

どんだけ人気無いんだよって話ですが、それよりもSRとしては初めて大きく手が加えられたモデルで

・フロントフォークのセミエア化

・シールチェーン

・ハロゲンヘッドライト

・ラバーマウントウィンカー

・オイルライン/フローの見直し

・ピストンとヘッドバルブの変更

などの改良。

SR400/34F

そんな中でも大きいのがオイルラインの見直しで、それまでインテーク側からだったオイルをエキゾースト側へ優先的に送るオイルパイプを新造し偏摩耗対策を強化。

合わせてピストンリングやカムチェーン等にも手が加えられ、大幅に信頼性が向上しました。

そしてもう一つ紹介しておかないといけないのが7周年を記念して出された限定カラーのSR400LTDというモデル。

7周年記念モデル

ギター等によく使われるサンバースト塗装(グラデーションぼかし)が施されているのが特徴。

このれが非常に好評でこの後も

「SRの限定カラーと言えばこれ」

と言われる程の代名詞カラーになりました。

「そんな人気カラーなら常備させればいいのに」

と思うかも知れませんが、これが限定であることには意味があるんです。

SR400S

このサンバースト塗装というのは職人がマスキングから塗装まで一つ一つ手作業で仕上げているから大量に造ることが出来ない。

だから限定カラーというわけ。限定のための限定ではなく、数を出せないから限定なんです。

SR400LTD

ちなみにSR400として初めて音叉マークを付けたモデルでもあるんですが、実はこれヤマハのバイク全体で見ても1965年のYA-6(旧音叉マーク)以来の事。

今でこそ珍しくない音叉マークですが、タンクエンブレムとして復活させたのはSRだったりします。

ただし実はSRはこの頃もう売れ行きがあまりよろしくなかったようで、後継の話が進んでいました・・・そうして開発されたのがSRXというモデル。

「決して多くない人たちへSRX-6(1JK~)SRX-4(1JL~)|系譜の外側」

SRXについては上記のページをどうぞ。

主要諸元
全長/幅/高 2105/750/1110mm
[2105/845/1095mm]
シート高 810mm
車軸距離 1410mm
車体重量 158kg(乾)
[161kg(乾) ]
燃料消費率 44.0km/L
[45.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
[499cc]
最高出力 27ps/7000rpm
[32ps/6500rpm]
最高トルク 3.0kg-m/6500rpm
[3.7km-m/5500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50S19
後4.00S18
[前3.25S19
後4.00S18]
バッテリー YB7L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前16|後47
チェーン サイズ530|リンク106
車体価格 310,000円(税別)
[365,000円(税別)]
※[]内はSP
※SR500は+31,000円
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

SR400/SP(3X7/3X6)SR500SP(3X4)-since 1979-

SR400SP

「逞しきビッグシングル」

SRをよく知らない人でもひと目で違いがわかるキャストホイールが特徴の二代目SR400SP/3X6とSR500SP/3X4型。

SPというのはキャストホイール仕様という意味なんですが、これまでキャストホイールはカウルと同じく国内では不認可でした。

ヤマハキャストホイール

それが認可されるようになった事で各メーカーともキャストホイールを付加価値として付けるようになり、またそれが流行っていたわけです。

だからヤマハもわざわざSPなんて記号を設けてアピールし、SRもその一環でキャストホイール&ロードタイヤ化で時流に乗った・・・んですが、これが思わぬ不評を買いました。

SR400キャストホイール

「なんて事をしてくれたんだ」

とイメージが変わってしまった事を残念がられ販売台数は約1500台まで減少。

+4kgという重量増による軽快感の損失も痛手でした。

コレについては社内からも疑問視する声が出たようで、三年後の82年に『スポークホイール&キャラメルタイヤ』という先祖返りしたSR400/3X7型(400のみ)を限定発売。

3X7

待ってましたと言わんばかりの人気でキャストホイールあっさりと抜く3200台を販売。

もうこの頃から今と変わらない立ち位置だったわけですね。

しかし実はこれ、この失敗があったからこそ今のSRがあると言っても過言じゃないなんです。

SR500SP

キャストホイール化によって

「ダサくなってしまった」

とか

「先代が恋しい」

とか言われる様になった事から

「ダサいSRを自分でカッコよくしよう」

という流れが生まれ、スポークホイールを筆頭に初代のようにするカスタムパーツ、BSAに近づけるカスタムパーツ、スクランブラースタイルにするカスタムパーツ。

数々のカスタムメーカーがイメージが変わってしまったSRに困り果てている人をターゲットにした。

SR400SPカタログ写真

結果としてカスタム文化がまだそれほどでもなかった時代に『弄れるバイク』という新しさで評判を呼びました。

カスタムブームの始まり、そして今も続くSRの武器の一つであるカスタムの豊富さはここ。

『流行に乗ってしまった失敗』

が全ての始まりなんです。

主要諸元
全長/幅/高 2100/775/1130mm
[2105/845/1095mm]
シート高 805mm
車軸距離 1410mm
車体重量 161kg(乾)
燃料消費率 44.0km/L
[45.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
[499cc]
最高出力 27ps/7000rpm
[32ps/6500rpm]
最高トルク 3.0kg-m/6500rpm
[3.7km-m/5500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25S19-4PR
後4.00S18-4PR
バッテリー YB7L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前16|後47
チェーン サイズ530|リンク106
車体価格 330,000円(税別)
[3,000円(税別)]
※[]内はSR500SP
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

SR400(2H6)SR500(2J3)-since 1978-

SR400

「開発コード583」

XT500の登場から約2年後に登場したXT500のオンロード版『Single Roadsports』として登場した初代SR400/2H6型とSR500/2J3型。

SRは元々の企画段階ではBSAのゴールドスターを参考にスクランブラー~トラッカーとして登場する方針でした。

SR400

我々が思うSRとはだいぶ離れている印象を受けると思いますが、これはXT500同様に一番売らないといけない主要市場だったアメリカから

「XT500の(マッスルな)ダートトラッカーを造って」

という要望があったから。アメリカの人気レースであるフラットトラックでXT500のエンジンを積んだマシンが活躍したから背景があったからだと思います。

しかし更に転機となったのが1977年。

日本のバイク誌であるモトライダーが4月号にて

ロードボンバー

「ヤマハからロードボンバーが発売」

というエイプリルフールネタをやったんです。

これは本当はXT500のページでも紹介した通り鈴鹿六耐用に開発されていたレーサー。このマシンに一枚噛んでいたモトライダーがそれを隠して市販化という飛ばし記事みたいな事をやったわけです。

そしたらこれを真に受けてハートを射抜かれる人が続出し、バイク屋やヤマハ本社へロードボンバーに対する問い合わせや予約が殺到という想定外の反応に。

この反響の大きさを受けてヤマハはSRを更にオンロード寄りな形に軌道修正。

SR500エンジン

とはいうもののエンジンなどは基本的にXT500のまま

・吸気バルブの拡大

・冷却フィンの大型化

・フライホイールマスを12.5%増加

などの変更を加え、四点リジッドで振動を軽減させた新設計のオイルタンクインフレームに搭載。

SR400初代プレス写真

ちなみに日本とフランス向けだった400はストローク量を縮めることで399cc化・・・というか本当にそれだけで、キャブを覗けば500とほぼ一緒。

というのも400は法的にやむを得ず造った面が強いモデルだったから。しかしいざ造ってみるとショートストローク化による歯切れの良いレスポンスが好評っていう。

そのことが現れているのが500と400の相違点。初代モデルは色々と特徴があります。

初代SR400カラーリング

まず500はテールカウルが無く、400はテールカウルはあるけどある代わりにグラブバーが無い。

ポジションも500はアップライトハンドルなのに対し、400がコンチネンタルハンドル。

オジサマ向けの500なのに対して400はショートストロークで機敏な事からスポーツ寄りにされてる。

そんな発動場となったSRは、もともとXT500をオンロード仕様にする人がチラホラ居たことから400は約2000台、500も約1300台とそれなりに人気を呼びました。これも海外ではアメリカ向けに造ったけど、結局売れたのはドイツだったとか。

初代SR400

ただ経緯が経緯なだけに初期型はオンロードモデルなのにブロックタイヤなど立ち位置がまだハッキリしていなかった事もあり、わずか一年ほどですぐにモデルチェンジする事になりました。

まさかこのモデルが40年以上も続くモデルになるとはこの時は誰も思っていなかったでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2105/765/1135mm
[2105/845/1155mm]
シート高 810mm
車軸距離 1410mm
車体重量 158kg(乾)
燃料消費率 44.0km/L
[45.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
[499cc]
最高出力 27ps/7000rpm
[32ps/6500rpm]
最高トルク 3.0kg-m/6500rpm
[3.7km-m/5500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50S19
後4.00S18
バッテリー YB7L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前16|後47
チェーン サイズ530|リンク106
車体価格 310,000円(税別)
[350,000円(税別)]
※スペックは2HR
※[]内はSR500(2J3)
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

XT500(1E6) -since 1976-

1E6

「I’aventure」

SRを語る上で絶対に外すことが出来ないのが偉大なご先祖様であるXT500/1E6型。

このバイクが誕生したキッカケはUSヤマハから

「4stビッグシングルのオフロードが欲しい」

と言われた事が始まり。

これは当時アメリカで4stのスクランブラーをボアアップなどして楽しむ人たちが出始めていたから。そこを狙い撃ったのがXT500というわけ。

XT500カタログ写真

サラッと言いましたがどうしてスクランブラーが全盛だったのかといえば4stビッグオフ自体がまだ未知に近い時代だったから。

ましてヤマハは当時まだまだ2stがメインだったので、お手本となるバイクもなく右も左もわからない状況。そのため最初は4stナナハンTX750の部品を流用した単気筒450ccのトコトコ系なプロトタイプを開発しアメリカでテスト。

すると現地で物凄いダメ出しが来た・・・それもそのハズ、向こうの人が求めるのはもっとガンガン走れる4st版ビッグモトクロッサーだったからです。

エンジン設計の大城さんいわく、このダメ出しで開発チーム火がつき

「軽く、コンパクトで、高い耐久性を誇り、なおかつ美しい」

をコンセプトに掲げSC500(2st500モトクロッサー)をベースに再開発。

ビッグシングルXT500

「1グラム1円(1円のコストで1グラム削る)」

を合言葉に4stでネガとなる重さを改善し、最低地上高を稼ぐドライサンプかつフレームにオイルタンクの役割を持たせる画期的な『オイルタンクインフレーム』を新開発。

オイルタンクインフレーム

ちなみに車体担当だった大野さんはトヨタ2000GTにも携わった方で、エンジンの方でも500ccにまで拡大しつつ同様に2000GTで培ったヘッド技術を投入。

結果タイヤのブロックパターンを捩じ切ってしまう問題を起こすほどガンガンな物にパワーアップしました。

※ヤマハ:XT500開発者インタビューより

XT500リアビュー

更に凄いのはこれだけの性能をもたせつつカリフォルニアのモハーヴェ砂漠(35,000km2)を難なくはしりきれる耐久性も持たせたこと。

これはプロトタイプのダメ出しで火が付いた開発チームが自ら乗り込んで走り込むようになった際に耐久性の大事さを再確認させられたから。

その熱の入れっぷりは凄まじく、有名なのが始動を容易にするために備えたデコンプなどを含めた耐久性を検証するためにやった

『一万回のキックテスト』

何が何でも壊れないエンジンに仕上げたかった大城さんの発案で、一人100回をチーム内でローテーション。

XT500メカニズム

まさに体当たりといえる開発で造られたXT500は好評どころか歴史に名を残すほどの名車となったんですが、そうなった経緯も凄い。

ビッグシングルバイクが全盛だったのは1960年代で、XTが出た70年代後半は多気筒や2stがメインだった。

じゃあなんでこんな4stビッグシングルが売れたかというと、ポテンシャルの高さを見抜いた目の肥えたコアな人達が飛びついたから。

XT500北米

具体的に言うとレースをやっている様な人たち。

そういう人達にとってXT500やTT500(保安部品が付いていないコンペモデル)は4st特有の粘りと信頼性をもった最高のバイクだった。

だからアメリカではモトクロスやエンデューロはもちろん、畑違いなフラットトラック(オーバルダート)にまで持ち込んでくる人まで出た・・・これが全米を震撼する出来事を起こす事になります。

テキサスで行われたフラットダートレースにて、なんとハーレーワークスのVR750や王者ケニー・ロバーツのXS650改を抑え、リック・ホーキンスのTT500が勝利したんです。

TT500

ツインエンジンが当たり前だったフラットトラックでまさかの優勝。

「あのシングルエンジンは何だ」

と話題になり、XT500/TT500だと分かるとユーザーはもちろん王者ケニーまで乗り換えるほどに。

結果としてダートだけでなくモトクロスやバハ1000などあらゆるレースで使われるようになり、そして活躍する姿を目の当たりにした人達もXT500/TT500を買い求めアメリカはビッグシングルブームへと突入することになりました。

XT500

一方で欧州の方はどうかというと、こっちもレースが絡んでいる。

XT500/TT500はもともとアメリカ向けバイクで欧州では後回しでした。そんな中でファーストコンタクトとなったのがISDEという1975年末にイギリスで行われていた6日間にも及ぶエンデューロレース。このレースにアメリカ人ライダーがXT500(おそらく先行生産された200台)で参戦したことが始まり。

これを見たスウェーデンヤマハの代理店に勤めていた4st好きなモトクロスレーサーのハルマンとランディが

「なんだそのバイクは・・・レースが終わったら売ってくれ」

と直談判し買い取った後に自分たちでハスクバーナのフレームに積むなどチューニングし、モトクロッサー版XT500を開発。

それを日本のヤマハに見せて

「世界モトクロス選手権に参戦したらXT500の宣伝になる」

と直談判し、開発と資金調達の目処を立てて参戦。

HL500

そうして開発されたのがこの

『HL500(Hallman Lundin)』

というモデル。

※MXWORKSBIKE.COMより

レースでの様子

HL500は並み居る2st500ワークス勢に負けずポイントを獲得するなど大健闘をしたことで、クロスするように販売されたXT500がドイツを中心にヒット。

HL500の存在は向こうではかなり有名なようで、XT500をHL500風にするレプリカ的なカスタムが流行ったりもしました。

そんな欧州でさらなるヒットを呼ぶキッカケとなったのが有名なパリダカ。

XT500パリダカモデル

フランスヤマハがXT500SPL(TT500ベースのビッグタンク仕様)にて、1979年の第一回ダカールラリー(旧名オアシスラリー)をワンツーフィニッシュ、第二回では表彰台独占という快挙を達成。

これによりもう欧州でその名を知らぬものは居ないと言い切れるほどの存在に。

XT500パリダカモデル

ちなみにXT500が欧州で人気となった理由には他にも

「構造がシンプルで修理やカスタムがしやすい」

という部分も大きかったようです。だからダカールラリーでも勝てたんでしょうね。

そして最後は日本・・・実は日本でも話題になったんですよ。

それは発売の翌年にあたる1977年に行われた鈴鹿六耐(八耐の前身)での事。

ロードボンバー/SHIMA498YというシマR&Dの島英彦さんと三栄書房社長だった鈴木脩己さんがタッグを組んで造ったモデル。

ロードボンバー

XT500のエンジンをオリジナルフレームに搭載したこのマシンがエントリーしたんですが、当時は無謀というか誰も注目していませんでした。

「四気筒のリッターバイクに敵うハズは無い」

と。

ところが単気筒ならではの軽さと燃費を武器に八位入賞という下馬評を大きく覆す結果となり一転してシングルの星として。

ロードボンバーについてはもう一つ話題があるのですがそれはSRのページで話すとして、XT500はこのように日欧米全てのレースで結果を残し歴史に名を刻む事になりました。

改めてもう一度言いますが、何が凄いってこれヤマハにとって4stビッグシングル第一作目という事。

XT500壁紙

にも関わらずフラットダートでワークスに勝って、モトクロスで2stと互角の勝負を繰り広げて、畑違いの鈴鹿でもマルチ相手に善戦し、ダカールラリーでは敵なしで連覇。

これを名車と言わず何と言いましょう。

最後に小ネタ。

XT500カタログ

XT500は最初の試作機がダメ出しされて作り直した経緯があるという話をしたんですが、実はその後にもう一度作り直された経緯がある。

原因はXT500を開発する上で掲げたコンセプト

「軽く、コンパクトで、高い耐久性・・・なおかつ美しい」

の”美しい”の部分を満たしていなかったから。

というのも性能を追い求めた結果エンジンの形が左右で大きく違うものになってしまったから。

XT500サイドビュー

エンジン担当だった大城さんはこれがどうしても納得がいかず、最後の最後で作り直してるんです。

※ヤマハニュースNo487

SRにおける造形美の一端を担っているエンジンの美しさは実はこのXT500譲りなんですね。

XT500

XT500はパフォーマンスだけではなく、美しさまでも妥協なく磨き上げられた文句のつけようがないビッグシングルでした。

主要諸元
全長/幅/高 2170/875/1180mm
シート高 835mm
車軸距離 1420mm
車体重量 139kg(乾)
燃料消費率 43.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 8.8L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 499cc
最高出力 30ps/5800rpm
最高トルク 3.9kg-m/5400rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.00-21-4PR
後4.00-18-4PR
バッテリー 6N6-3B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
D8EA
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.2L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前16|後44
チェーン サイズ520|リンク100
車体価格 370,000円(税別)
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

XT1200Z/ZE SUPER TÉNÉRÉ(2BS/2KB/BP9)-since 2014-

XT1200Z/2BS

「ステージは、世界。挑むは、未開。」

マイナーチェンジが施された2014年からのスッテネ。

最初に変更点をあげると

・エンジン見直しによる2馬力アップ

・クルコン機能

・可変式スクリーン

・小型LEDウィンカー

・フルデジタルメーター

・アルミサイドスタンド

などの変更が加わり、更にこのモデルからZEモデル『XT1200ZE/2KB』が追加。

XT1200ZE

Zとの違いとしては

・電子制御サスペンション

・グリップウォーマー

・サイドカバー

・リアキャリア兼アシストグリップ

・メインスタンド

などが新たに追加された+10万円の上位グレード版。

XT1200ZとZE

電子制御サスなどの豪華付属品を見たら割安ですけどね。逆に言うとZは装備をOP化して先代比10万円安です。

補足として加えると欧州では更に

・ブロックタイヤ

・LEDフォグ

・スキッドプレート

を装備しオフロード性能を上げた

スーパーテネレ ワールドクロッサー

『XT1200Z/ZE Worldcrosser』

が先代から発売されていました。

更に2018年からは

・専用ハイスクリーン

・ウィンドディフレクター

・スキッドプレート

・37Lアルミサイドケース×2

・カーボンサイドカウル

・専用グラフィック

などフル装備モデルとなる

レイドエディション

『XT1200ZE RAID EDITION』

も発売されています。

さてさて・・・先のページで解説した通りこの新世代スーパーテネレは快適に長距離を走れるような強い車体構成をしているわけですが、一方でパリダカを制した750時代の頃と比べるとフロントが19インチになっていたり、排気量が大きくなっている事から見ても分かる通り

「若干オンロード寄りのアドベンチャー」

となっています。

2015XT1200Zワールドクロッサー

もちろんこういう道なき道を走れるポテンシャルも持ってますけどね。

どうしてスーパーテネレというヤマハが誇るラリーマシンの名を冠しているにも関わらずこうしたのかといえば、系譜を辿るとわかるようにXTZ750SUPER TÉNÉRÉとTDM850/TDM900によって

ZEモデル

「ユーザーが本当に求めているアドベンチャーとは何か」

をヤマハは知ったからではないかと。

ユーザーが求めているビッグアドベンチャーというのはそのままラリーに出場できる様なゴリゴリのラリーレイドではない。

2014年モデル

「ツーリングもスポーツも楽しめる万能ビッグアドベンチャー」

という事をXTZ750とTDM850で学んで知ったからこそオンロード性能を高めてる。

他にもフロント荷重を増してハンドリングを良くしたり、またシート高も845mmというアドベンチャーとしては決して高くない値に収めるなどの配慮もあります。

わざわざ自動でダンパー調整していくれる電制サスを割安価格で用意したのもこの万能性を更に高めるためにあるんじゃないかと。

スッテネ

これは

『ダカールラリーマシンXTZ750』

『ストリートラリーマシンTDM850』

2つのラリーを造った経験を持つヤマハだからこそ出来た経験に裏打ちされたアドベンチャー。

例えるならばXT1200Z/ZE SUPER TÉNÉRÉはダカールとストリートを湧かせた2つのラリーマシンを一つにした

XT1200ZEスーパーテネレ

『デュアルラリーマシン』

と言えるのではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2250/980/1410~1470mm
[2255/980/1410~1470mm]
シート高 845~870mm
車軸距離 1540mm
車体重量 257kg(装)
[265kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 1199cc
最高出力 112ps/7250rpm
最高トルク 11.9kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-19(59V)
後150/70-17(69V)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EB9
推奨オイル YAMALUBE
SAE 10W-40~20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L
スプロケ

チェーン
車体価格 1,530,000円(税別)
[1,630,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内はXT1200ZE
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

【関連車種】
Africa Twinの系譜V-STROM1000の系譜VERSYS1000の系譜R1200GSの系譜

XT1200Z SUPER TÉNÉRÉ(23P)-since 2010-

XT1200Zスーパーテネレ

「Ultimate Gear for Intercontinental Adventure」

おおよそ20年ぶりに復活を果たした二代目と言っていいのか分からないほど何もかもが変わったスーパーテネレ。

何と言ってもまず排気量で1199ccと大スケールアップ。

270度位相クランク

他にも

・新設計バックボーンフレーム

・フルアジャスタブルサス

・YCC-T(電スロ)

・トラクションコントロール

・ハイポイドギアのシャフトドライブ

・高さ調整機能付きシート(845~870mm)

・前後連動機能付きABS

などなどスーパーテネレを名乗るだけあり足りないものは何もないと言っていい全部載せアドベンチャー状態になり税別で1,600,000円に。

割高に感じるかもしれませんが決してそんなことはない。目に見える装備だけでなく細部まで丁寧に作り込まれているからです。

XT1200Zストロボ

例えばまずエンジンはラリーで実証済みの270度クランク。

・穏やかな出力特性で疲労を軽減

・メンテナンス性に優れつつ信頼性のあるエンジン

・長距離を走り切る低燃費

アドベンチャーとしての上限を完璧に満たしたエンジンになっています。

XT1200デザインスケッチ

わざわざこのモデルの為だけに用意した専用エンジンなんだから当たり前といえば当たり前ですけどね。

他にも倒立のフルアジャスタブルサスはもちろんオーソドックスながらダンパー付きの補強&防塵防水仕様メーター。

XT1200Zメーター

ナビを付けろと言わんばかりの位置にあるシガソケ標準搭載もありがたいですね。

車体の方でもスーパーテネレはお金が掛かっています。

その代表例がシャフトドライブ。

XT1200Zシャフトドライブ

『横向きのエンジンに縦向きのシャフトドライブ』

という手間とコストが掛かる事から一部の高額車しか採用していない方法を取っているんですが、何故そうまでしてシャフトドライブにしたのかというと一番はメンテナンス性と耐久性を上げるため。

ただスーパーテネレの場合はシャフトドライブも通常のシャフトドライブではなく非常に高い精度を求められるハイポイド式のもの。

スーパーテネレのシャフトドライブ

中心から少しオフセットされてるのがわかるかと思いますが、これは簡単に説明すると複数枚の歯が常に噛みあう(噛み合い率が上がる)ので振動や騒音が減る上に強度的にも有利になる。

そしてそれが結果としてバネ下重量の軽減という多大なメリットを生んでいる。

もう少し分かりやすい所でいうと各部品のレイアウトでこれも非常に考えられている。

ライトカウル

ライダーから見て右側のサイドカウルを外すと

・バッテリー

・ヒューズボックス

・ECU

などなど電装系が纏められててアクセス性が抜群。

では反対の左側の方には何が入っているのかというとラジエーターが鎮座しています。

ラジエーター

実はサイドラジエーター方式なんですね。

VTR1000の系譜の方でサイドラジエーターについて知った人は

「パラツインなのに何故サイドラジエーターなのか」

と疑問に思われるかもしれませんが、もちろんコレにも理由があります。

普通なら飛び石対策と考える所ですがスーパーテネレがサイドラジエーター式になっているのはリアヘビーになりがちな荷重配分の適正化。簡単にいうと前輪荷重を稼ぐためです。

XT1200Zのフロント

そのためにラジエーターを横にズラしエンジンを更に前輪に近づけることでフロントへの荷重を稼いでいるんです。

それらの工夫によってスーパーテネレはビッグアドベンチャーの中でもワインディングは得意な方。

バンクセンサー

だから結構みんな当たり前のようにバンクセンサーを削るくらい寝かせて走っていたりします。

ちなみにプロジェクトリーダーの森さん曰くバンクセンサーが左側にだけあるのもこの為で、これ以上寝かせるとラジエーターぶつけちゃうぞって警告のために左側だけ付けたそう。

バンクセンサー

まあ元々補強されている上に、壊れたという話も聞かないので神経質になる必要はないかと思いますが。

話を戻すとサイドラジエーターにはもう一つ別の箇所のアクセス性を向上させる狙いがあります・・・それは吸気周り。

スーパーテネレはタンクを外すとそこはもうエアクリーナーボックスがあり、更にその下にはスロットルバルブとエンジンヘッドというスーパースポーツの様なストレートレイアウトになっています。

フレーム

加えてフレームがセンターを避けており、先程話したとおり電装系は右に、冷却系は左に纏められてるからアクセスを妨げるものが無く整備性が非常に良い。

新世代のスッテネにはこういった一見すると見えないカタログスペックにも表れない小さい工夫の数々が詰め込まれているわけです。

狙いはもちろん

2011XT1200スーパーテネレ

「快適かつ軽快に大陸横断すら可能にするため」

これだけの作り込みを見れば1,600,000円(OP別売り)という値段も頷けるのではないかと。

ちなみにTDM900のページでも言いましたが、バイクに乗って何日もキャンプツーリングしたりするのが結構当たり前な欧州で再びアドベンチャーと言いますかビッグオフ需要が沸き起こって来たことでスーパーテネレは復活した背景があります。

XT1200Zカタログ写真

しかし向こうの人はその付き合い方の関係から

「バイクはツール」

という考えが強く、まして何日も共にするアドベンチャーとなると非常に厳しい目を持っている。

じゃあそんな本場でこのXT1200Zはどういう評価だったのだろうかと調べてみたところ

XT1200スッテネ

「かつて地球を支配したスーパーテネレの名を冠するに相応しい。ネックがあるとすれば価格が高い事だ。」

だそうです・・・やっぱり高いですねスイマセン。これだけ作り込んでいるんだから当たり前なんですけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2255/980/1410mm
シート高 845~870mm
車軸距離 1540mm
車体重量 261kg(装)
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 1199cc
最高出力 110ps/7250rpm
最高トルク 11.6kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-19(59V)
後150/70-17(69V)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EB9
推奨オイル YAMALUBE
SAE 10W-40から20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L
スプロケ

チェーン
車体価格 1,530,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

TDM900/A(5PS/2B0)-since 2002-

TDM900

「SPORTS ALL ROUNDER」

排気量を更に上げて897ccとなったTDM900/5PSとABS付きのTDM900A/2B0。

・アルミ鍛造ピストンとメッキシリンダー

・フューエルインジェクション化

・アルミダイヤモンドフレーム

などなど人気車種なだけありお金がかかってるモデルチェンジ内容になっています。

変更点から見ても分かる通り更にオンロード性能と使い勝手を向上させており欧州では相変わらず好評で

TDM900サイド

「コミューターからスポーツツアラーまで色んなバイクの要素が詰まってる一台」

という高い評価でした。

2004年には小変更のマイナーチェンジとなり、更に2008年にはABS付きのTDM900Aも発売など非常に息が長いモデルに。

850と900を合わせると累計生産台数は10万台を超えるほどだったそう。

TDM900A

そんなTDM900は一部の国を除き8年間も販売され2010年モデルをもって後継を出すこと無く生産終了となりました。

「人気車種なのになんで」

とも思う話なんですが、実はこの頃になると再びオフロード(アドベンチャー)ブームが巻き起こっていたんです。つまり市場が再びTDMではなくスッテネを求めるようになったというわけ。

TDM900Aカタログ写真

そのため多くの人の下駄として、ツアラーとして、そしてワインディングマシンとして活躍したオンロードテネレ・・・言い換えるなら

「オンロードラリーのTDM」

の役割はここで終える事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 2180/800/1290mm
シート高 825mm
車軸距離 1485mm
車体重量 221kg(装)
[224kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 897cc
最高出力 86.2ps/7500rpm
最高トルク 9.1kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR18(59W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.8L
フィルター交換時3.9L
スプロケ 前16|リア42
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 950,000円(税別)
※プレスト価格
※[]内はABSモデル(2B0)
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)