Z1000(ZR1000F/G)-since 2014-

2014年式Z1000

「sugomi」

新生Z1000としては四代目となるF/G型。

最大の変更点は何と言っても誰が見ても驚くだろう顔で、LEDヘッドライトになったんだけど一般的なLEDとは違いリフレクターレスタイプだから目の玉みたいで表情がある。

LEDヘッドライト

内側2つがローで外2つがハイになってるんですが、よく見るとLEDヘッドライトの上にメーター兼ポジションライトが付いてる。一部で先代の守護霊とか言われています。

このZ1000からモチーフが虎から黒豹に変更。2011年ZX-10Rもモチーフと同じですね。

そんなZ1000のD型で凄いなと思うのはプログレッシブな(初期は柔らかく奥で踏ん張る)動きをするビッグピストンフォークとを始めとしたSSと同じ装備を施してる事もそうなんだけどそれよりも細部へのこだわり。

ビッグピストンフォーク

OPのスライダーやガードは勿論のこと、これまでと同様トキコ製ラジアルマウントキャリパーに至るまでKAWASAKIと刻まれている。

こういう細かい所にまでデザインが行き届いてる事に感心するんですが、同時にトキコがよく許したなっていう・・・トキコって日立グループですよ。川崎重工・日立製作所・三菱電機の連合繋がりなんだろうか。

エンジンガード

ちなみにTOKICOの文字はここにあります。

他にもギア比の変更やエンジン出力の見直しが入ってるんですが、F/G型(GはABSモデル)は初代から変わらずルックスに重きを置き、磨き上げたモデルといっていいかと。

話が少し戻りますが、先代で書き損ねたホリゾンタルバックリンクサスペンションについて少しお話。

ホリゾンタルバックリンクサスペンション

これは要するに見て分かる通り、今までスイングアーム下からリンクを介して縦に付いていたリアサスペンションをスイングアームの上からリンクを介してほぼ水平に付けたサスペンションの事。

今となってはZX-10Rなどのスポーツモデルでは当たり前の装備となってるわけですが、これの何が良いのかというとメリットは2つあります。

一つは車体下のスペースが空くことでマフラーレイアウトの自由度が増すということ。

マフラー

厳しくなっていく規制への対応でどんどん大きくなっていく腹下のプリチャンバー(いわゆる弁当箱)のスペースを確保するため。ついでに排気から離す事で熱の影響を小さくすることができる。

そしてもう一つはマスの集中化。

マスの集中化というのは要するに重いものは可能な限り重心に近づける事で、持つ部分よりもボールを当てる先のほうに重心があるバットをイメージすると簡単なんですが、正しく持って振った場合と反対(重心を手に)に持って振った場合、どちらがより俊敏に動かせるかといえば反対に持った時ですね。

マスの集中化というのはこれで最近のバイクのリアがどんどん短くなってるのもこれが理由。SS(というかレーサー)の場合はスリップストリーム対策もありますが。

ホリゾンタルリアサスペンション

話がそれたので戻しますが、この独創的なサスペンションはそのマスの集中化つまり車体中心に近づけるためにやってる狙いもあるという話。

Ninja1000
(ZX1000L/M)
-since 2014-

2014年式Ninja1000

合わせて紹介で申し訳ないんですが、Z1000がモデルチェンジという事で二年しか経ってないNinja1000も合わせてモデルチェンジされL/M型となりました。

「Z1000が無かったら出ていなかった」

と言われておきながらトラコンKTRC(Kawasaki TRaction Control)やエンジン出力をハイとローに切り替えれるモードセレクタを装備。

Z1000の派生モデルだったのに僅か二代でZ1000より豪華装備なるっていう。

プリロードアジャスター

ビッグピストンフォークは流石に付かないみたいですが、代わりにとっても便利なリモートプリロードアジャスター付きリアサスペンションに。

ニンジャ1000

その他にもミラーやウィンカー、スクリーンやカウルなど細部が変更されてるんですが一番大きいのは純正OPの拡充でしょう。

純正OP

車体に合わせた専用パニアケースは格好良いですね。格好良いし安心だし値段は別にしてもツーリングメインなライダーにはありがたいOP。

イグニッションキーで開閉できるっていう純正の強みを活かしたサイドパニアケース。脱着も楽ちん。

2016年モデルではZ1000/Ninja1000共にスリッパークラッチが採用され、クラッチ疲れとおさらば出来る快適性になりました。

主要諸元
全長/幅/高 2045/790/1055mm
[2105/790/1170~1230mm]
シート高 815mm
[820mm]
車軸距離 1435mm
[1445mm]
車体重量 220kg(装)
[230kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
[19.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1043cc
最高出力 137ps/9800rpm
最高トルク 11.1kg-m/7300rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前15|後43
[前15|後41]
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,199,800円(税込)
[1,285,200円(税込)]
※[]内はNinja1000
※ABSモデル(G/M)は+1kg&+63,800円
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1000(ZR1000D) -since 2010-

ZR1000D

「ライディングインパクト」

先代でも言いましたが新生Zのデザインにおいて”ワルであること”が非常に大事だったわけですが、それが突き抜けた形になったともいえる三代目のZ1000/ZR1000D型。上の写真は初年度カラーでヘビ柄シートが大きく話題になりましたね。

最初に変更点をあげると

・1043cc/136馬力の新設計エンジン

・剛性30%UP&3kg減の新設計アルミバックボーンフレーム

・新開発ホリゾンタルリアサスペンション

・新型ラジアルマスター&キャリパー

・ファットハンドル

・フルデジタルメーター

などなどスーパースポーツを剥いただけというストリートファイターの文化をそのまま反映させたような形になりました。

Z1000フレーム

フレームがエンジンの横を通らず上を湾曲するように避けて通ってるツインスパーともいえるバックボーンフレームに、リアサスペンションが水平に付いている。

さらにスロットルバルブも楕円形状。

Z1000フレーム

カワサキらしい独特性あふれる中身なんですが、これらは車体の幅を抑える事でニーグリップしやすくするため。

だから厳つい見た目してるけど跨ってみると実は結構細い。

もう一つオマケで面白いのがスロットルへと続く吸気口。

K-CAS

ハニカム形状で強度をキープしつつ大きく開けることで吸気音をライダーに積極的に聴かせる構造になってる。吸気音を積極的に聞かせる手法は昨今では珍しくないけどカワサキは先駆けてやっていたんですね。

そんなD型が掲げるライディングインパクトを最も象徴するであろう部分はそのポジション。

K-CAS

こういう肩肘張って乗る感じは演出なパターンが多いんだけどD型はワイドハンドルも相まって本当にこんな感じ。

マスフォアードなのも相まってエンジンにしがみついて走ってるんじゃないかと錯覚を覚えるほど。

ZR1000D

ただやはり話題になったのはデザイン。

とんでもない形だったアイデンティティである四本出しマフラーが更にとんでもない形になり、Zガンダムのようだと言われました。

マフラー

他にもサイドシュラウドやアンダーカウルも更に尖ったわけですが、これはZのフォルムを現している形だったりします。

マフラー

ついでに言うとシートカウルの下にはフォルムではなく本当に文字としてZを掘っている。

Z1000シート裏

デザインを最優先に開発されたモデルだからここまでの思い切りの良さというかデザイナーの好き勝手に出来たんでしょうね。

見て衝撃、跨って衝撃、乗って衝撃というサードインパクトじゃなくてトリプルインパクトなD型。シートも攻めてるので尻へのインパクトもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2095/805/1085mm
シート高 815mm
車軸距離 1440mm
車体重量 218kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1043cc
最高出力 136ps/9000rpm
最高トルク 11.2kg-m/9600rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,134,000円(税込)
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1000(ZR1000B) -since 2007-

Z1000B

「テーラーメイド・スーパーネイキッド」

水冷Z1000の二代目になるZR1000B通称B型。

デザインが更にマッシブかつワル(これも重視された要素)になったんですが、中身の方も大幅に改良されました。

具体的には

・フレームを作り直し

・エンジン出力をスムーズに

・エンジンを後方に下げ重量配分を変更

・エンジンマウントを兼ねたアルミサブフレーム

・キャスター角を寝かせ気味にしホイールベースを延長

・ラジアルマウントキャリパー

Z1000B

要するに先代よりも安定志向に振っており、デザインも更に凝ったものに。

ちなみにモチーフになったのは『虎』だそうです。

ZR1000B

細かいことをいうとライトだけではなくウィンカーでもそれを彷彿させるようにしている拘りのビルドインウィンカーだったりします。

このZR1000Bは125馬力という相変わらず猛烈な物を持っている一方で、先に話したとおり少しジェントルにする変更を加えたことで

「カワサキらしくない素行の良さだ」

という褒めてるのか蔑んでるのがよくわからない声が多方から聞かれました。

ZR1000B

でも非常に良く出来ていたのは事実で、そのおかげでこのZ1000は非常にシビアでオールマイティさが求められる欧州ミドルクラスへのZ750Rへの転生を果たし成功(非常に高評価でロングセラー)を獲得しミドルZを確立することになります。

主要諸元
全長/幅/高 2090/780/1065mm
シート高 820mm
車軸距離 1445mm
車体重量 205kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 953cc
最高出力 125ps/10000rpm
最高トルク 10.1kg-m/8200rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量3.8L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 1,050,000円(税込)
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1000(ZR1000A) -since 2003-

ZR1000A

「世界最高のロードスポーツモデル」

Z1と全く同じコンセプトを持つ新生ZことZ1000/ZR1000A型。

Zというとどうしても空冷2バルブ四気筒のジャパニーズスタイルネイキッドというイメージが強いので、これが出たときに色々と物議を醸したのが記憶に新しい人も多いかと。

ザンザス900で出す予定だったもののZ1000の商標が期限切れを迎えそうだったので更新を兼ねてZ1000に変更した・・・というエピソードがまことしやかに囁かれていますが、確実に言えるのは新生カワサキの第一弾としてかなり力の入ったモデルだったという事。

ZR1000Aのディメンション

肉薄なハイテンスチールのダイヤモンドフレームで400cc並のホイールベースなボディに、低中速に厚みを持たせたZX-9Rベースのエンジンを突っ込んだ形。

だから127馬力/197kg(乾)というポテンシャルを持っており、簡単にウィリー出来るというかウィリーしてくれと言わんばかりの今でいうストリートファイター系になります。

ZR1000A2

それで何が新生カワサキの第一弾なのかって話ですが、それはこの見た目を見れば分かる通り性能ではなくデザインに関すること。

ちょうどこの頃からカワサキは初代ロードスターのNAをデザインされた田中俊治さんをヘッドハンティングしてデザインプロセスを大幅に見直してるんですね。簡単に言うとデザイナーのヒエラルキーを高める改革。

そしてその第一弾となったのがZX-6Rと、このZ1000。共通点はシートカウルだけじゃなかった。

ZR1000Aコンセプトスケッチ

ただ両車の違いとしてZ1000はZX-6R以上にデザインを最優先に開発されたモデルというか

『デザイナーが思い描いた形が絶対』

で開発された経緯があります。それをエンジニアが再現していく開発プロセス。

2003年式Z1000

更に凄いのが重役の人間も口出し無用だったこと。このZ1000は完成まで市販化の是非を問う重役にすら一切見せず、カワサキのデザイナーが全権限を持った形で開発されてるんです。※KMB39より

ZR1000Aコンセプトスケッチ

そんな背景があったからこそ、このコンセプトデザインを忠実に再現出来た。

ちなみにデザインコンセプトを要約すると

『とにかくフリーダムでパワフルでマッシブで見飽きないバイク』

という感じ。

Z1000A

もちろん性能もインプレッションでSSに迫るほどのラップタイムを叩き出して話題になるほどの物を持っていたんですが、4-2-4マフラーや切削&バフのホイールなど明らかに既存のバイクとは違う、逸脱しているとさえ言えてしまうこの出で立ちは新生カワサキの意欲の現れだったという話。

ある意味ではデザイナーが我を通しきった新生Zとも言えますね。デザインに割く時間がほとんど無かったZ1とは対極的で面白い。

主要諸元
全長/幅/高 2080/770/1055mm
シート高 820mm
車軸距離 1445mm
車体重量 198kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 953cc
最高出力 123ps/10000rpm
最高トルク 9.7kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量3.8L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前16|後42
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,029,000円(税込)
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1100GP(KZ1000B1/2) -since 1981-

Z1100GP

先に紹介したJ型から少し遅れて登場したZ1100GPのB型。

J型がレースを視野に入れたモデルだったのに対しB型は公道向けフラッグシップといった感じで、ボアを3.1mm拡大し1090ccとスケールアップされている。今にして思えばZX-6RとZX-6RRの関係に近いですね。

ただしこちらはH型に引き続き、電子制御燃料噴射装置であるKEFI(Kwasaki Electric Fuel Injection)を採用しているのが特徴です。

カタログ写真

2年目にはDFI(Digital Fuel Injection)へと変更され1馬力UPと追従性向上などの改善に加え、ローソンレプリカっぽいビキニカウルを付けた通称B2を発売。

Z1100B2

ある意味ではZRXの流れはここからとも言えますね・・・という話なんですが鋭い人は

「なんでB型なのかA型は何だ」

と思われるので説明するとA型は同年デビューのZ1100シャフトドライブ仕様になります。

Z1100A

Z1000STの後継モデルで、こちらは普通にキャブ仕様。

ついでにいうと1984年に出たローソンレプリカモデルであるZ1100Rもキャブ仕様でした。

Z1100R

ちなみに1100の方は幻のシルバーローソンレプリカもありました・・・先ず見ないですね。

Z1100R銀

キャブに戻されている理由はお察しの通りまだ少しFIは早かったというのが正直な所というか。

そもそも何故まだ排ガスが厳しいわけでもなかった80年代にFIを採用したのかというと、当時レースマシンでFIが流行っていたからなんです。だからそれをフィードバックさせる事でレプリカ感を高める狙いがあったわけ。

一応ネイキッドの空冷ZとしてはこのZ1100GPが最後となるわけですが、実は凄く短命で2年ほどしか売られませんでした。

理由はFIの件ではなく

「世代交代に迫られた」

というのが理由。

80年代に入ると競合から溢れんばかりの新世代技術を搭載したモデルが多く出ており、カワサキもこれに対応する必要が出てきた。

新世代技術とはなにか・・・それはフェアリングとモノサス。これを満たす後継を開発した事でGPはお役御免となったんですね。

Z1100GP赤

ただこれは当時の話。

いま改めて長い歴史として振り返ってみると第一世代Zの集大成モデルと言ったほうが良いかと。

主要諸元
全長/幅/高 2265/820/1145mm
[2265/785/1240mm]
シート高 805mm
[785mm]
車軸距離 1540mm
車体重量 237kg(乾)
[238kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 21.4L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1089cc
最高出力 108ps/8500rpm
[114ps/8500rpm]
最高トルク 9.8kg-m/7000rpm
[10.2kg-m/7000rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25V19
後4.25V18
[前110/90V-18
後130/80V-18]
バッテリー YB16L-B
[YB18L-B]
プラグ BR8ES(B8ES)
または
W24ESR-U(W24ES-U)
※()内はUS仕様
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後41
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格 ※[]内はKZ1100R
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1000J(KZ1000J) -since 1981-

KZ1000J

「NEW GENERATION」

Z1シリーズの直系モデルであるものの、その中でも少し特異な存在になる通称J型。

・クランクシャフトの大径化を始めとした改良

・排気量を1016ccから998c化

・給排気の見直し

・フレーム各部の補強

などZ1としては初めて大幅な変更が入ったモデルになります。

Z1000J

どうして特異なモデルなのかというと、排気量を1000cc未満に抑えている事からも分かるようにZ1000Jは市販車レースを睨んで開発されているから。ある意味では現代のスーパースポーツと同じような感じ。

そもそもZ1はレースを睨んでいるわけではなくカワサキの考える最速車だったんですが、その性能の凄さからヨシムラを始めとした色んなカスタムビルダーや現地法人が使った結果レースで活躍していました。

カワサキもこれを良しとしていて、自身がZ1をフルチューニングしてレースに挑むという事はしていなかった。

しかし70年代後半に入るとライバルメーカーが多数登場しレースでブイブイ言わせるようになってきた事からカワサキもMKIIベースで参戦を開始。※この時のカラーリングが黒金だった

しかしMKIIはレース主体で開発したわけではない事から不都合があったので、それを解消するために開発されたのがJ型。

そして活躍したレーサーの一つが981年に出したJ型ベースのKR1000というモデル。

KR1000

なんとなく見覚えがある人も多いかと思いますが、これこそがJ型の狙い。

仏カワサキとカワサキとパフォーマンスというチューニングメーカーのトリオで造り上げた耐久レース用マシンで81年から3年連続で世界耐久レースを制覇。グリーンモンスターとして歴史に名を刻む結果になりました。

ちなみに『カワサキパフォーマンス』というチーム名で変な矢印が付いたロゴが付いていました。

KR1000パフォーマンスカワサキ

これはパフォーマンス社のもので

「前進と上昇あるのみ」

という意味だったりします。カワサキにピッタリですね。

ただ”一つ”と言ってる通りJ型のレーサーはもう一つある・・・恐らく日本ではコッチのほうが有名じゃないかと思います。

Z1000R
(KZ1000R1/2) 
-since 1982-

Z1000R

そうZRXシリーズでお馴染みだったローソンレプリカの始まりであるR型。これもJ型が発端。

欧州では耐久レースが盛んだった一方でアメリカではスーパーバイクが盛んだった。J型はそっちも睨んでいて1981年にそれをチューニングしたマシンでチャンピオンを獲得。

KZ1000R

その時のレーサーが皆さんご存知エディ・ローソン。1980年の黒金MKIIレーサーもこの人。

その記念に発売された今でいう所のレーサーレプリカなのがこのZ1000Rという話なんですね。

ローソンレプリカ

カワサキとローソンのタッグは翌1982年も優勝を遂げたので1983年にも引き続きレプリカであるZ1000R2を出ました・・・が、あくまでもスーパーバイクレプリカ。

R1の頃にはタンクに貼られていた記念エンブレムが付いていないだけでなく、カタログを見てもローソンもローソンレプリカの文字もなかった。

Z1000RIIカタログ写真

これ何故かと言うとR2が発売する頃にエディーローソンさんがヤマハに電撃移籍しちゃったから。大人の事情というやつです。

ただローソンレプリカを語る上でもう一つ欠かせないモデルがこれ。

Z1000S
(KZ1000S) 
-since 1982-

KZ1000S1

これはストックレースのレギュレーションで

「24台以上販売しているバイクじゃないとダメ」

となったことから連覇を目論むカワサキが

「それならレース用バイクを24台売ればいい」

と考え発売したスペシャルホモロゲーションモデル。

30台作って6台はカワサキ自身がレース用として確保。つまり世に24台しかないZ史上一番レアで、まず市場に出回ることは無い世界一貴重なZになります。

おまけで言うと開発チームは当初は逆で

「Rがホモロゲで、Sがレプリカ」

という認識というか名前だったんだとか。まあ確かにホモロゲの方が普通はRだよなと思うところですが、広報かなにかの関係で逆になったんだそう。

非常にザックリですがこれがZ1000GP/Z1000J型の大まかな歴史。

カワサキZ1000GP

正直なことをいうとJ型は初代Z1や二代目MK-IIに比べると知名度は少し落ちるんですが、Z史に与えた影響そして貢献度は非常に大きいモデルでした。

主要諸元
全長/幅/高 2265/820/1145mm
[2240/820/1230mm]
{2265/820/1240mm}
シート高 805mm
[775mm]
{785mm}
車軸距離 1520mm
[1525mm]
{1520mm}
車体重量 230kg(乾)
[222kg(乾)]
{236kg(乾)}
燃料消費率
燃料容量 21.4L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 102ps/8500rpm
最高トルク 9.3kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25V19
後4.25V18
[前100/90V19
後120/90V18]
{前3.25V19
後4.25V18}
バッテリー YB18L-A
プラグ

BR8ES(B8ES)
または
W24ESR-U(W24ES-U)
※()内はUS仕様

[B8ES
またはW24ES-U]

{BR8ES
または
W24ESR-U}

推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後41
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格 ※[]内はZ1000R1
※{}内はZ1000R2
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1-R/2(D1~3)Z1000H(H)-since 1978-

Z1-R

「THE FASTEST」

角ゼットの始まりであるカフェレーサー風のお洒落なZであるZ1R。

・曲線デザインから直線デザインに変更

・前後18インチ

・4in1マフラー

・ハンドルマウントのビキニカウル

などなどの変更が加えられています。

Z1Rカタログ

丸みを帯びていた900Super4/Z1の後継とは思えないほどの大変貌を遂げたわけですが

「いくらなんでも変わり過ぎじゃないか」

とも思うかと。実際このデザイン本当はボツになるはずでした。

当時の開発に携わっていた山内さんいわく、このデザインは社内デザイナーがデロリアンでお馴染みジウジアーロに傾注し作った個人的な案だった。

しかし社内では

「なんだこの棺桶デザインは」

と大不評で世に出るはずではなかった。

ではどうして採用されたのかと言うと、同時期にアメリカから

「ブームになってるカフェレーサーモデルを作って」

という要望が入り、デザイナーがこのデザインを試しにアメリカへ提案したところ大好評。アメリカがメイン市場な事もあり無下には出来ないとして本当に形になったというのが経緯。

Z1-R北米カタログ

これが後に『角ゼット』と呼ばれ初代Zと人気を二分するデザインの誕生秘話になります。※KBM Vol39より

ちなみに狙い通りヒットし再びZ人気を浮上させた事でカワサキはラインナップを見直す事にもなりました。つまりこの流れが無かったら後のFXシリーズはまた違った形になっていたわけですね。

そんなデザインで成功を納めたZ1Rですが、ちょっと詰めが甘かったのかウォブル(横揺れ)など操舵性の問題が起こり欧州ではリコールが行われるなど性能面で少し難がありました。

Z1-Rii

そのため翌年のZ1R-2/D2ではフロント19インチ化やフォークのオフセット短縮などでトレール量を増し直進安定性を高める変更し対応。

加えて13Lしか入らなかったガソリンタンクを20Lにまで拡大。こちらもデザインを優先した結果なんですがさすがに13Lは少なすぎると言われた模様。

だからZ1-R(D1)とZ1R-II(D2/3)は全く別のバイクと言えるほどデザイン的にも中身的にも色々と違うバイクだったりするんですが、既に広まってしまった悪評のせいでD1が2万台近く生産されたのに対して、D2は5000台ほどで短命に終わる結果となりました。

その代わりと言ってはなんですがZ1R-IIは別の形で歴史に名を残す事になります。

Z1000MKII
(A3/A4)
-since 1979-

Z1000MK-2

それがこのA3/A4ことZ1000MK2。有名ですよね。

Z1R-IIのネイキッドバージョンともいえるバイクで車名にMk.IIと付いています。

一番大きな変更点としては(Z1R-IIもそうですが)フルトランジスタ点火になった事。簡単に言うと点火タイミングがより正確になる点火方式で、見直しも入った事で馬力が更に上がって93馬力となりました。

Z1000MK-II

角ゼットと言われて1番連想されるモデルじゃないかと思います。

ちなみにZ1000MK2によくある誤解が『黒/金』というイメージ。

実際は『紺/金』でMKIIで黒/金のカラーリングは存在しない。黒/金が人気となったのはこっちになります。

Z1000H(Z1000-H1) 
-since 1980-

Z1000H

1980年に登場したZ1000Hというモデル。

このモデルはフューエルインジェクションシステムを採用したZ1000MKIIという感じのモデル。

昨今のFIのように多数のセンサーから複合的な計算によるFIではないためお世辞にも良いインジェクションとは言い難いのですが

『通称 Hカラー』

とよばれるこのカラーリングに惚れる人が続出しMK2仕様にする人が結構いた。その事から黒金のイメージが付いたんじゃないかと思われます。

補足するとこの黒金の始まりはAMAというアメリカのレースが発端ですがそれは次のモデルで紹介するとして、この頃のカワサキはこのHモデルを始め色んなバリーエーションを出していました。

有名なのは1978年に出たZ10006気筒エンジンを積んだ「キング・オブ・Z」ことZ1300じゃないかと。

Z1300

乾燥重量296kgという重さと6気筒ゆえの巨体モデルです。

>>孤高のレジェンダリー6 Z1300の系譜|系譜の外側

それ以外にも同年に出たクルーザータイプのZ1000LTDや翌年のZ1000STもZマニアには有名かと。

KZ1000ST

STというのはシャフトドライブを採用したZ1000MKIIみたいなモデル。

ちなみに二年後の1981年にはエアサス採用のZ1100(Z1100A)へとモデルチェンジ。補足としてZ1000SというモデルはZ1Rのドイツ名です。

Z1000ST

他にも先代風(丸Z風)のZ1クラシック/KZ1000Gなどこの様にこの頃のカワサキはZをかなり乱発していました。

なにもZ1やMK2だけがZじゃないという話なんですが、カワサキのZ40周年サイト見たらこれらのモデルは載ってませんでした・・・酷い。

主要諸元
全長/幅/高 2160/800/1295mm
[2218(2155)/805/1290(1280)mm]
{2180/900/1180mm}
シート高 815(825)mm
車軸距離 1505mm
[{1490(1478)mm}]
車体重量 246kg(乾)
[250kg(乾)]
{245kg(乾)}
燃料消費率
燃料容量 13.0L
[20.0L]
{17.8L}
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1016cc
最高出力 90ps/8000rpm
[94ps/8000rpm]
{93ps/8000rpm}
最高トルク 8.7kg-m/7000rpm
[9.2kg-m/6500rpm]
{9.1kg-m/6500rpm}
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50H18
後4.00H18
[{前3.25V-19
後4.00V-18}]
バッテリー YB14L-A2
プラグ B8ES
または
W24ES-U
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後33
[{前15|後35}]
チェーン サイズ630|リンク92
車体価格 ※スペックはZ1-R
※[]内はZ1R-II/D2
※()内はZ1R-II/D3
※{}内はMK-II
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z1000(A1/A2) -since 1976-

Z1000A

Z1で大成功を収めたことで九死に一生を得たカワサキが出した二代目と言っていいのか少し微妙なZ1000のA1/A2型。

このモデルでZは排気量を1015ccまで上げ83馬力と更に1馬力アップ。実はZ1のエンジンはここまで見越して造られていました。

ただ改良点はエンジンだけにとどまらずキャスター角や足回りなどにも及んでいるZ1のブラッシュアップモデルのような形。

メカニズム

ただ一つ挙げるとするならばマフラーが四本出しから二本出しに変わったことで日本では迫力がないとか賛否両論でした。

そもそもなんで集合させたのかというと、これはヨシムラがアメリカのレースに参戦で巻き起こっていた集合管ブームに合わせたもの。

ただ当時の日本人にとってはマフラーの本数が多ければ多いほど偉い的な考えだったら受け入れられなかったんだね。だから国内向けのZ2の後継にあたるZ750FOURは敢えて4本出しのままでした。

カタログ写真

第一世代の空冷Z、ティアドロップタンクのいわゆる

『丸Z』

と呼ばれるモデルはここまでになります。

主要諸元
全長/幅/高 2240/875/1180mm
シート高 820mm
車軸距離 1505mm
車体重量 240kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 16.5L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1016cc
最高出力 83ps/8000rpm
最高トルク 8.4kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19
後4.00H18
バッテリー YB14L-A2
プラグ B8ES
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後33
チェーン サイズ630|リンク92
車体価格
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

900Super4(Z1/A/B) -since 1972-

900SUPER4

「究極のZ」

おそらくバイク史の中で一二を争う名旧車だと思われるZ1。みんなZ1Z1と言うけど車名は900Super4です。当時を知らない人にはピンと来ないでしょうね。
「900Super4」という車名より「Z1」という型式の方が有名というだけで名車という事が分かると思いますが、もしZ1乗りを見たらZ1と言わず900Super4と言えば「コイツ分かってるな」と思われるかもしれません・・・ってカワサキもZ40周年サイトでZ1って言っちゃってるし。

Z40周年

ただ一重にZといっても色々あるのでご注意を。Zオーナーに対し車名を間違うと失礼どころか命の危険があるので自信が無い時は”Z(ゼット)”で留めておきましょう。全部のZ系に使える便利な言葉それがZです。

おふざけが過ぎました。

今やZと車名に付けば誰もがカワサキ車を思い浮かべるけど、カワサキが初めてZという文字を使ったバイクがこれです。開発コンセプトの究極っていうのはアルファベット順で最後だから。そして1っていうのはそのまま一番、合わせて究極のナンバーワン。

ゼッツー

当時を知らない人は漫画なんかで出てきた弟分のゼッツーこと750RSまたはZ750FOURの方なら知ってるかな。国内の750cc規制の関係で作られたモデルでこちらも型式呼称が有名。

基本的に外見の違いはなくサイドカバーを見ないと分からない。

さてZ1の逸話は色々あるのですが、今回は誕生秘話の話をしようと思います。

Z1

Z1が誕生するまでカワサキは大型スポーツバイクといえばZ1の数年前に出たマッハ(2st三気筒)だけで、4stのビッグスポーツバイクを持ってなかった。そこで市販車としては世界初になる直列4気筒のN600というエンジンの開発に取り組んでいました。

開発は順調に進み、あとはボディを完成したN600エンジンに合わせて作っていくだけだったんだけど、そんな時にホンダからDREAM CB750FOURという市販車初の直列4気筒エンジンのバイクが発表された。

ドリームCB750FOUR

“ナナハン”のコードネームで呼ばれホンダ社内でも超極秘裏に作られていたバイクだったのでカワサキは当然ながら寝耳に水。

Z1の開発責任者である大槻幸雄さん(後の川崎重工常務取締役)は、僅かの差で先を越された事に非常に悔しい思いをしたと仰ってました。

そして

「こうなってしまってはN600を出したところで後追いにしかならない」

として計画を見直し。排気量を更に上げ”世界初の直列4気筒(N600)”から”世界初のDOHC直列4気筒(T-103 ※下の写真、後のZ1)”へ変更。

T-103

作戦名

「ニューヨークステーキ作戦」

としてやり直す事に。

※当時アメリカでは多気筒をステーキ、単気筒をロブスターと言っていた事から神戸(川崎重工の所在地)牛の特上ステーキ(Z1)をアメリカに提供しようという意味

Z1エンジン

本当はそんな悠長な事をしていられる余裕は無かった筈なんですけどね。何故ならこの時のカワサキは本当に経営が危ない状況だったから。

当時のカワサキを支えていたのはアメリカ市場だったんですが、そのアメリカ市場が2stを嫌い4stを好むように変化。2st偏重で4stといえばWしか持っていなかったカワサキは当然ながら業績が悪化。アメリカがほぼ全てともいえる状況だったので悪化というよりも危機的状況に。

つまりカワサキにとってZ1の開発プロジェクトというのは

“絶対にアメリカで成功する(作ったことない)4stのビッグスポーツバイクを一日でも早く作って売る”

というかなり無茶なもの。

Z1プロトタイプ

開発メンバーは選りすぐりの少人数でZ開発のみに専念。

今までOHVのバーチカルツインしか作ってこなかったのにいきなりDOHC900ccのしかもハイパワーなエンジンを作るってんだから次から次に問題が発生。しかしZ1が失敗したらカワサキが潰れてしまうとみな必死。

Z1デザイン案

やっとの思いで完成させ残すは車体デザインとなったものの、既にデザインに残された時間は無くデザイナーまでもが連日徹夜。上の写真はそんな連日の徹夜で作られたボツデザイン達。

数々の伝説を持つZですが、やはり一番はこの開発にまつわる話だと思います。

Z1アメリカ

そんな血の滲むような開発努力が詰まったZ1は見事にアメリカで市販車最速バイクとして評価されセールスでも成功を収めました。

Z1が無かったら少なくともカワサキモータース(二輪部門)は無くなってたでしょうね。

1976年にはフロントダブルディスクブレーキのZ900(A4)へとモデルチェンジ。

Z900
(A4) 
-since 1976-

Z900A4

他にもキャブレーターや足回りに変更が入っています。ただこれは欧州モデルのみで北米は変わらず。

伝説や知名度の凄さから今でも新パーツが出るほどアフターパーツメーカーが充実してるので後年の絶版車より維持が容易という恵まれた状況にあるZ1ですが少し小言を言わせてもらうと・・・

上で書いた通り日本国内においてZ2を買える人はそこそこ居たけど、Z1を買える人はよほどの大金持ちしか無理でした。何故なら当時はまだ逆輸入が珍しい時代で、アメリカ向けであるZ1を日本で買おうとしたらZ2が3~4台買える価格になってしまうから。

1972Z1

だから本来ならZ1は日本に存在しないハズなんだけど、中古車サイトを見れば分かる通り40年以上前のバイクとは思えないほど豊富。

これはプラザ合意による急激な円高や高度経済成長による所得の増加により、当時Z1やZ2を買えなかった人向けに玉数が豊富だった向こうの中古を逆輸入&レストアし売るビジネスが流行ったから。儲かるバイク事業として業者の参入が相次ぎました。結果として世界中のZ1が日本に逆輸入され球数も豊富になったというわけです。

玉数

しかし貴重であるはずのZ1とはいえ玉数が豊富になると・・・当然ながら相場が下がりますよね。そこで白羽の矢が立ったのがZ2。

何故ならZ2はほぼ日本専売、つまり”出た台数(玉数)がZ1より圧倒的に少ない”から。

おかしな話で当時はZ2が3~4台買える値段だったZ1が今ではZ2よりも安い。

Z1タンク

Zが好きで乗られているZオーナーに怒られるかもしれませんが、Zは旧車の中でも飛び抜けた名声があった事から投機に強く晒されたバイク。

二転三転するプレミア価格、あやかろうとZではなく利幅しか見てない一部の悪質なショップ、ZというバイクではなくZという名前を買う投機家なのかライダーか分からない人。名車の宿命といえばそれまでですが、これから先も一生そういった純粋にZを見ていない人たちの思惑に翻弄され続ける事を思うと少し考えものですが・・・まあそれだけZが歴史に名を残したという事ですね。

最後に少し小ネタ。

前代未聞の集合体でもありカワサキとしては初めての大排気量DOHC四気筒という事もあり、クランクのシャフトやクラッチの焼付きなどエンジン開発において様々な問題を抱えてはクリアしていく形だった。

Z1のタペット

そんな中で一番の問題となったのがエンジン上部DOHCの要とも言えるタペットと呼ばれる円筒のカップ形の物。これが試作品エンジンでは出来たものの量産できる所が無かった。

さあどうするとなった時にエンジン開発をした稲村さんがある発見をします。

フェアレディ

「フェアレディのタペットにそっくりや」

その一言からフェアレディのタペットを量産していた桑名のメーカーにお願いする事でなんとか量販の目処が立ったという背景があります。※ニューヨークステーキストーリーより

四輪で有名なZと二輪で有名なZの意外な接点でした。

主要諸元
全長/幅/高 2200/865/1170mm
シート高 813mm
[820mm]
車軸距離 1490mm
車体重量 230kg(乾)
{232kg(乾)}
<241kg(乾)>
燃料消費率
燃料容量 18.0L
{16.0L}
<17.0L>
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 903cc
最高出力 82ps/8500rpm
<81ps/8000rpm>
最高トルク 7.5kg-m/7000rpm
<7.3kg-m/7500rpm>
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19
後4.00H18
バッテリー YB14L-A2
プラグ B8ES
推奨オイル
オイル容量
スプロケ 前15|後35
チェーン サイズ630|リンク92
車体価格 ※スペックはZ1
※[]内はZ1A
※{}内はZ1B
※<>内はZ900A4
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)

Z400(ER400D) -since 2019-

Z400/ER400D

「BUILT TO BE SEEN」

30年以上ぶりに名前が復活したZ400/ER400D型。

基本的にNinja400と共有なので認定型式ではEX400Gとなっていますが、モデルコードはER400D型。ちょっと紛らわしいですね。

ER400Dサイド

大きな違いとしてはカウルがほぼ無い事もそうなんですが、ハンドルをセパレートタイプからバーハンドルに変更しトップブリッジ上部にマウント。

アップライトなポジションにであると同時にストリートファイターらしくワイドになってます。なんでも90mmもワイドなんだとか。

ER400Dハンドル

メーターもNINJA400の物ではなくZ900と同じ多機能デジタルメーター。本当に時代の進化を感じる。

リアサスペンションも街乗りを重視する形にセッティングされ直しています。

元というか兄弟車のNinja400を系譜の中でベタ褒めしたんですが、発売からしばらく経って界隈からの意見はどうなっているのかというと・・・本当に絶賛の嵐しかない。

何が素晴らしいと言われているのかというと

『圧倒的な切り返しの軽さ』

です。

それを踏まえてZ400を見ていると、カウルが無いぶんNinja400より1kg軽くなっている上にアップライトなワイドハンドル・・・つまりその圧倒的な切り返しの軽さの更に上を行く切り返しの軽さを持っているという事になる。

ER400Dディメンション

あともう一つ付け加えるとするとエンジン。

これは乗ってみた人なら分かるんだけど、ハッキリ言って一般的なライダーならこの時点でかなりオーバースペック気味。

「Ninja400ならミニサーキット楽しそう(ちょうど良さそう)」

っていう声が聞かれるんだけど上級者でも無い限りSPA直入などのミニサーキットレベルでは余すパワーを持ってる。何でかって言うと軽い上にモリモリパワーが出るから。

エンジンパフォーマンス

オートポリスなんかの広い国際サーキットの方が向いてると言っていいほど。

「なんで例えがSPA直入とオートポリスなの」

とツッコミを入れてもらうと助かるのですが、これは2019年から

『Ninja LIMITEDクラス』

というNinja400ワンメイクレースが始まっていてSPA直入(ミニサーキット)やオートポリス(国際サーキット)で激闘を繰り広げているから。

NINJA400リミテッドクラス

これを取り上げたかったからという魂胆。まあカワサキのサーキットですしね。

ただそうは言ってもこれはクローズドの話。

「サーキットもレースも興味ない」

という人も多いでしょう・・・そういう人こそストリートファイターのZ400。

街乗りで文字通りブンブン振り回せるストリートファイター仕様なうえに車体価格もカウルが無い分40,000円も安いというコスパ。

2019Z400

ジムカーナの定番車種に時間の問題だろうなと思ったり。

主要諸元
全長/幅/高 1990/800/1055mm
シート高 785mm
車軸距離 1370mm
車体重量 166kg(装)
燃料消費率 24.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 48ps/10000rpm
最高トルク 3.9kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー FTX9-BS
プラグ LMAR9G
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前14|後41
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 620,000円(税込)
系譜図
D1974年
400RS/Z400
(D)
T1979年
Z400LTD/CUSTOM
(T/R)
/EX400G2019年
Z400
(ER400D)