GIXXER250(ED22B)-since 2020-

ED22B

「油冷で、走ろう。」

2020年にスズキから出た新世代シングルスポーツで

・ABS
・前後LEDライト
・フル液晶デジタルメーター
・154kg(装)
・26ps/9000rpm
・408,000円(税別)

という非常にバランスが取れているというかコスパが良いGIXXER250/ED22B型。

ED22B

最初にGIXXERについて説明すると欧米などではスズキの看板車種であるGSX-Rの事で

「ジーエスエックスアール」

「ジエクスアー」

「ジクサー」

という感じで根付いた愛称の事。ちなみにジグサーではなくジクサーです。

日本ではどちらかと言うと

「ジスペケ」

って愛称のほうが有名かなと思います。

ジクサー250

このモデルで取り上げるべきはもはや説明不要とも言える油冷エンジン・・・なんですが、今回はちょっと違ううえによく考えると油冷エンジンってGSX1400以来20年ぶりとなるので

「油冷って何」

と思ってる若者も多いでしょうからザックリ簡単に説明。

油冷というのは性能向上によって空冷(走行風)ではオーバーヒート(パワーダウン)するようになってきたエンジンを、潤滑のために入れているオイルを吹き付ける事でさらに冷やすようにした冷却方式のこと。

スズキSACS

『SACS(Suzuki Advanced Cooling System)』

といって、キッカケは次世代の冷却方式として注目されていた水冷を英語ではLiquid Cooling(液冷)と書くことをヒントに

「液体であって水が絶対ではないなら既に入っているオイルを水代わりにすれば水路や混濁の心配もいらず隅々まで冷やせる」

とGSX-Rシリーズの生みの親でもある横内さんが閃き誕生したのが発端で、スズキは80年代後半からこの技術をスズキの顔として大々的にアピールしていました。

もっと単純に分かりやすくいうと下記の見た目からも分かる通り

冷却方式による外見の違い

『油冷は空冷の冷却強化版』

という感じです。

空冷おじさんに負けないくらい油冷にこだわる油冷おじさんが居るのもこのため。最近はだいぶ減りましたけどね。

・・・と、ここまで書いておいてアレなんですがGIXXER250の油冷は少し違います。

SEPエンジン

冷却用のフィンが付いおらずパッと見では水冷エンジンと見間違うほどの造形。

この理由はいま説明した

『SACS(Suzuki Advanced Cooling System)』

ではなく

『SOCS(Suzuki Oil Cooling System)』

という別タイプの油冷エンジンだから。

SOCS

Advancedの文字が抜けた形になってるんですが、これどういう事かというとGIXXER250で新たに採用された油冷エンジンは放熱性能を上げるのが一番の狙いじゃない。

「軽くコンパクトにするため」

という狙いが一番にあるんです。

スズキのフラッグシップモデルであるGSX-Rなどを見ても分かる通り、現代では水冷が冷却方式としてはもっともベターとされているんですがベストとまでは言い切れない部分もある。

というのも水冷というのは上で話したようにオイルやガソリンと混ざってはいけない水を使うので

・冷却水(エンジンの熱を取る水)
・リザーブタンク(冷却水の貯蔵タンク)
・ウォーターポンプ(水を送るポンプ)
・ウォータージャケット(冷却水を流す水路)
・サーモスタット(オーバークールを防ぐ切替弁)

などなど冷却専用の装備を別に設ける必要がありスペースやコストなどを圧迫する問題がある。

GIXXER250はパワーよりもスリムさとコンパクトさを稼ぐ事が命題だったため、これらは軽視できない問題だった。しかし空冷ではいくらなんでも放熱が弱いからパワーが稼げない。

オイルライン

そこで再登場することになったのが油冷。

最初から入っているエンジンオイルを旧来のように上から吹き付けるのではなく、まるで水冷の冷却水のようにエンジンの周囲を這わせる事で冷却する方法を編み出し採用に至ったという話。

ジクサー250エンジン

ブランドありきではなく本来持つ特性が合致していたから採用されたという正に新世代の油冷エンジンであり、装備重量154kgかつ408,000円というコスパの良さはここにある。

それにしてもまさか油冷がこういう形で武器になる日が来るなんて・・・と感慨深くなるんですが、もう少し話を脱線させるとこのGIXXER250はインドで爆発的な人気(3000台/月)となっているGIXXER150に続く形で出たモデルになる。

ただし向こうで250はトップエンドの部類なのでインドでも400台/月ほど。つまりこのモデルは実はかなり日本市場を意識したモデルなんですね。

じゃあ日本国内はどうなのかというと若者に好評で入荷次第ドンドン売れており上々なセールスを記録しているようです。※並列物で500台/月ほど

ジクサー250カタログ写真

NZ250そしてグースという二度に渡る挫折から30年の歳月を経ての再々チャレンジで成功を収めたGIXXER250。

『3度目の正直油冷シングル』

といえるんじゃないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2010/805/1035mm
シート高 800mm
車軸距離 1345mm
車体重量 154kg(装)
燃料消費率 37.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 12.0L
エンジン 油冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 26ps/9000rpm
最高トルク 2.2kg-m/7300rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー YTX7L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
MR8E-9
推奨オイル エクスター
R9000/R7000/R5000
10W-40 MA2
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.8L
交換時1.18L
フィルタ交換時1.2L
スプロケ 前13|後40
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 408,000円(税別)
系譜図
NZ250 1986年
NZ250/S
(NJ44A)
ジクサー250 2020年
GIXXER250
(ED22B)
ジクサーSF250 2020年
GIXXER
SF250
(ED22B)

NZ250/S(NJ44A)-since 1986-

NZ250

「URBAN RUNABOUT」

RG250ガンマやGF250などにより2stレーサーレプリカ250や四気筒250熱狂時代が訪れていた1980年代半ばにスズキがポンっと出してきた全く違う流れのNZ250/NJ44A型。

NZ250エンジン

このモデルはトレールバイクDR250Sに積まれていた空冷OHCエンジンの上を丸ごと新造し

・SACS(油冷システム)
・TSCC(DOHC多球型燃焼室)

で33ps/10000rpmというゴリゴリのチューニングを施したエンジンを、125ccかと思うほど細く短いバックボーンフレームそれも丸パイプとハイテン鋼角パイプのハイブリッドになっている非常に凝ったものへ積んだシングルスポーツ。

NZ250のディメンション

リアサスペンションもEフローターという当時としては最新テクノロジー。おまけに(当時としては)軽量化を考えてかホイールはキャストではなくアルミリムのスポークホイールという一風変わった組み合わせでした。

こちらはハーフカウルを付けたバージョンになるNZ250S。車重が+2kgになっていること以外は基本的に同じ。

NZ250S

そもそもなんでこんなバイクを出したのかと言うと、レーサーレプリカブームだったとはいえ一方で

「スマートに町を走れる250が欲しい」

「(足つきなどや車重面で)優しい250が欲しい」

という声なき声ならぬ声なき需要が一定数あり、各社からそういったモデルが出ていたから。

それに負けじとスズキも出した面が強いんですが、乾燥重量118kgな事からも分かる通り気軽に乗れるというより

『軽すぎるウルトラライトウェイトシングル』

という形。

NZ250S

そして何より当時のスポーツバイクのトレンドだったエアロフォルムを合わせてアーバン仕立てのデザイン・・・これは結果論でしかないんだけど、当時のユーザーが求めていた(マーケティング的に正解だった)のはアーバンではなくどちらかというとルーラル。

分かりやすく言うとクラシックやカフェレーサーみたいな温故知新バイクだったのでNZ250/Sは正直に言うとかなりの不人気に終わりました。

NZ250S

スズキはこのNZ250/Sが空振りに終わった事がトラウマとなりシングルスポーツを封印した・・・んですが、諦めないどころか開き直ったように尖らせたグースで再チャレンジ。

一部の好き者からは絶大な評価を得たものの数字的な結果を残せなかったというか魅力が多くの人に伝わらず、またVoltyやST250などが成功した事でスズキのシングルライトウェイトスポーツは一旦途切れる事に。

※グースについては系譜の外側
『決めつけられたシングルの正解Goose250/350(NJ46A/NK42A)』
で先に書いてしまったので今回は割愛させてもらいます。

主要諸元
全長/幅/高 1935/685/1020mm
[1935/685/1075mm]
シート高 740mm
車軸距離 1325mm
車体重量 118kg(乾)
[120kg(乾)]
燃料消費率 60.1km/L
※定地モード値
燃料容量 11.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 33ps/10000rpm
最高トルク 2.5kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-17(49S)
後10/80-17(52S)
バッテリー FB10L-B2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.3L
スプロケ 前14|後43
チェーン サイズ520
車体価格 379,000円(税別)
[399,000円(税別)]
※[]内はNZ250S
系譜図
NZ250 1986年
NZ250/S
(NJ44A)
ジクサー250 2020年
GIXXER250
(ED22B)
ジクサーSF250 2020年
GIXXER
SF250
(ED22B)

WOLF(VJ21A)-since 1988-

ウルフ250

「街はウルフだ。」

RGV250ガンマと同年デビューしたネイキッド版にあたるWOLF/VJ21A型。

型式がガンマと同じことからカウルを剥いただけと勘違いされがちですが実は結構変わっています。

まず中低速域での使い勝手を考えリアスプロケットを46Tに変更。更にネイキッドという事でエンジンをブラックアウト化。そして軽快なハンドリングを実現させるために、わざわざフロントディスクをシングル化してバネ下重量の軽減まで。

スズキウルフ

もちろん市街地などでの仕様を考えてポジションも起きたものになっています。

翌89年には先に紹介したガンマと同じ電子制御化を中心とした変更点に加えステップ位置を更に前進させポジションが更に楽なものに。

三年目にして最終モデルである90年型ではキャブセッティングやフューエル周りの改良が加わっています。

ちなみに何故ウルフを出したのか疑問だったんですが、これについては横内さん曰く

ウルフ250カタログ写真

「(レプリカ)ブームはいつか去る、だからブームに甘んじない新しい物を作る必要があると考えた」

とのこと。

ウルフはレプリカブームに沿ったものではなかったので人気は出ませんでした。

でもその割に今でも一部で根強い人気がある事や

「あの時に買っておけばよかった」

と言われるのはブームに流されていない新しい2stスポーツの形だったからでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 1990/700/995mm
シート高 755mm
車軸距離 1380mm
車体重量 125kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(53H)
後140/60-18(64H)
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
スプロケ 前14|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 509,000円(税別)
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

BALIUS II(ZR250B/C) -since 1997-

バリオス2

「Authentic Quarter」

ZXR250が生産終了となった二年後に入れ替わる様に登場したBALIUS-II/ZR250B型。

最初に変更点をあげると

・リアをリザーバータンク付きの二本サス化
・再設計されホイールベースを伸ばしたメインフレーム
・点火時期を調整し吹け上がりを良くするK-TRIC(スロポジセンサ)
・ライディングポジションの見直し
・テールカウルのデザイン変更
・サイレンサーを大型化

などなどと先代よりも安定性に重きを置いたモデルチェンジでポジションも大きく見直されアップライトなものになっています。

BALIUSのポジション

何気にステップ位置まで変わっているんですが、これ単純にステップを替えたわけではなく実はメインフレームのピボット(スイングアームの付け根)部分を変更しているなかなかの大手術。

足つき抜群でエンジンもビュンビュンで250らしいスリムさ、そしてデザイン性の良さから人気が出てロングセラーとなったからこれだけの変更が出来たのは言うまでもないかと。

BALIUSのエンブレム

ちなみにエンブレムも変わっていて、先代A型が跳ね馬みたいだったのに対しB型は駆け馬スタイルになっています。

そしてバリオス2と言えば紹介しておきたいのが限定カラーモデル。

ツートンカラー

左右でそれぞれ別のカラーリングをしている面白い配色。一粒で二度美味しい的な・・・しかも限定1000台。

そしてもう一つはスズキから出されたGSX250FXというモデル。

GSX250FX

見て分かる通りこれはスズキにOEM供給されたBALIUS-IIで型式はZR250Cになります。

車名もGSXとFXという看板ネームをW使用という早々ないコラボ仕様。

ZR250Bのカタログ

そんなBALIUS-IIですが

・1998年にキーシリンダーの防犯強化
・2000年に触媒の内蔵
・2006年にマルチリフレクター化

と改良を重ねた後、排ガス規制の強化が行われる2007年を機に惜しまれつつも生産終了となりました。ちなみに四気筒250勢としてはホーネットと並んで最後の最後まで残ったモデルになります。

それにしても改めて思いますが”250”で”直四”で”DOHC”で”4バルブ”なんて一昔前のレースマシンくらい。これを普段遣いの街乗りバイクに活用するなんて本当に無駄の極みとしか言いようがない。

ピストンサイズ

身近なもので例えるとアースノーマットのカートリッジやヤクルト一本分程度の小さな燃焼室にバルブを4つ配置し、それを4部屋連結させてシャカシャカと忙しなく動くことで18000rpmまでビュンビュン回る。これを無駄と言わずして何と言いましょう。

ZX250CE

ロマンか。

主要諸元
全長/幅/高 2070/735/1055mm
シート高 745mm
車軸距離 1400mm
車体重量 147kg(乾)
燃料消費率 39.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 40ps/15000rpm
最高トルク 2.4kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/70R17(66H)
バッテリー YTX7L-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 509,000円(税別)

年次改良

1998年:盗難抑止強化されたキーシリンダーとハンドルロック

2000年:新排ガス規制に対応するためKLEENとKCAを装備し39.5馬力に
※KLEEN:排気ガスを浄化する触媒|KCA:燃え残りに空気を送って再燃焼させるエアインジェクション

2006年:マルチリフレクター式ヘッドライト化

系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

BALIUS(ZR250A) -since 1991-

ZR250A2

「Mind Trip Quarter」

時代は少し遡ってZXR250/RがC/D型にモデルチェンジしたのを機に追加販売という形で登場したカワサキ初の四気筒250ネイキッドとなるBALIUS/ZR250A型。

・バフがけされたエンジン
・カムを変更し低中速を重視
・フライホイールマスをアップ
・4-1集合ステンレスエキパイ
・Φ38mmの高張力ダブルクレードルフレーム
・角型アルミスイングアーム
・軽量3本スポークと偏平ワイドタイヤ
・シングルディスクで軽量化
・アップライトなバーハンドル

など”フリーテイスト”というコンセプトを元に開発されたネイキッドになります。

1991バリオス

ネイキッド需要の拡大に応えるように発売された面が強いのですが、ZXR250/Rをストリート向けにチューニングしているだけあって街乗りではZXR250/Rより速いという高性能っぷり。

そのくせアップライトで振り回しやすくボディもスリムだから完全に街乗りビュンビュン系。

バリオス

でもバリオスの一番評価された部分はそういった走行性能ではなくデザインにあると断言できます。

なぜならバリオスはZXR250と同じように1993年モデル(ZR250A3)から5馬力ダウンの40馬力規制車になったんですが、その年にクラス販売台数一位を記録したから。馬力が落ちようとバリオスの人気は落ちなかったんです。

ZR250Aのロゴ

デザインの肝はやっぱりネイキッドでありながら備え付けれているゴツいラジエーターガードでしょうね。タンクの神馬エンブレムも貢献しているでしょうが。

1991バリオス

しかしいま改めて振り返ってみると本当にこの頃のカワサキネイキッドは凄かったと思います。

というのもご存知のようにカワサキは1989年にゼファーという時代に逆行するオールドルックのネイキッドを出して大ヒットした。そんな状況の中で次の一手として出してきたのがゼファー(ゼフィロス)と同じくギリシャ神話に登場する不死の馬と同じ名を意味するバリオス。

神馬バリオス

そんなバリオスの何が凄いってゼファーへ前に倣えしなかったこと。ネイキッドという懐古要素を持ちつつも現代的なデザインでゼファーとはまた違うスタイルを持ち、それが人気となった。

ちなみにその後に出たのが近未来的なネイキッドで近年になって再評価されているXANTHUS(同じくギリシャ神話の神馬クサントス、英語読みでザンザス)になります。

バリオスカタログ

『ZEPHYR、BALIUS、XANTHUS』

という三種三用のネイキッドをカワサキはわずか2年余りで立て続けに出していたわけです。

ZR250Aカタログ

これはもうまさに文字通り

「神がかっていた」

としか言いようがないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2005/730/1055mm
シート高 745mm
車軸距離 1380mm
車体重量 141kg(乾)
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/15000rpm
[45ps/15000rpm]
最高トルク 2.6kg-m/11500rpm
[2.4kg-m/11000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/70R17(66H)
バッテリー YTX7L-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 499,000円(税別)
※[]内は93年モデル(A3)以降
系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

ZRX1200DAEG(ZR1200D) -since 2009-

ZRX1200DAEG

「Japanese Standard Naked」

排ガス規制に伴いフルモデルチェンジされたZRX1200DAEG/ZR1200D型。

FI化に伴いヘッド周りを始めとしたエンジンの見直しで自主規制突破の110馬力となり、ミッションもスムーズさに定評があったZZR1200ベースの6速に変更されスポーツ性を更に向上。

ダエグメカニズム

ホイールも五本スポークタイプとなり、外装もシェイプアップされスリムさが更に増しました。

他にもフレームはもちろん足回りに至るまで改良が入っています。

ZRX1200DAEGで行われた改良の狙いというか目指したものというのは

『国内ベスト』

というのもこのZRX1200DAEGから国内のみの販売なんですね。何故そうなったのか少し説明します。

ローソンレプリカ

プロジェクトリーダーの山本さんいわく、ZRXは本当は先代で終わる予定だった。

これは欧州を中心に

「ネイキッドといえばストリートファイター」

という認識そして人気が広まっていたから。

だからカワサキも水冷Zに大きく舵を切る事となり、いわゆるスタンダードネイキッドはストリートファイターベースで行こうという話に。そのためZZR1400をベースにしたネイキッドや、Z1000ベースにしたネイキッドなどの案で進んでいました。今にして思えばZ900RSが正にソレですね。

しかしそれでは旧来のZRXオーナーを始めとした日本のビッグネイキッド層を満足させるものは造れない。

「日本のビッグネイキッドユーザーを満足させるビッグネイキッドを別に造ろう」

となったのがプロジェクトの始まり。

そして様々な車種を身をもってテストした結果

「日本の道を走って最も楽しいのはやはりZRX1200Rだ」

という結論になった。

操。爽。装。創。

ZRX1200DAEGが国内仕様のみだった事や、大変貌する事がなかった理由はここにあります。

開発リーダーの山本さんが無類のZRX好きというのもあるんでしょうけどね。ZRX1100に十年乗っているそうです。

ちなみに名前が”R”から

『DAEG(ダエグ)』

というルーン文字になった事にも胸を熱くさせる話があります。

japanese standard naked

「着実な成長」

「進歩」

「終わりと始まり」

「突破」

「新しい展開」

という前進的な意味なんですが、この名前を入れたのは開発チームじゃない。

「完成の域にあったZRX1200Rを少しでも良くしようと血眼になって開発に取り組んでいた開発チームの思いを車名に刻みたい」

と営業側からの申し出で付けられた名なんです。

GPZ900Rからずっと磨き続けてきた集大成、大好きなZRXの総仕上げという熱意が伝わったんでしょうね。

最後に開発リーダーを務められた山本さんが、生産終了となった際にRIDEのインタビューで仰っていた言葉を引用して締めたいと思います。

ZRX1200DAEGファイナルエディション

「GPZ900Rの伝統を汲む最後のモデルになりました。分かる人に大事に乗り続けていただきたいです。」

※2017年モデルをもって生産終了

主要諸元
全長/幅/高 2150/770/1155mm
シート高 795mm
[790mm]
車軸距離 1470mm
車体重量 246kg(装)
燃料消費率 25.8km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1164cc
最高出力 110ps/8000rpm
最高トルク 10.9kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR9EK
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前18|後44
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,120,000円(税別)
※[]内はLIMITED
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)

【関連車種】
CB1300の系譜XJR1300の系譜Bandit1250の系譜

ZRX1200R/S(ZR1200A/B) -since 2001-

ZRX1200R

「ワインディング エリート」

二代目となるZRX1200R/SのZR1200A/B型。

このモデル何が恐ろしいって一見すると排気量しか変わっていないように見えて実は大きく変わっている事。

ZR1200

ナンバリングにもなっている通りボアを3mm、ストローク1.4mm拡大され1164ccとなっているわけですが、これほぼ作り直したエンジン。

元々GPZ900Rにルーツがあるエンジンだったため、1100までは想定していたものの流石に1200まで上げるのは無理だった。

ZRX1200Rカタログ写真

そこでスリーブ(シリンダーの内張りみたいなもの)を取っ払ってメッキシリンダー化。それに伴いクランクケースに至るまで色々と手を加えたので実は先代とあまり互換性が無い。

フレームの方もヘッド周りの剛性を上げ、スイングアームも剛性を大幅に上げつつホイールベースを13mm延長すると共にピボット位置も5mm下げ。

ZRX1200Rカタログ写真

足回りもリアショックの受け側を下げ180/55にワイド化し、フロントフォークのオフセットやセッティングを見直しなどなど。

「まさかそこまで変更されていたとは・・・」

と思った人が多いと思います。そう思うのも当たり前な話。見た目はほとんど変えていないんですから。

ZRX1200Rカタログ写真

この二代目を託された企画の真田さんいわく

「先代を踏襲し正常進化」

というのがコンセプト。ザックリ言うとより懐の広いモデルにするためのモデルチェンジ。

そんな中でもパッと見で大きく変わったのが、丸目のIIに変わって登場したZRX1200S/ZR1200B型。

ZRX1200S

丸目同様に国内では1000台弱しか売れなかった様なので知らない人も多いかと。

まあこれは日本向けというより当たり前の様に何泊もするツーリングをする欧州向けに造られた意味合いが強いモデルですしね。

ZR1200B

その際にビキニカウルのRはどうしても不向きな所があり、もっと長距離ツーリングに使えるようにしてほしいという強い要望があったから造られたモデルなのがこのS型。サスペンションのセッティングも変えてあります。

更にマイナーなのがZRX1200/ZR1200C型というモデル。

ZR1200C

1200にも丸目モデルあったんですね。欧州のみで販売されていたようです。

一方でこのモデルからアメリカにも輸出されるようになったんですが向こうはRモデルだけ。

北米版ZRX1200R

元ネタである伝説のローソンはアメリカだから当然か。

ちなみにローソンレプリカも古い歴史なので少しだけ解説すると1981年に北米カワサキの要望によりAMAで勝つためにベースマシンとしてZ1000Jを造ったのが始まり。

Z1000J

それをベースにカスタマイズしたのが初のライムグリーンZことKZ1000J改で、このモデルでAMAチャンピオンに輝いたのがエディー・ローソンという方。

初代ローソンレプリカ

この快挙を記念して出されたのがローソンのJ改レプリカであるR型ことKZ1000RとKZ1100Rになります。

これがローソンレプリカの始まりなんですが、意外なことに当時の車体設計を担当していた山崎さんいわく社内でローソンレプリカといえばR型ではなくS型の方だったそう。

ローソンレプリカS1

S型というのはこのKZ1000SというモデルでAMA連覇を狙って補強を始めとしたフルチューニングが予め施された今で言うホモロゲーションモデル。製造はレギュレーションで定められた規約の最低台数である30台のみ。

つまりホモロゲ(S型)の方をローソンレプリカと呼んでいて、ローソンレプリカ(R型)をローソンレプリカと呼んでいたわけじゃなかった・・・頭がこんがらがる。

ただZRXも正確に言うとR1のレプリカというよりこのS1のレプリカと言ったほうが正しいかと思います。

ZR1200A

写真では分かりにくいんですが採用前提で開発されたトラス構造パイプスイングアームやエキセントリック式チェーンアジャスターはS型のものですしね。

社内の人間にとってはSの方がローソンレプリカだったという驚愕の事実だったんですが、もう一つ驚きなのが

「ローソンレプリカがこれほどの人気ブランドになるとは誰も思っていなかった」

という事。

当時はZ人気に陰りが見え始めていた頃だったのに加え、少し経つとGPZ(第二世代Z)への世代交代に成功していたから。

GPZの時代

更にその後もZZRやZX-9Rなどカワサキのフラッグシップがどんどん出た。

・・・にも関わらずローソンレプリカの人気はカワサキの意向に反するように一向に衰えなかったんです。

でもだからこそこうやって再び日の目を見る事が出来た。元祖ローソンモデルに携わられてた山崎さんもこう仰られていました。

ZRX1200Rローソンレプリカ

「ローソンレプリカはZやGPZとは全く違う。ユーザーの皆さんが育ててくれた幸運なブランドですね。」

※2004年:給排気の見直しとピボット位置の調整

主要諸元
全長/幅/高 2120/780/1150mm
[2120/780/1230mm]
シート高 790mm
車軸距離 1465mm
車体重量 223kg(乾)
[227kg(乾)]
燃料消費率 25.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1164cc
最高出力 100ps/8000rpm
最高トルク 10.4kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー FTZ14-BS
{TYX14-BS1※04以降}
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 960,000円(税別)
[990,000円(税別)]
※[]内はZRX1200S(ZR1200B)
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)

ZRX1100/II(ZR1100C/D) -since 1996-

ZRX1100

「The Finest Footwork」

アメリカの市販車レースで二連覇を果たしたマシンのレプリカであるKZ1000Rに通ずる佇まいで登場したZRX1100/ZR1100C型と丸目ネイキッドタイプのZRX1100-II/ZR1100D型。

ZRX1100とKZ1000R

少し前下がり気味にしてスポーティさをアップさせる現代風アレンジが加えられているのが特徴的ですね。

ZRX1100が登場した背景には

・ネイキッドブーム&レース(NK-4)
・1990年750cc自主規制撤廃
・1995年限定解除から大型自動二輪へ

があります。

そもそもこのブームに火を付けたのは他ならぬカワサキのゼファー400/750/1100なんですが、それから暫くしてゼファーとは別にスポーツモデルとして開発されたのがZRX1100というわけ。

ZRX1100海外パンフ

Z=四気筒
R=ネイキッド
X=究極

で究極の四気筒ネイキッドという意味。

ちなみにいまの若い人は信じられないかもしれませんが『ネイキッド』という言葉が国内で明確に定まったのもこの頃だったりします。

ZRX1100/ZR1100C

そんなZRX1100はエンジンは先に紹介したGPZ1100の物をベースにフライホイールマスを上げて安定性を向上させているんですが、凄かったのはどちらかというと車体の方。

まず何より車体が非常に軽量コンパクトに纏められているという事。

ZR1100C

例えばホイールベースは1450mmと400クラス並の短さ。

加えて重要なのがハンドリングが非常にクイックでグリングリン寝かせて走る味付けになっていること。

これはフロントフォークを思い切り立ててフォークオフセット(ステムホールと)は30mmと非常に短めにしているから。要するにスーパースポーツ系に近いレイアウトになっているというわけ・・・つまり

カワサキZRX1100

「ビッグネイキッドのセオリーを無視したビッグネイキッド」

というのがZRX1100だったんで・・・がこれがウケた。しかも海外でも。

ZRX1100はもともと日本国内のみの販売を計画していたモデルだったものの、試しにケルンモーターショー(ドイツ)に出展してみたところ非常に高い反響があったため急遽ドイツとイタリアにはビキニカウル付きのC型が、フランスとオランダには丸目のD型が輸出される事になりました。

ZR1100-2

だから国によってはカウルレスであるコッチ、ZRX1100-IIのほうが有名だったりします。日本ではRが八割、IIが二割で圧倒的にRモデルが人気だったようですが。

最後に小ネタを話すとZRX1100はそのビッグネイキッドらしいアップライトなポジションとトルクフルなエンジンを持つ一方で、ビッグネイキッドらしからぬ軽快さも持っていた事から一般ユーザーだけでなくジムカーナなどから非常に人気というかランカー御用達マシンでした。

でも実はそうなったのはある意味では必然だったとも言えるんです。というのもこのZRX1100の車体を担当していたのは古橋さんというモノコックフレームの方でも有名な方なんですが、企画の谷さんいわく

ZRX1100カタログ写真

「ZRXがこうなったのは古橋が当時ジムカーナにハマっていたから※KBM/Vol.49より」

との事。

主要諸元
全長/幅/高 2120/780/1150mm
[2120/780/1085mm]
シート高 790mm
車軸距離 1450mm
車体重量 222kg(乾)
[221kg(乾)]
燃料消費率 26.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1052cc
最高出力 100ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後170/60ZR17(72W)
バッテリー YTX14-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 940,000円(税別)
[920,000円(税別)]
※[]内はZRX1100-II(ZR1100D)
系譜図
GPz11001995年
GPZ1100
(ZX1100E/F)
ZRX11001996年
ZRX1100/II
(ZR1100C/D)
ZRX1200R前期2001年
ZRX1200R/S
(ZR1200A/B)
ZRX1000DAEG2009年
ZRX1200DAEG
(ZR1200D)

ZRX400/2(ZR400E/F) -since 1994-

ZX400K

ゼファーでブイブイ言わせてたカワサキが出したもう一つのネイキッドであるZRX。

ZZR400の水冷エンジンを積んだモデルで見た目から分かる通りローソンレプリカでお馴染みZ1000Rをイメージしたネイキッド。ローソンのZ1000Rというのは簡単に言うとアメリカのレースにおいて憎きホンダを打ち負かしチャンピオンに輝いたマシンです。

KZ1000R

フルカウルのZZR、ネイキッドのZRXという住み分けですね。ちなみに兄貴分はZRX1100/1200/DAEGといい、”ZRX”だけだとこの400の事を指します。

弟分であることから勘違いされがちですがこう見えて兄貴分であるZRX1100より2年も先に出ています。

ZRX1100

上が1100で下が400。

ZR400E

ただ同じZ1000Rがデザインベースながらも比較的スポーツルックなデザインにリファインしたZRX1100に対してZRXはお尻の跳ね上げなどもせず非常に渋いZに通ずるデザイン。

マシンの特性も見た目通りで、クラスとしては小柄で俊敏な1100に対して400は大きくドッシリ系のバイク。

ZRX-2

一年遅れでビキニカウルを外して砲弾型メッキメーターやメッキホイールを採用したオーソドックスなZRX-2も発売。

多分ZRXシリーズで混乱してる人も多いと思うのでまとめると

400はビキニカウルが付いた1と丸目の2

1100もビキニカウルが付いた1と丸目の2

1200はビキニカウルのRと大型のハーフフェアリングを付けたSで丸目なし

DAEGはビキニカウルのRのみで丸目もハーフフェアリングもなし

という事になってる。ややこしいね。

ZRX-II

まあ要するに丸目ZRXは400と1100だけですが、結局ビキニカウルの付いた無印やRしか売れなかったから1200以降では無くなったわけですね。大した防風性もないビキニカウルの方が売れるネイキッドって珍しいですよね。

ZRXスーパーブラック

これがZの神通力というやつでしょうか。

今さらアレコレ言うバイクじゃないので書くことがない・・・のでエキセントリックカラーの話をしましょう。ZRXといえばコレでしょう。

ZRXフレーム

ZRXシリーズの特徴であるエキセントリックカラー。

ZZR1100やゼファー等にも採用された歴史があり、新型のZ1000(D型から)にも採用されてますけど、ZRXがDAEGまで採用されていた事と丸パイプスイングアームに似合ってることからZRXのイメージが強い人も多いのではないでしょうか・・・そうでもない?

構わずに話を勧めると、これはまあ見て分かる通りチェーンアジャスターなわけですが一般的なのはこんなのですよね。

チェーンアジャスター

アクスルシャフトを緩めて、アジャストナットを回して左右のズレと張りを見ながら調整してアクスルシャフトを絞めて完了。やったことある人は分かると思いますが非常に面倒くさいです。

ところがこれがエキセントリックカラーならとっても簡単。

エキセントリックチェーンアジャスター

スイングアームの先端に付いているクランプボルトを緩めてエキセントリックの穴に六角を突っ込んで回して調整しクランプボルトを絞めるだけ。左右両方やる必要もアクスルシャフトを緩める必要もなし。なんてお手軽エキセントリック。

更にエキセントリック使い(?)の間では有名なんですが、このカラーは真円つまり360度回るので、カラーを反転させる事も出来るわけです。

エキセントリックカラー反転

こうすると何が変わるのかというと車高が変わります。

下に向ければ車高が上がり、上を向ければ足付きが良くなる面白い構造・・・なんだけど、このエキセントリックがメジャーにならない理由はここにあるわけです。

要するにチェーンの張り調整次第で車高まで変わってしまうんですね。そうすると挙動も大きく変わってしまうので面白いと思う人がいる一方で、違和感を覚える人も非常に多いというわけ。

ZRX400

最後にZRXに話を戻しましょう。

ZRXはZZRと併売されていたんですが、96年にはラジエーターマウント位置の変更とリアサスリザーバータンクデザインの変更といった少変更が入ってますが、大きく変わったのは1998年モデルから。

ZRXモデルチェンジ

K-TRICキャブ(KAWSAKI Throttle Responsive Ignition Control)、サイレンサー別体式マフラー、そしてクラス初となる6POTキャリパーなど。

K-TRICっていうのは要するにイグナイターの点火タイミングを遅らせてノッキングを起こさせない様にするシステム。なんでそうなるのかっていう話まで始めると途方も無い長さになってしまうのでそのうち豆知識にでも書きます。

ZR400E後期

そしてローソンカラーが出たのもこの98年モデルから。ZRXシリーズってDAEG含めて全部そうなんだけど、ローソンカラーは絶対後出しなんだよね。消費者の心理をわかってるというか商売上手というか・・・

一応この後も02年にはギア比の変更、04年にはイモビの採用といった少変更が加わってますが、大きく前期後期と分けるなら~97と98~でしょうね。

結局ZRXはZZRよりも一年長い2008まで販売が継続されました。

ZRX火の玉カラー

カワサキの400ネイキッドといえばゼファーってみんな答えるけど、Zの流れを見たらZRXの方がZに近いネイキッドかもね。

主要諸元
全長/幅/高 2095/745/1130mm
[2095/745/1080mm]
<2075/745/1115[1065]mm>
シート高 770mm
車軸距離 1450mm
車体重量 185kg(乾)
[195kg(乾)]
燃料消費率 36.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11000rpm
最高トルク 3.8kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80R17(57H)
後150/70R18(70H)
<前110/70R17(54H)
後150/70R18(70H)>
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.7L
交換時2.8L
フィルター交換時3.2L
スプロケ 前15|後43
<前15|後42>
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 659,000円(税別)
[679,000円(税別)]
※[]内はZRX-II(ZR400F)
※<>内は98年以降
系譜図
zx400d1985年
GPZ400R/FX400R
(ZX400D/E)
zl400a1986年
エリミネーター400/SE/LX
(ZL400A/B/C/D)
zx400f1987年
GPX400R
(ZX400F)
Zx400k/n1990年
ZZR400
(ZX400K/N)
ZR400E1994年
ZRX/2
(ZR400E/F)

【関連車種】
CB400の系譜XJR400Rの系譜GSR400の系譜

Z1000/R(ZR1000H/J)-since 2017-

2017年式Z1000

「sugomi」

五代目にあたるH型とJ型。このモデルはEURO4(排ガス規制)に対応するためのモデルチェンジという意味合いが強いモデルになります。

2017年式Z1000リア

もちろん

・ウィンカーやシートカウルデザインなどの変更

・シフトインジケーター(ギア表示)

・シフトアップインジケーター(シフトアップお知らせランプ)

・キャタライザーやマッピングの変更

・サスペンションをリセッティング。

・ABSモデルの標準化

などさらなる改良も入っています。

そしてこのモデルから上位グレードのZ1000R(ZR1000J)が登場。

2017年式Z1000R

・リモートアジャスター付きオーリンズ

・ブレンボキャリパー&ディスクローター

・ステンメッシュブレーキホース

・専用カラー

・専用タンクパッド

を装備した上位グレードになります。

ただ今回のモデルチェンジの主役はZ1000というよりはNinja1000かと。

Ninja1000
(ZX1000W)
-since 2017-

2017年式Ninja1000

見て分かる通りヘッドライトのLED化を機にカウルデザインが大きく変わりました。

鼻先を伸ばしアッパーからスクリーンまでの流れを改善することで防風性を改善。

その他にも

・ABSモデルの標準化

・メーターを一新

・ETCを標準搭載

・シートの更なる肉厚化

・グラブバーやOPのパニアケース形状の改善

などツアラーとして順当に進化してる感じです。

Ninja1000LEDヘッドライト

でも一番の目玉はKCMF(カワサキコーナリングマネージメントファンクション)じゃないかと思います。

IMU(慣性計測装置)制御というやつでH2やZX-10Rにしか積まれてなかったんですが、Ninja1000にも率先して搭載する形となりました。

KAWASAKI KTRC

・トラクション制御
・ウイリー制御
・スライド制御
・トラクション制御
・ウイリー制御
・ピッチング制御
・旋回中のブレーキ制御
・エンジンブレーキ制御

などなど。やはり売れ筋はお金の掛け方が違いますね。

BOSCH製IMU

ちなみにこれらが可能になったのはBOSCHが開発した超小型高性能IMU(写真左SU-MM5.1)があってのこと。

KAWASAKIに積まれているIMUはほぼコレ。ちなみにもっと小さいのがスマホにも入ってたりします。

2017Ninja1000

まあそんな話は置いといてIMUを装備してほぼフル装備に近い状態となったNinja1000。

販売台数を見るに日本国内では安定した台数が売れているようです。

残念ながらZ1000との内約が分からないのですが、目撃頻度からいってもNinja1000が大部分を占めているんじゃないかと。

猪突猛進を具現化してるZ1000もカッコいいと思うんですけどね。

Z1000とNinja1000

こうやって並べて見ると仁王像みたい。

主要諸元
全長/幅/高 2050/790/1055mm
{2045/790/1055mm}
[2100/790/1185~1235mm]
シート高 815mm
車軸距離 1440mm
{1435mm}
[1440mm]
車体重量 211kg(装)
{221kg(装)}
[235kg(装) ]
燃料消費率 17.5km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
[19.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1043cc
最高出力 141ps/10000rpm
最高トルク 11.3kg-m/7300rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.2L
フィルター交換時3.8L
スプロケ 前15|後41
{前15|後43}
[前15|後41]
チェーン サイズ525|リンク112
車体価格 1,144,800円(税込)
{1,420,200円(税込)}
[1,274,400円(税込)]
※{}内はZ1000R(ZR1000J型)
※[]内はNinja1000
系譜図
Z11972年
900Super4
(Z1/A/B)
Z900
(A4)
Z1000A1976年
Z1000
(Z1000A1/2)
Z1-R1977年
Z1-R/2
(Z1000D)
Z1000MK2
(Z1000A3~)
Z1000J1981年
Z1000J
(Z1000J)
Z1000R
(Z1000R)
Z1100GP1981年
Z1100GP
(Z1100B)
Z1100R
(Z1100R)
GPz11001983年
GPZ1100
(ZX1100A)
ZR1000A2003年
Z1000
(ZR1000A)
ZR1000B2007年
Z1000
(ZR1000B)
ZR1000D2010年
Z1000
(ZR1000D)
Ninja10002011年
Ninja1000
(ZX1000G/H)
ZR1000L/M2014年
Z1000
(ZR1000F/G)
Ninja1000
(ZX1000L/M)
ZX1000W2017年
Z1000/R
(ZR1000H/J)
Ninja1000
(ZX1000W)
ZX1002K2020年
Ninja1000SX
(ZX1002K)