GSX-R1000(K9/L0/L1)-since 2009-

K9

「揺るぎないコンセプトの、GSX-R」

遂にGSX-R750ベースを完全に脱した五代目のGSX-R1000/K9~L1型。

最大の変更点は完全専用設計となったエンジンで、主要三軸を三角形(メインシャフトを持ち上げる形)にすることで全長を更にコンパクト化。

これに同じく新設計フレームを合わせることでホイールベースを10mm短くしつつもスイングアームを33mmも延長させコーナリング性能を向上。

K9エンジンレイアウト

ちなみにマフラーは変わらずチタンの二本出しなんですが、5kgの軽量化に加えマスの集中化とバンク角の確保を更に突き詰めた事で湾曲化。

これ凄くお金がかかってるんだとか。

L0正面

他にもメーカー最速でのBPF(ビッグピストンフォーク)採用と相変わらず出し惜しみの無い造りというか、750の方で書いた通りサプライヤーの熱が伝わってくる内容なんですが、少し厳しいことを言わせてもらうと当時は少し落胆する声が見られたもの事実。

K9エンジン

というものGSX-R1000はこれまでずっと馬力トップを塗り替え続けてきた歴史があったから、現実味が出てきた200馬力超えをするのはスズキのGSX-R1000だと期待する人が非常に多かった。

しかし蓋を開けてみたら185馬力で据え置きだった事に落胆する人が居た・・・でもそうじゃない。

これだけは覚えておいて欲しいんですが、GSX-R1000のコンセプトは最高馬力をマークする事ではないんです。

2009GSx-R1000

GSX-R1000はそれまでGSX-R750から継がれたエンジンを改良し、それに合わせて車体を作る手法でした。

それが今回のフルモデルチェンジで遂にエンジンを新設計、つまりほぼ真っ白な状態から開発する事になった。

K9テール

そうした時にスズキは

『どんな状況下でも走る、曲がる、止まるの基本性能No.1』

を掲げエンジンありきではなく車体全体のバランスを考えで新たに作り直し、トラクション性能やコーナリング性能やハンドリングなどが大幅に向上しました。

K9ディメンション

じゃあ合わせるように造られた完全新設計エンジンはどういう感じなのかといえば、相変わらずSSとしては異例のロングストロークなんです。

なんでって初代でも話しましたが、それこそがGSX-R1000の本当のコンセプトであり幅広い人に認めてもらえた部分でもあるから。

それをカタログスペック競争が最高潮に達していた時代にも関わらず全くブレずに貫き通した。

カタログ写真

『揺るぎないコンセプト』

その言葉の真意はここにある。

主要諸元
全長/幅/高 2045/720/1130mm
シート高 810mm
車軸距離 1405mm
車体重量 205kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 185ps/11500rpm
最高トルク 11.9kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル SAE 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,500,000円(税別)
※モトマップ価格
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)

GSX-R1000(K7/K8)-since 2007-

K7

「Own The Racetrack」

重ねあわせたようなカウルが有機的なデザインへと進化した四代目GSX-R1000にあたるK7/K8型。

最初に変更点を上げると

・新設計オールダイキャストフレーム
・旧排気ポートの拡大
・新設計ピストン
・スロットルボディ&FIの変更
・7馬力アップの185馬力
・ダブルアジャスター付きフロントフォーク
・電子制御ステアリングダンパー
・油圧クラッチ
・S-DMS(出力モード切替)
・アジャスタブルフットペグ
・プロジェクターヘッドライト

などなど目立つ部分だけでもかなり大掛かりな変更となっているんですが、一方で車重が+6kgとなった理由はこれ。

07R1000車幅

『SAES(Suzuki Advanced Exhaust System)』

頑なにセンターアップマフラーを採用しないと思ったらまさかの左右二本出しマフラーで、キャタライザー(腹下の弁当箱)も含めると約13kgと結構な重量。

これのせいで重くなっている・・・んだけど、あくまでもこれは実数値の話で乗ると更に軽くなった様に感じること間違いなし。

K7フレーム

何故ならこのマフラーは騒音規制に対応するための容量確保とマスの集中化を高めるために生まれたGSX-R1000では定番の

『正論の形』

だからです。

実際このK7/K8はプロジェクターリーダーの飯尾さんいわく世界中で高評価を獲得しでセールスでも歴代最高なんだとか。

K7カタログ

具体的にどう評価されていたのかと言うと、何でも遠慮なしに(特に日本車を味噌糞に言う)Motorcyle.comが

「シャーシとサスペンションとホイールベースのバランスが完璧でハンドリングが素晴らしい」

と褒めて2008年BESTモーターサイクルの第六位にするほど。

それを裏付けるようにレースでも

・世界耐久選手権優勝
・AMAスーパーバイク優勝
・JSB1000優勝
・鈴鹿8耐優勝(ヨシムラ27年ぶり)

などなど輝かしい戦績を残しました。

ただそれより知ってほしいK7/K8の素晴らしい所は

『上級者の為だけのモデルじゃない』

という事。

例えばこのモデルから出力モード切り替え機能S-DMS(Suzuki Drive Mode Selector)が付きました。

2008GSX-R1000

当時まだ珍しかったこの機能が付いたキッカケは先代の開発中にコーナーフィーリングについてテストライダーから意見を聞いたところ

「もっとアグレッシブなフィーリングが欲しい」

と言うテストライダーと

「もっとコントローラブルなフィーリングが欲しい」

と言うテストライダーで意見が真っ二つに割れた事。

この結果を見た規格の鈴木さんが次のモデルでは両方味わえるようにしようと提案し、セカンダリースロットルバルブ(ライダーのアクセルワークを補助する見えないアクセル)を活用する形で

・アグレッシブなA
・中間に位置するノーマルのB
・コントローラブルのC

という3つのモードを付けたというわけ。

簡単に言っていますが3つのモードを付けるということは開発の負担が3倍になる。しかも当時はほとんどのメーカーがやってない状況だったものあり大反対にあったものの、プロジェクターリーダーだった飯尾さんが推す形で採用。

そしてもう一つピックアップしたいのが上下前後14mmの範囲でポジションを変更できる可変式ステップ。

可変式ステップ

本来なら一番下のステップ位置が窮屈にならず調度いいものの、レーシングタイヤを履いてサーキットをフルバンクさせるようなトラック派は擦ってしまう恐れがあった。

しかし上げてしまうと下半身が窮屈になりサーキット以外での使い勝手が悪くなってしまうという事で、モード切替と同じく先駆けるように採用した。

コスト的にかなり厳しくなるにも関わらず何故これらを率先して採用したのかといえばGSX-R1000は初代からずっとトラック志向な人だけではなく

「どんなライダーの要望にも応えられるSSにする」

という信念ともいえる考えあったから。

K7壁紙

それが現れているのがこれらの変更を率先してやった事であり、また変えなかったシート高810mmでもあり、比較的優しいポジションだったりするんです。

主要諸元
全長/幅/高 2045/720/1130mm
シート高 810mm
車軸距離 1415mm
車体重量 172kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 185ps/12000rpm
最高トルク 11.9kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル SAE 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時3.0L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後43
チェーン サイズ530|リンク112
車体価格 1,390,000円(税別)
※モトマップ価格
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)

GSX-R1000(K5/K6)-since 2005-

05r1000

「Redefining Total Performance」

フルモデルチェンジされ三代目となったGSX-R1000のK5とK6。

先に述べた通りスーパーバイク(市販車レース)における四気筒レギュレーションが750から1000に変わり、リッターSSがレースベースとなった事で2004年から各社とも競争が激化していました。

2004年を境に各社からそれまでのSSとは一線を画するモデルが次々と出てきたことは皆さんもご存知のことと思います。

K5サイド

そんな中で追われる立場だったGSX-R1000なんですが、まず見て分かるようにデザインが物凄く凝ったものに変更されました。プロジェクトリーダーの飯尾さん曰くこのモデルからデザインにも大きく予算を割くようになったからだとか。

ただK5/K6はそのデザインに負けずとも劣らないほど中身の改良も凄かった。

・ボアを0.4mm拡大し998cc化

・チタンバルブ化

・圧縮比を0.5アップ

・上記により164馬力から178馬力へアップ

・フレームを目の字から日の字にしてコンパクト化

・逆三角形チタンサイレンサーなどで2kg減の166kg

・スリッパークラッチの採用

などなど期待を裏切らない大幅な性能向上。

K5/K6ディメンション

ただし先代に引き続きこのモデルも真の魅力というか真の凄さはそこではなくコンパクトな所にあります。

というのもこのモデルは

「数値以上に感じられる小ささをライダーに」

という考えのもと開発された経緯がある。

K5face

これがどういう事かというと、全体の寸法を小さくしたのはもちろんのこと、ステアリングを6mm手前に持ってくることでハンドルとシート(ライダー)に近づけるなど、跨ってみると明らかに数値以上の小ささに思える変更が行われているんです。

加えてべた褒めされたのがシート。

K5/K6リコール

なんとただでさえ低かったシート高がさらに20mmも下げられて810mmになった。

しかも数値以上の小ささを実現させるため車体を極限までスリム化させシートも三角形に近いほど抉られてるから驚くほど足付きが良好。他のモデルなら片足がせいぜいな人でも両足がベッタリ付くほど。

これがK5/K6が好評というか今でも名前が上がるほどの評価を得た理由。

圧倒的な速さを持ちつつも車体は非常にコンパクトでハンドルも近く足付きも良い。

K5サイド

『最大パワーの最小リッターSS』

だった事が今でも名前が上がるほど物凄く評価されたんです。

ちなみに当時SS界ではセンターアップマフラーが流行っていたんですがスズキは採用せず右一本出しでした。

K5純正マフラー

これはエンジン設計の山田さん曰く

「これが正論の形だったから(操安を取ったから)」

ヘッドライトに続きここでも正論を押し通した形。GSX-Rというバイクは正論のみで造られているSSという事ですね。

補足ですがK5/K6はフレームに関するリコールが行われています。

海外動画等でよく見るウイリーという行為をするとフレームにクラックが入るとの事。

K5/K6リコール

フレームを軽くしすぎたのが原因ですが・・・ドッタンバッタンとウイリーするのが悪いのではなかろうか。

あまりにコンパクトで振り回せるサイズ感にした事が災いした形と言える。

主要諸元
全長/幅/高 2030/710/1130mm
シート高 810mm
車軸距離 1405mm
車体重量 166kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 999cc
最高出力 178ps/11000rpm
最高トルク 12.0kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル SAE 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時3.0L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 1,300,000円(税別)
※モトマップ価格
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)

GSX-R1000(K3/K4)-since 2003-

K3

「Are you one of the chosen?」

初のモデルチェンジとなった二代目GSX-R1000のK3/K4型。

・リブ持ちピボット可変式フレーム

・ダイヤモンドライクカーボンコートフロントフォーク

・ラジアルマウント4POTキャリパー

・ラムエア変更で4馬力アップ

・LEDテールランプ

・2kgの軽量化

などなどデビューするやいなや敵なし状態だったのが更に敵なし状態へ進化。

K3フレーム

更に追い風となったのが市販車レースのレギュレーション(ルール)変更。

それまで四気筒は750ccまでとなっていたのが1000ccまで拡大されることになりました。

つまり988ccという若干寸足らずながら圧倒的な速さを持っていた規格外のGSX-R1000が規格内のモデルになった。

2003color

そうなったらそりゃもうますます

「勝ちたいならGSX-R1000の一択」

という状況になり、プロダクションレースにおいてはR1000のワンメイク状態になってしまう事態を招きました。

ただし実はこのGSX-R1000のK3/K4で最も力を入れた部分は別の所にある・・・それは低域での扱いやすさなんです。

このモデルに置ける変更点で重要なのは最初に上げた見える部分ではなく、ECMの32bit化とマルチホールFIによるレスポンスの向上なんです。

K3フレーム

しかもそれは高回転域ではなくGSX-R1000の強みである低回転域を良くするためという渋いけど恩恵は絶大な部分。 

もう一つあげると顔がハヤブサに通ずる縦目二眼になったのもこのモデルからなんですが、これは別にハヤブサを真似たりブランド化したりするのが狙いがあったわけじゃない・・・これ大反対にあったんです。

2003GSX-R1000カタログ写真

これまではハヤブサと同じ様にライダーをスッポリと包み込むようなアッパーカウルが最良だと考えていたものの、空力を煮詰めていくとアッパーカウルはライダーを覆いきれないギリギリまで絞った方が良い事が分かった。

ただしそこで問題となるのがラムエアの吸気口。吸気口は可能な限り前方に置くのが圧が掛かるので良い。

K3フェイスデザイン

そうして導き出されたのがこのスリムなアッパーカウルに収められた縦目二眼と頬の様に大きく開けられた吸気口というわけ。

どうしてこれが反対されたのかと言うと当時はツリ目二眼がブームだったから。

「何故ツリ目二眼にしないんだ」

「GSX-Rの顔じゃない」

と社内はもちろん現地の代理店も反対。

しかしツリ目二眼によるセンター吸気口にしてしまうとアッパーカウルのスリムさが失われてしまう。何が何でもこの縦目二眼を採用するため企画の鈴木さんは

『世界中の代理店を説得して回る』

という気が遠くなる手段に。

何故そうまでして採用したかったのかといえばスズキの鈴木さんいわく

K3カタログ写真

「コレが正論の形だから」

今ではすっかりGSX-Rのアイデンティティになりましたね。

主要諸元
全長/幅/高 2070/715/1145mm
シート高 830mm
車軸距離 1410mm
車体重量 168kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 988cc
最高出力 164ps/10800rpm
最高トルク 11.3kg-m/8400rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル SAE 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時3.0L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 1,270,000円(税別)
※モトマップ価格
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)

GSX-R1000(K1/K2)-since 2001-

K1

「Own The Racetrack」
2001年に登場した初代GSX-R1000ことK1/K2型。

160馬力に乾燥重量170kgという圧倒的なスペックを引き提げて登場し世間を大きく賑わせました。

2001年GSX-Rシリーズ

このモデルは2000年式GSX-R750がベース(というか三兄弟)なんですが意外な事にGSX-R750をベースに更に上のクラスを開発するとなった際に、GSX-R1000でいくかもう少しスケールアップさせてGSX-R1100で行くかで意見が割れたとの事。

これが何故かというと当時の量販車レースは四気筒750ccでそれ以上は全て規格外だったから。

しかしプロジェクトリーダーだった寺田さんが

「絶対的なパワーよりもウェイトレシオを取るべき」

として1000に決定した背景があります。※BikersStation362

そうして造られたGSX-R1000はGSX-R750がベースで幅に制限があるのでボア拡大は1mmに抑え、ストロークを13mm伸ばすというSSらしからぬ超ロングストローク型に。

K1フレーム

厳密に言うとクランクウェイトやバランサーなどの手が加わっているのですが基本は同じ。

フレームの方も0.5mm肉厚にされているくらいであとはカウルからシリンダーヘッドに至るまで同じ構成。目立つ違いはフロントキャリパーが6potになっている事とフロントのインナーチューブがチタンコーティングされている事くらい。

どうしてここまで共有化に拘ったのかというとこれが実にスズキらしい所で、共通することでスケールメリット(部品辺りの単価を抑える効果)が得られるから。

K1メーターまわり

部品単価を抑える使い回しというと安物という誤解を招きがちなんですが、工業製品は生産数でコストが決まると言っても過言じゃないほど生産数が重要。

だから

マルチプラットフォーム化

部品コストが抑えられる

同一のコストで良いものが作れる

良いものを安く提供

といったメリットがあり、それを最大限活用するのがスズキのポリシーなんですが、これのおかげでGSX-R1000は160馬力/173kgという化け物スペックながらライバルより安く、日本のみならず世界中から

K1カタログ写真

「ジクサー(GSX-Rの愛称)はコストパフォーマンスが抜群」

と言われました。特にサーキットやレースで使い倒す人達から。

泣いて喜ばれた理由はこれだけではなくもう一つある。

GSX-R1000が更に凄かったのは単純に速いだけでなく、そのままレースに出れるほどの耐久性を始めとしたパッケージが完成していたこと。

K1カタログ

だからプロはもちろんアマチュアの間でもこれ一択となり、ロードレースのレベルを数段上げる結果にもなりました。それくらい圧倒的だったんです。

その証拠となるのがGSX-R1000がデビューと同時に勝ち取ったレースの数々。

2001年タイトル

・英スーパーストック優勝

・欧州スーパーストック優勝

・豪スーパーバイク優勝

・世界耐久プロダクション優勝

などなど改造範囲が狭く1000ccが出場できるレースでは敵なし状態だった。ついでに最王手バイクメディアであるMCNから2001年最優秀バイクとしても選ばれています。

一方でGSX-R1000はそういったレースやサーキットとは無縁な層からも非常に支持されました。

その要因は最初にも話したロングストロークエンジン。

K1エンジン

これのおかげで本来SSならば捨て置くはずの低域でもトルクがモリモリだった。

スズキ/GSX-Rはもともと

「低速トルクこそが速さに繋がる」

という考えを持っていたからなんですが、この恩恵を一番受けたのが他ならぬ一般ライダー。回転数を引っ張る事が難しく低回転域がメインなシチュエーションでもグングン加速してくれる性能だったからです。

そんなもんだからSS比較などの企画でGSX-R1000はサーキット用途はもちろん

初代GSX-R1000カタログ

「ツーリングにも使うならGSX-R1000」

とまで言われてたんですよ当時。

主要諸元
全長/幅/高 2045/715/1135mm
シート高 830mm
車軸距離 1410mm
車体重量 170kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 988cc
最高出力 160ps/10800rpm
最高トルク 11.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル SAE 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時3.0L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)

HAYABUSA(EJ11A)-since 2021-

HAYABUSA/EJ11A

「Ultimate Sport」

実に13年ぶりのフルモデルチェンジとなった三代目HAYABUSAことEJ11A型。

最初に変更点を上げると
・デザインの刷新
・設計の全面的な見直し
・6軸IMUを搭載
・電子制御スロットル(43mmへ小径化)
・スロープディベンデントコントロール(学習型ABS連動ブレーキ)
・ヒルホールドコントロール(上り坂停車時にリアブレーキを自動作動)
・スズキイージースタートシステム
・Brembo Stylema
・ディスクローターを310mmから320mmへ
・アナログ&デジタル五連メーター
・灯火系をフルLED化しDRLを装備
・ハンドルポジションを12mm手前に

SDMS-α・SDMS-α(下記電制のメーカープリセット3つとユーザープリセット3枠)
→トラクションコントロールシステム(10段階+OFF)
→アンチリフトコントロールシステム(10段階+OFF)
→出力モード切り替え(3段階)
→エンジンブレーキコントロールシステム(3段階+OFF)
→上下対応クイックシフター(2段階+OFF)

などなど書ききれないというかほぼ全てが変わっています。

正直なにから書けば良いのか分からなくなるレベルですが、まず見た目でも分かる通りデザインが新しくなりました。

HAYABUSA/EJ11A サイドHAYABUSAの象徴であるエアロダイナミクスを具現化したローロング&ワイドを守りつつ新世代を感じさせるものになっており、その中でもデザインの肝というか面白いところは二つあって、一つはフローの可視化。

フローの可視化メッキ加工がされたサイドスポイラーとマフラーでパワーフローを、塗り分けたダクトでエアフローを表現。そしてもう一つはアッパーカウル(ロゴの上辺り)を凹ませることでハイライトを作り、エアロダイナミクスを可視化する表現をしている。

ちなみに合わせてロゴも変更されています。

三代目のロゴ先代よりも少し斜体が抑えられ初代との間くらいになりました。そしてもう一つHAYABUSAのデザインで忘れてはならないのがコブ・・・も、ですが五連メーター。

三代目のロゴこちらも健在で中央にマルチインフォメーションカラーディスプレイ(モード、バンク角、ブレーキ圧、加速度、スロットル開度、オドメーター、燃費計、電圧計、航続可能距離など)を備えつつも、スピードメーターやタコメーターなどの計器はアナログ針。

中央のカラーディスプレイでバンク角やブレーキ圧といったメモリがグリグリ表示される両脇で、メーターの針がビュンビュン回るという非常にニクいハイブリッド構造になっています。

電子制御デバイスお次は中身の方ですが、最初にも話した通りボッシュ製6軸IMUと電子スロットルでフル電脳化されているんですが、単純なカタログスペックを先代と比べると

・最大出力が-9馬力で188馬力
・タンク容量が-1L減って20.0L
・車重が-2kgで264kg(装)

と大きく変わっていないどころか正直これだけ見ると少し首を傾げてしまうかもしれない内容。しかし実際は実にHAYABUSAらしいというか凄い事をやっている。

2021ハヤブサのディメンションここに映る部品の全てを見直し、再設計しているんです。

その最たる部分がエンジンで、燃焼室の変更やクランクの製造方法変更だけでなくボルトの一本、リング一枚まで全てが見直されている。これは先代のエンジンを壊れるまで何度も負荷テストを繰り返し設計し直した結果。

2021ハヤブサのエンジン四輪など様々な乗り物へ無茶積みされたりした実績からも分かる通り、HAYABUSAのエンジンは先代の時点ですでに耐久性には非常に定評があったんですが、それを更に上げてきた形。

HAYABUSAと言えばここに至るまで色んな噂が流れましたよね。

「次は排気量を上げる」
「ターボになるらしい」
「六気筒を計画している」

などなど様々な特許申請に基づく憶測が出た(というか実際に開発した)ものの、完成して出てきたモデルは先代から大きく変わりませんでした。

ハヤブサの素案これが何故かといえば開発の方々が口を揃えて言われているよう、開発で最も大事にされたポイントが

「HAYABUSAらしさを磨くことだったから」

というのが理由。

じゃあHAYABUSAらしさとは何かというとこれが難しい所というか人それぞれあるでしょうが、明らかに向上したと言えるのが名前にもなっている猛禽類の隼らしさ。

2021ハヤブサのカタログ普段はゆっくり悠々と飛びつつ、狩りになると一気に300km/hオーバーで急降下し仕留めるんですが、今回のモデルチェンジでこの特性をさらに向上させている。

もう少し分かりやすく説明するとHAYABUSAは

『0km/hから300km/hまでオールレンジなスポーツバイク』

と言う表現がピッタリかと思います。

2021ハヤブサのリア周り世界最速バイクとして有名なため、おっかなびっくり乗る必要がある怪物的なイメージを持たれる事が多いんですが、実はとっても優しく100km/h未満の日常域などでも普通に使える。

優しいというのは出力もそうだし、ポジションや足つきもそう。シートもスポーツタイプにしては厚めでハンドリングも非常に素直だから見た目に反してすごくジェントル。

しかし一方でグイっと捻ればいま例え回転数や速度が何処にあろうとあっという間に200km/hオーバーの世界に突入する性能を発揮しつつ、エアロダイナミクスに物を言わせたビシッと安定した走りを魅せる。

2021ハヤブサのスタイリングちなみに0km/hは言うまでもなくこの圧倒的な存在感と鷹狩(鷹匠)とも言える所有感。

HAYABUSAの性能でありアルティメットスポーツと銘打たれている理由は単純に世界最速だからというのではなく、このいわば

『正気と狂気』

が絶妙なバランスで共存しているからで、今回のモデルチェンジはそこを崩すことなく更に向上させる形になっている。

2021ハヤブサのポジションそれがよく現れているのが少し優しくなったポジション。そして高速域ではなく中速付近出力のさらなる厚み。

2021ハヤブサのパワーカーブこれこそがいま話したように何時如何なる速度でも使えるオールレンジ性能であり、何時如何なる時でもグッと捻ればあっという間にワープ出来る

『HAYABUSAらしさ』

をさらに磨いた証。この改良は地味といえば地味なんですが、先代や先々代を知っているほど驚かれると思います。

2021年式HAYABUSAただこれだけだと磨かれた”HAYABUSAらしさ”の説明にしては不足しているのが否めないかと。

少し話がそれますがご存知の方も多いようにリッターオーバースポーツというのは冬の時代と言っていいジャンルで、ハヤブサですら近年は当たり前のようにランク圏外(年間販売台数400台未満)でした。

レース規格にも絡んでおらずプラットフォーム展開も出来ていないモデルなら年間400台も売れない時点で辞めるか、せいぜい数年先の規制を通す対策だけのお茶を濁すようなマイナーチェンジに留めておくのが一般的。

HAYABUSAと鈴木社長そんな状況にも関わらず鈴木社長まで引っ張り出し一丸となって”ハヤブサらしさ”を追求する開発をしフルモデルチェンジ。

どうしてそこまでするのかと言えばスズキにとってHAYABUSAがリッターオーバースポーツモデルだからとか、自社の看板車種だからとか、世界最速バイクだからとか以前に

「HAYABUSAというバイクだから」

というのがあるから。

バイクを知らない人でもHAYABUSAは知っていることからも分かる通り、既にスズキの一製品という枠を超えた大きな存在と言っても過言ではなく、極端にいえばスズキは自分達だけでどうこうしていいモデルではないと考えている・・・これちゃんと根拠があるんです。

有名なのが毎年恒例の鳥取町八頭町の隼駅祭り。

HAYABUSA祭全国から1000台以上のHAYABUSAオーナーが駆けつける町おこしでスズキも協賛しチャリティイベントを催しているんですが、スズキのしかもバイクの規模でこれをやるのは相当な負担。

じゃあなんでスズキは続けるのかと言えばこれでオーナーとの繋がりを持てる(実態を知れる)からで、実際にこのイベントでHAYABUSAに関するアンケートを何度も何度も取っている。

もう一つあげると2015年の第44回東京モーターショーで出品した『CONCEPT GSX』という発泡スチロールの塊のようなコンセプトオブジェ。

コンセプトGSXこれ、一般の方に”HAYABUSAらしさ”とは何かを問いかける為にわざわざ用意した物なんです。

この代で標準色3色に加え、組み合わせを15通り用意されたカラーオーダープランが用意されたのもその影響。

HAYABUSAカラーオーダーこれは間違いなくカラーリングに関するアンケートを何度も取った故に設けられたことで、定番の人気カラーを基軸としながらも一人ひとりが思い描くHAYABUSAらしいカラーに可能な限り応えるために他ならない。

どうしてそこまでユーザーの声を聞くのか・・・それはメディアで度々口にしていますが

「HAYABUSAは世界中にいるオーナーやファンクラブに支えられたからこそここまで続ける事が出来た」

とスズキは考えているから。

ずっと変わらずHAYABUSAを支持してくれるオーナーが多く居たからこそ初代9年、二代目13年と非常に長いモデルライフと継続的な生産を続ける事が出来た。

歴代HAYABUSAではなぜ多くの人に支えられたのかといえばそれは

「HAYABUSAが長く愛してもらえる魅力を持つバイクだったから」

としか言いようがない事で、同時にこれこそがHAYABUSAの魅力であり

『HAYABUSAらしさ』

と言えるもの。

だからこそ支えてくれている人たちが抱いているHAYABUSAの魅力を更に研ぎ澄ませ共に歩むことを止めない。そしてその為に必要だと考え導き出した答えが全ての部品を見直すことによる耐久性の向上だったわけですね。

耐久テストエンジン設計の溝口さんも公式インタビューで

「長いこと乗ってください。10万km、20万km、なんなら50万km。」

と仰っていました。

普通ならそこまで考慮しないし、そんな造りをしていたらコスト増に加えて買い替え需要が無くなるからビジネス的には有り得ない話。でもHAYABUSAにはそれが許されている。なぜなら長く愛し支えてもらうことを前提としているHAYABUSAにとって故障や寿命というのは裏切りだから。

一過性のブームで造っているわけでも売っているわけでもない。

スズキ HAYABUSA「長く大事に飼ってもらう事を大前提とした正気と狂気のアルティメットスポーツ」

それがHAYABUSAなんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2180/735/1165mm
シート高 800mm
車軸距離 1480mm
車体重量 264kg(装)
燃料消費率 15.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1339cc
最高出力 188ps/9700rpm
最高トルク 15.2kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー FTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8EIA-9
または
IU24D
推奨オイル スズキ純正 エクスターMA2
または
10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.1L
交換時3.2L
フィルター交換時3.4L
スプロケ 前18|後43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,960,000円(税別)
[2,010,000円(税別)~]
※[]内はカラーオーダープラン
系譜図
GSX-R1100G1986年
GSX-R1100(GU74A)
GSX-R1100K1989年
GSX-R1100(GV73A前期)
GSX-R1100M/N1991年
GSX-R1100(GV73A後期)
GSX-R1100P/R1993年
GSX-R1100W(GU75A)
99GSX1300R 1999年
GSX1300R
(GW71A)
081300R2008年
HAYABUSA1300(GX72A前期)
2013HAYBUSA1300R2013年
HAYABUSA(GX72A後期)
2014HAYBUSA1300R2014年
隼 (GX72B)
2014HAYBUSA1300R2021年
HAYABUSA(EJ11A)

【関連車種】
CBR1100XXの系譜FJR1300の系譜ZX-14R/GTRの系譜

隼 国内仕様(GX72B) -since 2014-

HAYABUSA1300国内仕様

2014年のバイクニュースで、最初に飛び込んできて大いに話題となったであろうハヤブサの国内仕様発売。

しかも骨抜き状態なそれまでの国内仕様とは違いフルパワーのCAN仕様と同じ197馬力で更にETC標準搭載という嬉しいオマケ付き。それでいて逆輸入車の様に一度海を渡らなくてもいいことから12万円も安い。

何故ハヤブサが厳しい規制を敷かれている日本で正規販売が許されたかというと自主馬力規制が撤廃されたから。

これで日本でもフルパワー仕様が堂々と買える・・・とはならないのが残念な所で、排ガス規制や騒音規制といった物をクリアできても、どれだけ技術が向上しようと避けられないのが180km/h規制。

国内仕様メーター

日本は125cc以上の国内向け自動車は180km/h以上を出してはならないという規制があります。

いくらハヤブサが世界最速の市販車だろうがギネス記録を持っていようが国内向けの製品は守らなければならない。天下のトヨタ様が作った何千万もするLFAですら守ってるんですから。

それじゃハヤブサの魅力が半減と思われるかもしれませんが、日本の公道は100km/hまでだから問題ない・・・ハズ。それが嫌なら逆輸入車を買うことです。国内仕様を買ってリミッター解除という方法はオススメ出来ません。

hayabusa壁紙

中々薄っぺらい内容になってしまった気がしますが、ハッキリ言ってハヤブサはもうホントに完成形で殿堂入りで多方で語られているから言うことがない。

これは日本だけじゃなく北米でも欧州でも・・・そしてアジアでも。

皆さんハヤブサが最近になってインドでも作られるようになった事をご存知でしょうか。

インド製ハヤブサ

正確に言うとインドでも組み立てられている。

これは完成車を日本から輸入すると高い関税が掛かる事から、部品のまま輸入しインドの工場でアジア向けに組み立てているわけ。それでも完成車は日本円で250万円ほどします。

何故そうまでしてHAYABUSAを作ってるのかといえば、向こうではおいそれと買えない事からステータス性が高い大型バイクの中でもハヤブサは別格で何よりものステータスなんです。

2018年式HAYABUSA

今となっては性能も装備もフラッグシップとは言い難い物があるにも関わらず、コレほどまでに世界中の人たちを惹き付けるHAYABUSA。

実測312km/hを叩き出し手に入れた永世最速という肩書、素行や懐の良さ、唯一無二なデザイン。

2014年式HAYABUSA1300R

本物の魅力には国境は関係ないということですね。

しかしながら熟成を図った2008年モデルを最後に10年以上が経っている為、フルモデルチェンジを待ち望んでいる人が多いのも事実でしょう・・・でも一向に出ない。

スズキは何も言いませんが、(村松さんか加藤さんの)インタビューでその理由と思しきことが書かれていたので抜粋して紹介。

hayabusaテール

”HAYABUSAの根底にあるのは最速ではない。

普段は悠々と羽を休めるように飛び、いざという時は猛スピードを出す隼のような、今までにないバイクを造りたかっただけ。

数年もすればこれより速いバイクが出てくるでしょう。でも私たちは対抗しません。

私たちは私たちの世界で私たちの造りたいバイクを造るだけです。”

hayabusa広告

ハヤブサというバイクが誕生した理由、そしてハヤブサがなかなかフルモデルチェンジをしない理由は、初代が出た20年前に既に言われていたわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2190/735/1165mm
シート高 805mm
車軸距離 1480mm
車体重量 266kg(装)
燃料消費率 17.6km/L
※WMTCモード値
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1340cc
最高出力 197ps/9500rpm
最高トルク 15.8kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前18|後43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,490,000円(税別)
系譜図
GSX-R1100G1986年
GSX-R1100(GU74A)
GSX-R1100K1989年
GSX-R1100(GV73A前期)
GSX-R1100M/N1991年
GSX-R1100(GV73A後期)
GSX-R1100P/R1993年
GSX-R1100W(GU75A)
99GSX1300R 1999年
GSX1300R
(GW71A)
081300R2008年
HAYABUSA1300(GX72A前期)
2013HAYBUSA1300R2013年
HAYABUSA(GX72A後期)
2014HAYBUSA1300R2014年
隼 (GX72B)
2014HAYBUSA1300R2021年
HAYABUSA(EJ11A)

HAYABUSA(GX72A後期) -since 2013-

2013GSX1300R HAYABUSA

「ULTIMATE SPORT,IN TIMELESS STYLING 」

キャリパーがトキコの6potからブレンボの4potへ変更され、ABSも標準装備となったGX72A後期型。

あとスズキの正規逆車取扱のMOTOMAPを見てみるとこの頃から車名が

『HAYABUSA1300』

から1300の文字が消えて

『HAYABUSA』

だけに。その他に目立った変更点はありません・・・二代目も非常に息が長いですね。

初代の頃も確か一度ありましたが、HAYABUSA Zという限定カラーモデルが出たりしています。

ハヤブサZ

ただ最近のZモデルは限定カラーだけでなくヨシムラのスリップオンマフラーを装着しています。さり気なくチェーンのカシメプレートまで合わせてる。残念ながら日本では取り扱わないようですが。

もう知らぬ人は居ないハヤブサですが、そのハヤブサにあやかって有名になった”隼駅”そして”隼駅まつり”なる町おこしが鳥取県八頭郡八頭町にて2009年から毎年行われています。

隼町おこし

ニュースにもなっていたりしていますが住人の理解もあり、また毎年1000台以上集まるハヤブサオーナー達もマナーが良いのか大きなトラブルもなく毎年開催されているとか。

しかもこれ何が凄いって、こういうイベントというのはだいたい年を追う毎に参加者が尻すぼみしていくものなんだけど、この隼駅まつりは毎年過去最高を記録するほど完全に恒例イベントとして定着しているんです。

ハヤブサラッピング電車

終いには隼駅を走る電車にHAYABUSAラッピング・・・自治体と企業と消費者が一体になるとここまで出来るんですね。

町おこしに使われるまでに至ったバイクなんて聞いたことない。

主要諸元
全長/幅/高 2190/735/1165mm
シート高 805mm
車軸距離 1480mm
車体重量 266kg(装)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1340cc
最高出力 197ps/9500rpm
最高トルク 15.8kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前18|後43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,590,000円(税別)
[1,530,000円(税別)]
※L3モトマップ価格
※[]内はUS仕様

系譜図

1986年
GSX-R1100(GU74A)
1989年
GSX-R1100(GV73A前期)
1991年
GSX-R1100(GV73A後期)
1993年
GSX-R1100W(GU75A)
1999年
GSX1300R
(GW71A)
2008年
HAYABUSA1300(GX72A前期)
2013年
HAYABUSA(GX72A後期)
2014年
隼 (GX72B)
2021年
HAYABUSA(EJ11A)

HAYABUSA1300(GX72A前期) -since 2008-

SUZUKI GSX1300R HAYABUSA

「A Performance Legend」

99年に登場して実に9年経って遂にフルモデルチェンジをしたHAYABUSA1300のGX72A型。

最初の頃はGSX1300R HAYABUSAと言われていたんだけど、2005年頃からHAYABUSA1300に切り替わりました。

言い忘れていましたがハヤブサは文字通り(300km/hで獲物を狩る)鳥類の隼からです。漢字が当たり前の日本で見るとそうでもないけど、何故か漢字大好きなヨーロッパ人はこれに心を打たれた人が多かったようです。

デザインテーマは「鎧兜」

新しいデザインで行くか従来のデザインで行くか迷われたそうなんですが、選んだのはやっぱり何処か不気味さがある先代の流れを汲んだ物となりました。

新旧隼

もちろんこれも更に空力を考えた形状になっているわけですがヌメヌメ感が増しましたね。

ちなみにこのロゴも若干変更されています。上が旧、下が新です。

新旧ハヤブサロゴ

さて問題の中身ですが、エンジンのストローク量を2mm上げて41ccアップ、更にエンジンバルブをより軽いチタンバルブに変更。

結果として1340cc/197馬力とアルティメットさに磨きが掛かりました。フレームも作り直され剛性が15%アップしています。

2008ハヤブサエンジン

他にはフロントキャリパーのラジアルマウント化、リアキャリパーを上付け化、スリッパークラッチの採用、デュアルインジェクター(SDTV)化、それに伴い出力特性を選べるS-DMSも装備・・・等など痒い部分に手を届けたようなモデルチェンジ。

S-DMS

まあしかし変更点やスペックを言ったところで何が違うのか伝わらないと思います。先代と何が違うのかと簡単に言うと非常に調教されたハヤブサになりました。

ハヤブサ(というかメガスポ)はSSとツアラーの良いとこ取りな立ち位置にいるわけですが、先代はどちらかといえばSS寄りなモデル。

白ブサ

それが今回のモデルでカウリングのワイド化やスクリーン高の15mmアップ、そして高さを抑えられたタンクなどから見ても分かる通り、どちらかと言うとツアラーの方に少しだけ寄りました。あくまでも先代比なのでアルティメットスポーツなのは変わりませんが。

まあでもそんな事よりも戦闘機の物を意識したと言われる五連メーターでしょうね。

メーター

このメーターにヤラれた人は多いかと。

B-KINGは「B-KING|系譜の外側」で書いたので割愛させてもらいます。

主要諸元
全長/幅/高 2190/735/1165mm
シート高 805mm
車軸距離 1480mm
車体重量 220kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1340cc
最高出力 197ps/9500rpm
最高トルク 15.8kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前18|後43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,490,000円(税別)
※K8モトマップ価格
系譜図
GSX-R1100G1986年
GSX-R1100(GU74A)
GSX-R1100K1989年
GSX-R1100(GV73A前期)
GSX-R1100M/N1991年
GSX-R1100(GV73A後期)
GSX-R1100P/R1993年
GSX-R1100W(GU75A)
99GSX1300R 1999年
GSX1300R
(GW71A)
081300R2008年
HAYABUSA1300(GX72A前期)
2013HAYBUSA1300R2013年
HAYABUSA(GX72A後期)
2014HAYBUSA1300R2014年
隼 (GX72B)
2014HAYBUSA1300R2021年
HAYABUSA(EJ11A)

GSX1300R HAYABUSA(GW71A)-since 1999-

SUZUKI GSX1300R HAYABUSA

「Ultimate Sport」

1.クラス最高の出力

2.操縦安定性に優れたバランスの良い車体

3.優れた空力特性

4.扱いやすさ

これらの追求により生まれたのが誰もが知る名車。市販車初の300km/hブレイカーとして有名ですね。

初代ハヤブサカタログ

面白い事にハヤブサの元々の狙いはCBR900RRやZX-9Rといったリッター未満のライトウェイトスポーツに対抗するバイクを作ることが始まりでした。

しかしそんなプロジェクトが始まるやいなや、一気にメガスポーツ熱を加熱させる事となったCBR1100XXブラックバードが出てきて大型バイクのメインは900からリッターオーバーに。

そんな中でスズキはGSX-R1100しかなく世代の差から苦戦。そこで開発を

“カテゴリ分け出来ないアルティメットスポーツ”

に変更し本格始動。

隼エンジン

GSX-R750(ファクトリーエンジン)ベースで耐久性と出力の限界いっぱいである1299ccに設定したエンジンが完成。1299cc/175馬力で最高時速312kmという文句なしの最速バイクが生まれたわけです。

ただそれも騒がれたけど、それを可能としたデザインも非常に騒がれました。

ハヤブサK6

何ともヌメヌメしてる不気味なデザイン。

これは開発者曰く

「HAYABUSAを開発するにあたって空気抵抗の低減に大変な時間を費やした結果」

という空力を追い求めていった結果こういう形になったとの事。

隼空力

厳密に言うと空力特化の顔を作ってボディ周りをそれに合わせて仕上げていったわけなんだけど、ハヤブサの場合それにもう一つ加えられました。それは空力に悪影響のない部分を膨らませる事。

これの意図は不気味な形になった顔を更に不気味にするため。分かりやすいのが鼻先の膨らみやモッコリしたフロントフェンダーやウィンカーレンズ等。

初代ハヤブサのパンフレット写真

そして満を持してモーターショーで発表したものの評価は好きと嫌いが綺麗に真っ二つに。

普通ならそんな評価では市販化されるわけないんだけど、スズキはイケると踏んで出したわけですね。何故ならKATANAの時もそうだったから。

だから発売当時は

「形が気持ち悪い」とか「名前(漢字)がダサい」

とか凄く否定的な意見も多かった。でもそれもスズキにとっては覚悟していた事というか思惑通り。

その狙い通りハヤブサは日欧米で年を追う毎にジワジワ人気が出始めたかと思うと、あっという間に大ヒットし大型バイクを代表する車種にまで上り詰めたわけです。

ハヤブサUK

あまりの人気とあまりの速さで危険性が欧州で問題視されるようになったことで

・300km/h以上スピードを出るようにしてはいけない

・メーターに300km/hという数字を書いてはいけない

という300km/h規制(一応自主規制)が引かれる事となり、ハヤブサもわずか二年でメーターが350km/hから300km/hへと変更されました。

フルスケールメーター

この300km/h規制を生んだのは間違いなくHAYABUSAの功績・・・じゃなくて影響。

ただこのおかげというか、この一件で

「世界最速の市販車はHAYABUSA(312km/h)」

という勝ち逃げの様な終止符を打つ事にもなったわけです。

才色兼備ならぬ才毒兼備で、性能競争の激しいメガスポーツ部門において八年も大きなモデルチェンジをすることなく大ヒットという偉業を成し遂げました。

ただ大きなモデルチェンジこそ無いものの毎年のように年次改良は入っています。

1999年モデル

99年モデル:初期型340km/hフルスケールメーター

2000年モデル

00年モデル:キャタライザー(触媒)の装着(※EU仕様のみ)

2001年モデル

01年モデル:280kmメーター(300km/h規制)、シートレールをアルミからスチールに、タンク容量1L減、フューエルポンプの変更

2002年モデル

02年モデル:ECUを16bitから32bitへ変更、O2センサー装着(※EU仕様のみ)

2003年モデル

03年モデル:サスペンションのアウターをゴールド、インナーチタンコートに変更

2004年モデル

04年モデル:ハザード&パッシングスイッチ標準装備(※US仕様のみ)

2005年モデル

05年モデル:ウインカーをクリアに変更、タンクデカールをSUZUKIからSロゴに変更、始動時ヘッドライト自動消灯化

2006年モデル

06年モデル:エキゾーストパイプを変更し2kg軽量

2007年モデル

07年モデル:フレームをブラックに変更

スロットルボディの汚れによるアイドリングが低下するという持病(バイク豆知識:電子制御のFI 正確過ぎるが故にアイドリングが苦手)があるものの、致命的な故障は無い。

これはユーザーにとって未経験だった300km/hという世界が開発者にとっても未経験の世界だったから。

300km/hを目指すからには300km/hに耐える十二分な耐久性、300km/hを出した後もケロッとしてないといけないのが市販車。だからこの耐久性にも非常に時間を掛けて絶対に安心だといえるレベルになるまで何度もテストを重ねたそうです。

ターボを付けたり変な改造が当たり前のようにあるのも300km/hでもまだ余裕のあるタフさがあってこそ。

ただ散々ここでも書いた後で言うのも何だけど、HAYABUSAで褒めるべきは見た目や最高速だけではないです。アルティメットスポーツというのは開発者の方も言っているように何も最高速だけを言ってるわけじゃない。

GSX1300R透視図

造りを見てもらえば分かるんだけど、HAYABUSAの中身は基本的にGSX-Rつまりスーパースポーツに非常に近い造りでGSX-Rをローロングにした感じ。

フレームもGSX-R750を基本に考えられたツインスパーフレームだし、エンジンも軽量コンパクト化の為に最低限の一軸一次バランサーしか付いていない。

だから寝かし込みも軽い上にバンク角も大きい、こう見えてコーナリングもSSほどではないにしろ結構得意な部類で決して苦手じゃない。

K0ハヤブサ

直線速い、コーナーも速い、そのわりには扱いやすい・・・まさにアルティメットスポーツ。

主要諸元
全長/幅/高 2140/740/1155mm
シート高 805mm
車軸距離 1485mm
車体重量 217kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1299cc
最高出力 175ps/9800rpm
最高トルク 14.1kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後40
チェーン サイズ530|リンク112
車体価格 1,298,000円(税別)
※K4モトマップ価格
系譜図
GSX-R1100G1986年
GSX-R1100(GU74A)
GSX-R1100K1989年
GSX-R1100(GV73A前期)
GSX-R1100M/N1991年
GSX-R1100(GV73A後期)
GSX-R1100P/R1993年
GSX-R1100W(GU75A)
99GSX1300R 1999年
GSX1300R
(GW71A)
081300R2008年
HAYABUSA1300(GX72A前期)
2013HAYBUSA1300R2013年
HAYABUSA(GX72A後期)
2014HAYBUSA1300R2014年
隼 (GX72B)
2014HAYBUSA1300R2021年
HAYABUSA(EJ11A)