GSX1100S KATANAFINAL EDITION(SY)-since 2000-

2000年式GSX1100SY

ファイナルモデルになるGSX1100S FINAL EDITIONことSY型。

排ガス・騒音規制が厳しくなった事と、設備の整理でエンジン部品が製造出来なくなる事を機に発売されました。

エンジン

排気量にちなんで1100台限定で発売。

ソニックシルバーメタリックという特別なシルバーなので、他のカタナと並べても一発で分かると思います。SUZUKIという赤文字もヘアライン調になっています。

限定装備としては
・アッパーブラケットと書類カバーにシリアルナンバー入りプレート
・エンジン黒色塗装
・シリンダーヘッドフィンの削り加工
・アッパーブラケットの削り加工
・チェーン、ローター、サスダンパーのゴールド化
・車体色に専用のソニックシルバーメタリック

ファイナルエディションシリアルナンバー

さらに性能面では
・前輪ブレーキの対向4ポット化
・フレームの剛性強化
・チューブレスタイヤへの変更
・プッシュキャンセルターンシグナルスイッチ&ハザードスイッチを追加

先代のSR型を更に近代化させる形のモデルチェンジ。

2000年式GSX1100SY

もちろんあっという間に完売して今じゃ倍出してもまともな車体は手に入らない・・・メーカーの人は1100台も売れるか不安だったみたいですけどね。

ちなみに1100台のうちの5台はヨシムラに渡り1135Rへと化け、シリアルナンバー1100番はスズキの歴史博物館に飾られています。

【長い余談】

「スズキは何故KATANAを再販しないのか」

とよく言われていますよね。

「復刻が望まれるバイクTOP10」でも絶版名車を抑え一位に輝いています。巷の声を見てもカタナ再販を望む人が多く居ます。

当時を知らない人もカタナといえば

「大ヒットしたバイク」

と思ってるでしょう・・・でも実はGSX1100S KATANAはそれほど売れてないんです。20年近く売った割には2万台と意外と少なく、しかも半数が初期SZ型。

これは

・デビュー時は200万円越えで買えなかった

・限定解除が難しかった

・買える頃には旧世代化していた

等の理由があったから。

結果としてKATANAは84年に一時的な生産終了、そして87年には完全に生産終了となりました。

しかし高まるKATANA再販の声に応える形で1990年に再販し1000台を超えるヒットを飛ばした・・・んですが、1000台を超えたのはその年とファイナルエディションだけなんです。

ファイナルエディション前のSR型も販売台数は200台ほど。

ファイナルエディションが本当に捌けるのかメーカーですら半信半疑だったのもこのため。

だからもし仮にいまKATANAが再販されたとしたら大型二輪が比較的簡単に取れる事もあって

「待ってました」

とSLの時と同じか、それ以上にドカッと売れると思います・・・でも恐らくそれは一年目だけ。

二年目以降、そういった需要を満たした後は嘘のように販売台数は落ち込む。

これは

「カタナがいい」

という人は一定数は居ても

「カタナでもいい」

という人が居ないから。

つまりKATANAが出ないのは

「長く売れないバイク」

という部分が強いから。もちろん当時のまま出す(製造する)事が難しいというのが大前提ですが。

『ケルンの衝撃』

というKATANAが引き起こしたインパクトは多くの人をカタナ依存症にしましたが、それと同事に多くの人を吹き飛ばすほどの衝撃だったということ。

まあこれがスズキの得意とする所ですけどね、HAYABUSAもそうですし。

だからもしも生産終了してから20年以上経った今もケルンの衝撃が忘れられず、再販を夢見る人が居るとするならば選択肢は一つしかない。

スズキ・カタナ

今からでもいいから、中古でもいいから、250でも400でも750でも1100でもいいからKATANAを買うことです。それ以外に道はない。

ケルンの衝撃に当てられた以上、もうKATANAを超えるバイクは一生出ません。

出たとしても何かが違うと思うでしょう。

ファイナルエディションカタログ写真

アニバやファイナルエディションといった限定モデルはもちろんの事、通常モデルすらあまり在庫が無く流動性が乏しいのはオーナーもそれを分かってるから。

一生KATANAの再販を望む人生より、一生KATANAに乗り続ける人生の方が絶対に楽しいですよ・・・と思ったら19年ぶりに復活しました。

主要諸元
全長/幅/高 2250/740/1195mm
シート高 775mm
車軸距離 1515mm
車体重量 232kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 95ps/8500rpm
最高トルク 8.6kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-19(57V)
後4.50-17(67V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.2L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格 990,0000円(税別)
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100S KATANA(SR)-since 1994-

1994年式GSX1100S

上限750cc規制が撤廃された事により発売された最初で最後の国内正規モデルであり実質的な最終モデルにあたる六型のSR型。

デザインやカラーリングは初代のSZ基調で希少度を除けば一番人気のモデルかと思われます。

何故一番人気かというと国内仕様という事で馬力は若干ダウンしているものの、ANDF(アンチノーズダイブフォーク)の廃止や別体タンク付きリアサスペンションなど足回りの強化が入ったから。

アンチノーズダイブフォークというのは80年代に流行ったフロントフォークの事です。

アンチノーズダイブフロントフォーク

その名の通りブレーキングによるノーズダイブ(フロントの沈み込み)を抑える機能の付いたフロントフォークの事なのですが、これが働く時はハードブレーキング時のみ。

ブレーキ圧を利用しフォークオイルの通り道を狭くし沈みにくくする(減衰力を強める)機能なわけですが、人によっては突っ張った感があるとか違和感があるとか大好評というわけではなかった・・・ただカタナのは結構優秀だったという声もあります。

80年代の後半になるとフロントフォークの進化によりアンチノーズダイブ機能は消えていったんですが、ご存知のようにKATANAはモデルチェンジと無縁だったからいつまでもアンチノーズダイブが付いていた。

それが遂にこのSR型で改められた。

1994年式カタナカタログ

他にもオイルクーラーの標準装備、重いことで有名だったクラッチ負担を和らげるパワーアシストクラッチなど、基本的は変えず弱点だった部分だけ近代化させるというメーカー公認チューニングのようなモデルだったから人気が高いというわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2250/740/1195mm
シート高 775mm
車軸距離 1515mm
車体重量 232kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 20.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 95ps/8500rpm
最高トルク 8.6kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-19(57V)
後4.50-17(67V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.2L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格 890,000円(税別)
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100S KATANA/Anniversary(SM/SL/SSL)-since 1990-

1990年式GSX1100SL

スズキ70周年を機に復活を遂げた五型となるアニバーサリーモデルのSMと通常モデルのSL。

先代(SAE型)にシートベルトを追加しサスペンションをリセッティングしたもので、これまた名目上は海外向けなものの実質日本向け。

ところでKATANAにお詳しい方ならご存知だと思いますが、このモデルには少しややこしい問題があります。

スズキ70周年アニバーサリー

めでたく復帰したカタナなんですが、まず発売されたのは70周年限定モデルでした。

・70thアニバーサリーステッカー

・シリアルナンバー入り純銀オーナメントキーホルダー

・限定1000台(1店1台まで)

でした。

にしても純銀ってすごいですね。

スズキ70周年アニバーサリー

当然ながらアッという間に完売。

ただし買えなかった人が続出したためか、中身はアニバーサリーと同じでステッカーとオーナメントのつかない素のモデルを通常モデルとして追うように発売となりました。

アニバーサリーのタンクステッカーは純正部品として取り寄せる事が出来たので、見た目の違いがない素のモデルにアニバのステッカーを貼って疑似アニバにする行為が横行したとか何とか。

それで本題。

このモデルの何が問題になっているのかというと疑似アニバが横行した事ではなく、アニバと素モデルの型式について。

「アニバーサリーはSLだ」

という人もいれば

「アニバーサリーはSMだ」

という人も居る。

一般的にはアニバーサリーはSMと言われていますが、ここで紹介したいのがアニバーサリーモデルを噂レベルの段階で予約し手に入れた”たけさん(仮名)”という方から頂いたアニバーサリーモデルの書類。

アニバーサリーの型式

『GSX1100SL』と書かれていますね。

という事はアニバーサリーがSLで素モデルがSM・・・いやでも雑誌にもWikipediaにもアニバーサリーはSMと書かれている。

「どっちが正解なんだ」

という話なんですが、調べてみるとバイク誌のバイカーズステーション/No.345の話と個人的にも広報に問い合わせてみた結果はこうです。

・元々SL(素モデル)は販売するつもりだった

・スズキ生誕70周年記念車にKATANAが選ばれた

・同じ型式のままでは営業が混乱するので”後から”アニバはSMと付けた

・91年にSLに統合した(SLとSMは混合している)

つまりKATANA再販(SL型)は実は既に決まっており70周年モデル(SM型)は後から企画されたもの。

しかし型式がアニバと素モデルと同じでは営業が混乱するのでSMというコードを作りアニバーサリーは後からSM型としたわけです。

車体番号による区切りはやっていなかったという事なので、SLとSMが混在している可能性もあるとの事(上の書類でSLと書かれているのが正にそれ)で最終的にSLとSMは統合。

ちなみにこのSMやSLというのは国土交通省に届け出る型式ではなく関係者が区別するためのマーケットコードなので法的な義務はない。

先に出たアニバーサリーモデルのイヤーコードが何故Mで、後から出た素モデルがLと呼ばれるのか疑問(アルファベットではL→M→N)でしたがこれでスッキリですね。

ちなみに2年後の92年にはSSLとなり赤銀が復活しました。

※スズキ二輪広報様とアニバーサリーオーナーのたけさんのご協力をいただきました。ありがとうございました。

主要諸元
全長/幅/高 2260/715/1205mm
シート高 775mm
車軸距離 1520mm
車体重量 232kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 111ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-19(57V)
後4.50-17(67V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.2L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格 1,190,0000円(税別)
※価格はアニバーサリーモデル
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100S KATANA(SAE/SBE)-since 1987-

1987年式GSX1100SAEカタログ

四型となるSAE型とSBE型。

一応建前としては海外向けなんだけど、実質的にほぼ国内向けに造られたと言っていいモデル。

というのもこのモデルはSBS(スズキディーラー)やセイワモータース(当時の逆輸入車取扱店)からの要望で作られたモデルだから。

上の初期型SZとほぼ同じシルバー基調のモデルがSAE型でSBS向けモデル。違う部分はタンデムステップがラバーステップではなくなった事くらい。

対してSBE型はセイワモータース(逆輸入車取扱店)に向けて作られた限定モデル。

GSX1100SBE

シートとフレームも赤く塗り、メーカー名が縁だけの白抜きになっているのが特徴です。

SBE型は

・タンデムシートベルト

・泥除けゴムプレート

・ステップ

などの違いがあるのですが、これはベースがオーストラリア仕様だから。

ちなみにSBEはKATANAの中でもちょっと波乱万丈なモデルです。

というのもSBE型はKATANAシリーズとしては唯一の赤フレームKATANAなんですが、同事に円高もあり80万円を切る最安値モデルでもありました。

しかしカタナが生産終了を迎え歴代モデルを振り返ってみるとSBE型は

・唯一の赤フレーム

・ファイナルより少ない(限定約200台)

ということで一転プレミアに。

最安で売られたのに今では最高値が付いたりする大どんでん返しの様なカタナなんですね。

まあただそれは今でこその話。

当時は販売台数の低迷からKATANAはこのモデルを最後に一度ラインナップから完全に姿を消すことになります。

理由はもうこの頃になるとカウル付きが全盛で性能面でも引けを取っていたからです。

主要諸元
全長/幅/高 2260/715/1205mm
シート高 775mm
車軸距離 1520mm
車体重量 232kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 111ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-19(57V)
後4.50-17(67V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.2L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100S KATANA(SD)-since 1983-

1983年式GSX1100S

二型になるSDは青いストライプモデルと赤銀の2モデル。

それまでの星形から他のモデルと同じ6本スポークホイールになり、エンジン周りをブラック塗装に。

細かい所で言うと、シート材質の変更やエンジンハンガー、エンジンヘッドカバー等も変更されています。

更に後期モデルではオルタネーターを大型化。その為、同じSDでも前期と後期ではフィーリングが若干違う。まあ乗り比べてみない分からないレベルでしょうが。

ちなみに上の写真のシルバーに青のストライプが入ったモデルがEU仕様。

1983年式GSX1100S赤

こっちの赤ストライプが入ったのがUS仕様です。

フランス向けにはスポークホイール仕様もありました。

KATANA スポークホイールモデル

これは初年度モデルですけどね。

GSX1100S KATANA
(SE)
-since 1984-

SE型

合わせて紹介で申し訳ないですが、84年モデルのSE型。

SD型との違いはカラーリングのみ。

俗にいう赤カタナの定番カラーで人気だった為か84~86年の三年間はこの一色のみ。

ちなみにこの頃になると逆輸入が活発化した為か価格もだいぶ落ち着いてきて100万円ちょっと出せば買えるようになりました。まあそれでも当時としてはかなり高い方ですけどね。

ところでGSX1100S KATANAは欧州向けでは

『Space invader(宇宙人)』

というキャッチコピーが与えられていましたが・・・スペースインベーダーっていえばゲームのアレですよね。

偶然の一致かと思いきやどうもワザと被せていたよう。

GSX1100Sスペースインベーダー

当時イギリスを筆頭に社会現象になっていたからなのか、カタナにコスモを感じたのかは分かりません。

主要諸元
全長/幅/高 2260/715/1205mm
シート高 775mm
車軸距離 1520mm
車体重量 232kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 111ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-19(57V)
後4.50-17(67V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.2L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100S KATANA(SZ)-since 1981-

1981GSX1100Sカタナ

カタナの初代にあたるSZ型。

本当の型式はGS110X~GU76AでSZというのはモデルイヤーコードなんですがこちらの方が普及していてシックリ来るのでそちらで通していきます。

プロトタイプの系譜でも話した様にモーターショーで鮮烈なデビューを飾ったカタナは約束されたように大ヒットを飛ばしました・・・ただし日本以外で。

というのも当時まだ日本では

『バイクは750ccまで』

というナナハン規制があったから。

だから買うなら一度海外に持っていかれたカタナを日本に再輸入して外車にして買うしかなかった。

初期型GSX1100S

今でいう逆輸入車ですが、実は逆輸入車という文化が広く知れ渡ったのはこのKATANAの影響が大きい。

しかし逆輸入車という手段が広く知れ渡ったとはいえ当時はまだモトマップもなく逆輸入を大々的にやっている企業なんてなかったから車体価格は200万以上もした。今で言えば400万円くらい。

もちろんスズキも国内向けにちゃんとナナハン版となるGSX750Sを造ったんですが、日本独自の規制の関係でスタイリングが変わってしまった事でGSX1100Sへの憧れは更に強まる結果に。

【GSX750Sの件についてはコチラ】

そんな羨望の眼差しを独り占めしていた初期型にあたるSZの特徴としては

・星型ホイール

・ANDF(アンチノーズダイブフォーク)

・各部をシルバーで統一

などがあります。

GSX1100SZ

斬新な外装だけでなくそれに負けないシルバー塗装が美しいエンジンやツルツルなパイプフレームなど初代にして完成形ですね。

さすがさすがハンスムート・・・と思うんですが、実はこの車体の意匠はハンスムートによるものじゃない。

これ開発責任者を務められた横内さんを始めとしたスズキの意匠なんです。

GSX1100Sの紹介面

というのも横内さんがCLUBMAN/241で暴露していたんですが、デザインに負けない性能をもたせる為にハンスムートと開発について詰めているとカウル造形には拘るものの車体側には何の関心も無いことがわかった。

しかし車体設計のプロフェッショナルである横内さんは

GSX1100Sの設計図

「GSX1100Eに外装被せるだけでは駄目だ」

と考えノーマークだった車体を自分たちで改良。

具体的に何処を手がけたのかと言うといま話したシルバー塗装が美しいエンジンやツルツルなパイプフレーム。

GSX1100Sアクセサリーカタログ

中でも力を入れたのがフレームです。

タンデムステップを始めとした各部を溶接痕を出さないようロストワックス法などで可能な限り鋳造に変更。

溶接が必須な箇所もスパッタ(溶接によって出来るカス)がなるべく出ない溶接方法を選び、どうしてもの場合はバフで削るという手段まで取った。

このため車体価格が当初の予定より1割ほど高くなってしまったんだそう。

どうしてそこまでしたのかというともちろん

GSX1100Sのパンフレット

「スズキの新時代を築くバイクになる」

と横内さんを始めスズキのメンバーが確信していたから。だから正にカタナを研ぐような意匠を施したわけです。

つまりカタナはハンスムートデザインと言われるけど実はそれは上半分の外装だけで、下半分は横内さんを始めとしたスズキによるもの。

1981GSX1100SZ

だから正直に言うとデザインを形にし磨き上げたスズキの功績が一番大きいんじゃないかと。

もはや意匠というより『刀匠』ですね。

主要諸元
全長/幅/高 2260/715/1205mm
シート高 775mm
車軸距離 1520mm
車体重量 232kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 111ps/8500rpm
最高トルク 9.8kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-19(57V)
後4.50-17(67V)
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.2L
フィルター交換時3.6L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100S KATANAPrototype -since 1980-

GSX1100SX

「ケルンの衝撃」

ドイツのモーターショーであるケルンショーにてお披露目され、一躍話題となったGSX1100S KATANAのモーターショーモデル。

GSX1100SKATANAスケッチ

ハンス・ムート(とその仲間)というBMWに専属していた工業デザイン会社にデザインを要請。

こうなった経緯もまた面白くて、「バイク豆知識:ポルシェデザインのSRがある」にも書いてあるのですが、1979年にドイツのバイク誌が主催した

「Alternatives Motorrad Konzept(これからの二輪)」

というデザインコンペ大会がキッカケ。

スズキはRE-5のデザインを担当された巨匠ジウジアーロに依頼し挑んだわけですが、そこでMVアグスタから依頼され作られたターゲットデザインのバイクに衝撃を受けます。

ターゲットデザインMV750S

デザイン面で他社に遅れを取っていたスズキは、これこそ新しいデザインだとしてあの手この手でターゲットデザインに接触しデザインを依頼。これがカタナの始まりです。

そして互いに

「こちら(スズキ)はデザインの邪魔は極力しない。だから、そちら(ターゲット)もデザインが機能の邪魔をするのは極力やめて欲しい」

と言う約束の元にデザインされたのがカタナです。

GSX1100Sラフスケッチ

このショーモデルを発表した途端にスズキ本社に発売時期を問い合わせる電話が延々と掛かって来たらしく、この反応でスズキはイケると踏んだのか一年足らずで市販化という驚異的なスピードで発売。

本来ならハンス・ムートが所属するターゲットデザインの手柄となるハズだったんですが

GSX1100Sラフスケッチ

『ハンス・ムートデザイン』

を全面に押し出した為にハンス・ムートは会社での立場を失い追い出されるという・・・ちなみにショーモデルではビモータ製の4-1マフラーですが市販モデルは4-2-2になっています。

そんなGSX1100S KATANA誕生に関してちょっと面白いのが目指したバイクは

『イタリアンスーパースポーツ』

という事。

ハンス・ムート

ハンス・ムートさんはドイツ人、デザインはイタリアで設計開発は日本人・・・カタナは本当に化学反応のような形で生まれたバイクでした。

ちなみに鈴木修社長(現 会長)はこれを見て

「本当にこんなの売るのか」

と驚かれたそうですが、責任者だった横内さんは自信があったので説得。

GSX1100Sプロトタイプ

そしてこれが狙い通り大反響だった。

この出来事以降、鈴木社長はバイクのデザイン会議には足を踏み入れない様になったんだとか。

『権利は与えられるものではなく勝ち取るもの』

という考えの社長に初めて認められた(任せられた)出来事として横内さんは今も強く覚えているそうです。

系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX1100E-since 1979-

GSX1100E

GSX1100Sの親・・・というか兄弟と言うべきバイク。

時代はスペックインフレの真っ只中でスズキがそれに応えるべく出した新設計TSCC(Twin Swirl Combustion Chamber)エンジンを積んだハイスピードバイクで、一応GSX1100S KATANAはこのモデルの派生として登場する。

よく見ると分かるけど、エンジン以外にもホイールやマフラーもKATANAに流用されている。

スズキとして渾身のフラッグシップモデルだったわけだけど今ひとつインパクトに欠けるということで、このバイクをベースにもっと近未来感のあるバイクを作ろうとして生まれたのがKATANAというわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2245/870/1190mm
シート高 805mm
車軸距離 1520mm
車体重量 243kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1075cc
最高出力 105ps/8700rpm
最高トルク 8.7kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.50-V19-4PR
後4.50-V17-4PR
バッテリー 14AHL-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ630|リンク96
車体価格
系譜図
GSX1100E 1979年
GSX1100E
GSX1100SX 1981年
GSX1100S
KATANA Prototype
(SX)
GSX1100SZ

1982年
GSX1100S
KATANA
(SZ)

GSX1100SD

1983年
GSX1100S
KATANA
(SD/SE)

GSX1100SAE

1987年
GSX1100S
KATANA
(SAE/SBE)

GSX1100SL_SM 1990年
GSX1100S
KATANA/Anniversary
(SM/SL/SSL)
GSX1100SR

1994年
GSX1100S
KATANA
(SR)

GSX1100SY

2000年
GSX1100S
KATANA
FINAL EDITINON
(SY)

katana

2019年
GSX1000S
KATANA
(GT79B)

GSX-R1000/R(L7~)-since 2017-

2017年式GSX-R1000R

「The KING is Back」

実に八年ぶりとなるフルモデルチェンジとなった七代目のGSX-R1000/L7~型。

このモデルからはR1000とR1000Rの二本立て。本当はABSが付くのはGSX-R1000AなんですがABSが義務化された日本では無印がA扱い。

GSX-R1000とGSX-R1000Rの違い

LEDポジションライトの有無が分かりやすいですが両車の違いを並べると

【GSX-R1000】箇所【GSX-R1000R】
SHOWA製BPF
(ビッグピストンフォーク)
フロントフォークSHOWA製BFF
(バランスフリーフロントフォーク)
SHOWA製リアショックリアサスペンション SHOWA製BFRC-lite
(バランスフリーライト)
ピッチで判断モーショントラックブレーキシステム
(サーキット走行用ABS)
ピッチ/リーンで判断

※UP/DOWN対応クイックシフター

その他

※2019年モデルから

UP/DOWN対応クイックシフター
ローンチコントロール(回転数制御)
LEDポジションライト
黒背景LCDメーター
小型バッテリー

※ステンメッシュブレーキホース
※可変ピボットフレーム
※マフラーヒートガード形状変更

となっておりエンジンやフレームはもちろん
・ロール/ピッチ/ヨーの6軸センサーによる10段階トラコン制御
・3種類出力を選べるモードセレクターS-DMS
・Brembo製モノブロックキャリパー

などはグレード関係なく共通。

GSX-R1000R国内仕様

2019年モデルで無印もクイックシフターが付いたんですが、2017年末からETC2.0を付けた国内仕様が登場したため実質GSX-R1000Rのみの扱いとなりました。

※180km/hリミッターは2018年モデル(L8)より撤廃

この代でGSX-R1000/Rは202馬力&202kg(装)と大幅なパワーアップを果たしたんですが、それに大きく貢献したのがカムをフィンガーフォロワー式に変更したこと。

ロッカーアーム式

簡単に言うとバルブを押すカム(おにぎり上の回転物)の負担をエンジンブロック側に支点を持つアームを設ける事で緩和(軽量化)し、高回転化とリフト量の増加を可能にしている形。

SSとしては今でこそ珍しくない機構だけどスズキはこれまた他社に先駆ける形で採用しました。

フィンガーフォロワー

どうして可能だったかというとこれはMotoGPで培った技術だから。形状までMotoGPマシンGSX-RRとほぼ同じとの事。

そんなGSX-R1000/L7~型なんですが注目して欲しいのはこの装備重量でパワーウェイトレシオ1になった事よりもMotoGP技術が投入されても相変わらず全くブレなかった所にあります。

スズキはGSX-R1000/Rに関する説明でこう謳っています。

『SR-VVT』&『SET-A』&『S-TFI』

“Broad Power System”

Broad Power System

「全域パワフルシステム」

これが一体どういうことか説明していきます。

1つ目。

『SET-A(Suzuki Exhaust Tuning-Alpha)』

SET-A

これは簡単に言うとエンジン回転数に応じて目まぐるしく変わる排気の流れをエキゾーストパイプ内にバルブを設け整える事でトルクを増す機構。

どっかの豆知識で書いたと思うのでザックリ言うと、排気というのは弱い時は抜けにくい方が良くて、強い時は抜ける方が効率が良いんですね。

加えて排気脈動といってパイプ内を行き来する圧力の経路を回転数に応じて変えることで排気によって生まれる圧のタイミングによる得意不得意がある。

L7エンジン

四気筒ことさらスーパースポーツにおいては超高回転でパワーが出るように最適化しているんですが、そうするとただでさえ苦手な低回転域が吹き返しや漏れで更に苦手になる。

デュアルバタフライ

それを解消するためにエキパイを1-4/2-3とダブルで連結させたうえに可変バルブを設ける事で容量や経路を擬似的に可変式にすることで解消しているのがSET-A。

ちなみに集合後にあるのが初代から採用されてる従来型のSETで、これも同じように通路を塞ぐ事で背圧を変えたりして騒音規制をクリアする排気デバイス。

L7エキゾーストシステム

これらの機構により高回転だけでなく低回転域でも最適な排気を可能にしているという話。

次は

『S-TFI(Suzuki Top Feed Injector)』

S-TFI

いわゆるデュアルインジェクションで今まではセカンダリースロットルバルブの下に設置していたんですが、それをエアクリーナーボックスの上に付ける形に変更。

デュアルインジェクションシステム

これはワイドバイワイヤ(電子スロットル)化でメインスロットルバルブを完全な制御化に置くことでサブを廃止し、メイン一枚化によるインテーク長の短縮と、繊細なアクセルワークでも空気(混合気)の流入量を最適化しギクシャクせず豊富なトルクを生むため。

そして最後・・・これが一番の目玉。

『SR-VVT(Suzuki Racing Variable Valve Timing)』

SR-VVT

スズキマニアやバンディット250/400Vを知ってる人なら”V”という字が入ってるだけでピンと来るかもしれませんね。そう可変バルブタイミング機構。

しかしバルブリフト量を変えるVC等と違ってコチラはバルブの開閉タイミングを変えるタイプ。

仕組みは吸気カムの部分にボールの入ったガイドプレートが備え付けられていて、回転数(遠心力)に応じて中の玉が内外に動くことで吸気バルブのタイミングを早めたり遅めたりしているわけです。

VVT_ボールガイド

高回転型の四気筒は基本的にオーバーラップを多めに取っています。オーバーラップというのは吸気バルブと排気バルブがどちらも開いてる状態の事。

一つ一つを区切ってやっていたら吸気も排気も間に合わず効率が悪いからなんですが、ことさら超高回転でパワーを求められるSSはどっちも開いてる時間が大きめに設けられてる。

2017エンジンバルブピストン

しかしこれは問題があってオーバーラップを大きく取るほど低回転域が犠牲になる。せっかく流れ込んだ空気が漏れたり、せっかく吐き出した排気ガス戻ったきたりしてしまう。

そこで回転数に応じてバルブタイミングを変更することで、高回転時でも低回転時でも理想のバルブタイミングに出来るのが可変バルブタイミングでありGSX-R1000のSR-VVTというわけ。

ちなみにこれもMotoGPが800ccになった際に落ちてしまった低速トルクを何とかするために生み出された技術。

これらがBroad Power System、全域パワフルの仕組み・・・なんですが

2017GSX-R1000顔

「全域パワフルなのに低回転域の話ばっかりだな」

と思ってる人も多いんじゃないでしょうか。ここがGSX-R1000/Rのとっても大事な部分であり、一番の目玉でもある部分。

系譜を遡ってもらうと分かるのですがGSX-R1000はレース規格になろうと、馬力競争が激しくなろうと、初代K1からずっと過去一度も低回転域を犠牲にした事が無いんです。過去一度もです。

それがこの2017年型でも変わらなかった。ピストンのボアを2mmほど拡大したものの、それでもSSとしてはロングストロークエンジン。

パーツ群

MotoGPで培った技術を用いてもっとビッグボアにすれば馬力は簡単に上げる事が出来る、下を切り捨てればピークパワーをもっと稼ぐことが出来るのにそれをしなかった。それどころか低域を犠牲にしない為にMotoGP技術を投入した。

これが何故かといえばそれは散々話してきたように

「低域トルクが乗りやすさ、ひいては速さに繋がる」

というコンセプトの元に開発されているのがGSX-R1000だからです。

GSX-R1000とGSX-R1000R

ちなみにMotoGP技術を多く投入できたのはMotoGPに携わってる人が開発しているからという単純明快な理由だったりします。

普通MotoGPなどの世界最高峰レースで経験を積んだエンジニアは技術指導も兼ねて少し経ってから市販車部門に携わるんですが、スズキの場合は二足のわらじのようにMotoGPで活躍されているエンジニアが市販車を開発されている。

寺田プロジェクトリーダー

例えばこのGSX-R1000/Rのプロジェクトリーダーかつエンジン設計の寺田さんは前年までMotoGPプロジェクトリーダー&エンジン開発を担っていた凄いお方。

可変バルブを始めとしたMotoGPの技術がフィードバック出来たのは、MotoGPでその技術を開発した人がGSX-1000/Rのエンジンを開発したから。

寺田プロジェクトリーダー

GSX-RRとGSX-R1000のフレーム形状が似ているのは現MotoGPプロジェクトリーダーの佐原さんがGSX-R1000/Rの車体開発に携わったから。

もはやレプリカの域すら超える出し惜しみの無さで逆に不安にもなるんですが、スズキがMotoGPをやってる理由は市販車へ還元する事と言っていたので有言実行という話。

GSX-R1000R/GSX-RR

そんな人達が手掛けたにも関わらずコンセプトはブレなかった。

「GSX-Rの開発というだけでみんな何をすべきか分かってる」

「乗り手を不安にさせるような事を絶対にしない」

「乗り辛くするのは裏切り行為」

「ピーキーにするなんて論外」

「VVTがないと下がスカスカそんなのはお客様に失礼」

「お客様全員に”GSX-Rが一番速く走れる”と言ってもらう事が目標であり美点」

これは歴代GSX-R1000に携わった方たちのコメントなんですが、20年近くどの代でもこの考えを全員が怖いくらい共有し進化し続けてる。

スズキワールドGSX-R1000

それが見て取れるのが低域トルクを切り捨てない事だったり、車体をコンパクトにする事もだったり、シート高が低く前傾が比較的緩い事だったりする。

「初心者が最も安心して速く走れるSSはGSX-R1000」

等と雑誌で書かれる理由もここにある。

そしてそれはこの代でも変わらなかった。

これまでもこれからもカタログスペックを見比べると見劣りするかもしれない。でもGSX-R1000/Rの本当の魅力はそこには載っていないという事を知ってほしいと思います。

2019GSX-R1000

GSX-R1000/Rは限られた人しか使えない高域だけでなく、誰もが使える低域を重視し、誰でも安心して乗れるようにする事を第一に開発しているんです。

何故ならそれこそがGSX-Rであり、スズキが考える真のスーパースポーツであり、速く走れる事に繋がると考えているから。

どれだけ凄いスーパースポーツを造るかではなく

2019GSX-R1000

「どれだけ安心してもらえるスーパースポーツになれるか」

というに徹し、一切ブレず、スズキのフラッグシップとして市場動向に関係なく開発し続ける事を特例で許されているモデル。

それがGSX-R1000というライダー思いの優しいスーパースポーツなんです。

主要諸元
全長/幅/高 2075/705/1145mm
シート高 825mm
車軸距離 1420mm
車体重量 202kg(装)
[203kg(装)]
<203kg(装)>
燃料消費率 16.6km/L
※WMTCモード値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 202ps/13200rpm
<197ps/13200rpm>
最高トルク 11.2kg-m/10800rpm
<11.9kg-m/10800rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YT12A-BS
[YTZ10S]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル スズキ純正
エクスターR9000
MA2 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.1L
交換時3.1L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 1,730,000円(税別)
[2,030,000円(税別)]
<1,960,000円(税別)>
※[]内はR1000R
※モトマップ価格
※<>内は国内仕様
※国内仕様の馬力差は測定方式の違い
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)

【関連車種】
CBR1000RRの系譜YZF-R1の系譜ZX-10Rの系譜SuperBikeの系譜

GSX-R1000(L2~L6)-since 2012-

12GSX-R1000

「BRED FROM THE SAME DNA」

ブレンボキャリパーが眩しい六代目GSX-R1000のL2~L6型。

パッと見ではブレーキキャリパーとマフラーくらいしか変わってない様に見えますが、こう見えて大幅に変わってます。

まずピストンを11%もの軽量化に成功した新設計ピストンを採用すると共に圧縮比を0.1アップ。

2015エンジン

合わせてカムも見直されています・・・が、馬力は変わらず185馬力。それもそのハズこれの狙いは低速トルクの向上だから・・・どんだけブレないんだって話。

L2side

ちなみに一本出しに戻ったマフラー理由はコストと重量の削減なんですが、一番は2008年までMotoGPのエンジニアをやっていた荒瀬さんたっての希望。

GSX-R1100の頃(91年以降モデル)から二本出しが嫌いだった思いがあり、同じ轍は踏まないと執念で実現させた一本出しマフラーだったりします。

ブレンボキャリパー

エンジンを新設計しようがフレームを新設計しようがマフラーを新設計しようが

「センターアップマフラーなんて流行りもの流されたりしない」

という言葉を貫き通した事にプライドというか信念を感じますね。

あとブレンボに隠れがちなんですがディスクローターも世界初となる放熱と軽量化に優れるSUNSTARの耐熱ステンレス鋼の物でサプライヤーの熱意も変わらず。

そして2015年のL5モデルからはABSモデルを併売する形で追加。

GSX-R1000ABSモデル

これは欧州でのABS義務化への対処で、現在では日本も義務化されていますね。

ところで1985年から続く元祖スーパースポーツGSX-Rシリーズは2013年に世界累計販売台数100万台を達成しました。

GSX-Rシリーズ世界累計販売台数100万台

これはGSX-Rが一般ライダーは勿論、プライベーター達にも認められ重宝された歴史があったから成し得た偉業。

プライベーターの話はR750の方で話したのでもう書きませんが、後釜を引き受けたGSX-R1000も初代からずっとプライベーター達に重宝されています。

ちなみに100万台達成を記念して初代の発売年にちなんで1985台限定で限定カラーがGSX-R1000/R750/R600とそれぞれ発売されたんですが、GSX-R1000の記念車がこれ。

限定カラー

赤鼻といっていいのか分からない凄い配色で世間を少し騒がせました。

アメリカとか海外の方で人気があるからそっち好みにしたんだろうか。

主要諸元
全長/幅/高 2045/705/1130mm
シート高 810mm
車軸距離 1405mm
車体重量 203kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 185ps/11000rpm
最高トルク 11.9kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/50ZR17(73W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル SAE 10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時3.3L
スプロケ 前17|後42
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,510,000円(税別)
※モトマップ価格
系譜図
K1/K2 2001年
GSX-R1000
(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000
(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000
(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000
(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000
(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000
(L2~L6)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R
(L7~)