MT-09/SP(BS2/B6C)-since 2017-

2017MT-09

「Multi performance Neo roadster」

大成功を収めたMT-09の二代目となるBS2型。

MT-09

大きく変わったのは見て分かるようにデザインですが最初に纏めると

・フルLEDヘッドライト

・ショートテール

・片持ちアルミリアフェンダー

・シート形状の変更

・マフラーエンドの変更

・クイックシフター(シフトアップのみ)

・アシスト&スリッパークラッチ

・圧側減衰調整機能付き倒立フロントフォーク

・新規制に合わせ6馬力アップ

となっています。

MT-09

それにしたってデザイン攻め過ぎじゃないかと思うわけですが、これ本当はもう少し違うデザインでした。

しかしクレイモデル(粘土で造った等身大モデル)を目の前にした時に

「なんか違うよな」

となりデザインをやり直す事になったのですが、その際に

・エンジニア用のクレイモデル

・デザイナー用のクレイモデル

の2つを用意し各々が思う次期MT-09を削ったら、それを互いに交換してまた削っていくという作業を行った。

こうして両者の意見を擦り合わせていった結果この形になったんですが、自分の好きに削れるという事で守谷デザイナーいわく

「こうすればもっと過激になるねという感じで少し悪ノリになった。批判は甘んじて受け入れます。」

との事。※ミーティングにて

2017MT09

一気にワルっぽくなった理由にはこういう背景があったんですね。

テールも前にも増してとんでもない形になった事で前にも増してデザインコンセプトである異種混合(モタードとネイキッドのハイブリッド)感が凄い事になってる。

2018MT-09

ただ実はMT-09が異種なのは中身もそうなんです。

初代で話した通りMT-09はCP3(クロスプレーン三気筒)というエンジンを積んでいるクロスプレーンコンセプトのモデルなんですが・・・これ正確に言うと少し違うんですよね。

クロスプレーンコンセプトというのは簡単に説明するとピストンの往復運動中の速度差による慣性トルクを別のピストンで相殺する事で

「求められたトルクを求められただけ出す」

というのが狙い。

だからMT-07のCP2エンジンやMT-10のCP4エンジンはタイミングが直角になってる。

クロスプレーンクランク

ところがCP3エンジンは120°毎だから実は完全に相殺出来ているわけじゃない。だから完璧なクロスプレーンではない・・・んですが同時にこれにはメリットもある。

「スクリーム感(マルチ感)が生まれる」

という事です。

CP2やCP4ほどまではいかないものの一般的な四気筒などと比べると慣性トルクは遥かに小さく同じようなメリットがある一方で、点火タイミングが等間隔だから回すとモーターの様に駆け上がる四気筒っぽさも持ってる。

つまりMT09は見た目はトレールとネイキッドのハイブリッドであり、中身はフラットプレーンとクロスプレーンのハイブリッド。

2017MT-09カタログ写真

異種混合というコンセプトの通り、中も外も相反するものが混じっている

『正真正銘のキメラバイク』

と言えるかと。

頭のネジが外れている人が予想以上に多くて人気モデルとなったためか2018年からは豪華装備でスポーツ性を高めたMT-09SP/B6C型を追加販売。

MT-09SP/B6C

・OHLINS製リモートアジャスター付きリアサス

・KYB製SP専用3ウェイアジャスター倒立フォーク

・黒背景の反転液晶メーター

・専用塗装&グラフィック

・専用表皮シート

となっているモデルで差額は僅か10万円。

MT-09SPの変更点

コストが許されるならここまでやっていたんだろうなという雰囲気が伝わってくるモデルで、購入層もそれを感じ取っているのかSPに注文が殺到しているんだとか。

主要諸元
全長/幅/高 2075/815/1120mm
シート高 820mm
車軸距離 1440mm
車体重量 193kg(装)
燃料消費率 19.7m/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 845cc
最高出力 116ps/10000rpm
最高トルク 8.9kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 930,000円(税別)
[1,030,000円(税別)]
※[]内はMT-09SP/B6C
系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

XSR900(B09/BAE)-since 2016-

XSR900

「The Performance Retroster」

MT-09プラットフォーム展開の最後にして最大の鬼門だったと思われるネオレオロ、ヤマハ的にいうとヘリテイジ版となるXSR900/B09型。

当初MT-09はTRACERとの二本立てでXSR900の予定は無かった。しかし欧州でネオレトロブームが起きていた事から造る事になった。

最初MT-09でネオレトロを造ると発表された時は開発陣にどよめきが走ったそう。

それもそのはずMT-09は

・アルミダイキャストの有機的なフレーム

・前傾した水冷三気筒エンジン

・コンパクトな車体

・リンク式モノサス

などなど、その道のカスタムビルダーならまず選択肢から外すであろう要素しかない造りだったから。

加えてビュンビュン回るスポーツ性能も持ち合わせていたので

「これはもう全力でカフェレーサーにするしかない」

として開発。

そうして出来上がったXSR900は1,042,200円とフルオプションMT-09ことTRACERとほぼ変わらない値段でした。

しかしTRACERと違ってなにか利便性を上げる装備が付いてるわけではない・・・じゃあ何にそんなコストを掛けたのかといえば見て分かるように外装。

XSR900細部

これでもかというほどアルミパーツを各部に散りばめている。

例えばXSR900のトレードマークになっていフレームのブランケットステー部分。

サイドカバーステー

ここは元々サイドカバーをつける部分で中にはヒューズボックスも入っているんですが

「ネオレトロにおいてそんなものは絶対に見せてはいけない」

という事で蓋を用意した・・・・だけじゃない。その蓋単純に隠すのではなくヘアライン&ブラックアルマイト加工でアクセントに変更。

更にはシートやらボルトの一本に至るまで魅せることを意識して造られている。ただXSR900で何よりも取り上げないといけないのがバイクの顔と言われているタンク。

XSR900とXS-1

前後に長くすることでハンドルやステップを変えることなく後ろ寄りに乗れる様にしたアイディア品なんですが、なんとこれ一つ一つ職人による手作業によるバフとヘアライン加工がされている。

つまり厳密に言うと一つとして同じタンクがないハンドメイド品なんです。

XSR900壁紙

結構いい値段がする犯人というか理由が分かってもらえたと思いますがこれが実にヤマハらしい。

「ヤマハらしいとは何か」

という話を少しさせてもらうと感動創造企業やRevs your Heartという言葉が有名ですが、もう少し細かく言うと

『発・悦・信・魅・結』

という五文字でヤマハは表しています。

発・悦・信・魅・結

そしてXSR900はこれが色濃く出ているからヤマハらしいという事。

『発:独創性に挑む』

非常識とすらいえるアルミフレームのカフェレーサー

『悦:感動を与える』

MT-09譲りのハイレスポンスな性能

『信:信頼性を信条とする』

少数精鋭のメイドインジャパン

『魅:魅了する』

カバーからボルト一本に至るまでデザイン

『結:お客様基点の価値観』

量販車でありながら手仕上げというハンドメイド要素

B90

大所帯の量販車メーカーでありながら設計から生産に至るまで職人気質を持っているヤマハらしいバイク。

ファミリーの中でも年間計画800台前後と数が出ない派生モデルだから得た技でしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2075/815/1140mm
シート高 830mm
車軸距離 1440mm
車体重量 195kg(装)
燃料消費率 19.4km/L
[19.7km/L]
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 845cc
最高出力 110ps/9000rpm
[116ps/1000rpm]
最高トルク 9.0kg-m/8500rpm
[8.9kg-m/8500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 965,000円(税別)
※[]内は2018年~BAEモデル

年次改良

2018年:出力見直し

2020年:ポジションランプ装着

系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

MT-09/A(1RC/2DR) -since 2014-

ヤマハMT-09

「Synchronized Performance Bike」

2014年にヤマハの新時代ロードスポーツとして登場したMT-09/1RCとMT-09ABS/2DR~B87型。

特徴は何と言ってもCP3(CrossPlane3cylinder)の名を持つ完全新設計の並列三気筒エンジン。1976年に出したGX750以来ですね。

実際にGX750の開発者からもアドバイスを頂いたりして開発されたとの話なんですが、当時モーターショーでエンジンだけ先に発表されるなどヤマハの肝煎り感がありました。

MT-09エンジン

実際このエンジンはお世辞でも何でもなく非常に良く出来た(面白い)エンジンだという声が四方八方から現在進行形で聞かれているんですが理由は最後に話すとして、これに合わせられる車体も特徴的。

MT-09サイド

・アルミダイキャストフレーム

・テーパーハンドル

・立ってて近いステム

・装備重量で181kg

というモタードのような形をしているのが特徴。

実際これはモタードというかヤマハ的にいうとトレール要素を強く意識して取り入れており、その狙いについて開発責任者の山本さん曰く

「ライダーとバイクの動きが一対一になるようにするため」

という話。

MT-09コンセプト

具体的に話すと時速300km近く出る大型バイクが分かりやすいステータスとして当たり前な世の中になった一方で、じゃあそのパワーを発揮出来る環境があるかというと無い。

それでも最初は町中をダラダラ走るだけでも楽しい。自分にとって最高だと思うバイクに乗るという所有感補正があるから。しかし見慣れてきて所有感が薄れると、今度はそのバイク本来の扱い方で楽しさを得ようとする。

しかし時速300km出るバイクの本領を発揮させるなんて一般人には到底出来ない・・・そしてどんどん乗らなくなり車庫の肥やしになる。

という大型バイクあるあるなんですが、こうならない大型バイクを造ろうとして開発されたのがこれ。

「毎日乗って楽しめる大型バイク」

というコンセプトのMT-09なんです。

MT-09の狙い

そしてそのコンセプトを実現させる際にヒントになったのがヤマハ社内の駐輪場。駐輪場を覗くとトレール車で通勤している人が多いことに気づいたわけです。

どうしてトレールが人気なのかといえば

・軽くて細い

・低速からパンチがある

・キビキビなハンドリング

・振り回しやすい

などの要素を兼ね備えているから。

ならばこれを兼ね備えた大型バイクを造れば町中を走るだけでも楽しい毎日乗れるんじゃないか、という発想の元に開発されこの形になった。

ヤマハMT-09

スリムさを優先した為に14Lしか入らない燃料タンクにお世辞にも優しいとはいえないシート。キャスター角が立ってる上にライダーに近い事から節操のないハンドリング。

一見するとネガティブにしか思えないトレール譲りのこれら要素は全てそれを実現するためにあり、またそれに最も合致したエンジンが三気筒という結論に至ったから既存の二気筒や四気筒を流用するのではなくわざわざ造った。

そうして完成したのがMT-09というネイキッドとトレールの異種混合バイクという話。

MT-09

ただ正直こう言ってもMT-09の魅力はまだ伝えられていないかと思います。

「あーはいはい乗りやすい大型バイクね」

くらいにしか思ってない人も居るかと・・・でもMT-09はそれだけじゃないから大ヒットした。

MT-09がヒットした理由にはもちろん80万円を切る車体価格の安さもあった。リーマンショックで不況に陥った事で高額バイクの時代じゃないといめておこうとなった背景があります。

でもそれ以上に評価さたのが説明してきたコンセプトで、MT-09が発売された時にヤマハの開発陣たちが

「いつもの道でご堪能下さい」

と自信満々に言った理由もここ。

わかりやすく言うと

「最高速を捨てた846ccの三気筒を積んでいる」

という事。

MT-09壁紙

気軽に振り回せますよという雰囲気を車体の方で醸し出しつつも、大排気量らしいブンブン回るパンチが効きすぎてるエンジンが載ってる。

つまり語弊を恐れずに言うならば

「大型バイクのスリルが日常で味わえる」

という感じで、これは走行モード切替機能が大いに貢献してる。

・STDモード(標準モード)

・Aモード(元気モード)

・Bモード(穏やかモード)

の3つのモードが付いているんですが、恐らくモード切替が無かったから実現していなかったんじゃないかと思います。なぜならAモードをナメてかかると間違いなく吹っ飛ぶから。

MT-09はエキスパート層までを満足させる狙いがありAモードはそのためにあるものなんですが、本当に凄いというか凄いを通り越して

「よくこれで出したな」

と思うレベルで、モード切替が無かったら間違いなく実現していない。

2016 MT-09

このバイクはそんなAモードを怖いと思うか、それとも”楽しいと思ってしまうか”が全て。

両者を分けるのは・・・頭のネジの本数ですかね。

主要諸元
全長/幅/高 2075/815/1135mm
シート高 815mm
車軸距離 1440mm
車体重量 188kg(装)
[191kg(装)]
燃料消費率 19.4m/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 846cc
最高出力 110ps/9000rpm
最高トルク 8.9kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 787,000円(税別)
[833,000円(税別)]

年次改良

2016年:ABSと3段階のトラクションコントロールを標準装備

系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

MT-10/SP(B67/BW8) -since 2016-

MT-10

「The king of MT.」

そのコンセプト通りMT-01以降不在となっていたMTシリーズの長男坊として登場したMT-10(B67)とMT-10SP(BW8)。

元がR1なだけあってトラクションコントロールシステムやクイックシフター、スリッパークラッチや出力モード切り替えといった電子制御の成せる装備はそのまま標準装備し、更にはR1になかったクルーズコントロールシステムまで採用。ポジションや足付きも改善されています。

MT-10SP

2017年に追加されたSPモデルはR1Mと同様に電子制御サスペンションやフルカラー液晶などを搭載してるんだけど面白いのがYZF-R1Mと同様に積まれたYRC(ヤマハ・ライド・コントロール)という装備。

「PWR(出力モード)」「TCS(トラコン)」「QSS(クイックシフター)」「ERS(前後サスのセッティング)」を自分なりにセッティング出来る。しかもハンドルスイッチだけでなくスマホ(専用アプリ)でも。

MT-10

スマホ世代を狙い撃ちとは・・・まあSPは200万円しますけどね。YZF-R1Mより100万円も安い事を考えると結構お買い得な気がしないでもないですが。

なんて冗談はさておき

「MT-10はYZF-R1をネイキッドスタイルにしたバイク」

と簡単に片付けてはつまらないので少し掘り下げてみます。

MT-10UK仕様

MT-10のエンジンのベースとなっているYZF-R1のCP4エンジンというのはご存知の通りクロスプレーンの不等間隔燃焼エンジンです。

クロスプレーン直四のメリットは一般的な直四が起こす慣性トルク(トルクの波)と二次振動(微振動)を起こさないこと。

※クロスプレーンについては「クロスプレーン(不等間隔燃焼)だと何が良いのか」をどうぞ

クロスプレーン

当然ながら微振動やトルクの波は無い方が扱いやすいし疲れないから、性能的に言えばクロスプレーンの方が優れていると言えるんだけど・・・官能的かといえば意見が別れるのが現実。

一般的な直四好きが思う直四(フラットプレーン)の魅力は

「アクセルを捻れば何処までも突き抜ける疾走感」

でしょう。

これは回転数に応じて等間隔な点火タイミングから来るモーターのような排気サウンドと微振動が起こるから。よく漫画で跨ってエンジン捻った途端に鳥肌が立ったように描画されたりするアレです。

MT-10ヘッドライト

それがMT-10(クロスプレーン直四)は無い。だからエンジンサウンドに違和感があるとか、気付いたら凄いスピードが出ていたとか言われますね。

何よりも速さが大事なYZF-R1という半レーサーにおいてそんなタイムを縮める事に一切関係のない要素は必要ないのは当然だけど、これがストリートユースまして猛々しさが必要なストリートファイターとなると話が変わってくる。

MT-10欧州壁紙

そこでヤマハは吸排気系を絞ってギア比を落とすという低速寄りチューニングのメジャーな方法だけでなく、MTシリーズ共通のコンセプトである”トルク&アジャイル”を実現するためクランク周りの動力部分の重量(慣性モーメント)も上げました。

「トルク&アジャイル」とか「慣性モーメント」とか言われてもナンノコッチャですよね。ヤマハの開発者の人には申し訳ないけどザックリ言って、一つ一つの動きが重くなるので体感トルク(トルクフィーリング)が増します。実トルクも増しますが。

ちなみにフレームもスピードレンジが変わることから剛性を最適化するため60%も作り変えられたとのこと。何だかんだで結構大掛かりな変更が加わってますね。

MT-10カウルレス

何となく分かると思いますが低回転寄りにするということは即ち高回転を捨てるということになるわけですが、クロスプレーンでソレをした事で面白い変化を生んでいます。

YZF-R1は低回転域では”デロデロ”または”ドコドコ”という二気筒のようなフィーリングな一方で、美味しい回転数である10000rpm以上になると一般的な直四と大差ないフィーリングになる。

ところがMT-10の場合はレッドも11500rpmとR1よりも低速寄りにしているので、結果として美味しい部分がデロデロのまま。怖い顔でデロデロいわせながらグイグイ引っ張って行くわけです。

つまりMT-10というのは悪く言うと

「四気筒らしさがほとんど無いバイク」

MT-10カタログ

と言えるんだけど、反対に良く言うと

「物凄く回る二気筒っぽいバイク」

欧州仕様

と言えるわけです。四気筒は四気筒なんだけど四気筒×1じゃなくて二気筒×2みたいなバイク。

一般的な四気筒が好きな人はこれに乗っても今ひとつピンと来ないかもしれないけど、反対に直四が好きじゃない人はコレに乗ったらビンビン来るかもね。

主要諸元
全長/幅/高 2095/800/1110mm
シート高 825mm
車軸距離 1400mm
車体重量 210kg(装)
[212kg(装)]
燃料消費率 14.0km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 997cc
最高出力 160ps/11500rpm
最高トルク 11.3kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W)
後190/55-17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブ プレミアムシンセティック
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.9L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,550,000円(税別)
[1,850,000円(税別)]
※[]内はSPモデル
系譜図
MT-01 2005年
MT-01/S
(5YU)
MT-03 2006年
MT-03
(5YK/29D)
MT-10 2017年
MT-10/SP
(B67/BW8)

MT-03(5YK/29D) -since 2006-

MT-03

日本ではほとんど馴染みのないMT-03(型式は海外のもの)
出た時は紹介されたから「あーこんなのあったネ」と思い出す人も居るかな。

といってもこのバイクはイタリアヤマハの発案で生産もイタリア。車名もMT-“03″なんだけど排気量は660ccと大型クラス。

エンジンのベースとなっているのはXT660の物。
近年では珍しいデュアル排気ポートでシングルエンジンながら二本出しマフラーでMT-01の流れを汲んでる。

MT-03コンセプト

でもこれまた残念ながら01に続き思うように販売台数が伸びず、2009年をもって欧州での生産は終了となりました。日本はハナから相手にせず未発売という見切りっぷり。

ブラジル向け(29D)は2013年まで売られていたとの事です。

MT-03カタログ写真

そんなこんなで01、03と二代続けてセールス失敗に終わったMTシリーズだったけどヤマハは何故か諦めなかった。

主要諸元
全長/幅/高 2070/860/1115mm
シート高 805mm
車軸距離 1420mm
車体重量 192kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 660cc
最高出力 45ps/6000rpm
最高トルク 5.73kg-m/5250rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-17(58W/58H)
後160/50-17(69W/69H)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル 10W30から20W50まで
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時3.0L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前15|リア47
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格
※国内取扱いなしのため
系譜図
MT-01 2005年
MT-01/S
(5YU)
MT-03 2006年
MT-03
(5YK/29D)
MT-10 2017年
MT-10/SP
(B67/BW8)

MT-01(5YU)-since 2005-

MT-01

「ソウルビートVツインスポーツ」

MTシリーズは車名以外繋がりはほぼ無いんだけど、基本コンセプトは一緒だし紹介したかったので載せました。

新型発表で動画などのCMをバンバン打ってるからご存じの方も居るかと思いますが、車名のMTは元々これが始まりでMax Torque(マックストルク)という意味・・・と言われており信じていたんですが、いざ調べてみると実はそんな情報が見当たらない。

そこで調べてみたら少し前の特設サイトMTワールドに答えがあった

MT-01

『MEGA TORQUE』

こっちが正しい由来みたいですね。

さてそんな初代MTであり初代ダークサイドでもあるMT-01に積まれたVツイン1670ccエンジンはXV1700のエンジンをベースにしたもの。

XV1600

つまりアメリカンのエンジンを積んだスポーツネイキッド。

恐らくMT-01に興味のない人はヤマハの一代限りのマイナー車種という認識かもしれないけど、MT-01に対するヤマハの思いや作り込みは眼を見張るものがあります。

MT-01エンジン

エンジンはXV1600ベースとは言ったけど、メッキシリンダーや鍛造ピストン、FIやクランクなど90%近い部品が変更されていて、もはや別物エンジンとも言えるほどの改良。

さらにボルト締占式バックボーンフレーム、ハブが絞られている逆トラス式スイングアーム共にR1やR6と言ったフラグシップスポーツで採用されている溶接痕が無い綺麗なアルミダイキャスト製。

MT-01カットモデル

そしてブレーキもR1と同じ物(2007年R1と同時に6POT化)を装備しスポーツ性能を高め、更にリアショックの位置やエキゾーストパイプやチタンマフラー等の見た目までにもこだわっています。

鼓

ちなみにイメージテーマは鼓(つづみ)だそうです。

言われてみれば確かに。

でもやっぱり何と言っても一番は01のコンセプトである「鼓動(KODO)」

MT-01壁紙

Vツインエンジンのコレでもかというソウルビートというかパルス感を味わえる様にチューニングされている。

ピークが4750rpmなのを見ると分かる通り、走りだした瞬間からそりゃもう嫌ってほど。

鼓動

「SSでスポーツ走行するのはとても楽しい。でも現実は家を出た瞬間、前を走る車にブロックされストレスが溜まる。それは面白くない。だからそんな状況でも楽しめるスポーツバイクを作りたかった。」

その答えがこのMT-01・・・ただ実はこのMT-01を立案したのはヤマハの人ではありません。

このバイクの立案はヤマハ車のデザインを創業時からほぼ一手に担っているGKデザインによるもの。それをヤマハが承諾し形にしたというプロセスが逆のようなバイク。個性的なのも納得ですね。

ヤマハMT-01

社外デザイナーが企画を立てて実際に形にするなんて普通あり得ない話ですが、ヤマハとGKという腐れ縁のような関係だからできたんでしょう。

ただそんなGKにヤマハが乗る形で作り上げたMT-01ですが、ご存知の通り受注生産ながらあまり売れず2009年をもって受注終了となってしまいました。

こだわる余り車体価格が150万円と高くなってしまった事とあまり認知されていないニッチなカテゴリだった事が理由かと・・・意欲的&威圧的過ぎて腰が引ける人が多かったのもあると思いますが。

ちなみにオーナーさん達の話によるとVMAXと間違われるそうです。それほど認知されてない。そりゃビューエルも捨てられるよって話ですよ。

ビーキングとMT-01

ちなみにネットでよく変態バイクとしてスズキのB-KINGがネタ扱いされていますが、海外ではそんなB-KINGと双璧を成すもうひとつの変態バイクとしてはMT-01は扱われています。

喜ばしいんだか何だか・・・

主要諸元
全長/幅/高 2185/790/1160mm
シート高 825mm
車軸距離 1525mm
車体重量 240kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHV2気筒
総排気量 1670cc
最高出力 90ps/4750rpm
最高トルク 15.3kg-m/3750rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/50ZR17
バッテリー GT14B-4B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.1L
交換時3.7L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ530|リンク114
車体価格 1,399,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
MT-01 2005年
MT-01/S
(5YU)
MT-03 2006年
MT-03
(5YK/29D)
MT-10 2017年
MT-10/SP
(B67/BW8)

SRV250 Renaissa(4DN)-since 1996-

SRX250ルネッサ

SRV250の派生モデルになるSRV250ルネッサ。「ルネッサ(復興・再生)」という何としてでもSRの様に定着させたいというストレートなネーミングがプラス。

ブリティッシュカフェレーサーの様なSRV250が上品過ぎて敬遠されていると判断したのか、ポジションを少し前傾にし黒基調でシートカウルを一体とした事でちょいワル感が出ているイタリアンカフェレーサーのようなモデル。

ホイールリムもアルミからスチールに変更され、バフ仕上げも止めたおかげでSRV250よりも5万円も安い39万9000円になったんですが・・・何が駄目だったんでしょうね。

RENAISSAカタログ

本家のSRV250もそうですが、ネオレトロが流行っている今なら間違いなく人気が出ると思いますが・・・SRが成功していてSRVやホンダのVRXが駄目だったのを見るとやっぱりVツインが馴染めない、好きになれない人が多かったという事かな。

今となってはVツインスポーツってホンダのVTRとスズキのSVだけですしね。フルラインナップメーカーとしては扱いに困る(流用しづらい)エンジンというのもあると思いますが。

そういえば2007年のモーターショーで出展され話題になったXS-V1 Sakuraを覚えておいででしょうか。

XS-V1さくら

このバイクのテーマは「日本の美」で、結果的にds250として市販化されたわけですが、どこからどう見てもコレはSRVじゃないかなと思うわけです。

名前だって”S”aku”R”aなんだし絶対そうに違いない・・・もう10年経ちますけど。

主要諸元
全長/幅/高 2060/685/1050mm
シート高 770mm
車軸距離 1390mm
車体重量 142kg(乾)
燃料消費率 55.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 11.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 27ps/8500rpm
最高トルク 2.5kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/90-18(51S)
後110/90-18(61S)
バッテリー YTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7HSA
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.0L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 399,000円(税別)
系譜図
XV250ビラーゴ1988年
XV250/SPECIAL
Virago
(3DM)
SRV2501992年
SRV250/S
(4DN)
ルネッサ1996年
RENAISSA
(4DN)
ドラッグスター2502000年
XVS250 DragStar
(5KR/19D)

SRV250/S(4DN)-since 1992-

SRV250

トラディショナルVツインネイキッドのSRV250。カフェレーサースタイルの全く新しいネイキッド。

250cc本格クルーザーのビラーゴ、そして今でいうネオレトロなこのSRV250と、立て続けに新しいジャンルの250を出してきたのは250の需要の多さや広さをヤマハが再認識したからなんですが、このSRV250はただ焼き増ししただけではなく、先に出ていたビラーゴ250のエンジンをベースにしつつも、クランク・ピストン・コンロッドや吸排気を変更しレスポンスを向上。更にエンジンブロックの造形まで変更し各部バフ仕上げという非常に贅沢な250。

Vツインなのに車名に”Single Roadsports”の略であるはずのSRという名前がついているのは、SRの様に長く愛されるバイクになって欲しいという想いを込めて。

SRV250カタログ

「ライダーとは、他人の話には乗らず、自分の思い入れに乗る人種である」

なんてカッコいいキャッチが入っていますが、SRV250は併売していたビラーゴそっちのけで大々的に広告を打たれました。ヤマハがいかにSRV250に賭けていたかが分かりますね。

ヤマハがSRV250で目指したのは、毎日の通勤からちょっとしたツーリングまで軽快にリーンウィズでスポーツを楽に楽しめるバイク。

SRV250S

バフがけされたカバーなどの外見だけでなく、剛性が高すぎないクレードルフレーム、落ち着きのあるハンドリングを生む18インチホイール、Vツインのスリムさを活かした軽い寝かし込み、そしてパルス感を楽しめる狭角Vツインエンジン。

飾って良し、乗って良し、弄ってよし。250の強みを存分に奮った大人の250でした・・・。

が、残念ながら人気は出ず。

SRV250Sカタログ写真

翌年にはシートとステムベアリングに変更が入ったほか、サブタンク付きリアサスペンションやローハンドル、バイザーに塗り分けタンクとメッキが施されたSモデルが、ビジネスマン向けにセンタースタンドとリアキャリアが付いたTモデルが追加されました。

主要諸元
全長/幅/高 2095/720/1055mm
[2095/720/1105mm]
シート高 760mm
車軸距離 1390mm
車体重量 144kg(乾)
[146kg(乾) ]
燃料消費率 56.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 13.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 27ps/8500rpm
最高トルク 2.5kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/90-18(51S)
後110/90-18(61S)
バッテリー YTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7HSA
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.0L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 449,000円(税別)
[479,000円(税別)]
※[]内はSモデル
系譜図
XV250ビラーゴ1988年
XV250/SPECIAL
Virago
(3DM)
SRV2501992年
SRV250/S
(4DN)
ルネッサ1996年
RENAISSA
(4DN)
ドラッグスター2502000年
XVS250 DragStar
(5KR/19D)

GLADIUS400(VK58A)-since 2009-

グラディウス400

「美しさの中に宿る、鼓動。」

GLADIUS400も先代同様SFV650(GLADIUS650)の兄弟モデルとして登場。名前の由来はファミコンのグラディウスではなく古代ローマの短剣グラディウスから。

これぞスズキと言わんばかりの流麗を通り越して粘りが出たような凄いデザイン。

サイドビュー

ピボット&シートフレームと重なる後半分部分からシートフレームまでカバーが掛かったオシャレなトラスフレームに、一枚物の剣と思しきステップのヒールガード、更にその流れを止めないマフラー。

他にもSFV650 GLADIUS(VP55A)の系譜で書いた通りクランクケースカバーのロゴの向きやボルトレイアウトまで考えられている非常にこだわりが感じ取れるデザイン。

VK58Aカタログ写真

ちなみに日本車離れしたデザインである事からも分かる通りGLADIUSは欧州(独や仏)をメインターゲットにしたもの。

しかしコレが意外なことに日本の女性にもウケたようで、広報の方いわく購入者の三割は女性だったそう。

VK58A

スズキとしては貴重な女性ウケの良いバイクだったんですね。

そう考えると生産終了は勿体無い気が・・・

そんなGLADIUS400ですが少し深読みすると

「SV400の教訓が本当に生きてるな」

と感じます。

というのも『53馬力/4.2kg-m』と先代SV400並の侮れないパワーは相変わらず持ち合わせているんですが、それが嘘のようにジェントル。

良くも悪くもVツインであることを忘れるくらいスムーズなんです。

グラディウス400リアビュー

これは厳しくなった騒音規制が要因なんですが、それを逆手に取った面も強いかと。

日本ではヒュイーンというモーターの様に回る直四フィーリングを好む人が多く、ドコドコという不等間隔のパルス感を嫌う人が400でも多いという事がSV400でわかった。

グラディウス透視図

GLADIUS400がいわゆるVツイン感を大きく抑えてあるのはそこを打開するため。

だから正直に言うといわゆるVツイン好きがGLADIUS400に乗ってもピンと来ない人が多いと思います。

ただ逆にVツインに興味が無い人やVツインがあまり好きじゃない人が乗ると

「意外とスムーズだな」

と絶対に思う・・・GLADIUS400の狙いはソコ。

Vツインの魅力というと

『パルス感・鼓動感』

といった強い味がよく上げられますが本当はそれだけでなく

『寝かし込みの軽さやトラクション感』

といった分かり辛いけど確かに感じる味もあり、その味を伝えるために強い味であるパルス感や鼓動感を抑えてる面がある。

グラディウスキャラバン

『グラディウスキャラバン』

と称し全国津々浦々グラディウスの試乗会をスズキ主催のニューモデル試乗会とは別に開いて回ったのもそれを知って欲しかったからでしょう。

つまりGLADIUS400は従来のVツイン層ではなく、SV400で振り向いてくれなかったアンチVツイン層に向けている面が強いVツインスポーツ。

GLADIUS400

グラディウスキャラバンは既に全日程を終えているのでGLADIUS400に試乗する機会はあまり無いかもしれませんが、もし機会があったらVツインを食わず嫌いしている人ほど率先して乗ってみることです。

「意外とスムーズだな」

と思ってしまうこと間違いなし。

主要諸元
全長/幅/高 2130/760/1090mm
シート高 785mm
車軸距離 1430mm
[1415mm]
車体重量 206kg(装)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 55ps/11000rpm
最高トルク 4.1kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8EIA-9
または
IU24D
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.4L
フィルター交換時2.75L
スプロケ 前15|後44
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 770,000円(税別)
系譜図
SV400/S 1998年
SV400/S(VK53A)
2009年
GLADIUS400(VK58A)

【関連車種】
CB400の系譜XJR400Rの系譜GSR400の系譜ZRX/ZZR400の系譜

SV400/S(VK53A)-since 1998-

SV400S

「新たな躍動をはじめたスポーツの感性。」

TL1000Sの流れを組んだ400版としてデビューしたSV400とハーフカウルを装着したSV400S。厳密に言うと丸目ネイキッドモデルは後からで最初はSのみ。

色々と言われるTL1000Sの兄弟という事で身構えてしまいそうですが、優等生ではないにしろ良く出来た末っ子でした。

SV400アルミトラスフレーム

最大の特徴は400ccとしては初となる楕円断面アルミトラスフレームを採用したという事。

おまけにスイングアームまでアルミという400とは思えない贅沢な骨格を持っています。これは翌年から発売される欧州向け車両SV650と共有化するから可能だった。

SV400/SV400S

アルミトラスフレームってサラッと言いましたが、一般的にトラスフレームというのは剛性値(重量に対する剛性)を高く出来る優れたフレームなんだけど、汎用性が乏しい事と溶接箇所が増える事から大量生産には向いてない。

日本メーカーがあまりトラスフレームを作らないのはこういった理由があるからなんですが、日本におけるSV400も欧州におけるSV650も知っての通り高級車というよりは大衆車。そんな車種なのにトラスフレームでしかもアルミというのは実はとても凄い事で、それがあったからこそSV400は乾燥重量159kgという驚異的な軽さを持てたわけです。

もう一役買ってるのが合理的な90°バンクのVツインエンジン。エンジンについてはいい加減しつこいので>>二気筒が七変化した理由を参照。

SV400

これも兄貴分であるSV650と共有のエンジンなものの、ただスケールダウンしただけではなくボアよりもストロークを大きく短くしてる。

そしてコレが結構やり過ぎで、ボア(内径72mm)×ストローク(行程49mm)という400ccの二気筒としてはかなり極端な比率。一昔前の二気筒スポーツを鼻で笑えるくらいのビッグボア。

この事からSV400は”4.2kg-m/8000rpm”という4st400ccでは最大となるトルクを叩き出すバイクに。

スズキSV400

「公道最速400はSV400」

と一部で言われてるのは別に贔屓目ではなくこういう根拠があってのこと。

SV400とSV400S

それなのに知名度が低いのは不人気だったから・・・ただこれはSV400が不人気だったというよりVツインが不人気と言ったほうが正しいかと。日本はどちらかというと等間隔燃焼の直四が好まれる傾向が強いから。

最初に言ったトラスフレームをあまり作ってこなかった事から来るトラスフレームに対する認知が弱かった事もあるでしょうね。

SV400カタログ写真

見た目も含めて日本人には未知の生物だったわけですね。

逆にツインやトラスフレームの文化が根付いていた(好まれる)欧州においてはSV650が大ヒットしたんですよ。向こうでスズキといえばSVと言われるくらいの大出世を遂げています。

SV400後期

だから650はモデルチェンジされ後継まで出てるんだけど、SV400は2002年にダブルディスクブレーキにマイナーチェンジされたのを最後に2007年の排ガス規制をもって生産終了となりました。

SV400/Sはお世辞にも売れたと言えないし乗ってる人も少ないんだけど、今でも惚れ込んで乗り続けるオーナーがいるのも事実。

その理由は”最速400ccだから”という理由ではないでしょう。

SV400壁紙

SV400はエンジンとフレームが素晴らしいという長所がある一方で、ヘッドライトが暗い、始動性が悪い、といった分かりやすい短所もあります。

何不自由なく乗りっぱなしに出来る400というよりかは少し手が掛かる400。

SV400ポスター

これの何処が魅力なのかというとアメリカのコンシューマリポート結果でも出ていましたが、人間不思議なもので手のかかる物ほど愛着が湧くんです。

つまりSV400が多くの人に好まれなかった反面、一部の人に強く好まれているのは、ただ速いだけではなくこういった少し抜けてるドジッ子のような”惜しさ”があったから。

主要諸元
全長/幅/高 2070/750/1060mm
[2040/740/1130mm]
シート高 785mm
車軸距離 1430mm
[1415mm]
車体重量 163kg(乾)
[167kg(乾)]
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/10500rpm
最高トルク 4.2kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60ZR17(55W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
または
U24ESR-N
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.7L
交換時2.3L
フィルター交換時2.4L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 559,000円(税別)
[656,000円(税別)]
※[]内はSモデル
系譜図
SV400/S 1998年
SV400/S(VK53A)
2009年
GLADIUS400(VK58A)