851series -since 1987-

851

「最高の90°Vツインを造れ」

これがスーパーバイクシリーズの始まり・・・ですが、その前に851に至るまでの経緯をざっくり紹介しようと思います。

元々ドゥカティというのは1922年にボローニャにいたアドリアーノ、ブルーノ、マルチェロの三兄弟が創設したのが始まりです。

創業者

最初はラジオのコンデンサーを造っていた会社から始まり、第二次世界大戦中はカメラなどまで手がける電機メーカーに。

1953年まで

そして戦後からは自転車向けエンジンを造るようになったんですが、それが人気を呼びバイク事業が大幅に拡大したことで分社化。

クッチョロ

そこから完成車を造るようになったわけですが、天才エンジニアが入社した事でドゥカティは大きく飛躍することとなります。ファビオ タリオーニ

『ファビオ・タリオーニ』

ベベルギア、そして市販車として初めてデスモドロミックを採用するなどの手腕を発揮し、ドゥカティは一躍レース常勝メーカーになりました。

ちなみにフェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリとは創業前からの友人。ドゥカティとフェラーリの関係はこの頃からのものなんですね。

そんなドゥカティですが

『ドカといえばデスモドロミックLツイン』

というイメージを持たれている方が多いと思います。

じゃあこの系譜というか流れがいつから出来たのかというと、Lツインが始まったのは1970年に出たドゥカティ初の大型でもある750GTというモデル。

750GT

ベベルギア駆動が特徴的で、第一世代もしくはベベル世代と言われています。

更にそこからレースで培ったデスモドロミックを投入したのが1974年の750SS DESMOというモデル。

750SS

これが今も続くデスモドロミックLツインの始まりです。

ちなみにこれの発展形である900SSベースのNCR900TT1でマン島TT優勝を飾り、その記念として出されたのが900MHR。

900MHR

MHRというのはライダーだったマイク・ヘイルウッドのレプリカという意味。

あまりの人気っぷりから常駐ラインナップとなったベベルデスモ世代を代表する名車です。

ここで少しデスモドロミックについて簡単に説明すると、デスモドロミックというのはエンジン(燃焼室)の蓋であるバルブ開閉機構の事。

通常の4stエンジンはオニギリの様なカムが回ってバルブを押して開き、縮んだスプリングの戻る力で閉じるポペットバルブ式になっています。

バルブスプリング

対してデスモドロミック式は開くのも閉じるのもカム。カムの力で押し開いて、カムの力で持ち上げて閉じる。

デスモドロミック

これによるメリットはバネに起因するバルブサージングといった問題が起きず回転数を上げられる事。

バルブサージングというのは先に挙げたポペットバルブ式のバネがカムの動きについて行けなくなってしまうこと。

ちょっと乱暴に分かりやすく例えると、最近のドアはドアクローザーがあるので勝手に閉まるじゃないですか。

ドアクローザー

でもそのかわりこれがあるせいで速く閉めるのは難しい。

戻る力を強くすればいいと思いますが、そうすると今度は押す際に凄く力がいるので大きな疲労(損失)に繋がる。

デスモドロミックエンジン

「だったらクローザに頼らず自分で開閉すれば速くて確実だ」

ってのがデスモドロミック。

じゃあなんでドゥカティしかデスモドロミックを採用していないのかというと、カム構造が複雑化してコストが増す事とバルブクリアランスがシビアで定期的な調整が必要になるから。

このためドゥカティは定期的なバルブクリアランス調整が必要になります。15,000km前後※車種による

コグドベルト

ドゥカティはその後、1979年にベベルギアよりもコンパクト&軽量なコグドベルト(歯付ベルト)方式のエンジンを開発。

パンタ(PANTAH)と銘打たれ、長く愛された有名なエンジンです。

500SL

これがそのエンジンを初めて採用した500SLというバイク。

言い忘れていましたがドゥカティは500SSからずっとレースをしています。

TT2

これはそのパンタエンジンベースのレーサーTT2。欧州のレースにおいて敵なしでした。

そしてドゥカティは

『レースマシンを市販車として出す』

という正にレーサーレプリカの様な姿勢を守り続けています。

750F1

それはもちろんTT2でも例外ではなく、市販車として1985年に登場したのがこの750F1というバイク。

パンタレーサーレプリカであり、F1という名前が付いている通り市販車レースTT-F1を強く意識したモデルでした・・・が、実は750F1は別のレースでも大活躍。

それはBOTT(バトルオブザツイン)と呼ばれるアメリカの二気筒レース。ここにドゥカティワークスが750F1を引き下げて登場し、圧倒的な速さでタイトルを総ナメ。

TT2

ちなみにこの事に我慢ならなかったハーレーオーナー達が動き、誕生する事となったのがビューエルです。

そこらへんはビューエルの系譜でどうぞ。

ドゥカティ748IE

これはその750F1ベースの世界耐久選手権TT-F1レースマシン748IE。

そしてそして・・・1988年、ここでやっと登場するのがスーパーバイクの始まりである748IEの市販車版851です。

ドゥカティ851

だいぶ引っ張ってしまって申し訳ないです。

748IEと同じ水冷4バルブLツインエンジンである”デスモクアドロ”を積んでいる正にレーサーレプリカ・・・でも向こうでは”レーサーレプリカ”って言葉(定義)は無いんだそう。面白いですね。

851の内部

デスモドロミック+クアドロ(4=4バルブ)=デスモクアドロ。

そんな851ですが

「公道で乗れちゃうレーサー」

として非常に高い人気を呼びました。

ちなみに系譜のタイトルである”スーパーバイク”という名前は皆さんご存知SBK(TT-F1の後釜)から来ています。

Superbike851

この851が造られたのは、そのスーパーバイクが始まるという情報を睨んでという狙いもありました。

ドゥカティとスーパーバイクレースの切っても切り離せない関係はここから始まる事となります。

ちなみにドゥカティのことさらスーパーバイクシリーズは毎年のように年次改良やSPモデルが登場するので区切り方が難しいのですが、ここではナンバリングで区切っています。

※851の簡易版モデルチェンジ歴

【1989年モデル】

圧縮比を高め105馬力になりFIをデュアルからシングル化。

ホイールを前後16から17インチ化など車体も大幅に見直し。

SP1とボアを2mm拡大し888ccとしたCORSA(公道走行不可)を販売。

【1990年モデル】

89年SPと同じ給排気のチューニングが入り、FIが再びデュアル化。

オイルクーラーが追加され、一人乗りから二人乗りへ。

SPモデルは一人乗りのままでアルミシートフレームになり、前後オーリンズを装備。

【1991年モデル】

サスペンションが前後マルゾッキから前ショーワ、後オーリンズに変更された他、細部の熟成を図ったモデル。

SPモデルも細部の熟成とミラーを変更。

【1992年モデル】

給排気系が見直された851の最終モデル。

888コルサ(レーサー)のパーツを奢った888SPSを販売。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:851cc
最高出力:93ps/9600rpm
最大トルク:7.2kg-m/7000rpm
車体重量:199kg(乾)
※スペックは初年度のストラーダ(公道の意味)

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4

S1000RR (0E21) -since 2019-

2019S1000RR

「THE SUPERBIKE OF SUPERLATIVES.」

LEDヘッドライトになってまさかの左右対称顔になった2019年登場の第五世代S1000RR/0E01型。

ドイツらしく11年目にして初めてのフルモデルチェンジという長い期間が空いただけの事はあり

・可変バルブ付き新型エンジン
・新設計フレックスフレーム
・アッパーリンク式サス
・キャスター角を0.5°アップ
・新型6軸IMU
・8馬力アップ
・11kgの軽量化
・6.5インチTFTカラー液晶
・LEDヘッドライト
・可変ピボット(モタスポグレードのみ)
・Mパッケージの設定(モタスポグレードのみ)

などなどほぼ全部変わっています。

2019S1000RR赤

最初にややこしいパッケージングについて説明すると、日本国内向けはカラーリング(グレード)によって必須パッケージが設けられています。

ノーマルグレードのパッケージングはこう。

2019S1000RR

6軸IMUによる電子制御やグリップヒーターやETCそれにパッセンジャーキットが付いた67,000円パッケージモデルが日本では標準グレードという立ち位置。

そこにリチウムバッテリーとM鍛造ホイールも付いて1.6kg軽くなった222,000円パッケージ。

M鍛造ホイール

更に電子制御サスペンションとクルコンまで付けた336,000円パッケージ。

という松竹梅みたいな感じ。

もう一つのトリコロールカラーはモータースポーツグレードといって、こっちはまた別の必須パッケージが用意されている。

2019S1000RR

カーボンホイールや滑りにくい加工が施されたMシートなどが付いた67,000円のMパッケージが標準。

それに電子制御サスペンションとクルーズコントロールを加えた181,000円の上位パッケージが別に用意されている形。

ちなみにホイールやシートなどは後から単品で買うことも可能ですが凄く高いです。

カーボンホイール

例えばこのモタスポグレードに付く正真正銘フルカーボンのホイールは後から買おうとするとこれだけで100万円もする。

それらを考慮するとモタスポグレードのMパッケージが超お買い得に思える・・・まんまとマーケティングにハマっているような気もしますが。

それで今回のモデルチェンジの狙いについてですが、プロダクトマネージャーであるセップメヒラーさんの各種コメントから察するに大きく分け二つ。

セップメヒラーさん

一つは11kgも軽くなっている事からも分かる通り軽量化。

そしてもう一つが

「もっと使いやすくする」

という事。

これについて具体的に話すとまずはフレーム。

フレーム

『フレックスフレーム』

ただでさえリッターSSとは思えない細さだったフレームなんですが、そこから更に30mmも細くした上に1.3kgもの軽くなってるんですが注目してほしいのはメインフレームの中間地点が捻れている事。

フレックスフレーム

これがフレックスという名を現す部分で、フロントとボトム(ピボット)はエンジンをガッチリ固定し剛性メンバーとして積極的に利用しつつ、ライダーにもっとも近い中間部を車体中心部に近づけ積極的に捻れる様にする事とでフレームの状態を分かりやすく伝えるようにしている。

そしてもう一つ特徴的なのがリアサスペンション。

フルフロータープロキネマティクス

『フルフローター・プロ・キネマティクス』

スズキが70年代のモトクロス車に取り入れていたフルフローターと同じようなもので、分かりやすく言うとダンパーを上から押してストロークする形になっているマルチリンクサス。

・上方向への反力がフレーム(支点)に集中する

・エンジンから離せてるので熱ダレを防げる

・ライダーの真下にダンパーが垂直に来る

などの効果というか狙いがある。

要する後輪からの反力(踏ん張ってる感)を積極的にメインフレームへ伝えることでリアの動きを分かりやすくしている。スイングアームで完結させてメインフレームに自由度を持たせたユニットプロリンクと真逆の思想ですね。

テールランプ

ところでテールランプが無いぞ・・・と思ったらウィンカーと兼用なんだそうです。

フェンダー外せばリア周りはサーキット対応完了っていうオシャレなだけでなく超合理的デザインである意味これも使いやすさ抜群。

あともう一つ紹介したいのが恐らく皆が一番気にしてるであろう

S1000RRのシフトカム

『Shift-Cam』

という可変バルブ機構。

四輪に詳しい方はBMWの可変バルブといえばバルブトロニックを思い出すかも知れませんが少し違って、ソレノイドピンをカムシャフトに予め彫られている溝に沿わせシャフト自体をスライドさせる事で可変させるカム切替式タイプ。

シフトカムのメカニズム

構造的にはアウディが採用しているAVSとほぼ同じ。

ちなみにベンツやVWでも採用されているドイツを代表する可変バルブシステムだったりします。

アウディの可変バルブ

そしてこれの狙いなんですが可変バルブというと

「更にハイパワーに」

と思いがちなんですがそうではなく低中速の底上げが主な目的。グラフを見れば一目瞭然かと思います。

シフトカム

どうして可変バルブにすると中低速がアップするのかGSX-R1000の方でも説明をサボっていたのでこの際に話すと、超高回転で弾けるパワーを出す必要があるスーパースポーツは吸気や排気を一つ一つを区切ってやっていては間に合わない問題に直面する。

これは空気にも質量がある(すぐに来ない)からで、そのためにそういうタイプのエンジンは

・バルブ開口面積(バルブの開く大きさ)

・オーバーラップ量(吸排気の両バルブが開いてる時間)

をその他のタイプよりも多く取って流れ作業みたいな事をしている。

オーバーラップ

しかしこれには問題があって、高回転でグングン吸えるようなバルブ設定にすると

・吸気が弱い低回転時では流速が出ずガソリンと空気が綺麗に混ざらず不安定燃焼

・スロットルバルブが閉じているため吸気管の負圧に吸い寄せられ逆流

・排気バルブも開いているから排気に釣られて排出

などの問題が出る。当然ながらそれが起こるとバワーダウンになる。

オーバーラップによる充填損失

だから低回転時の吸気バルブというのは高回転時とは逆に小さく、そして少しだけ開く方がパワーを稼げる。

口を大きく開いて軽く息を吸うのと、口を窄めて軽く息を吸った場合、どちらが勢いよく吸えるかやってみると分かるかと思います。

カムによる違い

「じゃあどっちも付けて回転数で切り替えればいいじゃん」

というのがカム切替式の可変バルブであり、S1000RR/0E01型で押し上げられた中低速というわけ。

シフトカム

何故スーパースポーツにおいてピークパワーに関係のない低中速の底上げをしたのかといえば、これもフレームと同じで乗りやすくするため。

「乗りやすさこそ高タイムに繋がる」

という思想を元にS1000RR/0E01は開発されてたからこうなった。急激なトルク変動は乗り辛さ(扱い辛さ)に直結しますからね。

中低速の改善

だからS1000RR/0E21は208馬力とパワーアップしてるんですが、多くの人はそれ以上のパワーアップを感じるかと。

余談ですがこの可変バルブは排ガス規制を睨んでの事でもあると思います。バルブタイミングがあっていないとHCなどがモリモリ出るので。

しかしながら元々S1000RRはGSX-R1000を手本にしたと公言しているだけあり色々と被る印象がありますね。ちなみに某GSX-R1000開発者はS1000RRが出た時は相当悔しかったと漏らしていました。

「本来ならば自分たちが先に出すべきモデルだった」

とかなんとか。

S1000RR wallpaper

よせばいいの最後にまた余計な事を言いますが、相変わらず日本車とモロかぶりな構成でカムチェーンに難がある(コールドスタート時にガラガラいうオーナーは要注意)にも関わらずSS不況など何処吹く風なS1000RR。

タイヤメーカーを始めとした部品屋も広告塔にS1000RRを重用してて、いつの間にか直4スーパースポーツの筆頭みたいになった上に今回の乗りやすさを向上という日本車みたいな改良。

「どれだけジャパニーズSSキラーになれば気が済むんだ」

っていうただの嫉妬なんですが、今回はさらに逆撫でするようなこんな禁じ手までしてきた。

Mパッケージ

分かりますかね・・・これ。

Mシート

ただでさえブランドあるのに四輪ブランドを重ね掛けするのは反則だと思います。

主要諸元
全長/幅/高 2073/848/1151mm
シート高 824mm
車軸距離 1441mm
車体重量 197kg(装)
[193.5kg(装)]
燃料消費率 15.62km/L
燃料容量 16.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 207ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
[後200/55ZR17]
バッテリー AGMバッテリー
[リチウムイオンバッテリー]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9FI-10G
推奨オイル BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時4.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 2,313,000円(税込)~
※[]内はMパッケージ
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR/HP4Race (0D50/0E31) -since 2017-

2017年式S1000RR

「An icon among superbike.」

四代目となるS1000RR/0D50型。

主な変更点はキャタライザー(触媒)の増強に加え、マフラーの見直しなど排ガス規制への対応が主な変更でカタログスペックに変更はなし。

0D50

分かりやすい見分け方としては、サイドリフレクターが標準装備になっている事や、触媒増築によるアンダーカウル後方のカットなど。

更にこのモデルで『HP4 RACER/0E31』が限定750台で発売。

HP4レーサー

外装、ホイール、各部ステー、そしてメインフレームまでカーボンなモデル。

これのおかげで車重は146kg(乾)という圧倒的な軽さを誇り、エンジンも圧縮比が上げられており215馬力を発揮する上に、足回りも最上級のオーリンズなどを装備。

HP4カーボン

お値段1000万円です。

ちなみにレーサーとありますがこれはレースベースではなくレーサーパフォーマンスを楽しむモデル。

えーっと、書くことが無いので凄く主観的な小言を書きます。

S1000RRはSSの中でもダントツで嫌われてるSSじゃないかなと思います。

2018年式S1000RR

理由は色々あります。

何度も言いますがS1000RRはまんま日本のSSでBMWらしさといえばアシンメトリーな顔くらい。

そしてS1000RRの存在意義であったSBKでも

『Aprilia/RSV4』

『Ducati/SUPERBIKE』

『KAWASAKI/ZX-10R』

の前には太刀打ち出来ずワークス撤退というカッコ悪い結果に終わりました。

ただし、ここで終われば

2018年式ブラック

「BMWといえどSBKは厳しかったネ」

という同情にも近い形で終わると思うんですが・・・このS1000RR、初代の二年間だけで2万台を超える大ヒット。

その人気は今も衰えること無く、SBK王者にも輝いた事があるRSV4やZX-10Rより売れています。歴史と伝統が詰まったドゥカティのスーパーバイクに負けずとも劣らない程売れてる。

これは日本も例外ではありません・・・S1000RRって国産SSより売れてるんですよ。

基本的にモデルチェンジした初年度だけ申し訳程度にランクインする国産SSと違い、S1000RRは年間500台前後と決して多くはないものの毎年コンスタントに売れてる。

200万円を超える人気も下火なクラスでS1000RRが何故これほど一人勝ちの様な人気なのかと言えば・・・

BMW

「BMWだから」

でしょう。それしか考えられない。

「直四は全部一緒」

という認識が日本を含め世界共通であります。

「そんな事はないよ」

って思ってる人、じゃあ日本の直四SSそれぞれの特徴を言えますか。

速さより楽しさなCBR1000RR。

MotoGP直系クロスプレーンなYZF-R1。

ロングストロークと可変バルブなGSX-R1000。

SBK王者なZX-10R。

四者の違いをハッキリと説明できる人がどれくらい居るのか分かりませんが、説明できたとしてじゃあこれが差別化に繋がるのかって言ったら弱いですよね。

しかもそれに加え日本のSSもS1000RRという黒船来航に危機感を覚え、膨大な開発費を掛けて黒船にも負けない装備と価格のSSなりました。

これで対抗できる・・・と本来なら言えるハズなんだけど、これは結局

「ますますどれも一緒」

な状況になってしまったわけで、どれも一緒なら

「BMWのにする」

となるわけですよ。

2018年式S1000RR壁紙

嫌われる理由はここにあるかと思います。

もし仮に同じこと日本メーカーがしたら、もしもアフリカツインやスーパーテネレやVストロムが歴史ある名車R1200GSに対抗して水平対向エンジンやテレレバーにしたらどう思いますか。

Rシリーズ

「プライドは無いのか」

と思うでしょ。

でもS1000RRはそれが許されてる。許されてるどころが大歓迎されてる。

2018S1000RRセンター

これが何故かといえばBMWだから。

S1000RRは正に

「ジャパニーズスーパースポーツキラー」

と呼べるバイクじゃないかと思います。

本来の意義であったSBKにワークス参戦しておきながら結果を残せず、アジア重視というカッコ悪い撤退をしても一番人気。

もうこうなってくると

「SBKって何の為にあるの」

っていう話でもある。

マン島TTやスーパーストック、国別レースで勝ってると言う人も居るでしょうが、それは別にS1000RRに限った話ではないです。

2017年式S1000RRカタログ写真

でもこの嫌われる要素ってとっても大事で、日本メーカーが持ちたくてもなかなか持てない物。

何故なら嫌われるっていうのは結局のところ嫉妬なわけで、それはつまり所有感を満たしてくれるオーナーにとって何よりも大事な要素だから。

トドのつまりS1000RRが嫌われるのは

「最もミーハーなSSだから」

というわけなんですが、そもそも持て余すのが基本なSSはミーハーの典型なのでS1000RRが売れるのも至極当然な話なんですよね。

誰だって嫉妬するより嫉妬されたいですもの。

主要諸元
全長/幅/高 2050/826/1140mm
[2070/770/1193mm]
シート高 816~846mm
車軸距離 1438mm
[1440mm]
車体重量 208kg(装)
<210kg(装)>
[171kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 199ps/13500rpm
[215ps/13900rpm]
最高トルク 11.5kg-m/10500rpm
[12.2kg-m/10000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
[後200/60ZR17]
バッテリー AGMバッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 2,190,000円(税込)
[10,000,000円(税込)]
※<>内はDDC有
※[]内はHP4Racer/0E31
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR (0D10) -since 2015-

2015年式S1000RR

「YOUR MISSION TO RIDE」

三代目となるS1000RR/0D10型。

2015S1000RRフェイス

左右非対称だった顔が反転したような形になったわけですが、それよりも中身が大きく変わりました。

カムシャフトを始めとしたエンジンヘッド周りやエキゾースト周りなど吸気/排気系を大幅に見直し、先代のHP4に並ぶ199馬力に。

S1000RRフレーム

更にフレーム周りの剛性も見直され-2kgの軽量化。

そしてもう一つ大きいのがDDC(Dynamic Dumping Control)と呼ばれる電子制御サスペンションの採用です。

しかも面白いことにS1000RRの物は定番のオーリンズではなく、内製というかザックスとの共同開発したもの。

DDC

他にもシフトアップ/ダウン両対応のギアシフト・アシスタント・プロ(クイックシフター)も装備など先代のHP4にも劣らない装備となりました。

ちなみにシフトペダルは取り付け位置を変えるだけで逆シフトに出来るという嬉しい配慮。

シフトペダル

さりげない部分なんですが、S1000RRが凄い所ってこういう所なんですよね。

というのもS1000RRはWSBに勝つために開発されたわけなんですが、アジア市場の拡大に注力するという事で2013年をもってワークス撤退となりました。

2015S1000RRサイド

最初は黒船来航だと話題になったんですが、残念ながら年間チャンピオンを獲得する事は出来ず・・・というかオブラートに包まずストレートに言うと、ワークス参戦のわりには期待を大きく裏切る結果となりました。

ちなみにワークスチームを率いていたブッツオーニ総監督はその後ドゥカティに引き抜かれ、今ではドゥカティの副社長だったり。

2015S1000RRリア

じゃあS1000RRがダメだったのかと言うと決してそうでは無いです。

2010年のマン島TTにおいてサイドカーを除く5クラス全制覇したレジェンドであるハッチンソンを始め、国内外問わず多くの人がS1000RRを評価していました。途中で他のバイクを辞めてS1000RRに鞍替えした人までいた程です。

S1000RRの何がそんなに凄いのか、それはスーパーストックでの活躍からも分かるように

「ノーマルの時点で完成度が高い」

という事です。

主要諸元
全長/幅/高 2050/826/1138mm
シート高 815mm
車軸距離 1438mm
車体重量 204kg(装)
燃料消費率 17.5m/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 199ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 2,190,000円(税込)
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR/HP4 (0524/0D01) -since 2012-

2012S1000RR

「UNSTOPPABLE」

二代目にあたるS1000RR/0524型。

見た目こそあまり変わっていないもの、トラクションコントロール・ABS・走行モードなどの制御系、そして5000rpmからの出力特性が見直されトルクの谷の解消。

更にステムオフセットや前後サスペンション、そしてピボット等の足回りも見直され乗り味がマイルドに変更。

新旧比較

見た目の違いとして分かりやすいのはサイドカウルのシャークダクトの向きが反対になった事と、シートカウルがエアダクト付きの小ぶりな物になったこと。

そしてこの二代目からは新たにHP4/0D01型も販売。

HP4

HP4というのはハイパフォーマンス四気筒の事で、電子制御サスペンション(DDC)と200の極太タイヤ、更にカーボンカウル等で10kgもの軽減をしたモデル。

トラコンやABSといった電子制御もスリックモード(サーキットモード)に最適化されたものに変更されています。

HP4工場

メーカー希望小売価格は税込みで280万円。

このモデルの狙いはもちろんレースで勝つため。

HP4カタログ写真

BMWはスーパーストックでは圧倒的な速さを誇っていたものの、WSBのトップレースであるSBKでは今ひとつ戦績を残せなかった。

だからこのHP4を引き下げて取りに来たというわけ。

2014マン島TT優勝S1000RR

一方でマン島TTで75年ぶりの優勝した事が大きく話題となりました。

ちなみに75年前に優勝したのはこれ。

BMW RS500

BMW RS500という492ccの60馬力のバイク・・・当時はやっぱり水平対向だった。

ちなみに余談ですが、実はこのS1000RRを造るずっと前の1993年頃にBMWは水平対向のスーパースポーツを開発していました。

その名も『BMW R1』

R1プロトタイプ

アルミツインスパーフレームながら

・水平対向二気筒

・シャフトドライブ

・テレレバー

というBMW色が溢れているスーパースポーツ。

おまけにこの水平対向エンジンはドゥカティで有名なデスモドロミック機構を採用しています。

BMWアール1

それにより1000ccながら140馬力を発揮し、車重も乾燥重量で165kgと非常にパフォーマンスなモデルでした・・・が、やはりレースには向かないシャフトドライブや水平対向では無理があったのか四機作っただけで結局お蔵入りに。

主要諸元
全長/幅/高 2056/826/1138mm
シート高 820mm
車軸距離 1422mm
車体重量 204kg(装)
[206kg(装)]
{199kg(装)}
燃料消費率 17.5m/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 156ps/10000rpm
<193ps/13000rpm>
最高トルク 11.2kg-m/10000rpm
<11.4kg-m/9750rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
{前120/70ZR17
後200/55ZR17}
バッテリー ETZ10-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル Castrol Power 1 Racing SAE 5W-40, API SL /
JASO MA2
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 {2,800,000円(税込)}
※<>内はEU仕様
※[]内はプレミアムライン
※{}内はHP4
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

S1000RR (0507) -since 2009-

2009S1000RR

「Welcome to planet power.」

BMW初のスーパースポーツとなるS1000RR/0507型がデビューしたのは2009年のこと。

デビューと言っても最初は市販車としてではなくWSB(市販車レース)という順番が逆のような鮮烈デビュー。

S1000RR

市販予定車という名目で出場したわけですが、そりゃもう世界中が大注目しました。

BMWのバイクと言えば

・水平対向エンジン

・独特なサスペンション構造

・シャフトドライブ

というロードレースには向かないバイクが主力で、BMW自身もずっと

「ロードレースに興味なし。それはウチ(BMW Motorrad)だけじゃなくファンもそうだろう。」

と言い続けてきたわけですから。

しかしスーパースポーツのあまりの加熱っぷりに遂に重い腰をあげたというわけ。

S1000RRラフスケッチ

コンセプトデザインの日付が最もスーパースポーツ人気が高まっていた2006となっている事から見ても疑いようが無いかと。

そう考えると2010年の市販化は少し遅い様な・・・リーマンショックの影響ですかね。

ちなみにデザイナーはスウェーデンの人でイメージはシャークカウルを見れば分かる通りサメです。

まあそんな事より車体ですが

S1000RRネイキッド

・アルミツインスパーフレーム

・三軸三角レイアウト直四エンジン

・マフラーを避ける湾曲スイングアーム

・テレスコピック&リンクサス

・チェーンドライブ

などなどエンブレムがなかったからBMWとは分からない、言ってしまえば日本のスーパースポーツそのものな造り。

S1000RR_wall

実際これを開発する際にCBR1000RRとGSX-R1000を参考にしたんだそう。

ただ流石BMWというべきか、処女作なのにとてつもないスペックで世間を賑わせました。

可変ファンネルやスロットルバイワイヤ(電スロ)でクラストップとなる193馬力を叩き出すエンジンに、初っ端からでトラクションコントロールシステムやABSなどを装備。

(※TCS/ABSはプレミアムラインのみなものの日本はプレミアムラインのみ)

2009S1000RRカタログ写真

「まあウチが本気出せばこんなもんよ」

と言わんばかりなスペック。

ではもっと具体的に何が凄いのかと少しご紹介。

S1000RRの凄い所その1

「クラス1のショートストロークエンジン」

エンジン

S1000RRのボアストロークは80mm×49.7mm。

これはリッター四気筒の中では最もビッグボアな超ショートストロークエンジン。

エンジンイラスト

この技術にはF1や、2000年代半ばにMotoGP参戦を目論み開発していたマシンの技術が使わているそう。

当時のスポーツバイクとしては珍しいロッカーアーム式を採用している事がちょっと話題になりましたね。

S1000RRの凄い所その2

「クラス1のフロントフォーク径」

フロントフォーク

一般的なリッターSSがΦ43なのに対しΦ46というこれまたクラストップとなる極太フロントフォーク。

どんなスピードでも負けない高剛性で正確にストロークさせるという完全にサーキットしか見てない足。

S1000RRの凄い所その3

「クラス1の軽さ」

最軽量

マグネシウムヘッドカバー、アルミ製のタンクやステップ周り、専用ホイールにチタンサイレンサーなどで当時としては最軽量となる装備重量204kgという軽さ。

S1000RR日本仕様

ちなみに日本では規制の関係からアクラポビッチのロングサイレンサーが標準装備という嬉しい変更でした。

そのぶん馬力は153馬力と落とされてるんだけどカプラ一つでゴニョゴニョ。

そんな多数のクラスナンバーワン要素を引き下げて登場したS1000RRだったんですが・・・一番話題になったのはやっぱりコレ。

アシンメトリー

左右非対称、アシンメトリーな顔ですね。

ある意味もっともBMWらしい部分。

そんなS1000RRは改造範囲が狭いスーパーストック1000というクラスにおいて、フル参戦初年度にあたる2009年に10戦中9勝という文句なしの成績で優勝。

スーパーストック1000仕様

「WSB(ワールドスーパーバイク)に黒船がやってきた」

とユーザーだけでなく、レース業界にも一石を投じる結果となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2056/826/1138mm
シート高 820mm
車軸距離 1432mm
車体重量 204kg(装)
燃料消費率 17.5m/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 999cc
最高出力 156ps/10000rpm
<193ps/13000rpm>
最高トルク 11.2kg-m/10000rpm
<11.4kg-m/9750rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17
後190/55ZR17
バッテリー ETZ10-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9D-J
推奨オイル Castrol Power 1 Racing SAE 5W-40, API SL /
JASO MA2
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
フィルター交換時3.5L
スプロケ 前17|リア44
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 1,690,000円(税込)
[1,990,000円(税込)]
※<>内はEU仕様
※[]内はプレミアムライン
系譜図
S1000RR

2009年
S1000RR
(0507)

S1000RR

2012年
S1000RR/HP4
(0524/0D01)

2015S1000RR

2015年
S1000RR
(0D10)

2017S1000RR

2017年
1000RR/HP4Race
(0D50/0E31)

2019S1000RR

2019年
S1000RR
(0E21)

RSV4 Ver.4  -since 2015-

RSV4

そして2015年モデルからまた変わったRSV4。

2015年モデル最大の特徴は遂に大台の200馬力を突破し201馬力になったこと。まあお高いRRモデルとRFモデルだけだけどね。

2015RSV4RF

これらは見た目はほとんど変わらないんだけど、バルブからカムシャフトに至るまでほとんどの部品が全くの別物。これはより高精度な新しい設備を入れたから可能になったことなんだと。

なんか書くことが無くなってきたというか紹介に飽きてきたのでちょっと個人的な話。

RSV4は今では「史上最も成功したV4」と言われています。

日本の人からすると「V4と言えばホンダ」「V4と言えばVFR」「V4といえばRVF」と思っている人が多いと思います。まあアプリリアはそれほどシェアを持った会社では無いですしね。特に日本では。

さてじゃあここで何故ホンダのV4と違いアプリリアのV4は受け入れられたのか考えてみようと思います。

まず第一の理由としてホンダのV4は最初に話した通り挟角90度というお手本のようなV4エンジンだった事。VFRの系譜を読んでもらえると分かるのですが、ホンダも最初はスーパースポーツはV4で行く路線でした。

V4

良く言えばシルキー、悪く言えば盛り上がりに欠けるのが特徴だった360度クランクのエンジンサウンド。それがユーザーに受け入れられなかった。

だからホンダも途中で180度クランク角に変えたりしたんだけど今ひとつでVFR750R(RC30)やRVF750(RC45)といった販売台数を絞れてレース特化な造りに出来るホモロゲに変更していったんだと思います。

もちろん勝つためのホモロゲでもあったわけで実際勝ってたわけですが。

アプリリアRSV4エンジン

もう何度も言っていますがそれに対しRSV4の最大の武器は挟角65度という異例の狭さにあります。

誤解されないように言っておきますが、ホンダの90度V4が劣っているわけでは決してありません。

90度というのは一次振動を理論上ゼロに出来るVツインやV4にとっては言わば黄金比みたいなものなんです。

「じゃあ何でホンダはV4スーパースポーツを辞めたんだ!作らないんだ!」

ってそれは皆がVFRを買わなかったからであってホンダに文句を言うのはお門違いです。ホンダは今でもV4が一番だと思ってます。実際RCVはV4だしこの前出たRCV-SもV4だし。

・・・話が反れました。

2015RSV4チラシ

アプリリアがV4で成功を収めたのはそんな黄金比を”敢えて”外したからなわけですね。

ミレの方でも言ったけど90度というのはエンジンだけで見ると理想的な反面、それだけ開くわけなので長さが前後の長さが出てくるわけです。

そうすると車体全体の長さに影響しスイングアームを長く取れない。説明は省きますがスイングアームの長さとコーナリング性能は比例して伸びるんです。>>バイク豆知識:アンチスクワット

ヤマハのYZF-R1がコーナリングマシンまたは猫足と言われたのはクランクを寄せ上げて直四ながらエンジンの前後幅を縮めた事でライバル車に比べ大きくスイングアーム長を取れたから。

アプリリアV4

アプリリアの65度V4もそうです。

一次振動ゼロを捨て、その代わりにシリンダーを起こし前後幅を縮めた事でV4ながらスイングアームを長く取ることが出来たおかげで、速さを手に入れSBKで優勝出来るレベルのSSが仕上がったというわけです。

賞賛されているV4らしからぬサウンドは言ってしまえば嬉しい誤算。

RSV4RF

つまりRSV4はV4スーパースポーツなんだけど、皆が想像するようなV4スーパースポーツじゃない。

ただ悲しいかなレース結果とは裏腹に販売台数はどうも伸び悩んでるみたい。アプリリアは大型クラスの需要が弱いみたいなんですよね。

言い忘れていた事がありました。

国内に入っているRSV4は例に漏れず上を切った特別デチューンモデルです。しかしディーラーに持っていけば簡単にフルパワー仕様にしてもらえるとのことです。

(ディーラーが簡単にそんな事をしていいのかとも思いますが)

エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:999cc
最高出力:
180ps/12500rpm
最大トルク:
11.7kg-m/10000rpm
車両重量:184kg(装)

系譜図
アプリリアの歴史

1968年~
アプリリアの歴史

RSV Mille前期

1998年
RSV mille(ME)

RSV Mille後期

2001年
RSV mille(RP)

rsv1000r

2004年
RSV 1000 R

第一世代RSV4

2009年
RSV4 Ver.1

第二世代RSV4

2011年
RSV4 Ver.2

第三世代RSV4

2013年
RSV4 Ver.3

第四世代RSV4

2015年
RSV4 Ver.4

RSV4 Ver.3  -since 2013-

RSV4SBK記念車

次に大幅な変更があったのは2013年モデル。上の写真はSBK優勝記念車。

このモデルからABSが標準化されました。メーカーは(安心の?)ボッシュ製で段階設定付き。

他にもエンジンやスイングアームピボットが6mm程下げられる等の細かい変更が入っている。

ファクトリーモデルは更に変更が加えられてて馬力も3馬力アップの183psに。

そして2014年に再びSBKのチャンピオンとなります。

2014アプリリアレーシング

めっちゃ嬉しそう。なんかこの写真を見るといかにもアプリリアだなーって感じですね。

アプリリアって”レースに命を賭けてる”というより”レースが大好き”って感じなんですよね。

でもそれを許してるピアジオも凄い。アプリリアは良いところに拾われたなあ。

あとアプリリアって宣伝もちょっと変わってるんですよね。

RSV4

素直に宣伝しないと言うか、なんでも捻っちゃうっていうか。

エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:999cc
最高出力:
180ps/12500rpm
最大トルク:
11.7kg-m/10000rpm
車両重量:184kg(装)

系譜図
アプリリアの歴史

1968年~
アプリリアの歴史

RSV Mille前期

1998年
RSV mille(ME)

RSV Mille後期

2001年
RSV mille(RP)

rsv1000r

2004年
RSV 1000 R

第一世代RSV4

2009年
RSV4 Ver.1

第二世代RSV4

2011年
RSV4 Ver.2

第三世代RSV4

2013年
RSV4 Ver.3

第四世代RSV4

2015年
RSV4 Ver.4

RSV4 Ver.2  -since 2011-

RSV4

RSV4は見た目がほとんど変わってないからずっと一緒と思ってる人も居るかもしれませんがちょこちょこモデルチェンジしてます。

本当は毎年変更入ってるから分けるべきなんだろうけど途方も無い数になるので大まかに分けてご紹介。

最初に大きな変更が入ったのは2年後の2011年。

説明が遅れちゃったんだけどRSV4は2009年に初代RSV4Rが、同年にオーリンズを装着した上位グレードのRSV4FACTORYが発売されました。2010年もこのまま。

そして2011年になるとRSV4R APRCとRSV4FACTORY APRCという名前に。

APRC

APRCってなんぞ?って話ですが

APRC(アプリリア・パフォーマンス・ライド・コントロール)の略で

aTC(アプリリア トラクション コントロール): 全域においてスリップコントロールするシステム

aWC(アプリリア ウイリー コントロール): ウィリーを抑制するシステム

aLC(アプリリア ローンチ コントロール): スタートダッシュをアシストするシステム

aQS(アプリリア クイック シフト):クイックシフター。

という要するにフル電子制御システムの事です。しかもこのAPRCの凄い所は学習能力が付いているということ。ちゃんと学ぶしライダーの好きなようにチューニングすることも可能なんです。

2010RSV4

本当はエンジン周りにもカムチェーンやシャフトといった大幅な見直しが入ってるんだけど、挙げだすとキリがないのでこの辺で。

あと2012年にはマフラー形状とリアのタイヤサイズが190から200に変更されました。

余談だけどRSV4は本当にSBKしか見てないんだよねこのバイク。

エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:999cc
最高出力:
184ps/12500rpm
最大トルク:
11.7kg-m/10000rpm
車両重量:184kg(装)

系譜図
アプリリアの歴史

1968年~
アプリリアの歴史

RSV Mille前期

1998年
RSV mille(ME)

RSV Mille後期

2001年
RSV mille(RP)

rsv1000r

2004年
RSV 1000 R

第一世代RSV4

2009年
RSV4 Ver.1

第二世代RSV4

2011年
RSV4 Ver.2

第三世代RSV4

2013年
RSV4 Ver.3

第四世代RSV4

2015年
RSV4 Ver.4

RSV4 Ver.1  -since 2009-

RSV4

2009年にアプリリアが

「これでSBKにまた参戦する!」

と言って出してきたのがRSV4。

SBKのレギュレーションを睨みそれまでのVツインを捨てV4へと生まれ変わったRSV。

アプリリアSBK復帰

正しく言うならRSV4Rなんですが、そのRSV4最大の特徴は何と言ってもそのエンジン。

V4だから?いえいえそれだけではありません。先代までのVツインが挟角60度と異例の狭さだったのに対してRSV4のV4エンジンも65度と非常に狭いこと。

同じV4を作っているホンダのVFRは800が90度で1200が75度。MotoGP車両のRCVでも最も狭い時期でも同じく75度。ドゥカティに至ってはずっと90度。

RSV4エンジン

こう書けば65度がいかに狭いか分かってもらえるかな。 ちなみに爆発間隔は0°→180°→425°→605°

だからV4なんだけどVツインのようなワイルドなドコドコ感。スンゴイ回るハーレーエンジン的な。

RSV4フェイス

顔の方も今ではもう三眼といえばアプリリアと言われるほど定着したものになりましたね。

しかしそれより何よりRSV4と言えばワークス参戦2年目の2010年に念願だったSBK総合優勝を果たしました。

しかもライダーとマニファクチャラーズのダブルタイトルという快挙。

アプリリア2010

イタリアのバイクメーカーがイタリアのライダー(ビアッジ)でダブルタイトル獲得なんだからそりゃもうイタリアは歓喜の渦ですよ。

このおかげで海外では既に

「V4=アプリリア」

という調査結果が出されるまでに。

エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:999cc
最高出力:
180ps/12500rpm
最大トルク:
11.7kg-m/10000rpm
車両重量:184kg(装)

系譜図
アプリリアの歴史

1968年~
アプリリアの歴史

RSV Mille前期

1998年
RSV mille(ME)

RSV Mille後期

2001年
RSV mille(RP)

rsv1000r

2004年
RSV 1000 R

第一世代RSV4

2009年
RSV4 Ver.1

第二世代RSV4

2011年
RSV4 Ver.2

第三世代RSV4

2013年
RSV4 Ver.3

第四世代RSV4

2015年
RSV4 Ver.4