YZF-R25/3(B3P/B6P/B7P)-since 2019-

YZF-R25

「Ride the Excitement」

二代目となるYZF-R25とYZF-R3。

・YZF-R25/B3P型

・YZF-R25ABS/B6P型

・YZF-R3/B7P型※ABSのみ

となっています。

パッと見でも分かる通り見た目が大きく変わりましたがまず変更点を上げると

・LEDヘッドライトとテールライト

・倒立フロントフォーク

・ハンドルマウント周りの変更

・液晶メーター

・外装の一新

・ラジアルタイヤ(※R3のみ)

などなどがあります。

中でも特徴的なのが倒立フロントフォークによるハンドリングの向上ですね。倒立というのは外筒のアウターチューブと内筒のインナーチューブがひっくり返した形になっているフロントフォークの事。

YZF-R25ボディワーク

キャビテーションという安定性の問題に強い事や、太いアウターチューブを長く取って車体側にマウントすることで剛性を上げる事が出来るメリット。

簡単に言うと路面からのショックによる曲げに強くなるのでブレーキング時や旋回時の安定性を上げる事が出来るわけですが、ただ剛性を上げるという事は必ずしも良い事とは限らず切り返し時などで機敏すぎて(撓ってくれないので)不安定に感じたりもする。

そこでYZF-R25/R3が行ったのがステム周りの改良。それが分かりやすく現れているのがR1に倣うように採用されたトップブリッジ。

YZF-R25トップブリッジ

ガチガチになりすぎない様にフォークを挟んでいるトップブリッジの剛性を落としてメインフレームはそのままでも良い塩梅になるように調整。

これに伴いポジションも少し見直されていて、ハンドルがブリッジの上ではなくスーパースポーツらしく下に付くようになりました。

YZF-R25ポジション比較

とはいえそこまで前傾がキツいわけでもなく先代比で-22mmとの事。

そしてもう一つ上げたい特徴が外装。

YZF-R25赤

幾枚ものカウルが重なったように見えるレイヤードカウルデザインなんですが更に凝った形になりましたね。

ちなみに空気抵抗を減らす事を重視されたようで結果として最高速が8km/hほどアップ。更にはヤマハとしては珍しいダウンフォースを稼ぐウィングまで装着しています。

YZF-R25ウィング

『クロスレイヤード ウィング』

という名前だそうです。

それにしても

「ヤマハはレイヤードカウルが好きだな」

って話なんですが、ここでちょっと小話を。

YZF-R25黒

「レイヤードカウルの狙いは何か」

という事について少し話というか考察を。

2006年ごろから始まったレイヤードカウルの魅力はもちろんそのデザイン性なんですが、これ単なる飾りというわけではなく機能面を考慮した造形をしています。

それを理解するために見てほしいのが市販車とは決定的に異なるカウル造形をしているレーサー。

レーサーのカウル

レーサーのカウルはサイドダクト(サイドカウルの切れ込み)がほとんどありません。

これはレーサーは空気抵抗を抑える事が第一なので抵抗になるサイドダクトはラジエーター(フロント)を通った風を捌く最低限に収めるのがベターだから。

しかし一方で市販車はサイドダクトが必ず大きく設けられています・・・というか設けないといけない。何故なら市販車は信号待ちなど止まる事があるから。

YZF-R3エンジン

停車時というのは風がないのですぐ熱くなります。そして風が無いということはラジエーターで熱せられた熱風は後ろではなく横に広がる。

そんな熱風を車体内に留めておくのはエンジンにとって非常にマズいので外に逃がすために大きなサイドダクトを設ける必要があるんですね。

だからヤマハもレイヤードカウルを始める前はサイドダクトをアレンジして魅せる造形にしていました。

サイドカウルの切れ込み

これはこれでカッコ良いと思うんですが空気抵抗が上がるしレーサーとも少し外れてしまう・・・そこで登場した新世代のカウル造形がレイヤードカウル。

レイヤードカウル

サイドダクトを大きく設けつつもその上から覆い隠すようにカウルを敷くことで

「サイドダクトを確保しつつ、空気抵抗を下げつつ、サイドダクトの存在感も消す」

という一石三鳥の様な事をやっている。

これがレイヤードカウルの狙い。決して自己満足的な飾りではなく機能美でもあるという話。

YZF-R25倒立フロントフォーク

さすがデザインのヤマハと言えるわけですが、R25/R3ではもう取り上げておきたい一つある・・・んですがただこれ写真や言葉では言い表すのが非常に難しい。

このモデルが出た時に

「なんか頭でっかちでノッペリしてるな」

と思われた方も多いかと思います。

そう思われた方こそ是非とも実車を見て欲しい。何故なら印象がガラッと変わるから。

YZF-R25青

これ写真のアイポイントをよく見て欲しいんですが普通に見る高さじゃないんですよね。フェンダーくらいの高さから見た写真になってる。

だから実車を見る場合もっと上から見下ろすようになるから写真とは全く違うバイクに見える。

俯瞰で見た場合

この写真でもまだ低いので再現しきれてないんですが、要するに大きなヘッドライトで少しマヌケに思えてたイメージが、実車を前にすると先鋭なレーサーのイメージに一変する。

これはもちろん狙ってやっている事で

「俯瞰で見るとヘッドライトの存在感が消える」

という意匠を更に強くしているから。だからカタログの表紙でもサイドスタンド側から撮った珍しい構図になっています。

カタログ写真

つまり傾けている時が一番カッコいいバイクというわけ。

「ワインディング中が一番カッコよく見えるデザイン」

というYZF-Rシリーズの特徴を更に研ぎ澄ませたデザインになっているんですね。

ちなみにカタログスペック的な方は先代からほとんど変わっていません・・・最後に少し個人的な事を言わせてもらうと正直このモデルは意外でした。

というのもこのクラスは今ではレースと密接に関係していて、市場だけではなくレース界隈でも盛り上がりが見られる状態。

AP250

つまりもうスーパースポーツとしての道を歩み始めているわけですね。

※R25はAP250やJP250(250ccレース)

※R3はSSP300(世界スーパースポーツ選手権)

そして正直に言うとR25/R3はスペック的に(レースベースが無いことを含め)既にレースで少し引けを取ってる状態にあります。

JP250リザルト

ところが紹介してきた変更点からも分かる通り改良は足回りと装備に特化してきた。

そういう状況下にありながら

『絶対的な速さ』

ではなく

『ドラバビリティ』

を上げてきたわけです。しかもありがたい事に車体価格もそれほど上げてない。

YZF-R3イギリス仕様

要するに

「SSに片足突っ込んでるけど、体はストリートに残した」

ということが意外という話。

これは先代の

「毎日乗れるスーパースポーツ」

というコンセプトが非常に高評価だった事が影響しているのかも知れませんが、ここで思い出すのがYZF-Rシリーズの始まりとなる1998年のYZF-R1/4XV型。

YZF-R25

元々YZF-Rシリーズというのは

『ツイスティ(ワインディング)ロード最速』

という公道で楽しむことをコンセプトとしたモデルでした。

ただ時代と共に環境が変化したことでYZF-Rシリーズはサーキット志向なバイクになっていきました。

そんな中でのYZF-R25/R3だけ明らかに方向性が違う。

YZF-R的に言うと

B3P

「ツイスティロードがサーキットよりも前に来ている」

そう考えるとこのYZF-R25/R3っていうのはYZF-Rシリーズである事は間違いないんだけど、それは今ではなく黎明期のYZF-Rシリーズに近いと言えるのではないかと。

もちろんお世辞にもYZF-R1の様に

『ツイスティロード最速バイク』

とは言えないけども

YAMAHA YZF-R25

『ツイスティロード最高バイク』

とは言えるんじゃないかと。

まあ何にせよ騙されたと思って一度見に行ってください。

主要諸元
全長/幅/高2090/730/1140mm
シート高780mm
車軸距離1380mm
車体重量167kg(装)
<170kg(装)>
[170kg(装)]
燃料消費率27.2km/L
[27.6km/L]
※WMTCモード値
燃料容量14.0L
エンジン水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量249cc
最高出力35ps/12000rpm
[42ps/10750rpm]
最高トルク2.3kg-m/10000pm
変速機常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ前110/70-17(54S)
後140/70-17(66S)
バッテリーGTZ8V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイルヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.1L
スプロケ前14|リア43
チェーンサイズ520|リンク112
車体価格599,400円(税別)
<642,600円(税別)>
[675,000円(税別)]
※<>内はR25ABS/B6P型
系譜図
yzf-r252014年
YZF-R25
(1WD/2WD/BS8/B0E)
yzf-r32014年
YZF-R3
(B02)
mt-25|mt-032015年
MT-25|MT-03
(B04/B05)
2019年式YZF-R252019年
YZF-R25/R3
(B3P/B6P/B7P)
2020mt-25|mt-032020年
MT-25|MT-03
(B4W/B6W)

YZF-R3(B02/BR5)-since 2014-

YZF-R3

「YOUR WORLD STARTS, WHERE R WORLD BEGINS」

R25よりもピストンのボア(内径)が8mm大きくし320ccとしたYZF-R3。

基本的に造りはR25と同じで違う所はと何故かヒールガードの肉抜きがR3では無くなっており、ギア比とタイヤ銘柄も違います。

R25とR3の違い

「R25が日本とアジア向けなのは分かるけどR3は何処向けなのか」

という話をするとR3はどちらかというと250ccという区切りがない欧米向けです。

向こうではR3のみでR25は売られていません。

これは欧州ではボアだけ変更したバイクを同時に売ってはいけない決まりがあるから。簡単に載せ替えを行わせない為でしょうね。

それより話を戻すと

YZF-R3かYZF-R25か

「結局R25とR3どっちが良いの」

って話なんですが、一つ言えることはR3がR25の上位互換かと言えば必ずしもそうじゃないということ。

ハッキリ言ってパワーはR3の方がかなりあります。80ccも多いんだから当たり前なんですが、そのぶん回転数は抑えられています。

YZF-R25|3メーター

これは簡単に言うとピストン径が大きくなると重量や面積が上がる事で首振りやデトネーションといった問題が起こるから。

そのマージンの為に1500rpmほどレッドゾーンが下げられているんですね。

つまりザックリ言うと

「回してナンボなのがR25、全域パワーなのがR3」

という感じ。

どっちが速くて乗り易いかと言えば間違いなくR3の方だと思いますが、回してナンボな小排気量スポーツ特有の面白さがあるのはR25の方でしょう。

yamaha YZF-R3

まあトドのつまり車検が許せるならR3、許せないならR25って所かと。

主要諸元
全長/幅/高 2090/720/1135mm
シート高 780mm
車軸距離 1380mm
車体重量 169kg(装)
燃料消費率 24.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 320cc
最高出力 42ps/10750rpm
最高トルク 3.0kg-m/9000pm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)
バッテリー GTZ8V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
{LMAR8A-9}
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前14|リア48
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 585,000円(税別)
※{}内は18年モデル/BR5型
系譜図
yzf-r252014年
YZF-R25
(1WD/2WD/BS8/B0E)
yzf-r32014年
YZF-R3
(B02)
mt-25|mt-032015年
MT-25|MT-03
(B04/B05)
2019年式YZF-R252019年
YZF-R25/R3
(B3P/B6P/B7P)
2020mt-25|mt-032020年
MT-25|MT-03
(B4W/B6W)

YZF-R25(1WD/2WD)-since 2014-

YZF-R25

「日常で乗れるスーパースポーツ」

ヤマハとして何年ぶりになるのか分からないくらい久しぶりに登場した250ccニューモデル。

最初に話題となったのは2013年の東京モーターショーへの出展だったと思いますが一時期はこのR25の話題で持ちきりでした。

YZF-R25コンセプト

そもそもヤマハは

「国内モデルはもう無理」

というアナウンスを2000年代後半にしていました。ではどうしてここに来て250ccのニューモデルを出したのかと言うと、実はこのクラスがグローバルモデルになったから。

YZF-R25コンセプトスケッチ

我々にとってはエントリークラスである一報で、いま一番熱いアジアにとっては実質トップクラスでもあるわけです。

だからこそ出すことが出来たというわけ。

YZF-R25メーター周り

主な特徴としては

・マルチファンクションメーター

・逆スラント二眼ヘッドライト

・LEDテール

・非対称スイングアーム

・ダイヤモンドフレーム

・並列二気筒180度クランク

などなど。

YZF-R25各部

中でもエンジンはYZF-Rシリーズらしく

『36ps/12000rpm|2.3kg-m/10000rpm』

というクラストップのパワー・・・なんですが、排気量から見ても分かる通りお世辞にも低速トルクがあるわけじゃないし、ハイギヤードだからギアチェンジの頻度もかなり上がる。

しかしR25の凄い所はそれが決して扱いづらさに直結していないという事。

2015YZF-R25

実はR25で一番煮詰められた部分はピークパワーではなくここ。

アクセル開度による空気流入量の変化による”もたつき”を徹底的に潰して扱いやすさを生み出してるわけです。

そしてもう一つ大事なのがそれに合わせられる車体。

YZF-R25フレーム

・スチール鋼管のトラスフレーム

・41mm径インナー正立フォーク

・リンクレスモノサス

などなどハッキリ言うと何か画期的な装備が付いているわけではなく非常にオーソドックスな造り。

でもそれはつまりヤマハが既に熟知している技術という事でもあり、ハンドリングとフィーリングを煮詰める事をより容易にした。

YZF-R25青

つまりYZF-R25というバイクは

『回しやすいエンジン』

とそれに合わせられる

『フィーリングの良い車体』

によってスポーツライディングが非常にしやすいバイクになっているという事。

YZF-R25スポーツ

「毎日乗れるスーパースポーツ」

というコンセプトはここにあるわけです。

主要諸元
全長/幅/高2090/720/1135mm
シート高780mm
車軸距離1380mm
車体重量166kg(装)
[168kg(装) ]
燃料消費率26.2km/L
※WMTCモード値
燃料容量14.0L
エンジン水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量249cc
最高出力36ps/12000rpm
最高トルク2.3kg-m/10000rpm
変速機常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ前110/70-17(54S)
後140/70-17(66S)
バッテリーGTZ8V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
[CR8E]
{LMAR8A-9}
推奨オイルヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.1L
スプロケ前14|リア43
チェーンサイズ520|リンク112
車体価格515,000円(税別)
[555,000円(税別)]
※[]内はABSモデル
※{}内は18年モデル(BS8/B0E型)
系譜図
yzf-r252014年
YZF-R25
(1WD/2WD/BS8/B0E)
yzf-r32014年
YZF-R3
(B02)
mt-25|mt-032015年
MT-25|MT-03
(B04/B05)
2019年式YZF-R252019年
YZF-R25/R3
(B3P/B6P/B7P)
2020mt-25|mt-032020年
MT-25|MT-03
(B4W/B6W)

WR250X(3D7)-since 2007-

WR250X

「THE PREMIUM STREET SPORT」

先に紹介したWR250Rのモタード版となるWR250X/3D7型。

WR250Rが拘りの塊だった事と同じ様に、このWR250Xでも拘りポイントがあります。

一言で言うなら

「単純にオンロードタイヤを履かせただけじゃない」

という事。

恐らく多くの人が

WR250Xフレーム

「サスのセッティングやスプロケの丁数を変えたくらいだろ」

とか思われてるかも知れませんがそんなのは当たり前。

ローターやブレーキラインは勿論のことキャリパーまで足回りが全て違うんです。

わざわざX専用に用意する徹底っぷり。

プレミアムストリートスポーツWR250X

更に驚くべき事にエンジンマッピングまで全然違う・・・つまりWR250RとWR250Xは似て非なるモデルという事。

何でそこまでしたのかといえばこのモデルにかける精神に並々ならぬ物があったから。ましてヤマハとしては初のスーパーモタードですしね。

ヤマハWR250X

国内メーカーで初めてオフロードバイクを生み出してからずっと力を入れてきた身として、中途半端なモタードを造ることはプライドが許さなかったんでしょう。

ちなみにWR250Rで言い忘れていたんですが、詳しい方ならお分かりの通りWR250R/Xはコンペ寄りでありつつも明らかにコンペとは一線を画している部分があります。

それはデザイン。

WR250デザイン

コンペティション系は基本的にストレートな流れのデザインになっていますがWR250R/XはV字の流れを持つ特異なデザインになっています。

これは開発において大事にされたマスの集中化だけでなく

「前に進むだけではなく飛んだり跳ねたり出来る」

というアクティブさやポテンシャルの高さを表現する為。

ちなみにデザインをされたのはGKの坂田さんという方なんですが、実はこの方YZF-R1のデザイナーでもある方。

坂田功さん

性能だけでなくデザインまでR1と繋がっているんですね。

さて・・・WR250Rのページでも話した通りWR250R/Xというのは

「10人中10人が褒めてくれる様な作りはしなかった。10人中3人が最高だと言ってくれる事を目指して作った。」

と言っているだけあり界隈から非常に高い人気を誇りました。なんでも同業他社の人間がこぞって買っている事が一番嬉しかったそう。

WR250X壁紙

ただしWR250R/Xは単にソコだけを狙って出されたバイクではありません。

これはWR250R/Xが発売されたときに多く聞かれた声

「なんでオフロードなの」

という話にも繋がります。

WR250R/Xが発売された頃は排ガス規制によって多くのモデルが消え去っていっていた頃でした。

そんな中で登場したハイスペック250。

ヤマハWR250

しかし多くの人が望んでいたであろうオンロードスポーツではなくオフロード/モタードという日本では需要がずっと低空飛行でニッチなジャンル。

「どうしてオフ/モタなんだ」

という声が多数聞かれたわけですが、そうなった理由は企画主管の牧野さん曰く

「250で最も深い楽しみが味わえるから」

WR250Xカタログ写真

これは簡単にいうと日本で一番手軽に汗をかけるのが250のオフモタだからという事。

免許が危うくなるほどスピードを出す必要もなく、日常の中で十二分に楽しい汗をかけるのがオフロード/モタードだと考えたらWR250R/Xが生まれたんです。

WR250シリーズ

「でも初心者にWR250R/Xは・・・」

とも思いますが、それも考えてやっていたんです。

確かにWR250R/Xは弾ける様にトルクが出るエンジンや鬼のようなシート高など、ハッキリ言って上級者向けな面が強い。

でも上級者向けというのは言い換えれば

「上手くなれば上手くなっただけ応えてくれる」

という事でもある・・・これが狙いなんです。

WR250

脚付きの悪さ、機敏過ぎるハンドリング、パンチが有り余るエンジン。

初心者がこれに乗ると最初は大いに苦戦しネガティブに感じる・・・でも走れば走るほど、上達すれば上達するほどそれがポジティブな要素に変わっていく。

そうしていつしかハイスペックなWR250R/Xを身体の一部のように乗り回せる様になったとき貴方は

WR250ライダー

「最高にカッコ良いバイク乗り」

になる。

WR250R/Xにはそうなって欲しいという厳しくも優しい願いが込められていたんです。

WR250RとWR250X

だから毎日乗れて多少の転倒なら物ともしないオフ/モタだったんです。

だからグローバルスケールの450ccではなく負担が少ない250ccだったんです。

※2017年モデルをもって生産終了

主要諸元
全長/幅/高 2125/810/1190mm
シート高 870mm
車軸距離 1435mm
車体重量 134kg(装)
燃料消費率 34.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.6L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 31ps/10000rpm
最高トルク 2.4kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/70R17(66H)
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L
スプロケ 前13|後42
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 698,000円(税別)
系譜図
wr250r 2007年
WR250R
(3D7)
wr250x 2007年
WR250X
(3D7)

【関連車種】
CRF250RALLY/L/Mの系譜SEROW250の系譜KLX250/D-TRACER Xの系譜

WR250R(3D7)-since 2007-

WR250R

「THE PREMIUM OFF-ROAD SPORT」

2007年に登場したWR250Rはそれそれは話題騒然で

「ヤマハが本気を出した」

とか

「力を入れる方向が間違ってる」

とか様々な反応でした。

それもそのはず

『31馬力/装備重量132kg』

というコンペティション(競技用)モデルであるWRの名に恥じない性能を持っていたから。

ヤマハWR250R

こうなったのは

『オフロード界のR1』

という開発コンセプトを持っていた事があります。

スーパースポーツなど限られた大型バイクのみが採用しているチタンバルブを市販250として初採用。

キック(キック軸)廃止と主要三軸の最適化によりコンパクト化とマスの集中化を行いつつ、吸気もストレートポート化でレスポンスを向上。

WR250エンジン

更に馬力を叩き出すために

『ボア77mm/ストローク53.6mm』

という超ビッグボアなピストンを採用。

ビッグピストン

ちなみにこのボアストローク比は当時のYZF-R1(04~08)と全く同じもの。

車体の方も鋳造と鍛造のハイブリットな新設計アルミフレーム、スイングアームも異形断面形状の新設計アルミスイングアームとアルミ尽くし。

もちろんサスペンションはどちらもフルアジャスタブルで、フロントのストローク量も270mmとコンペモデルに迫る本格的な物・・・つまり

WR250カットモデル

『オフロード界のR1』

というコンセプトは決してただのセールストークではなく実際その通りなんです。

本当にYZF-R1のポテンシャルをそのまま250オフロードに最適化させたようなモデルだからそう言われた。

WR250とYZF-R1

「開発段階でテストライダーが当たり前の様にジャンプしながら走り回ったモデルはこれが初めて」

という話からもそのポテンシャルの高さが伺えます。

このWR250R/X誕生は

「コンペティションであるWR250Fの市販車を作れ」

と言われたのが事の発端。

WR250F

開発チームはコレを

「つまり公道最強の250を作れってことか」

と受け止めた。

始めはWR250Fのモタード仕様を用意し、それをベースに規制や耐久性をクリアした市販車を造る予定だったものの

「これでは公道最強の250は造れない」

という結論に至り完全新設計する事に決定。

WR250R壁紙

「高性能で高耐久で規制に対応しナンバーが取れる250」

という欲張りとも言える無理難題をクリアするために各部門で相当なバトルが繰り広げられた為にチーム内でも

「これ本当に市販化に辿り着けるんだろうか・・・」

という雰囲気が漂う始末。

そんなこんなありつつも何とか市販化されたWR250R/3D7型。

WR250R広告

拘りすぎたせいで

『シート高895mmで70万円』

という腰が抜けるモデルになりました。

そもそも何故WR250Fの公道版を造ることになったのかというと企画主管の牧野さん曰く

3D7

「コンペ並のモデルがもう無い」

という事に危機感を抱いていたから。

2stがラインナップから消え、また中古の高騰により買うに買えない状況に陥ってる人たちが大勢いることに危機感を覚えたから造られたのが理由の一つ。

実際このWR250Rは界隈に熱烈に歓迎され、高額にも関わらず販売台数も常に1000台強をキープする安定した人気でした。

人気だった理由はもちろん

WR250Rリア

「コンペ並の走りが出来てコンペほど手(メンテ)が掛からないから」

言ってしまえば

『メンテナンスフリーで自走できるコンペ』

という本当に欲張りなモデルだったから界隈にも人気だった。

WR250Rジャケット写真

ただし、じゃあ界隈のガチンコ勢だけの為のモデルだったのかと言うと決してそういうわけではありません。

「どうしてオフロードにしたの」

と思われてる方も多いと思いますが、そこらへんの話は長くなったので次のWR250Xにて・・・。

主要諸元

主要諸元

全長/幅/高 2190/810/1235mm
シート高 895mm
車軸距離 1425mm
車体重量 132kg(装)
燃料消費率 34.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.6L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 31ps/10000rpm
最高トルク 2.4kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前80/100-21(51P)
後120/80R17(62P)
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L
スプロケ 前13|後43
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 668,000円(税別)
系譜図
wr250r 2007年
WR250R
(3D7)
wr250x 2007年
WR250X
(3D7)

TRICITY155(BB8)-since 2017-

トリシティ155

「Leaning Multi Wheel 第二弾」

高速道路も乗れてしまうTRICITYの155ccモデル。

「これで高速はちょっと・・・」

と思う人もいるかもしれませんが、高速道路を乗ったことがある人なら誰もが経験する横風による煽りも反対側のタイヤで踏ん張るので強かったりします。

というかトリシティというと前二輪でコケないというアピールとイメージが強すぎて、”横風に強い”とか”実質Wディスクで制動性に優れる”とか”乗り心地が凄く良い”というその他のメリットが全くもって伝わってないですよね。

トリシティ155UK仕様

まあコレばっかりは乗らないと分からないから仕方ないか。ちなみにブレーキもちょっと変わってて、本来ならリアブレーキの役割を担う左レバーが前後を担う前後ブレーキとなっています。

さて155はただ125の排気量アップかなと思ったらコチラのモデルはブルーコアエンジンなんですね。

ブルーコア

ブルーコアエンジンというのはヤマハが社内のエンジニアを総動員して作ったとされる新世代の低フリクション(低燃費)エンジン。

ブルーコアエンジンにもバリエーションが幾つかあるんですが、TRICITY155に積まれている物はNMAXの物と同様ブルーコアエンジンの中でも最上位の水冷モデル。

ブルーコアエンジン

燃焼時にピストンとコンロッドが一直線上になるオフセットシリンダー、冷却性に富んだオールアルミのDiASil(ダイアジル)シリンダー、エンジン横に設けられたコンパクトなラジエーター、低中速域と高速域での燃焼効率を両立する可変バルブVVAなどなど。

ブルーコアエンジン

最近可変バルブを取り上げる機会が多いですね。ちなみにこれもCBのVTECやBanditのVCとも動きは違います。

可変するのは吸気側のみで、BanditのVCエンジンのように中低速用と高速用のカムとロッカーアームの両方を備えており6000rpmを超えると中低速用のロッカーアームと高速用のロッカーアームを連結させる事で高速用に切り替えてる。

ヤマハVVAシステム

車の方では一昔前までメジャーだった方法。

これらの装備により従来モデルに比べ燃焼効率が50%も伸びたそう。MotoGPのエンジニアも呼び寄せたと言うだけの事はありますね。

既存の5種類以上ある小排気量エンジンを3種類のブルーコアエンジンに集約する為、1基辺りにお金かかってる事もありますが。

tricity155白

まあそんなメカニズムの話ばかりしても面白くないのでちょっと蛇足。TRICITYに対する声で多いのが

「屋根つけろ」

という意見。

確かにこれに屋根をつければ車代わりになれそうな気がしないでもない。

法律でも全長は車体長以内、高さは2m以内なら認められています・・・では何故メーカーは屋根を用意しないのかですが、恐らく2つ理由あると思います。

理由その1:車体価格が高くなってしまう

非常にシンプルかつ有力な理由。

屋根付きバイクとして現存している国産車にホンダの商用原付GYROがあります。ピザ屋でおなじみですね。

ジャイロ

ジャイロは屋根のついていないジャイロXが358,050円なのに対し、屋根付きのジャイロキャノピーは523,950円。その差16万円ほど。装備が若干異なっていますが基本的に同じバイクです。

これをTRICITYに当てはめると50万円を超える。50万円を超える125/155を買う人は125最速のYZF-R125/MT-125の売れ行きを見てもほぼ居ない。

理由その2:転んだ時に危ない

バイクというのは転倒する危険性があります。それは三輪のTRICITYでも可能性は既存のバイクよりも低いけどある。

プロであるバイクレーサーの転倒シーンを思い浮かべてもらうとわかりますが、転倒した時には必ずバイクから手を離しリリースしています。これはバイクに巻き込まれる事が一番危ないことを知っているから。

転倒

もし屋根があったら横になった屋根と車体に閉じ込められてシェイクされてしまう危険性が非常に高くなるわけです。バイクメーカーはちゃんと転倒時の事も考えて作ってるんですよ。

だから社会的責任を伴う規模の大きい日本メーカーとしては

「屋根が欲しいなら自分で付けて」

というスタンスで屋根付きを出さないのではないかと思います。

そういう事に一番うるさいホンダがGYROで出してるのは30km/hしか出せない商用の原付だからかと。

余談ですがイタリアのADVIA(アディバ)というメーカーが電動開閉機能の付いたバイクを出しています。

ジャイロ

電動開閉のオープンカーならぬオープンバイク。世界で特許を取得済み。

ただ当然ながらお高く、125でも50万円を超えます。しかも重い。

あと屋根をつけろと言ってる人に言っておきたいのが、屋根をつけても普通に濡れます。濡れないのは上半身だけで肩から手、下半身への浸水は防げません。大人しく合羽着るのが安くて確実です。

トリシティに関係ない話ばかりですね。

MW155

でも恐らくバイクに乗られてる方はTRICITYに興味のない、または一度乗ってみただけの興味本位の人、ぶっちゃげると

「これ買うくらいならNMAX買う」

って人が多いかと思います。

でもそれはヤマハも狙い通りというか織り込み済みで、このバイクは新規需要掘り起こしを狙って作られた側面が強いバイク。国内新車販売台数100万台という目標に向けてヤマハが出したバイクでもあります。

というのもヤマハが過去に行った調査でバイクに乗らない人の乗らない理由を聞いたところ

「転倒が怖い」

という意見が大多数を占めていた。

つまりトリシティというのはそういった声を聞いて作られたバイクなんです。自立しないので前二輪であろうとコケる時はコケる。でも前にタイヤが2つあるから”転倒しなさそう”というイメージが湧いて転倒の怖さを軽減してる。後ろに乗る人も前が二輪だと安心でしょう。

二人乗り

芸能人の多用など普通では見ないような方法で宣伝をしている事を見ても、ターゲットが我々バイク乗りでは無いことは明白ですね。

そういった層がメインターゲットだからトリシティ(125)は原二クラスの中でも年間8000台前後と新型原二としては今ひとつな販売台数なんだけど、新規(またはリターン)ライダーの割合は恐らくトップかと思われます。

欧州モデル

トリシティでリーンというバイクでしか味わえない面白さを安全に知り、バイクに目覚めている人が増えているのは間違いない。

そう考えるとトリシティが市場に与える影響というのは”販売台数”という数字だけで片付けられる簡単な物ではないでしょう。

余談:トリシティに興味のない既存のバイク乗りへ

関係のない話ばかりしてきたのはあんまり興味が無かったからなのですが、密かにブームの兆しを見せている遊びを見て改めました。

それはトリシティによるオフ路走行。発端はタンデムスタイルさん(参照)かな?

トリシティオフ走行

もともと石畳やギャップを物ともしない走りが武器だから、多少の悪路はそつなくこなせる走破性を持ってる。

最低地上高が低いから岩だらけのガレ場とかの極端な場所は流石に無理だけど、多少の悪路なら写真のようなブロックタイヤを履かずとも難なく走れるしチェーンを巻けば雪道でも走れるATV(四輪バギー)のようなバイクに早変わり。

デュアルパーパス顔負けな走りが出来るかもしれない。

でも元々そういう走行を前提にしているわけではないので、走行した場合は汚れ(特に砂など)をちゃんと落とすようにしましょう。

主要諸元
全長/幅/高 1980/750/1210mm
シート高 780mm
車軸距離 1350mm
車体重量 165kg(装)
燃料消費率 41.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.2L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 155cc
最高出力 15ps/8000rpm
最高トルク 1.4kg-m/6000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.9L
スプロケ
Vベルト BB8-E7641-00
車体価格 420,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)

【関連車種】
PCXの系譜LEADの系譜CYGNUSの系譜Addressの系譜

TRICKER(B8C)-since 2018-

2018年式トリッカー

「FREE RIDE PLAY BIKE」

一度生産終了を迎えつつも復活した2018年型からの実質Sモデルのみとなった三代目TRICKER/B8C型。

主な変更点は

・排ガスを監視するO2センサー

・蒸発ガソリンを防ぐキャニスター

・エアインダクションの廃止

など排ガス規制に対応したもの。

2018年式XG250

聞き慣れないであろうキャニスターというものを少し説明すると、これは車体から漏れ出てくる蒸発ガス対策のもの。

ガソリンスタンドとかで臭ってくるあれと同じでガソリンベーパーとかとも言われていますね。

仲間であるセローやSR400にも付くようになったこの箱がキャニスターといって中には脱臭炭・・・じゃなくて活性炭が入っています。

トリッカーのキャニスター

早い話が排ガス規制(正確にはエバポ規制)に対応するために蒸発ガスを大気放出するのではなくキャニスターに一時的に吸わせることで漏れを抑えているという話。

キャニスターのフロー

ちなみにエンジン始動の有無にかかわらず働く装置なので、トランポや屋内に置いても臭くなりにくい・・・ハズ。

ただずっと乗らないと破過といって容量オーバーで大気放出するようになります。乗れば戻りますが。

エアクリーナーからバイパスさせてエキゾースト内で漏れ出た燃料を再燃焼させるエアインダクションが廃止されたのはこれのおかげで漏れ出るガスが減った事が要因かと。

2018トリッカーエンジン

ただそんな事より目につくのがカタログスペック。

ガスケットの変更により圧縮比が0.2上げられた事で2馬力UP。更にはトルクも0.1kgf-m上がってピーク回転数が500rpm低くなっている。

2018トリッカーカタログ写真

つまり更に振り回せる様になったというこの上ない改良が行われているわけです。

さて・・・繰り返しになりますがトリッカーというバイクは若者にバイクを振り回して遊ぶ事の楽しさを伝える為に生まれたバイク。

2018年式トリッカーカタログ写真

しかしじゃあトリッカーは若者限定バイクなのかと実はそうでもない。

というのもトリッカーの生みの親で自身も乗って遊んでいる近藤PLいわくトリッカーには裏コンセプトというか参考モデルがありました。

「振り回して楽しいバイク」

という企画を見て近藤PLはあるバイクを思い出し

「”アレ”を造ればいいじゃん」

と、昔のヤマハ車を思い出しトリッカーを造った・・・そのモデルとなった”アレ”とは何か。

トリッカーTY-S

「外装で復刻したTY250だろ」

とトリッカーマニアやトレールマニアなら思うでしょう・・・が、残念ながら違います。

正解はこれ。

GT50

そう『ミニトレ』です。

知らない人の為に補足するとミニトレというのは一大トレールブームを巻き起こした250DT1の原付版として70年代に登場したFT50やGT50の事。

ミニトレールということからミニトレという相性で多くの若者に支持され、また多くの若者をトレールの世界へ誘いました。

何を隠そうプロジェクトリーダーの近藤さんもその一人。

2018年式トリッカー壁紙

「自分がミニトレに出会って夢中で走り回った楽しさを、ずっと走り続けたいと思った感動をもう一度」

という秘めたる思いが込められているんです。

つまりトリッカーというのは現代のミニトレとも言えるバイクなんですよ。

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 790mm
車軸距離 1330mm
車体重量 127kg(装)
燃料消費率 38.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 6.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 20ps/7500rpm
最高トルク 2.1kg-m/6,000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 433,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

【関連車種】
CRF250RALLY/L/Mの系譜SEROWの系譜KLX250/D-TRACER Xの系譜スモールDUKEの系譜

TRICKER(5XT後期)-since 2008-

二代目トリッカー

「Ride on!」

二代目にあたる2008年からの5XT後期型。

排ガス規制に対応するためFI化と吸気ポートの形状変更で対応しつつトルク感を更に向上。

他にもタンク容量を1.2L上げて7.2Lにすることで航続距離まで伸び、サスとシートの見直しが入っています。

二代目トリッカーのフューチャーマップ

さて・・・先代で話しそびれたのですがTRICKERは一言で表すならば

『街中トライアルバイク』

と言える良い意味で非常識なバイクなんですが、その印象に一役買っているのがデザインでこれも非常に考えられているわけです。

デザインしたのはもちろんGKで飯村さんという方なんですがテーマは『CD/MDウォークマン』だったそう。

二代目トリッカーS

「常に一緒にあり楽しませてくれる」

という事からなんですが確かに言われてみればガジェットな感じがありますね。

ただそれだけじゃなくてもう一つミソなのが縦のデザインというやつ。

二代目トリッカーS

通常バイクというのはフレームの上にタンクやシートを載せるような形なので『横基調のデザイン』になっているわけですが、このトリッカーはその常識を破り『縦基調のデザイン』にする事を大事にされたわけです。

それを最もよく表しているのが何を隠そう突き刺さる様に立っている細長いタンク。

トリッカーのタンク

ニーグリップもスタンディングも出来て、なおかつ縦基調にするという非常に考えられた形状。

この形状を実現させるためにトリッカーのタンクは一般的な3ピース構造ではなくモナカ合わせの2ピースになっています。

どうしてそこまで縦に拘ったのかと言えばもちろんTRICKERというバイクは

黒トリッカー

「飛んだり跳ねたりして遊ぶバイクだから」

ですね。

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 810mm
車軸距離 1330mm
車体重量 125kg(装)
燃料消費率 39.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.2L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 18ps/7500rpm
最高トルク 1.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 436,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

TRICKER(5XT)-since 2004-

2004年式トリッカー

「遊びの天才」

2004年に登場したBMXをバイク化したようなトライアル系ともフリースタイル系ともX系とも言える佇まいの初代トリッカーことXG250 TRICKERの5XT型。

プロジェクトリーダーがセローの生みの親である近藤さんである事や、少し後に同じエンジンを積んだセローが出たことから

『セローの派生モデル』

というイメージで片付けてしまいがちですが全くもって異なるモデルです。

このトリッカーは

コンセプトスケッチ

「みんなが夢中になって楽しめるバイク」

という開発コンセプトを元に造られたモデルで、下の写真は最初に登場した2003年東京モーターショーモデル。

トリッカープロ

真ん中にいるのはコンセプトを先鋭化したPROモデルで右にあるのは原付版のチビッカー。

そもそもこのプロジェクトの発端となったのが何処にあるのかというと商品企画の樋口さんが

「ストリート軽二輪の売れ筋がTWしかない」

という状況に懸念を抱いた事がキッカケ。

そこで幾つか案を出してプレゼンしたところ社内で一番人気が高かったのが

『コンパクト&パワフルで振り回せるバイク』

というコンセプトだった。

これがトリッカーの素案になります。

ヤマハTRICKER

そうしてセローの生みの親でありかつてはトライアル選手でもあった近藤さんをプロジェクトリーダーに据え開発が開始。

「振り回して楽しいとはなんぞや」

と議論と数々の試走を重ねた結果

・スムーズにターン出来る

・段差を楽に超えられる

・ウイリーが簡単に出来る

などの小排気量が得意とする要素から大排気量が得意とする要素まで様々な意見が出された。

そしてこれらの意見をまとめる際にベンチマークとなったのがキッズ向け2stモトクロッサーYZ80とSEROW225の二台。

トリッカーとYZ80とセロー

同じ取り回しの良さを持ちつつもパンチがあるYZ80と安心感のあるSEROW225。

「この二台の良い所取りをしたバイクを」

となったわけです。

それを実現するためにTRICKERは本当に無茶な事をやっています。

何が無茶ってセローよりも小さく短いフレームにセローより大きいエンジンを押し込んだから。

トリッカーのディティール

しかもシート高もセローより低くするという無茶なオマケ付き。

このレイアウトはフレームを何百回もミリ単位でやり直した末に何とか形に出来たもので、プロジェクトリーダーの近藤さんも

初代トリッカー

「このバイクはシート下に凝縮という名の芸術が詰まっている」

と豪語するほど。

そうしてセローより20mmも低い全長とシート高のコンパクトで足つきベッタリな、更には125かと思うほど短かいホイールベースとパンチがあるエンジンで振り回せるトリッカーが完成した。

トリッカーのフューチャーマップ

ただトリッカーにはもう一つ絶対条件がありました・・・それは

「40万円を切ること」

です。

これがどうしてかというと近藤PLを始めチームのみんなが

「若者にバイクの本当の楽しさを伝える必要がある」

という危機感を持っていたから。

TRICKER

若者に乗ってもらうにはシート高を始めとした取り回しはもちろんのこと車体価格も安くしないと選んでもらえない。

だから車体価格もギリギリまで詰めて40万円を切ることも絶対で、実際に車体価格は税別ながら399,000円を切った安さだった。

そのため質感への予算はほとんど設けられず、それらは翌年から発売された特別塗装やメッキなどが施された+2万円のトリッカーSでカバー。

TRICKER-S

一体なぜそんなに若者に対する危機感を持っていたのかというと少子化・・・じゃない。

当時の若者に圧倒的に支持されていたバイクがビッグスクーターだったからです。

ビッグスクーターブーム

この頃は空前のビッグスクーターブーム。まだ記憶に新しい人も多いと思います。

そんな状況に対し

「ビッグスクーターでは若者のバイク愛は育たない」

という危機感を覚えた開発チームの思いが振り回して遊べるトリッカーを生んだわけです。

広報の加藤さんいわくトリッカーは

TRICKER/5XT

「打倒ビッグスクーターの意気込みで造った」

との事・・・自分たちがマジェスティで生んだブームを自分たちで倒しにかかるっていう。

※インタビュー記事:別冊モーターサイクリスト317

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 790mm
車軸距離 1330mm
車体重量 120kg(装)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 6.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 21ps/7500rpm
最高トルク 2.14kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 399,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

TZR250R/RS/SP/SPR(3XV) -since 1991-

三代目TZR250

「2CYCLE SUPER SPORTS」

TZR250の最終形にして非常に評価の高いTZR250Rとプロダクションレースに標準を合わせた限定500台のTZR250R・SP。

前年にあたる1990年にワークス復帰していたGP250においてYZR250で優勝してからの発売というドンピシャなタイミングで登場。

・完全新設計V型二気筒
・ブラックコーティングアルミデルタボックスフレーム
・新設計スイングアーム
・クラス最軽量の126kg
・メッキシリンダー
・2ウェイYPVS
・カセット式ミッション
・ワイドリムタイヤ
・専用シリンダー/ピストン/クランク(SP)
・大型キャブレター(SP)
・大型ラジエーター(SP)
・6速クロスミッション(SP)
・伸圧減衰調整付き前後サスペンション(SP)

などなど先代の原型を留めないほどのフルモデルチェンジ内容。

中でも特徴的なのが一足先に市販レーサーTZ250がYZR250同様Vツインになった事でがそうなった様に、TZR250Rも遂に90°Vツインになったこと。

3XVのエンジン

「2st250のレーサーレプリカってどうしてみんなVツインなの。」

と思う人がいるかもしれないので超簡単に説明すると、2stは吸気(掃気)バルブと排気バルブの役割をピストンが担っているため、吸排気口のバイパスを燃焼室に沿うように設置しないといけない。

この状況でパワーを出そうと思ったら、その口も目いっぱい大きくして抵抗が生まれないようにする必要があるんですが、並列では隣のシリンダーとスペースの兼ね合い問題が出てくる。スペースを確保するためにシリンダーピッチ(シリンダーの間隔)を大きくしたらエンジンが大きくなってしまうし、クランクシャフトも伸びるので重量とフリクションロスが増えるなど弊害が出てしまう。

TZR250Rのクランク

「だったらシリンダー横並びを止めればいい」

という一つの結論に至ったのが90度Vツインという話。ただ2stの都合上、クランクピンを共有しない並列二気筒を捩じったような形で揺する振動が発生するため、TZR250R/3XVがそれを消すための偶力バランサーが付いています。

そんな事情からTZR250RもVツイン化したのですが、車体の方も新設計のデルタボックスフレームで全体的にコンパクト化。

TZR250Rフレーム

レーサーTZ250と同じく50%を超える前輪荷重とクラス最長58mmとなるロングスイングアームでハンドリング性能を大幅に向上。

ちなみにデザインも凝っていてアッパーカウルとテールカウルも尖らせるなど、デザインにも非常に定評があるモデルでした。

TZR250Rサイド

左から見たときに揃っていないチャンバーが非常にカッコいい。

それで肝心の速さはどうだったのかというと・・・速かったというか完成度がずば抜けていた。Vツイン処女作とは思えないほど速く、バランサーを搭載している事もあってか、レーサーレプリカとして非常に珍しくライダーを急かすことなく忠実かつ軽やかに熟す正に名馬と呼ぶべき素行の良さが評判でした。

もちろんレース界隈でも

「速い・素行がいい・TZ250部品が使える」

三拍子揃っていた事もあって大活躍。

TZR250R SP

SPレースは言うに及ばず、ノービスの頂であった鈴鹿四時間耐久レースでも6度の優勝を果たす快挙を成し遂げました。ちなみに2st勢として最後に優勝したのもこのTZR250R/3XVです。

まさに遅れてやってきたヤマハの真打ちでした・・・が、出るのが遅かったというか、この頃になると市場がレーサーレプリカに飽きていたので、レースをやっていた人たちは強烈に覚えている一方、一般ライダーはあまり印象を持っていない人が多い。

晩節を汚したとかならまだしも性能・戦績共に十分なのに昔も今も

『雑誌:1KT/2XT≒3MA>3XV』
『世間:3MA≒1KT/2XT>3XV』

という悲しい比率なのが基本で、涙を流す3XVオーナーが多い。

ただ、これについては当時のヤマハも覚悟の上だったとは思います。3XVが出る前からすでにレーサーレプリカブームは去りつつあったわけですから。それでもヤマハが全力投球で3XVを出してきたのは、1959年のYD-1からの始まりを見ればわかる通り、2stクオータースポーツというクラスを牽引してきたの自分たちであるという自負があったからではないかと。

TZR250SPR

TZR250R/3XVはそんなプライドの最後、本当に本当の最後を飾るにふさわしい集大成モデルでした。

TZR250R/3XVのモデルチェンジ概要

※初年度はTZR250R/SP(3XV1/3XV2)
※年末に先行販売されるSPについて翌年モデルに入れて紹介します

TZR250R/RS/SP(3XV4/3XV8/3XV5) -Since1992-

この代からレース向けモデルについてSPとは別に、ノーマルモデルから乾式クラッチと特別ペイントをした上記写真のRS(Racing Spirit:限定1000台)が追加されました。

TZR250Rカタログ

・キャブおよびCDI制御を変更しレスポンス向上
・スロットル同調機能を一つのディストリビューターに一元化
・フロントフォークのメタルをクラウニング加工
・Xリング採用の新型リアサスペンション
・板厚を2mmアップさせ剛性を上げた新設計スイングアーム
・調整幅を拡大したブレーキレバー
・ライトの常時点灯化およびハザードランプの採用
・上記に伴い低速での発電量を向上
・乾式クラッチ(RSのみ)

TZR250R/RS/SP(3XV6/3XV9/3XV7) -Since1993-

93年の1月から発売された40馬力の自主規制モデル。規制されたモデルという事が先行しがちですが、多岐に渡った改良により非常に評価が高かった。

1993TZR250R

ちなみに昨年末にSP(500台限定)が先行販売され、年明けにRS(1000台限定)そしてRという形で一か月毎に発売された経緯があるためモデルイヤーがややこしくなっています。

・TZ250と同型式のシリンダー
・フラットタイプのYPVS
・キャブレターをリセッティング
・オイル消費量を減らすデューティ(電子)制御オイルポンプ
・チャンバーを3段膨張式に変更し騒音削減
・乾式クラッチ(RS・SP)
・新型フロントフォーク(SP)
・新型リアサスペンション(SP)
・新型スイングアーム(SP)
・クイックファスナー(SP)

TZR250RS/SP(3XVA/3XVB) -Since1994-

94TZR250RS/3XV1

標準のRモデルがなくなり乾式クラッチを装備したRSとレースを想定したSPの2モデル展開になった94年型。

変更はカラーリングのみで、この年式だけフレームがシルバーなのが特徴。

TZR250SPR(3XVC) -Since1995-

TZR250Rの最終モデルでRSとSPの2モデル展開をやめ、SPをベースに公道からレースまで視野に入れた良いとこ取りコスパモデル。このモデルをもって1999年に販売終了。

・中低速トルクを向上させるトリプルYPVS
・新型キャブレター
・ワイドレシオ化(RSと同レシオ)
・新設計アルミデルタボックスフレーム
・サスペンションをリセッティングし調整幅を25段階に

主要諸元
全長/幅/高 1960/680/1075mm
シート高 780mm
車軸距離 1340mm
車体重量 91:126kg(乾)
91SP:128kg(乾)
93・SP:126kg(乾)
95SPR:132kg(乾)
燃料消費率 91:35.0km/L
91SP:34.0km/L
95SPR:35km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷2サイクル二気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
93以降:40ps/9000rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
93以降:3.5kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ECM/BR9ECM/BR10ECM
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
1.5L
スプロケ 前14|後37
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 91:629,000円(税別)
91SP:829,000円(税別)
93:659,000円(税別)
93RS:699,000円(税別)
93SP:890,000円(税別
95SPR:780,000円(税別)
系譜図
YD1 1957年
YDシリーズ
YDS-1 1959年
250S/YDSシリーズ
dx250 1970年
DX250/PRO
(280/352)
RD250 1973年
RD250
(361~3N4)
4L3 1980年
RZ250/R/RR
(4L3/29L/1AR/1XG/3HM/51L)
1KT 1985年
TZR250
(1KT/2XT)
3MA 1989年
TZR250/SP
(3MA)
R1-Z 1990年
R1-Z
(3XC)
3XV 1991年
TZR250R/SP/RS/SPR
(3XV)

【関連車種】
NSR250Rの系譜250Γの系譜KR-1の系譜