XVS950A(26P/5S7)-since 2009-

XVS950A

「日常を抜け出し気ままに。どこまでも。」

海外向けミドルクルーザーとなるXVS950A/26P型。

北米ではV-STAR950という名前で日本にも同名のカナダ仕様/5S7型が2010年と2015~16年に入ってきています。

ミッドナイトスター

ちなみにミッドナイトスターというのはサブ(ファミリー)ネームで、元々80年代にヤマハがやってた黒金でお馴染みミッドナイトスペシャルが由来。

だから繋ごうと思えばXV750SPECIALやVIRAGO1100まで遡れるんですが主題がBOLTで話が散らかってしまうので割愛させてもらいますスイマセン。

このXVS950Aは兄貴分であるXVS1300Aの挟み角60度水冷Vツインエンジンをベースにボアを縮小したものなんですが、それに加えて振動を打ち消すバランサーを抜いているので鼓動感もアップしています。

XVS950Aエンジン

ボアも冷却方式もバランサーの有無も違うってもはや別エンジンですね。ちなみにローラーロッカーアーム式SOHCなので燃費も20km/Lを切らない優秀さ。

フレームの方はキャリーオーバーする形で

・リジット風リンク式モノサス

・ステップボード付きフォアコン

・ロー&ロングの流線ボディ

・タンクオンメーター

などなどクルーザーのツボを抑えたスタイルなんですが・・・その一方で特徴的なのがフロント周り。

XVS950Aのホイール

髭みたいなウィンカーステーや集合管も強烈ですが注目して欲しいのは中空キャスト70%偏平というクラスとしては比較的珍しいフロントホイール。

大きくも小さくもない軽量&高剛性なフロントなんですが、これはハンドリングを素直なものにするのが狙い。

そのためかXVS950Aは

「とにかく乗りやすい」

という声しか聞こえてこない本当に優秀なミドルクルーザーだったりします。

XVS950Aツアラー

ちなみにその素直さと低燃費性からアメリカでは各種装備を兼ね備えたツアラー仕様もありました。

今にして思えば長距離も熟せるツーリングBOLT、さしずめBOLT-Tスペックみたいなモデルですね。

XVS950A壁紙

ただ残念な事に逆輸入車扱いで宣伝の機会に恵まれなかったのも影響したのか2017年モデルをもって生産終了となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2435/1000/1080mm
シート高 675mm
車軸距離 1685mm
車体重量 278kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 942cc
最高出力 53.5ps/6000rpm
最高トルク 7.8kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前130/70-18(63H)
後170/70B16(75H)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
または
SAE 10W-30から20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.3L
交換時3.7L
フィルター交換時4.0L
スプロケ 前30|後70
Vベルト品番 5S7-46241-00
車体価格 960,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
XVS9502009年
XVS950A
(26P/5S7)
ボルト2013年
BOLT/A/C/R
(1TP/2CY/2DX/B33)
SCR9502017年
SCR950
(BL3)
20192017年
BOLT/R
(BP6/BS5)

Z400LTD/CLASSIC(Z400T/R) -since 1979-

Z400LTD

「REAL AMERICAN」

先に紹介したZ400のエンジンをベースに

・プルバックハンドル

・ティアドロップタンク

・専用フレームにハイバックシート

を施してアメリカンスタイルにしたモデル。

Z400LTDカタログ写真

俗に言うジャメリカンというやつなんですが、イージーライダーや白バイ野郎ジョン&パンチなどで高まっていたアメリカン人気に火を付けブームを巻き起こすキッカケになったモデルでもあります。

4年ほど前に改正された中型限定自動二輪免許(現:普通自動二輪)の若者が増えてきたのも追い風でした。

相変わらずカワサキカワサキは先見の明が凄いな・・・と言いたいところなんですが、実際は先に紹介したアメリカ向けにも同じモデルがある。

KZ440LTD

つまり結局の所これもアメリカで街乗りに最適なクルーザーとして売り出す狙いがあったモデル。しかも狙い通り人気が出てたよう。

だからこれジャメリカンとか言われますが、実際に本場アメリカで売ってしかも通用していたモデルなんですね。

評価された理由は先代400RS/Z400でも話した通りバランサーを組み込んだ360度クランクという振動が無く、かつ豊かなトルクを生むエンジンのおかげで全く疲れないから。

この事からカワサキは2年目の1980年にはエンジンを改良し

・サイレントカムチェーン

・AT式カムテンショナー

・セルスタートのみ

などの改良を施し使い勝手と静寂性を向上。

合わせて紹介で申し訳ないのですが、この時に先に紹介したZ400のボディにこのエンジンとキャストホイールを付けたモデル

Z400カスタム

『Z400CUSTOM/KZ400G』

も併売する形で登場。Z400も物凄くレアだけどそれ以上にレアなZ・・・まず見ること無いと思います。

話をLTDに戻すと1982年には更に静寂性を追求するため駆動をチェーンからベルトドライブにしたモデル

Z440LTD/KZ400T

『Z400BeltDrive/KZ400T』

へとモデルチェンジ。

”サイレントライディング”という造語を用いて静寂性をアピールしていました。アメリカンなのにサイレントってなんだか面白い話ですけどね。

補足としてコレとは別にZ400LTD-II/KZ400Kというモデルもありました。

Z400LTD-II

ただこちらはZ400FX/KZ400E(四気筒)のエンジンを積んだモデル。LTDモデルが(日米問わず)思わぬ人気を呼んだ事から出された背景があるものと思わます。

ここから400RS/Z400はGPZ400SやER-4として、それとは別の形で成功したLTDモデルはバルカンやエリミネーターへと発展していく事になるんですがNinja400の系譜あたりで書いたと思うので割愛させてもらいます。

主要諸元
全長/幅/高 2095/825/1175mm
[2110/785/1110mm]
シート高 740mm
[770mm]
車軸距離 1390mm
[1375mm]
車体重量 169kg(乾)
[166kg(乾)]
燃料消費率 46.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
[16.0L]
エンジン 空冷4サイクルSOHC2気筒
総排気量 398cc
最高出力 36ps/8500rpm
最高トルク 3.20kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.25S19-4PR
後130/90-16(67S)
[前3.50S19-4PR
後4.10S18-4PR]
バッテリー FB12A-A
プラグ B7ES
推奨オイル SAE10W40~20W50
オイル容量 全容量2.9L
スプロケ 前15|後45
[前16|後40]
チェーン サイズ530|リンク100
[サイズ530|リンク104]
車体価格 340,000円(税別)
[350,000円(税別)]
※[]内はCLASSIC(Z400R)
系譜図
D1974年
400RS/Z400
(D)
T1979年
Z400LTD/CUSTOM
(T/R)
/EX400G2019年
Z400
(ER400D)

Vulcan500LTD(EN500C) -since1996-

EN500C

「STREET SMART」

A/B型最終年度の一年前となる1996年にクロスフェードする形で登場したVulcan500LTD/EN500C型。

・タンク容量を+4Lし15Lに
・タンクオンメーター
・合わせてボディを大型化
・シート高を15mm下げ715mmに
・ホイールをキャストからスポークへ変更
・駆動をベルトからチェーンへ変更
・六速から五速ミッションへ変更
・スラッシュマフラー

などなど利便性を更に向上させるとともに更にクルーザーらしいフォルムへとモデルチェンジしました。

EN500Cメーター写真

まあ正直に言ってしまうと日本でこのモデルに興味がある人は非常に少ないかと思います。ただし、カワサキにとってこのモデルは間違いなく社史に刻まれるモデルかと。

というのもこのVulcan500LTDは1996年から大きなモデルチェンジをすることなく、実に2007年まで主に北米で販売されていたロングセラーモデルなんですね。

なんでそんなに続いたのかといえば454LTDでも話した通り、このクラスが向こうにとってのエントリークラスだからというのが大前提としてあるんですが、そのクラスの中でもVulcan500LTDは非常に良く出来ていたから。

まず上げられるのが乾燥重量199kgとクルーザーとしては非常に軽い部類だった事。そしてもう一つはバランサーを搭載した事で非常に滑らかに回り、かつ高速巡航も出来るポテンシャルをもったエンジンだった事。

EN500Cスペック

これらの要素から

「ちょい乗りにも使えるクルーザー」

という評価を得た。それは必然的に初心者にうってつけなモデルという需要を得たんです。

EN500Cサイド

ありのまま北米での評価というか世論を書くと、向こうでバイクと言えばクルーザーでありクルーザーといえばやっぱりハーレーという常識がある。だからカワサキにも張り合えるようにVNシリーズというビッグVツインモデルを用意している。バルカンといえばそっちを思い浮かべる人も多いかと。

しかし自分がどれだけバイクに適正があるのか、何処でどんな使い方をするか分からない状況で、初っ端からいきなりビッグクルーザーというのは賢い選択ではないという常識もある。

じゃあ小さいクルーザーにするかというとそれだとクルーザーらしさが薄れるし、大型に混じって走るのはパワー的な面でキツい・・・そういった問題がある中で、5000ドル程度で買えて、軽くて脚付きも良くて、ジェントルだけど元気なパラツインを持っているVulcan500LTDというのは非常に有力な選択肢になる。

カワサキEN500

だからVulcan500LTDはエントリー層に人気あった。

これ本当に面白いんですよ。

というのもVulcan500LTDには兄弟車としてGPZ500Sというロードスポーツモデルがあったんですが、あっちはあっちでロードスポーツが盛んな欧州において

「バイクに乗ってみたいならコレを買っておけ」

と言われる初心者向けベストバイクという立ち位置で人気だった。

EN500Cカタログ写真

それを北米ではVulcan500LTDが担っていたという話。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan S(EN650A-B/C-D/G/J) -since 2016-

バルカンS

「Fun Riding Urban Runner」

先代にあたる500LTDの生産終了から9年後の2016年に登場したVulcan S/EN650A型と、ABS付きのEN650B型。

カワサキの得意とするオフセットレイダウンリアサスペンションである事からも分かる通り、この代からタイで生産されているNinja650系と同じFI化された水冷DOHC並列二気筒649ccが積まれた形になっています。

バルカンSカタログ写真

そんなVulcan Sですがコンセプトを一言で現すと

「既存のクルーザー像に囚われない」

ということになります。

先ず分かりやすいのがデザインで、パッと見でも分かる通りローロングながら逆三角形ヘッドライトやラジエーターシュラウド。それにギュッと凝縮された流線型のボディなど明らかに従来のクルーザースタイルと違うモダンな見た目。

バルカンSリア

テールライトも薄型のLEDタイプで、メーターも多機能LCDタイプ。

しかしVulcan Sが枠に囚われないという要素はデザインだけじゃありません。面白いのは中身の方にある。

Vulcan SにはERGO-FITと称した可変ポジション機能が備えられています。

エルゴフィット

フットペグ:標準/+25mm/+50mm(シフトロッド別売)

ハンドル:標準/前方へ+36mm(別売)

シート:後方へ50mm/標準/前方へ53mm(別売)

と18通りのポジション変更が行える親切機能でなんですが、さらに嬉しいのが標準の段階でハンドル位置を44mm手前(ライダー側)に寄せている仕様にしている事。

バルカンSのハンドルポジション

カタログが用意されなかったりする事から日本での販売はオマケという印象を受けそうになるんですが、こうやってわざわざ日本仕様を用意する力の入れよう。

だからフォワードコントロールの大型クルーザーにありがちな

「ハンドルやステップが遠くて手足が伸び切ってしまう」

という心配が無く、シート高も705mmしかないから脚付きも抜群。

何故これほどまでに、クルーザーにも関わらずここまでポジションにこだわっているのかというと

「スポーツ走行を楽しむため」

です。

バルカンSの壁紙

最初にも話した通りエンジンは万能の象徴とも言えるミドルスポーツNinja650の並列二気筒エンジンをベースに低中速を強化したもの。そしてリアサスペンションも7段階のプリロード調節機能付きで良好なダンピング性能を可能とするリンク式オフセットレイダウンリアサスと、クルーザーらしかぬモノを持っている。

そこに合わせられるのがいま話したERGO-FITという親切機能。そしてシート後方と盛り上がりやニーグリップを考慮したワイドタンクなどでガッチリと身体をマシンにホールド出来るようデザインされた車体。

これによりクルーザーながらマン・マシンの一体感を持って軽快に走れる様になっているんです。当然ながらステアリングもクルーザーらしからぬ軽快さ。

カナダ仕様

これは乗り出すのが億劫にならない街乗りにも使えるクルーザーという先代で評価された部分を更に研ぎ澄ませたスポーツクルーザーと言えるわけですが、もっと突っ込んで語弊を恐れず例えるなら・・・

2016バルカンS

「フォワードコントロールのロー&ロングネイキッド」

という表現がピッタリなモデルじゃないかと。所詮はクルーザーだと高を括って乗ると唸ること間違いなし。

主要諸元
全長/幅/高 2310/855/1090mm
シート高 705mm
車軸距離 1575mm
車体重量 224kg(装)
[227kg(装)]
{229kg(装)}
燃料消費率 23.3km/L
<23.0km/L>
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649c
最高出力 61ps/7500rpm
最高トルク 6.4kg-m/6600rpm
<6.3kg-m/6600rpm>
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59H)
後160/60R17(69H)
バッテリー YTZ10
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク120
車体価格

770,040円(税別)
[760,000円(税別)]
{770,000円(税別)}
<830,000円(税別)>

[]内はABS装備のB型
{}内はG型
<>内はJ型

系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

Vulcan 500(EN500A/B) -since1990-

EN500A

「STREET SMART」

1990年に登場したキャストホイール仕様のEN500A型とスポークホイールLTD仕様のEN500B型。アメリカなど一部の国ではこのモデルからVulcan500という名前でも販売。

EN500B

ナンバリングからも分かる通り排気量を44cc上げたわけですが、これが何故かというとGPZ500という欧州向けのヒットモデルとエンジンを共有し足並みを揃える事になったから・・・と言えるんですが、もっと厳密に遡るとベースがGPZ900Rからその後継であるGPZ1000RX~ZX-10になったから。

ハーフニンジャの経緯

先代と同じように流用しているからボアストローク比も一緒で、997ccを半分だから498ccになっているという単純明快な話。

EN500の仕様

ただしこのモデルからはVulcanという名前がつけられている事からも分かる通り、車体の方も少し大型化され存在感をアップさせると同時に、キャブを絞るなどして低中速トルクを重視するセッティングがなされており、先代のまんまNinja切り取ったエリミネーターかと思うようなタイプよりもクルーザーらしい性格となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2290/840/1230mm
[2320/830/1125mm]
シート高 730mm
[715mm]
車軸距離 1555mm
[1595mm]
車体重量 186kg(乾)
[199kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 11.0L
[15.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 60ps/9800rpm
最高トルク 4.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
推奨オイル SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

EN454/LTD(EN450A) -since1985-

EN450

「FIRE YOUR IMAGINATION」

カワサキが1985年に出したEN450または454LTD、それにLTD450など国によって色んな名前を持つEN450A型。カワサキのパラツインミドルクルーザーつまりVulcan Sにつながる系譜の始まりはこのモデルになります。

LTD450

日本ではEN400の方が有名かと思いますが、これはそのフルサイズバージョンで残念ながら欧米専売モデル。そのため基本的に欧米(特に北米)での話を中心に進めます。

先ず持って最初に説明すると海の向こうでこのクラスは今も昔もエコノ(エコノミー)クラスと呼ばれる日本で言う250に近いクラスで、カワサキも70年代から空冷パラツインであるZ440/LTD(日本版Z400/LTD)というネイキッドスタイルのモデルを出していました。

EN454エンジン

それがここにきて一気に15馬力アップとなる水冷ハイパワーエンジン搭載のベルトドライブクルーザー”EN”へと進化。エコノミーというには明らかにオーバースペックなモデルを投入したわけですが、これは前年デビューしたある有名なモデルが関係しています。

1984年に出たカワサキの有名なモデルといえば・・・そう、トップガンでお馴染み元祖NinjaことGPZ900R。

ハーフ忍者エンジン

このEN450もとい454LTDはGPZ900のエンジン部品を流用することで、コストをエコノミークラスに抑えつつもハイパワー化することに成功したという話。

ヘッドもピストンも当然ボアストローク比も同じ、GPZ900Rのカムチェーン側を2つだけ切り取ったような文字通りハーフNinjaエンジン。908ccの半分だから454ccなんですが、アメ車に詳しい方は”454”というナンバリングを聞くとシボレー(ビッグブロック)を思い浮かべるのではないでしょうか。

知らない人に簡単に説明すると、454というのは1970年にシボレーが開発したエンジンの事。

『V8で7.4L(454立方インチ』

というアメリカを具現化したようなエンジンの事で、コルベットなど搭載されたモデルには454というナンバリングが付き、アメリカで非常に人気でした。

454LTDカタログ写真2

そんなモデルとナンバリングが偶然にも同じだった為か、アメリカのバイク雑誌サイクルガイドが両者を競わせる企画を実施。

すると

「454LTDの方がコルベット454LSより1/4マイルでは1秒以上速い」

という結果に。これが話題となり、エコノクラスながら速くて軽くて便利そして何より破格なバイクという形で人気に。

454LTDカタログ写真

しかしそんな人気とは裏腹に残念ながら454LTDは販売から5年目となる1990年を最後に生産終了となりました。理由はメイン市場だったアメリカでのGPZ900R生産を打ち切ったから。そのため454LTDも道連れに近い形で生産終了。

良くも悪くもGPZ900Rと一蓮托生だった454LTD。これがVulcan Sへと続く系譜の始まりになります。

ちなみに気になる車体価格は当時のアメリカの平均が4万ドル程度だった自体になんとお値段お驚きの$1999。

主要諸元
全長/幅/高 2205/820/1220mm
シート高 745mm
車軸距離 1485mm
車体重量 180kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 454cc
最高出力 50ps/9500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
[DR8ES
または
X27ESR-U
※CAモデル]
推奨オイル 10W-40
オイル容量 全容量3.4L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

DS4/DSC4(35C)-since 2010-

現行ドラスタ

2008年の排ガス規制で一年ほどのブランクが生まれたもののFI化によって復活した現行の35C

クロームメッキパーツを各部に採用、メーター一新、タンデムフットレスト位置の変更、マフラー形状の変更などで大きな変更点は無い。

さらに2014年には小変更とともに5万円の値下げを敢行しました。
値段が高いって声が多かったですもんね・・・まあ国内専用だし作りは大型だから仕方ない面もあるけど。

2014年式DS

実はドラッグスターの今後について開発者の方が語っていたんだけど、ドラッグスターもSRやセローの様に「変えてはいけないデザイン」だと言っていました。

言われてみればドラッグスターは「弄りにくい」とクルーザーとしては結構致命的な事を言われてたりするけど、ソレは裏を返せば完成しているという事。
ただドラッグスターはセローやSRと比べるとまだ歴史が浅い(二車種が長すぎるだけで全体で見ると長い方なんだけどね)

それに市場が右肩上がりだったSRやセローとは違って右肩下がりな時代。
そんな厳しい中で日本専用であるガラパゴスクルーザーのDS4/DSC4がどれだけ愛され続けるのか見ものですね。

主要諸元
全長/幅/高 2340/840/1065mm
[2450/930/1110mm]
シート高 660mm
[710mm]
車軸距離 1610mm
[1625mm]
車体重量 234kg(装)
[247kg(装) ]
燃料消費率 39.0km/L
[37.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 15L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 30ps/7500rpm
最高トルク 3.2kg-m/6250rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後170/80-15(77S)
[前130/90-16(67S)
後170/80-15(77S)]
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブプレミアム
または
スポーツ
または
スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.6L
フィルター交換時2.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 774,000円(税別)
[812,000円(税別)]
※[]内はクラシック
系譜図
XV400スペシャル1983年
XV400Special
(26M)
XV400ビラーゴ1987年
XV400Virago
(2NT)
4TR1996年
XVS400
DragStar/Classic
(4TR)
5KP2000年
XVS400
DragStar/Classic
(5KP)
35C2010年
XVS400
DragStar/Classic
(35C)

【関連車種】
Shadow400の系譜インクラ/ブルバ400の系譜REBEL250の系譜DragStar250の系譜

DS4/DSC4(5KP)-since 2000-

二代目ドラッグスター400

不動の人気を誇っていたドラッグスターは2000年にマイナーチェンジ。

燃料計を追加した薄型の電気式メーターにヘッドライトやフットレストやハンドルなどの造形が変更されました。

電気式メーター

ところで話しが変わりますが皆さんはドラッグスターといえば何ccのドラッグスターを思い浮かべますか?

代表的なのは250、400、1100ですね。どれもドラッグスターですし1100に至っては先祖まで遡ると400より歴史が長いです。
じゃあ何故400のドラッグスターを取り上げたかというと、250や1100(今は950か)が欧米を考慮しないといけないのに対し、400は「日本専用モデル」だから。まあ売れ筋でもあるわけですが。

日本専用というのは多大なメリットが有るんです。それが見て取れる部分の一つがスイングアーム。
先に紹介したカンチレバー式サスペンションなんですが採用してるのは実は400だけ。(北米向けV-STAR650もでしたゴメンナサイ)

カンチレバー式にすると低高&低重心に出来るというクルーザーとしてはとても大きいメリットがあるんだけど、ストローク量を稼ぎにくいデメリットがある。

カンチレバー式

他にも「ハンドリングが優れている」とか「取り回しが素直で乗りやすい」等と言われる要因は日本だけ、国内ライダーだけを考えればよかったから出来た事。

ドラッグスター400が国内においてずっと一番人気な理由はこういう見えない要因が大きいんだと思います。

主要諸元
全長/幅/高 2340/840/1060mm
[2450/930/1105mm]
シート高 660mm
[712mm]
車軸距離 1610mm
[1625]
車体重量 225kg(装)
[240kg(装) ]
燃料消費率 43.0km/L
[39.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 15L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 32ps/7500rpm
最高トルク 3.3kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後170/80-15(77S)
[前130/90-16(67S)
後170/80-15(77S)]
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブプレミアム
または
スポーツ
または
スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.6L
フィルター交換時2.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 649,000円(税別)
[669,000円(税別)]
※[]内はクラシック
系譜図
XV400スペシャル1983年
XV400Special
(26M)
XV400ビラーゴ1987年
XV400Virago
(2NT)
4TR1996年
XVS400
DragStar/Classic
(4TR)
5KP2000年
XVS400
DragStar/Classic
(5KP)
35C2010年
XVS400
DragStar/Classic
(35C)

DS4/DSC4(4TR)-since 1996-

初代ドラッグスター400

そんなスティードに全て掻っ攫われたヤマハだったけど直ぐ反撃とはならなかった。

今にして思うとそれはビラーゴの延長線上ではなく、全てをリファインした新しいオリジナルのクルーザー「ドラッグスター」の設計に取り掛かっていたからだと思う。

クルーザー層は結構細かい造形などを見る目が厳しい。それに応える為にはスティードを模しただけのアメリカンではなく自分たちが思うアメリカンを妥協無く作ったんだろう。
(歴史から見ても追っかけ車種というのは大体3年以内に出るが、DS4はスティード登場から8年も後だしね)

一新された空冷エンジンに専用のロー&ロングフレームで既に完成の域にあるルックス。
さらに目を引いたのが先代ビラーゴとは全く違う剥き出し状態のシャフトドライブとリジッドサスに見えるカンチレバー式スイングアーム(これはスティードが初出だけど)

DS4

勿論それだけでなく見た目も拘り、空冷Vツインの鼓動にも拘り、排気音にも拘った。その甲斐あってドラッグスターはデビューと同時に大ヒット。

晩年にはワイドタイヤや大型ヘッドライトなどを装備したクラシックが登場しました。

ちなみにドラッグスターの名前の由来はドラッグレースから来てます。でもドラッグが薬物を連想させるからと欧米では使われてません。

平和な日本だから付けれた名前なんだなあ。

主要諸元
全長/幅/高 2340/840/1060mm
[2450/930/1105mm]
シート高 660mm
[712mm]
車軸距離 1610mm
[1625mm]
車体重量 225kg(装)
[240kg(装) ]
燃料消費率 43.0km/L
[39.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 15L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 32ps/7500rpm
最高トルク 3.3kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後170/80-15(77S)
[前130/90-16(67S)
後170/80-15(77S)]
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブプレミアム
または
スポーツ
または
スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.6L
フィルター交換時2.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 649,000円(税別)
[669,000円(税別)]
※[]内はクラシック
系譜図
XV400スペシャル1983年
XV400Special
(26M)
XV400ビラーゴ1987年
XV400Virago
(2NT)
4TR1996年
XVS400
DragStar/Classic
(4TR)
5KP2000年
XVS400
DragStar/Classic
(5KP)
35C2010年
XVS400
DragStar/Classic
(35C)

XV400Virago(2NT)-since 1987-

XV400ビラーゴ

XV400SPの反省からクルーザー専用に割り切って作ったのがXV400ビラーゴ。
エンジンは先代の物をそのまま受け継ぐものの「ロー&ロング」をコンセプトに極太タイヤを履いた元祖和製クルーザー。

実は先代のXV400SPもそうなんだけどこの400はオマケ(と言ったら失礼だけど)で欧州向け(XV535Virago)が本命。
欧州人の好みに作っただけありスマッシュヒット。535の愛称で親しまれてました。

XV535ビラーゴ

欧州は平均車速が日本やアメリカより高い。
その欧州の感覚であり思想をそのまま400ccに持ち込んだんだけど、更に高回転気味で日本人からするとクルーザーとは呼べないスポーティな味付けのエンジンだった。

綺麗な冷却フィンを纏った空冷Vツインエンジンは賞賛されたんだけどね。

そんな探り探りだった状態からビラーゴの成功と失敗を学び、一番最初に正解に辿り着いたのがドラッグスター・・・じゃなくてスティードでした。

400VLS

ロー&ロングは勿論のこと、水冷でありながら装飾の為に冷却フィンを加え、更にローパワー。
過去の失敗から導き出されたユーザーの求めるクルーザーの正解です。

「これを待っていたんだ!」

と言わんばかりの大ヒットとなりました。

主要諸元
全長/幅/高 2225/725/1055mm
[2225/800/1115mm]
シート高 700mm
車軸距離 1520mm
車体重量 178kg(乾)
燃料消費率 43.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 8.6L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 40ps/8500rpm
最高トルク 3.5kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.00S19-4PR
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12AL-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP7ES
{BPR7ES}
※{}内は90以降モデル
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.6L
フィルター交換時2.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 519,000円(税別)
※[]内はプルバックハンドル(2NU)
系譜図
XV400スペシャル1983年
XV400Special
(26M)
XV400ビラーゴ1987年
XV400Virago
(2NT)
4TR1996年
XVS400
DragStar/Classic
(4TR)
5KP2000年
XVS400
DragStar/Classic
(5KP)
35C2010年
XVS400
DragStar/Classic
(35C)