VT250F/VTZ250(MC15) -since 1986-

MC15

「感性度アップの高性能」

また二年でモデルチェンジし、43psとなったVT250F/MC15型。

再びコンロッドやピストンを見直し&軽量化する事でフリクションロスを減らし出力が向上。

ちなみに開発段階ではCBR400Fの回転数応答型バルブ休止機構REVの搭載も検討されていたんだとか・・・そう、今もCB400でお馴染みVTECの前身です。

CBR400F REV

ただコストが上がるので250には向いていないとして見送りに。もしもこの時に採用されていたら今頃はVTR VTECに・・・ちょっと残念ですね。

話を戻すともう一つ大きく変わったのがフレーム。

従来のダブルクレードルフレームから完全新設計のツインチューブダイヤモンドフレームになりました。

MC15

これによって車重が-6kg、さらにホイールベースも-15mmとなり軽快さが大幅にアップ。更にマフラーも2to1の集合管に変更され中低速でのトルクも向上。

この他にもアルミキャストホイールなど留まる所を知らない改良でした・・・が、実はこの頃250市場が大変動を起こしていました。

いわゆる『直四250ブーム』です。

直4主義

今までは400以上だけだった四気筒の流れが250にも波及していた。

そしてホンダもそれに対抗するためにメカマックスことCBR250Fを発売。※上の写真はその後継になるCBR250RR

要するにユーザーの求める数字が馬力から気筒数に変わってしまった・・・こうなるとVツインはたとえ43馬力あろうが、たとえ取り回しがどれだけ優れていようが辛い。

VT250F/MC15は根強い人気こそあったものの引けを取る事は否めず。

VTZ250カタログ写真

取り回しという長所を活かすために一年遅れでネイキッド版VTZも出したんですが時代は確実に直四になっていた。

VTは方向性を改めざるを得ない状況になってしまったわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2030/715/1140mm
[2035/715/1070mm]
シート高 745mm
車軸距離 1370mm
車体重量 161kg(装)
{159kg(装)}
燃料消費率 52.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 13L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 249cc
最高出力 43ps/12500rpm
最高トルク 2.5kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54S)
後120/80-17(61S)
[前100/80-17(52S)
後120/80-17(61S)]
バッテリー FB9-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP7EA-9/DP8EA-9(標準)/DP9EA-9
または
X22EP-U9/X24EP-U9(標準)/X27EP-U9
推奨オイル ウルトラ-U(10W-30)
オイル容量 全容量2.5L
交換時1.8L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前15|後45
[前14|後43]
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 479,000円(税別)
[429,000円(税別)]
※{}内はWディスク仕様
※[]内はVTZ250
系譜図
VT250F1982年
VT250F
(MC08前期)
MC08後期1984年
VT250F/Z
(MC08後期)
MC151986年
VT250F/Z
(MC15)
MC201988年
VT250SPADA
(MC20)
MC251991年
XELVIS
(MC25)
BA-MC33前期1997年
VTR
(BA-MC33前期)
BA-MC33後期2002年
VTR
(BA-MC33後期)
JBK-MC33前期2009年
VTR
(JBK-MC33前期)
JBK-MC33後期2013年
VTR
(JBK-MC33後期)

VT250F/Z(MC08後期) -since 1984-

MC08後期

「すべてが新しいプログレッシブ90度Vツイン」

僅か二年足らずでモデルチェンジされたVT250F/MC08後期モデル。

最大の特徴は2stスポーツブームを嘲笑うかのように、4stながら40馬力を叩き出した事。

これはピストンやコンロッドなどエンジン内部を再び全面維新し軽量化というバブリーな事も理由だけど、その中でも特筆すべきはハイ・イナーシャ・ポート(Hi Inertia Port)と呼ばれるもの。

Hi Inertia Port

これは吸気ポートの分岐ポイントをかなり手前(青くなっている部分)に持ってくるもので、こうすると吸気慣性が増すので弱い吸気でもグングン吸える様になる。

これで低回転域を補いつつ、思い切り上を伸ばすことが出来たという話。

いきなり5馬力も上がってデザインもエアロフォルムが更に強調された新しいものになったもんだから約36,000台と先代を超える大ヒットに。

VT250Z

これは遅れて登場したネイキッドモデルのVT250Zも投入。カウルを剥いてその分お値段も抑えられています。

更に累計10万台突破を記念してリミテッドモデルも限定発売。

VT250リミテッドモデル

ただ一つ補足しておくとVT250Fが大ヒットしたのは

「速くてカッコよかったから」

だけではないです。

VT250Fが大ヒットしたのはそれらに加え、下からトルクフルで広いパワーバンドという

「4ストローク×Vツイン特有の扱いやすさ」

に磨きを掛けたスポーツバイクだったからです。

ネイキッドモデルを出したのも、ハイ・イナーシャ・ポートで低域を切り捨てる事をしなかったのもそれが理由。

INTEGRA後期

スポーツ至上主義の人だけでなく、街乗りやツーリング層の人からも広い支持を得ることが出来たからVT250Fは大ヒットしたんです。

主要諸元
全長/幅/高 2015/730/1155mm
[2015/730/1050mm]
シート高 765mm
車軸距離 1385mm
車体重量 167kg(装)
[167kg(装)]
燃料消費率 45.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 40ps/12500rpm
最高トルク 2.3kg-m/11000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54S)
後110/90-17(60S)
バッテリー FB9-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP7EA-9/DP8EA-9(標準)/DP9EA-9
または
X22EP-U9/X24EP-U9(標準)/X27EP-U9
推奨オイル ウルトラ-U(10W-30)
オイル容量 全容量2.5L
交換時1.9L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 449,000円(税別)
[429,000円(税別)]
※[]内はVT250Z
系譜図
VT250F1982年
VT250F
(MC08前期)
MC08後期1984年
VT250F/Z
(MC08後期)
MC151986年
VT250F/Z
(MC15)
MC201988年
VT250SPADA
(MC20)
MC251991年
XELVIS
(MC25)
BA-MC33前期1997年
VTR
(BA-MC33前期)
BA-MC33後期2002年
VTR
(BA-MC33後期)
JBK-MC33前期2009年
VTR
(JBK-MC33前期)
JBK-MC33後期2013年
VTR
(JBK-MC33後期)

VT250F(MC08前期) -since 1982-

MC08前期

「ザ・スーパーパフォーマンスVツイン」

長い歴史を誇るVTRの始祖であり、バイクブーム時代を象徴するホンダの名車でもあるVT250F/MC08前期型。

当時はRZ250の登場で

「クオータースポーツは2st」

という時代でした。

VT250F

そんな中で出してきたVT250Fだったんですが、市販車初となるフロント16インチホイール、プロリンクサスペンション、インボードディスクなどなどの装備。

そして何より35ps/11000rpmという2stに引けを取らないパワーと、当時としては非常に珍しかったビキニカウルエアロフォルムに赤いフレーム。

MC08前期

何もかもが斬新で、何もかもが凄かった事から爆発的な人気を呼び、30,000台を超える販売台数を記録。

これはもちろんトップセールス。

ちなみにこの頃はカウルが承認されていませんでした。じゃあVT250Fはどうしたのかというとビキニカウルでなくメーターバイザーとして通すというトンチの様な事をやってのけたわけ。

VT250Fインテグラ

ただこの後すぐにカウルが解禁されたことから翌年にはフルカウルバージョンのVT250F INTEGRAも発売。

VT250Fスケッチ

VT250Fは

「4stで2stに勝つ」

というNRの頃から持ち続けていたホンダの信念を体現したような名車でした。

主要諸元
全長/幅/高 2000/750/1175mm
[2000/750/1190mm]
シート高 780mm
車軸距離 1175mm
[1190mm]
車体重量 162kg(装)
[165kg(装)]
燃料消費率 45.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 35ps/11000rpm
最高トルク 2.2kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54S)
後110/80-18(58S)
バッテリー FB9-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP7EA-9/DP8EA-9(標準)/DP9EA-9
または
X22EP-U9/X24EP-U9(標準)/X27EP-U9
推奨オイル ウルトラ-U(10W-30)
オイル容量 全容量2.5L
交換時1.9L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 399,000円(税別)
[450,000円(税別)]
※[]内はVT250INTEGRA
系譜図
VT250F1982年
VT250F
(MC08前期)
MC08後期1984年
VT250F/Z
(MC08後期)
MC151986年
VT250F/Z
(MC15)
MC201988年
VT250SPADA
(MC20)
MC251991年
XELVIS
(MC25)
BA-MC33前期1997年
VTR
(BA-MC33前期)
BA-MC33後期2002年
VTR
(BA-MC33後期)
JBK-MC33前期2009年
VTR
(JBK-MC33前期)
JBK-MC33後期2013年
VTR
(JBK-MC33後期)

VFR400R(NC30) -since 1989-

NC30

「Vの本領」

VFR400Rとしては最後のモデルであり、歴代で最も息が長く最も売れたモデルでもあります。

あのVFR750R(RC30)にかなり近いデザインという事も人気を呼んだ理由の一つ。

NC30とRC30

実際NC30は”レーサーRVF400″ではなく”RC30″のレプリカ。

奇遇なことに型式まで同じ30なサンマル兄弟・・・いや、あんまりそんな呼ばれ方してませんけどね。

先代からの変更点としてはホイールベースの短縮やフロントホイールの17インチ化。リアはこの時まだ18インチでこれがマフラーが左出しに纏められた事と並んでNC30の特徴です。

NC30リア

もちろん他にもバックトルクリミッター付きクラッチや、どうしても後ろ二気筒が熱で苦しくなってしまうV4の課題を解決するためデュアルラジエーターなど、ポジションも含め完全にレーサー路線。

翌年にはリアサスペンションがリザーバータンク別体式の物に変更されています。

ただNC30で語るべきはやはりエンジン。

VFR400

ホンダは先々代NC21でクランク角を180度(90度、270度ともいう)に変更したんですが、NC30で再び360度に変更しています。

これがまあ難しい問題でして・・・

一般的にV4(90度バンクV型四気筒)には180度クランク角と360度クランクの二種類があります。

V4は開いたシリンダーの角度を表すバンク角と、クランクピンの角度を表すクランク角という2つの角度を表す表記があるから分かりにくいですね。

※もしクランク角がよくわからないという人は「バイク豆知識:二気筒エンジンが七変化した理由」を先に読んでもらえると助かります。

NC30エンジン

一応このページでは混乱しないようにバンク角の話は置いといてクランクの角度を

“180/360度クランク”

という形で説明していきます。

で、どう違うのかというと360度クランクの場合の燃焼間隔は0-270-360-630-720(0)。

180度クランクの場合は0-270-450-540-720(0)となります。

V4クランクアングル

360度クランクだと一つが点火したらすぐに(90度)次の気筒が点火してしばらく(270度)おやすみ。でまたボンボンと立て続けに点火してまたおやすみ。

ボボン・・・ボボン・・・ボボンといわゆるVツインを2つ並べた点火時期。

対して180度クランクはちょっと長め(270度)に空く時間が一つ出来るのでボボン・・・ボン・ボンという感じ。YZF-R1のクロスプレーンもこうです。

そしてNC30が360度クランクにしたのは

“速く走らせるなら360度クランクの方が有利”

だからです。

これは「バイク豆知識:クロスプレーンだと何が良いのか」のメリットで書いたとおり、タイヤを落ち着かせる270度という間隔が360度クランクの場合は2回転する間に2度もあるから。

V4クランク270度

対して180度クランクの場合は2回転に1度しかない。

だからトラクション性は360度の方が上回っている。速く走るなら360度なのはこれが主な理由。

じゃあなんで先々代NC21が180度クランクにしたのかというと、初代のVF400F(360度クランク)があまりにも極端な点火タイミング故に、排気音が濁っていると不評だったから。

これは本当に好みが別れるところなんですけどね。

透き通った音が好評な180度クランク直列4気筒も並べてもう一度燃焼間隔を見てみましょう。

V4クランクアングル

V型四気筒の180度クランクと360度クランクのどちらが直列4気筒に近いかと言えば180度クランクの方ですよね。

つまり180度クランクV4は(YZF-R1のクロスプレーンでも言われていますが)高回転まで回すと直列4気筒(180度クランク)とほぼ変わらないサウンドになります。

先代NC21が180度クランクを取ったのはこういった理由が大きいんです。

でもだからといって180度クランクのメリットは音だけなのかというとそうではないですよ。

現存している大型のV4(VFR800)のクランク角は180度クランクです。※VFR1200は位相で全く違う

NC30カタログジャケット

これはサウンド云々の問題ではなく180度クランクV4は360度に比べ二次振動(微振動)を限りなく0に出来るというメリットがあるから採用してるんです。

トラクション性が(あくまでも360度V4に比べ)劣るぶん振動を限りなく0に出来る最もスムーズな四気筒なのが180度クランクV4。だからNC21-24はエンジンに合わせてポジションなどが少し優しかったわけ。

VFR400Rカタログ写真

反対に同じV4でもレース色の強いVFR750R/RVF750(RC30/RC45)やRC213V-Sは360度クランクになっています。これはサーキット走行がメイン、つまりトラクション性が何よりも大事だから。

同じV4でもクランク角によって一長一短あるという事です。

VFR400Rスペシャルカラー

そしてVFR400R/NC30はピュアレーサーのようなVFR750R/RC30のレプリカである事、そしてTT-F3を始めとしたレースに勝つ事に重きを置いたマシンだったから360度を取ったという話。

主要諸元
全長/幅/高 1985/705/1075mm
シート高 755mm
車軸距離 1345mm
車体重量 182kg(装)
[185]kg(装)
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 59ps/12500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60-17(55H)
後150/60-18(67H)
バッテリー FTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
ER8EH/ER9EH(標準)/ER10EH
または
Y24FER/Y27FER(標準)/Y31FER
推奨オイル ウルトラU(SAE10W-30)
または
ウルトラGP(SAE20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.4L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ525|リンク104
車体価格 749,000円(税別)
※[]内は90年以降モデル
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VFR400R(NC24) -since 1987-

NC24

「新・戦力」

わずか一年ちょっとでモデルチェンジされたVFR400R(NC24)。

大きな変更点としてスイングアームが片持ち(プロアーム)になったこと。ホンダのV4といえばプロアームという人も居るでしょう。

エルフモト

このプロアームはもともとNS500で戦っていたフランスの企業でオイルなどでお馴染みELFというメーカーのレースチームELF MOTOが開発した物でホンダはどちらかというと協力者。

そしてELF MOTOが撤退となったことを機にホンダが特許を買い取りホンダの物になったというわけ。

ホンダのレーサーレプリカといえばプロアームという考える人は多いと思いますが、プロアームのメリットを答える人はどれくらい居るでしょう。

プロアーム

ホンダの当時の謳い文句をそのまま書くと

・タイヤ交換時間の短縮

・剛性値を両持ちより稼げる

・それによってバネ下荷重の軽減

・ブレーキという重量物をセンターに出来る

などなど。

NC24壁紙

でも現代のホンダのレーサーマシンを見ると分かる通り両持ちですよね。

あくまでもレースでの話ですが、これは結局両持ちのほうが軽く出来る(剛性値)を稼げる事が分かった事と、片持ち故に左右でコーナリングの挙動が違うというネガな部分があったから。タイヤ交換も技術の進歩であんまり変わらない。

じゃあプロアームの良いところは無いのかというとそんな事はありません。今でもVFRなどに採用されているのを見れば分かるようにプロアームの良いところはちゃんとあります。

NC24カタログ写真

カッコいい事です。

主要諸元
全長/幅/高 2010/690/1125mm
シート高 770mm
車軸距離 1375mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率 44.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 59ps/12500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後130/70-18(63H)
バッテリー FB9L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
ER8EH
または
Y24FER
推奨オイル ウルトラGP(SAE10W-40/20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.4L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 679,000円(税別)
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VFR400R(NC21) -since 1986-

NC21

「ウイニング・テクノロジー」

待ってましたと言わんばかりの登場となったレーサーレプリカ、RモデルのVFR400R。

TT-F3

キャッチコピーにもあるようにこのバイクはTT-F3(400cc国内レース)で1985~86年の優勝マシンRVF400のレプリカモデル。

そのマシンに習い、高剛性のアルミツインチューブフレーム、カムギアトレイン、クランク角を360度から180度へ変更などなどHRC(HONDA RACING CORPORATION)テクノロジー満載のバイク。

NC21線図

ただダブルシートなのを見ても分かる通りこの頃はまだカリカリというわけではなく、速さは持っていたけどポジションは優しかったから改めて見ると、とっても速いV4レプリカツアラーという感じ。

そして合わせて登場したのが一部の人しか知らないけど、知ってる人は絶対に忘れないVFR400Z。

VFR400Z
(NC21)
-since 1986-

VFR400Z

VFR400Rのカウルレスネイキッドモデルで丸目二眼が特徴的。

知らないのも無理もない話でV4の400としては最初で最後のネイキッドモデル。Rモデルが一年後にモデルチェンジするんだけどコッチはコッチでマイナーチェンジをし、しばらくは併売していました。

じゃあ知ってる人は絶対に忘れない理由が何かというと、これは教習車としても広く採用されたから。

VFR400Z教習車

80年代後半から90年代にかけてCB400SFに置き換えられてるまで教習車といえばコレ(もしくはCBR400K)が多かったんです。

デチューンされているとはいえV4カムギアトレーンの教習車・・・HRCテクノロジーのありがたみが薄れますね。

NC21佐藤浩市

ちなみに佐藤浩市さんが起用されていた事はあまり知られていない。

主要諸元
全長/幅/高 2010/705/1125mm
[2010/705/1010mm]
シート高 765mm
車軸距離 1375mm
車体重量 182kg(装)
[178kg(装)]
燃料消費率 44.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 59ps/12500rpm
最高トルク 3.7kg-m/11000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後130/70-18(63H)
バッテリー FB9L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C8EH-9
推奨オイル ウルトラGP(SAE10W-40/20W-50)
オイル容量 全容量3.1L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 659,000円(税別)
[629,000円(税別)]
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VF400F/INTEGRA(NC13) -since 1982-

NC13

「ハイテック・スーパー・ミドル」

同年デビューの打倒2stことVT250Fと瓜二つな見た目で登場した400ccのV4バイクの始まりとなるVF400F(NC14)。

NC13カタログ写真

遂に400でもV4が登場したと(まだ大型二輪が限定解除で難しかった事もあって)話題になり、また裏切らない速さを持っていたことから14000台以上を売るヒットを飛ばし翌1983年にはCBX400Fを抑え年間販売台数トップを獲得。

NC13E

後継モデルの影響か現代ではCBX400Fほど話題にはなりませんが、当時は非常に人気でした。

当時を知らない人の為に補足するとホンダはこの頃からストリートはCB/CBR系、レースはVF/VFR系とツートップ戦略に近いラインナップをしていたんです。

NC13インテグラ

そして1984年からはフルカバータイプのINTEGRAも登場。

これはカウルに対する国土交通省の規制が緩和された事が大きな理由。ノーマルのFの方もどう見てもビキニカウルなんだけど、それじゃ国土交通省の認可が下りない(型式を取れない)事から

VF400F

「これはカウルじゃなくてメーターバイザー」

っていう屁理屈みたいな言い訳で押し通した歴史があるんです。

主要諸元
全長/幅/高 2060/750/1160mm
[2055/730/1195mm]
シート高 780mm
車軸距離 1415mm
[1405mm]
車体重量 191kg(装)
[195kg(装)]
燃料消費率 43.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11500rpm
最高トルク 3.5kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後110/90-18(61H)
バッテリー FB12A-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP7EA-9/DP8EA-9/DP9EA-9
または
X22EP-U9/X24EP-U9/X27EP-U9
推奨オイル ウルトラGP(SAE10W-40/20W-50)
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.2L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 528,000円(税別)
[589,000円(税別)]
系譜図
NC131982年
VF400F/INTEGRA
(NC13)
NC211986年
VFR400R/Z
(NC21)
NC241987年
VFR400R
(NC24)
NC301989年
VFR400R
(NC30)
RVF4001994年
RVF
(NC35)

VFR750R(RC30) -since 1987-

VFR750R

「RVFのフィロソフィ」

今でも伝説として語り継がれるVFR750R(RC30)。

もう30年以上前のバイクなので何がどう伝説なのか知らない人も多いでしょうからそこら辺も含めて紹介していきたいと思います。

RC30コンセプトスケッチ

このバイクが生まれる事となったのはファクトリーマシンではなく今でも行われている市販車(スーパースポーツ)で行う世界レースSBKがキッカケ。

ホンダはこれまでもRVF750というファクトリーマシンで数々の功績を上げてきていました。しかしこれはファクトリーマシン(HRC製)なのでSBKには参戦できない。

HRC RVF

そこでRVF750(写真上)の市販バージョンを作ろうとなったわけです。

ホモロゲマシン(レース前提の市販車)といえばそれまでなんだけど、RC30の場合そのホモロゲの域を越えているから伝説になっているんです。

FRPカウルにチタンコンロッドにクロームモリブデン浸炭鋼製のカムシャフトに専用の360度クランクなど市販車としては有り得ない贅沢の限りを尽くしてるわけですが、こうなるまでの経緯も伝説の一つ。

RC30エンジン

元々RC30の計画は

「ファクトリーマシンRVFを”模した”市販車」

という計画だった。要するに見た目だけRVFなV4バイクを作れという事です。

ところが開発主査の本多さんを始め多くの人が納得いかなかった。

そして

「後から説得すればいい」

と、会社の意向を完全に無視・・・・結果として会社の逆鱗に触れる事となりRC30は一度開発にストップが掛けられました。

RC30

それでも諦めきれなかった本多を始めとしたメンバーこっそり開発を押し進め、見通しが立ったところで当時の本田技研社長だった川本さん(後の本田技研工業四代目社長)に

「営業が過去に例がないと予算(許可)を下ろしてくれず困ってる」

と直談判。

本多さんのその熱い思いを聞いた社長は

「一車種失敗したところでホンダは潰れないから好きにしていいよ。反対する人が居たら俺のところに寄越して。」

とRC30のプロジェクトにお墨付きを与えたというわけ。

本多さんを始めRC30の開発メンバーは飛び跳ねて喜んだそうです。本当にドラマみたいな展開。

イラスト

社長のお墨付きという武器を手に、終いにはライン生産ではなく全てハンドメイド生産というやりたい放題の結果、148万円という当初の予定の二倍近い高額車になりました。

ただレース側の人間やレースを知る人からすると破格ともいえる車体価格。限定1000台ながら3倍近い注文が入り抽選となるほどの人気に。

そしてもう一つ大事なのがレースです。

そもそもRC30はSBK(市販車世界レース)で勝つために作られたのが発端。

SBK/RC30

結果がどうだったかというと・・・当然ながら優勝。

VFR750R/RC30はSBK初代王者ついでに翌1989年の第二回も優勝という戦績を収めました。

そんな伝説だらけのRC30ですが、素人目で見ても分かる技術者の拘りがあります。それはマフラーレイアウト。

honda RC30

この片持ちスイングアームはレースにおいてタイヤ交換をスピーディーに出来るというメリットが有る。でもこれはレースに限っての話。

VFR750Rは(一応)市販車だから関係ないんだけど同じレイアウトをしている。これは実はとっても凄いこと。

何故かというと市販車だから当然ながら厳しい騒音規制がある。測定方法はマフラーのエンドバッフル(排気が出てくる所)から。だからチェーンドライブの場合、チェーンと同じ方向に持ってくるとチェーンのノイズも拾われて騒音が大きくなってしまうからメーカーは先ず絶対と言っていいほど「右出し」にする。

それなのにどうしてRC30は不利な左出しに拘ったのかというと

カタログ

「左出しにしたほうがプロアームが栄えるから」

・・・そりゃ営業サイドから門前払いを食らうわけですよ。

そんな好き勝手に作られたRC30ですが、最大の狙いは何だったのかご存知でしょうか。

それは単にエンジニアとしての自己満足を満たす為でもありませんし、SBKでホンダに栄光をもたらすためでもありません。

VFR750Rカタログ

『プライベーターがワークス(HRC)に勝てるマシン』

模するどころか再現すら通り越し”勝ちに行く”コンセプト。

「圧倒的不利な立場に居ながら戦い続けているプライベーター達に勝たせてやりたい」

という思いがRC30を生み出したんです。

そしてその狙い通りRC30で参戦するプライベーターたちは年を追う毎に増えていきました。

ちなみにVFR750R/RC30の生みの親である本多さんも抽選に応募したのですが・・・ハズレてしまったそうです。

結局、何らかの方法で購入できたようですが。

主要諸元
全長/幅/高 2045/700/1100mm
シート高 785mm
車軸距離 1410mm
車体重量 180kg(乾)
燃料消費率 32.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 77ps/9500rpm
[135ps/12500rpm]
最高トルク 7.1kg-m/7000rpm
[8.2kg-m/11000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58H)
後170/60ZR18(73H)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C9EH-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.8L
交換時2.9L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 1,480,000円(税別)
※[]内はTT-F1キット装着時
系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)

VFR750F(RC24) -since 1986-

RC24

「パフォーマンス アート」

VFRの系譜において大きなターニングポイントとなったVFR750F/RC24。

RC24デザインスケッチ

鳴り物入りで登場したV4スポーツのVF750Fだったんですが先にも述べた通り

「V4は音がちょっと・・・」

としてスーパースポーツ層に思ったほどの評価はもらえなかった事からエンジンのクランク角を360度から180度へ変更。

※しつこいですがV4のクランク角についてはVFR400R(NC30)と重複してしまうのでそちらを読んで下さい。

VFR750F

点火タイミングが等間隔に近い180度にしたことで、どこまで回しても

『ブロロー』

というドスの利いた排気サウンドから

「デロデロ・・・ブオーン」

と高回転になると直四に近いサウンドになるエンジンに変わったわけですね。

それ以外の部分は1985年の世界耐久レース&TT-F1の二冠を達成したRVFレプリカというポジションな事もあり、アルミツインチューブフレームにカムギアトレインと相変わらず贅沢な作り。

VFR750Fトリコロールカラー

更に車重も乾燥重量で200kgを切るライトウェイトさ。

ただしそんなスペックを持っている一方でV4がツアラー層に意外とウケた事でポジションはそこまで厳しくなくオールマイティに熟せる形に。つまり万能V4という現代まで続くVFRのコンセプトの始まりとも言えるモデルですね。

ただ残念なことにこれまた先のVF750Fで述べた通り、日本では余り受け入れられなかったので僅か二年間のみの販売で終わっています。

その分と言ったらアレですが、このモデルは白バイとして多く採用されましたね。

VFR白バイ

厳密にいうとこれはVFR750P/RC35といって、市販後に設計されてる別のバイク。取締用や警備用といったバリエーションがあり、98年まで年次改良が繰り返されました。

『VFR=白バイ』

という歴史もこのモデルから。もうこの型はほとんど見ないけどね。

RC24カタログ写真

ちなみに開発責任者は初代からずっとVFに携わっているかの有名な山中さんなんですが、そんな山中さんが惚れ込んで愛車にしていたモデルでもあったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2120/730/1170mm
シート高 785mm
車軸距離 1480mm
車体重量 199kg(乾)
燃料消費率 38.1km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 77ps/9500rpm
[105ps/10500rpm]
最高トルク 6.5kg-m/7500rpm
[7.8kg-m/10500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/90-16(59H)
後130/80-18(66H)
バッテリー YB12A-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル ホンダ純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時2.9L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 849,000円(税別)
※[]内は海外仕様
系譜図
VF750S/M 1982年
VF750
セイバー/マグナ
(RC07/RC09)
VF750F 1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R 1984年
VF1000F/R
(SC16)
VFR750F 1986年
VFR750F
(RC24)
VFR750R 1987年
VFR750R
(RC30)
RC36 1990年
VFR750F
(RC36)
RVF 1994年
RVF
(RC45)
VFR前期 1998年
VFR
(RC46前期)
VFR800 2002年
VFR
(RC46後期)
VFR1200F 2010年
VFR1200F
(SC63)
VFR1200X 2012年
VFR1200X
(SC70)
VFR800F 2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)

VF1000R(SC16)-since 1984-

V4スーパースポーツ

「究極のレーサーレプリカ」

ホンダが新たに開発したV4リッタースーパースポーツのVF1000R/SC16型。

少し前に出たホモロゲーションCBことCB1100Rの後釜を担うプロダクションモデル(市販車レースのためのモデル)として開発された経緯があり、同年に登場したV4レーサーRS850Rのレプリカ的な立ち位置になります。

RS850R

だからエンジンも伝家の宝刀カムギアトレーンを採用した360度クランクで、100馬力が大台と言われていた時代に122馬力を叩き出すハイスペックっぷり。

VF1000Rエンジン

他にもレースを考慮し

・五速クロスミッション

・ラジアルリアタイヤ

・アンチノーズダイブフォーク

・フローティングディスクブレーキ

などなど当時の最先端技術を余すこと無く詰め込んだ豪華仕様。

VF1000Rのディメンション

そのためお値段も先に紹介したVF750Fの三倍以上となる250万円という超高級車。つまり有名なVFR750R/RC30と同じような意図のモデルなんです・・・が、恐らくこのモデルを知ってる人はかなり少ないかと思います。これにはもちろん理由がある。

ホンダはこれで市販車レースを総ナメにする計画だった・・・だったんですが、VF1000Rは不運としか言いようがない事態に見舞われるんです。

当時ビッグバイクの主要市場はアメリカだったんですが、レーガン大統領が日本車ばかり売れる事に危機感を覚え

「700cc以上の輸入バイクに45%の関税をかける」

という保護関税を1983年つまりVF1000R発売前年に発表。ただでさえ相場の三倍近い高級車に45%も関税が上乗せされて売れるわけないっていう。

VF1000Rカタログ

しかしVF1000Rの不運はこれだけで終わらなかった。

肝心要の市販車レースのレギュレーションがこれまたよりにもよって発売前年の1983年に

「排気量の上限を750ccにする」

という変更が下されたんです。

このせいでVF1000Rはプロダクションレースへの出場が不可能になり、レースは冒頭で紹介したVF750FベースのプロダクションレーサーRS850RをスケールダウンしたRS750Rで戦う事に。

VF1000Rデザイン

つまりVF1000Rはメインターゲットだったアメリカにおいては関税によって市販車としての立場を潰され、レギュレーションの変更でレーサーとしての立場も潰されるというデビュー前にして両翼をもぎ取られる形になってしまった。

V4のリッタースーパースポーツ(プロダクションモデル)なのにCB1100Rや後続のVFR750R/RVF(RC45)などに比べて知名度や人気が今ひとつなのはこれが理由。出場が確認できた大きな大会はオーストラリアのカストロール6耐くらい。

その物寂しさをよく現しているのが実質的に唯一のマーケットになった欧州向けに販売された限定モデル。

VF1000Rロスマンズカラー

「ロスマンズカラーとか最高だな」

と歓びたい所ですが、よく見ると分かるようにVF1000Rの方にはロスマンズのロの字も入ってない・・・そりゃそうですよね、だって世界耐久王者に輝いた初代RVFは満を持して登場したVF1000Rではなくそれより前に発売したVF750Fがベースなんですから。

もしも運命の悪戯に合わず参戦できていたらこれがRVFになるはずだった。そんな不運としか言いようがない時代背景を持つのがVF1000Rというモデルなんです。

VF1000F
(SC16)
-since 1984-

SC16

「EXPLORING THE OUTER KIMITS」

VF1000Rと並行して開発されていたハーフカウルモデルのVF1000F/SC16型。

こちらのモデルはRとは違い最初から欧州をターゲットのモデル。VF1000Rがあんな事になってしまったせいで実質的にセールスを一手に背負う形になったわけですが、VF1000Fはフロントが16インチな事からも分かる通りハーフカウルながら場合によってはRよりスポーツな志向でした。

Interceptor

VF1000Fは開発者の齋藤さんが出来に惚れ込んで愛車にするほどの力作だったんですが環境の違いからか

「もうちょっとツーリングにも使えるモデルにして」

と欧州側から要望が入った事で翌1985年にフルカウルとフロント18インチを装備したVF1000F2を投入。

SC15

アメリカで売れない以上こっち(欧州)で何とかするしかなかった事もあってか迅速な対応なんですが、ハイスピードツアラーという事でCB900Fに続き

『BOL’DOR(ボルドール)』

という今もお馴染みある世界耐久レースの花形ボルドール24時間耐久レースの名前が付いています・・・が、これが一筋縄ではいかない問題でもあった。

何故ならホンダはボルドール24時間耐久においてV4レーサーでの勝利をまだ上げていなかったからです。

「不沈艦RCB直系のCBがボルドールと冠するのは分かるけど、勝ってもないV4がボルドールを冠するのは違うでしょ」

って話になりますよね。

しかしFにインターセプターと名付けたようにFIIにも名前を、それも欧州でのセールスを取るために絶大な人気を誇るボルドールという名前が欲しい。

今年のボルドール24時間耐久レースはFII発表より前・・・そこで開発チームは

1985RVF

「RVF速いし今年は勝つでしょ」

という事で見切り発車のようにボルドールと名付ける方向で計画。※ホンダフラッグシップモバイク開発話|山中勲より

これ何が恐ろしいってなんの運命の悪戯かボルドール24時間耐久レースがVF1000FIIの発表の前と言っても同日の話。ボルドールのレース結果が出るのが朝でFIIの発表は昼から。

そんなもんだからやきもきしながらボルドール24時間耐久レースの結果を待つ事になったものの幸運なことに見事に予想が的中しRVFが勝利。

1985年のボルドール24

その一報を聞いた瞬間に発表を控えていたVF1000FIIのサイドカウルに万が一の事態を考えて貼っていなかったBOL’DORのステッカーをペタっと貼り付けてボルドールと冠する事に成功。

VF1000F2

つまりもしもRVFが1985年のボルドール24時間耐久レースで負けていたら名乗れなかった。

V4として初めてボルドールの名を与えられたVF1000FIIは、Rとは対照的に幸運に恵まれたモデルだったわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2210/765/1240mm
[2180/730/1200mm]
<2270/765/1275mm>
シート高 820mm
[810mm]
<815mm>
車軸距離 1505mm
[1550mm]
<1550mm>
車体重量 233kg(乾)
[244kg(乾)]
<245kg(乾)>
燃料消費率
燃料容量 23.0L
[25.0L]
<23.0L>
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 116ps/10000rpm
[122ps/10000rpm]
<122ps/10000rpm>
最高トルク 9.0kg-m/7500rpm
[9.4kg-m/8000rpm]
<9.4kg-m/8000rpm>
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90-16(59H)
後130/80-18(66H)
[前120/80-V16-V250
後140/80-VR17-V250]
<前100/90-V18-V250
後140/80-VR17-V250]
バッテリー YB12A-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9/DPR8EA-9/DPR9EA-9
または
X22EPR-U9/X24EPR-U9/X27EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.9L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格
※スペックはVF1000F
※[]内はVF1000R(Type-G)
※<>内はVF1000FII(SC16)

仕様変更

ライト形状は国によって二眼と一眼があり
フランス仕様はSC19

系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)