VF750F(RC15) -since 1982-

RC15

「The Top Technology Machine」

先代(というか先に出ていた)VF750SABRE/MAGNAがシャフトドライブやパイプフレームなどでどちらかと言うと豪華装備のツアラー的な作りだった事から

「何故スーパースポーツではなくスポーツツアラーなんだ」

という声が上がっていた。ホンダも見越していたのか半年後に登場したこのVF750Fは業界初の角型断面パイプフレームにチェーンドライブ、更にスポーティなビキニカウルなど正にそういった声に答えるバイクとして登場。

VF750F

他にもバックトルクリミッターやクラス初軽量ブーメラン型オールアルミコムスターホイルなどNRで培ったレース技術のフィードバックが入っています。そしてキャブレーターが再度見直されコンパクトになったことで、フレームから頭が飛び出すほど傾けていたエンジンが少し戻りました。

V4スーパースポーツ

ちなみに海外向けでお馴染みのペットネーム”INTERCEPTOR”が付いたのもこのモデルが始まり。

まさに待ちに待ったスーパースポーツで巷で一躍話題になった・・・けど長続きはしなかった。

ホンダV4の苦難はもうこの頃から始まっていたんですね。

先代で書いた通りホンダは唯一無二のV4をホンダのフラッグシップモデルとして作り差別化を図る意図があったから、CB750Fでお馴染みのスペンサーさんを乗せ替えさせてまでレースに出場してたんだけど市場(特に日本)の反応は悪かった。

VF750R

ホンダの分析を端的に纏めると

「エキサイティングさや感性が直四に比べ弱かった」

との事。これがどういう事かというと、V4に乗ったことがある人は分かると思うけど直四が回せば回すだけエンジンノイズや排気音とスピードが比例していくのに対し、V4は燃焼間隔が等間隔じゃないから。

※V4のクランク角についてはVFR400R(NC30)の後半で書いたので割愛します。

VF750Fエンジン

速いのは圧倒的にV4なんだけど音とスピードが今ひとつ比例していない。ホンダは社運を賭けた勝負において思わぬ形で負けてしまったわけです。

もし当時のライダー達が直四フィールよりV4(倍回るVツイン)のフィーリングを取ってたら今頃ホンダSSはCBR1000RRではなくRVF1000とかになってた可能性は凄く高いでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2016/770/1215mm
シート高 795mm
車軸距離 1495mm
車体重量 218kg(乾)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 72ps/9500rpm
最高トルク 6.1kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/80-16(60H)
後130/80-18(66H)
バッテリー FB14-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 748,000円(税別)
系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)

VF750SABRE(RC07) -since 1982-

VF750SABRE

「瞬間、近未来。」

世界初の水冷V4エンジンを積んだバイクでありホンダの市販V4の始まりでもあるVF750SABREとMAGNA。

V4エンジンの源流になっているのは楕円ピストンでお馴染みNRの元となっているファクトリーレーサーNR500(1978年)。NRについては「無冠のレーシングスピリット NR(RC40)」をどうぞ。

V4エンジン

あと地味だけど油圧クラッチも世界初採用。更にキャストホイールもホンダとしては初と初尽くめ。他にもプロリンクやシャフトドライブ、ウインカーキャンセラーなどここでは書ききれないほどハイテク装備が既にこの頃から満載です。

しかしそんな初尽くしVF750において市販化において一番重要なのが同じく世界初だったスラント型VDキャブレター。何故かと言うとV4はスロットルボディを置くスペースが狭いから。

V45

今では当たり前のようにVバンク(前後シリンダー)の間にスロットルボディが置かれていますが、フロート室とよばれるガソリンを一時的に溜めておくプールを傾いている角度で付け、かつ横でも下でも同じ負圧で同じようにガソリンを高効率で吸わせるコンパクトなキャブというのは簡単な事じゃなかったわけですね。

それを何とか限られたスペースの中で可能にするために生まれたのが両方(前後)のキャブが折り重なるようになっているユニークなキャブ。このこれが無かったらV4は無理だったとホンダも言っています。

VF750SABREキャブ

というかこのV750SABRE以降ホンダV型はほぼこのキャブレーター方式を採用してるから、これが作れなかったら後のV型もどうなっていたか分かりません。

その努力が垣間見えるのがラジエーターの下から突き出てるシリンダーですね。これは間違いなくキャブレーターの都合でしょう。

VF750SABRE

ちなみにVF750SABREはアメリカではV45とも呼ばれていました。何故V45なのかというと、このV型エンジンの総排気量がおよそ45立方”インチ”だから。

ただアメリカ向けはこのVF750の系譜とは別の形で進行します。というのも好評だったアメリカでレーガンが83年に700cc以上の輸入車の関税を4.4%から45%にまで引き上げたから。つまりVF750SABREは売れなくなってしまったんです。

VF700SABRE

そこでVF750をベースに排気量を698ccにまで落としたVF700Sというバイクを新たに用意し売り出すことになり、このシリーズでアメリカはしばらく行くことになったわけです。

VF750MAGNA
(RC09)
-since 1982-

VF750MAGNA

合わせて紹介するのが同時デビューのVF750MAGNA。

マグナというと250や50が大ヒットした事からソッチのほうが有名だけど初代マグナはこのV4です。スポーツのSに対し、ラグジュアリーなカスタムモデルとして出たのが始まり。

そもそも何故V4を発売したかというと各社から直四が出揃いマンネリ化していた事からの差別化。最初に言ったNR500というレースフィードバックという意味合いも強いけどね。

VF750

だからホンダはこのV4に本当に社運を掛けていました。

その事が伺えるのが開発者でCBR1100XXまで第一線で活躍された山中勲氏のコメント

透視図

「世界ではじめてのV4開発はあらゆることが難しかった。一開発者の我々までが『本田宗一郎が築いた世界一の座を守りとおしてみせる』との思いで開発に取り組んでいたのだから、当時の危機感は相当なものだったといえよう」

主要諸元
全長/幅/高 2245/830/1165mm
[2235/815/1195mm]
シート高 770mm
[725mm]
車軸距離 1560mm
[1540mm]
車体重量 224kg(乾)
[219kg(乾) ]
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 72ps/9500rpm
最高トルク 6.1kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90-18(61H)
後130/90-17(68H)
[後130/90-16(67H)]
バッテリー FB14-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.5L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 695,000円(税別)
[670,000円(税別)]
※[]内はマグナ
系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)

タクト/ベーシック(AF24)-since 1989-

AF24

「standup」

五代目となるタクト/AF24型。この代からはスーパーもフルマークも付かず再び”タクト”というシンプルなネームに変更されました。

メットインを備えた事で高い人気を死守したタクトが次の一手として打ち出したのが・・・

スタンドアップタクト

『自動スタンド機能』

キーを一番右(ON)にした状態から更に押し込みつつ右に回すと、腹下に備えられた専用モーターがキュイーンと作動し自動でセンタースタンドをかけてくれる機能でした。

ただまあ正直にいうと不要と捉える人が多かったのか、半年後には自動スタンド機能を省いたベーシックモデルを追加販売。スタンドアップタクトより1.2万円安くなった事もあり、体感ですがほぼこっちが売れたのではないかと思うほどで、スタンドアップタクトは結構レアでした。

AF24タクト

AF24型というと、そんなスタンドアップ機能につい目が行ってしまいがちなんですが、エンジンも5ポートシリンダーに改良されなんと6馬力を叩き出すというタクト史の中でも12を争う速さを持っていたりします。

とはいえ当時ディオは更に上を行く6.4馬力。そうなると若者はやはりディオ・・・かと思いきや、敢えてタクトを買う若者も居た。

カタログ写真

理由はカタログやテレビCMに起用されたのが、当時トップアイドルとして人気絶頂だったキョンキョンこと小泉今日子さんだったからです。

主要諸元
全長/幅/高 1655/640/995mm
シート高 725mm
車軸距離 1170mm
車体重量

66kg(乾)
[63kg(乾)]

燃料消費率 53.1km/L
※30km/h走行テスト値
燃料容量 4.8L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 6.0ps/6500rpm
最高トルク 0.70g-m/6000rpm
変速機 無段階変速機(Vマチック)
タイヤサイズ 前後3.00-10-4PR
バッテリー YT4L-12B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR7HS
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
0.8L
Vベルト 23100-GZ5-003
車体価格 154,000円(税別)
[142,000円(税別)
※[]内はベーシック
系譜図
AB071980年
タクトDX/フルマーク
(AB07)
AB07後期1982年
タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム
(AB07後期)
af091984年
タクト/フルマーク/フルマークS
(AF09)
af161987年
タクトフルマーク
(AF16)
af241989年
タクト/ベーシック
(AF24)
af30-af311993年
タクト/スタンドアップ/S
(AF30/AF31)
AF511998年
タクト/スタンドアップ
(AF51)
af75-af792015年
タクト/ベーシック
(AF75/AF79)

タクトフルマーク(AF16)-since 1987-

AF16

「メットイン・タクト」

タクトの系譜において大きな転換期となった1987年1月登場の四代目タクトことAF16型。

転換期と言える理由の一つはシート下収納という機能を設けたから。俗にいうメットイン機能ですね。

AF16メットイン機能

これは前年の1986年に原付もヘルメット装着が義務化された事が要因。

今では信じられない話ですが、当時はヘルメットの煩わしさを嫌う人が続出して原付市場が急激に縮小していました。そこで生まれたのがシート下にヘルメットを収納するスペースを設けるメットイン機能。

AF16カタログ写真

今やスクーターといえば備わっていて当たり前の装備ですが、こういう規制が敷かれたからこそ生み出された技術だったりする。

ピンチをチャンスに変えるとは正にこの事ですね。このためグレードも収納力を意味していたフルマークのみに統合されました。

そして転換期となったもう一つの理由は先代で紹介したアイビーと同様にフェンダー一体型のデザインに変更されたこと。

AF09

これは一体成形によるコスト抑制もあるんですが、一番は原付にもスタイル性が強く求められるようになってきたから。

そしてこのメットインタクトが素晴らしかったのは、いま見ても何の違和感も無い事からも分かる通り

『メットインスクーター黎明期×新世代スクーターデザイン黎明期』

両方を綺麗に纏め上げたデザインをしていた事。これによりメットインタクトは新規開拓に成功するとともに、メットイン機能を持たない原付ユーザーの買い替え需要にも応える形となり、大ヒットを飛ばしました。

主要諸元
全長/幅/高 1655/650/1010mm
シート高
車軸距離 1160mm
車体重量

60kg(乾)

燃料消費率 75.3km/L
※30km/h走行テスト値
燃料容量 4.6L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.8ps/6500rpm
最高トルク 0.66g-m/6000rpm
変速機 無段階変速機(Vマチック)
タイヤサイズ 前後3.00-10-4PR
バッテリー YT4L-12B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6HSA
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
0.8L
Vベルト 23100-GS7-003
車体価格 139,000円
系譜図
AB071980年
タクトDX/フルマーク
(AB07)
AB07後期1982年
タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム
(AB07後期)
af091984年
タクト/フルマーク/フルマークS
(AF09)
af161987年
タクトフルマーク
(AF16)
af241989年
タクト/ベーシック
(AF24)
af30-af311993年
タクト/スタンドアップ/S
(AF30/AF31)
AF511998年
タクト/スタンドアップ
(AF51)
af75-af792015年
タクト/ベーシック
(AF75/AF79)

タクト/フルマーク/フルマークS(AF09)-since 1984-

AF09

「スーパー・タクト」

初のフルモデルチェンジとなった三代目タクトことAF09型。キャッチコピーでスーパーと言っていた事からスーパータクト、略してスパタクという愛称で呼ばれています。

今回のモデルチェンジは騒音や排ガス規制を機にしたモデルチェンジになるんですが、ホンダを代表するスクーターなだけあり規制対応させつつ馬力を更に1馬力上げて5.0馬力と、走りが更に軽快になりました。

AF09

ちなみに鍵付きグローブボックスを標準装備したのもこの代から。

グレードは当初タクトとタクトフルマーク(上の写真)の2グレード展開でしたが、半年後にはこれも追加で再登場。

AF09赤クレージュ

そう、先代に引き続き再登場となったクレージュ・タクト。

先代で爆発的な人気が出たことから今回は限定ではなく通常販売モデル。

AF09青クレージュ

しかもピンクとブルーの2バージョン展開しつつ、晩年の1985年にはオシャレなシートまで加わったツートンまで販売。

1985クレージュ

補足をするとスパタクシリーズはこの時に吸排気見直しで馬力を更に0.4馬力上げて5.4馬力とするマイナーチェンジを行っており、この2トンカラーのクレージュもそのマイチェン後のモデルになります。

そんな女性から非常に高い人気があるクレージュ・タクトをレギュラー化した影響で、素のスパタクはイメージが少し変わりました。

それまでタクトは女性をメインにしつつも中性的なイメージ戦略だったんですが、素のスパタクでは俳優の根津甚八さんを起用し、かなりダンディズムあふれるイメージに。

AF09

カタログを見れば一目瞭然ですね。

ちなみにこの代のタクトには、もう少し紹介しないといけないモデルがあります。一つはスパタクがマイチェンした翌年の1986年に出たトラッドエディションと呼ばれるモデル。

AF09トラッドエディション

チェック柄シートでオシャレになったタクト。ちなみに写真はありませんが、紺色バージョンもありました。

そしてもう一つが同年に実質的な後継として出たタクトフルマークS。

AF09

前後大型キャリアと専用メーター、さらにワイドタイヤを履いたヘビーデューティ志向ながら純白を纏っているモデルになります。

ここまでは全てAF09型になるんですが、一方でそれらと同年のデビューでも型式が違うのはタクトアイビーと呼ばれるモデル。

タクトアイビー

このモデルだけ型式はAF13で、厳密にいうとアイビーはタクト亜種みたいなモデル。というのもこれ4stなんです。

ホンダはボーカル/AF04型とタクティ/AB19型というイタリアン系4stスクーターをタクトとは別に出していたんですが、それの後継としてタクトのプラットフォームを流用しつつ、スタイリッシュなデザインで登場したのが4st版タクトことタクトアイビー。

恐らく1983年に終戦となったHY戦争で膨れ上がった資産を整理する一環なのと、フェンダーまで一体となったスラントノーズタイプが若者の間で人気となっていた事から造られたモデルだったと思われます。

主要諸元
全長/幅/高 1585/625/965mm
[1959/625/965mm]
{1600/625/950mm}
シート高
車軸距離 1130mm
{1135mm}
車体重量

52kg(乾)
[53kg(乾)]
{57kg(乾)}

燃料消費率 90.0km/L
{78.3km/L}
※30km/h走行テスト値
燃料容量 4.0L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.0ps/6000rpm
(5.4ps/6500rpm)
[5.4ps/6500rpm]
最高トルク 0.62g-m/5500rpm
[フルマークS:0.62kgm/6000rpm]
変速機 無段階変速機(Vマチック)
タイヤサイズ 前後2.75-10-2PR
{フルマークS:80/90-10-34J}
バッテリー YT4L-12
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6HSA
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
0.8L
Vベルト 23100-GA7-701
車体価格 125,000円
(129,000円)
[135,000円]
{145,000円}
※()内は85年モデル以降
※[]内はフルマーク
※{}内はフルマークS
系譜図
AB071980年
タクトDX/フルマーク
(AB07)
AB07後期1982年
タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム
(AB07後期)
af091984年
タクト/フルマーク/フルマークS
(AF09)
af161987年
タクトフルマーク
(AF16)
af241989年
タクト/ベーシック
(AF24)
af30-af311993年
タクト/スタンドアップ/S
(AF30/AF31)
AF511998年
タクト/スタンドアップ
(AF51)
af75-af792015年
タクト/ベーシック
(AF75/AF79)

タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム(AB07後期)-since 1982-

AB07後期

「シャープに一新した。ザ・スクーター」

直線基調でキリッとなった二代目タクトことAB07後期モデル。カタログなどで『新タクト』と表記していた事からニュータクトという愛称で呼ばれたりしています。

ニュータクト

そんなニュータクトの変更点としては、エンジンの見直しとトルクセンサー付きVマチックに改良する事で、3.2馬力から4馬力にパワーアップしつつ燃費は100km/Lと走行性能を大きく向上した事。

また、当時増加傾向にあった原付事故を鑑みてウィンカーをビルトインタイプの大型なものに変更し上品にすると同時に、視認性の向上などの改良も行われました・・・が、ニュータクトのアイコンといえばやっぱりこれ。

AB07後期

『WING VISOR』

車体前方に備えられたプラスチックの板で、開くとなんとステップへの雨風の巻き込みを防ぐサイドバイザーになる機能。

AB07後期カタログ

そんな心ときめくギミックが付いているのが二代目タクト/AB07後期ことニュータクトの特徴になります。ちなみにウィングバイザーは耐久性の問題からかこの代限りだったりします。

話を戻すとモデルというかグレードも再編され
・タクトDX(セル付き/キック式)
・タクトフルマーク(サイドトランク付き)
・タクトフルマークカスタム(上記に加えグローブボックス付き)
の3ラインナップとなりました。

AB07後期モデル

そしてニュータクトで絶対に忘れてはいけないのが、二年目に登場したこれ。

AB07後期クレージュ

『タクト・クレージュ仕様(通称クレタク)』

もはや説明不要かと思いますが当時を知らない人のために解説すると、このモデルはミニスカートの生みの親であるアンドレクレージュというフランスの有名デザイナーが手がけた特別色モデル。

今でこそずいぶんと派手なカラーリングだと思いますが、当時はこのアンドレクレージュが手がけたものがものすごく流行っていた。

AB07後期クレージュ

四輪の方でもこんなホイールを出して大流行するレベル。

そんな流行の最先端を取り入れたスクーターだったためスケバン(死語)というか女性に人気爆発。

フルマーク仕様も含め一万台の限定生産だったものの、あまりの人気に

『ニュータク=クレタク』

という勘違いまで生む事態となりました。

主要諸元
全長/幅/高 1555/630/960mm
シート高
車軸距離
車体重量

47kg(乾)
[セル付き:49kg(乾)]
※フルマークは+1kg

燃料消費率 100.0km/L
※30km/h走行テスト値
燃料容量 3.2L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 4.0ps/6000rpm
最高トルク 0.50kg-m/5000rpm
変速機 無段階変速機(Vマチック)
タイヤサイズ 前後2.75-10-2PR
バッテリー YB4L
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP6HS
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
0.9L
Vベルト 23100-GA7-701
車体価格 109,000円
[セル付き:123,000円]
{フルマーク:133,000円}
『フルマークカスタム:141,000円』
系譜図
AB071980年
タクトDX/フルマーク
(AB07)
AB07後期1982年
タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム
(AB07後期)
af091984年
タクト/フルマーク/フルマークS
(AF09)
af161987年
タクトフルマーク
(AF16)
af241989年
タクト/ベーシック
(AF24)
af30-af311993年
タクト/スタンドアップ/S
(AF30/AF31)
AF511998年
タクト/スタンドアップ
(AF51)
af75-af792015年
タクト/ベーシック
(AF75/AF79)

タクトDX/フルマーク(AB07)-since 1980-

初代タクト

「ザ・スクーター」

1980年に発売されたタクトDX/AB07型。ホンダ初のファミリースクーターであり、今なお続くタクトの初代モデルになります。

ちなみに音楽で指揮者が持っている『指揮棒(タクト)』が名前の由来。自分の思うように操れるというコンセプトからそう名付けられました。

初代タクトコンセプトデザイン

この頃のホンダはまだまだスーパーカブがイケイケだったわけですが、かの有名なHY戦争(ホンダとヤマハのシェア争い)によりタクトは生まれる事になりました。

というのも、ホンダはもともと1976年にロードパルという漕ぐ必要がないエンジン付き自転車みたいな簡易原付、俗に言うソフトバイクを発売し、主婦層など潜在需要の掘り起こしに成功し大ヒットしていました。

この流れでスカートでも乗れるATバイクであるファミリースクーターがライバルメーカーから出ると更なる大ヒット。女性を中心に人気が出ていたことからホンダとしても出そうとなり、開発されたのがタクトの経緯になります。

初代タクト

タクトはそんなホンダ版ファミリースクーターの急先鋒モデルだった事もあり、小柄なボディとステップスルーというスクーターのツボを抑えていた事はもちろん、初代にして非常に豪華な造りとなっていました。

具体的にいうとパワートレインは完全新設計2st強制空冷エンジンとVマチックを兼ね備えたパワートレインで、当時何より求められていたセル付きグレードも用意。さらにオートチョーク/コック機能も付けて始動性を向上させるなど、非常に親切な設計。

初代タクトの解説

ただ何より好評だったのは、原付にも関わらずボトムリンク式フロントサスと油圧リアダンパーを備えた上にクッション性の優れる分厚いシートで非常に乗り心地が良かった事にあります。

このおかげでタクトは市場から非常に評価され、初代にして大ヒットのモデルとなりました。

ただ大ヒットの要因はもう一つあります。

それは翌1981年に追加販売されたセル付きタクトをベースにしたタクトフルマークというモデル。

初代タクトフルマーク

フルマークはボディ右側に鍵付きサイドトランクを備えたモデル。

当時のスクーターはシート下にはエンジンが鎮座しておりシートメットインなどという概念が無い時代。そんな中で荷物を収納できるだけでなくシャレオツな見た目という事で、それはそれは人気となりました・・・というか無印よりフルマークの方が人気だったのではないかと思うくらい。

さらに当時はHY戦争という仁義なき戦いの最中という事もあり、フルマーク発売後すぐに手を緩めることなく豪華な装備を施した特別仕様

『スーパーカスタム』『スポーツ』『フルバック』

と追加ならぬ追撃モデルを販売。

スポーツ・スーパーカスタム・フルバック

・フロントにボックスを備えたスポーツ
・収納特化のフルバック
・スクリーンやボックスを付けた豪華なスーパーカスタム

となかなか個性的な特別仕様となっています。面白いのがスーパーカスタムで、原付ながらディッシュホイールを履きつつフェンダーにフードクレストマークを付けるという豪華っぷり。

タクトのフードクレストマーク

「原付でそこまでやる必要があるのか」

とも思うんですが、それだけ当時はライバルより一歩でも秀でる事に必死だったというわけですね。初代にしてDXという名前が付けられている事からもそれが読み取れます。

ただ特別仕様でもう一つ話しておかないといけないのが、フルバックと呼ばれるモデル。

初代タクトフルバック

フルマークと一緒にされがちなんですが、フルバックはサイドトランクを右側だけでなく左側にも備えたモデル。インナーラックとステップカバーも付いているのも特徴で、フルマークと同様に人気となりました。

これらの確かな造りと親切心の塊のようなモデル展開により、初代タクトは結果としてわずか二年間で72万台もの販売台数を記録するメガヒット。

初代タクトのカタログ

ホンダがHY戦争において販売シェア一位を死守出来たのは間違いなくこのタクトのおかげ。

ちなみに上のカタログ写真でもチラチラ出ていますが、ホンダはこのタクトにイージーライダー(Born To Be Wild)の主人公役で有名なピーターフォンダ氏を起用していました。なんとも贅沢な話ですが・・・ターゲット層が違う気がしないでもない。

主要諸元
全長/幅/高 1520/360/960mm
シート高
車軸距離 mm
車体重量

49kg(乾)
[セル付:51kg]

燃料消費率 76.0km/L
※30km/h走行テスト値
燃料容量 3.2L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 3.2ps/6000rpm
最高トルク 0.44kg-m/4500rpm
変速機 無段階変速機(Vマチック)
タイヤサイズ 前後2.75-10
バッテリー YB4L
[セル付:YB4L-B]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP5HS
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
0.9L
Vベルト 23100-GA7-701
車体価格 108,000円
[セル付:118,000円]
系譜図
AB071980年
タクトDX/フルマーク
(AB07)
AB07後期1982年
タクトDX/フルマーク/フルマークカスタム
(AB07後期)
af091984年
タクト/フルマーク/フルマークS
(AF09)
af161987年
タクトフルマーク
(AF16)
af241989年
タクト/ベーシック
(AF24)
af30-af311993年
タクト/スタンドアップ/S
(AF30/AF31)
AF511998年
タクト/スタンドアップ
(AF51)
af75-af792015年
タクト/ベーシック
(AF75/AF79)

STEED400(NC26) -since 1988-

スティード400

第二次クルーザーブームの火付け役として有名な本格クルーザーのスティード。

あのNV400カスタムから僅か3年でこの差は何だ?と思う人も多いかもしれない。

実はスティードはHAM(ホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチュアリング)との共同製作車。つまり本場であるアメリカの声を交えて(というか主体?)で作られた本当のアメリカン。

スティードコンセプトスケッチ

だからこれだけの造りがいきなり出来たわけだね。画期的だった位相クランクエンジンだったけどクルーザーには相応しくないってことでヤメて大幅に改良された低回転寄りのエンジンになった。

さらに今ではイントルーダー400やDS400も使ってるリジッド風に見えるリア周りはスティードが初。

まあその結果、そりゃもうコレでもかってくらいの大ヒット。

それまで400のクルーザーといえばヤマハのビラーゴだったけど、スティードでホンダが一気に掻っ攫った。

NC26

カスタムベースとして見ても優秀だったのも人気の一つかな。

途中途中に派生モデルとして安価モデルのVLC、ディッシュホイールを付けたVSE、スプリンガーフォークを付けたVLS等が発売されました。

2002年の排出ガス規制に伴って2001年にノーマルのVLXに一本化するマイナーチェンジをしたんだけど、ホンダはそのモデルを最後にスティードの生産を終了して併売していたシャドウへ一本化することなりました。一部の海外では既にシャドウという名で売られてたりしたんだけどね。

スティードシャドウ

実に16年間も売られてた超ロングセラー車。ホンダクルーザーとしては唯一成功を収めたバイクと言えるかも。ああ、でもマグナ250もヒットしたか。

主要諸元
全長/幅/高 2310/760/1130mm
シート高 680mm
車軸距離 1600mm
車体重量 208kg(装)
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9L
エンジン 水冷4ストロークOHC2気筒
総排気量 398cc
最高出力 30ps/7500rpm
最高トルク 3.3kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後170/80-15(77S)
バッテリー FTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9/DPR8EA-9
または
X22EPR-U9/X24EPR-U9
推奨オイル Honda純正ウルトラG1(SAE10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.8L
交換時2.1L
フィルター交換時2.3L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 599,000円(税別)
系譜図
nc121985年
NV400Custom
(NC12)
NC261988年
STEED400
(NC26)
NC341997年
Shadow400
(NC34)
NC402000年
Shadow Slasher400
(NC40)
NC44|NC452008年
Shadow400
Classic/Custom
(NC44/45)

NV400Custom(NC12) -since 1985-

NV400カスタム

一大ブームを巻き起こしたスティード、そしてシャドウシリーズのご先祖様にあたるNV400カスタム。

俗にいうナンチャッテアメリカンの類なんだけど非常にホンダらしい部分がある。それはエンジン。

バンク角52度というクルーザーの要素として大事な挟角Vツインという条件を満たしてるんだけどホンダは要らぬひらめきをしてしまったんですね。

「狭角Vツインでもクランクを位相にすれば90度Vツインと同じく一次振動を0でパワーを稼げる!」

位相クランクVツイン

そのおかげでこのNV400カスタムは挟角Vツインながらヒュンヒュン回るエンジンで44馬力ものパワーを発生させる画期的なエンジンとなりました。

NV400カスタム

そんな画期的だったエンジンを積まれ満を持して発売されたNV400カスタムの評価はというと・・・

「ヒュンヒュン回り過ぎでVツインの鼓動感が全くない。」

というまあクルーザーとしては当たり前なダメ出しをくらう結果に。

非常に面白いエンジンを積んだバイクでしたが、残念ながらクルーザーとしての人気は出ませんでした。

いやむしろ何でクルーザーでそんな事したんだって話ですが、まあ当時は第一次クルーザーブームとレプリカブームの間みたいな時期でメーカーも方向性が分からなかったんでしょう。

NV400SP

このヒュンヒュン回る挟角Vツインエンジンは後のシャドウシリーズにも改良され載るのは勿論のこと、NV400SPというスポーツモデルにも搭載されました。

ホンダ ブロス

さらにそこから派生してブロスとなり、そのまた派生としてVRX400ロードスター等が出てたりします。

VRX400ロードスター

ほかにもトランザルプ400やアフリカツインにも積まれてたりと、実は結構兄弟車というか従兄弟が多いんです。

ここまでの乱立を見るにホンダが何とかこのエンジンを使ったヒットバイクを作ろうとしていた形跡が伺えますね。まあ面白いエンジンなので無理もない話です。

主要諸元
全長/幅/高 2175/840/1190mm
シート高 770mm
車軸距離 1490mm
車体重量 193kg(装)
燃料消費率 44.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12L
エンジン 水冷4ストロークOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 43ps/9500rpm
最高トルク 3.5kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.50S18-4PR
後130/90-16(67S)
バッテリー FB12A-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR7EA-9/DPR8EA-9/DPR9EA-9
または
X22EPR-U9/X24EPR-U9/X27EPR-U9
推奨オイル Honda純正ウルトラU(SAE10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ
チェーン
車体価格 499,000円(税別)
系譜図
nc121985年
NV400Custom
(NC12)
NC261988年
STEED400
(NC26)
NC341997年
Shadow400
(NC34)
NC402000年
Shadow Slasher400
(NC40)
NC44|NC452008年
Shadow400
Classic/Custom
(NC44/45)

REBEL250(MC13) -since 1985-

初代レブル

“反逆者”という意味を持つREBEL(レブル)。

非常に簡単に言うと250T M&Cをベースに、フロントフォークを更に突き出し、ティアドロップタンクやボブテールなど各部を見直しアメリカンらしさを更に強調したモデル。

レブルSP

この頃といえばレーサーレプリカブーム真っ只中だったんですが皆が皆そういうレーサーに憧れを持っていたかというとそうでもなかった。

ツナギを着て峠を走るのではなく、街をカッコよくスマートに乗りたいと思ってる人たちも多く、またちょうどこの頃というのは『白バイ野郎ジョン&パンチ』というアメリカドラマの影響もあって

「街をカッコよく乗り回せるバイク=アメリカン」

という認識が広まってた。

初代レブルCatalog

そんな中で登場したこのレブルは本当にそれを実現させる為だけに生まれてきた様なバイクだったんです。

当然ながら人気も高くこのレブルがヒットしたことで250アメリカンも激しい競争が始まり、その熱は90年台半ばまで続きました。

MC13北米モデル

ちなみにアメリカなど一部の国ではこのREBEL(海外名:CMX250)は教習車(練習車)として非常に重宝された歴史もあったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2115/815/1100mm
シート高 660mm
車軸距離 1460mm
車体重量 147kg(装)
燃料消費率 55.0m/L
※定地走行テスト値
燃料容量 10L
エンジン 空冷4サイクルOHC二気筒
総排気量 233cc
最高出力 21ps/8500rpm
最高トルク 2.0kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.00-18-4PR
後130/90-15(66P)
バッテリー FB9L-B
[FTX7L-BS]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR6HSA
推奨オイル Honda純正ウルトラG1(10W-30)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.9L
交換時1.5L
スプロケ 前14|後33
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 339,000円(税別)
※[]内は90年モデル以降
系譜図
CB2501968年
CB250シリーズ
(CB250)
MC041980年
CM250T
(MC04)
MC061981年
250T Master/LA Custom
(MC06/MC07)
MC131985年
REBEL
(MC13)
MC261991年
NIGHT HAWK250
(MC26)
MC492017年
REBEL250
(MC49)