YZF-R6(2C0)-since 2006-

2006R6

「EXTREME SUPER SPORTS」

ユーロ3の排ガス規制に合わせて大激変を遂げた四代目YZF-R6の2C0型。

変更点としてはまずやっぱりエンジン。

2C0エンジン

・ビッグボア&ショートストローク化

・圧縮比をアップ

・クランクマスの軽量化

・マグネシウムヘッド

・バルブのさらなる狭角化と大径化

・排気デバイスEXUPの採用

・アイドルコントロール

・YCC-T(電子制御スロットル)

・トリプルCPU内蔵ECU

などにより127ps/14500rpmというただでさえ高回転型だったのが更に高回転型に。

2C0メーター

その結果タコメーターには遂に20000rpmの文字が登場。

「お前は250ccレーサーレプリカか」

と言いたくなる話なんですが他にも

・新設計CFアルミダイキャストフレーム

・新型サスペンション

・1kgの減量

・スリッパークラッチ

・アルミサイドスタンド

・チタンサイレンサー

などなど。

2007R6エンジン

相変わらずR1より豪華な最先端装備の数々・・・ですが、それ以上に騒がれたのがデザインかと。

性能に負けずとも劣らない超攻撃的な姿。

2007YZF-R6壁紙

ヤマハの象徴であるレイヤードカウルの始まりもここにあるんですが黎明期のデザインとは思えないほどの完成度ですね。

ただそれもそのハズで、実はこのデザインはR6の開発チームがたまたま目にしたスケッチを発見しビビッと来て

「次期型のデザインはこれで行こう」

と問答無用で決定したから。

つまりこの型はデザインが結構大きなウェイトを占めており、設計を寄せていった末の形なんですね。

2007YZF-R6

わざわざポジションランプのレンズに音叉マーク入れてる事も含め、これだけのデザイン性をもったSSが出来たのも納得な話。

これで性能も見た目もますます尖ったSSになったわけですが

「どうしてそこまで尖らせるのか」

というと理由は2つあります。

一つは欧州で盛り上がりがピークを迎えていた600ccレースに勝つため。

2007YZF-R6wallpaper

YZF-R6はデビュー当初こそ他を寄せ付けない性能を誇り、各地のレースで大活躍していたんですが競争の激化によるライバルの出現で苦戦するようになっていた。

それを挽回する狙いがあったのが一つ。

そしてもう一つは初代でも少し話しましたが

『YZF-R1という存在』

にあります。

R6よりも排気量が大きいR1という存在が居る以上どれだけR6を豪華にしても存在感や所有感を上回る事は不可能だと三輪さんを始めR6チームは分かっていた。

そんな中でR6の存在感や所有感をR1よりも出すにはどうしたらいいか考えた結果

2007年式R6

「走りで存在感や所有感を出そう」

となった。

じゃあ走りで絶対的な排気量差があるR1よりもそれらを出すにはどうしたら良いか・・・最新の装備を奢って極端なエンジン特性にするしかないですよね。これがR6が思い切りやろうというコンセプトで誕生した根本であり尖っていった理由。

だからR6はR1の弟分でも下位互換でも無いんです。先代PLの小池さんいわくR6開発チームはそう思われたくないと考えてる。むしろそれは屈辱でしかない。

2006R6

R6はサーキットでR1よりも存在感を出せる、R1のインを差せるように開発されている一点突破ミドルスーパースポーツという事。

この2C0型はそんなR6のアイデンティティを本当によく現したモデルでした。

主要諸元
全長/幅/高 2040/700/1100mm
シート高 850mm
車軸距離 1380mm
車体重量 182kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 127ps/14500rpm
最高トルク 6.7kg-m/12000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー FT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル SAE10W30~20W40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,050,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R6(5SL後期)-since 2005-

2005R6

熟成が図られた5SLの後期モデル

主な変更点はスロットルボディ(38mm→40mm)、エアファンネル(39.4mm→41.6mm)とそれぞれ大径化して2馬力アップ、剛性が見直されたデルタボックスフレーム、フロントタイヤを現代の主流である120/70に変更、倒立フォークとラジアルマウントキャリパー&マスターなどの足回り強化。

他にもアンダーカウル形状が変更されたりと、見た目はそれほど変わってないけど中身は結構大掛かりに変更されました。僅か一年しか売られなかったので知らない人も多いんじゃないかな。

あんまり見た目が変わっていない事へのテコ入れか、ロッシデザインのカラーとテルミニョーニマフラーとオマケにロッシのサイン入りタンクというロッシファンならたまらないモデルが世界限定500台(シリアルナンバー付き)で発売されました。

ロッシカラー

ロッシのゼッケンナンバーから取ってその名も「YZF-R46」

右側から見ると太陽をイメージした黄色ベースのカラーリング。

ロッシカラー

左側から見ると月をイメージした黒色ベースのカラーリング。

ロッシカラー

上から見ると・・・

ロッシカラー

綺麗に分かれてる。

実にロッシらしいデザインですね。

主要諸元
全長/幅/高 2045/690/1105mm
シート高 820mm
車軸距離 1385mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 120ps/13000rpm
最高トルク 6.8kg-m/12000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EK/CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後48
チェーン サイズ532|リンク116
車体価格 990,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R6(5SL)-since 2003-

2003R6

「エキサイティングなベスト600ccスーパースポーツ」

大きく生まれ変わった三代目YZF-R6の5SL型。

開発目標は更なるコーナリング性能の向上とエキサイティングなエンジン性能の具現化。

そのためにまずエンジンを

・ダイレクトメッキシリンダー

・シリンダーの剛性アップ

・クランク圧のポンピングロスを減らすバイパス

・狭角ハイカム化

・負圧ピストン付きのFI

・二重管構造のチタンパイプ

・発電システムの薄型化

など約9割の部品を新設計というもはや完全新設計と言っていいほどの変更。

5SLのエンジン

いま改めて振り返ってみるとメッキシリンダーや二重管チタンなど現代でこそハイエンドモデルでは当たり前となっている技術の数々をミドルにも関わらずいち早く採用している本当に意欲的でバブリーなエンジン。

そのおかげか10年以上もベースエンジンとして第一線を張り続けただけでなく、突き抜けるような超高回転という官能性も非常に評価されていますね。

5SL

ちなみにそんなR6の官能的なエンジンに酔いしれている人は現行を含め多くおられると思いますが、最初に酔いしれたのは実は他ならぬ開発陣。

実験担当だった伊藤さんいわく、この新設計エンジンの試作機が完成し実験を開始したところ、どこまでも軽やかに突き抜けるどころか回せば回しただけ性能が出るもんだから興奮してアクセルを緩める事ができず、結局クランクを突き破るまで(コンロッドが折損するまで)回してしまい1基ダメにしてしまうというオチ。

2003R6

そんな事をやらかすほどだったからメーターには19000rpmまでしか刻まれていないんだけど

「本当はこんなもんじゃない」

とまで言う始末※CLUBMAN/No216より

それほどまでに凄いエンジンが出来たとチーム内では手応えを感じていたというわけです。

5SLカタログ写真

ただ5SLの凄い部分はまだあります。

それは
『CFアルミダイキャスト』
です。

ダイキャストというのは簡単にいうとドロドロの合金をコンマ何秒という速さで型に注入することで精密かつ複雑な成形を可能にする大量生産向きの鋳造の事。

しかしアルミは凄い速さで固まってしまう事と潤滑剤が発生させるガスや空気などの巻き込みで中に空洞(鋳巣)が出来てしまい強度が落ちてしまう問題があったため、薄かったり細かったりするものは造れないのが一般的だった。

そこでヤマハはこの問題を解決するためになんと自社でダイキャスト設備について研究開発し編み出したのがCFダイキャスト技術。

CFアルミダイキャスト

特殊なシールで真空度を上げると同時に注入速度を5倍に速め、ヒーターでアルミが途中で固まるのを防ぐ事でガスの混入率を1/5にまで低減することに成功。

それにより安定した強度を出せる様になった事で、これまで無理だった細い形状や薄い形状のダイキャストを可能にした・・・というのがヤマハのCFアルミダイキャスト。

5SLのフレーム

そして大事なのがその技術で初めて造られたのが他ならぬこのYZF-R6/5SL型のメインフレームとスイングアームという話。

つまり5SLというのはエンジンもシャーシも何もかも最先端の技術の塊のようなバイクだったんです。だからデザインも当初は変える予定はなかったものの大きく進化した事をアピールするために変更された背景がある。

カタログ

ちなみにこのモデルのイメージは空気を食らう怪物。虎をイメージされたとの事。

残念ながらこの頃のR6は日本ではあまり有名ではありませんが、レースがより身近にある欧州ではメディアなどを見る限り非常に高い評価で当時向こうではミドル一番人気だった模様。

だから欧州仕様にはイモビライザーが付いていました、これは欧州で盗難事故が増えてきてR6も人気があって狙われやすかったから。

R6盗難保険

この事で欧州の盗難保険会社はその後イモビ有りとイモビ無しで分け実質的な値上げ。フランスやオランダなどではイモビがついてないと盗難保険に入ること自体が不可になるほどの事態になりました。

そんな5SLですが最終年となる3年目の2005年にはマイナーチェンジがされています。

2005R6

・スロットルボディ(38mm→40mm)

・ エアファンネル(39.4mm→41.6mm)

・フレームの剛性バランスを見直し

・ホイールベースを5mm延長

・フロントタイヤ120/70ZR17に変更

・倒立フォークとラジアルマスターとキャリパー

などの変更点が加わりスペックは+3馬力と更に向上。

5SLの壁紙

ただこれは大人気だっていたからこそ可能だった欧州仕様のみの欧州スペシャルモデルみたいなもの。

更に向こうでは

・右半分が太陽をイメージした黄色

・左半分が月をイメージした黒色

というセンターで色分けされた独創的なカラーリングとテルミニョーニのスリップオンが付いたモデルも販売。

YZF-R46

ご存知ロッシのスペシャルカラーで本人のサインとシリアル付きで限定300台。

ロッシカラー

その名も『YZF-R46』

10年以上前なだけあってロッシが若い。

主要諸元
全長/幅/高 2025/690/1090mm
[2045/690/1105mm]
シート高 820mm
車軸距離 1380mm
[1385mm]
車体重量 182kg(装)
[183kg(装) ]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
[17.5L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 117ps/13000rpm
[120ps/13000rpm]
最高トルク 6.78kg-m/12000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60ZR17(55W)
後180/55ZR17(73W)
[前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)]
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EK/CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後48
チェーン サイズ532|リンク116
車体価格 980,000円(税別)
[990,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内は5SL後期(05年モデル)

系譜図

1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R6(5MT)-since 2001-

2001R6

「RACE-READY」

二代目となるYZF-R6/5MT型。

デザイン面で目立つ変更点としてはテールランプがLEDに変更されたこと。

YZF-R6壁紙

スペックとしては1kg減に留まっているものの細部が大幅に見直されています。ここらへんも二代目YZF-R1/5JJに通ずる所ところがありますね。

ただR1と決定的に違うこととして生い立ちもそうなんですが最初から4バルブエンジンだった点があります。

コンパクトなエンジンにアルミデルタボックスフレームとGENESIS思想が色濃く出てるんだけどバルブだけは4バルブ。

YZF-R6フレーム

当時はヤマハが5バルブを推していた事もあり

「いつになったら5バルブになるんだ」

とか言われていたんですが、600ccという小排気量でもう一本バルブを追加する必要がある5バルブにするにはヘッドを大型化するしかなかった。

しかしそうするとコンパクト性が失われてしまう為に採用はしなかったという話。ただ今にして思えばそれで正解でしたね。

主要諸元
全長/幅/高 2025/690/1105mm
シート高 820mm
車軸距離 1380mm
車体重量 188kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 120ps/13000rpm
最高トルク 6.9kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60ZR17(55W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー FT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|後48
チェーン サイズ532|リンク116
車体価格
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R6(5EB/5GV) -since 1999-

1999R6

「エキサイトメントあふれる走行性能」

スポーツに対する考えを180度方向転換したヤマハが造った初代YZF-R6こと5EB型。

日本では先に出ていた大排気量のYZF-R1が注目されましたが実は吹っ切れ度はYZF-R6の方が上と言っていいほど。

というのもこのYZF-R6はプロジェクトリーダーこそYZF-R1と同じ三輪さんだったんですが別々のチームで

「70%が楽しめるのがR1ならR6は100%だ」

と対抗心バチバチだったから。

2000YZF-R6

その言葉に嘘はなく当時クラストップとなる120馬力/13000rpmエンジンにアルミツインチューブフレームで車重も169kg(乾)ともはやレーサーそのもので、ラムエアシステムも兄より先に採用。

これからずっとそうなんですが、実は最先端装備をいち早く採用する傾向が強いのはR1よりR6だったりします。

2000YZF-R6

ちなみにデザインコンセプトは意外にも昆虫との事。

何故これほどまでに尖ったYZF-R6が登場したのかというと欧州で人気だった600ccレースが1999年から世界選手権に格上げされた事が背景にあります。

要するにスーパースポーツ競争の火蓋が切って落とされたわけで、その中でYZF-R6はその先陣を切った形のバイクなんです。

もちろん圧倒的な速さで市場はもちろんレースでも大人気で世界タイトルを三連覇するほどの大活躍でした。

しかし面白い話ですよね。

レースとは無縁な形で生まれて後にレースマシンとなったYZF-R1。

YZF-R1とYZF-R6

一方でレース人気の高まりにより生まれたのがYZF-R6。

同じ様に見えて生い立ちは全くの逆なんですから。

主要諸元
全長/幅/高 2025/690/1105mm
シート高 820mm
車軸距離 1380mm
車体重量 188kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 120ps/13000rpm
最高トルク 6.9kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60ZR17(55W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー FT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|後48
チェーン サイズ532|リンク116
車体価格
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF600R ThunderCat(4WE) -since 1994-

4WE

「The POWER to SATISEY」

YZFというヤマハスーパースポーツの名前を冠しているだけあって、かなり攻撃的なスタイルになったYZF600Rサンダーキャット。

雷猫

デザインが先鋭的な物になっているものの、パワーユニットは基本的に一部の国で併売されていた先代と変わらずポジションもそこまで前傾がキツくないツアラー寄りなポジションに。

先のページでも話した通り、この頃になると欧米で600ccスポーツ熱が非常に高まっていて各地でレースも行われる様になっていたんですが・・・

サンダーキャット壁紙

そんな背景があるにも関わらず何故YZF600Rをカリカリにしなかったのかというと当時のヤマハはスポーツに対する考えが違ったから。

雷猫

YZF1000Rでも話したんですがヤマハは当時

「大型スポーツにはゆとりが必要」

と考えていてカリカリのスーパースポーツを造ることを良しとしてなかったんです。

これは日本の三ない運動はもちろん欧州でも70年代後半に同じ様に社会問題化した事が少なからずあったかと。ヤマハは欧州では人気メーカーですからね。

YZF600Rカタログ写真

だから速さを取りつつもゆとりのある性格やポジションのバイクを心がけていた。実際ディバージョンなんかはそれで大成功を収めていたわけですし。

そしてそれはミドルでも例外ではなく結果としてYZF600Rも速いんだけど楽なポジションのミドルスポーツという形になったというわけ。

そんなYZF600Rは一応日本でも販売されていました。

4WE

しかし覚えてる人はだれも居ないくらい・・・スーパースポーツブームが去った今

「楽なポジションのミドルYZFですよ」

って出したら結構人気が出ると思うんですけどね。時のうつろいとはよく言ったもんです。

サンダーキャット

ちなみに今ではお馴染みであるこのブルーストロボが初めて採用されたオンロードスポーツは実はこのYZF600R Thundercatだったりします。

ヤマハはこの後スポーツに対する考えをガラッと変えるわけですが、保守的な考えをしていたヤマハの最後のバイクが革新的な考えを代表するヤマハカラーを初めて纏ったバイクというのは何とも感慨深い。

主要諸元
全長/幅/高 2060/725/1190mm
シート高 805mm
車軸距離 1415mm
車体重量 212kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 100ps/11500rpm
最高トルク 6.7kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60ZR17(55W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.6L
フィルター交換時2.9L
スプロケ 前15|後47
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

FZR600/R(3HE/4HJ) -since 1989-

FZR600

「Pure Pleasure」

国内での400や750の流れと同じ様に600もFZRに改名されレーサーレプリカとなったFZR600/3HE型。

スチールながら左右を覆うツインスパーになっているデルタボックスフレームや大きく前傾しているシリンダーなどジェネシス思想を多分に取り入れたマシンに大変貌。

FZR600フレーム

しかしながらコレまた先代のFZ600同様日本には正規で入ってきていないので先代に続き知らない人が圧倒的かと。

ただ実はこれかなり時代を先取りしたモデルだったりします・・・というのも欧州ではこのFZR600の登場から数年で600ccブームが訪れたから。2000年代後半から盛り上がりを見せたミドルスーパースポーツブームの始まりですね。

3HEカタログ写真

だからこのFZR600も最初はマイルドだったものの兄貴分に習うように

1990年
・フロントキャリパー4pot化
・ステンサイレンサーカバー
・三連メーター

1991年
・プロジェクターヘッドライト
・スイングアーム変更
・ラジアルタイヤ
・スイングアームの変更

などの変更で走行性能を大幅にアップ。

YZF750

さらに1994年には100馬力まで上げメインフレームから作り直した4HJ型にモデルチェンジ。

中でも通称

『フォックスアイ』

と呼ばれるヘッドライトが欧州では非常に好評にだった模様。YZF-Rシリーズの前身感がありますね。

FZR600

つまりヤマハにとってミドルスーパースポーツの始まりはここにあるわけです。

何度も言うように日本では馴染みがないモデルですけどね。

FZR600R

それにしても日本でFZRというとヤマハがレーサーレプリカブームに合わせて出してきた対抗馬というイメージがあるけど、向こうでは

「時代を先取りしたミドルスポーツ」

という全く逆のバイクになるというのはなんとも面白い話。

主要諸元
全長/幅/高 2095/700/1160mm
[2095/700/1155mm]
{2145/725/1180mm}
シート高 785mm
{795mm}
車軸距離 1420mm
[1425mm]
{1415mm}
車体重量 199kg(装)
[201kg(装)]
{206kg(装)}
燃料消費率
燃料容量 18.0L
{19.0L}
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 91ps/10500rpm
{100ps/11500rpm}
最高トルク 6.7kg-m/8500rpm
{6.7kg-m/9500rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70V17
後130/70V18
[前110/70VR17
後140/60VR18]
{前120/60ZR17
後160/60ZR17}
バッテリー YTX12BS(EU仕様)
YB12AL-A2(US仕様)
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.2L
フィルター交換時2.5L
{全容量3.5L
交換時2.6L
フィルター交換時2.9L}
スプロケ
{前15|後47}
チェーン
車体価格
※国内正規販売なしのため
※[]内は91年以降モデル
※{}内は93年以降モデル
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

FZ600(2AY/2AX) -since 1986-

FZ600

「Proof that superbikes」

FZシリーズの次男坊にあたるFZ600の2AY(EU)と2AX(US)。

日本では750や400が名車として語り継がれ有名ですが欧米向けにはこの600もありました。

国内に正規で入って来なかったので知らない人も多いと思います。

2AY

ベースとなっているのは5バルブの750ではなく4バルブの400の方。

つまりこう見えて空冷で馬力も69.2馬力と本当に文字通り400をスケールアップしたような形。

2AX

実はこのバイクにはほぼ共通なFJ600(XJ600)が存在していたんですがFJという名前からも想像がつく通りツアラー系だった。そこでそれとは別にスポーツライクなモデルとして出したのがこのFZ600というわけ。

FZ600カタログ写真

過激すぎず緩すぎないヒューマンスポーツとして非常に高い評価だったFZ400を知る人ならその600版というと欲しいと思う人は多いのではないでしょうか。

主要諸元
全長/幅/高 2025/690/1145mm
シート高 785mm
車軸距離 1385mm
車体重量 186kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 16.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 598cc
最高出力 69.2ps/9500rpm
最高トルク 5.30kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後120/80-18(62H)
バッテリー YB12A-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
D8EA(DR8ES)
※()内はUKモデル
推奨オイル SAE10W30~20W40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ530|リンク104
車体価格
※海外専用モデル
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R1/M(B3L/4BS)-since 2019-

2019年型YZF-R1

「Full Control Evolution of Track Master」

4年ぶりのモデルチェンジで2020年の排ガス規制に対応した八代目のYZF-R1/B3L型とYZF-R1M/4BS型。

最初に変更点を上げると

・シリンダーヘッドを新設計
・新型FI&レイアウト変更で低中速改善
・ロッカーアームの軽量化
・オイルポンプの変更
・チタンアンダーガード
・電スロの完全ワイヤレス化(電子化)
・ABSコントロール
・エンブレコントロール
・電子制御全般を見直し
・改良型フロントフォーク
・改良型クイックシフター
・シリアルナンバー(Mのみ)

などなど。

YZF-R1

変更点から見ても分かる通り改良が今回の主な目的となっており、国内正規販売になった為かMモデル含め先代より5万円ほど安くなっていたりします。

YZF-R1

カウルデザインも”纏う”をキーコンセプトに変更。

その中でも個人的に気になったのが膝が当たる部分までカウルで覆われているフルカバードチックになった事。

YZF-R1

これはもしやSS屈指の熱さだと評判だった事への配慮なんじゃないかと邪推。

そんなYZF-R1なんですが正直に言うと馬力が上がっていない事に対し、少し肩透かし感を食らった人も多いかと思います。

YZF-R1正面

時代の進化というのは恐ろしいものでYZF-R1の200馬力というのは2020年時点の同クラスでは低い方というか一番下だからですね。

これね・・・失礼ながら本当にヤマハらしいというか面白い話なんですよ。

というのもヤマハはMotoGPという世界最高峰レースにYZR-M1というマシンで2002年からずっと参戦し続けているんですが、同時に現在進行系でずっと言われ続けてる事がある。

2019YZR-M1

「M1はパワーが無い」

観客やファンはもちろん、ロッシを始めとした選手からも、そして社内からも言われ続けてる。

そう言われる理由はMotoGPを見ている人なら分かると思うんですが、ホームストレートなどで離されたり抜き返されたりして負けるというファンにとってはショッキングな展開が日常茶飯事だから。

だから負けるたびにそういう言われるし社内からも

「せめてストレート(最高速)だけでも勝つバイクにしろ」

っていうクレームが絶えずあってる。何故ならそれが一番分かりやすい性能アピールだから。

ところがM1は頑なにそれ拒み続けた・・・その象徴たるものがYZF-R1にも採用されている

『直4クロスプレーンエンジン』

です。

CP4エンジン

直4はV型よりも幅があるので前方投影面積が広くなり空気抵抗が増加するし、クロスプレーンは慣性トルクが無く振動面でも不利なのでピークパワーを稼げない。このWの要素があるからそうなる。

だから負けるたびにシングルプレーンにしろと言われたり、V型にしろと言われたり、V型を検討中とか噂を立てられたりしたんだけど直4クロスプレーンを貫き通した。

何故そうまでして貫き通したのかといえば

「コーナリングで勝つ」

という美学にも近い信念があったから。

そしてそれがYZF-R1にも色濃く反映されるから面白いという話。

B3Lディメンション

なぜ直4なのかといえばエンジンの前後長を抑える事でホイールベースを伸ばすことなくスイングアーム長を稼ぎ挙動変化を穏やかにするため。

なぜクロスプレーンなのかといえば慣性トルク(トルクの雑味)を無くす事で求められたトルクを求められただけ出すため。

補足:クロスプレーンだと何が良いのか

そしてなぜ新型YZF-R1の馬力が上がっていないのかといえばピークパワーよりもそれらがもたらすライダーとのシンクロ率を上げることを優先したから。

『フルコントロールエボリューション オブ トラックマスター』

というコンセプトの意味はここ。

M1の魂を纏う

そして公式が”M1の魂を纏う”と表現をしてる意味もここ。

M1の開発者が関わっているからとか見た目が似ているからとかではなく、信念までもがYZR-M1と同じで生き写しのようになってる。

だからメディアなどで同世代やこれから出てくるライバルと

「ヨーイドン」

と加速勝負をして負ける姿をM1と同じ様に目にする事もあると思いますが、R1の真骨頂はそこではないという事だけは覚えておいて欲しい。

例えストレートで先に行かれようと、その先にあるコーナーを抜けた時に先頭に立つポテンシャルを持っているのがYZF-R1の真骨頂なんです。

YZF-R1

「誰よりも速くコーナーを駆け抜けてこそのスーパースポーツ」

ハンドリングのヤマハをこれほどまでに具現化しているモデルは他にないかと。

【関連車種】

CBR1000RRの系譜GSX-R1000の系譜ZX-10Rの系譜SuperBikeの系譜

主要諸元
全長/幅/高 2055/690/1165mm
シート高 855mm
[860mm]
車軸距離 1405mm
車体重量 199kg(装)
[201kg(装)]
燃料消費率 15.2km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 997cc
最高出力 200ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
[後200/55ZR17(78W)]
バッテリー YTZ7S(F)
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブRS4GP
※フルシンセのみ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.9L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア41
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 2,150,000円(税別)
[2,900,000円(税別)]
※[]内はYZF-R1M
系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)

YZF-R1/M(2CR/2KS/BX4)-since 2015-

15YZF-R1

「High tech armed Pure Sport」

大幅に生まれ変わった2015年からの七代目R1こと2CR(15-17北米仕様)とBX4(18-19欧州仕様)型。

外装もエンジンもフレームもホイールも何もかも変わったから大幅というより全面維新というかもう別のバイクというか。

まずもって見た目が明らかにそれまでのR1と違いますよね。

2015YZF-R1ヤマハブルー

今までMotoGPマシンのM1とR1は似ても似つかないデザインだったんだけど、このモデルは明らかにYZR-M1に限りなく近い。

クロスプレーンもそうだけどもうスーパースポーツというよりレーサーレプリカと言ったほうが正しい気がしないでもない。

中でもライトを意識させないデザインは流石ヤマハGKと言える所。

R1LED

ちなみに本当のライトはダクトの左右にある六角形のような物でローでは片目、ハイで両方が点く様になっているわけですが、あまりにも攻めたデザインだったので社内コンペでも結構反対意見があったそう。

テールカウル

でもプロジェクトリーダーの藤原さんが一目見て

「コレでいこう」

と即決してこの形になったんだとか。

肝心の中身の方ですが、これがまた見た目に負けないくらい凄い。

2015YZF-R1ディメンション

何と言っても上げるべきは市販車初となる六軸姿勢制御センサー。

出力を上げることが苦手なクロスプレーンで200馬力を叩き出したエンジンも凄いけどそれ以上にコレが凄い。

sensor

「ピッチ」「ロール」「ヨー」と「前後」「左右」「上下」

つまり全方位をセンサーで自動的に感知しECUが自動で演算、それに合わせた出力を行なう。

これにより
1.バンク角に合わせた出力を行なうTCS(トラクションコントロールシステム)
2.横滑りを防止するSCS(スライドコントロールシステム)、
3.タイムロスに繋がる不用意なウィリーを防ぐLIF(リフトコントロール)
4.ロケットスタートを支援するLCS(ロウンチコントロール)
5.機敏なシフトアップを支援するQSS(クイックシフト)
※2018年モデルからはシフトダウンにも対応したQSSへ

これらを実現。

2015YZF-R1メーター

それに合わせてメーターも完全なデジタルへと変更。

もうサーキットでタイムを出すよりコケる方が難しいんじゃないかと思えるほどの数々・・・マシンに乗っているではなく、乗せられているというのはこのR1で現実のものになりましたね。

ディメンションリアビュー

さてサラッと言った200馬力ですが、それを可能にするために行ったのが更なるビッグボア化。

先代も1mmボアアップしてたんだけど、ソコから更に1mmボアを広げストロークを短くし、圧縮比アップとフィンガーフォロワー式による高回転化で200馬力を達成。

ギア比の変更

さらに恐ろしいことにビックボア化、つまりピストンやシリンダーは横に広くなっているにも関わらずエンジン幅が広がるどころか34mmも縮小し、ついでに4kg減。

でも一番の驚きはチタンコンロッドでしょうね・・・チタンコンロッドってこれまたサラッと言ってるけどそんなバイクは海外メーカーの300万も400万もする超高級バイクくらい。

CP4エンジンカットモデル

ヤマハ自身もチタンコンロッドなんてYZF-R7(4本で100万)くらいだったはず。

ただ驚きはこれに留まらず一つの目玉がマグネシウムホイール。

コストの面から量産化が難しいので敬遠されがちなのに標準採用。

マグホイール

大幅なバネ下の軽量化によるハンドリングの向上に繋がる物なので、何としても絶対に採用する事を決めていたんだそう。

ちなみにコレは小話なんですがこのマグホイールを実現するのに一番大変だったのは社内にいる

「マグは燃えるから危ない」

という偏見というか誇大解釈を持った人達だったとか何とか。言うほど燃えないそうです。

R1ネイキッド

他にもアルミタンクだったりとブレーキキャリパーが6potから新時代のMOSキャリパーっぽい4potになってたりと書ききれない。何でもこのキャリパーはBremboへの換装が容易に出来るようにピッチを同じにしてるんだとか。

ヤマハ自身も書ききれないのかR1としては初になるABSについては何も振れない始末。

そしてこのモデルから「Mモデル(2KS)」が登場しました。

YZF-R1Mカタログ

標準モデルとの違いは走行に応じて勝手に減衰力を自動調整してくれるという反則のような機能を持ったオーリンズの電子制御サスペンション。

YZF-R1M

さらに専用カーボンカウルに加えCCU(Communication control unit)も搭載。

これは走行を記録するものでサーキットなどでのタイム測定をしてくれるもの。何でもスマートフォンと連動してるとか。

アッパーカウル内部

これだけの造りしてるだけあってノーマルでも2,376,000円、Mになると3,186,000円ともはや高級車に。

あまりにも高くなった為か廉価モデルのYZF-R1Sも登場。

YZF-R1S

コンロッド:チタン→鋼鉄
EGカバー:マグ→アルミ
ホイール:マグ→アルミ
エキパイ:チタン→ステン

と材質を変更してコストを抑えたぶん少し重くてピークパワーも抑えられてるけど電子制御はクイックシフター以外はそのまま揃えてる。

マットブラック

ただ残念ながら日本への入荷予定は無し。

2016年にはヤマハ創立60周年としてUSヤマハインターカラーが再び登場。

2016インターカラー

大人気だった4.5代目5VYインターから10年も経っている事に驚きですね。

しかし勢い止まらず2018年にはR1生誕20周年を記念してYZF-R1 GYTRも発売。

YZF-R1 GYTR

GYTRというのは『GENUINE YAMAHA TECHNOLOGY RACING』の略で、要するに純正チューニングマシン。

・ohlinsのFGRTとTTX

・Brembo

・アクラフルエキ

・レース用チューニング

・カーボンカウル

・ヤマハレーシングのコーチング

などなどで限定20台で約500万円。限定R1と言っていいのか微妙なところですね。

さて津々浦々と書きなぐりましたがまとめると、変更点を見れば分かってもらえる通りYZF-R1は完全に『サーキット』にターゲットを潔いくらい絞ったモデルとなりました。

赤モデル

造りから見ても開発陣の発言から見てもそれが見て取れますね。

シート高なんて先代から一気に3cmアップでR6も真っ青な足つきです。

YZF-R1はレース規格に囚われずツイスティロード最速というコンセプトとして生まれたバイクだったものの、それが見事に大成功しレースの規格がR1に合わせてきた事でR1も方向性を変える事となった。

そしてそれはこの2015年モデルで決定的なモノに。

歴代R1

R1が作った分野をR1が終わらせる・・・皮肉な話というか何というか、考え深い事です。

一体どうしてこうしたのかプロジェクトリーダーの藤原さんはこう仰ってました。

プロジェクトリーダー藤原さん

「スピード違反が厳しくなって楽しめるシーンが無くなったから。」

・・・まあそうですよね。

もうSSを公道で楽しめる時代でもないし場所も無い。それに社会的責任が大きくなっている以上避けられない。

「これで峠を攻め込んで楽しんでね」

なんてもう今の時代口が裂けても言えないですし。

サーキット

「それならもういっそのことをサーキットで楽しむことだけを主観に作ったほうが良い」

となるのも分かる話。

ただこれは年を追うごとに需要が落ち込んで台数を見込めなくなった事も大きく関係していると思います。

スーパースポーツが予約しないと生産されずに買えなくなるなんて全盛からすると考えられない話。

さて・・・最後に

このR1を造られたプロジェクトリーダーの藤原さんは初代R1の頃からエンジン担当として深く関わってきた方です。

フェイス

そんな藤原さんがこのR1を造る際に決めたことがあります。

「No Excuse(言い訳しない)」

これは初代のコンセプト

「妥協しない」

から習ったもの。

開発コンセプト

方向性こそ違えどそんな初代から続く精神はこのR1にも受け継がれているんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2055/690/1150mm
シート高 855mm
[860mm]
車軸距離 1405mm
車体重量 199kg(装)
[201kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 200ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
[後200/55ZR17(78W)]
バッテリー YTZ7S(F)
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブRS4GP
※フルシンセのみ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.9L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア41
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 2,200,000円(税別)
[2,950,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内はYZF-R1M

年次改良

2018年
・クイックシフターのダウン対応
・ECUの見直し
・電子制御サスをEC2.0にアップ

系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)