R1100GS  -since 1994-

R1100GS

ここまで来ると当時を知らない人でも見た事あるような気がするのではないでしょうか。

先代までで「GSは人気があった」とか「凄かった」とか言ってましたが、それはオフロード界での話。

あまりオフに精通してない一般ライダーにとってGSというのはBMWのパリダカバイク程度の認知でした。(あくまでも今と比べたらね)

そんな層にまでGSの魅力を知らしめ認知度を大きく押し上げたのがこのR1100GS。

R1100GSエンジン

それまでのOHV空冷エンジンからOHC空油冷4バルブエンジンへ変更。ほかにも先代から改良が加えられたクロススポークにパラレバー、そして新しくテレレバーも採用。そして今ではGSのトレードマークとなった二重フェンダー。

DR800

最初にこれやったのスズキなんですけどね。キョエーって感じでスズキ自身が怪鳥って言ってます。いい加減このネタもしつこいか。

話を戻してパラレバーの話は先代でお話しましたので、今回はこの1100から採用されたテレレバーについて少し。

テレレバー

これはフロントサスペンションの話で上の写真を見てもらうと分かる通り三角形のアームが伸びてフレームとアンダーブラケットを結んでますよね。これがテレレバーです。

一般的というかみんなが知ってるのはテレスコピック方式。アウターチューブとインナーチューブという2つの筒を使う方式。望遠鏡で風景を見るテレスコープから名前を取ってます。

テレスコピック

意外と知られてないんですがこのテレスコピック方式を1番最初に作ったのもBMWなんですよ。そんなBMWがテレスコピック方式と別れを遂げるなんて面白い話ですね。でもそれだけBMWは足に対する研究やこだわりが凄いということ。

R1100GSネイキッド

さてそれに対してテレレバー方式っていうのはテレスコピックとマクファーソンストラット方式の二輪バージョンみたいなもの。車を知ってる人なら聞いたことがあると思いますが要するにサスペンションとダンパーを別体にしている。

ストラット方式

さて何でこんな方式を取っているかというと、みなさん体感してるので知ってると思いますが一般的なテレスコピック方式はブレーキングをするとサスペンションが縮んで前のめりになりますよね。ノーズダイブってやつですが、そうすると実質的にキャスターが立ってホイールベースが短くなり旋回性が上がります。

「コーナー手前でしっかり荷重を前に移して~・・・」

S1000RRフロントフォーク

とか聞きませんか?

それはそういうことなんですがこれには問題もあって、フロントが沈んでいるノーズダイブ状態っていうのはキャスター角(フロントフォークの角度)が立つので旋回性が増すぶん安定性に乏しくなるんです。

これは減速による力にサスペンションの働きが全て取られて緩衝する余力がなくなるから。原理がよくわからない人でもフルブレーキングで路面のギャップを拾ったらガツンと突き上げられ危ないというのは想像がつくと思います。

んでそれをBMWは何とかしようして生み出したのがこのテレレバー方式。上で言った様にノーズダイブする状況を想像してみてください。

テレレバーの動き

こうするとこでブレーキングでのフロントサスの沈み込みを抑えているんです。イヤ本当はこんな単純な動きじゃないんですけどね。ビーマー(死語)は怒らないでね。

terelever

ただもちろんこのテレレバー方式にも弱点があります。

まず第一にアームが増えるので重くなります。さらにアームがタイヤの上を通るので大きいホイールが履けません。オフロードにおいて大きいタイヤが履けないというのは結構致命的(それでも19インチ履いてるんだけどね)です。

じゃあ何でR1100GSはこのテレレバーを採用したのかって話だけど、1100GSはそれまでのGSとは全く異なるバイク。それまでのGSは未舗装をガンガン走るというマルチパーパスというよりビッグオフに近い感じだったんだけど、このR1100GSは未舗装から峠からツーリングから何でもござれの本当の意味でマルチパーパスになった。

R1100gS

これが今までオフロード車に興味のなかったツアラー層にまでウケて評価されました。

このおかげでGSは今では買って間違いない何でも熟せる旅バイクという地位を確立するに至ったわけです。

エンジン:空油冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:1084cc
最高出力:
80ps/6750rpm
最大トルク:
9.9kg-m/5250rpm
車両重量:240kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R100/80GS  -since 1987-

R100GS

二代目にあたるR80GSとR100GS。スラッシュが取れて今では馴染み深いGSという名前になりました。先代に比べタンクを大きくすることでラリーレイド感を演出。

当時BMWのパリダカマシンは市販車のR80GSではなくR100GSという特別な車両でした。そして今回そのパリダカモデルと同じ100GSが市販車となって登場というわけ。

この時BMWは既に83~85年三連覇を快挙を成し遂げてました。そんな三連覇マシンと同じバイクが出たんだからラリー好きが飛び跳ねて喜んだのは簡単に想像がつくと思います。

そしてそのR100GSで取り上げる部分があるとするならば他車に先駆けて装着されたこれまた今ではお馴染みのパラレバーでしょうね。

パラレバー

シャフトの下に平行して付いているリンクロッドがそうです。

シャフトドライブっていうのはメンテナンスフリーというメリットがあるんだけどコスト増はもちろんの事トルクリアクションというデメリットもあります。

シャフトドライブは遊びのあるチェーンドライブと違ってアクセルを開けると前ではなく後ろが起きてしまうんです。これをトルクリアクションといいます。

そしてそれを何とかしようとして編み出されたのがこのパラレバー。難しい話になるので割愛しますが、要するにリンクを追加しその力をフレームに逃してる。

「アクセルを開けるとリアが起きるなんて、開けるとリアが沈むチェーンとは逆で面白いな~。」

S1000RR

なんて思ってませんか?それよくある勘違いです。

チェーンドライブはアクセル開けたからといってリアは沈みません。あれはリアが沈んでるんじゃなくてフロントが起きてるんです。前が起きるのをリアが沈んでいると勘違いしちゃってるんですね。

そもそも加速でリアサスが縮んじゃうと転けちゃいます。だからスポーツバイクなんかはアンチスクワット効果を狙った設計をしてます。まあアンチスクワットはコーナリングの話だけどね。>>バイク豆知識:アンチスクワット

R100/80GS 
-since 1990-

1990R100GS

一緒に紹介しちゃうけど1990年にもモデルチェンジが入ってる。このモデルが80/100GSシリーズ最後でもありOHV最後でもある世代。後に再販されるほどの人気でした。

大まかな変更点としてはフレームマウントの角度調整機能付きのスクリーン、大型フェアリング、パイプガード、ダウンタイプのフロントフェンダー。そしてスポークながらチューブレスタイヤを装着可能としたクロススポークホイール。

もちろんパリダカモデルも登場。

R100GS PD

でも実はこの時BMWは既にパリダカから撤退してました。

じゃあなんでこんなバイクを出したのかというと、パリダカを連覇したR100GSに乗りたいという人と、パリダカで勝ちたいから売ってくれというプライベーターがいっぱい居たから。

GSの信頼性がどれだけ高かったかが伺える話ですね。

エンジン:空冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:980cc
最高出力:
60ps/6500rpm
最大トルク:
7.7kg-m/6500rpm
車両重量:210kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

R80G/S  -since 1980-

R80G/S

BMWベストセラーバイクであるGSの原点とも呼べるバイクがこのR80G/S。

最初はGSではなくG/Sと文字が分かれていました。GSというのはドイツ語でGelände Sport(ゲレンデシュポルト)の頭文字から取っていて、まあ要するに野山をスポーツって意味。

ちなみにRはRad(バイク)の意味。BMW Motorradって言いますよね。Rシリーズは伝統の水平対向二気筒でBMWの歴史とも言えるシリーズです。

このGSですが非常にリクエストが多かった車種でもあります。まあ当たり前ですけどね。BMWといったらまずこの世界で愛され続けるR1200GSです・・・だから正直いうと書きたくない。

まず最初に話は初代が出る少し前から始まります。

この初代GSが出るちょっと前の1970年代後半、実はBMWは瀕死状態でした。当時BMWの主要市場はアメリカだったのですがドル安によって販売面で大苦戦。

アメリカ貿易委員会

更にアメリカは追い打ちをかけるように1983年にはハーレー救済の一環として700cc以上の輸入二輪車に対し高い関税(45%)を課する事まで始めます。

だからもし80G/Sが生まれヒットしていなかったらBMWは間違いなく破綻していたでしょうね。イギリスの名門トライアンフはこのドル安&関税のダブルパンチに耐え切れずに破綻してしまいました。

R80GSプロトタイプ

ただBMWもこの80G/Sのヒットは偶然ではなく狙っていたようで、1970年代から入念に研究を重ね大事に作っていたようです。上の写真はプロトタイプ。

当時のBMWは日本でいえばメグロの様なメーカーで、官公向けやお金持ち相手の保守的なメーカーでした・・・今もあんま変わらないか?

R

そんなBMWが泥が似合う直線的な無骨バイクを出してきたから世間は少し騒ぎました。

でもこれにもちゃんとワケがあります。突拍子もなく出したわけじゃありません。

R80G/Sカタログ

この頃のBMWはISDEで活躍していたんです。

※ISDEというのはInternational 6 days Enduroの事で文字通り6日間にも及ぶ過酷なラリー。一般的にはシックスデイズと呼ばれています。

ISDT BMW

そんなシックスデイズで活躍していたBMWのワンオフチューニングモデルの市販バージョンがこの80G/Sというわけ。当時ビッグオフといえばXT500を始めとした500cc前後が基本だった中で二気筒797ccは相当なパワーオフ。圧倒的な速さを誇っていました。

1980R80

ただこのG/Sが世界から認められたのはISDE直系レプリカでハイスペックながら車重が186kgしかなかった事が大きい。

ちなみにラリーを知らない人でも知ってるラリーであるパリダカでも勿論優勝しました。

パリダカモデル

その記念に発売された32LビッグタンクのR80G/S PARIS DAKAR。

このバイクの登場によってパリダカも多気筒化が進みました。それくらい速かった。

エンジン:空冷4サイクル水平対向2気筒
排気量:797cc
最高出力:
50ps/6500rpm
最大トルク:
5.8kg-m/5000rpm
車両重量:186kg(装)

種類一覧
R80G/S1980年
R80G/S
R100GSパリダカ1988年
R100/80GS
R1100GS1994年
R1100GS
R1150GS1999年
R1150GS
2004R1200GS2004年
R1200GS
R1200GS2013年
R1200GS

MONSTER750シリーズ -since 1996-

モンスター750

勝手に纏めた空冷MONSTER三兄弟の最後にご紹介するのは次男坊の750シリーズです。

出たのは三兄弟の中で一番最後。

革命をもたらした長男M900、コスパの高さから人気が出てドゥカティを救った三男M600、そして遅れてやってきた次男M750は・・・・残念ながら人気が出ませんでした。

スペックでは兄に負け、コスパでは弟に負けるという少し仕方ない面もありますが、消費者からも中途半端だとして売れず。

2001年には他の兄弟に習ってFI化でM750I.E.となり、2003年には排気量のアップでM800となりました。

M800

なりましたが・・・・

コレじゃいかんという事で05年に兄弟とは別に特別なモデルチェンジが入りました。

05年にS2Rと名前を改め、片持ちスイングアームと片側2本出しマフラー、5本スポークホイールなどS4R(水冷MONSTER)に準ずる戦闘的なMONSTERに大変貌。

S2R

900の方でも話したけど、元々このデザインはそのS4Rという水冷ジャジャ馬MONSTERに合わせたデザインだったから、その見た目に空冷2バルブエンジンってのは非常にアベコベなんだけど、そもそもMONSTER自体が良い意味でアベコベな車体設計だった事を考えると正しい方向性だね。

先鋭と旧態が入り混じった正にモンスターの様なS2Rは非常に人気が出ました。その為か翌年には長男までもがS2R化され、この次男は区別のため翌年からはS2R800と名前に排気量が付く事に。芸人の劇団ひとりさんも乗ってるみたいですね。

苦節十年目にしてやっと次男の時代が来た・・んだけどそんな人気とは裏腹にS2R800はドゥカティ全体が規制を機にしたプラットフォームの維新をする事になっていたため発売されていた期間は5年とMONSTERとしてはそんなに長くない。

そんなS2Rの後継として2010年に出たのが維新された新世代のM796

M796

基本的には弟分のM696と同じだけど次男はS2Rの後継アピールの為か片持ちスイングアームになっています。エンジンは+100ccされたロングストロークエンジンで万能型。796だけど排気量は803ccとちょっとややこしかったりする。

このM796は弟の696と並んで第二世代空冷MONSTERが途切れる最後まで発売されました。と言っても2013年までと短い上に最初で最後なわけだけどね。

空冷MONSTERが絶滅してから4年が経った2017年、M797として再び空冷MONSTERが復活。

M797

Monsteristi(モンスターリスティ ※MONSTERに魅せられた人の事)なら気付くと思いますが、トレリスフレームがアルミダイキャストとのハイブリッドフレームから従来のトレリスアピールバッチリなフレームと両持ちスイングアームに戻りました。

M797トレリスフレーム

エンジンはネオレトロブームに乗っかって40年ぶりに復活したスクランブラーの物。ユーロ4(環境規制)に対応した76馬力で装備重量186kg。といってもコレもともと先代の796に使われてたエンジンなんだけどね。だからコレも797と言ってるけど803ccです。

M797トレリスフレーム

スクランブラーは縮小版の400があるからこの797にそのエンジン積んで400がまた出るかもね。

なんか駆け足過ぎてモデル紹介になってない気がしますが最後に・・・

MONSTERがどれだけ凄いバイクかを表すとした場合いろんな言い方があります。

「916と並んで最も成功したバイク」
「DUCATIで最も売れたバイク」
「DUCATIを救ったバイク」
「欧州でネイキッドというカテゴリを蘇らせたバイク」

でもMONSTERの凄さを表すのに最も簡単明瞭な言葉があります。それは

M797エンジン

「トレリスフレームのネイキッド=MONSTER」

という二度と覆る事のない既成事実。

誰が見てもそう思う。好きとか嫌いとか定番といった次元じゃない。

エンジン:空冷4サイクルSOHC二気筒
排気量:748[803]cc
最高出力:
62[76]ps/7500[]rpm
最大トルク:
6.2[6.93]kg-m/6850[5750]rpm
車両重量:178[186]kg(乾) [装]
※スペックはM750 []内はM797

系譜図
M9001993年~
M900の系譜
M6001994年~
M600の系譜
モンスター750ie1996年~
M750の系譜

【関連車種】
CB650F/CBR650Fの系譜FZ6/XJ6/FZ8の系譜GSX-S750の系譜Ninja650/Z650の系譜Z900の系譜

M600シリーズ -since 1994-

モンスター600

900の系譜で

「MONSTERが大ヒットしてDUCATIを救った」

と言ったけど、その中でも一番貢献したのは実は900ではなくジュニアモンスターまたはベイビーモンスターの愛称で親しまれたこのM600だったりします。

ただでさえお買い得だった900の更なるお買い得版として一年後に登場した三男坊。足つきの良さも相まって老若男女問わず人気が出て非常に息の長いモデルとなりました。

モデルチェンジの流れは基本的に兄弟車とほぼ同じで、02年にはインジェクション採用と排気量も618ccアップで通称M620I.E.に。

モンスター620

馬力が77馬力にまでアップされ非常に人気が出たモデル。

そして一般的に第一世代最後といわれるEURO3(規制)対応の06年発売M695。

モンスター695

細部の不具合潰しに加えエンジンの排気量が695ccにまでアップされたんですが、先代よりも更にショートストローク化された事でスポーツ性が向上。

何故かこの三男坊だけはS2R化(片側2本出しマフラーなど)されなかったため台数はそれほど出なかった。なんでしなかったんだろうね。

696イラスト

ちなみにイタリアでは白バイとしても活躍していました。さすが母国。

少し話が反れますが先代の600/620そして今紹介した695をベースに作られたのが95年から発売されたMONSTER400です。

モンスター400

~96年までの前期型(キャブ)と00~08年の後期型(インジェクション)となってます。排気量を見てもらえれば分かる通り400SSと共に日本やフィリピンといったアジア向けに用意された普通二輪で乗れるMONSTER。

それまでもドゥカティは400F3や400SSといったバイクも出すには出してたけど本土イタリア以上にスパルタンなイメージが出来上がっていた国内においては

「こんなのドゥカティじゃない」

なんて言われてた。当然ながらこれはMONSTER400でも。でもこれMONSTERに限っていうと話が変わってきますよね。

900も母国イタリアをはじめとした欧州でも最初は

「こんなのドゥカティじゃない」

なんて言われたわけですから。

MONSTER400

残念ながら4メーカーのお膝元ということもありイタリアのように大ヒットとはならなかった。

でもMonster900誕生の経緯で話した通りMONSTER最大の武器であり最大の功績はドゥカティの敷居を下げた事。端的に表すなら”日常で楽しめるイタリア車”というのがMONSTER。

そう考えた時、400は確かに6xxのスケールダウンモデルで決して速いとは言えなかったけど、日本の道路事情を考えたら最も日本に合ったMONSTERはこの400だったのかもしれないね。

ハンドリングは他のモンスター同様にスポーティなわけだし。その代わりネイキッドにあるまじき切れ角の無さだけどね。

モンスター(特に古いタイプ)はハンドルの切れ角もそうだけど形状も凄く独特で初めて乗ったら絶対に

「何か違う・・・」

と思うハズ。

話を戻しましょう・・・戻しましょうと言っても三男坊としては最後のモデルになる08年に出たM696。

モンスター696

新世代のジュニアモンスターとして見た目が大きく代わりました。スリッパークラッチ(APTC)の採用やエンジンの腰上(ヘッドやシリンダー周り)の改良で80馬力にアップ。

新生モンスターの中でもM696は一番最初に出た事もあって色んな物議を醸しました。異型ヘッドライトなんかもそうだけど一番は象徴でもあったトレリスフレームが大きく変わったこと。

696イラスト

先代がシートまで綺麗に繋がっていたのに対しこの696(というかここからのMONSTER)は前半はトレリスフレームだけど後ろ半分はアルミダイキャストというハイブリッドに。要するにトレリスフレームアピールが少し弱くなりました。

新生モンスター

「DUCATIといえば綺麗なトレリスフレーム」

って考えのドゥカティスタは多いしMONSTERは長いことデザインを変えずに来てたわけだからそう思うのも無理ないけどね。まあしかしこれはスーパーバイクからのフィードバックで作られたハイブリッドフレームなので優れているのは疑いようもない事実ですし、市場でも受け入れられたみたいです。

厳密にいうと三男坊にはもう一つ659というモデルがありました。日本には入ってきてないけどね。

モンスター659

これは659ccに落とされた696みたいなバイクで主にオーストラリアで2013年まで発売されていました。

なんで659なのかというとオーストラリアでは免許取得後の一年は660ccを超えるバイクに乗れないからです。だからわざわざ用意したというわけ。

オーストラリアは日欧米に比べそれほど大きな市場ではないんですが、それにも関わらず用意したのはやっぱりドゥカティにとって空冷MONSTERというのは売れ筋であり、広告塔であり、エントリーモデルとしてライダーに最も歩み寄ったバイクであるという事の証でしょう。

まして6xxシリーズはコストパフォーマンスや足付きの良い優れた末っ子だったからね。

エンジン:空冷4サイクルSOHC二気筒
排気量:583[696]cc
最高出力:
52[80]ps/9000rpm
最大トルク:
4.9[7.0]kg-m/7750rpm
車両重量:174[161]kg(乾)
※スペックはM600 []内はM696

系譜図
M9001993年~
M900の系譜
M6001994年~
M600の系譜
モンスター750ie1996年~
M750の系譜

M900シリーズ -since 1993-

M900

ドゥカティ初のネイキッドとなるモンスター900が誕生したのは1993年の事・・・なんですが少しモンスターが生まれるに至った経緯をお話ししたいと思います。

今でこそマルチパーパスのムルティストラーダ、マッスルクルーザーのディアベル、最近ではネオレトロのスクランブラーなど色んなバリエーションのバイクを出しているドゥカティですが、モンスター900を出すまでは基本的にフルカウルのスポーツバイクしか作っていませんでした。だから”ドゥカティ=スーパースポーツメーカー”みたいな感じだったわけです。

900SS_750F1

そんな中で登場したネイキッドとして出たモンスターはとてつもない批判に晒されました。

元々ドゥカティが好きだったドゥカティスタからは

「スポーツメーカーだったのに失望だ」

と蔑まれ、他からは

「奇をてらった変な形のネイキッド」

と散々な言われようで誰からも理解されず。造りから見ても851/888ベースのトレリスフレームに900SSのエンジンを積むというよく分からない構成。

ドゥカティが分からない人の為にアベコベさを日本車で例えるなら、GSX-R1000の高剛性フレームにGSX1000Sカタナの油冷エンジンを積んだネイキッドって感じ・・・例えが下手ですいません。

M900青

まあとにかくスポーツバイク専門だったドゥカティが性能も見た目もアベコベで意味不明なバイクを出したわけですが、当然ながら意味もなく出したわけではありません。

EUでも80年代に日本でバイクブームが起こったように日本メーカーの大型スポーツバイクが一世を風靡していました。GSX-RにVFにFZRにGPZに・・・しかしトンデモナイ速度が出る大型スポーツバイクということで事故の件数も増加。それにより保険会社はスポーツバイクの保険料をドンドン上げていきました。

この影響を最も受けたのはスポーツバイクしか作ってなかったドゥカティ。窮地に陥ったドゥカティは閃きました。

「スポーツバイクは保険料が高くて駄目ならスポーツバイクっぽくないスポーツバイクを作ればいい」

そうやって生まれたのがモンスター900です。

空冷エンジンで、ポジションも凄く起きてて、芋虫みたいに長いタンクとシートのネイキッド。そういった事から

「モンスターはネイキッドだし空冷エンジンだからスポーツバイクではない」

という評価を保険会社から受けた・・・正にドゥカティの思惑通りの展開。

空冷といえど元を辿ればスーパーバイクに使われていたエンジンを中低速よりに改良したもので街乗りから峠まで十二分なポテンシャル。そしてフレームも元々スーパーバイクに使われていた物がベースだからハンドリングはとってもクイックな今でいうストリートファイター。

M900黄

当時はスポーツバイクといえばカウルの付いたバイクが当たり前でネイキッドは絶滅していた時代。そんな中でネイキッドながらスポーツを味わえるという口コミが広まり”(費用面から)スポーツバイクに乗りたいけど乗れない”という層をガッチリ獲得することに成功。

ドゥカティにあるまじきお買い得車という事もあり瞬く間にイタリアにおいて日本車を抜き去るほどの販売台数、そして2007年モデルまでの時点で15万台を超える出荷台数を記録。街中を走れるドゥカティのスポーツバイクとしてモンスターは定着しました。

モンスターを出すにあたって最大の難関だったのは当時親会社だったCAGIVAを説得することだったようだけど、ドゥカティの売上の半数以上を占めるまでに至ったんだからCAGIVAも喜んだでしょうね。

ミゲール・A・ガールズィ

ちなみにMONSTERの生みの親である工業デザイナーはミゲール・A・ガールズィ(Miguel_Angel_Galluzzi)というアルゼンチン出身のお方。

MONSTERというとドゥカティのトレードマークでもある剥き出しのトレリスフレームが特徴的だけど、ミゲールさん曰く851のフレームを選んだのは自分の思い描くタンクを作るために一番邪魔にならないフレームだったからだそう。つまりMONSTERのトレードマークはフレームじゃなくてタンクなんだね。

M900ラフデザイン

鬼才として有名なタンブリーニさんもそうだけど、向こうはデザインも中身も1人でパッケージングするのが結構当たり前だったりするわけです。イタ車といえば芸術的な物が多いイメージがありますが、それにはこういった事から来てる面もあるでしょうね。

ミゲールさんはMONSTERの後も各メーカーを転々としていて、最近で言うとApriliaの三眼RSV4(2008)もこの方のデザイン。

03

他にはヤマハのコンセプトであるコレもミゲールさんのデザイン。

さっさと歴代モデルを紹介しろと怒られそうなのでいい加減900に話を戻すと、先ず最初に出たのは上で紹介している93年の初代MONSTERことM900です。欧州でネイキッド革命をもたらしたバイク・・・とその前に、知ってる人も多いと思うけどMONSTERには色々グレードがあります(ありました)。

SHOWA/OHLINSサスやビキニカウルといった装備のトップグレードはSまたは+、そしてメインのノーマルグレード、廉価版のDark。日本人ならこの3つだけ覚えておけば大丈夫。

そしてモチベーションの都合で今回グレード紹介や細かいモデルチェンジは割愛させてもらいます。ごめんなさい。

革命をもたらしたM900に初めて大きく手が入ったのは2000年でFIになりました。分けるためにM900I.E.とも言われています。

00年式M900

このモデルからタコメーターも装着。更に翌2001年にはフレームがST系へと変更された事で少しワイドになり安定性が向上。

そして次のモデルチェンジは2003年で排気量が992ccまで上がってM1000となりました。

m1000

これは兄弟車であったSSシリーズがモデルチェンジで1000になったから。馬力も大きく上がって94馬力となったわけですが、日本向けはほぼSモデル(SHOWAサスペンションの上位モデル)だったようです。

そしてそして見た目が大きく変わった06年のS2R1000。

s2r1000

片持ちスイングアームに片側二本出しマフラーと戦闘的なルックスになりました。もともとこれはS4R(ハイスペックな水冷モンスター)向けだったデザインでしたが弟分の800に続く形となりました。

そしてそしてそして09年に16年目にして初のフルモデルチェンジ。エンジンのみならずフレームも新しくなったM1100になります。

s2r1000

排気量が更に上がって1078ccになり異型ヘッドライトや片持ちスイングアームやトラスフレームとアルミダイキャストのハイブリッドフレームとなった新世代モンスター。

そしてそし・・・せっかくフルモデルチェンジしたのに勿体無い気がするけど11年から13年まで発売されたM1100EVOが長男坊最後のモデルとなります。

s2r1000

空冷SOHC2バルブながら100馬力を発揮するEVOエンジンが積まれクラッチが湿式のスリッパークラッチとなり電スロ化され4段階のトラクションコントロールシステムも採用。

最後にして最高のスペックを引き下げた空冷モンスター。

てっきりドゥカティの空冷MONSTERはこの路線でいくのかと思いましたが、このモデルを最後に長男坊は一足先に生産終了。

s2r1000

やっぱり水冷MONSTERとの住み分けが難しかったのか。規制の問題が一番でしょうけど。

エンジン:空冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:904[1078]cc
最高出力:
67[100]ps/7000[7500]rpm
最大トルク:
8.3[10.5]kg-m/6000rpm
車両重量:185[169]kg(乾)
※スペックはM900 []内はM1100EVO

系譜図
M9001993年~
M900の系譜
M6001994年~
M600の系譜
モンスター750ie1996年~
M750の系譜

ビモータの全シリーズ

※何処からから何処までを市販車と言っていいのか微妙なので、グレードなどは除外しナンバリングで分けさせてもらいました。

※価格はグレードや物価に左右されるので目安程度に考えておいてください

HB1 -since1973-

1975HB1

すべての始まりHB1。

CB750FOURのエンジンをスチールパイプフレームに積んだモデル。

生産台数10台

YB1 -since1974-

1975HB1

TZ250/350のエンジンを搭載したモデル。

クロモリ鋼管のダブルクレードルフレームの斬新さでbimotaの名を業界に知らしめる。

生産台数12台

SB1 -since1976-

SB1

TR500のエンジンを積んだレーサー。

イタリアスズキの要請で造られたイタリア選手権用のマシン。

生産台数50台

SB2 -since1976-

SB2

GSのエンジンを分割式フレームに搭載したbimota初のコンプリート公道マシン。

コンセプト段階では燃料タンクがエンジン下だったが、流石に却下されカウル一体型のアルミタンクに。

約200万円/生産台数170台

YB2 -since1977-

YB2

YB1の改良モデル。

生産台数15台

KB1 -since1978-

KB1

Z1000のエンジンをツインスパーの様なパイプフレームで囲ったモデル。

後期モデルはZ1000MKIIのエンジンを使用。

約210万円/生産台数827台

YB3 -since1978-

YB3

TZ250/350エンジンを積んだレーサーの最終型。

1980年、ジョン・エクロードによって350ccクラス世界チャンピオンに輝く。

生産台数15台

SB3 -since1980-

SB2

GS1000のエンジンをSB2と同じように分割式フレームに搭載したモデル。

長距離もこなせるように大型カウルが付いているのが特徴。

約250万円/生産台数402台

KB2 -since1981-

KB2

Z600/550/500/400のエンジンを搭載したモデル。

フルトラス同軸ピボットフレームのラストモデル。

約230万円/生産台数171台

HB2 -since1982-

KB2

CB900F/1100Fのエンジンを搭載したモデル。

量販体制を目的としたアルミ削り出しピボットフレーム共有化の始まり。

約250万円/生産台数193台

KB3 -since1983-

KB2

Z1000Jのエンジンを搭載したKBシリーズ最後のモデル。

リベットで一つにする合わせホイール以外はHB2とほぼ同じ。

約250万円/生産台数112台

SB4 -since1983-

SB4

GSX1100S KATANAのエンジンを搭載したモデル。

このモデルからハーフカウルモデルが設定。

約260万円/生産台数272台

HB3 -since1983-

HB3

CB1100Fのエンジンを搭載したモデル。

共有化のラストモデルであり、HBシリーズのラストモデル。

約280万円/生産台数101台

SB5 -since1985-

SB5

GSX1100Eのエンジンを搭載したモデル。

タンブリーニ在籍時代のラストモデル。

約200万円/生産台数153台

DB1 -since1985-

DB1

750F1のエンジンを搭載したモデル。

直線基調のトラスフレームとそれを隠すフルカバーカウルが特徴的なマルティーニbimotaの一作目。

約180万円/生産台数669台

YB4 -since1985-

YB4

FZ750のエンジンを積んだモデル。

TT-F1世界チャンピオンに輝いたYB4Rと同じフレームを持つレーサーレプリカ。

約300万円/生産台数318台

YB5 -since1986-

YB5

FZ1200のエンジンを積んだモデル。

YB4より後なものの、パイプフレームとアルミピボットなのを見ても分かるようタンブリーニ時代の部品を一掃するために造られた。

約200万円/生産台数208台

YB6 -since1987-

YB6

FZR1000のエンジンを積んだモデル。

フレームを含め、エンジン以外はYB4と共通。

約230万円/生産台数720台

YB7 -since1988-

YB7

FZR400のエンジンを積んだモデル。

日本のために用意した世界チャンピオンマシンの400cc版。

約220万円/生産台数321台

YB8 -since1989-

YB7

FZR1000のエンジンを積んだモデル。

FZR1000のモデルチェンジに合わせて造られたYB6の後継モデル。

約280万円/生産台数573台

YB9 -since1990-

YB9

FZR600のエンジンを積んだモデル。

YB7と同様のフレームを使ったスーパースポーツなもののbimotaとしては珍しい二人乗り仕様も登場。

約230万円/生産台数1021台

TESI 1D -since1990-

テージ1D

851のエンジンを積んだハブセンターステアリングのモデル。

発案者だったマルコーニがチーフエンジニアになった事で世に出ることに。

約460万円/生産台数417台

YB10 -since1991-

YB10

FZR1000後期のエンジンを積んだモデル。

基本性能は先代YB8と同じでカウルとポジションを見直し。

約260万円/生産台数260台

YB11 -since1991-

YB11

YZF1000Rサンダーエースのエンジンを積んだモデル。

YBシリーズはこのモデルをもって終了。

約280万円/生産台数650台

DB2 -since1993-

DB2

900SSのエンジンを積んだモデル。

db1に続きこのモデルでも日本のために400(400SS)が用意された。

約180万円/生産台数771台

SB6 -since1994-

SB6

GSX-R1100の水冷エンジンを積んだモデル。

真っ直ぐピボットまで伸びている斬新なフレームが評価され、1144台(※無印グレード)とbimota史上最大のヒットとなった。

約260万円/生産台数1744台

SB7 -since1994-

DB7

GSX-R750のSPエンジンを積んだモデル。

SB6の750版で、SBKへの出場を睨んで製作したものの結局参戦には至らず。

約280万円/生産台数200台

DB3 -since1995-

DB3

DB2と同じ900SSのエンジンを積んだモデル。

楕円パイプアルミフレームと独創的なデザインが話題に。

約190万円/生産台数454台

BB1 -since1995-

BB1

F650のエンジンを積んだモデル。

楕円パイプフレームとリンクレスサスペンションのホットシングル。

約160万円/生産台数524台

500-V due -since1997-

500Vドゥエ

エンジンまで設計した最初で最後のフルオリジナル車。

しかし完成度が低くbimotaを倒産させてしまう。

約220万円/生産台数340台

SB8 -since1998~2004-

SB8

TL1000Rのエンジンを積んだモデル。

アルミとカーボンのハイブリットフレームが特徴的で評価も高く、経営再開すると真っ先に復刻されたSBシリーズの最後。

約390万円/生産台数285台

DB4 -since1999-

DB4

DB2/3と同じ900SSのエンジンを積んだモデル。

実質的にDB3のフルカウルバージョン。

約180万円/生産台数394台

TESI 2D -since2005-

テージ2D

1000DSのエンジンを積んだハブセンターステアリングの二代目。

細部が違うものの、基本的にヴァイルスのOEM。

約500万円/生産台数25台

DB5 -since2005-

DB5

MONSTER100やMultistrada等に使われているDSエンジンを積んだモデル。

新たに指揮を取ることとなったロビアーノによるもので、機能美と空力のバランスが高く、数々のデザイン賞を受賞。

約290万円/生産台数225台

DB6 -since2006-

DB6

同じくDSエンジンを搭載したDB5のネイキッドバージョン。

約300万円/生産台数131台

TESI 3D -since2007-

テージ3D

上記と同じく1100DSのエンジンを積んだハブセンターステアリングの三代目。

bimotaオリジナルモデルでスイングアームがトラス構造になっているのが特徴。

約450万円/生産台数314台

DB7 -since2007-

DB7

1098のエンジン(テスタストレッタ・エボルツィオーネ)を積んだモデル。

削り出しアルミプレートでエンジンを補強しつつパイプレームで結びつけセミフレームレスに。

約350万円/生産台数346台

HB4 -since2010-

HB4

CBR600RRのエンジンを積んだモデル。

HB4と呼ばれているものの正確にはMoto2(600RRエンジンのワンメイクレース)のbimotaマシン。

生産台数10台

DB8 -since2010-

DB8

1198のエンジンを積んだモデル。

さしずめトラス式ユニットプロリンクスイングアームが特徴的(DB7含む)でドカとホンダのハイブリットの様なスーパーバイク。

約483万円/生産台数113台

DB9 -since2011-

DB9

同じく1198のエンジンを積んだモデル。

外装が壊れたDB7を技術ディレクターだったアクワディバが弄ってストファイにした事がキッカケで誕生。

約537万円/生産台数45台

DB10 -since2011-

DB10

ムルティストラーダ1100EVOのエンジン(デスモドゥエ・エボルツィオーネ)を積んだモデル。

bimotaとしては初となるモタードバイク。

約285万円/生産台数38台

BB2 -since2012-

BB2

S1000RRのエンジンを積んだモデル。

コンセプト止まりで発売されることは無かった。

生産台数1台

DB11 -since2012-

DB11

ディアベルのエンジン(Testastretta 11°)を積んだモデル。

別に設けられたVLXとグレードはなんとスーパーチャージャー付き。

約455万円/生産台数9台

DBX -since2012-

DBX

スムルティストラーダ1100EVOのエンジン(デスモドゥエ・エボルツィオーネ)を積んだモデル。

初のモタードだったDB10に続いて投入された初のオフロード車。

約483万円/生産台数16台

DB12 -since2012-

DB12

ディアベルのエンジン(Testastretta 11°)をDB9のシャーシに積んでツアラーに仕上げたモデル。

生産台数1台(今の所ショーモデルのみ)

BB3 -since2013-

BB3

S1000RRのエンジンを積んだモデル。

アルミ削り出しスイングアームを奢っているウルトラスーパーバイク。

約732万円/生産台数26台

INPETO -since2015-

IMPETO

ディアベルのエンジン(Testastretta 11°)を積んだモデル。

DB9のシャーシにスーパーチャージャーを突っ込んだネオレトロ。

価格/生産台数不明

TESI H2 -since2020-

H2エンジンを積んだTESIというKAWASAKIとの業務提携により実現した夢のようなコラボモデル。

8,668,000円(税込)

KB4 -since2020-

Ninja1000のエンジンを積んだモデル。

Z1000のエンジンで造られたKB1の現代版のようなデザインに加え、スイングアームはなんと丸ごとアルミ削り出し。

4,378,000円(税込)

文献:東本昌平RIDE 93 (Motor Magazine Mook)|L’era d’oro Bimota

系譜図
HB1

bimotaの生い立ち

SB2

悲願だった初の市販車
-1970年代-

KB2

タンブリーニの離脱
-1980年代前半-

db1

塗り変えたマルティーニ
-1980年代後半-

TESI

意欲が招いた倒産
-1990年代-

DB5

フレーム屋に立ち返ったbimota
-2000年代~現在-

ビモータの全モデル

補足
bimotaの全モデル

YZF-R6(BN6) -since 2017-

2017YZF-R6

「Respect R World」

規制に伴い9年ぶりのモデルチェンジとなり立ち位置が大きく変わった六代目YZF-R6のBN6型。

BN6黒

・ABS標準装備

・6段階トラクションコントロールシステム

・クイックシフター(UPのみ)

・3種類の出力モード切替

・R1と同型の大径フロントフォーク(φ43㎜)

・R1と同型のブレーキ(φ320mm)とフロントホイール

・アルミ化された新型燃料タンク

・新開発のMgシートフレームで約20㎜スリム化

などなど足回りと電子制御を中心とした強化が入っています。

2017YZF-R6フューチャーマップ

もともと電スロをいち早く採用していたからABSやトラコンはの採用はかなり遅かったと言っていいほどなんだけど、これはどうも市場の縮小もありますが先代がモデルチェンジせずともすこぶる好評だった事も関係していたようです。

カタログスペックとしてはEURO4(排ガス規制)の関係で118馬力と+2kgとなっているわけです・・・が、それ以上に注目したいのが相変わらずデザイン。

このYZF-R6は従来の路線とは真逆ともいえる方向へ大変貌しました。

2017YZF-R6サイド

YZF-R1と同系の新設計のカウルデザインによりCdA値(空気抵抗)がなんと8%も向上し最高速アップ。

ちなみにR1と同様に光ってる部分はポジションライトでアッパーカウルの下に付いてる丸いレンズが本体。左がロー、右がハイ。当然ながらヘッドライトのみならずウィンカーまでもがLEDとなってます。

2017YZF-R6ヘッドライト

睨んでいる様に見える顔ですが、これは『白面の者(うしおととら)』から取ったんだそう。

それでどうして真逆なのかって話ですが、系譜を見ると分かるように

「R6はR1の弟分ではない」

という事を誇示するように似ていないデザインだった。

壁紙

しかし今回それが大きく変更されR1に準ずる様なデザインに。特にリア周りは特にR1と区別が付きにくいほど。

リア周り

開発責任者の平野さんいわく

「R1に抜かれたと思ったらR6だった」

という思惑が込められているんだそう。やられた方はなかなか屈辱的ですね。

それでR6がR1と親しいデザインになった理由なんですが、これはR1とR6しか居なかった状況からYZF-R1~YZF-R25まで(海の向こうではR125まで)のYZF-Rファミリーになったから。

ヤマハ語でいう

『R-DNA(プラットフォーム化)』

で展開する様ために関連付ける必要があったからR1ともR25ともデザインから改められたという話。

2017YZF-R6メーター

これにはミドルスーパースポーツのブームが去ったことも影響しているかと思います。

R6は歴代累計16万台ほど生産したようなんですが、今やそれが嘘のように閑古鳥が鳴く始末でライバルたちもバタバタと倒れゆく時代。

そんな中で存続するだけでなくモデルチェンジに加え世界市販600レースへのワークス再参戦という逆張りに近い行為が出来たのもファミリーに一翼を担うようになったおかげでしょう。

WSS2017R6

そのおかげというべきか案の定というべきか600レースは国内外問わずYZF-R6が猛威を奮ってたりします。

『Furious Track Master(猛烈なサーキットの怪物)』

という開発コンセプト通りサーキットで傍若無人っぷりを発揮しているわけですね。

ただ残念ながらもうクラスが完全に下火というかもうレースでしか存続してない事もあり2020年モデルがEURO5規制の関係で最後な模様。後継の話もいまの所なし。

まあモデルチェンジした翌年の2018年ですら424台と大型一位だったバイクの1/10しか売れてないですからね。開発費が掛かる類のバイクなのにこれじゃ存続も無理な話。

そのため生産も期間を絞った受注生産に近い形なので欲しい人は店頭に並ぶのを待つのではなく今すぐ予約しましょう・・・と購入を煽りたい所ですが価値観の押し付けの様な話を批判覚悟で少し。

2017YZF-R6白

正直に言うと(先代含む)R6はオススメしません。

オーナーからの苦情を覚悟で言わせてもらいますが、もし周りでR6を

「言われるほどキツくない、乗り辛くない」

などと言ってる人が居たらそれは間違いなく納車されたてで浮かれている人か、サーキット沼にハマって頭のネジが2~3本取れてる人です。

LED

スーパースポーツというのはR6に限らず基本的にサーキット走行ありきなので日常的な走りは苦手です。

・キツいポジション

・高すぎる回転数

・硬いサスペンション

などなど。

ただメーカーも数を売らなければいけないので(一部のホモロゲや外車SSを除き)可能な限り一般ユーザーが使うであろう用途も考慮しているのが実情。

しかしR6の場合それがほとんど無い。

このスーパースポーツは外車も真っ青なくらい

「公道のための1を捨ててサーキットの0.1を取った」

といえるモデルなんです。ポジションやシート高などがよく言われていますね。

どうしてそうなのかといえばこれまでの系譜でも話した通り

LED

「走りで存在感を出す」

という事に重きを置いているから。

本当にトラックに全振りしているスーパースポーツしてるバイクだから

「ルックス買いなら止めといたほうがいいよ」

とアドバイスします。

ただ勘違いしてほしくないのは

「R6はピーキー過ぎてお前には無理だよ」

という事が言いたいわけではありません。

2020年式

むしろ反対でR6はライダーの入力に正確に応えてくれる本当にピュアなスーパースポーツ・・・だからこそレーサーでもなんでもない一般的なライダーには向いていない。

メーカーも一般ライダーに買ってもらうために街乗りしてる写真を出したりキャッチコピーでも

『場所を問わないエンターテイメント』

とかやってますがハッキリ言って無理がある。

もちろんツーリングや街乗りで使うのも盆栽するのも可能だし個人の自由なんだから大いに結構。でもそういう付き合い方だと長く付き合っていく事は難しいと思います。

BN6グレー

よく大型初心者の人が想像から

「公道でSSは難しいですよね」

なんて言ったりしていますが意外とそうでもなく乗れてる気になれる事は可能だったりする。

でもR6はちょっと例外で

『下スカスカで上スカスカで最上がドッカン』

だから公道でスポーツしようにもリッターSSより難しい・・・というか無理。そして気持ちよくスポーツ出来ないフラストレーションにクラスでも抜きん出たキツいポジションや足つきや排熱など公道ではネガでしかない部分ばかりが気になり始めて嫌になってくる。

早い話がバイクに乗らなくなる要因がこれでもかというほどあるからオススメしないって話なんですが、ここまで言われてもなお

「それでも一番カッコ良いR6が欲しい」

と思うなら買えばいいです。

2019年式BN6プライス

ただし一つだけどうしても聞いて欲しい事があります・・・それは

「長く付き合っていきたいと思うなら絶対に一度はR6でサーキットを走って」

ということ。

R6でサーキットを走れば自分が今どの程度のライディングスキルを持っているのか否が応でも分かります。全然乗れてない事に落胆すると思います。

ただそれと同時にほんの一瞬かもしれないけど公道の1を捨てサーキットの0.1を取った要素

『Furious Track Masterの片鱗』

を感じ取る事も出来る。

2017YZF-R6壁紙

それを知ってたとえ年に数回だろうとサーキットに行って少しずつでもR6の本領を発揮できるようになれば

「カッコいいミドルSS」

という表面的なR6の魅力だけでなく下手くそなら下手くそと、上手いなら上手いと誤魔化さず走りで応えてくれる

「正直者なミドルSS」

という内面の魅力にも気付ける。だからサーキットを走って欲しいんです。

BN6メーター

これはトラクションコントロールというアシスト機能が付いたこの代でもそう。

トラコンは”甘えの装備”とか言われるんですが、このR6にはIMU(慣性計測装置)が付いておらず6段階も細分化された”自分で設定する必要がある調整機能”になっている。

これがどういう事かと常に自動でベストな補正をしてくれるわけではないという事。

つまり

「いま自分がどれくらいの制御が必要なのか」

己で見極めて走る必要があるんです。

トラクションコントロール

要するにクラストップの速さを持つR6だけど、丸投げで速く走れるSSでも勘違いさせてくれるSSでもないという事。

公道ではあまり見ないのにサーキットにいくとよく居る理由、優しくないのに絶対に手放ない人がよく居る理由もここにある。

2019年式BN6壁紙

R6の魅力というのはカッコよさや超高回転という表面的なものではなく

『何処まででも切磋琢磨していける関係性を築ける内面』

が本当に素晴らしい魅力なんです。

その事を理解できれば5年でも10年でも20年でも付き合っていける関係になる。ポジションも足つきも排熱も嘘のように気にならなくなる。

もし仮に手放す事になったとしてもその時は

「YZF-R6ありがとう」

などというありきたりな感謝の念を抱くような事はない。

BN6壁紙

「YZF-R6には色々と教えてもらった」

と敬愛の念を抱くようになる。

【関連車種】

CBR600RRの系譜GSX-R600の系譜ZX-6Rの系譜DAYTONA675の系譜

主要諸元
全長/幅/高 2040/695/1150mm
シート高 850mm
車軸距離 1375mm
車体重量 190kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 118ps/14500rpm
最高トルク 6.3kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ7S(F)
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,450,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R6(13S後期/1JS/2CX) -since 2010-

2010R6

「CATCH THE EXTREME」

2010年モデルからとなる13S、

型式がたくさんあるのはカラーコードが尽きたから(1SJで例えると1SJ1~1SJWまで)で13S~2CXまでの間で目立った変更はありません。

2016R6

基本的な構造はそのままですが、エアクリーナーの変更とマフラーのロング化で馬力を5馬力落とした代わりにパワーバンドを更に拡大。

ただ非常に残念なことにこのモデルは最初の一年だけ(13S後期だけ)で2011年モデルからは正規(プレスト扱い)で入ってこず。これは国産SSとしては初。理由としては騒音規制に対応できなくなったから。マフラーを伸ばして近接騒音対策したけどそれでも日本では無理だったんだろうね。

プレストYZF-R6

なんか2011年から今までザルだった逆輸入の規制(並行輸入自動車審査制度)が厳しくなったとのこと。確かに(言い忘れてたけど)2C0以降は純正マフラーとは思えないほど良い排気音をさせてましたもんね。

しかし国内で生産されているにも関わらず国内では買えないとは何とも悲しい話。

YZF-R6WGP50th

当然ながらこのWGP50周年モデル(2012年モデル)もヤマハ60周年のイエローストロボ(2016年モデル)も指を加えて見ている事しかできなかった・・・唯一正規で買えたのは保安部品が外されたレースベース車だけっていう。

YZF-R6ヤマハ60周年モデル

ちょっと気になって某バイク販売サイトを覗いてみたら並列輸入車(個人輸入みたいなもの)はチラホラ入ってきてるみたいですね。ゴニョゴニョして通したんだろうけど、メリット&デメリットを知らずに買って失敗する人がいたら可哀想なので少し説明。

プレストが取り扱わない事が大きく話題になりましたが何が問題なのかというと、実質的にヤマハの逆輸入部門であるプレストが扱わないということは国内ヤマハのサポートが受けられないという事。つまりパーツ(特に外装など)で思わぬ躓きをしたり、リコールが行われても並列物は受けられなかったりする。

プレストYZF-R6取扱

保証もヤマハ/プレストが2年なのに対し、並列物は基本的にありません。ショップ1年保証と書いてあるところもありましたがヤマハやプレストが取り合わないバイクを何処まで保証するのかショップのさじ加減なのでなんとも。買う時は気をつけてください。

あと驚いたのがフランス仕様が売られていたこと。フランス仕様はEU/UK仕様と違って106馬力だろと思ったんですが2016年に撤廃されたよう。フランス仕様を買おうと思ってる人は確認を忘れずに。

ついでにいうと今更ですが一重に逆輸入といっても仕様地によってパワーは変わってきます。これはR6に限った話ではないのですが基本的に

EU/UK(ユーロ仕様)>US/CA(米やカナダ仕様で同等か少し低い)>>>その他の仕様地

となってます。ちなみにヤマハの逆輸入(プレスト扱い)は2004年モデル以降はほぼUS/CA仕様。

このサイトでは基本的にスペックはフルパワーのEU仕様を載せてるからこの13S後期も「124ps/14500rpm」と書いてるけど日本に正規で入ってきてるCAモデルは「123ps/14000rpm」だったり・・・あんまり変わらないか。

WGP50R6

なんかあんまりR6の話をしてなくてスイマセン。

話を戻すと・・・YZF-R6はこの13S型になった08年にAMA(アメリカの市販車レース)で優勝、さらに翌2009年には遂にWSS(600cc市販車世界レース)で初代の00年以来となる優勝を果たしました。(ライダーはクラッチロー選手#35)。

WSSチャンピオン

その快進撃は止まらず11年、13年も優勝。サーキットに絞ったマシンなので当然といえば当然かもしれませんね。

13S型はデザインから見ても分かる通り荷重分布【52.5:47.5】とかなりフロント荷重なバイク。ちなみに同時期のR1は【50:50】です。

2CXR6

これがどういうことか少し大げさに言うと

「とにかく突っ込んでナンボ、フルバンクさせてナンボ、アクセルすぐ開けてナンボ」

という感じ。ポジションやサスペンションの硬さもそうなんだけど、このバイクで眠い走りをしてると、曲がらないし、遅いし、フロント掬われて転ぶ。

ただこれがサーキットに通い詰めるようなある程度使える上級者になると評価が逆転するんです。

2010年式YZF-R6

従順なエンジン、突き抜ける吸排気音、寝かし込みや切り返しの圧倒的な軽さ、そしてラインを自由自在に選べる機敏なハンドリング。

だからサーキット好きは勿論のこと、生計を立てているレーサーからも非常に評価が高い。長く手を加えられず販売され続けたのにはこういった理由があるわけです。

だから公道ではあまり見ないR6もサーキットにいくとハイエースからウジャウジャ出てきたりします。

主要諸元
全長/幅/高 2040/705/1100mm
シート高 850mm
車軸距離 1380mm
車体重量 189kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.3L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 124ps/14500rpm
最高トルク 6.7kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,120,000円(税別)
※プレスト価格

系譜図

1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R6(13S/1JS/2CX)-since 2008-

2008R6

「CATCH THE EXTREME」

デザインが非常に好評だったため大きくは変えていないものの、確かに変わっている五代目R6の13S。

R6比較

見た目としての変更点は

・アッパーカウルの更なるスラント化

・サイドカウルの造形変更

・マフラー形状の変更

・ポジションランプの変更

などなど。

分かりやすい見分け方としてはオデコにあるポジションランプ形状(丸い06、尖ってる08)とアンダーカウルのインテーク(有り06、無し08)かと。

2c0と13sの違い

その他にもサイドカウルやシートカウルも変わっています。まあ早い話が尖ってる方が13S型という事。

13S顔

ただし外見と違って中身は再び大きく手が加えられました。

同形状に見えて新設計となっているフレームも凄いんですが、その中で注目したいのが珍しくもYZF-R1の後追いとして採用された可変機構の電子制御インテークYCC-I。

可変エアファンネル

これは簡単にいうと空気を吸う口(筒)の長さを変える事が出来る可変機構のこと。

どうして長さを変える必要があるのかというと、この筒の長さによって吸気効率が大きく変わるから。

ザックリ言うとエンジンが空気を吸おうと思っても空気にも質量があるからすぐには来てくれない。だから物凄い速さで吸ったり吐いたりする高回転時は筒は短いほうがいっぱい吸えるからありがたい。

YZF-R6カットモデル

でも一方で吸う力が弱く遅い低回転時には長くして滑り台のように筒で空気の流れを加速させた方がありがたい。

このまるでシーソーのようなバランスを改善するために低回転では連結させて長い筒にし、高回転時にはパカッと開いて短い筒にするという良いとこ取りの様な形にしたのがこの電子制御インテークのYCC-Iという話。

補足:自然吸気も過給している~慣性吸気と吸気脈動~

エンジン

つまりR6がこれを採用した理由は超高回転型ながらパワーバンドを広くするためで、合わせてクランクやバルブスプリングやカムチェーンも見直しも入っているんですが

「じゃあ乗りやすくなったのか」

というと残念ながらちょっと違う。

13S内部

あくまでもサーキット(レース)の為にあるのがこのR6。

パワーバンドが広がったと言ってもこの可変吸気がパカッと開くのは13750rpmから・・・つまり広がったというより更に高くなったという表現の方がシックリ来るような内容。

R6の短いエアファンネル

キツすぎるポジションやヤマハの中でもトップの圧縮比である事からも分かる通り

「走りで存在感を示す」

という点に重きを置いてあるバイクという立ち位置はブレないどころか更に研ぎ澄まされたという話。

13S銀

だから正直言って一般人が公道で乗ってもせいぜい直線番長くらいしかR6のエクスタシーを感じることは・・・と思いましたが誰も気付ける

『日常使いで誰で分かるYZF-R6のエクスタシー』

が一つありました。それは排気音です。

WGP50R6

このダウンショートになったR6は純正とは思えないほど良い音を出します。かといって社外ほど下品な音でもない。

騒音規制が実質的に緩和されたことで拘るようになった2018年以降のバイクに負けないくらい調律された本当に良いエキゾーストノートを奏でます。

13Sマフラー

ここらへんはさすがヤマハ。

しかし不運にもそれが祟って経年劣化による音量の増大をカバーできなかったのか2010年モデル(13S後期)ではサイレンサーが延長。

2010R6

と思ったら逆輸入規制(並行輸入自動車審査制度)が厳しくなった事と、やっぱりみんなR1を買っちゃう事からか日本では2010年モデルを最後に逆輸入車の正規取扱(プレスト扱い)が終了という事態に。

キャッチザエクストリーム

そのため2011年からの1JS型と、2014年型からの2CXは正規では入ってきませんでした。

ちなみに型式が違いますが、これは主に仕様地(ECUなど)やカラーリングを区分するマーケティングコードでモデルチェンジがあったわけではありません。

2016R6

ちなみに最終型の2CXではR6のロゴが一足先に新型にも採用されている新しいフォントになっていたりします。

主要諸元
全長/幅/高 2040/705/1100mm
シート高 850mm
車軸距離 1380mm
車体重量 188kg(装)
[189kg(装) ]
燃料消費率
燃料容量 17.3L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 129ps/14500rpm
[124ps/14500rpm]
最高トルク 6.7kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,100,000円(税別)
[1,120,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内は13S後期
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)