SX200R(SH41A) -since 1985-

SX200R

多分知ってる人ほとんど居ないのではなかろうかと思われるSX200R。

スズキのオフと言えばDRかDJEBELだもんね。

このSX200Rは1985年に出た空冷のDR250Sのエンジンを改良して200ccにしたものを積んでるオフ・・・と思っていましたが間違いでした。大変スイマセン。

このバイクのエンジンはDR250Sからの物ではなく、1982年に発売されたGN125Eから来るものでした。

GN125

これを200ccにまで拡大して載せたのがSX200R。

125の方は125の方でSX125Rやジェベル125といった方へ伸びてくことになります。

そしてこのSX200Rは空冷200ccなだけあってパワーはそこそこしかないんだけど、その分燃費も良くて軽くてタンク容量も15Lっていう使い勝手に特化したエントリー向けオフ車。

このSX200Rがバンバン200の始祖的な存在です。

主要諸元
全長/幅/高 2145/850/1195mm
シート高 810mm
車軸距離 1415mm
車体重量 118kg(装)
燃料消費率 60km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 199cc
最高出力 20ps/8500rpm
最高トルク 1.7kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/80-21(45P)
後110/80-18(58P)
バッテリー FB4L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
D8EA
[DR8EA※88以降]
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 294,000円(税別)
系譜図
バンバン50 1972年
VanVan
RVシリーズ
SX200R 1985年
SX200R
(SH41A)
djebel200 1993年
DJEBEL200/DF200E
(SH42A)
先代バンバン200 2002年
VanVan200
(NH41A)
バンバン200 2007年
VanVan200
(NH42A)

バンバンRVシリーズ -since 1972-

バンバン50

今のバンバンとは直接関係ないんだけどバンバンという名前が最初に生まれたのは1972年の事。

実はこの頃レジャー風ミニバイク人気が高まっていた。

火付け役となったのは1969年に出たホンダのDAX。まあもともとモンキーとかあったけどね。

ST50ダックス

余りの人気っぷりから1995年に再販された歴史を持つ名車。

それを見たスズキが出したのがバルーンタイヤを履かせた一風変わったミニバイクであるバンバン。

これが見事にレジャーミニバイク層の心を射止めました。

バンバン50

可愛いルックスで何処でも走れちゃう原付。売れないわけないよね。

そこからミニバイクの中のレジャーバイクカテゴリが一気に高まった。

ミニトレ

FT&GT50/80(ミニトレ)っていうミニDTで大成功してたヤマハですら、この出遅れたレジャーバイク車を追うために。

ヤマハジッピィ
ボビィ

ジッピィ&ボビィ(更に言うならボビィやチャッピー等)を出して競争が激化。

当時は本当に原付一種二種が凄かったんです。

CB50やRG50といった本格派原付がある一方で、このバンバンといったレジャーミニバイクも各社から手当たり次第に出てて、当時の若者にとって原付って言えばスクーターじゃなくてMTバイクが当たり前だった。

RV50カタログ

今現在のバイク人口比率で40代~のバイク乗りが多いのは、こういった時代というか土台があったからなんですね。こういったオモチャ感覚で乗れるバイクが中古なら数万円で買えた時代。

今とは大違いというかもう無いし、今このDAXやミニトレやバンバンRVやマメタンを買おうと思ったら20万近く出さないと買えないっていう。

スズキのレジャーバイク

またミニバイクブーム来ないかなあ・・・

主要諸元
全長/幅/高
シート高
車軸距離
車体重量 84|86|88|105kg(乾)
燃料消費率
燃料容量
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49|72|88|123cc
最高出力 22ps/8500rpm
4000~6000rpm
最高トルク 0.5|0.83|1.0|1.4kg-m
4000~6000rpm
変速機
タイヤサイズ
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
スプロケ
チェーン
車体価格 ※RV50|RV75|RV90|RV125
系譜図
バンバン50 1972年
VanVan
RVシリーズ
SX200R 1985年
SX200R
(SH41A)
djebel200 1993年
DJEBEL200/DF200E
(SH42A)
先代バンバン200 2002年
VanVan200
(NH41A)
バンバン200 2007年
VanVan200
(NH42A)

KLE500(LE500B) -since 2005-

KLE500日本仕様

「Multi-Fun machines」

EURO2という欧州の排ガス規制を機に、実に14年ぶりというとんでもない年月の後にモデルチェンジした二代目のKLE500/LE500B型。

誰も覚えてない、もしくは知らず

「とんでもない形をしたZ1000みたいだ・・・」

と驚愕してる人も多いと思いますが、このモデルは先代と違いブライトが逆輸入車として取り扱いをしていました。

ブライト正規取り扱い

ちゃんと国内にも売ってたんです。

まず走ってるのを見た事ない人が大半だと思いますが、一部の超物好きにはフロント21インチの軽量デュアルパーパスという事で今も名前が上がったり。

KLE500Bサイド

先代からの主な変更点としては外見とシートの改良でエンジンはハーフニンジャを続投。

規制に合わせて3馬力/200rpmほど抑えられていますが、それ以外は基本的に先代を続投する形になっています。

ダカールラリーを皮切りにまさかのご長寿モデルとなったKLE500なんですが、KLE500がラリーに参戦したのはそれっきりで再戦する事はありませんでした。

では一体どうしてこんな何年も販売される事になったのか、一体何処らへんが評価されて10年以上も続くモデルになったのか気になったので欧州レビューを読み漁ってみたところ

「何の気兼ねもなく乗れる日常万能車」

という感じで評価されていました。

KLE500B

並列二気筒エンジンを中低速寄りにチューニングしたものだからコンパクトで、トルクも回転数に依存せず出てくれるから取り回しが良い。

加えて6速だから街乗りだけではなくツーリングもお手の物だし、オフロードの方もフロントが21インチな事もあって多少のことなら難なくこなせる。

オマケにハンドルガードやアンダーガードまで標準装備で車体価格も安いという事も相まって一番気軽に乗れる下駄車&エントリーモデルというミドルデュアルパーパス冥利に尽きるような需要があったようです。

余談ですけどこれなにが面白いってベースとなっているEX-5/GPZ500も向こうでは

「買って間違いないロードスポーツのエントリーモデル」

みたいな評価だった事。

兄弟車

やはり血が繋がっているだけの事はある。出来る兄弟ですね。

ちなみにKLE500はGPZ500向けのハイカムやピストンなどでパワーアップが出来るちょっと美味しい思いを出来る立場でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 44.9ps/8300rpm
最高トルク 4.2kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500A) -since 1991-

KLE500A

「WILD AT HEART」

カワサキが1991年に発売したKLE500/LE500A型。

日本も発売されたKLE400の欧州専売モデルで、400と同じくトレール用のパイプフレームにハーフニンジャことEX500(GPZ400Sの500版)のエンジンを中低速よりにチューニングしたものを積んだデュアルパーパスになります。

このモデルを出した理由はダカールラリー、そしてそこからのデュアルパーパスという文化が欧州で流行っていた事が要因かと。

KLE500のカタログ写真

ただカワサキはダカールラリーにはワークス参戦もしていなかったのでインスピレーションやバックボーンがあるわけでもなく、ダカールラリーを睨んで造られたわけでもない。

正直に言うと燃料タンクが15Lしかないのも見ても分かる通り、あくまでも需要があるから造られた雰囲気ラリーレイド的な存在でした。

ただしそこで終わらなかったからヴェルシスへと続く長い系譜になった。

KLE500ラリーレイド

なんとこのKLE500もダカールラリーに1991年から参戦したんです。

「ダカールはテンガイじゃなかったっけ」

と思われている方も多いかと。

確かにテンガイもフランスカワサキ主導で参戦していたんですが、一方でKLE500もイタリアカワサキが主導して参戦していたんです。

1992年のダカールラリー

このダカールラリー参戦がKLE500の命運を決めました。

というのもイタリアヤマハはKLE500が1991年に発売されるとすぐにダカールラリー参戦を計画し、API(イタリアの石油企業)というメインスポンサーの獲得に成功したことで実現。

しかし伊カワサキはタンクを54Lのビッグタンクに変更したくらいで、それ以外の部分は大きくKLE500からかけ離れるようなチューニングをしなかった。

1992年のダカールラリー

要するにプロダクション(市販車)みたいな形でレースに出場。

もちろんワークス体制でバリバリのファクトリーマシン(試作車)を用意していたライバルには敵わなかったんですが、見事に走り切る事に成功し500クラスとしては優秀な成績だった。

いろんなページで言ってるように当時のラリーは欧州をメインに一番加熱していた時代だったからこの事で

「カワサキの市販デュアルパーパスやるじゃん」

と最高のアピールになったんです。

またEX-5/GPZ500ベースで価格も抑えていた事も相まって飛ぶように・・・とまでは言わないけどイタリアやスペインを中心に広く認知されるようになった。

LE500Aのカタログ写真

ダカールラリーというバックボーンを販売後に作るという一風変わった背景を持ってるKLE500。

「試合に負けて勝負に勝ったデュアルパーパス」

と言えるかと。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 48ps/8500rpm
最高トルク 4.3kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後44
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLX125(LX125C) -since 2009-

KLX125

「Fun to ride」

80年代にあれだけ流行っていた林道ブームが完全に去ってしまった事と、排気ガス規制により死滅状態になってしまった市場に登場したKLX125。

それまでのフルサイズと違い75%くらいのミニモトサイズ。タイを中心に発売されているKLX150をベースがベースです。

KLX150

スチール製ペリメターフレームや5速ミッション、フルデジタルメーターなど125としては結構上等な装備をつけています。更にISC(アイドルスピードコントロール)付きのFIとセルも装備。

125オフが実質KLX125一択だったこともあり初動は良かったようです。

D-TRACKER125
(LX125D) 
-since 2009-

D-TRACKER125

「easy to ride」

こちらはモタードモデルのD-TRACKER125(LX125D)。KLXとの違いは倒立フォークと前後14インチのホイールを履いている事。ミラーなどの細部も変更されていたりします。一部では小虎という愛称で親しまれていますね。

LX125C/LX125D

2012年にレギュレーターやシートが改良され、2014年にはサスペンションの変更が入っています。

残念ながらD-TRACKER125の方は2015年、KLX125の方は2016年モデルをもって生産終了(店頭在庫のみ)となりました。後継が控えてるとは思いますが。

LX125D

さて・・・4st空冷2バルブエンジンで10.2馬力という点を見てもらうと分かる通り、KLX125/D-TRACKER125はお世辞にも速いとはいえない125です。場合によっては昨今のスクーターより遅いです。今時の125MTにしては走る方ですけどね。

それは4stになったという事が大きいわけですが、ご存知の通り2stと4stでは抗えないほどの差があります。馬力で比べるとKDX125SRの22馬力から10馬力と半減。加えて言うとオフロード車というのは軽さも非常に大事なわけで、これも4st/2stではエンジンの構造上どうして重量差がある。

排ガス規制の煽りを一番受けているクラスはこの125オフでしょう。2stの頃は250に負けない性能が当たり前だったわけですから。

KLX125/D-TRACKER125

ただ悪いことばかりではありません。カワサキもパワーを出せないなら出せないなりに考えています。

まず分かりやすいのが最初に言ったフルではなくミニモトな車体サイズ。このおかげで足つきも小回りも良い上に車重もそれなりに抑えられている。D-TRACKERなら14インチホイールだから更に良くなります。

そしてFI採用による正確な燃焼により空冷ながら40km/Lが当たり前という恐るべき低燃費性能。パワーが2st時代の半分になったぶん燃費が二倍に伸びてるわけです。

マフラーからオイルも吹かないし、FIということでキャブのように神経質になる必要もない。更には125だから維持費も安い・・・と考えるとオフ/モタというより通勤通学に非常に使えるMTバイク。

サスペンションなどが柔めに設定されていることを見ても、カワサキもそこら辺を狙ったんだろうと思います。原付二種の需要が日に日に高まっていた中でカワサキはスクーター持っていませんからね。

LX125C

ただ通勤通学に打ってつけの125MTとはいえ腐ってもオフ/モタです。特化したモデルほどの走破性は持ち合わせていないけどそれなりのものは持っている。行こうと思えば道を選ばずに行けるわけです。

毎日の通勤通学で気にも止めていなかったあぜ道、誰も通らないガレた道、そういった道と認識していなかった道を

「通れるのかな。何処に繋がっているのかな。」

と足つきの良さと、小ささと、大人しいエンジンで両足をペタペタと付きながら走ってみる事が出来る。そうすれば全て知っているつもりだった地元の知らなかった新しい一面や遊び場を発見出来る。

D-TRACKER125/KLX125

皆が一分一秒を争う通勤通学レースに勤しむ中、トコトコとコースアウトしてあらぬ場所に出てしまうという楽しいタイムロスができる道草バイク。

主要諸元
全長/幅/高 1980/770/1090mm
[1900/770/1060mm]
シート高 830mm
[805mm]
車軸距離 1285mm
[1255mm]
車体重量 112kg(装)
[113kg(装)]
燃料消費率 46.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 10.2ps/8000rpm
最高トルク 1.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前70/100-19(42P)
後90/100-16(51P)
[前100/80-14(48P)
後120/80-14(58P)]
バッテリー FTX7L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7HSA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
交換時0.9L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前14|後47
[前14|後44]
チェーン サイズ428|リンク124
[サイズ428|リンク122]
車体価格 339,000円(税込)
[359,000円(税込)]
※[]内はD-TRACKER125
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KDX125SR(DX125A) -since 1990-

KDX125

「Welcome to Woody World」

KMX125の後継モデルとなるKDX125SR。

最大の特徴はクラス初の倒立フォークもそうなんだけどペリメターフレームを採用したこと。ペリメターフレームというのはツインスパーのカワサキ呼称で太いトップチューブが二本あるフレームの事。

ペリメターフレーム

KMX125を見ると分かる通り従来のフレームは一本の太いフレームが通っていたタイプでした。

何故ここに来てフレームが大きく変わったのかというと、先に紹介したユニトラックサスやディスクブレーキといった大幅な走行性能の向上(速度の上昇)によってフレームの剛性を上げる必要性が出てきたから。フロントフォークが倒立になったものステム周りの剛性を上げるためです。

KDX125SR

そしてこのフレーム変更には剛性以外にもう一つメリットがあります。それはキャブを始めとした吸気系レイアウトの自由度が増すこと。

従来のフレームだとセンターに太いフレームがあったから高さの制約が大きかった。それが横を通るタイプのフレームになった事で高さの制約が緩和され、吸気からキャブ、キャブから燃焼室までを積み木のようにダウンドラフトキャブ(垂直キャブ)など直線で結ぶ事が可能になったというわけ。

ただし、じゃあKDX125がストレート構造になっているかというと・・・なっていません。

KDX125SRカタログ写真

吸気ラインを直線で結ぶということは吸気系を後ろ側に持っていかないといけない。エンジンの吸気は後ろ側ですからね。

そうするとリンク構造の付いた優れたユニトラックサスのスペースと被ってしまうわけです。サスペンション担当は当然ながらそんな事は絶対に許さない。でもエンジン担当も吸気ラインをストレートにすればもっとパワーを出せるとこれまた譲らない。

二者択一な状況になってしまうわけだけど、先代で言った通り”速く走るためには馬力ではなくサスペンション”という考えからユニトラックサスが優先されたというわけ。エンジンよりもサスペンション優先な作りということです。

KDX125A

KDX125は2st125オフロードとしては最後のモデルで、今まで挙げてきたユニトラックサス・ディスクブレーキ・ペリメターフレームとモトクロッサーKX125をそのまま公道仕様にしたモデルということもあり非常に人気で、2000年に排気ガス規制で生産終了となるまで大きく変更されることもなく長く発売されました。

一応1991年モデル(A2型)で電装系の改良とディスクブレーキカバーの装着、94年(A5型)でリアサスのリザーバータンクが別体式にされる改良が入っています。

主要諸元
全長/幅/高 2115/855/1190mm
シート高
車軸距離 1395mm
車体重量 104kg(乾)
燃料消費率 56.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 22ps/9500rpm
最高トルク 1.9kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前70/100-21(44P)
後4.10-18(4PR)
バッテリー YB3L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前15|後52
チェーン サイズ428|リンク132
車体価格 335,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KMX125(MX250A) -since 1986-

KMX125R

「2-STROKE INCENTIVE PERFORMANCE」

KE125以来11年ぶりの登場となったKMX125。モトクロッサーKX125がベースとなっています。

KX125

排気デバイスKIPSの採用で22馬力に上がったパワーも目を引くけど、最大の売りはクラス初採用となったディスクブレーキ。

この頃はまだまだドラムブレーキが主流でディスクはタブーに近かった。泥や石といったゴミがキャリパーに入ってきてトラブルを招く恐れがあったからですね。サスペンションのストローク量が多い事からブレーキラインの取り回しの大変さもあります。

しかしドラムブレーキは重くなる上に効きがコントローラブルじゃない。そんな中でカワサキはライバルに打ち勝つ為にタブーとされていたディスクブレーキを採用したモトクロッサーでレースに挑み、トライアンドエラーを繰り返すことで実用化にこぎつけたわけです。始まりはZ400FXのリアキャリパーの流用からだったそうです。

KMX

そして1982年の市販モトクロッサーKX125にて標準採用され、市販車KMX125にも下りてきたというわけ。

このカワサキが形にしたオフロード車でのディスクブレーキは制動力が一気に上がった革新的な装備で、モトクロスレースの走り方を一変させました。

ただもう一つ忘れてはならない革新がユニトラックサスです。今ではスポーツバイクでは欠かせない装備となっているリンク式モノサス(一本サス)ですね。

ユニトラックサスペンション

これは初期の物で現在の物(ボトムリンク式)とは少し違うので違和感があるかもしれませんが、これがリンク式モノサスペンションの原型。

こうすると何が良いのかというのを簡単に言うと、スイングアームが直接サスペンションを動かすわけではないので、ホイールトラベル(ホイールの上下の動きの幅)を大きく取れ、初期沈みは柔らかく吸収し路面を追従する一方で沈み込みが深くなると踏ん張る(簡単に底打ちしない)プログレッシブ(二次曲線)な特性を得られる。

これが出るまでのいわゆる二本サスというのは衝撃を受けたら受けた分だけ比例してサスペンションが縮んでいた。それで問題となるのは底打ちした時。ドッタンバッタンと動くオフロードでサスペンションが底打ちをすると吸収しきれなかった分の衝撃がライダーに来るので吹っ飛んでしまう。

だからとっても硬いサスペンションにして底打ちさせないようにしていたんだけど、そうすると今度は簡単なギャップを全く吸収せず弾くようになるからポンポン跳ねるようになりスピードを出すのが難しい状況だった。

そんなデメリットを解消したユニトラックサスは上で紹介したディスクブレーキ以上に革新的なサスペンションで、始めて装備したモトクロッサーKX125は圧倒的な速さを誇り、ライバルメーカーも後を追うようにリンク式サスペンションへと変わっていきました。

ただ面白い事にこのユニトラックサスを最初に考えたのはモトクロッサーKX125の開発メンバーではありません。これを実現させようと開発していたのは同じ設計室で進められていたKR350/250というロードレーサーのチーム。

カワサキKR

先に挙げたサスの問題を抱えていたKXの増田さんがその構造を見て

「これはオフロードにこそ必要だ」

という事で拝借のような応用。それが正しい判断で大成功に繋がったというわけ。

KMX

このユニトラックサスペンションによる大変貌&快進撃によりカワサキは

“速く走る為に大事なのは馬力ではなくサスペンション”

とそれまでの考えを改める事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 1988/840/1165mm
シート高 845mm
車軸距離 1375mm
車体重量 96kg(乾)
燃料消費率 44.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 22ps/9000rpm
最高トルク 1.7kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21(4PR)
後4.10-18(4PR)
バッテリー YB4L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ428|リンク128
車体価格 282,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KE125(KE125A) -since 1975-

KE125

「駆ける、翔ぶ―目的は2つ。」

低速寄りに変更され13馬力となったエンジンと、クラス初となる六速ミッションを装備したKE125。実質125TRの最終モデルなバイクです。

KE125後期

二本サスながらホイールサイズもフロントを21インチに上げることで走破性がアップなど手堅いモデルチェンジと80年にタンクが角タンクへと変更されたくらいで先代から数えて12年あまりのロングセラーとなった125最速トレールでした。

KE125赤タンク

ちなみに上の写真を見ると分かる通りこの頃のカワサキといえば”緑”というよりかは”赤”でした。

これが何故かと言うと、カワサキが一番初めにレースで成果を上げたのが1963年のモトクロス選手権だったんですが、この時のバイクが赤タンクだったんです。

その事からしばらくはロードレースなども”赤タンク”をセールスで広く採用。

赤タンク

「カワサキ=赤タンク」

というイメージで押していました。じゃあどうして赤を止めて緑にしたのかというと・・・

「赤=ホンダ」

が既に広く定着し被ってしまったから。

主要諸元
全長/幅/高 2075/870/1075mm
シート高
車軸距離 1350mm
車体重量 115kg(装)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 6.7L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 13ps/6500rpm
最高トルク 1.5kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21-4PR
後3.50-18-4PR
バッテリー 6N6-3B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B8HS
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.3L
スプロケ 前14|後50
チェーン サイズ428|リンク126
車体価格 185,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

125TR(F6/F6B) -since 1970-

125TR

「躍動マシン BOBCAT」

カワサキのトレール四兄弟の三男坊として登場した125TR。このTRシリーズには動物の名前も一緒に付けられていて、この125は山猫(ボブキャット)でした。

ちなみに全部を並べると

カワサキトレールシリーズ

350TR=BIGHORN(オオツノヒツジ)、250TR=BISON(バイソン)、125TR=BOBCAT(ボブキャット)、90TR=TRAIL BOSS(牛または牛追い)

です。バイソンは商標登録の関係ですぐ無くなりましたが。

モトクロッサーMX125をベースにしつつ、前後18インチ(後に21インチ)や二本サスなことからも分かる通りガチガチのオフロードバイクというよりオフロードバイクへ寄っていっている途中のスクランブラー的なバイク。

カワサキトレールシリーズ

とはいうもののエンジンはロングストロークエンジンながら15馬力とクラストップの速さを持ち合わせていました。

ちなみに125-TRはマイナーチェンジや海外向けモデルで125MSとなったりKS125に変わったりと名前が結構コロコロ変わっています。

カワサキは1960年代からオフロードレースや市販車に参入し始めたのですが、この(とにかく馬力な)TRシリーズが市場で功を奏した事からパワー路線を全面に押し出す方向性で波に乗っていきます。

主要諸元
全長/幅/高 2000/850/975mm
シート高
車軸距離 1315mm
車体重量 115kg(装)
燃料消費率 49.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 15ps/7500rpm
最高トルク 1.4kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.00-18-4PR
後3.25-18-4PR
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B8HS
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
スプロケ
チェーン
車体価格 153,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KLX250(LX250S)D-TRACKER X(LX250V)-since 2008-

2008KLX250

排ガス規制の強化を機にフルモデルチェンジとなったKLX250と車名にXが付いたD-TRACKER X

FI、新設計D型断面スイングアーム、外装の変更、足回りの強化、足つきの改善などなど。

実はDトラッカーが思わぬ大ヒットを成し遂げた事もあって2008年のフルモデルチェンジからはDトラッカーXがメインという逆転現象が起きました。

D-TRACKER Xカタログ

先代がただオンロードタイヤを履かせてハンドルを変えただけだったのに対し、Xからは足回りも専用設計の物になりモタードとしての性能を向上。

(そしてちゃっかりスクランブラーとは言わずモタードと言い始めた)

DトラッカーX前期

規制強化で6馬力ダウンと若干の車重増になっちゃったんだけどギア比を中低速寄りに変更することでカバー。

もちろん高回転まで綺麗に吹け上がるモトクロッサーKX譲りのエンジンはそのまま。

他社に先駆けて水冷化した事もあって気付けば250オフではこのエンジンがいつの間にか最年長になっちゃいましたね。

デジタルメーター

さてそんな吹け上がりの軽いモトクロッサーエンジンを誇示するためか演出かわからないけど2008年モデルからは無駄にタコメーターが付いてる。

ところでこの2008年型が出た時、オフ車らしくないガンダムチックな二灯フェイスは賛否両論だった。

実は仕様地によってKLX250は保安の関係でライトが大型の物に変えられてる。

地域によっては車名にSが付いてKLX250Sとなってたり。

KLX250S

何かパチモン臭い・・・CRF250がそうだった様に普通はコストの関係で何処の国でも通るように統一したライト形状にするのが一般的です。

それでもわざわざ日本向けがガンダム顔なのはカワサキ自身コッチが好きなんでしょうね。

余談

有名なので知ってる方も多いと思いますが、KLX250は(2015年現在)自衛隊の偵察用オートバイに採用されています。

自衛隊KLX250

もはや”闘う4st”というより”戦う4st”ですね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/820/1190mm
[2130/795/1125mm]
シート高 890mm
[860mm]
車軸距離 1430mm
[1420mm]
車体重量 136kg(装)
[138kg(装)]
燃料消費率 29.5km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.7L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 24ps/9000rpm
最高トルク 2.1kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.00-21(51P)
後4.60-18(63P)
[前110/70-17(54S)
後130/70-17(62S)]
バッテリー YTX7L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L
{全容量1.3L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L}
スプロケ 前14|後42
[前14|後39]
チェーン サイズ520|リンク106
[サイズ520|リンク104]
車体価格 528,000円(税込)
[548,000円(税込)]
※[]内はD-TRACKER X
※{}内は11年以降モデル
系譜図
KL250

1977年
KL250
(KL250A/C)

KLR

1984年
KL250R/KLR250
(KL250D)

ES|SR

1993年
KLX250ES/SR
(LX250E/F)

スーパーシェルパ

1997年
SUPER SHERPA
(KL250G/H)

H型、J型、M型

1998年
KLX250
D-TRACKER
(LX250H/J)

S/V型前期

2008年
KLX250
(LX250S)
D-TRACKER X
(LX250V)

【関連車種】
CRF250RALLY/L/Mの系譜WR250R/Xの系譜SEROW250の系譜