「Personal Comfort Saloonとしての更なる進化」
わずか三年ほどでフルモデルチェンジされ早くも五代目となったPCX/JK05とe:HEV/JK06とPCX160/KF47。
最初に変更点をあげると
・4バルブの新型エンジンesp+を搭載
・スロットルボディ径をΦ26から28へ拡大
・吸/排気系を新設計
・上記改良によりにより0.27馬力UP
・プーリーサイズの拡大およびクラッチ形状の見直し
・ヘッドパイプの剛性を高めつつ760g軽量化した新設計フレーム
・ハンドルをラバーマウント化
・リアのディスクブレーキ化とABSを標準化
・トラクションコントロールシステムの搭載
・ラゲッジボックスを2.4L拡大し30.4Lへ
・グローブボックスに3AのUSB Type-Cソケット
・前後タイヤサイズをアップ&リアを13インチにダウン
・リアアスクルのストローク量を10mm増加
・ABSを標準化しコンビブレーキは廃止
・全体的なデザインの刷新
・反転型デジタル液晶メーター
以下PCX e:HEV/JK06
・名称をHYBRIDからe:HEVに変更
・ラゲッジボックスを23.0Lから24.0Lへ拡大
以下PCX160/KF47
・排気量を7cc上げて156cc/15.8馬力に
などとなっています。
このモデル最大の特徴としてはまず何と言っても新型エンジンeps+かと。
ボア径を大きくして面積を広げて4バルブ化した形で、ピストン裏にオイルを噴射して冷却効率を上げる事で圧縮比も向上。
125:ボアΦ52.4,mm→53.5mm、ストローク57.9→55.5mm、圧縮比11.0→11.5
160:ボアΦ57.3,mm→60.0mm、ストローク57.9→55.5mm、圧縮比10.6→12.0
この改良の狙いは単純に出力を稼ぐためではなく、燃費と出力それに静粛性など全てを向上させるのが狙い。
そのためにクランク新造とクランクベアリングをボールベアリングからローラーベアリングに変更する事で高剛性化。さらにカムチェーンテンショナーも追従性に優れる油圧式に変更するなどして騒音や振動を低減させる改良が加えられています。
その意匠は車体の方にも現れていて、分かりやすいのがステム周り。
不快な振動を抑えるためにハンドルホルダーがラバーマウントに変更されました。しかしラバーマウントにはハンドリングのダイレクト感が少し損なわれてしまうデメリットもある。そこでPCXはその分メインフレームのヘッドパイプの剛性を上げる改良を加えて捻じれを抑える事でダイレクト感を損なわないようにしている。
ホイールもインチダウンさせてリアのストローク量を稼ぐことで底付きを防ぎつつ、減ったエアボリュームによる乗り心地の悪化はワイドタイヤにすることでクリアしている。
この様にとにかくネガな部分を潰して全性能、コンフォートサルーン性能を向上させる改良がアチコチに見て取れるのが五代目PCXというわけです。
しかしながら
「いくら何でもモデルチェンジ早すぎるのでは」
とも感じてる人も多いかと。先代から3年弱しか経ってないんですから。
これについてはどうもアジア(特にインドネシア等)の方で、永遠のライバルが出したブルーコアエンジンのモデルの攻勢が凄くて、熾烈な争いが起こっているんだとか。当たり前のように半年納車待ちとかなってる日本からすると信じられない話ですね。
以下ちょっと余計な余談ですが、車やバイクのキャッチコピーで
「クラスを超越」
なんて表現が使われているのをよく目にしますが、このPCXは本当にその言葉がピッタリなモデルだなと思います。
というのもPCXは当然ながらコミューターと呼ばれるクラスなんですが、これをコミューターとして使うにはそれなりの覚悟が必要になるから。
PCXはいま説明してきた通り、フルスペックという言葉ですら足りないほどの性能に加え、見て分かる通り非常に高く洗練されているデザインと質感を兼ね備えているから、狭いところを走って擦ってしまう事はもちろん、雑に乗ろうとして外装を蹴ってしまった時の精神的ダメージは他のコミューターの追随を許さないほどのモノがある。
ついでに言うなら盗難の心配もする必要がある。
だからコミューターつまり下駄として使うにはそれなりの勇気と覚悟が必要というのはそういう事からなのですが、どうしてそんなネガな事を言うのかといえば、それこそがクラスを超越している証だから。
そんな気遣いをしてしまうというのは、言い換えればそれだけ所有欲を満たしてくれるとも言える。メットイン機能付きの小型コミューターでそうなってしまうモデルなんてそうそう無い。
ただ、クラスを超越していると思う根拠はそんな見た目だけではなく運転している時の感覚もそう。
PCXは決して大きくはないのだけど小さくもない車体とフロント14インチと整ったエアロダイナミクスによって、操安性がクラスにあるまじき高さを持っており、さらに150や160は当然のことながら125でも超低燃費エンジンとは思えないほどパワフルに走る。
加えてステップスルーではなく跨って乗るタイプだから、運転すると少し大きい原二スクーターというよりも
『小さいビッグスクーター』
という表現が適切のような感覚を覚える。
だから普通ならちょっとキツいと感じたり、止めておこうと考える距離でも楽に走れてしまうモノを持っており、休日もこれで済ませてしまう恐れすらある。
パーソナルコンフォートサルーンというコンセプトは伊達じゃない。
PCXがクラスを超越していると思える理由でした・・・例えるなら上のクラスを食っちゃうバイク版N-BOXですかね。
【関連車種】
LEADの系譜|CYGNUSの系譜|TRICITYの系譜|Addressの系譜
主要諸元
全長/幅/高 |
1935/740/1105mm |
シート高 |
764mm |
車軸距離 |
1315mm |
車体重量 |
132kg(装) {136kg(装)} [132kg(装)] |
燃料消費率 |
47.4km/L [51.2km/L] [45.2km/L] ※WMTCモード値 |
燃料容量 |
8.1L |
エンジン |
水冷4サイクルOHC単気筒 |
総排気量 |
124cc [156cc] |
最高出力 |
12.5ps/8750rpm +{1.9ps/3000rpm} [15.8ps/8500rpm] |
最高トルク |
1.2kg-m/6500rpm +{0.44kg-m/3000rpm} [1.5kg-m/8500rpm] |
変速機 |
Vマチック |
タイヤサイズ |
前110/70-14(50P) 後130/70-13(63P) |
バッテリー |
GTZ8V {GTZ6V} [WTZ8VIS] |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
LMAR8L-9 |
推奨オイル (トランスミッション含む) |
Honda純正ウルトラE1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量0.9L 交換時0.8L |
トランスミッションオイル容量 |
全容量0.14L 交換時0.12L |
Vベルト |
23100-K1Y-J11 [23100-K1Z-J11] |
車体価格 |
357,000円(税別) {448,800円(税別)} [407,000円(税別)] ※{}内はe:HEV(JK06) ※[]内はPCX160(KF47) |
系譜図