MBX50/80(AC03-AC08/HC04) -since 1982-

MBX50/AC03

「全身、本格メカ!」

ただでさえ凄かったMB50から更にエンジンの水冷化で7.2馬力にまでパワーを上げ、新設計フレームにプロリンクまで装備したMBX50/AC03型とMBX80/HC04型。

ここまでやったのは出た当初こそ凄かったMB50も、強力なライバル車(7.2馬力モデル)の出現に苦戦をするようになっていたから。

AC03

正にやられたからやり返した原付。宣伝にもマッチさんを起用。

如何にゼロハンブームが過激で熾烈なものだったかが分かりますね。

しかしそんなゼロハンブームの中でもMBXは少し変わっていて、フレーム新造でホイールベースを若干延長し安定志向に振った。

MBX50インテグラ

それに加えアクセサリー類の充実やタンク容量を12Lまで拡大。

これには

「速いだけでなくツーリングも熟せる原付」

という違った層へ向けた狙いがあり、そしてその狙い通りの評価を獲得しました。

80の方は最初からそのイメージを更に強めるため、フェアリングを標準装備したMBX80INTEGRAとして発売。

MBX80/HC04

・・・が、しかし100km/hの大台が見え始めた頃、原付事故の急増に国がオカンムリになります。

そして1984年に設けられたのが

『原付一種60km/h規制』

です。

一応これは自主規制ですが

「守らなかったらもう型式(販売)を認めないよ」

っていう半分強制のような自主規制。

これによってMBX50も同年からは60km/h以上出ないようにミッションを1段減らしエンジンを5.6馬力にまでデチューン。

MBX50/AC03

そのかわりテコ入れとしてアンダーカウルを標準装備。

しかし今まで7.2馬力だったのが急に5.6馬力では売れるわけもなく・・・そこで更に翌年にMBX50F(AC08)へモデルチェンジ。

MBX50F/AC08

初代の6速モデルにCDIによる60km/h電子スピードリミッターを装着することで7.2馬力というスペックをキープ。

しかしこの頃になると60km/hリミッターを始めとした様々な影響で、あれほど盛り上がっていたゼロハンブームが嘘のように鎮火していました。

主要諸元
全長/幅/高 1920/675/1100mm
{1920/675/1105mm}
[1980/685/1125mm]
シート高 770mm
[780mm]
車軸距離 1255mm
[1265mm]
車体重量 79kg(乾)
{82kg(乾)}
[92kg(乾)]
燃料消費率 65.0km/L
[60.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
{11.0L}
[12.0L]
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
[79cc]
最高出力 7.2ps/8500rpm
[12ps/9000rpm]
最高トルク 0.97kg-m/8500rpm
{0.65kg-m/7500rpm}
[0.97kg-m/8500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.50-18-4PR
後2.75-18-4PR
[前2.75-18-4PR
後3.00-18-6PR ]
バッテリー YB3L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B7ES/B8ES/B9ES
または
W22ES-U/W24ES-U/W27ES-U
推奨オイル Honda純正ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.2L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量0.9L
交換時0.8L
スプロケ
チェーン サイズ420|リンク118
[サイズ420|リンク116]
車体価格 186,000円(税別)
{198,000円(税別)}
[228,000円(税別)]
※{}内はMBX50F
※[]内はMBX80INTEGRA
系譜図
MB501979年
MB50/MB-8
(AC01/HC01)
ラクーン1980年
RACCOON
(AD02)
MBX501982年
MBX50/80
(AC03/HC04)
MCX501982年
MCX50
(AC04)
NS50F1987年
NS50F
(AC08)
NSR501987年
NSR50/80
(AC10/HC06)
MC181991年
NS-1
(AC12)

RACCOON(AD02) -since 1980-

ラクーン/AD02

「走りはのびのび!クロスオーバー。」

同じMB50の派生モデルであるトレールタイプMT50の要素を加えたシティバイクのRACCOON/AD02型。

AD02

MB50を少し起こした様な構造で、アップライトなポジションと700mmという低シート高&大型シートが特徴。

エンジンの方も中低速重視にチューニングされ6馬力になっています。

ちなみにRACCOON(アライグマ)という名前は”ラクラクに運転できる”というコンセプトから。

RACCOONカタログ写真

とはいうものの、可愛い見た目と名前とは裏腹に最高時速は80km/hオーバー。

この頃の原付は本当にあなどれない。

主要諸元
全長/幅/高 1845/760/1040mm
シート高
車軸距離 1210mm
車体重量 82kg(装)
燃料消費率 65.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 5.5L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 6.0ps/7000rpm
最高トルク 0.62kgf-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前2.50-17-4PR
後3.00-14-4PR
バッテリー 6N2-21A-8
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B8HS
推奨オイル
オイル容量
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量1.0L
交換時0.9L
スプロケ 前13|後38
チェーン サイズ420|リンク104
車体価格 139,000円(税別)
系譜図
MB501979年
MB50/MB-8
(AC01/HC01)
ラクーン1980年
RACCOON
(AD02)
MBX501982年
MBX50/80
(AC03/HC04)
MCX501982年
MCX50
(AC04)
NS50F1987年
NS50F
(AC08)
NSR501987年
NSR50/80
(AC10/HC06)
MC181991年
NS-1
(AC12)

MB50/MB-8(AC01/HC01) -since 1979-

MB-5

「衝撃のスーパースター」

ホンダ初の2stロードスポーツ原付となるMB50とMB-8。

前後18インチコムスターホイールにクロスしているオシャレなXフレームを始めとしたワンクラス上の車格。

そしてクラス初となる一軸一次バランサーを内蔵しながらもクラストップとなる7馬力のエンジンで最高時速は80km/hオーバーという圧倒的な速さ。

MB50エンジン

ホンダのロードスポーツ技術全部載せな非の打ち所のない原付な上に、不沈艦と呼ばれた耐久レーサーRCB1000のカラーリングも纏っていた事から当然の様に大ヒット。

当時を知る人でこれが人生初バイクだった方は多いかと思います。

MB50エンジン

ちなみにフラットハンドルのモデルをMB50、翌年から出たアップハンドルモデルをMB-5(シートに刻印)と言います。

そしてこれは78cc化されたMB-8。

MB-8

これから先のモデルにも基本的に言えるのですが、二種の方はハッキリ言うと人口が少ないこともあって一種の為(ゴニョゴニョする為)にあるドナーの様な存在という捉えられ方がメジャーでした。ちょっと可哀想な話だけどね。

そもそも何故こんな過激な原付が出たのかと言うと『ゼロハンブーム』と呼ばれる原付スポーツブームが起こりつつあったから。

各社から6馬力を超える速い原付が登場し人気を博していたんです。

MB50ボルドールスタイル

そんな中でホンダが対抗車として出したのがこの7馬力を誇るMB50。

このモデルでゼロハンブームが決定的なものになり、火蓋が切って落とされたというわけ。

主要諸元
全長/幅/高 1880/655/980mm
シート高
車軸距離 1215mm
[1220mm]
車体重量 87kg(装)
[91kg(乾)]
燃料消費率 65.0km/L
[60.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
[78cc]
最高出力 7.0ps/9000rpm
[9.5ps/8000rpm]
最高トルク 0.56kg-m/8000rpm
[0.89kg-m/7500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前2.50-18-4PR
後2.50-18-4PR
[前2.50-18-4PR
後2.50-18-6PR]
バッテリー 6N2-2A-8
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B6HS/B7HS/B8HS
または
W20FS/W22FS/W24FS
推奨オイル Honda純正ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.1L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量1.0L
交換時0.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 186,000円(税別)
[152,000円(税別)]
※[]内はMB-8
系譜図
MB501979年
MB50/MB-8
(AC01/HC01)
ラクーン1980年
RACCOON
(AD02)
MBX501982年
MBX50/80
(AC03/HC04)
MCX501982年
MCX50
(AC04)
NS50F1987年
NS50F
(AC08)
NSR501987年
NSR50/80
(AC10/HC06)
MC181991年
NS-1
(AC12)

NSR250R/SE/SP(MC28) -since 1993-

NSR250R/MC28

「公道快速-SPポテンシャルNo.1」

プロアームとなった最終型となるMC28型。

姉妹車である市販レーサーRS250Rが一足先にプロアーム化してたのでそれに準ずる形ですね。

プロアーム

知ってる人も多いと思いますがプロアームというのはELFとホンダによって生み出された技術。

ただそれが採用された理由の一つとしてガルアームの特許問題が絡んでいたりします。

エンジン周りの方も電子制御ユニットの16bit化による点火マップ最適化でPGM-IVに。

チャンバー

そしてもう一つ大きな変更点がカードキーですね。

キーではなくカードというニクいアイテム。

PGMカードリーダー

本体のシリアルとカードのシリアルが一致した場合のみエンジンが掛かります。

そして実はエンジンマッピングもこの中に入っている。

HRCカード

だからノーマルでは規制値である40馬力だけど、別売りのHRCカードを挿せばフルパワー。

KITも組み込むと75馬力にまで跳ね上がります。まあこれを買うには廃車手続きが必要で、灯火系が効かなくなるんですけどね。

ちなみにNSR250Rでよく挙げられるのが最後の最後まで正立フォークだった事。

MC28

これについて調べてみると、実はMC28の開発段階では倒立もテストしていたそう。

しかし倒立を入れてしまうと剛性が高すぎて『しなやかフレーム』のコンセプトに合わないという事が分かり敢えて採用しなかった経緯がありました。

NSR250Rロスマンズカラー

これは乾式クラッチを採用したSEや、マグネシウムホイールを履いているSPモデルも同様です。

ただSEモデルでは先代に引き続き減衰力調整付きののカートリッジタイプですが、SPモデルは新たに新設計のカートリッジタイプタイプの正立が採用されています。

最後に・・・MC28には開発チーム内で掲げた裏コンセプトがありました。

MC28-SP

「裏切らねーぜ(原文ママ)」

というコンセプト。

MC28は出る前の時点で40馬力規制が既に敷かれていました。

しかしNSR250Rというのは”速く走りたい”と思う人達が買うバイク。だから40馬力規制があろうと、その思いを”絶対に裏切ってはいけない”とチーム全員が考えていた。

NSR250R SE

「絶対に裏切らねーぜ」

という裏コンセプトはその意気込みなんです。

わざわざ吸気系も排気系も見直し、一からマッピングを作り直している手間を見ればそのコンセプトが偽りではない事が分かりますね。

ところで

「裏切らねーぜ」

なんてずいぶんと砕けた意気込みだなと思いますよね。

意外に思うかもしれませんが、これはNSR250Rの開発チームが捻くれ者であることを自負するような人たちが集まった小さいチームだった事があります。

確かにNSR250Rは時代を代表する名車・・・しかしそれは我々側から見た時の話で、ホンダ側からすると少なくとも基軸ではありませんでした。

CBR400RとVFR400R

2stレーサーレプリカ全盛期だろうとホンダの基軸はCBRとVFRでした。何故なら”ホンダは4st屋”だからです。

「じゃあなんでNSR250Rなんて出したのよ」

と思いますよね。

これについては当時の責任者だった梨本さんとネモケンの対談に答えがありました。

製造コスト問題に対する話の中でNSR250Rの造りに対するコストについて聞かれ

「あれはホンダファンの期待に応えるためのバイク。」

とコストには一切触れないお茶を濁すような答え。

結局NSR250Rというバイクはホンダが造りたくて造ったバイクではなく、ホンダファンが望んだから造ったバイクという事です。

そうして造られたNSR250Rは多くの熱心なホンダファンに愛されました。

それが如実に現れてたがこのMC28時代、レーサーレプリカの晩年です。

1994年式NSR250R SP

NSR250Rは基本設計が大きく変わる事は無かったので、晩年になると最速とは言い難いものになっていました。

にも関わらず一般ユーザーはもちろん、速いことが大正義のレース活動をする人たちですらNSR250Rばかりだった。

これが何故かと言えば、口コミ、特性、カスタム、トラブルシューティング、全ての情報においてNSR250Rが圧倒的だったからです。

ホンダNSR250R

ファンが望んだ事で生まれ、ファンが支える事でモデルチェンジを繰り返し、ファンが世話する事で最後の最後まで戦えた。

NSR250Rはホンダファンのための、ホンダファンによるレーサーレプリカでした。

主要諸元
全長/幅/高 1970/650/1045mm
シート高 770mm
車軸距離 1340mm
車体重量 153kg(装)
[157kg(装)]
{156kg(装)}
燃料消費率 22.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷2サイクルV型2気筒
総排気量 249cc
最高出力 40ps/9000rpm
最高トルク 3.3kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ECM/BR9ECM/BR10ECM
または
W24EMR-C/W27EMR-C/W31EMR-C/
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.2L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量0.8L
交換時0.7L
スプロケ 前15|後44
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 680,600円(税別)
[720,000円(税別)]
{800,000円(税別)}
※[]内はSE
※{}内はSP
系譜図
MVX250F1983年
MVX250F
(MC09)
NS250R/F1984年
NS250R/F
(MC11)
MC161986年

(MC16)

MC181988年
/SP
(MC18)
MC211990年
/SE/SP
(MC21)
MC281993年
/SE/SP
(MC28)

【関連車種】
TZR250の系譜250Γの系譜KR-1の系譜

NSR250R/SE/SP(MC21) -since 1990-

NSR250R/MC21

「PROSPEC 90’s」

またまた・・・またモデルチェンジしたNSR250R/MC21型。

最大の特徴は何と言っても『への字』をしたガルアームですね。

MC21パンフレット写真

チャンバーの邪魔しないようにスイングアームを避ける為の構造。

もちろんそれ以外にも改良は入っています。

エンジンは新造され、リアタイヤを18inchから17inchへインチダウン、PGMもバージョン3となりました。

ちなみに乾式クラッチと減衰力調節機能付き前後サスなのがSE、それに加えマグホイールを履いているのがSPです。

MC21ディメンション

そんなMC21ですが、最も変わったのがメインフレーム。

”動的剛性バランス”を求めた通称『しなやかフレーム』と呼ばれる新設計のアルミツインチューブフレームです。

具体的に言うと、縦剛性と捻れ剛性は上げつつも、肉厚を減らす事で横剛性を少し落としている。

MC21カタログ写真

これはスパルタン過ぎて一般ライダーが楽しめる領域になかった事を改善するため。

「一般公道でもしっかり楽しめるレーサーレプリカを作りたい」

と先代からのプロジェクトリーダーだった青木さんが考えた結果なんです。

MC21カタログ写真

その狙いからこのMC21は開発チーム内で

「小谷野ワークス」

というアダ名が付けられていました。

小谷野というのは操安テストを担当していた方の名前。国際A級ライセンスを持ち、ワークスマシンNSR250で入賞も果たす程の腕前をお持ちです。

なぜそんなアダ名になったのかというと、MC21の開発において最も大事にされたのが小谷野さんの基準だったから。

じゃあ小谷野さんがどう考えていたのかというと

リアステアリング

「何だか知らない内に楽しいなと思えるリアステアの感覚」

これを絶対に実現させたいと考えていた。

そうして出来たのが『しなやかフレーム』であり

「どのバイクよりもリアステアが決まっているMC21」

というわけです。

ホンダNSR250R/MC21

発売後、MC21がリアステアが一番キマってる様を見て

「してやったり」

と開発チームは皆で密かに喜びあったんだとか。

主要諸元
全長/幅/高 1975/655/1060mm
シート高 770mm
車軸距離 1340mm
車体重量 151kg(装)
[153kg(装)]
{156kg(装)}
燃料消費率 30.2km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷2サイクルV型2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.7kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ECM/BR10ECM
または
W27EMR-C/W31EMR-C
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量 2.0L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量0.8L
交換時0.7L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 609,000円(税別)
[649,000円(税別)]
{719,000円(税別)}
※[]内はSE
※{}内はSP
系譜図
MVX250F1983年
MVX250F
(MC09)
NS250R/F1984年
NS250R/F
(MC11)
MC161986年

(MC16)

MC181988年
/SP
(MC18)
MC211990年
/SE/SP
(MC21)
MC281993年
/SE/SP
(MC28)

NSR250R/SP(MC18) -since 1988-

MC18

「I am PROSPEC」

『ハチハチ』という愛称でお馴染みの二代目NSR250R/MC18型。

・ラバーマウントエンジン

・キャブレーターの大径化(Φ28→Φ32)

・大径化による流速低下を防ぐための電子制御PGM

・可変排気ポート/RCバルブで圧縮比UP(6.2→7.3)

・カセットミッション用オイルポンプ

・4.50まで許容するワイドリム

・5角断面目の字アルミフレーム

・市販車初マグホイール(SPのみ)

などなど・・・などなど。以下省略

1988NSR250R

わずか二年弱で大規模なモデルチェンジしたわけですが、これには二つほど理由があります。

一つはTZR250Rの存在です。

プロジェクトリーダーの青木さん曰く

「必ずMC16を超えてくると思った。だから絶対に手を緩めたくないと考えていた。」

との事。

本当は87年にもモデルチェンジを予定していたそうですが、流石に早すぎるとして見送りになった背景があります。

そしてもう一つはHRCとの関係が更に濃密になった事があります。

そのキッカケとなったのは前年から発売されたレースキットを最初から組み込んだコンプリートマシンNSR250RKにあります。

HRC製NSR250RK

少し混乱している人がいるかも知れないので補足すると

【NSR250(RS250R-W)/HRC】

これはHRCが造ったワークスマシン。NSR250Rの元ネタでもあります。

【RS250R/HRC】

これはNSR250Rと共同開発された市販レーサー。

【NSR250R/朝霞研究所】

市販レーサーRS250Rの公道バージョンという立ち位置。

【NSR250RK/朝霞研究所HRC改】

NSR250Rにレースキットを組み込んだTT-F3(市販車レース)用のモデル。

RS250Rより安価。

HRCとの関係

HRCが手掛けたNSR250のレプリカである朝霞研究所のNSR250Rを再度HRCと手がけるという流れ。

この流れでHRCとNSR250R開発チームの関係がより親密になり、HRC製NSR250RKに引き上げられる形でNSR250Rも大きく進化したというわけ。

少し話を脱線すると、レースの敷居を下げる目的で提案されたRK販売計画は当初、大反対に合いました。

MC18パンフレット写真

実質的にHRCの技術を安売りする上に、製造も大変なので当然といえば当然な話。

しかし諦めきれずに上司に直談判し、了承&助力を得ることで実現する事となりました。

福井 威夫(ふくい たけお)

ちなみにその時の上司というのは福井威夫(ふくい たけお)さん。

後に六代目ホンダ社長となられる方・・・なんですが、実は福井さんバリバリのレース/HRC育ち。

レース復帰早々にホンダに栄光をもたらした2stレーサーであり、NSR250の大元でもあるNS500のエンジニアだった方。

因果というか奇跡というか、運命的なものを感じますね。

そんなハチハチですが、更に恐ろしいのが翌年に再びモデルチェンジしたこと。

NSR250Rカタログ写真

パッと見は変わっていない様に見えますが、大きく変わっています。

・エンジンコントロールユニットPGMをIIへアップデート

・レッドゾーン+500rpm(12500rpm)

・スイングアームも5角断面目の字

・前後ラジアル

・キャスター角の見直し

・乾式クラッチ(※)

・減衰力調節機能付きの前後サス(※)

などなど。※SPのみ

MC18

このモデルチェンジの狙いは乗りやすくする事にあります。

MC18前期いわゆるハチハチは圧倒的な速さを誇っていました。

NSR250R SP

「レースで勝つならNSR250R一択」

と言われるほどだったんですが、それはエキスパートたちの話で誰にでも扱える代物ではなかった。

あまりにも玄人志向過ぎたんですね。

NSR250Rポスター写真

こう聞くと良くなかったんじゃないかと思うかもしれませんが、決して違います。

ダントツで速かったのは紛れもない事実。

そして

「一筋縄ではいかない圧倒的な速さ」

というホンダらしからぬ攻撃的な特性に心を奪われた人は多かった。

NSR250Rカタログ写真

MC18で検索すれば今もその衝撃を忘れれない人がゴロゴロ見つかると思います。

それくらいこのMC18の登場、そしてMC18の速さは衝撃的だったんです。

最後に・・・これはそんなMC18のパンフレットの1ページ。

いま私と出逢えるライダーは幸福である。

「いま、私と出逢えるライダーは幸福である。」

NSR250R/MC18は正にその通りとなったレーサーレプリカでした。

主要諸元
全長/幅/高 1985/640/1105mm
<{1980/650/1060mm}>
シート高 770mm
<{780mm}>
車軸距離 1355mm
<{1345mm}>
車体重量 145kg(装)
[144kg(装)]
{149kg(装)}
<150kg(装)>
燃料消費率 36.0km/L
{30.2km/L}
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷2サイクルV型2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/60R18(64H)
<{前110/70R17(54H)
後150/60R18(67H)}>
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ECM/BR10ECM
または
W27EMR-C/W31EMR-C
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.3L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量0.8L
交換時0.7L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 579,000円(税別)
[660,000円(税別)]
{599,000円(税別)}
<689,000円(税別)>
※[]内はSP
※{}内は89モデル
※<>内は89SP
系譜図
MVX250F1983年
MVX250F
(MC09)
NS250R/F1984年
NS250R/F
(MC11)
MC161986年

(MC16)

MC181988年
/SP
(MC18)
MC211990年
/SE/SP
(MC21)
MC281993年
/SE/SP
(MC28)

NSR250R(MC16) -since 1986-

NSR250/MC16

「it’s Honda Racing」

TZRの登場でレーサーレプリカというジャンルが明確に誕生し、それに向けて造られた初代NSR250RのMC16型。

新設計クランクケースリードバルブVツインに目の字断面アルミツインスパーフレームとそれまでとは一線を画する性能を引き下げていました。

MC16

こうなった理由は先にも言ったとおり、これまでの延長線上では対抗できないと悟ったから。

そこで考えられた方法が

「RS250R-W(NSR250)をコピーして保安部品つけて出す」

というシンプルイズベストなもの。

スペンサーNSR250

補足しておくとRS250R-W(NSR250)というのは世界GP250ワークスマシンの事。

フレディ・スペンサーが参戦し優勝、500とのWタイトル獲得という快挙を成し遂げたチャンピオンマシンです。

GPを戦ってきた人たちが造り上げたRG250ΓやTZRに対抗するにはこの方法しかないと考えたわけですね。

しかし当然ながらそんな事をHRCが許すわけがない。トップシークレットなんだから当たり前。

そこで八木澤さん筆頭に開発メンバーはHRCへ転属願いを出すわけです。教えてくれないなら見て盗もうという職人根性。

1986NSR250R

そうしてHRCと質問攻めと押し問答を繰り返した末に完成したのがこれ。

1985年NSR250と瓜二つなNSR250Replica/MC16というわけ。

MC16カタログ写真

それまでの鬱憤を晴らすかのような圧倒的な速さを誇り、2万台弱の大ヒットで86年2stレーサーレプリカ販売台数一位を記録。

MVX250Fのリベンジを達成する事となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2035/705/1105mm
シート高 750mm
車軸距離 1360mm
車体重量 141kg(装)
燃料消費率 41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16L
エンジン 水冷2サイクルV型2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ 前100/80R17(52H)
後130/70R18(63H)
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ECS/B9ECS/B10ECS/B8ES/B9ES
または
W24ES-C/W27ES-C/W31ES-C/W24ES-U/W27ES-U
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.3L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量0.9L
交換時0.55L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 559,000円(税別)
系譜図
MVX250F1983年
MVX250F
(MC09)
NS250R/F1984年
NS250R/F
(MC11)
MC161986年

(MC16)

MC181988年
/SP
(MC18)
MC211990年
/SE/SP
(MC21)
MC281993年
/SE/SP
(MC28)

NS250R/F(MC11) -since 1984-

NSR250R

「2サイクル・エキスパート」

MVX250Fの失敗から僅か1年少しで登場したフルエアロ外装のNS250Rとネイキッド版のNS250F。

MC11

アルミ製のダブルクレードルフレームとスイングアーム(Fはスチール)に調節式プロリンクサス、エンジンは新設計Vツイン。

左右非対称チャンバーにNSシリンダーと、GPマシンと同じNSという名を冠すだけあり非常に高いパフォーマンスを発揮。

NS250RとNS250FとRS250R

ここに来て急激に進歩したのは市販レーサーRS250Rとの連携が大きく寄与しています。

「やっとホンダから戦える2stが出た」

と評判になりました。

しかし、いざ発売されたNS250RでSPレース等に挑んでいる人たちを見るとみな苦戦していた。

NS250価格

「確かに速いんだけど扱いが難しい」

そういう声が締めていたんです。

これではいかんとなった開発チームですが、更に追い打ちをかけるように打倒すべき相手がRZからTZRと遥かに高くなった。

「このままでは勝てない」

として開発チームは門外不出の最重要部署ともいえるHRCの扉を叩くことになるわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2005/720/1125mm
[2005/720/1040mm]
シート高 780mm
車軸距離 1375mm
車体重量 161kg(装)
燃料消費率 36.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 19L
エンジン 水冷2サイクルV型2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.6kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ 前100/90R16(54S)
後110/90R17(60S)
バッテリー FTX5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B8ES
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.7L
推奨トランスミッションオイル
オイル容量
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 539,000円(税別)
[429,000円(税別)]
系譜図
MVX250F1983年
MVX250F
(MC09)
NS250R/F1984年
NS250R/F
(MC11)
MC161986年

(MC16)

MC181988年
/SP
(MC18)
MC211990年
/SE/SP
(MC21)
MC281993年
/SE/SP
(MC28)

MVX250F(MC09) -since 1983-

MVX250F/MC09

「V3センセーション」

ワークスマシンNS500を彷彿とさせるV3型2stロードスポーツMVX250/MC09型。

当時を知らない人は意外に思うかもしれませんが、ホンダとしてはクラス初の2stになります。

ホンダMVX250F

というのもホンダというのは4st一辺倒で、どちらかというとアンチ2stなメーカー。

これは本田宗一郎が2st嫌いだった事や、4stの方が未来ある技術だった事が理由です。

だからホンダも2st250スポーツ熱が高まろうとも、VT250Fという4stで対抗していました。

実際にVT250Fは空前の大ヒットとなったわけですが「打倒RZ250」という目的は果たせなかった。

VT250Fがどれだけ売れても、RZ250の勢いが落ちなかったんです。

これにより

「4stと2stは購買層が違う」

という事が分かりMVX250Fが開発されたというわけ。

MVX250Fカタログ写真

16インチのコムスターホイールにインボードディスク、ビキニカウルなどVT250Fと通ずる物を持ちつつも、エンジンはV型三気筒という世界チャンピオンにも輝いたGPレーサーNS500に通ずるもの。

NS500とMVX250F

「NS500のフィードバック」

という事を大々的に謳いました・・・が、ご存知の方も多いようにMVX250Fは

「ホンダの失敗作」

と言われるほどお世辞にも良いバイクとは言えませんでした。

MVX250Fエンジン

そもそもNS500とは大きく異なるエンジンレイアウト(NS500はリアに二気筒)で、レプリカというよりはオマージュでした。

そして焼き付きを防ぐためにかなり濃いめなオイル供給だったため、ナンバーが見えなくなってしまうほど飛び散るオイル。

チャンバーレイアウトの問題でバッテリーなど他の部品を焼いてしまう等の問題。

そして冷却に問題があった事もあり焼き付きを起こす人が多かった。

MVX250F

八木澤さんを始めとした当時の開発に携わった方々も

「今にして思えば、我々は2stをよく分かっていなかった。世界一メーカーという奢りがあった。」

と当時を振り返っておられました。

処女作の様なものなので無理もないんですが、結果的に天狗となった鼻を折られる形に。

ただまあこの失態があったから後があるわけで。このMVX250Fが糧となったのは事実です。

主要諸元
全長/幅/高 2010/735/1155mm
シート高 780mm
車軸距離 1370mm
車体重量 155kg(装)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17L
エンジン 水冷2サイクルV型三気筒
総排気量 249cc
最高出力 40ps/9000rpm
最高トルク 3.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ 前100/90R16(54S)
後110/80R18(58S)
バッテリー YB7BL-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B8ES/W24ES-U
または
B9ES/W27ES-U(高速時)
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量 1.7L
推奨トランスミッションオイル ウルトラU(10W-30)
オイル容量 全容量1.7L
交換時1.55L
スプロケ 前15|後40
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 428,000円(税別)
系譜図
MVX250F1983年
MVX250F
(MC09)
NS250R/F1984年
NS250R/F
(MC11)
MC161986年

(MC16)

MC181988年
/SP
(MC18)
MC211990年
/SE/SP
(MC21)
MC281993年
/SE/SP
(MC28)

X-ADV(RH10) -since 2021-

RH10

「ADVENTURE URBAN TRANSPORTER」

X-ADVとしては二代目となる2021年3月発売のRH10型。

・1kg軽量化された新設計フレーム
・電子制御スロットルの採用
・新型FIを採用
・給排気やバランサーの見直しで4馬力向上と1.4kg軽量化されたエンジン
・メットインスペースが+1Lで23Lに
・ウインカーオートキャンセラー
・エマージェンシーストップシグナル
・新型スクリーン

など2021年モデルのNC750X/RH09と共通の変更が多くなっているのですが、X-ADV/RH10はそれに加えて

・DRLの採用
・HSVCSを搭載
・シート前方を絞って足つき性向上(日本仕様はダウンサスも継続採用)
・4速から6速までをロングレシオ化
・DCTのシフトスケジュール設定を2段階から5段階に
・グラベルが加わった5つのライディングモード
(スポーツ/”グラベル”/スタンダード/レイン/ユーザー)
・メットインスペース内にUSB Type-C(15W/5V,3.0A)
・スマートキーのメインスイッチをノブ式からプッシュ式へ変更
・パーキングブレーキをハンドル右側へ移設
・空いたスペースにフェアリングポケットを新設
・4つの表示パターンを選べる多機能5インチカラーTFTメーター
・純正パニアケースをOPで用意(トップはスマートキー連動型)

など更に様々な改良と追加が入っています。

X-ADVデイタイムランニングライト

DRLというのはデイタイム・ランニング・ランプといって簡単に言うと

「シグネーチャーランプを昼間点灯の代わりにしてもOK」

という2020年末から解禁された制度で、ホンダとしてはこのX-ADVが第一号。

光るロゴ

ちなみにDRL点灯中は目尻にあるロゴも光る遊び心つき。

あともう一つ説明が必要だと思われる新機能が

『HSVCS(Honda Smartphone Voice Control system)』

というやつで、簡単に言うとスマホとヘッドセットのBluetooth接続を補佐するシステム。

HSVCS

スマートフォンとヘッドセットを直接ペアリングするのではなく、間に本体に内蔵されたBluetoothユニットを挟む形で

・ナビ(GoogleMapで矢印をメーター表示)
・電話
・メッセージ送受信(SMS)
・音楽

をスマホを操作せずバイクに乗りながら行えるようになる。※2021/11/28時点ではBluetooth4.2以上のAndroidのみ

これだけだとバイクが介入する必要性があまり無いように感じられるもののそうでなく、これの肝となる部分は左ハンドルに備え付けられたセレクトスイッチ。

HSVCSスイッチ

例えば電話やSMSなどが来るとヘッドセットから

「電話に出るor電話に出ない」

「SMSを読み上げるor読み上げない→音声入力で返信するor返信しない」

という風に二択方式の案内が入り、ハンドルについている物理スイッチの左右でそれぞれYES/NOを選択出来るようになる。説明するまでもないですが、こうすることでグローブをつけたままで確実な操作が出来るようになる。

更にはアプリがフリーズなど応答を停止した場合も自動で再起動を掛けてくれる機能付きだから、スマートフォンはメットインスペースに新たに設けられたUSB Type-Cソケット(15W/5V,3.0A)に繋いで放り込んでおけばOK。

HSVCSスイッチ

より洗礼されたスマートキーも合わさって

「煩わしさを徹底して排除した形」

になったのが今回の一番の変更点じゃないかと。フレームもステア周りの剛性が上げられて走りにも磨きが掛かっているんですけどね。

ところでX-ADVがこれほど贅沢というか高待遇な改良が加えられたのは、弟分などが登場している事からもお分かりの通り大成功を収めたからというのがあります。

X-ADVのフロントとリア

X-ADVは約120万円とNC兄弟の中でも最高値なのですが、それにも関わらず初代モデルはMCN(イギリスのバイク誌)によると、2019年までに世界で約32,000台(ヨーロッパだけで7,500台)のセールスを記録。近年のホンダ車を代表するスマッシュヒットモデルとなりました。

ちなみに免許制度の関係で需要が小さいであろう日本でも年間500台前後の販売となっています。

このヒットの要因が何処にあるのかといえばズバリ

「ビッグスクーターの概念を覆したモデルだったから」

という点に尽きるかと思います。

X-ADVサイドビュー

先代でも少し話しましたがビッグスクーターは

・パワーユニットが埃を被る下側にある
・車重やバネ下が重くなりがち
・メットイン機能でシート高が上がるので大径ホイールが難しい
・同理由でロングストロークのサスペンションなども難しい

といった問題があることから

「オフロードとスクータースタイルを両立させるのは難しい」

というのが現実問題としてあった。だからオンロードとしてコンフォートやスポーツに振るしか無かった。X-ADVはそんな定石を覆した形。

クロスオーバースタイル

とはいえ実際のところNC派生の新型スクーター(X-ADV)を造るプロジェクトが始まった際も、最初からこのSUVスタイルだったわけではなく、インテグラのような従来スタイルの案もあった。

では何故SUVスタイルに方針決定されたのかというと、レジャーでも使えるビッグスクーターがほしいという要望がフランスやイタリアからあったというのも要因なのですが、決定打となったのはプロジェクトリーダーの見崎さんいわく

「こういうバイクがあったら楽しいよね」

というEZ-9に通ずる実にホンダらしい至極単純な理由から。

SUVデザイン

そしてそれに呼応するようにそういうのが大好きなイタリアホンダ(アフツイと同じMaurizio Carbonaraさん)がノリノリでSUVコンセプトデザインを作成。これがX-ADVの始まりになります。

参照:How the Honda X-Adv went from concept to reality|MCN

実際に形にすることが出来たのはX-ADVのパワーユニットがスクーターではなく一般的なオートバイだからというのが大きいというのは先代でも話した通り。

ディメンション

でもX-ADVが絶妙だったのはここから。

というのも見てわかるようにメットイン機構を設け、そのためにリアホイールを15インチにインチダウンするなど、決してスクーターが持つ利便性という武器を捨ててまでオフロード偏重にしているわけではないから。

ラゲッジスペース

「じゃあオフロードっぽいのはただの飾りか」

っていうと決してそうではなく、開発にはホンダのフラッグシップアドベンチャーでありガチンコアドベンチャーでもあるアフリカツインのメンバーも招集されノウハウが注入されました。

しかしそこで目指したものはアフリカツインに迫れるような性能を持つ優れたアドベンチャーというわけではなく

「オフロードを走ってもワクワク出来るエモーショナルを持たせる」

ということでした。

大ヒットとなった要因は間違いなくここで、X-ADVはコンセプトとパフォーマンスそのどちらも大事にしたのは心を躍らせる『ワクワク感』だったわけです。

2021X-ADV

今までにないタフなルックスを見て心が躍る・・・だけじゃない。

乗ってみるとメットインがあってゆったり座れるポジションだから街乗りも楽だけど、あくまでスクーターに擬態した形だから足回りのバタつきや鈍重さが無いからスポーティな走りを楽しめる。

豊富な低速トルク&超低燃費なエンジンとクラッチ不要のATだからストップアンドゴーの多い街乗りに最適だけど、ベルトによる無段階変速ではなくDCTだからエンジン回転数の変化を楽しみながらの走ることも出来る。

そして何よりエンストの心配無用でアクセルワークに集中できるから、躊躇なく道を外れて悪路を楽しく走ることだって可能。

X-ADVフランス仕様

X-ADVはコミューターの要件を満たすプレジャー要素の塊みたいなモデルになっているから、それが結果として

「平日はコミューターとして、休日はアドベンチャーとして使えるバイク」

という評価を獲得し、多くの人をワクワクさせているという話。

コミューターとして使うも、アドベンチャーとして使うもオーナー次第。スポーツ多目的車(Sport Utility Vehicle)というコンセプトに偽りなしですね。

余談・・・

ご存知の方も多いとは思いますが、ホンダは昔からAT(クラッチレス)の可能性を広げるために色んなタイプのAT車を出しては受け入れられず消えていった歴史がある。

そんな歴史を持つだけにX-ADVのヒットは本当に感慨深いものがあるし、同時にそんな歴史があるからこそX-ADVを造れたんだろうなと。

主要諸元
全長/幅/高 2200/940/1340mm
シート高 790mm
車軸距離 1580mm
車体重量 236kg(装)
燃料消費率 27.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 13L
エンジン 水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒
総排気量 745cc
最高出力 58ps/6750rpm
最高トルク 7.0kg-m/4750rpm
変速機 電子式6段変速(DCT)
タイヤサイズ 前120/70R17(58H)
後160/60R15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
FR6G-11K
推奨オイル Honda純正ウルトラG1(10W-30)
オイル容量 全容量4.0L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L (クラッチ含む)
スプロケ 前17|後38
チェーン サイズ520|リンク118
車体価格 1,200,000円(税別)
系譜図
NC700S2012年
NC700S/X/INTEGRA
(RC61/63/62)
NC750S2014年
NC750S/X/INTEGRA
(RC70/72/71)
2016NC750S2016年
NC750S/X
(RC88/90/89)
XADV2017年
X-ADV
(RC95)
2021NC750X2021年
NC750X
(RH09)
RH102021年
X-ADV
(RH10)