「High tech armed Pure Sport」
大幅に生まれ変わった2015年からの七代目R1こと2CR(15-17北米仕様)とBX4(18-19欧州仕様)型。
外装もエンジンもフレームもホイールも何もかも変わったから大幅というより全面維新というかもう別のバイクというか。
まずもって見た目が明らかにそれまでのR1と違いますよね。
今までMotoGPマシンのM1とR1は似ても似つかないデザインだったんだけど、このモデルは明らかにYZR-M1に限りなく近い。
クロスプレーンもそうだけどもうスーパースポーツというよりレーサーレプリカと言ったほうが正しい気がしないでもない。
中でもライトを意識させないデザインは流石ヤマハGKと言える所。
ちなみに本当のライトはダクトの左右にある六角形のような物でローでは片目、ハイで両方が点く様になっているわけですが、あまりにも攻めたデザインだったので社内コンペでも結構反対意見があったそう。
でもプロジェクトリーダーの藤原さんが一目見て
「コレでいこう」
と即決してこの形になったんだとか。
肝心の中身の方ですが、これがまた見た目に負けないくらい凄い。
何と言っても上げるべきは市販車初となる六軸姿勢制御センサー。
出力を上げることが苦手なクロスプレーンで200馬力を叩き出したエンジンも凄いけどそれ以上にコレが凄い。
「ピッチ」「ロール」「ヨー」と「前後」「左右」「上下」
つまり全方位をセンサーで自動的に感知しECUが自動で演算、それに合わせた出力を行なう。
これにより
1.バンク角に合わせた出力を行なうTCS(トラクションコントロールシステム)
2.横滑りを防止するSCS(スライドコントロールシステム)、
3.タイムロスに繋がる不用意なウィリーを防ぐLIF(リフトコントロール)
4.ロケットスタートを支援するLCS(ロウンチコントロール)
5.機敏なシフトアップを支援するQSS(クイックシフト)
※2018年モデルからはシフトダウンにも対応したQSSへ
これらを実現。
それに合わせてメーターも完全なデジタルへと変更。
もうサーキットでタイムを出すよりコケる方が難しいんじゃないかと思えるほどの数々・・・マシンに乗っているではなく、乗せられているというのはこのR1で現実のものになりましたね。
さてサラッと言った200馬力ですが、それを可能にするために行ったのが更なるビッグボア化。
先代も1mmボアアップしてたんだけど、ソコから更に1mmボアを広げストロークを短くし、圧縮比アップとフィンガーフォロワー式による高回転化で200馬力を達成。
さらに恐ろしいことにビックボア化、つまりピストンやシリンダーは横に広くなっているにも関わらずエンジン幅が広がるどころか34mmも縮小し、ついでに4kg減。
でも一番の驚きはチタンコンロッドでしょうね・・・チタンコンロッドってこれまたサラッと言ってるけどそんなバイクは海外メーカーの300万も400万もする超高級バイクくらい。
ヤマハ自身もチタンコンロッドなんてYZF-R7(4本で100万)くらいだったはず。
ただ驚きはこれに留まらず一つの目玉がマグネシウムホイール。
コストの面から量産化が難しいので敬遠されがちなのに標準採用。
大幅なバネ下の軽量化によるハンドリングの向上に繋がる物なので、何としても絶対に採用する事を決めていたんだそう。
ちなみにコレは小話なんですがこのマグホイールを実現するのに一番大変だったのは社内にいる
「マグは燃えるから危ない」
という偏見というか誇大解釈を持った人達だったとか何とか。言うほど燃えないそうです。
他にもアルミタンクだったりとブレーキキャリパーが6potから新時代のMOSキャリパーっぽい4potになってたりと書ききれない。何でもこのキャリパーはBremboへの換装が容易に出来るようにピッチを同じにしてるんだとか。
ヤマハ自身も書ききれないのかR1としては初になるABSについては何も振れない始末。
そしてこのモデルから「Mモデル(2KS)」が登場しました。
標準モデルとの違いは走行に応じて勝手に減衰力を自動調整してくれるという反則のような機能を持ったオーリンズの電子制御サスペンション。
さらに専用カーボンカウルに加えCCU(Communication control unit)も搭載。
これは走行を記録するものでサーキットなどでのタイム測定をしてくれるもの。何でもスマートフォンと連動してるとか。
これだけの造りしてるだけあってノーマルでも2,376,000円、Mになると3,186,000円ともはや高級車に。
あまりにも高くなった為か廉価モデルのYZF-R1Sも登場。
コンロッド:チタン→鋼鉄
EGカバー:マグ→アルミ
ホイール:マグ→アルミ
エキパイ:チタン→ステン
と材質を変更してコストを抑えたぶん少し重くてピークパワーも抑えられてるけど電子制御はクイックシフター以外はそのまま揃えてる。
ただ残念ながら日本への入荷予定は無し。
2016年にはヤマハ創立60周年としてUSヤマハインターカラーが再び登場。
大人気だった4.5代目5VYインターから10年も経っている事に驚きですね。
しかし勢い止まらず2018年にはR1生誕20周年を記念してYZF-R1 GYTRも発売。
GYTRというのは『GENUINE YAMAHA TECHNOLOGY RACING』の略で、要するに純正チューニングマシン。
・ohlinsのFGRTとTTX
・Brembo
・アクラフルエキ
・レース用チューニング
・カーボンカウル
・ヤマハレーシングのコーチング
などなどで限定20台で約500万円。限定R1と言っていいのか微妙なところですね。
さて津々浦々と書きなぐりましたがまとめると、変更点を見れば分かってもらえる通りYZF-R1は完全に『サーキット』にターゲットを潔いくらい絞ったモデルとなりました。
造りから見ても開発陣の発言から見てもそれが見て取れますね。
シート高なんて先代から一気に3cmアップでR6も真っ青な足つきです。
YZF-R1はレース規格に囚われずツイスティロード最速というコンセプトとして生まれたバイクだったものの、それが見事に大成功しレースの規格がR1に合わせてきた事でR1も方向性を変える事となった。
そしてそれはこの2015年モデルで決定的なモノに。
R1が作った分野をR1が終わらせる・・・皮肉な話というか何というか、考え深い事です。
一体どうしてこうしたのかプロジェクトリーダーの藤原さんはこう仰ってました。
「スピード違反が厳しくなって楽しめるシーンが無くなったから。」
・・・まあそうですよね。
もうSSを公道で楽しめる時代でもないし場所も無い。それに社会的責任が大きくなっている以上避けられない。
「これで峠を攻め込んで楽しんでね」
なんてもう今の時代口が裂けても言えないですし。
「それならもういっそのことをサーキットで楽しむことだけを主観に作ったほうが良い」
となるのも分かる話。
ただこれは年を追うごとに需要が落ち込んで台数を見込めなくなった事も大きく関係していると思います。
スーパースポーツが予約しないと生産されずに買えなくなるなんて全盛からすると考えられない話。
さて・・・最後に
このR1を造られたプロジェクトリーダーの藤原さんは初代R1の頃からエンジン担当として深く関わってきた方です。
そんな藤原さんがこのR1を造る際に決めたことがあります。
「No Excuse(言い訳しない)」
これは初代のコンセプト
「妥協しない」
から習ったもの。
方向性こそ違えどそんな初代から続く精神はこのR1にも受け継がれているんですね。
主要諸元
全長/幅/高 |
2055/690/1150mm |
シート高 |
855mm [860mm] |
車軸距離 |
1405mm |
車体重量 |
199kg(装) [201kg(装)] |
燃料消費率 |
– |
燃料容量 |
17.0L |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 |
998cc |
最高出力 |
200ps/13500rpm |
最高トルク |
11.5kg-m/11500rpm |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前120/70ZR17(58W) 後190/55ZR17(75W) [後200/55ZR17(78W)] |
バッテリー |
YTZ7S(F) |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
LMAR9E-J |
推奨オイル |
ヤマルーブRS4GP ※フルシンセのみ |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量4.9L 交換時3.9L フィルター交換時4.1L |
スプロケ |
前16|リア41 |
チェーン |
サイズ525|リンク114 |
車体価格 |
2,200,000円(税別) [2,950,000円(税別)] ※プレスト価格 ※[]内はYZF-R1M |
年次改良
2018年
・クイックシフターのダウン対応
・ECUの見直し
・電子制御サスをEC2.0にアップ
系譜図