DUKE390 -since 2014-

DUKE390

DUKE125の構造からDUKE200の影を見抜き、見事に当てて満足していたマニア達もこの390は予知できなかった事でしょう。

まあでも無理もない話です。125cc並の車体に誰が400のエンジンを積んで来ると予想できたでしょうか。

デューク390

そんなスモールDUKEシリーズの長男になるDUKE390ですが厳密に言うと排気量は375ccです。何で390なのかといえばKTMが90という数字が好きなだけっていう単純な理由。

そしてこの390は200や250のDUKEに比べてちょっと異質。っていうかかなり異質。

DUKEシリーズのボディは全て共通なんですが、超短いホイールベースもスマートで軽量な車体も小排気量のライトウェイトスポーツだから成せた事。

トラスフレーム

トラスフレームも、というかトラスフレームというのは他のフレームよりも”載せるエンジン有りき”に一から考えて作られるフレームなので流用性が非常に乏しい。それなのに有りきのはずのエンジンを変えちゃったら元も子もない話。

この390を出すにあたって共通である車体の方も見直しが入ったんですけど、それでも375ccのエンジンが収まりきれず、KTMがどうしたかといえば・・・

DUKE390エキゾースト

干渉する部分のエキパイを凹ませるという荒業に出ました。日本メーカーなら絶対にしないような荒業というか力技ですよね。

90って数字を使いたいためか分からないですけど本当は350ccくらいで想定したのを無理矢理+25cc拡大したみたい。

そうまでして積まれたエンジンは375ccで44馬力も発揮するパワフルな物なので足回りも合わせて硬くしてるですけど、もともと上で言った通りとても400クラスの車体じゃない事と軽すぎる事で非常に玄人仕様な出来になってる。

なんか初代ファイヤーブレードであるCBR900RR(SC28)やビューエルのXBシリーズを思い出しますね。軽くてショートホイールベースでパワフルだった事からエキスパート向けでした。

どういうことか分からない人に言うと簡単に吹っ飛ぶと言う事です。

エンジン:水冷4サイクルDOHC単気筒
排気量:375cc
最高出力:
44ps/8500rpm
最大トルク:
3.56kg-m/7250rpm
車両重量:139kg(乾)

系譜図
KTMとDUKEについて

KTMについておさらい

デューク125

2011年
DUKE125

デューク200

2012年
DUKE200

デューク390

2014年
DUKE390

デューク250

2015年
DUKE250

DUKE200 -since 2012-

DUKE200

「絶対出る!絶対出る!問題はいつ出るかだ!」

と言われてたDUKE125の兄貴分にあたるDUKE200ですが出たのは一年後の話でした。

ほぼ125と同じ造りで違うのはエンジンのボア・ストローク比だけ。

欧州では共通のボディで排気量だけ上げたバイクを出す場合は一般人が簡単にボアアップ出来ないようにストロークも変えないと売っちゃいけない法律があるんですね。知りませんでした。

つまり”腰上(シリンダーやピストン)だけ変えてDUKE125をDUKE200に”っていうのが出来ないようになってます。

ずいぶんと厳しい規制ですね。向こうはそういう事をやる人が多いんでしょうか。まあ日本でも4miniのボアアップは結構メジャーですけど。

KTMデューク200

んでこの200ですが125と違って欧州免許を気にしなくていいのでグーンっと上がって26馬力も発生するエンジンとなってます。

それでもほとんどパーツは一緒なので車重は僅か+2kgだけ。

恐らくこのモデルがスモールDUKEシリーズの本命でしょうね。
スモールデュークシリーズとしては三男坊になるけど、軽さとパワーのバランスから言っても一番スモールデュークらしいデュークかと。

エンジン:水冷4サイクルDOHC単気筒
排気量:199.5cc
最高出力:
26ps/10000rpm
最大トルク:
2.0kg-m/8000rpm
車両重量:129kg(乾)

系譜図
KTMとDUKEについて

KTMについておさらい

デューク125

2011年
DUKE125

デューク200

2012年
DUKE200

デューク390

2014年
DUKE390

デューク250

2015年
DUKE250

DUKE125 -since 2011-

DUKE125

スモールDUKEの第一弾として発売されたのが末っ子となるDUKE125

車重が乾燥で127kgしかないという超軽量モタードで、エンジンはモトクロス用に作られた125ccの水冷単気筒の物をベースにしてるだけあってクラストップの15馬力を発揮。

末っ子といいつつ4st125では最速の部類。

本当は15馬力以上出せるんだろうけどEUの免許制度(15馬力まではA1)っていうのを考慮してるんだろうね。まあこれはDUKEに限らずYZF-R125なんかもそうだけど。

デューク125フレーム

フレームはクロモリ鋼管パイプフレーム、そして補強骨をあえてみせるシャレオツ(死後)なアルミ製スイングアーム。

足回りも倒立サスにラジアルマウントキャリパーで125としては必要十八分くらいある。

で、ですね。

実はこのDUKE125が出た時、KTM好きなマニア達の間で非常に話題になったことがあります。

「これ絶対もっと上の排気量のDUKEが控えてるわ!」

って。

というのも先述の通り明らかに125ccだけの為にしてはオーバースペックのような車体。
さらにエンジンスペースや強度の余裕やマウントなどの構造で見抜いたんでしょうね。さすがマニアとしか言いようがありません。まあすぐにアナウンスがあったんですが。

KTMデューク125

そんな125ですが・・・まあ初期型はトラブルの嵐でした。冷却水やフルードといった液体系のお漏らしやジェネレーターのトラブルなどなど。

海外メーカー&処女作&インド生産っていうトリプルコンボなので仕方ないっちゃ仕方ない。

でもABSが付いた現在のモデルからはそういったトラブルが解消したみたいですね。全く心配ないかと言われれば疑問も残りますが、まあ遊びバイクですし。

エンジン:水冷4サイクルDOHC単気筒
排気量:124.7cc
最高出力:
15ps/10500rpm
最大トルク:
1.22kg-m/8000rpm
車両重量:127kg(乾)

系譜図
KTMとDUKEについて

KTMについておさらい

デューク125

2011年
DUKE125

デューク200

2012年
DUKE200

デューク390

2014年
DUKE390

デューク250

2015年
DUKE250

KTMについておさらい

KTM

日本でKTMを知ってる人はどのくらいでしょう。

オーストリアのメーカー(オーストラリアじゃないよ)で主にオフロードで有名というかオフロード専門メーカー。

オフのレースやダカール・ラリー等で優秀な成績を収める名門なのでオフ好きの間では結構有名だったりするわけですが、近年インドのバイクメーカーバジャージ・オートが筆頭株主になった事でオンロードバイクも出すようになってきたわけです。

創業当初はオフロード専門メーカーというわけではなくMVアグスタからエンジンを買ってレースに出場したりもしてました。

KTMの社名の由来ですが

ハンスとエルンスト

K=創業時の出資者だった投資家のErnst “K”ronreif(エルンスト クローノライフ)

T=創業者であるHans ”T”runkenporz(ハンス トゥルンケンポルツ)

M=創業時の土地であるオーストリアのザルツブルク州”M”attighofen(マッティヒホーフェン)

となってます。

マッティングホーフェン本社

「クローノライフ・トゥルンケンポルツ・マッティヒホーフェン(KTM)」

凄く長いですね。

レッドブル

ちなみに”翼をさずける”で有名なレッドブルも同じオーストリア ザッツブルグ州の企業。

その為か両社は非常に仲が良かったりします。

更に上げるならハスクバーナって聞いたことありませんか?

ハスクバーナ

もともとは芝刈り機やチェーンソーのメーカーでバイクのチェーンを作ってる内にいつの間にかエンジンからフレームまで作るようになっていったってユニークなスウェーデンのメーカー。

バイク部門はハスクバーナモーターサイクルといってもうチェーンソーのハスクバーナとは関係ないですが、アグスタやBMWといったメーカーにたらい回しになっていて今はKTMに拾われてます。

フサベル

ちなみにアグスタへと吸収される際にハスクバーナを辞めていったエンジニア達で立ち上げた会社であるフサベルも今はハスクバーナと同じくKTMに拾われてます。元サヤというか何というか。

ちなみにどのメーカーも基本的にオフ車メーカーです・・・どんだけオフ車好きなんだよって話ですが。

さて話を戻して

実はKTMは自転車(ロードバイク)も作ってますが一応分社化された別会社となってます。

よくよく考えてみるとバイク作ってる会社で自転車作ってるメーカーって無いですよね。ヤマハは電動自転車を出してますがモーターのみで車体はブリヂストンだし、スズキに至ってはパナソニックのOEMってだけ。意外だな。

話が戻ってませんでした・・・

KTMには一貫したコンセプトがあります。

それは「READY TO RACE」

Ready to Race

これはどういう意味かというと、別にレースに出ろと言ってるわけではありません。

オーナーがバイクに乗っている内にレースに興味を持ったら、いつでも出れるような純粋で冒険的で極限性能なバイクをKTMは作っている。

という意気込み的な意味。

まあそんなこと言われても?ですよね。

KTMバイクの特徴を簡単に説明するなら

「何を差し引いてでも軽さ(パワーウェイトレシオ)を最優先」

という事。

耐久性より軽さ!メンテナンス性より軽さ!扱い易さより軽さ!コストより軽さ!

とにかく軽さです。車重しか見てないんじゃないかってくらい軽さに拘りを持っています。

軽さへのコダワリは半端なものじゃなくウェアやパーツといったコラボモデルですら軽さ第一です。

そのためかKTMはエキスパート向けという非常にマニアックなイメージに。まあ販路の問題や車種もニッチな物が多かったのもありますが。

しかし上で言った通りバジャージ・オートの横槍かアジア市場への参入という利害が一致したのか分かりませんが、方針転換によりエントリーモデルと成り得るスモールDUKEシリーズを出したことでそのイメージも大分変わってきました。

このサイトへのリクエストでもDUKEシリーズを希望する方が思いのほか多くて驚きました。

今回はそんな新生KTMとも言えるスモールDUKEシリーズを紹介します。

系譜図
KTMとDUKEについて

KTMについておさらい

デューク125

2011年
DUKE125

デューク200

2012年
DUKE200

デューク390

2014年
DUKE390

デューク250

2015年
DUKE250

オフロード系

オフロードとは

人気の上り下がりが激しいオフロード。

といっても低空飛行が多く、オンロード車に比べると(特に国内では)比較的ニッチなカテゴリ。でも実はジャンルごとに区切って言えば非常に歴史が長く、一番技術革新に貢献したクラスだったりします。

【特徴】

とにかく細く、軽く、ハンドル切れ角がとても大きい。

悪路による転倒を前提としているので部品点数が少なく損傷に強い。

オンロード車とは比べ物にならないほどのリフトアップとサスストローク量。

走破性と安定性を取るためにフロントは21インチが基本で構造上シート高が絶望的に高かったりする。

上記の理由から舗装路はあまり得意ではなく、高速巡航などはかなり苦手な部類。

【歴史】

ひとえにオフロードと言ってもスクランブラーとかトレールとかモトクロッサーとか色んな分け方があるので初心者の方は結構混乱するんじゃないかと思います。そこでまずその言葉が何を意味しているのかという事から簡単に説明したいと思います。

【スクランブラー】

スクランブラーとは

一言で簡単に表すなら、アップライトなポジションに加えて地面と当たらないように最低地上高やマフラーを少し上げたりすることで未舗装路の走行を考慮している

『オンロードベースのオフロード車』

という感じ。

まだオフロードのスタイルが確立する前の1960年頃に悪路を走れる・・・というよりも

「悪路をやり過ごせるようなバイク」

として誕生したモデル。

レトロブームの到来でドゥカティのスクランブラー(60年代に流行ったモデル)などが復刻されるようになっています。

【モトクロッサー/エンデュランサー】

モトクロッサー

ザックリ言うとナンバーが取れない(公道を走れない)競技用オフロード車の事。

・モトクロス(モトクロッサー)

・エンデューロ(エンデュランサー)

の二種類があるんですが簡単にいうと、モトクロッサーはジャンプなど様々な障害物があるコースで競うレース向けのモデル。1957年から続く世界モトクロス選手権を頂点にレースを視野に入れて造られている面が大きく、MXなどと略されてたりもしています。

走破性

一方でエンデュランサーはコースになっていないコース、整備されていない未舗装路を走破する耐久(エンデューロ)レース向け。極端な事をいうとラリーなどがそう。

サスペンションの硬さやタイヤの種類、それにタンクや加速の味付けなど細部がそれぞれに特化した形になっています。

モトクロッサーとエンデュランサー

例えるなら

・モトクロッサー=短距離走
・エンデュランサー=長距離走

という感じです。

【トレール or デュアルパーパス】

トレール・オフロードとは

恐らく最も多くの人がイメージするであろうこのページの主題であるオフロード車。

舗装路も未舗装路も走れるうえに公道走行可能なモデルで場合によってはトレールとかデュアルパーパスとか言われています。日本車でいうとCRF250L/SEROW/KLX250など保安部品が付いているモデルは基本的にここに該当します。

特徴を簡単にいうと最初に紹介したスクランブラーよりも更に最低地上高が高く、またフロントフォーク長が非常に長い事。これはデコボコ道を進む際にストローク量が多くないと底打ちといって衝撃を吸収できず吹っ飛んでしまうから。

ちなみにオフロードの歴史はとっても長いんですが、この公道を走れる量販車に限って話をするなら始まりはトレールという言葉を生み出した1968年に出たヤマハのDT-1かなと思います。

DT-1

まだオンロードとオフロードのカテゴリーが曖昧だったスクランブラー時代に

・底付きしないロングストロークサス

・悪路でも食いつくブロックタイヤ

・エンジンガードを兼ねたアップマフラー

などなどオフロード走行のツボを抑えた初めてのオフロード主体バイク。アメリカからの要請で作られたバイクなんですが、アメリカのみならず日本でも大ヒットしました。

ダートレース

このDT-1のヒットによりそれまでモトクロス選手権用のスペシャルマシン(モトクロッサー)しかなかったオフロード界の敷居が大きく下がり1970年代には第一次オフロードブームが到来。

そりゃそうですよね、今まで走りたくなかった未舗装路が楽しい道に変わったわけですから。

更に1980年代後半になるとホンダのXL250SやカワサキのKL250などレースで磨いたモトクロス技術を色濃く反映したの走破性の高いモデルが次々と登場。

XL250S

反対に二輪二足(足をつきながらゆっくり走る)という違ったアプローチのSEROWも登場し第二次オフロードブーム(林道ブーム)に発展。休日に山に行くとオフ車乗りで溢れかえる程のブームになりました。

セロー

しかし同時に無差別に山道などを無差別に走り荒らす人たちが溢れ社会問題にもなりバイクの通行を禁止する動きになった事、加えて道路の舗装が進んでいった事で沈静化し、現在は低空飛行が続いているのが現状です。

ちなみに低空飛行なのは日本だけの話で海外ではこういったオフロード系のバイクの方が人気があったりします。最近ではアジアの方でも人気なんだとか。

話が少し脱線しますがオンオフ問わず昨今のサスペンションの礎を築いたのはこのオフロード勢だったりします。

ネイキッドの方で話していたモノサスやツインサス。上で紹介したDT-1を見て分かる通り、最初はオフロード車もツインサスでした。

SL250

しかし飛んだり跳ねたりするモトクロスレースにおいて

「勝つためには初期は柔らかく、奥で踏ん張ってくれるサスペンションが必要だ」

ということでヤマハが1972年に開発したYZ250(モトクロッサー)に採用されたのがモノクロスサスペンション。

モノクロスサスペンション

ストローク量が従来の二倍になり、奥で踏ん張り底打ちしない画期的なサスペンション。

その効果は絶大でそれまで一つ一つ往なしていた凸凹を一気に飛び越えて行けるほどの安定性で圧倒的な速さを誇り

『空飛ぶサスペンション』

と言われました。

YZ250

このモノクロスサスペンションこそがモノサスの原点で現代の一本サスは全てこのサスペンションから。ちなみに倒立フォークも同じ様な理由でモトクロスレースが発端だったりします。

【最後に】

いわゆるオフロードバイクにとって大事なのは走破性で基本的に

モトクロッサー>エンデューロ>トレール>スクランブラー

という当然ながらモトクロッサーやエンデューロがオフロード性能は一番良い構図になります。というか本格的なコースだったり荒れた山道になるとモトクロッサーやエンデューロクラスじゃないと走れなかったりもする場合すらある。

「じゃあモトクロッサーやエンデューロの方が良いのか」

っていうと必ずしもそうとは限らないのが難しい所。

というのもオフロード走行に求められる走破性(性能)とオンロード走行に求められる性能(日常的な扱いやすさ)というのは基本的に反比例する関係にあります。

KLX230

つまりオフロードを走るだけならモトクロッサーに敵うバイクは無いけど、舗装路になるとスクランブラーに軍配があがったりするわけです。誤解を恐れずに言うと上の相関図は

「どれだけオンロード性能を始めとした日常の使い勝手を捨てたか」

という相関図でもある。

ヤマハのモトクロッサー

例えばモトクロッサーはオイル管理がシビアだし、軽量化のためにキック始動オンリーなのが当たり前とかね。

だから初心者が選ぶ時は単に走破性や性能で選ばず

『どれくらい未舗装にウェイトを置いて走るか』

というのを考えて買うのが失敗しないと思われます。まあいきなりモトクロッサー買う人なんて居ないとは思いますが。

※市販車が無いトライアル車は割愛させてもらいました

該当車種

CRF250L/Mの系譜

WR250R/XSEROWの系譜

KLX250/D-TRACKER Xの系譜

DUKE690Small DUKEの系譜

などなど

種類一覧
ネイキッドネイキッド系
ストリートファイターストリートファイター系
オフロードオフロード系
モタードモタード系
マルチパーパスマルチパーパス系
ストリートストリート系
スーパースポーツスーパースポーツ系
フルカウルスポーツフルカウルスポーツ系
ツアラー系ツアラー系
メガスポーツメガスポーツ系
クルーザークルーザー系
スクータースクーター系
クラシッククラシック系

モタード系

モタードとは

端的に表すとオンロードのタイヤを履いたオフロードバイクのこと。

【特徴】

車体はトレール車と同じくなので細く、軽く、ハンドル切れ角がとても大きいので小回りがきく。

同時に多少の未舗装なら走れるが長距離や高速巡航の苦手さも比較的トレール車と同じ。

モタードとは

簡単な見分け方としては車体はオフ車なのにオンロードと同じ17インチの小径ホイールとタイヤを履いているバイクという感じです。

【歴史】

実はモタードの歴史や定義は他のカテゴリよりも明確。ことの始まりは1979年のアメリカ/カリフォルニアにあります。

当時アメリカでは

・ロードレース(いわゆるサーキット)

・フラットトラック(フラットなオーバルダート)

・モトクロス(山あり谷ありジャンプありのオフロード)

が三大レースとして人気だったんですが、そんな中でアメリカのレースプロモーターだったガヴィン・トリップが

「オーケーじゃあこの中で一番速いやつを決めよう」

という事でABCテレビのワイドワールドオブスポーツというスポーツ番組とタッグを組みレースを企画。

ザ・スーパーバイカーズ

『Superbikers』

舗装路とダートと障害物全てを組み込んだ混合コースを作り、それぞれのクラスのトップライダーを集って競わせるというアメリカらしい破茶滅茶なレースを開催しました。

スーパーバイカーズのコース

車種はダートやジャンプがある以上オンロードは無理なのでビッグモトクロッサー(レース用オフロード車)にダートタイヤを履かせるスタイルや、ダートトラッカー(写真下)などが定番でした。

ザ・スーパーバイカーズ

でもモトクロッサーやダートトラッカーってモタードじゃないですよね。実際このアメリカで行われたスーパーバイカーズはモタードの発祥ではありません。

スーパーバイカーズはテレビ企画ということもありすぐに打ち切られてしまいます・・・が、ここで終わらなかった。スーパーバイカーズに参加していた欧州出身のレーサーたちがその文化を持ち帰り自国で開催するようになったんです。

その中でもハマったのが泥遊びが大好きなフランスで、スーパーバイカーズをフランス語に直した

『Supermotard(スーパーモタード)』

というレースを1981年から開催し人気レースに。

FMMスーパーモタード

そうこれがモタードの語源。

モタードはフランス語でバイカーという意味・・・凄く単純ですね。だから国によっては

『Supermoto(スーパーモト)』

とか言う、というかこっちの方がメジャー。ちなみに日本は昔は

『SuperMotors(スーパーモータース)』

とか言ってました。

じゃあなんでフランス(スーパーモタード)の影響でモタードと言われるようになったのかというと、名前こそ同じなもののアメリカ(スーパーバイカーズ)とは違う独自の発展をしたから。

アメリカでは

『ロード/ダート/モトクロス』

が人気レース三強だったのに対してフランスを始めとした欧州では

『ロード/モトクロス』

の二強でダートトラッカーはメジャーではなかった事に加え、コースもカートコースで舗装路が8割と多めに設定されていました。

スーパーモタードのコース

これらによりスーパーモタード(フランス版スーパーバイカーズ)は

『モトクロッサー+17インチとオンロードタイヤ』

という組み合わせが最適解となり独自のスタイル、俗に言うモタードスタイルが確立したんです。

このスーパーモタードは年を追うごとに人気が高まったのですが、その要因の一つとして上げられるのが人気レーサーがこぞって参加した事。

例えば1990年の決勝リザルトを見てみるとこんな感じ。

FMMスーパーモタード

・ウェンレイニー(現ロードレース世界選手権王者)

・ステファンペテランセル(パリダカ王者)

・エディローソン(ロードレース世界選手権王者)

・ブロックグローバー(全米モトクロス王者)

・ギルスサルバドール(全仏スーパーモタード王者)

・ワインガードナー(ロードレース世界選手権王者)

・エリックゲボス(モトクロス世界選手権王者)※ランク外

などなど。

今で言えばマルケスやロレンソやケーシーやカイローリが競い合うようなもの。正にドリームマッチですがコレが実現したのはモタードレースはオフシーズンに開催されていたから。

この豪華絢爛さでモタードレースは更に注目を浴びて人気は爆発し、発祥であるアメリカでも再び競技として復活。2002年には世界選手権にまで格上げされました。

それで肝心の国内ではどうだったのかというと1980年頃には入ってきており

『ターミネーター』

というレースが有志達によって開催されていました。

ただ自主的な面が強かったのでオフロード部はコースに砂を撒くなどで舗装路がメイン。そのためレーサーレプリカベースで挑む人も居たりしてこれまた独自の進化を遂げつつあったんですが、残念ながら長続きしませんでした。

FMMスーパーモタード

ちなみに現在はMFJ公認となり正式なレースが開催されています。興味がある方は【全日本スーパーモト公式サイト】をどうぞ。

話がそれてきたので戻すと、KTMやハスクバーナなど欧州メーカーが強烈なモタードを出す理由もこの欧州人気があるからなんですが、日本メーカーも当然ながら追従しました。

しかしスーパーモタードはモトクロッサーベースで特に日本メーカーは公道走行不可なモデルしかない。そこでモトクロッサーを公道走行可能にしたモデルであるトレールをベースにすることで取っつきやすいモタードを展開。

FMMスーパーモタード

始まりは1998年のカワサキD-TRACKERだったと思いますが、これがそれまでそういうレースすら知らなかった層にまでヒットした事で一気に普及。

その際にオンロードタイヤを履いたオフロード車という見慣れない珍妙さを表す言葉として

「これはモタード(というフランスが火を付けたレースのマシン)だよ」

という形で認識が広まったものと思われます。

【最後に】

モタードはオンとオフという本来ならば反比例する2つを合わせたレースによって生まれたジャンル。そのためオンなのかオフなのかよく分からない形をしている印象を受けると思いますが実はそれライダーも一緒。

モタードの正装は

『ヘルメットとブーツはオフ系、スーツとグローブはオン系』

という面白い組み合わせになっているんです。理由はもちろんオンもオフも走るから。

モタードライダー

コース、バイク、ライダー、その全てが同じ様に混ざり合っているのがモタードの特徴でありカッコよさ。

「全部楽しみたい」

って欲張りたい人にうってつけなバイクと言えるかと。

該当車種

CRF250L/Mの系譜

WR250R/XSEROWの系譜

KLX250/D-TRACKER Xの系譜

DUKE690Small DUKEの系譜

などなど

種類一覧
ネイキッドネイキッド系
ストリートファイターストリートファイター系
オフロードオフロード系
モタードモタード系
マルチパーパスマルチパーパス系
ストリートストリート系
スーパースポーツスーパースポーツ系
フルカウルスポーツフルカウルスポーツ系
ツアラー系ツアラー系
メガスポーツメガスポーツ系
クルーザークルーザー系
スクータースクーター系
クラシッククラシック系

M450R -since 2003-

M450R

ヨシムラがモタードを手掛けるとこうなる的なM450R。ヨーロッパでのモタードレースブームに合わせて発売されました。

元となってるのはDR-400Sです。もう心が折れたので画像を貼ります。

M450Rスペック

SPEC1 119.8万円
SPEC2 149.8万円
SPEC3 198.8万円
の3グレート展開。でも受注生産13台とかなり少ない。

ヨシムラM450R

ヨシムラとしては珍しくレースではなく公道を主体においたスーパーモタードなせいか一番知名度がなく、レーザーラモンRGという芸人さんが乗ってたM250Sと間違われがちだけど、アッチはヨシムラカラーとヨシムラマフラーを付けたコラボモデル(しかもD-TRACKER)なのでM450Rとは全く違うバイクです。

間違うと何されても文句言えないので気をつけましょう。

主要諸元
全長/幅/高
シート高
車軸距離
車体重量 198kg(乾)
燃料消費率
燃料容量
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 449cc
最高出力 50ps以上
最高トルク 4.5kg-m以上
変速機
タイヤサイズ 前120/60-17
後150/60-17
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
スプロケ 前15|後40
チェーン
車体価格 1,198,000円(税別)
[1498,000円(税別)]
{1,988,000円(税別)}
※[]内はSPEC-2
※{}内はSPEC-3
系譜図
POP吉村

1923年~
神の手を持つ男 吉村秀雄

トルネード1200ボンネビル

1987年
TORNADO1200BONNEVILLE

ハヤブサX1

2000年
HAYABUSA X1

カタナ1135R

2001年
KATANA1135R

トルネードS1

2002年
TORNADO S-1

M450R

2003年
M450R

トルネード3零50

2005年~
TORNADO3 零-50

690DUKE -since 2016-

三代目690DUKE

2016年にモデルチェンジしDUKE5となりました。

またまたフルモデルチェンジ。ホイールがRと同じものになりましたが、それよりエンジンがまた全面的に変わりました。

2016LC4

具体的に言うとただでさえビッグボアショートストロークなのを更にビッグボアショートストローク化。そしてヘッドカバーをマグ化しバルブを吸気直打、排気ローラーロッカーアームに変更。これらのおかげで馬力が更に上がって遂に74馬力に。もういいでしょと言いたくなりますね。

DUKE5ヘッド

でもヘッドにもバランサーが付いたことで馬力は上がってるんだけど過激になったというより更に調教された特性になりました。

サスのオフセットも減らしてトレール幅を増やしたしもう本当にネイキッドになりましたね。いやストファイかな。ここまで来るとビギナーが普通に乗っても超ライトウエイトスポーツとして楽しめるでしょう。マニアは690SMC(スーパーモトコンペティション)を買えって事かな。

DUKE5r

R仕様はお馴染みオレンジホイールにBremboモノブロックキャリパー、WPフルアジャスタブルサスペンションを装備。更にリーンアングル・センサー連動ABS、トラコン、スーパーモト・モードといったOPを標準装備。

DUKE5ボディ

まあ何度もいいますがあくまでもそれまでのDUKEシリーズに比べたら調教されたというわけで、他社と比べたらそれでもぶっ飛んだ特性を持っているのは相変わらず。

ちなみにこんなにピークパワーを追求して軽いLC4エンジンの耐久性を疑問視する人が居るかもしれないけど、これも元がエンデューロ用という事で非常にタフに作られてて、KTM自身も最低10万キロは持つように設計をしてる。

ダカール・ラリー ウィナーリスト

しかもそのLC4と同じ技術で作られているRALLYでKTMはダカール・ラリーにおいて無類の強さを発揮していたり。だから信頼性は証明されてます。

ただ軽量化の一環としてウォーターポンプのインペラがクランクと表裏一体で直結してるので劣化とともにエンジン内にクーラントが入っちゃうっていう持病というか問題点があります。

少し入ったくらいではなんともないタフさを持ってはいますが、放置しておくと大変なので買う人や買ったはラジエーター液の水位に注意してね。

2016duke

終わりに・・・

今シングルエンジンで最大排気量となってるのはこのKTMのDUKEを始めとしたLC4エンジンです。というかシングルエンジン、特に大型ロードスポーツはもう死滅状態です。

日本メーカーも過去にはホンダGBやヤマハSRXといったシングルスポーツはありましたがメーカーもそして消費者も多気筒化に流れ消えてしまいました。

KTMデューク

これは思うに

・カタログスペックで見た場合どうしてもマルチに引けを取る。

・シングル感(鼓動感)が騒音規制に引っ掛かってまうので出しにくい。

・軽さが絶対なシングルスポーツだが軽くするにはアルミやマグといったコスト増に直結する素材を多用しないといけない。

・割に合わない(シングル=安いという消費者の意識)

といった問題点を抱えてるからだと思うわけです。

ただそれでも地をはうように出し続け、今となってはシングルスポーツの代名詞とも言えるほどになったKTMのDUKEシリーズ。

SUPERDUKE1290R

最近ではRC8のVツインエンジンを積んだSUPER DUKEなるものを出し世界で絶賛されていますが

「DUKEと言えば690、DUKEと言えばシングルスポーツ」

DUKEシリーズ

このままビッグシングルスポーツの道を極めていって欲しいものです。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:690cc
最高出力:
73ps/8000rpm
最大トルク:
7.5kg-m/6550rpm
車両重量:148kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

690DUKE -since 2012-

690DUKE

690としては二代目となるDUKE4

R専用だった690ccエンジンが積まれて晴れて690になったのかと思ったら、Rをベースに更に改良を重ねてきた。

ダブルしかもダイレクトイグニッションシステム、それにフル・ライド・バイ・ワイヤー(完全電スロ)で馬力は遂に70馬力へ。690ccのシングルエンジンが70馬力とか。そりゃもう良くも悪くもビッグシングルとは思えないほど低回転域はスッカスカですよ。ピストンのペラペラっぷり見たらもう言葉ないです。

それまでのDUKEのトレードマークの縦目二眼をやめてオーソドックスになりましたね。

デューク3ファミリー

まあファミリー並べてみても明らかにデュークだけ浮いてたからコッチが正解なのか。

ただデザイン面でいうとライトだけじゃなくてボディデザイン全体がモタード調からネイキッド調に変わってますね。それを見ても分かる通り、これまでの蹴り飛ばされる様なDUKEは何だったのかと思えるほど調教され乗りやすく、また疲れにくくなっています。

エンジンも外見も手を加えたもんだから先代から90%近い部品が変わったそうで。

DUKE4R

こっちはRモデル。

アクラポビッチマフラーとマッピングの変更で無印より2馬力アップ。

他にもチューニングされたWPサスにBremboのM50、ホイールにガードやシングルシートなどのパワーパーツを装備。更にABSはZX-10Rやディアベルにも使われているBOSCHのGeneration9でSUPERMOTOモードが追加。当然ながらフレームも先代同様強化されるスペシャルモデル。

デューク4

重ねて言うけどDUKE690はこのモデルから先代以上に扱いやすく多目的に使えるネイキッドへと大変貌を遂げました。

まあそれでもひと度回せば元レース用エンジンという事を思い知らされる魅力は相変わらず持ち合わせてますけどね。690ccで70馬力もあるビッグシングルなんだから当たり前ですけど。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:690cc
最高出力:
70ps/7500rpm
最大トルク:
7.1kg-m/6550rpm
車両重量:149kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R

690DUKE -since 2008-

初代690DUKE

ズズッとときは流れて2008年。

今ではお馴染みの690DUKEの初代が誕生しました。620から数えて三代目だからDUKE3。この頃KTMはアメリカのポラリスという会社と提携しています。日本でポラリスって聞いてもピンと来ない人が多いでしょう。

ポラリスインダストリーズはアメリカの企業で元々はスノーモービルなどのメーカーでした。

ポラリス

ところが2000年代後半にRZRというヤマハっぽい名前の四輪バギーを開発しこれが空前絶後の大ヒット。

そんじょそこらの大ヒットとは比べ物にならないほどの大ヒットで、あっという間にパワースポーツ車両(=バイク、スノーモービル、オフロード車などの総称)部門においてヤマハ・スズキ・カワサキ、果てはホンダまで抜いて世界一となりました。

バイク部門ではクルーザーいわゆるアメリカンの生みの親であるインディアンを買収し、更にはヴィクトリーモーターサイクルという自社ブランドも展開。

ヴィクトリーモーターサイクル

アメリカで非常に高い評価を得ている今一番勢いのあるメーカーです。

話がソレましたね。

しかしKTMがまさかクルーザー作ってるメーカーと手を結ぶというのは意外ですね。まあ本業のATVは同じオフロードだから良いのかもしれませんが。ちなみにこの提携は試験的なものでわずか二年ほどですけどね。

その後KTMは2016年現在インドのバジャージ・オートと提携しています。スモールデュークが生まれたのはその影響です。>スモールデュークの系譜

話が戻ってない。

デューク3

新しく生まれ変わった690DUKEですが、久しぶりのフルモデルチェンジということでほぼ変わっていますが、一番はLC4エンジンを新しく設計しなおしたということ。

ああ、トラスフレームもこの代からですね・・・チューブラーフレームって言ったほうがいいのかな。

DUKEとSM

「とにかく軽く」

というモットーはこの新DUKEでも同じで、このフレームなんと重さが9kgしかありません。乾燥重量で148kg・・・凄い。

しかしやっぱり一番はエンジン。

セントラルバランスシャフト

66馬力を発揮するようになった新型LC4はセントラルバランサーシャフトを採用してるのが特徴。

でもそれより感動なのがシリンダーヘッドカバーですよ。

2008LC4エンジン

ヘッドカバーが斜めに組み付けられてるのが分かりますか?

これはバルブクリアランス調整などを容易にできるにようにとのKTMの計らいというかKTMのLC4に対する本気度の現れ。

LC4ヘッド

正にREADY TO RACEです。

しかしDUKEに限った話で言うと新しくなった690はそれまでのDUKEより更にモタードからネイキッド寄りになりました。

デューク3

これは長距離も熟せるようにするためとの事。

でも実は690といいつつ排気量は653ccだったり・・・理由ですか?KTMが90という数字が好きだからです。

そんな中で2011年に足回りとフレームを強化したDUKE Rが登場したんですが、このモデルでストロークが伸ばされ排気量が表記通り690cになりました。

DUKE3 R

Bremboのラジアルモノブロックキャリパーやカーボン製マットガード、R(ファクトリー)の証であり同じように見えて実は剛性が全然違うオレンジフレームなどなど。

でもそんな豪華装備に目が行きがちだけどDUKEの面白いところは必ずしもRが上位互換というわけではないということ。剛性と足の硬さの違いが明確て、ヨレて乗り手を楽しませるDUKEと、カッチリキビキビなRといった感じ。

でもどうせ買うならRがいい・・・って考えちゃうのは消費者のSAGAってやつですね。まあお買い得ですし。

エンジン:水冷4サイクルSOHC単気筒
排気量:653cc
最高出力:
65ps/7500rpm
最大トルク:
6.6kg-m/6550rpm
車両重量:148kg(乾)

系譜図
デューク1

1994年
620DUKE

デューク2

1999年
640DUKE

デューク3

2008年
690DUKE/R

デューク4

2012年
690DUKE/R

デューク5

2016年
690DUKE/R