GSX250S KATANA(GJ76A)-since 1991-

GSX250S

「もうひとつの新しいKATANA」

どこからどう見てもカタナなGSX250S KATANA。

GSX250S 刀

250カタナの話をする前に一つ説明しておかなければならないのがGSX250Sという名前について。

「GSX250SはCOBRAでKATANAはGSX250SSだ」

と言われている事があります。確かにあっちもGSX250Sなんだけど、どちらかと言うとCOBRAをGSX250Sというのが間違い。

通称名機種名型式
COBRAGSX250SGJ73A
Bandit250GSF250GJ74A
GSX250S 刀GSX250SSN/MGJ76A

カタログに記載されている名前や皆が呼ぶ時のバイク名は通称名で、商品呼称というのはどの年式かを表すときに使われる言葉。

250KATANAの事をGSX250SSN/Mと呼称で呼ぶ人がマニアしか居ないのを見てもGSX250Sといえば250KATANAでCOBRAはCOBRAです。

ただ例外としてV125やGSX-RといったバイクはK5とかK8とか商品呼称の後に付くモデルイヤーコード(K5なら2005)で呼ばれていたりします。

このサイトでもそう書いていますが、それは通称名や型式が変わらないままモデルチェンジを繰り返したりしているから。

「V125/CF46Aに乗ってる」←年式が分からない

「UZ125K5に乗ってる」←2005年式だと分かる

だから”K5″とか使われているわけです。

だいぶ話が反れました。GSX250S KATANAの話をしましょう。

GSX250Sカタログ写真

250カタナはスズキの250ラッシュの最後を飾ったモデル。

当時スズキは今まで紹介してきたCOBRA、BANDIT250、ACROSS、そしてこのGSX250S KATANAと250cc四気筒車を4車種も出すという豊富すぎるラインナップでした。

何処からどう見てもKATANAな250KATANAのカウルはチンスポイラーやサイドカウルなどはGSX1100Sからそのまま持ってくる一方、ライト周りの顔などは専用に作り直し。

GSX250Sカタナ

何処からどう見てもKATANAなんだけど、何処からどう見てもKATANAに見えるように細部を新しく専用設計してるわけです。

ただ一点だけKATANAに寄せなかった部分があります。それはホイール。

GSX250Sリア周り

KATANAというとフロント19(もしくは16)インチ、リア17インチで星型もしくは6本スポークなんだけど、この250だけはBanditの物をそのまま流用した前後17インチの3本スポークホイール。

これはコストの兼ね合いからだと思うんだけど、KATANAマニアにとってはマイナスポイントのようで・・・。

GSX250S 刀

でも似ていない事に目を瞑れば前後17インチというのは主流のサイズだから、タイヤ銘柄の選択肢も豊富でハンドリングも現代的という多大なメリットがあるんですけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2060/685/1160mm
シート高 750mm
車軸距離 1435mm
車体重量 160kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 248cc
最高出力 40ps/13500rpm
最高トルク 2.7kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)
バッテリー YTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター3.2L
スプロケ 前13|後49
チェーン サイズ520|リンク116
車体価格 565,000円(税別)
系譜図
GS250FW1983年
GS250FW
(GJ71A/B)
GF2501986年
GF250/S
(GJ71C)
GSX-R2501987年
GSX-R250/R/SP
(GJ72A/GJ73A)
コブラ1989年
COBRA
(GJ73A)
バンディット250前期1989年
Bandit250/LTD
(GJ74A)
アクロス1990年
ACROSS
(GJ75A)
GSX250S カタナ1991年
GSX250S KATANA
(GJ76A)
Bandit250後期1995年
Bandit250/V/VZ
(GJ77A)

ACROSS(GJ75A)-since 1990-

アクロス

「NEW URBAN SPORTS」

不人気車として一部の人に有名なアクロス。奇しくも250ツアラーの代表格であるZZR250と同年デビュー。バンディットもゼファーと同年ですし何か因果を感じますね。

このバイクはどこか優しさがあったGSX-R250の前期モデルをベースに作られたツアラーのような・・・ツアラーじゃないようなバイク。

まず何処らへんがツアラー要素なのかというとフレームまで覆ったフルカバーカウルでライダーへ来る熱を遮断。ポジションも比較的アップライト。

そして何より25Lという大容量パーソナルスペースを備えている事。

アクロスメットイン機能

この機能がアクロス最大の特徴ですね。フルフェイスがすっぽり入るほどの大きなスペースでルームランプまで付き、ロックもちゃんと電磁式。

じゃあガソリンタンクは何処にあるのかというとリアシートの下で給油口はテールライトの上。スイッチを押すと蓋がパカっと開く仕組み。

アクロスカタログ写真

これだけ聞くと良く出来たツアラー・・・じゃあツアラーじゃない部分は何処かというと中身にあります。

最初に言いましたがアクロスはGSX-R250前期がベース。バンディット250と同じ45馬力/14500rpmを発揮するエンジンはとても元気でツアラーらしかぬ吹け上がり。

ただそれは裏を返すとそれだけ燃費も悪くなりがちで、シート下に燃料タンクを移したことで燃料タンク容量が12Lしかない事もあり、ツアラーなのに長距離走行はあんまり得意じゃなかったりするわけです。

GXS250Fカタログ写真

「”A CROSS(横断)”なのに横断が得意じゃないとはこれ如何に」

という事でCOBRAほどではないにしろあまり人気が出ず。

でもこれアクロスが悪いって言うよりスズキの売り出し方が悪かったような気が・・・。

GSX250F

確かにツアラーとして見ると疑問点が生まれてボヤケちゃうけど呼称名のGSX250Fの方にして

「荷物を載せられるGSX-R250」

アクロスの広告

とすればもっと魅力が伝わったんじゃないのかな。

主要諸元
全長/幅/高 2020/695/1135mm
シート高 mm
車軸距離 1380mm
車体重量 159kg(乾)
燃料消費率 45km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 248cc
最高出力 45ps/14500rpm
[40ps/13500rpm]
最高トルク 2.6kg-m/10500rpm
[2.7kg-m/10000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)
バッテリー YTX7A-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7HSA
または
U22FSR-U
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.6L
フィルター2.9L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 545,000円(税別)
※[]内は93年モデル
系譜図
GS250FW1983年
GS250FW
(GJ71A/B)
GF2501986年
GF250/S
(GJ71C)
GSX-R2501987年
GSX-R250/R/SP
(GJ72A/GJ73A)
コブラ1989年
COBRA
(GJ73A)
バンディット250前期1989年
Bandit250/LTD
(GJ74A)
アクロス1990年
ACROSS
(GJ75A)
GSX250S カタナ1991年
GSX250S KATANA
(GJ76A)
Bandit250後期1995年
Bandit250/V/VZ
(GJ77A)

RGV-Γ250SP(VJ23A)-since 1996-

RGV-Γ250SP

「RACING CONCEPT 70°V」

既にレーサーレプリカブームが完全に去ったと言っても過言ではない1996年に本当にまさかのフルモデルチェンジ。

延命のモデルチェンジじゃないですよ、本当に何もかも新しく造り直された正真正銘のフルモデルチェンジ。

RGV-Γ250のロゴ

車名がGPワークスマシンと同じになった通り
・アンダーチューブを廃した新設計ツインチューブフレーム
・着脱式超軽量セルスターター(700g)
・キック廃止による新デザインのカウル
・特許問題を回避した新湾曲スイングアーム
・クラス初のラムエアシステム
・55mmも短縮されたホイールベース
などなど、そして何よりマスの集中化とホイールベースの短縮、更にレイアウトの自由度にも貢献する新開発挟み角70°V型エンジン。

VJ23Aエンジン

その造り込みの本気度からも分かる通り、リミッターを解除したVJ23A型の速さは本当にずば抜けており

「唯一NSR250Rに対抗できるマシン」

という声がレース界隈の人たちから、そして当時のインプレッションでも

「SPはもちろんGPレースに出場できるポテンシャルを持っている」

と言われるほど本当に速かった。

RGV-Γ250

ただしこのバイクの本当に紹介したい凄い部分は、これらワークス譲りの性能よりもここに至るまでの経緯です。

先代でも話しましたが250ガンマは十二分に速かったにも関わらずワークスマシン人気が爆発したことで、貧乏ゆえにGP250レースにワークス参戦していなかったスズキは

「レーサーレプリカじゃない」

というケチが一部で付けられたりしました。

それが我慢ならなかった開発陣は色んな部署から予算を捻出してもらう事で89年からGP250用ワークスマシンを開発し20年ぶりに参戦。

そして見事1995年に全日本GP優勝を飾ったわけです。

VJ23Aと沼田選手

250ガンマがライバルと決定的に違う所はここ。

「ワークスマシンとレーサーレプリカの立ち位置が逆」

という事です。

普通はレースチームが開発したワークスマシンがあって市販車チームがそれを元にレプリカを開発する。でもスズキ/250ガンマの場合は逆。

フィードバックの流れ

市販車チームがワークスマシンを開発して参戦というどっちがレプリカなのか分からない状態だったんです。

どうしてそうなったのかというと250ガンマが誕生したのがGP250レースが本格始動する前だった事が一つ。そしてもう一つはスズキはお金がないのでワークスマシン開発も市販車開発も何でも自分たちでやらないといけない環境だったから。

でもだからこそこんなモデルを造ることも出来た。

VJ23A

RGV-Γ250SP/VJ23Aの開発に携わった方々の多くはワークスマシンXR95の開発に携わった方々でもあるんです。

ただし何度も言いますが90年代に入るとレーサーレプリカブームは尻すぼみだったからエンジン設計の山口さん曰く

「社内で今世紀最後の道楽だと揶揄された」

と、相当肩身が狭かった模様。※RACERS25より

VJ23Aリア

当たり前ですよね。

もうブームは去っている上に、排ガス規制強化の関係で出したとしても2年ほどしか販売出来ないのはわかっていた状況なんですから。

レースをやらせてもらうだけでも理解されないのに、売れない事が分かりきってる市販車を開発なんて批判されて当然なこと。

ならば何故それでもこれを開発し販売したのかといえば
「何のためにワークスマシンを開発したのか」
「何のために参戦し優勝したのか」
に繋がる。

ラッキーストライクカラー

「250ガンマのイメージシンボルはワークスマシンではなく市販車の250ガンマだから」

です。

250ガンマは元々プロダクション(市販車)レースの為に生まれたわけじゃない。

「レーシングポテンシャルを皆に味わってもらう為に生まれたバイク」

だからこそレースで勝って終わるのではなく、そのレースで培ったノウハウを持った市販車を出すことが250ガンマにとっての最終目的であり存在意義だったんです。

諸元表

VJ23Aは本当にガンマの最後を飾るに相応しい、ガンマという名を体現しているバイクだと思います。

”Γ(ガンマ)”

は栄光を意味する名。この名が初めて与えられたのは1981年WGP500のワークスマシンRGΓ。

ガンマの始まり

理由は1977年以来遠ざかっていたレースに復帰する際に

「チャンピオンという栄光を取り戻す」

という意気込みから。

つまり”Γ(ガンマ)”という名はもともと栄光という単純な意味じゃないんです。

『栄光を取り戻す名』

という意味が込められている。

そして250ガンマもRG250Γで自身によって切り開いたレーサーレプリカという栄誉を一度は手にした。しかし晩年はライバルの先行を許す形となりました。総合的な人気や戦績でいうとガンマが一番とは言えない部分も正直ある。

でも文句のつけようがない形で出た本当に最後のレーサーレプリカは間違いなくRGV-Γ250SP/VJ23A。

VJ23Aカタログ

「失った栄光を取り戻す為に開発されたレーサーレプリカ」

これぞ正に『栄光のガンマ』ですよね。

ちなみにこれら開発の熱すぎる思いはカラーリングにも込められています。

VJ23Aカラーリング

VJ23A型はボディーカラーを問わずチェーンアジャスターやフォークキャップなど各部に紫が入っているんですが、ボディカラーにまで反映させた写真一番右のカラーリング名が『ビスカリアマゼンタ』となっている事から、これはビスカリアというナデシコ科の花の色が由来だとわかる。

紫のパーツ

なんでビスカリアなのかといえば答えは花言葉にあります。

ビスカリアの花言葉それは・・・

RV23Aカタログ写真

「望みを達成する情熱」

主要諸元
全長/幅/高 1965/695/1095mm
シート高 765mm
車軸距離 1330mm
車体重量 134kg(乾)
燃料消費率 25.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 40ps/9500rpm
最高トルク 3.5kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後150/60-17(66H)
バッテリー FTX5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ECM
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
スプロケ 前14|後46
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 777,000円(税別)
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

【関連車種】
NSR250Rの系譜TZR250の系譜KRの系譜

RGV250Γ/SP/SP2(VJ22A)-since 1990-

VJ22A

「進化の到達点」

再び大きくモデルチェンジしたVガンの二代目となるRGV250Γ/VJ22A型。

マフラーが左右二本出しから片側二本出しになり、ホイールも現代と同じ17インチ化、更には倒立サスまで装備し、それに合わせてフレーム改良。

1990RGV250

そして何より大きくチャンバーを避けるように湾曲したCAL-BOXスイングアーム(湾曲スイングアーム)が特徴ですね。

ここでレーサーレプリカを知らない世代の為にも少し話を脱線しますが、2st250cccレーサーレプリカといえば先ず上がるのがNSR250Rで次点はTZR250でしょう。

それは当時も同じでガンマは人気知名度で言えば三番手であり、それどころか人によっては

「ガンマはレーサーレプリカじゃない」

という人も居ました。

VJ22Aカタログ

「レーサーレプリカじゃないとはどういう事か」

という話なんですが、これはロードレースつまりレーサーが関係しています。

もともとレーサーレプリカというのはレーシングスペック的な意味合いだったのですが、80年代半ばになるとGP250というワークスマシンが源流にあって、その流れを受けているのがレーサーレプリカという意味合いになりました。

レーサーレプリカ

これがその相関図みたなもの。

じゃあスズキはどうだったのかというとGP500のワークスマシンは持っていたもののGP250のワークスマシンを持っていなかった。

ガンマは系譜の最初に話したようにWGP500のチャンピオンマシンだったRG500を250ccサイズで実現させるというコンセプトの元に生まれたバイクだったから当然な話でもあるんですが、この事からライバルたちにセールス面で引けを取ってしまった。

レーサーレプリカVJ22時代

なんで250に参戦していなかったのかと言えばスズキにそんなお金は無かったからです。

でもそれじゃダメだという事で営業から設計まで色んな部署に予算を割いてもらう事で1989年から

レーサーレプリカ

『ワークスマシンRGV-Γ250』
の開発及び参戦を。

これはシングルシートや乾式クラッチ、フルクロスミッション(※SP1のみ)を採用したSPモデル。

VJ22Aカタログ

それと同時に正真正銘GP250のレプリカカラーリングのモデルでもありました。

話をVJ22A型に戻すと、二年目にはオーバルキャブへ変更され中低速トルクをアップ&足回りも見直し。

そして三年目にはレーサーレプリカブーム終焉の始まりである40馬力自主規制対応モデルとなりました。

RGV250カタログ

この40馬力規制の大名目は社会風潮を鑑みてなんですが、いわゆる逆サバも止めようという狙いもあった。今では信じられませんが当時はカタログ馬力は体裁のために低く書かれていたんです。

ちなみに言い出しっぺはホンダですがスズキを含め全メーカーがのみました。

しかしこのガンマの場合、40馬力になった三型にはソレ以上に大きな変更が加わっています・・・それはスイングアーム。

RGV250カルアーム

湾曲スイングアームことCAL-BOXスイングアームから、ねじれ剛性が10%アップした通常のスイングアームになったんです。

これはCALアームの性能が悪かったワケでなく、ガルアー・・・特許の問題でこうなったようです。

CALアーム

湾曲系スイングアームの中ではとっても造形が綺麗で好評だっただけにちょっと残念ですね。

主要諸元
全長/幅/高 1980/690/1070mm
シート高 765mm
車軸距離 1380mm
車体重量 139kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
[40ps/9500rpm]
最高トルク 3.9kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後150/60-17(66H)
バッテリー YT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ECM
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 609,000円(税別)
[616,000円(税別)]
※[]内は後期(92~)
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

BALIUS II(ZR250B/C) -since 1997-

バリオス2

「Authentic Quarter」

ZXR250が生産終了となった二年後に入れ替わる様に登場したBALIUS-II/ZR250B型。

最初に変更点をあげると

・リアをリザーバータンク付きの二本サス化
・再設計されホイールベースを伸ばしたメインフレーム
・点火時期を調整し吹け上がりを良くするK-TRIC(スロポジセンサ)
・ライディングポジションの見直し
・テールカウルのデザイン変更
・サイレンサーを大型化

などなどと先代よりも安定性に重きを置いたモデルチェンジでポジションも大きく見直されアップライトなものになっています。

BALIUSのポジション

何気にステップ位置まで変わっているんですが、これ単純にステップを替えたわけではなく実はメインフレームのピボット(スイングアームの付け根)部分を変更しているなかなかの大手術。

足つき抜群でエンジンもビュンビュンで250らしいスリムさ、そしてデザイン性の良さから人気が出てロングセラーとなったからこれだけの変更が出来たのは言うまでもないかと。

BALIUSのエンブレム

ちなみにエンブレムも変わっていて、先代A型が跳ね馬みたいだったのに対しB型は駆け馬スタイルになっています。

そしてバリオス2と言えば紹介しておきたいのが限定カラーモデル。

ツートンカラー

左右でそれぞれ別のカラーリングをしている面白い配色。一粒で二度美味しい的な・・・しかも限定1000台。

そしてもう一つはスズキから出されたGSX250FXというモデル。

GSX250FX

見て分かる通りこれはスズキにOEM供給されたBALIUS-IIで型式はZR250Cになります。

車名もGSXとFXという看板ネームをW使用という早々ないコラボ仕様。

ZR250Bのカタログ

そんなBALIUS-IIですが

・1998年にキーシリンダーの防犯強化
・2000年に触媒の内蔵
・2006年にマルチリフレクター化

と改良を重ねた後、排ガス規制の強化が行われる2007年を機に惜しまれつつも生産終了となりました。ちなみに四気筒250勢としてはホーネットと並んで最後の最後まで残ったモデルになります。

それにしても改めて思いますが”250”で”直四”で”DOHC”で”4バルブ”なんて一昔前のレースマシンくらい。これを普段遣いの街乗りバイクに活用するなんて本当に無駄の極みとしか言いようがない。

ピストンサイズ

身近なもので例えるとアースノーマットのカートリッジやヤクルト一本分程度の小さな燃焼室にバルブを4つ配置し、それを4部屋連結させてシャカシャカと忙しなく動くことで18000rpmまでビュンビュン回る。これを無駄と言わずして何と言いましょう。

ZX250CE

ロマンか。

主要諸元
全長/幅/高 2070/735/1055mm
シート高 745mm
車軸距離 1400mm
車体重量 147kg(乾)
燃料消費率 39.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 40ps/15000rpm
最高トルク 2.4kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/70R17(66H)
バッテリー YTX7L-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 509,000円(税別)

年次改良

1998年:盗難抑止強化されたキーシリンダーとハンドルロック

2000年:新排ガス規制に対応するためKLEENとKCAを装備し39.5馬力に
※KLEEN:排気ガスを浄化する触媒|KCA:燃え残りに空気を送って再燃焼させるエアインジェクション

2006年:マルチリフレクター式ヘッドライト化

系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

ZXR250/R(ZX250C3~) -since 1993-

ZXR250C3

バリオスでも説明した通り規制により40馬力となったZXR250の最終型となるZX250C3~型。

馬力が下がったのは残念な事だけどそれ以上に残念だったのがレプリカブームが去ってしまい、最初に言ったSP250Fを始めとしたアマチュアレースもドンドン無くなっていってしまった。

そんな窮地を打開しようとしてカワサキが取った手段は漫画によるアピールでした。

その名もZXR MAN。

ZXRコミック
ZXRコミック2
ZXRコミック3

気弱な主人公がZXR250に乗ることでZXRマンへと変身し悪を倒すというコテコテなヒーローコミックをカタログに掲載(厳密に言うとC1型のカタログに)。肩のK-CASパイプがトレードマークですね。誰が見てもZXR。

効果があったのかと言われれば・・・

というか既に89年にはGSX-R250が、91年にはFZR250Rが、C3登場の翌年94年には最大のライバルだったCBR250RRも生産終了に。ZXR250は一番最後まで、95年まで粘ったんですが時代の波には逆らえず。

というか自社が出したゼファーによるネイキッドブームに潰されるってなんとも皮肉な話です。今こんなバイクが出たら40馬力の規制後モデルだろうが飛びつく人が多そうだけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2000/685/1090mm
シート高 735mm
車軸距離 1360mm
車体重量 141kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 40ps/15500rpm
最高トルク 2.3kg-m/11000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/60R18(64H)
バッテリー YB9L-A2
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 609,000円(税別)
系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

ZXR250/R(ZX250C/D) -since 1991-

ZXR250C

「WONDER SPORTS」

ZXR250/Rに対抗してきたライバル勢に負けじと登場からわずか二年でフルモデルチェンジされた二代目のZXR250/ZX250C型とZXR250R/ZX250D型。

スラントノーズに一枚物のライトレンズでハンサム系になったのが特徴ですが

・新設計アルミフレーム
・ホイールをX字6本スポーク化
・エンジンヘッドを変更し燃焼室の改良
・ボア拡大で更にショートストローク化
・軽量クランクシャフト
・ヘッドライトの常灯化
・リザーブタンク付きリアサス(Rのみ)

などなど更に性能に磨きを掛けた改良となりました。

91ZXR250

ちなみに一点だけ残念ポイントとして車高調整機能はオミットされました。

「そもそもレーサーレプリカで車高調とは」

と感じている方も多いと思うので説明すると先代はアッパーマウントがメインフレームのクロスパイプを貫通しており、ワッシャーで20mmほど調整する事が可能になっていました。

ZXR250の車高調機能

なかなかアナログというか地味な事もあって活用してる人があまり居なかったんでしょうね。

ZXR250/Rでもう一つ解説しておきたいのがK-RAS。

今でこそ有名なラムエアですが、有名になったからこそもう一度説明しておかないといけない。なぜならZXRのラムエアはTZR250/3MAの後方排気と同じくらい非常に紛らわしいから。

K-CASとK-RAS

アッパーカウルの穴からタンクに刺さるように付いているホースは

『K-CAS(Kawasaki Cool Air System)』

といってエンジンヘッドに冷たい走行風を導くことで冷却するためにあります。

走行風をエアクリーナーに導く

『K-RAS(Kawasaki Ram Air System)』

はその下のダクトからで、エアクリーナーまで上るように繋がっているんです。アッパーカウルから繋がっているのが当たり前な今だからこそ誤解しやすい要素ですね。

リアビュー

さて・・・そんなレーシングスーパーウェポンことZXR250/Rですが、C型になるとカタログもこんなポップというかキャッチーな物を用意するようになりました。

ZX250Cカタログ写真

なんと擬人化。

随分と時代を先取りしている。しかもちゃんとコミック展開。

ZXRコミック

川崎クンと綾子チャンがデートをしていると、危ない集団に襲撃され綾子チャンが連れ去られピンチ。

そこに現れたZXR250/Rに乗るとスーパーマンならぬZXRマンに変身。

ZXRコミック2

悪い奴らを成敗し、綾子チャンを見事に救出。

ZXRコミック3

何だ夢かと思ったら夢ではなく、綾子チャンが川崎クンに惚れ直し川崎クンはZXRへの感謝。めでたしめでたし。

コッテコテのアメリカ漫画でこれだけ見るとクスッと出来るんですが、これの狙いを知るとあんまり笑えない部分もある。

というのも同世代の他車種でも書いているんですが、この頃になるとレーサーレプリカブームが既に去りつつあり、時代はネイキッドやクラシックなどに移ろいゆく中でした。

きっかけは同社から1989年に出たゼファーでカワサキ自身も生産が追いつかないほどまでに加熱。

ZXR250/C3

対してレーサーレプリカは車体価格の高騰も相まって市場もレースも冷めゆく一方で、レーサーというそれまでポジティブだった要素がネガティブな要素として捉えられるようになった。だからこんな漫画タッチでレーサーのレの字も感じ取れないカタログになっているという話。

1993年からは40馬力自主規制が設けられるようになったことでその傾向は更に強くなり、唯一の武器であったスペックも取り上げられ、SPレース向けのZXR250R/ZX250Dが1992年をもって生産終了。

ZXR250R最終モデル

市場の流れに合わせてレースもネイキッドレースに移行したのが決定打でした。

一方で継続販売されていたノーマルモデルもカタログを開いてみると、感じでスーパーウェポンと名乗っていたのが嘘のようにカジュアルな紹介。

ZXR250/C3カタログ2

それだけ市場が大変動というかちゃぶ台返しのような事態になっており、そしてカワサキもなんとかZXR250を存続させるためにこういう画策をしていたわけです。

E型が世間を騒がせた現代からすると信じられないような話ですけどね。

ZXR250最終カタログ

結局ZXR250はライバルがどんどん消えゆく中でも細々ながら販売が続けられ、1999年にライムグリーン(上記ZXR400と同色)を出し生産終了となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2000/685/1090mm
シート高 735mm
車軸距離 1360mm
車体重量 141kg(乾)
燃料消費率 50.5km/L
[48.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/16000rpm
最高トルク 2.5kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/60R18(64H)
バッテリー YB9L-A2
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 609,000円(税別)
[669,000円(税別)]
※[]内はZXR250R(ZX250D)
系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

BALIUS(ZR250A) -since 1991-

ZR250A2

「Mind Trip Quarter」

時代は少し遡ってZXR250/RがC/D型にモデルチェンジしたのを機に追加販売という形で登場したカワサキ初の四気筒250ネイキッドとなるBALIUS/ZR250A型。

・バフがけされたエンジン
・カムを変更し低中速を重視
・フライホイールマスをアップ
・4-1集合ステンレスエキパイ
・Φ38mmの高張力ダブルクレードルフレーム
・角型アルミスイングアーム
・軽量3本スポークと偏平ワイドタイヤ
・シングルディスクで軽量化
・アップライトなバーハンドル

など”フリーテイスト”というコンセプトを元に開発されたネイキッドになります。

1991バリオス

ネイキッド需要の拡大に応えるように発売された面が強いのですが、ZXR250/Rをストリート向けにチューニングしているだけあって街乗りではZXR250/Rより速いという高性能っぷり。

そのくせアップライトで振り回しやすくボディもスリムだから完全に街乗りビュンビュン系。

バリオス

でもバリオスの一番評価された部分はそういった走行性能ではなくデザインにあると断言できます。

なぜならバリオスはZXR250と同じように1993年モデル(ZR250A3)から5馬力ダウンの40馬力規制車になったんですが、その年にクラス販売台数一位を記録したから。馬力が落ちようとバリオスの人気は落ちなかったんです。

ZR250Aのロゴ

デザインの肝はやっぱりネイキッドでありながら備え付けれているゴツいラジエーターガードでしょうね。タンクの神馬エンブレムも貢献しているでしょうが。

1991バリオス

しかしいま改めて振り返ってみると本当にこの頃のカワサキネイキッドは凄かったと思います。

というのもご存知のようにカワサキは1989年にゼファーという時代に逆行するオールドルックのネイキッドを出して大ヒットした。そんな状況の中で次の一手として出してきたのがゼファー(ゼフィロス)と同じくギリシャ神話に登場する不死の馬と同じ名を意味するバリオス。

神馬バリオス

そんなバリオスの何が凄いってゼファーへ前に倣えしなかったこと。ネイキッドという懐古要素を持ちつつも現代的なデザインでゼファーとはまた違うスタイルを持ち、それが人気となった。

ちなみにその後に出たのが近未来的なネイキッドで近年になって再評価されているXANTHUS(同じくギリシャ神話の神馬クサントス、英語読みでザンザス)になります。

バリオスカタログ

『ZEPHYR、BALIUS、XANTHUS』

という三種三用のネイキッドをカワサキはわずか2年余りで立て続けに出していたわけです。

ZR250Aカタログ

これはもうまさに文字通り

「神がかっていた」

としか言いようがないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2005/730/1055mm
シート高 745mm
車軸距離 1380mm
車体重量 141kg(乾)
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/15000rpm
[45ps/15000rpm]
最高トルク 2.6kg-m/11500rpm
[2.4kg-m/11000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/70R17(66H)
バッテリー YTX7L-BS
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 499,000円(税別)
※[]内は93年モデル(A3)以降
系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

ZXR400/R(ZX400L/M最終) -since1993-

ZXR400final

「本当に作りたかったレーサーレプリカ」

ZXR400/Rの最終型になる93年以降(L3~/M3~)は自主馬力規制で53馬力に落とされ、中低速寄りにデチューンされました。厳密に言うと再びリファインされた翌年94年のL4~/M4~が最終ですが。

1993ZXR400カタログ

結局レーサーレプリカブームが去ったことと、馬力規制から市場が縮小し全日本ロードレース選手権TT-F3(4st400cc)が無くなってしまったためZXR400/Rもあえなく生産終了。

ただ筑波など辛うじて存続している地方400レース(4st400cc/2st250cc)では生産終了して15年以上経った今でもZXR400Rが当たり前のように走っています。

ZXR400Rでレースしてる人が居るというのが正しいけどね。他にもNSR250RとかCBR400RRとかも走ってるので、まるでレーサーレプリカ時代にタイムスリップしたかのような・・・話がソレました。

ZX400L4

そんなZXR400だけど本当ならばコレは世に出るはずではなかったバイクなんです。

このバイクの指揮を取ったのはレーサーZXRシリーズも担当していたデザイナー兼エンジニアの西村さんという方だったのですが、この方は91年のL1/M1型を最後にカワサキを退社されています。

エンジニアがキャリア最後の花としてフラッグシップモデルやスポーツモデルを担当するのは珍しい事ではないのでこれだけ聞くと大した事ではないように思えますが、裏には壮絶な実際は壮絶なドラマがあったんです。

ZXR400R/L3

何度も言ってきましたがカワサキは大成功したGPZ900Rの経験からアンチレーサーレプリカ路線、つまり

「レーサーレプリカは作らない」

という方針でした。先に出た2st250のレーサーレプリカであるKR-1の商業的失敗でその考えは更に強くなっていたと思います。

しかし西村さんを筆頭にカワサキのエンジニア達はレース技術を市販車に生かせない状況に我慢の限界が来ていた。

でも上は絶対にレーサーレプリカを承認しない。そこで上への報告用にアンチレーサーレプリカのダミー車を用意し、ZXR400/Rは秘密裏に開発するという荒業・・・というかお世辞にも褒められない手段を取りました。

もしかしたらそれがZX-4だったのかも知れないですね。わざわざ同じ四気筒400ccエンジンを新規でもう一つ作ったのもこれなら納得がいきますし。

ZX400L4

「一切妥協のない最速400を作ろう」

と西村さんはメンバーを説得し、皆もそれに呼応したわけです・・・わけですが、そう事は上手く行かず虚偽の報告が上にバレて西村さんは会社と喧嘩し辞めることに。

ここでZXRプロジェクトは頓挫するハズだったのですが、残されたメンバーたちが署名活動を行い、会社や西村さんに直訴することで西村さんはプロジェクトに復職。完成させる事が出来たわけです。

ZXR400/Rがとてつもない性能で登場し、フルモデルチェンジに近い年次改良を行い、その翌年には更に上を行くフルモデルチェンジという青天井な改良を重ね、卑怯と言われるまでの速さを誇った事。おまけで整備性や耐久性を軽視している事。

これらは会社はもちろんマーケティングやバイク屋そして購入して乗るライダーすらも無視し、エンジニアたちが作りたいように作ったからなんですね。

その好き勝手っぷりの締めとなるのは西村さんが最後に手掛けたとされるZX400L1型(初年度)にあたる1991年式ZXR400のボディーカラー。

初年度カラー

レーサーレプリカといえばスポンサーカラーやメーカー・チームカラーを連想させる多彩な色使いが当たり前の時代に、青や赤の単色カラーというレーサーレプリカにもカワサキにも全く関連性のない色。しかも黒フレーム。

ZXR400ラフデザイン

これは空力を考え抜いて作り上げた造形が”一番栄える色”という理由から。もう本当に、完全に自己満足ですね。

引責なのか自主的なのかは分かりませんが、指揮を取った西村さんはこのZXR400(L/M型)の完成を最後に退社することとなりました。今にして思えばアンチレーサーレプリカのゼファーとバッティング、矛盾するようなラインナップとなったものこの為でしょう。

ZXR400L1ブルー

現代のZXRであるZX-Rなどでも稀に出てくる青や赤の単色カラーは、もしかしたらこれの名残なのかも知れないですね。

お世辞にも商業的に成功したとは言えないZXR400/Rは

「カワサキの400レーサーレプリカ」

と言われるのが一般的ですが、その言葉の中には

ZXR400ファイナル

「カワサキの(エンジニア達がクビを覚悟で作った)400レーサーレプリカ」

という見えないドラマが隠されているわけです。

主要諸元
全長/幅/高 1995/710/1080mm
シート高 780mm
車軸距離 1385mm
車体重量 160kg(乾)
[159kg(乾)]
燃料消費率 45.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 398cc
最高出力 53ps/12000rpm
最高トルク 3.6kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60R17(55H)
後160/60R17(69H)
バッテリー FTX9-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前15|後45
[前16|後45]
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 739,000円(税別)
[839,000円(税別)]
※[]内はRモデル(M型)
系譜図
ZX400G1988年
ZX-4
(ZX400G)
ZX400H1989年
ZXR400
(ZX400H/J)
ZX400L

1991年
ZXR400
(ZX400L/M)

ZXR400最終

1993年
ZXR400
(ZX400L/M最終)

ZXR400/R(ZX400L/M) -since1991-

ZX400L

「未確認走破物体」

今まで我慢して溜まりに溜まった熱を一気に爆発させたかのようなZXR400だったけど、まだまだ熱が冷めやらぬようで3年目で再び大きくフルモデルチェンジ。

エンジン・キャブ・サスペンション・ブレーキ・フレーム、もうとにかくほぼ全て見直し。先代の時点でも驚異的な速さだったんだけど、このモデルでその速さは卑怯と言われるほどに。

ZX400L1

最後に登場して最後まで渾身のモデルチェンジを繰り返し頭一つ抜きん出た速さを持っていたため、もうこの頃になるとレースに出たいならZXR400R一択とまで言われる状況になりワンメイク状態。

しかもプロダクションモデルのRは緑しかなかったらレースも一面がグリーン一色になったりして、バッタしか居ないバッタレースとか言われる始末。

4st400ccレーサーレプリカ市場において締めを取ったのは間違いなくこのZXR400/Rでしょうね。

ZX400Lカタログ

熱い宇宙推しなカタログも話題になりました。

※ZXR400のネイキッドモデルになるザンザスは系譜の外側で書いてしまったので申し訳ないですが飛ばさせてもらいます。読まれたい方は「ザンザスの系譜|系譜の外側」をどうぞ。

主要諸元
全長/幅/高 1995/710/1080mm
シート高 780mm
車軸距離 1385mm
車体重量 160kg(乾)
[159kg(乾)]
燃料消費率 45.5km/L
[46.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 398cc
最高出力 59ps/12000rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60R17(55H)
後160/60R17(69H)
バッテリー FTX9-BS
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.6L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前15|後45
[前16|後45]
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 739,000円(税別)
[839,000円(税別)]
※[]内はRモデル(M型)
系譜図
ZX400G1988年
ZX-4
(ZX400G)
ZX400H1989年
ZXR400
(ZX400H/J)
ZX400L

1991年
ZXR400
(ZX400L/M)

ZXR400最終

1993年
ZXR400
(ZX400L/M最終)