「新世代フラッグシップ」
いろんな意味で有名なZX-12R。そのせいか今となっては中古が高止まりでプレミア化しています。
いわゆる変態バイク的な扱いをされる車種な為かネタばかりが先行して真面目に書かれてる所が少ないのでここでは真面目に紹介したいと思います。
まず細かいことを言うとZX-12RはZZR1100の後継ではありません。しかし一方で後のZZR1400やZX-14Rの礎となったモデルでもあります・・・ややこしいですね。
礎になったと言われる最大の理由はエンジンの横ではなく上を通る量産車で初となるバックボーン型モノコックフレームの始まりがここだから。
これはスケールアップによって肥大化する車体幅を抑えるため。
一般的なツインスパーフレームはエンジンの横を通す必要性がある為、どうしても幅が大きくなってしまうで上を通そうというのがバックボーン。
フレームにエアクリーナーやバッテリーボックスなどフレーム以外の役割も請け負わせて一石二鳥によるというのがモノコック。
合わせてバックボーン型モノコックフレームというわけ。
カワサキはもともとレーサーの方ではこのバックボーンモノコックフレームを開発しレースに参戦していました。
1982年のWGPレーサーKR500これが元ネタ・・・かと思いきや違う。
ZX-12Rのフレームは車体設計の古橋さんが10年以上を掛けて練っていた一から考えられた構想なんです。
GPZ900R外装のモノコック、ZX-9R外装のモノコックなどを造り
「モノコックにすればこれだけスリムに出来る」
と社内で何度も熱くプレゼンした結果、遂にZX-12Rで採用される事になったという経緯があります。
ただ試作機が出来た時はあまりにも見慣れない形だった為に誰も乗りたがらず、結局テスト走行は古橋さん本人がやる羽目になったんだそう。
そしてそんな個性的なフレームに負けず劣らず凄いのが完全新設計のエンジン。
剛性メンバー(フレーム)の一部として個性的なフレームに合わせて造られた新設計のもの。
B/S比も83.0mm×55.4mmとかなりのビッグボア型で低速トルクが1200ccと思えないほどなく、このクラスにも関わらずかなりブンブン回して走らせるタイプ。
狙いはもちろんGPZ900Rの頃からよりもずっと前、Z1の頃からこだわってきた
『世界最速』
を成し遂げるため。
そのためにこんな極端なボアストローク比のエンジンになっているんですが、ここで終わらないのがZX-12Rの凄い所。
独自の車体設計に加えて航空部門の技術者を招致し、エアロダイナミクスも徹底したんです。
どストレートに来ている吸気口や弾丸のようなミラー、そしてサイドカウルに設けられたウィングなどが正にその証。
MotoGP系で話題になっているウィングをカワサキはこの段階でやっていたわけです。
とにかく何もかも新しい技術が詰め込まれたZX-12R。
完全新設計にも関わらず排気量は抑え気味に1199ccという排気量を選んだのは間違いなく技術力を示すためでしょうね。
しかし・・・当時はそれほど暖かく迎え入れられる事はありませんでした。生産終了した今のほうが騒がれてるんじゃないかと思うほど。
その理由の一つに”扱いにくい”というイメージが先行した事があります。
「ZX-12Rは曲がらない」
「最高速だけを取ったバイク」
とか言われるのを聞いたことがあると思います。
何故こういう印象を与えてしまったのかというと想定域が高すぎたから。
例えばバイクはフレームが捩れる事で初めて綺麗に曲がれるわけなんですが、その捩れるポイントがこのZX-12Rは圧倒的に高い。
それに加え200/50のタイヤなども加わって曲がらない寝ないバイクという印象が立ってしまった。
これはカワサキらしい伝統のハンドリングともいえ旧来のカワサキを知るオーナー達にとっては
「簡単には曲がってくれない感が面白い」
と好評だったんですけどね。
ただパタンパタンと簡単に寝るSSがトレンドだった当時はそれを認めてくれる人があまり居なかった。
2002年にはそれらネガな部分を潰した後期(通称B型)が登場。
140箇所以上にも及ぶ改良によって若干フレンドリーに変更。
見た目の方もライト形状の変更に加え、ただの筒だったラムエアダクトをカウル形状に合わせた物になりました。
さらにフロントフォークとブレーキがZX-10Rと同じラジアルマウント式に変更・・・多分モデルチェンジでの一番の恩恵はこれかと。
怒涛の加速と直進安定性で
「ZX-12Rは危ない」
とかネタで言われたりするんですが、そのネタの中にもは制動力の無さも関係してたり・・・まあこの頃のクラスはみんなブレーキに様々な悩みを抱えてたのでZX-12Rに限った話でもないですけどね。
今にして思えばSSとメガスポーツその両方を足して2で割った様なバイクでした。
主要諸元
全長/幅/高 |
2080/725/1185mm [2085/740/1200mm] |
シート高 |
810mm [820mm] |
車軸距離 |
1440mm [1450mm] |
車体重量 |
210kg(乾) |
燃料消費率 |
– |
燃料容量 |
20.0L [19.0L] |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 |
1199cc |
最高出力 |
178ps/10500rpm [178ps/9500rpm] |
最高トルク |
13.8kg-m/7500rpm [13.7kg-m/7500rpm] |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前120/70ZR17(58W) 後200/50ZR17(75W) |
バッテリー |
YTX14-BS |
プラグ |
CR9EKPA |
推奨オイル |
カワサキ純正オイル または MA適合品SAE10W-40 |
オイル容量 |
全容量3.6L 交換時2.5L フィルター交換時2.8L |
スプロケ |
前18|後46 |
チェーン |
サイズ530|リンク116 |
車体価格 |
[1,250,000円(税別)] ※A型はUS仕様 ※[]内B型はマレーシア仕様 |
系譜図