「RとRRの融合」
三代目となるZX-6R/600P型。
このモデルで事件が起きました・・・いや顔の話じゃないですよ。
確かにインパクトがあるというか可愛らしい顔と特徴的なマフラーですが。
ちなみにこのマフラーの形、薄くて容量が少なくパワーが稼げないと問題になったのですが
「この薄さが大事なんだ」
としてデザイナーが断固として譲らず、エンジン設計側が折れる形で採用された拘りのマフラーだったりします。
が、それより事件なのが+37ccのモデルが無くなった事です。
セールストーク的には
「600ccの円熟化が進み、600ccでも低速の問題が解決出来たため一本に絞った」
という話でしたが、実情としてはミドルの主戦場である欧州において600cc一本に絞ってほしいという意見が多かったのが主な理由。
信じられない話ですが向こうの人は公道で使いつつナンバーを付けたままレースでも使うのは珍しくないらしく、公道用636とレース用600を分けられるとそういう使い方が出来ないからだそう。
そのためこのP型からはRRのSP(レーサー)をベースにする事になったわけですが一悶着ありました。
先代の不満点を聞き込みに回ったところ
「タイヤの減りが早い」
という声が多かった。
これはフレーム剛性が高すぎた事が原因で、その反省から最適な剛性のフレームを新設計することに。
そして形になった新作フレームをテストライダーが乗ったところ
「どうしたいのか、方向性が分からない・・・」
というZX-6R史上最低の評価を食らう事に。
これが何故か調べた所、剛性には問題が無かったものの過程の捻れ方に原因があると分かり形状や材質だけでなく溶接箇所や溶接ビードの一つに至るまで細かく見直し。
造って走っては見直して、造って走っては見直してという
『数値として表れない部分の改良』
に主軸を置いて改良する日々。
そうして完成したフレームは最低評価だったのが嘘のように非常に完成度が高いものに。
その改良の痕跡として分かりやすく現れているのがメインフレーム中央の溶接痕。
普通ここは直角に入っているんですがこのP型はもの凄く角度が付けられてる。
このフレームを担当した井高さんも
「理想的なフレームが出来た」
と自画自賛。
またこのモデルを含む歴代ZX-6Rのプロジェクトリーダーである岡部さんも傑作と言うほど本当によく出来たフレームで、その証拠にZX-6Rはこれ以降メインフレームに大きな変更は行われていません。
可愛い顔からは想像がつかないほど出来る子だったP型のお話でした。
主要諸元
全長/幅/高 | 2105/720/1125mm |
シート高 | 820mm |
車軸距離 | 1405mm |
車体重量 | 167kg(乾) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 17.0L |
エンジン | 水冷4サイクルDOHC4気筒 |
総排気量 | 599cc |
最高出力 | 109ps/12000rpm |
最高トルク | 6.5kg-m/12000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前120/70ZR17(58W) 後180/55ZR17(73W) |
バッテリー | YTX9-BS |
プラグ | CR9E |
推奨オイル | カワサキ純正オイルR4/S4 または MA適合品SAE10W-40 |
オイル容量 | 全容量3.8L 交換時2.9L フィルター交換時3.2L |
スプロケ | 前16|後43 |
チェーン | サイズ520|リンク112 |
車体価格 | 1,092,000円(税込) |