「Awaken the Race」
もう終わったものと思っていたらまさかの復活を遂げた本当に本当の最後になるであろうCBR600RRのPC40最終型。
最初に変更点をあげると
【外側】
・クラス最小のCD値(空気抵抗係数)
・ダウンフォースを稼ぐウイングレッド(フロント荷重寄与)
・ヘッドライトとウィンカーのLED化
・急制動の検知でハザード点灯
・新設計スイングアーム(3mm延長/-150g/剛性見直し)
【内側】
・ロングリーチプラグによる冷却効率強化
・キャタライザーの大型化(EURO4対応)
・フルカラーTFT液晶メーター
・スロットルバルブの電子化と大径化
・吸気ポートの大径化
・バルブタイミングや材質の変更
・アシストスリッパークラッチ
【その他】
・5軸IMU(慣性計測装置)
・車体姿勢推定型ABS
・5段階の出力モード切替
・9段階のトラクションコントロール
・3段階のウイリー緩和制御
・3段階のエンブレ制御
・3段階の上下対応クイックシフター(※オプション)
という感じで、早い話がフル電子制御化(CBR1000RR/SC77から拝借)とピークパワーを上げる改良が施されました。
何気に日本国内としては17年目にして初めての正真正銘フルパワー仕様でもあるんですが、サーキット性能をアップさせることで主にアジアなどの市販車600レースに対応するためとの事。
ウィングレットなど見た目もCBR1000RR-Rの流れを汲む形になったことで
「CBR600RRもトラック至上主義に」
と思いがちなんですが、車体やポジションがほぼ変わっていない事から見てもキープコンセプト。
コンセプトは何かっていうと前期でも話しましたが
『圧倒的な乗りやすさ』
です。
このPC40型は本当にSSの中で一番乗りやすいと言っても過言じゃないほどそれが極まってる。
分かりやすいのがポジションでCBR600RR/PC40はSSのわりにはかなり前傾姿勢が緩く優しい。SS慣れしている人間からするとツアラーかと錯覚するほどで、街乗りやツーリングにも無理なく使える乗りやすさがある。
しかしその一方で主戦場であるサーキットを走ってもちゃんとフロントに安心感があってバッチリとハマるから
『乗りやすい=速く走れる』
っていう本当に反則級の優しさを持ってる。
これはホンダのファクトリーマシンである
「乗りやすさこそが速さに繋がる」
というRCV精神から来ているもので、それを忠実に再現しているのがCBR600RR/PC40の特徴であり凄い部分であり最終型でも変わっていない最大の武器。
正直に言うともう新たに起こすほど開発費が掛けられなかったのも大きいんでしょうがCBR600RRの場合はそれで正解だったと思います。センターアップマフラーなんかその象徴かと。
ところで
「なんでもう最終型なの」
って話が気になっている人も多いと思うので時事ネタになりますが話すと、まず第一に2020年10月からの排ガス規制EURO5には対応せず滑り込むように8月末に発売された事が一つ。
そしてもう一つがご存知の方も多いと思いますがクラスの人気低迷。
600のスーパースポーツっていうのは日本以外だと欧州がメインターゲットだったんですが
・リーマンショック
・競争激化(過激化)による消費者離れ
・馬力(パワーウェイトレシオ)で区切る免許に統一
・上記に関連して保険も青天井
などによりブームが去ったというより市場が消え去ったに等しいものになったのが要因。
スーパーバイク大好きなイギリスですらこのクラスはもう車種あたり年間30台前後しか売れていないんだそう。
この余波で市販600の存在意義である
『世界レースWSS(600ccの市販車世界レース』
も2022年からはトライアンフのDAYTONA765やドゥカティのPanigale V2(955cc)など規格をオーバーするモデルも参戦できるよう柔軟な変更が行われる予定になった。
つまりもう四気筒600の必要性が無くなってきちゃったわけです。
そんなもんだから
・日本メーカー(ライバル)も参戦は2021年まで
・ホンダはベイビーブレードをWSSに参戦させない※ホモロゲ(参戦資格)自体は取ろうと思えば取れる
という話も上がってます。
じゃあ公式でも言われている巨大市場のアジアはどうかというと、まだバイクが日用品の域を出ていない国が多い。
趣味としてバイクを利用する人が増えてきている国としてはインドネシアがあるんだけど
『250cc以上で60%、500cc以上で125%の物品税』
という形になっているので売るに売れない。
唯一可能性があるのが大型二輪の関税が2017年末で撤廃され税金もそんなに高くないタイなんですが、世帯平均月収が3万バーツ(約10万)なのでさすがに160万円のミドルスポーツは厳しい。
ついでに言うとお金持ち国家アメリカはオフロードとクルーザーがメインなうえ大排気量主義なので600SSは人気がありません。
最後と言えるのはこれらの理由があるからで
「このクラスを買える環境にあるのは日本のライダーだけ(誰も買わないけど)」
というなんとも皮肉な環境なんですが、これは言い換えるとレースベースとしてはアジア需要が第一にあるものの市販車としては
「日本のために出した意味合いが凄く強い」
という事。CBR600RRのフルスペック(フルパワー)仕様を正規で出せなかった歴史もありますしね。
なかなか粋な事をするもんだって話ですが、さらに粋なのが最後の最後でこのカラーリングだった事。
ただこれが出た時このトリコロールカラーに二の足を踏む人が結構いましたね。野暮な話ですがそれも分からなくもない話。
というものCBR600RR(特にPC40型)は20~30代と比較的若くトラックとは少し距離をとってるライダーに人気だったこと事から、ホンダも街に溶け込むスタイリッシュなカラーリング展開をしていたから。
この赤基調に青白ラインのトリコロールカラーに違和感を感じる人が出てくるもそういう背景があるから仕方がないという話なんですが、そう思ってる人に是非とも知って欲しいというか聞いて欲しい事があります。
「このパターンのトリコロールカラーは過去にもあった」
という事です。
それがいつかといえば1973年。
ドリームCB750FOURを市販車レースに出すために造られたCB750Racer。
初めて世界レースへ打って出た市販スーパースポーツであり、初めてRが付いたCBレーサーであり、初めてトリコロールカラーを纏ったモデル。
明らかにこれに通ずるカラーリングなんです。
これが偶然なのか意図したものなのかは分からない。
でもどちらにしろ
「最後を飾るのにこれほど相応しいカラーリングはない」
と言えるんじゃないかと。
※補足:HRC/トリコロールの由来と一人の日本人レーサー|バイク豆知識
主要諸元
全長/幅/高 |
2030/685/1140mm |
シート高 |
820mm |
車軸距離 |
1375mm |
車体重量 |
194kg(装) |
燃料消費率 |
17.3km/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 |
18.0L |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC4バルブ四気筒 |
総排気量 |
599cc |
最高出力 |
121ps/14000rpm |
最高トルク |
6.5kg-m/11500rpm |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前120/70ZR17(58W) 後180/55ZR17(73W) |
バッテリー |
YTZ10S |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
SILMAR9C9 |
推奨オイル |
Honda純正ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量3.5L 交換時2.7L フィルター交換時2.8L |
スプロケ |
前16|後41 |
チェーン |
サイズ525|リンク112 |
車体価格 |
1,460,000円(税別) |
系譜図
【関連車種】
YZF-R6の系譜|GSX-R600の系譜|ZX-6Rの系譜|DAYTONA675の系譜