「THE SUPERBIKE OF SUPERLATIVES.」
LEDヘッドライトになってまさかの左右対称顔になった2019年登場の第五世代S1000RR/0E01型。
ドイツらしく11年目にして初めてのフルモデルチェンジという長い期間が空いただけの事はあり
・可変バルブ付き新型エンジン
・新設計フレックスフレーム
・アッパーリンク式サス
・キャスター角を0.5°アップ
・新型6軸IMU
・8馬力アップ
・11kgの軽量化
・6.5インチTFTカラー液晶
・LEDヘッドライト
・可変ピボット(モタスポグレードのみ)
・Mパッケージの設定(モタスポグレードのみ)
などなどほぼ全部変わっています。
最初にややこしいパッケージングについて説明すると、日本国内向けはカラーリング(グレード)によって必須パッケージが設けられています。
ノーマルグレードのパッケージングはこう。
6軸IMUによる電子制御やグリップヒーターやETCそれにパッセンジャーキットが付いた67,000円パッケージモデルが日本では標準グレードという立ち位置。
そこにリチウムバッテリーとM鍛造ホイールも付いて1.6kg軽くなった222,000円パッケージ。
更に電子制御サスペンションとクルコンまで付けた336,000円パッケージ。
という松竹梅みたいな感じ。
もう一つのトリコロールカラーはモータースポーツグレードといって、こっちはまた別の必須パッケージが用意されている。
カーボンホイールや滑りにくい加工が施されたMシートなどが付いた67,000円のMパッケージが標準。
それに電子制御サスペンションとクルーズコントロールを加えた181,000円の上位パッケージが別に用意されている形。
ちなみにホイールやシートなどは後から単品で買うことも可能ですが凄く高いです。
例えばこのモタスポグレードに付く正真正銘フルカーボンのホイールは後から買おうとするとこれだけで100万円もする。
それらを考慮するとモタスポグレードのMパッケージが超お買い得に思える・・・まんまとマーケティングにハマっているような気もしますが。
それで今回のモデルチェンジの狙いについてですが、プロダクトマネージャーであるセップメヒラーさんの各種コメントから察するに大きく分け二つ。
一つは11kgも軽くなっている事からも分かる通り軽量化。
そしてもう一つが
「もっと使いやすくする」
という事。
これについて具体的に話すとまずはフレーム。
『フレックスフレーム』
ただでさえリッターSSとは思えない細さだったフレームなんですが、そこから更に30mmも細くした上に1.3kgもの軽くなってるんですが注目してほしいのはメインフレームの中間地点が捻れている事。
これがフレックスという名を現す部分で、フロントとボトム(ピボット)はエンジンをガッチリ固定し剛性メンバーとして積極的に利用しつつ、ライダーにもっとも近い中間部を車体中心部に近づけ積極的に捻れる様にする事とでフレームの状態を分かりやすく伝えるようにしている。
そしてもう一つ特徴的なのがリアサスペンション。
『フルフローター・プロ・キネマティクス』
スズキが70年代のモトクロス車に取り入れていたフルフローターと同じようなもので、分かりやすく言うとダンパーを上から押してストロークする形になっているマルチリンクサス。
・上方向への反力がフレーム(支点)に集中する
・エンジンから離せてるので熱ダレを防げる
・ライダーの真下にダンパーが垂直に来る
などの効果というか狙いがある。
要する後輪からの反力(踏ん張ってる感)を積極的にメインフレームへ伝えることでリアの動きを分かりやすくしている。スイングアームで完結させてメインフレームに自由度を持たせたユニットプロリンクと真逆の思想ですね。
ところでテールランプが無いぞ・・・と思ったらウィンカーと兼用なんだそうです。
フェンダー外せばリア周りはサーキット対応完了っていうオシャレなだけでなく超合理的デザインである意味これも使いやすさ抜群。
あともう一つ紹介したいのが恐らく皆が一番気にしてるであろう
『Shift-Cam』
という可変バルブ機構。
四輪に詳しい方はBMWの可変バルブといえばバルブトロニックを思い出すかも知れませんが少し違って、ソレノイドピンをカムシャフトに予め彫られている溝に沿わせシャフト自体をスライドさせる事で可変させるカム切替式タイプ。
構造的にはアウディが採用しているAVSとほぼ同じ。
ちなみにベンツやVWでも採用されているドイツを代表する可変バルブシステムだったりします。
そしてこれの狙いなんですが可変バルブというと
「更にハイパワーに」
と思いがちなんですがそうではなく低中速の底上げが主な目的。グラフを見れば一目瞭然かと思います。
どうして可変バルブにすると中低速がアップするのかGSX-R1000の方でも説明をサボっていたのでこの際に話すと、超高回転で弾けるパワーを出す必要があるスーパースポーツは吸気や排気を一つ一つを区切ってやっていては間に合わない問題に直面する。
これは空気にも質量がある(すぐに来ない)からで、そのためにそういうタイプのエンジンは
・バルブ開口面積(バルブの開く大きさ)
・オーバーラップ量(吸排気の両バルブが開いてる時間)
をその他のタイプよりも多く取って流れ作業みたいな事をしている。
しかしこれには問題があって、高回転でグングン吸えるようなバルブ設定にすると
・吸気が弱い低回転時では流速が出ずガソリンと空気が綺麗に混ざらず不安定燃焼
・スロットルバルブが閉じているため吸気管の負圧に吸い寄せられ逆流
・排気バルブも開いているから排気に釣られて排出
などの問題が出る。当然ながらそれが起こるとバワーダウンになる。
だから低回転時の吸気バルブというのは高回転時とは逆に小さく、そして少しだけ開く方がパワーを稼げる。
口を大きく開いて軽く息を吸うのと、口を窄めて軽く息を吸った場合、どちらが勢いよく吸えるかやってみると分かるかと思います。
「じゃあどっちも付けて回転数で切り替えればいいじゃん」
というのがカム切替式の可変バルブであり、S1000RR/0E01型で押し上げられた中低速というわけ。
何故スーパースポーツにおいてピークパワーに関係のない低中速の底上げをしたのかといえば、これもフレームと同じで乗りやすくするため。
「乗りやすさこそ高タイムに繋がる」
という思想を元にS1000RR/0E01は開発されてたからこうなった。急激なトルク変動は乗り辛さ(扱い辛さ)に直結しますからね。
だからS1000RR/0E21は208馬力とパワーアップしてるんですが、多くの人はそれ以上のパワーアップを感じるかと。
余談ですがこの可変バルブは排ガス規制を睨んでの事でもあると思います。バルブタイミングがあっていないとHCなどがモリモリ出るので。
しかしながら元々S1000RRはGSX-R1000を手本にしたと公言しているだけあり色々と被る印象がありますね。ちなみに某GSX-R1000開発者はS1000RRが出た時は相当悔しかったと漏らしていました。
「本来ならば自分たちが先に出すべきモデルだった」
とかなんとか。
よせばいいの最後にまた余計な事を言いますが、相変わらず日本車とモロかぶりな構成でカムチェーンに難がある(コールドスタート時にガラガラいうオーナーは要注意)にも関わらずSS不況など何処吹く風なS1000RR。
タイヤメーカーを始めとした部品屋も広告塔にS1000RRを重用してて、いつの間にか直4スーパースポーツの筆頭みたいになった上に今回の乗りやすさを向上という日本車みたいな改良。
「どれだけジャパニーズSSキラーになれば気が済むんだ」
っていうただの嫉妬なんですが、今回はさらに逆撫でするようなこんな禁じ手までしてきた。
分かりますかね・・・これ。
ただでさえブランドあるのに四輪ブランドを重ね掛けするのは反則だと思います。
主要諸元
全長/幅/高 |
2073/848/1151mm |
シート高 |
824mm |
車軸距離 |
1441mm |
車体重量 |
197kg(装) [193.5kg(装)] |
燃料消費率 |
15.62km/L |
燃料容量 |
16.5L |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC四気筒 |
総排気量 |
999cc |
最高出力 |
207ps/13500rpm |
最高トルク |
11.5kg-m/10500rpm |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前120/70ZR17 後190/55ZR17 [後200/55ZR17] |
バッテリー |
AGMバッテリー [リチウムイオンバッテリー] |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
LMAR9FI-10G |
推奨オイル |
BMW Motorrad ADVANTEC Ultimate |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
フィルター交換時4.5L |
スプロケ |
前17|リア45 |
チェーン |
サイズ525|リンク120 |
車体価格 |
2,313,000円(税込)~ ※[]内はMパッケージ |
系譜図