「さあ、踏み出そう。」
Vストロームシリーズの末弟として登場したV-STROM250/DS11A型。
GSX250Rと同じエンジンなのでGSX250R/GSR250の系譜に載せてもよかったんですが・・・コレがまあ何とも良く出来ているのでコチラへ。
主な特徴としてはアップライトなポジションにシート高800mmと足つきを考えたシート周り。
更にフロント周りも見直されていて、ハンドルの切れ角+2度に加えトレール変更でハンドリングを安定志向に。
ちなみに怪鳥ことDRからの伝統であるV-STROMらしいダブルフェンダー(ライトフェンダー)のクチバシなんですが、250だけはDJEBELを彷彿とさせる大きな丸目。
知らない人も居るかもしれないので説明するとDJEBELというのはコイツです。
大きなお目々のオフ車で人気でした。スズキ唯一のオフ成功車と言っていいんじゃないかと。
V-STROM250だけ丸目になったのはアジア(というか日本)が主要市場なのが大きいんでしょう。
別メーカーのデザイナーが話されていた事なんですが、欧州と日本ってデザインの好みが全く違うから割り切りが大事なんだとか。
実際オンロード重視の17インチやアドベンチャーとしては絞ってあるポジションや車格などを見ても明らかにアジア向けですもんね。
話を戻しますがV-STROM250は最初タイトルをスズキの奇跡と掛けてスズキセキにしようかと思ったほど本当によく出来ています。
何がよく出来るのかって話ですが、先ず第一にアドベンチャーとしての装備がデザインに負けないほど高いレベルで纏まっている点。
・ウィンドスクリーン
・多機能液晶メーター
・サイドケースアタッチメント
・大型アルミリアキャリア
・ナックルカバー
・センタースタンド
・ABS(2018から標準)
ほぼ完備に近い形でオプションのケースをつければ完成する。
そしてこれほどの装備を誇っているにも関わらずABSモデルで税込み602,640円という決して高くない車体価格も凄い。
あんまり大きい声では言えないのですがスズキは値引くのでコレがほぼ乗り出し価格っていう。
なんでこんな安いのかといえばGSR250というバイクが既にあったから。
正確に言うとGSR250の為に造られたボアよりストロークが大きい今時珍しいロングストロークエンジンがあったから。
パワーを絞り出す高速型ではなく下からモリモリ来る中低速型なので疲労感もなく、燃焼効率も良いから実測で30km/L切らないという低燃費性。
そんな正にアドベンチャーの為に造られた様なエンジンを使っているから見直して低速トルクを稼ぐなどのコストが掛からず装備も特性もコスパも優れたモデルに出来た。
恐らくこれを超える250アドベンチャーは簡単には出ない・・・というか出せないと思います。
何故ならこのロングストロークエンジンというのはなかなか造れないから。
エンジンというのは開発や製造に億単位のお金が掛かるので使い回す事が基本。
そうなった時に最大馬力が稼げないロングストロークエンジンというのはアピールポイントとしては弱く、使える車種が限られて流用し辛いから。
じゃあなんでスズキだけ造れたのかというと、このエンジンは元々は中国向けのバイクに造られた
『荷物や人を載せて長距離を燃費良く走る』
という事をアピールポイントに造られた物だから。
だから用途が親しいアドベンチャーにバッチリ嵌ったというわけ。
V-STROMって本当に面白いんですよ。
シリーズには1000と650もあるんですが、一番最初に出たのは2002年の1000でエンジンの元はTL1000S/Rというスーパースポーツの物。
TL1000S/Rが思ったほど伸びず、そのエンジンを使って新たに造られたのがV-STROM1000なんです。
それがSS由来の元気でパルス感もあるVツインエンジンとアドベンチャースタイルがワインディングから長旅までマルチに使えるとして欧州で人気になり、そしていつしかV-STROM1000だけに。
これはV-STROM650も同じで、積まれているエンジンはSV650というストリートスポーツの為に造られたエンジン。
SV650はロングセラーだったんですが、モデルライフの長さからセールスが落ちて来た事と1000の人気から2004年に派生として造られたのが始まり。
そしたらこれまた1000とは違って街乗りですら使えるマルチパーパスとして本家SV650を押しのける程の人気になった。
そしてそしてこのV-STROM250も先に話した通り。
GSR250として日本にも入ってきたものの今ひとつ理解されず、エンジンを活かせる別モデルとして造られたのがV-STROM250。
兄たちと同じ様に評判もかなり良く、既に国内でもGSRやGSXを超える販売台数(2018上半期1120台)を記録。
面白いというのはこの事。
V-STROMシリーズって生い立ちが全部一緒なんですよ。
専用設計の鳴り物入りで登場したわけでも、当初から予定されていたモデルでもない。既にある資産を活用する形で誕生した分家でありながら、出来の良さから本家を押し退けてしまう程の人気を獲得する。
250も気付けばV-STROM250だけになるでしょう・・・まさに托卵する怪鳥。
『V字回復のV-STROM』と言えますけどね。というかそっちのほうが正しいか。
主要諸元
全長/幅/高 | 2150/880/1295mm |
シート高 | 800mm |
車軸距離 | 1425mm |
車体重量 | 188kg(装) [189kg(装)] |
燃料消費率 | 31.6km/L ※WMTCモード値 |
燃料容量 | 17.0L |
エンジン | 水冷4サイクルSOHC二気筒 |
総排気量 | 248cc |
最高出力 | 24ps/8000rpm |
最高トルク | 2.2kg-m/6500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前110/80-17(57H) 後140/70-17(66H) |
バッテリー | YTX9-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
CPR7EA-9 または U22EPR9 |
推奨オイル | スズキ純正 エクスター |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量2.4L 交換時2.1L フィルター交換時2.2L |
スプロケ | 前14|後47 |
チェーン | サイズ520|リンク116 |
車体価格 | 528,000円(税別) [558,000円(税別)] ※[]内はABSモデル |