「On(日常)を便利に、Off(週末)を楽しむ “ちょうどいい相棒 New On & Off Gear ! ” 」
ホンダの250オフだったXR250が2007年モデルで生産終了となってから4年が経とうとしていた頃、外からは
「XR250の後継はどうなっているんだ」
との声が日増しに大きくなっただけでなく、社内からも
「このままだとホンダのオフロードの未来はない」
と言われるまでに。
そんな声に危機感を抱いたホンダが作ったのが実に5年ぶりのオフロード車となる水冷250オフロード車のCRF250Lです。
XRからレーサーと同じCRFになったのはアジアなど海外へのブランド力をアピールするため。CBRとかと同じですね。
重い腰を上げて作ったCRF250Lの主要コンセプトを挙げてみると
・オンロードもオフロードも扱いやすく、楽しい走りを実現するエンジン特性
・ランニングコストを抑えられる燃費性能
・市街地からオフロードまで気軽に扱える、取り回し性に優れた車体サイズとディメンション
・オンロードとオフロード走行の楽しさを両立する本格的な足回り
・トップエンドモデルを凌駕する存在感ある最新のモトクロッサースタイリング
XR250の後継ということでフルサイズ&シート高875mm。さすがに腰が引けちゃう人が多いとホンダも思ったのか最初から45mmもシート高を下げるローダウンキットも発売されました。
このモデルからタイで作られていてエンジンはCBR250Rにも使われているローラーロッカーアームで超低燃費な水冷249cc単気筒。でも流用ってわけじゃなくて共同使用前提開発のエンジン。CBR250Rの方が先に出たからそっちが先行しちゃうけどCBR250チームとCRF250チームで話し合って作ったエンジンだそう。
もちろんそのままじゃなくて吸気ポートをストレート構造にして吸気慣性力を強める事で低速寄りにしてる。
設計案の一つとしてメインフレームのアルミ化も検討したようなんだけど費用対効果が悪いと見送りに。その代わり完全新設計のツインチューブフレームを造りスイングアームをアルミ化。
そしてサスペンションもフロント倒立サスでしかも前後SHOWA製っていう贅沢さ。
ココまで奢ったのは主に市街地での使い勝手を考慮したからで、舗装路でのコーナーリングに寄与しているそう。要するに剛性を上げるのが狙いですね。CRF250はよく剛性が褒められるけどそれはこういった所から。
贅沢なSHOWAの倒立サスなんだけど、手の届きやすい価格にする事も大事なコンセプトだったハズなのに何でまたこんな費用対効果が大きいとは言い切れない倒立サスを採用したのかというと面白いエピソードがあります。
CRFのデザイナーの松岡さんが
「オフロードバイクといえば何?」
という社内アンケートを実施した所
「オフロードバイクといえば倒立サスでしょ!」
という答えが一番多かったんだそう。その声があったからCRF250Lはコストを抑えながらも倒立サスペンションを採用することになった。
ホンダって倒立嫌うイメージがあったんだけど意外だね。悪くない正立だったXR250が後期で倒立になったのも同じ理由なのかもしれない。
モタードバージョンのCRF250Mは翌年2013年に登場。
前後17インチホイールを履いた事でシート高は20mm低い855mmになり、ディスクローターは一回り大きい296mmを装備して制動性アップ。フロントフォークはブラックアルマイト加工までされています。
ホンダっていつもモタードは数年遅れですよね。初期需要の分散が狙いなんだろうか。
ただまあいくらモタードが認知されたジャンルとはいえマイナーなのは否めないようで、ホンダの販売計画を見るに割合的には【L:7|M:3】とオフのLの方が需要があるみたい。
エントリーユーザーの事を考えてオフとしては珍しくフューエルメーターまで装備されてます。警告灯でもまあ不自由は無いんだけどあったほうが安心出来るのは間違いない。
そして何と言っても449,400円(税込)とかなりの安さだった・・・安いといえば開発責任者の塚本さんも言ってたんですが、みなさんもし同じエンジンを使ったオンロード車とオフロード車があったどっちが車体価格高いと思いますか。
オンロードの方が高くてオフロードの方が安いという漠然としたイメージを持たれてる方が大多数ではないでしょうか。CRF250Lも正にその消費者心理から価格を抑える事が重要視されたようです。
だからCRF250L/Mはアルミスイングアームに倒立SHOWAサスなのに兄弟車CBR250Rより安い。これ実はかなりのバーゲンセール価格ではないかと。
恐らく耳にした事があると思いますが、批判的な意見としてよく言われているようにCRF250Lはオフ車にしては少し重い車重や最低地上高の低さからジャンプやスタックを起こすモトクロスのようなコースや、岩だらけなガレ場などをアタックできる走破性は持っていません。腕次第ではありますがあくまでも多目的に使えるデュアルパーパスです。
じゃあどういう人たちがターゲットなのかというと、初代NSX開発メンバーの一人で試作バイクには必ず自らが乗って確かめ、稀にCB1100で出勤していた根っからのバイク馬鹿・・・じゃなくてバイク好きで有名な七代目ホンダ社長の伊藤さんみたいな人。
この人はカブに始まりSL250S→XL250→バハとCRF250の系譜というかホンダ250オフに乗り継いでる大のシングルオフ車好き。
そんなバイク歴に対しインタビューで
「何故オフ車にばっかり乗っているのか?」
と聞かれてこう答えていました。
「実際はほとんどオンしか走らない。でも行きたいと思えば道を選ばず行けるのを選んでしまう。」
CRF250の狙いはこういう人達です。
実際CRF250L/Mの販売台数を見るに思い当たる節のある人は多かったようですね・・・このバイクが作られたのって社長の差し金ではなかろうか。
主要諸元
全長/幅/高 |
2195/815/1195mm [2125/815/1150mm] |
シート高 |
875mm [855mm] |
車軸距離 |
1445mm |
車体重量 |
143kg(装) [145kg(装)] |
燃料消費率 |
44.3km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 |
7.7L |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC単気筒 |
総排気量 |
249cc |
最高出力 |
23ps/8500rpm |
最高トルク |
2.2kg-m/7000rpm |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前3.00-21(51P) 後120/80-18(62P) [前110/70-17(54S) 後130/70-17(62S)] |
バッテリー |
YTX7L-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
SIMR8A9 |
推奨オイル |
Honda純正ウルトラG1(10W-30) |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.8L 交換時1.4L フィルター交換時1.5L |
スプロケ |
前14|後40 [前14|後39] |
チェーン |
サイズ520|リンク106 |
車体価格 |
428,000円(税別) [466,000円(税別)] ※[]内はCRF250M |
系譜図