ZEPHYR(ZR400C)-since 1989-

初期型ゼファー

「Scene of Wind」

昭和生まれなら知らぬ人は居ないであろうZEPHYR/ZR400C型。

カウルを装着したレーサールックで59馬力なのが当たり前だったレーサーレプリカ全盛期に登場したGPz400Fベースの

『空冷2バルブエンジン46馬力ネイキッド』

という時代に逆行したバイク。

ゼファー

カウル文化が広まり廃れていった70年代の様なバイクで血迷ったとしか思えない事態だったのですが、そもそも何故こんなバイクが造られたのかというと

『Z1復刻(リメイクではなく再販)』

というカワサキ社内で上がっていたプロジェクトがマーケティングの関係で立ち消えになった事がキッカケ。

そこで企画部の吉田さんが

「Z1の魅力を持ったリーズナブルな400なら若者にも売れるのでは」

と考え、空冷好きが自主的に集まったのが始まりにあります。

コンセプトイメージ

最初はイタリアン路線もあったものの空冷を活かす形を考えた結果、エンジンを美しさを最大限惹き立てるためにフレームワークからも分かる通りオーソドックスなジャパニーズスタイルに決定。

ちなみにこれが最終案。

ゼファーモック

最初の頃とマフラーが大きく変わっているわけですがこれにも事情というかドラマがある。

ゼファーは最初Z1に倣ってショート管の4本出しマフラーになる予定でした。

しかしゼファーのメインターゲットが若者という事で社内の若手デザイナーや従業員に聞いたところ

「4本出しはダサい」

という猛反対にあってしまい

・4本出しが良い旧来の社員

・集合管のメガホンが良い若手社員

という対立が起こってしまったのですが、若手の反対は凄まじいものがあり

『4本出しマフラーを止めさせる署名活動』

にまで発展。

その事もあってゼファーは集合管に変更された経緯があります。

ゼファー赤

でもそのおかげでZとはまた違う独自のスタイルが身についたので正解でしたね。

ところで『ZEPHYR(西風)』という名前の由来について

「業界に吹き込む新風」

「明石からの西風」

などとWikipediaにも書かれていますが企画責任者の吉田さん曰く、これは後から付け加えられたモノで本来は素直に『風』という意味になります。

ゼファーのカタログ写真

・Zから始まる車名

・空冷を示す車名

という2つの要素を満たす車名がなかなか決まらない。そんな状況を見たアメリカの社員がギリシャ神話に登場する西風を司る風神ゼピュロス(Zephyrosだが英語ではZEPHYR)を思いつき

「ゼファーという名前はどうだろう」

と提案したのが由来。※カワサキマガジンVol53より

ではどうしてそんな意味が込められているという話が広まったのかというと恐らくZEPHYRによって市場が引っくり返ったから。

川崎重工明石工場

意外なことにもゼファーの開発プロジェクトは肝いりというわけでもありませんでした。

エンジン設計の安近さん曰く開発中はレーサーレプリカ全盛という事もあり

「どうして今さらそんなモノを造っているんだ」

と、非常に冷ややかな目や声に晒されていたんだそう。だから開発もフロアの隅の方でコソコソと肩身を狭くしてやっていたんだとか。

そんなもんだから開発チーム内ですら完成を前にしても

「やっぱり売れないのかな・・・」

と弱気になる始末だったそうで。

ちなみにその姿勢は発売時にも如実に現れています。

ZR400Cカタログ写真

ゼファー発売時の雑誌メディアなどを見てもらうと分かるのですが、当時はZXRかGPZが大半でゼファーはインプレも広告も本当に少なかった。

存在そのものを知らない人が居てもおかしくないと言えるほど宣伝されていなかったんです。

ところがいざ発売となると

「こういう大人なバイクを待っていた」

と下馬評を覆す大ヒットとなり、年間販売数13,466台で販売台数首位まで獲得。

C3型

これにはノーマークだった他社や大して取り上げていなかったメディアはもちろんカワサキ自身もビックリ。

このゼファーの登場によって最高潮に達していたレーサーレプリカブームは嘘のように終息し、時代は一気にネイキッドブームが到来。

ゼファーの意味が西風や新風と言われるようになったのはこの事からでしょう。

「時代に抗い、時代を変えた」

この大どんでん返しを起こしたからこそ

ジャパンスタンダード

「ZEPHYR(明石からの新風)」

という栄誉ある風の名として広まっていったんでしょうね。

※年次改良点

90年C2型:メタルエンブレム

91年C3型:砲弾メーターとライトの常時点灯

93年C5型:サス、リアキャリパー1POT化、フロントディスクローターの変更、ハザード採用

主要諸元
全長/幅/高 2100/755/1095mm
[2100/755/1100mm]
シート高 770mm
車軸距離 1440mm
車体重量 177kg(乾)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 46ps/11000rpm
最高トルク 3.1kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-17(54H)
後140/70-18(66H)
[前110/80-17(54H)
後140/70-18(67H)]
バッテリー YB12A-AK
[YTX12-BS]
プラグ DPR9EA-9
または
X27EPR-U9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|後41
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 529,000円(税別)
※[]内は93年以降モデル
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

GPz400F/F-II(ZX400A2~/C) -since 1983-

GPz400F

「エアロフォルムに走りの主張」

僅か8ヶ月でマイナーチェンジとなり末尾にFがついたGPz400F。

ZX400A2

吸排気の見直しで馬力が更に3馬力アップして空冷2バルブエンジンにも関わらず54馬力に。

更に数ヶ月遅れてGP以来となるネイキッド版のF-IIも登場。

カワサキの空冷400としてはこのGPz400F/F-IIが最もスポーツなモデルになります。

GPz400F2

というのも、一向に冷めないスペック競争で水冷化の波が押し寄せ、空冷では厳しくなったから。

フルカウルにするのもそうだし、馬力も空冷では難しい。

そのためカワサキも1985年に水冷400フルカウルのGPZ400Rを開発し、400フラッグシップの座を渡しました。

ちなみに間違えがちなんですが

「GPz(小文字)」は空冷

「GPZ(大文字)」は水冷

という表記の分け方になっています。最初期はゴチャゴチャだったんですけどね。

GPz400Fカタログ写真

結局このGPZ400F/F-IIも約二年間のみの販売。

戦国時代が如何に熾烈な争いをしていたかが分かります。

が・・・コレがKAWASAKIの400を代表するほどのバイクに化けるなんて誰が予想したでしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2165/720/1255mm
シート高 770mm
車軸距離 1445mm
車体重量 178kg(乾)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 54ps/11500rpm
最高トルク 3.5kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-18(56H)
後110/90-18(61H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ DP9EA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後42
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 525,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

GPz400(ZX400A) -since 1983-

GPz400

「パフォーマンスがフォルムになった」

Z400GPからわずか一年ほどで出てきた後継のGPz400。

一見するとZ400GPにハーフフェアリングを付けただけの様に見えますが、フロントを18インチにインチダウンしアンチノーズダイブフロントフォークを装備。

ほかにもビッグボアショートストローク化やカムシャフトの変更で馬力が更に上がり51馬力と走り磨きが掛かったモデル。

GPz400カタログ写真

なんですが・・・恐らく先に紹介したZ400GPよりも知名度は低いのではないかと。

というのもこのGPz400は先代より更に短い僅か8ヶ月で後継が発売されたから。まあ後継というよりマイナーチェンジですが。

GPZ400諸元

ここで少し話を脱線と言うか戻すと、何故Z400GP~GPz400と小刻みだったのかというと、これは恐らくカウルに原因があります。

1982年当時、カウル(フェアリング)付バイクは認可されない時代でした。

そんな中で一番始めにカウル付きとして出たのが1982年5月発売のVT250F(MC08)です。

中森明菜さん

これは申請こそカウルではなくメーターバイザーと銘打つ事で回避したわけですが、この一見から同年の夏にはカウルが解禁となり一気にカウルブームが巻き起こりました。

ちなみに写真の女性は若かりし頃の中森明菜さんです。

ではZ400GPがどうかというと、発売は1982年の2月・・・カウルが認可される寸前の時期だったんです。

カワサキGPZ400

Z400GPに後からビキニカウルを追加したのを誰も覚えていない事を見ても、加熱するカテゴリでカウルブームへ対抗する為に(750Turboと同じ)カウルバイクであるGPz400を前倒しする形で登場させたものと思われます。

主要諸元
全長/幅/高 2165/720/1255mm
シート高 770mm
車軸距離 1445mm
車体重量 178kg(乾)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 51ps/11500rpm
最高トルク 3.5kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-18(56H)
後110/90-18(61H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ DP9EA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後42
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 515,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

Z400GP(KZ400M) -since 1982-

Z400GP

「いま、GPレボリューション」

Z400FXによって切り開かれた四気筒400だったものの、需要の高まりからライバル車が続々と登場していた。

そんなライバル車に対抗すべく開発されたのがこのZ400GP。

GPZ400

サイドカバーを見てもらうと分かる通り

「GPzじゃないのか」

と思うかもしれませんが、GPzという名前が最初に付けられたのは翌年から。

Z400GPカタログ写真

このZ400GPというのはちょうどZがGPzに変わりかけている間のモデルというわけ。

肝心の中身の方はどうかというと、セパハン化にダブルディスク、カワサキの400では初となるユニトラックサス(モノサス)を採用。

そして何よりFXから-13kgという大幅なダイエットとなり、ブラックアウト化されたエンジンも48馬力と走行性能が大幅に向上した・・・んですが、実はこのZ400GPは僅か一年ほどしか発売されていません。

Z400GP当時の広告

すぐに後継が出た事で、このZ400GPはお役御免となりました。

いま振り返ってみるとFXと後継の繋ぎだった少し可哀想なバイクですね。まあ、それだけ当時は競争が激化していたんです。

1983年Z400GP

ましてこのカテゴリはカワサキが自らが切り開いた絶対死守カテゴリでもあったわけですから。

ただ申し分のない性能だったこともあり、このZ400GPは鈴鹿四耐で優勝をしたベースバイクでもあります。

Z400GP四耐

ちなみにその優勝チームはカワサキ社員が自主的に集まって結成されたTEAM38という所。

Z400GPカタログ写真

のちにH2/H2Rを作ることになるチームです。

主要諸元
全長/幅/高 2170/750/1095mm
シート高 780mm
車軸距離 1445mm
車体重量 179kg(乾)
燃料消費率 35.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 399cc
最高出力 48ps/10500rpm
最高トルク 3.5kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-19(52H)
後110/90-18(61H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ D8EA
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ530|リンク104
車体価格 478,000円(税別)
系譜図
Z400FX

1979年
Z400FX
(KZ400E)

Z400GP

1982年
Z400GP
(KZ400M)

GPz400

1983年
GPz400
(ZX400A1)

GPZ400F

1983年
GPz400F/F2
(ZX400A2~/C)

ZR400C

1989年
ZEPHYR(ZR400C)

ZR400G

1996年
ZEPHYR χ
(ZR400G)

EN454/LTD(EN450A) -since1985-

EN450

「FIRE YOUR IMAGINATION」

カワサキが1985年に出したEN450または454LTD、それにLTD450など国によって色んな名前を持つEN450A型。カワサキのパラツインミドルクルーザーつまりVulcan Sにつながる系譜の始まりはこのモデルになります。

LTD450

日本ではEN400の方が有名かと思いますが、これはそのフルサイズバージョンで残念ながら欧米専売モデル。そのため基本的に欧米(特に北米)での話を中心に進めます。

先ず持って最初に説明すると海の向こうでこのクラスは今も昔もエコノ(エコノミー)クラスと呼ばれる日本で言う250に近いクラスで、カワサキも70年代から空冷パラツインであるZ440/LTD(日本版Z400/LTD)というネイキッドスタイルのモデルを出していました。

EN454エンジン

それがここにきて一気に15馬力アップとなる水冷ハイパワーエンジン搭載のベルトドライブクルーザー”EN”へと進化。エコノミーというには明らかにオーバースペックなモデルを投入したわけですが、これは前年デビューしたある有名なモデルが関係しています。

1984年に出たカワサキの有名なモデルといえば・・・そう、トップガンでお馴染み元祖NinjaことGPZ900R。

ハーフ忍者エンジン

このEN450もとい454LTDはGPZ900のエンジン部品を流用することで、コストをエコノミークラスに抑えつつもハイパワー化することに成功したという話。

ヘッドもピストンも当然ボアストローク比も同じ、GPZ900Rのカムチェーン側を2つだけ切り取ったような文字通りハーフNinjaエンジン。908ccの半分だから454ccなんですが、アメ車に詳しい方は”454”というナンバリングを聞くとシボレー(ビッグブロック)を思い浮かべるのではないでしょうか。

知らない人に簡単に説明すると、454というのは1970年にシボレーが開発したエンジンの事。

『V8で7.4L(454立方インチ』

というアメリカを具現化したようなエンジンの事で、コルベットなど搭載されたモデルには454というナンバリングが付き、アメリカで非常に人気でした。

454LTDカタログ写真2

そんなモデルとナンバリングが偶然にも同じだった為か、アメリカのバイク雑誌サイクルガイドが両者を競わせる企画を実施。

すると

「454LTDの方がコルベット454LSより1/4マイルでは1秒以上速い」

という結果に。これが話題となり、エコノクラスながら速くて軽くて便利そして何より破格なバイクという形で人気に。

454LTDカタログ写真

しかしそんな人気とは裏腹に残念ながら454LTDは販売から5年目となる1990年を最後に生産終了となりました。理由はメイン市場だったアメリカでのGPZ900R生産を打ち切ったから。そのため454LTDも道連れに近い形で生産終了。

良くも悪くもGPZ900Rと一蓮托生だった454LTD。これがVulcan Sへと続く系譜の始まりになります。

ちなみに気になる車体価格は当時のアメリカの平均が4万ドル程度だった自体になんとお値段お驚きの$1999。

主要諸元
全長/幅/高 2205/820/1220mm
シート高 745mm
車軸距離 1485mm
車体重量 180kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 454cc
最高出力 50ps/9500rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後140/90-15(70S)
バッテリー YB12A-A
プラグ D9EA
または
X27ES-U
[DR8ES
または
X27ESR-U
※CAモデル]
推奨オイル 10W-40
オイル容量 全容量3.4L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
EN4541985年
EN454/LTD
(EN450A)
EN500A1990年
Vulcan500/LTD
(EN500A/B)
EN500C1996年
Vulcan500/LTD
(EN500C)
EN6502016年
Vulcan S
(EN650A-B/C-D/G/J)

250CS(BR250A) -since 1985-

250CS

「新感覚SINGLE」

1985年にZ250FSの後釜として登場した250CS。CS250と呼ばれたりしますが正しくは250CS。ちなみにCSはCASUAL SPORT(カジュアルスポーツ)から。

250CSサイド

オーソドックスなダブルクレードルフレームにシングルエンジンという一見するとそれまでと同じ流れの様に思えるけど、Zの名を捨てた通り普通じゃない。

初の水冷トレールとして登場したKLR250のものをベースに、ビッグキャブを積み、高回転寄りにすることで6馬力アップの34馬力と歴代単気筒でもトップクラスの馬力に。

振動を完全に消す二軸バランサーまで積んでおいて34馬力という俄には信じ難い数値ですが、このおかげでまるでマルチエンジンのようにヒュンヒュン吹け上がり、低回転が眠いという単気筒らしかぬ特性に。

250CSカタログ

フロントホイールも18インチから一気に16インチとなった事から、とてつもないヒラヒラ感。

ここまでやっておいてリアがユニトラックではなくツインサスなのは当時レトロ感を持ったライトウェイトシングルが少し流行っていたから。

だからカワサキも34馬力/118kg(乾)というカジュアルさの欠片もないスペックを引き下げつつも、ツインショックやステム脇のカバーといったオシャレなパーツを散りばめたというわけ・・・けどまあ誰も知らない通り見事なまでに売れませんでした。

250CS表紙

出すのが遅かった事も大きいんですが、まあカジュアルさが足りなかったというか、カジュアルな走りをするバイクじゃないというか・・・。

主要諸元
全長/幅/高 1970/700/1025mm
シート高 750mm
車軸距離 1340mm
車体重量 118kg(乾)
燃料消費率 57.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 248cc
最高出力 34ps/10000rpm
最高トルク 2.5kg-m/9000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-16(48S)
後110/80-18(58S)
バッテリー YB9L-B
プラグ DP9EA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
オイル容量
スプロケ
チェーン
車体価格 389,000円(税別)
系譜図
Z200

1977年
Z200
(KZ200A)

Z250FS

1980年
Z250LTD/FS
(KZ250LTD/C)

250CS

1985年
250CS
(BR250A)

Z250SL/ニンジャ250SL

2015年
Z250SL
(BR250E)
Ninja250SL
(BX250A)

Z250FS/LTD(KZ250C/G) -since 1980-

KZ250C

「SIMPLE IS BEST」

Z200の後継として排気量を上げ250となって登場したZ250FS。

Z250FSカタログ写真

先代から引き続き丸Z(初代Z)系のデザインを踏襲しつつオシャレなキャストホイールを装備。でもこの時カワサキの250人気は二気筒のZ250FTに集中していたからこのFSは”FTじゃない方”とか酷い言われようでした。

Z250FTとFS

エンジンが違うだけとか思われていますがデザインも結構違うんですよ。向こうは角Z系。

ちなみにディスクブレーキを採用した豪華クルーザーモデルがZ250LTDです。

Z250LTD

そんなFT兄さんが居たせいで影が薄かったZ250FS/LTDでしたが、実はこのバイク1990年に大化けします。

皆さんご存知エストレヤ。

Z系からメグロ系という全く別のバイクへと大変貌することで生き延び、長く愛される事になるわけです。

主要諸元
全長/幅/高 1985/735/1035mm
シート高 755mm
車軸距離 1320mm
車体重量 131kg(乾)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 13.6L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 248cc
最高出力 20ps/8000rpm
最高トルク 1.8kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前2.75-18-4PR
後120/90-16-4PR
バッテリー YB10L-A2
プラグ D7ES
[D8ES※82以降]
推奨オイル カワサキ純正オイル
オイル容量 全容量1.4L
スプロケ
チェーン
車体価格 268,000円(税別)
系譜図
Z200

1977年
Z200
(KZ200A)

Z250FS

1980年
Z250LTD/FS
(KZ250LTD/C)

250CS

1985年
250CS
(BR250A)

Z250SL/ニンジャ250SL

2015年
Z250SL
(BR250E)
Ninja250SL
(BX250A)

GPZ500S(EX500A) -since 1987-

GPZ500S

ある国ではGPZ500Sと呼ばれ、またある国ではNinja500Rと呼ばれ、またまたある国ではEX500Rと呼ばれていたバイク。

日本では400の方がGPZ400Sとして入ってきてハーフニンジャと呼ばれていましたが、それは海外でも同じ。

ハーフニンジャっていうのはトップエンドだったGPZ1000RXのエンジン(四気筒)を半分にした(二気筒)エンジンという事からそう呼ばれていました。

Z454LTD

※一番最初にこの方法を取ったのはGPZ500SではなくGPZ900Rのエンジンを半分にした454LTD(上の写真)というクルーザーなんだけど、それを紹介するとバルカンの系譜になってしまうので割愛させてもらいます。バルカンSの系譜も書かないといけませんね。あとヴェルシスもか。

EX500R

GPZ500Sは並列二気筒498ccながらGPZ1000RXのエンジンベース(というか二気筒にぶった切り)しているだけあってトルクフルながら54馬力を発揮。そんなエンジンが積まれるのは適度な硬さのツインスパースチールフレーム。更には適度な前傾にクセのないハンドリング。

本当に当時のカワサキらしからぬ素行の良さを持ったバイクで、欧米でエントリーモデルとして非常に高い評価を得たロングセラーモデル。

このバイクの何が評価されたのかという

「何でもこなせる」「取り回しが楽」「街乗りに適した足回り」「車体価格が安め」「意外と速い」「そのわりには低燃費」

という感じ。向こうにとってはこれが日本でいう400みたいなもんだからGPZ400Sにも言える様な評価だね。

Ninja500R

日本ではモデルチェンジを機に車名をGPZ400SからEX-4に改めたんだけど、向こうでは好評だったから同じモデルチェンジをしつつも名前はそのままだったり仕様地によって色々。

日本(GPZ400S)では車名をEX-4に改めて装備を豪華にしてもカラキシだったけど、コスパや実用性を求められる向こうでは受け入れられロングセラーに。どれくらいロングセラーかというと1987年から驚きの2009年まで(一部の国では2006年まで)売られたほど。

GPZ500Sカタログ写真

「新米ライダーは何も考えずコレを買って練習しろ。」

と言われる老将のような存在にまでなりました。更にはバイク便の需要までも獲得したみたい。

主要諸元
全長/幅/高 2125/675/1165mm
シート高 770mm
車軸距離 1440mm
車体重量 190kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 498cc
最高出力 54ps/9500rpm
最高トルク 4.7kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後120/90-16(63H)
バッテリー YT12A-BS
プラグ DR8ES
または
X27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

KMX125(MX250A) -since 1986-

KMX125R

「2-STROKE INCENTIVE PERFORMANCE」

KE125以来11年ぶりの登場となったKMX125。モトクロッサーKX125がベースとなっています。

KX125

排気デバイスKIPSの採用で22馬力に上がったパワーも目を引くけど、最大の売りはクラス初採用となったディスクブレーキ。

この頃はまだまだドラムブレーキが主流でディスクはタブーに近かった。泥や石といったゴミがキャリパーに入ってきてトラブルを招く恐れがあったからですね。サスペンションのストローク量が多い事からブレーキラインの取り回しの大変さもあります。

しかしドラムブレーキは重くなる上に効きがコントローラブルじゃない。そんな中でカワサキはライバルに打ち勝つ為にタブーとされていたディスクブレーキを採用したモトクロッサーでレースに挑み、トライアンドエラーを繰り返すことで実用化にこぎつけたわけです。始まりはZ400FXのリアキャリパーの流用からだったそうです。

KMX

そして1982年の市販モトクロッサーKX125にて標準採用され、市販車KMX125にも下りてきたというわけ。

このカワサキが形にしたオフロード車でのディスクブレーキは制動力が一気に上がった革新的な装備で、モトクロスレースの走り方を一変させました。

ただもう一つ忘れてはならない革新がユニトラックサスです。今ではスポーツバイクでは欠かせない装備となっているリンク式モノサス(一本サス)ですね。

ユニトラックサスペンション

これは初期の物で現在の物(ボトムリンク式)とは少し違うので違和感があるかもしれませんが、これがリンク式モノサスペンションの原型。

こうすると何が良いのかというのを簡単に言うと、スイングアームが直接サスペンションを動かすわけではないので、ホイールトラベル(ホイールの上下の動きの幅)を大きく取れ、初期沈みは柔らかく吸収し路面を追従する一方で沈み込みが深くなると踏ん張る(簡単に底打ちしない)プログレッシブ(二次曲線)な特性を得られる。

これが出るまでのいわゆる二本サスというのは衝撃を受けたら受けた分だけ比例してサスペンションが縮んでいた。それで問題となるのは底打ちした時。ドッタンバッタンと動くオフロードでサスペンションが底打ちをすると吸収しきれなかった分の衝撃がライダーに来るので吹っ飛んでしまう。

だからとっても硬いサスペンションにして底打ちさせないようにしていたんだけど、そうすると今度は簡単なギャップを全く吸収せず弾くようになるからポンポン跳ねるようになりスピードを出すのが難しい状況だった。

そんなデメリットを解消したユニトラックサスは上で紹介したディスクブレーキ以上に革新的なサスペンションで、始めて装備したモトクロッサーKX125は圧倒的な速さを誇り、ライバルメーカーも後を追うようにリンク式サスペンションへと変わっていきました。

ただ面白い事にこのユニトラックサスを最初に考えたのはモトクロッサーKX125の開発メンバーではありません。これを実現させようと開発していたのは同じ設計室で進められていたKR350/250というロードレーサーのチーム。

カワサキKR

先に挙げたサスの問題を抱えていたKXの増田さんがその構造を見て

「これはオフロードにこそ必要だ」

という事で拝借のような応用。それが正しい判断で大成功に繋がったというわけ。

KMX

このユニトラックサスペンションによる大変貌&快進撃によりカワサキは

“速く走る為に大事なのは馬力ではなくサスペンション”

とそれまでの考えを改める事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 1988/840/1165mm
シート高 845mm
車軸距離 1375mm
車体重量 96kg(乾)
燃料消費率 44.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.0L
エンジン 水冷2サイクル単気筒
総排気量 124cc
最高出力 22ps/9000rpm
最高トルク 1.7kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21(4PR)
後4.10-18(4PR)
バッテリー YB4L-B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ428|リンク128
車体価格 282,000円(税別)
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KL250R/KLR250(KL250D) -since 1984-

KL250R

先代KL250の後継として国産としては初めてトレールに水冷エンジンを積んだバイクでもあるKL250R。

DOHCで二軸バランサーで28馬力を発揮するエンジンも凄いけど、セミエアフォークにユニトラックサスと実は足回りも凄いやつ。

トレール車らしからぬヒュンヒュン回るエンジンと元々定評のあった走破性に磨きが掛かった事でロングセラーとなったモデル。

KLR250

性能が良かった事から、アメリカの海兵隊の特殊部隊「アメリカ海兵隊武装偵察部隊」で使われてた実績がある。

結果として初登場時の84年から93年まで大したマイナーチェンジもなく売られ続けたロングセラー車。

KLR250

ちなみにKLR250とKL250Rと2つ呼び名があるけどどっちも同じこのバイクの事を指す。

カワサキが国ごとに使い分けてたせいでゴチャゴチャになってる。

日本では最初はKL250Rで売ってたけど80年代後半からKLR250に切り替えたみたい。

主要諸元
全長/幅/高 2140/855/1205mm
シート高 835mm
車軸距離 1415mm
車体重量 117kg(乾)
燃料消費率 58.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 11.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 38ps/9000rpm
最高トルク 2.3kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.00-21-4PR
後4.60-17-4PR
バッテリー FB4L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP9EA-9
または
X27EP-U9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L
スプロケ 前15|後44
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 388,000円(税別)
※スペックは84KL250R
系譜図
KL250

1977年
KL250
(KL250A/C)

KLR

1984年
KL250R/KLR250
(KL250D)

ES|SR

1993年
KLX250ES/SR
(LX250E/F)

スーパーシェルパ

1997年
SUPER SHERPA
(KL250G/H)

H型、J型、M型

1998年
KLX250
D-TRACKER
(LX250H/J)

S/V型前期

2008年
KLX250
(LX250S)
D-TRACKER X
(LX250V)