FZ750(1FM)-since 1985-

FZ750

「マン・マシンの一体化」

5バルブ&前傾エンジンというヤマハスポーツを象徴する”GENESIS”の始祖であるFZ750。

当時ヤマハはRZなどで2stで大成功を納めていた一方、大型4stではスーパースポーツと呼べるようなバイクを持っておらず他社に引けを取る状況でした。

前傾エンジン

更に追い打ちを掛けるように国内市販車レースが4st750ccになる事が決定。

もともと4stスーパースポーツを造る必要性があった事から、これを好機だとして作られたのがFZ750。

特徴となるのが45度と大きく寝かせられたシリンダーですが、これは吸気の流れをストレートにすることで抵抗を少しでも減らすため。吸排気レイアウトにはエンジンが水平に近い形だったシグナスのノウハウが活かされたんだとか。

5バルブエンジン

そしてもう一つの特徴が何と言っても吸気3本、排気2本で構成されている市販車初の5バルブ。

これは吸気面積を稼ぐためと、1本あたりのバルブを小さくし質量を減らす事による高回転化が狙い。

ただし、これらの技術はFZ750が全て一から生み出したものではありません。

当時のヤマハは市販車こそ2st偏重だったものの4stの研究にも力を入れており、その最先端にあったのがコードOW34というバイク。

OW34

水冷バンク角90度V4の1000ccエンジンを積んだ耐久レース用のファクトリーマシン。

このバイクの最大の特徴はバルブ数。吸気4本、排気3本の7バルブになっています。

7バルブ

狂気を感じるほどですが残念ながら実戦投入される事はなく77年の東京モーターショーでのお披露を最後にお蔵入り。

ただ計画はここで止まっておらず

「レーサーが無理ならスペシャルバイクとして市販化しよう」

ということで開発コードを001に改めて再始動。

プロジェクト001A

OW34と同じくV4エンジンでもちろん7バルブを採用・・・が、結局市販車として7バルブの耐久性やコスト増をクリアすることが出来ず、またHY戦争の問題もありお蔵入り。

しかし培った多バルブ技術を使わないのはあまりにも勿体ないということで新たに立ち上がったのがモデルコード064。

これは直列4気筒と5バルブ化によって耐久性とコストを解決したアメリカの市販車レース用ホモロゲーションモデル。

プロジェクト064

200万円&200台限定で発売・・・予定だったんですが

「売れないだろう」

という上の判断で三度目となるお蔵入り。

FZ750カタログ2

頓挫に次ぐ頓挫ですがそれでも諦めず

「せめて多バルブ技術を採用した市販車だけは出そう」

と唯一残されていたコード00Mを再始動。これこそがFZ750のプロジェクトです。

ジェネシス思想

つまりFZ750そしてGENESISというのは、OW34が頓挫しても諦めず、001が頓挫してもまだ諦めず、064が頓挫してもそれでも諦めなかったからこそ誕生できた

「足掛け10年の執念の結晶」

というわけ。

開発中は市販車初5バルブのフラッグシップという事で社内ですら極秘扱い。

しかしどうも何か凄い市販車を造っているんじゃないかという噂が社内で広がり始めた。これが何でかっていうと

ジェネシスエンジン

「試作バルブの注文が4本単位ではなく5本単位だったから」

です・・・しかもその中の1本だけ短いバルブっていう怪しさ満点の開発。

(5バルブは3本ある吸気バルブの真ん中だけ少し短い)

1FM

そこでエンジンの開発責任者だった中山さんはダミーとして架空の単気筒プロジェクトを用意。

「た、単気筒とかも造ってるんだよ・・・」

と誤魔化す事で5バルブがバレるのを防いだそう。

FZ750サイド

「せめてこれだけは形にしよう」

という信念というか気迫が篭っていたからか、フレーム担当が最初は市販車ではなくレーサーと勘違いして設計を始めたという逸話まで誕生しました。

FZ750カットモデル

そんなFZ750から始まったヤマハGENESIS思想ですが、皆さんご存知のように多くの車種に採用され、多くの人を魅了する大成功を収めました。

これはひとえに執念深く研究することでGENESIS思想を構築したから。

FZ750ジェネシス

そして執念深く造り続けたことでFZ750という始祖を生み出せたからです。

主要諸元
全長/幅/高 2225/755/1165mm
シート高 790mm
車軸距離 1485mm
車体重量 209kg(乾)
燃料消費率 42.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 749cc
最高出力 77ps/9500rpm
最高トルク 7.0kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/80H16
後130/80H18
バッテリー YB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
スプロケ 前16|リア44
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 798,000円(税別)
系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)

VMAX(2S3/2CE) -since 2008-

2008VMAX

「The Art of Engineering」

24年もの歳月を経て登場した二代目にあたるVMAXまたはVMX1700。

車体価格が先代の二倍以上となる税込2,367,000円となった事から分かるように、既存のバイクとは一線を画するスペシャルモデルへと生まれ変わりました。

2017年型VMAX1700

専用部品のオンパレードなのはもちろん、アルミだらけで可能な限り樹脂を使っていない。

更にフロントフェンダー等を見てもらえば分かる通り、組立工場からクレームが来るのも当然なほど細分化されたパーツ構成。

VMAX1700外装

前後フェンダーとタンクとサイドカウルだけでこれだけの部品数。

もうアルミ製プラモデルの域ですね。

アルミエアーダクト

更に更にVMAXのトレードマークであるエアダクトは本物のエアダクトとなり、アルミダイキャストで全て職人による手作業によるバフ掛け。

そして生産も完全受注生産、販売は定められた店のみでした。

VMAXインターカラー

さて・・・このVMAXはこう見えて初代が出る前から開発は始まっていたんです。

では何故24年もの歳月がかかってしまったというと簡単な話

”あーでもないこーでもない”

と何度も開発をやり直したから。

そのためVMAXには開発リーダーだけでも3人が歴任しており、開発に携わった人を全て含めると途方もない数で、正にヤマハが総出となって開発した様なかたち。

赤VMAX

具体的に何処をそんなにやり直したのかというと、代表的なのがVMAXの要であるエンジン。

VMAXは1679ccですが、一番初めは2000ccで開発が進んでいました。

しかしあまりに重くなり過ぎて軽快さが損なわれてしまうという事から開発をやり直し。次に作られたのが1800ccのエンジン。

音塊

「OTODAMA(音塊)」

というタイトルで2001年の東京モーターショーでもお披露目されています。

これで市販化まであと一歩という所まで来たのですが、諸事情によりプロジェクトが停滞した事と、ある技術革新が起こった事で状況が大きく変わりました。

音塊

「電子制御燃料噴射装置(通称FI)」

です。

コンパクト化&精密化出来るFIを採用しない手は無いとしてまた作り直し。

VMAX1700エンジン

これによりVMAXはエンジンの挟み角を更に狭い65°に”凝縮”する事が出来ました・・・が、コレでも終わらなかった。

このFI化で作り直したエンジンで順調に開発が進んでいたんですが、担当していたテストライダーが

「もう少しパワー(排気量)があった方が良くなるのでは」

と完成間近になって提言。

VMAX1700シート

普通ならば

「いまさら無理」

となる。

エンジンのパワーを上げるということはエンジンはもちろんフレームも足回りも再設計になるから聞けるわけがない。

しかし検討やテストの結果、そうした方が良くなるという事が分かり迷いなく再び開発のやり直し。

バンク角65°V型四気筒

この65°V型四気筒1679ccというエンジンはそんな三度のやり直しの末に完成した

まさに

「三度目の正直エンジン」

というわけ。

ただしこういった話はエンジンだけではなく、これまたアルミになったダイヤモンドフレームや足回りでもそう。

VMAX1700イギリス仕様

最初は倒立フロントフォークで進んでいたのに、ハンドリングが硬くなりすぎているとして見直され、規格外の太さを持つ専用の正立フロントフォークになった。

フロントフォークの正倒を変えるという事は、ステム周りの剛性が大きく変わってしまうのでフレームも三叉も当然ながら再設計。

細かい所で言えばタンクの上にある一見すると何の変哲も無いマルチメーターもそう。

VMAX1700有機ELメーター

これ2008年当時としては珍しかった有機ELディスプレイ。

最初は液晶で進んでいたんですが

「発光が液晶より良い」

という理由だけでここでも再設計が行われている。

VMAXマフラー

VMAXの凄い所というのは、見えないカプラーまでもが専用設計な事も、ボルト一本に至るまでデザインされている事も、樹脂がほとんど使われていない事もそうですが

この様に

「何も惜しまない開発をした事」

が一番凄い所なんです。

こんな事が当たり前のように四半世紀も続いたから開発メンバーも

「これ終わらないんじゃ・・・」

と本気で思うほどだった。

もちろんデザインも例外ではありません。

VMAX1700のデザイン案

「過去これほどスケッチしたバイクは無い」

と監修した一条さんや担当された梅本さんも漏らすほど、何十何百と練られた末のデザイン。

新型VMAXの噂が立っては消えていたのはこういった理由があったから。

ちなみにこのVMAXは先代とは違いアメリカがデザインコンセプトではありません。

VMAXコンセプトデザイン

力の象徴『金剛力士像』がデザインコンセプト・・・そうこのVMAXは”和”なんです。

洋から和になった理由、そしてここまで贅沢な開発プロジェクトが許された理由は、VMAXの総括プロデューサーだった牧野さんの信念にあります。

VMAXフェイス

「日本のバイクメーカーとして、ヤマハ発動機としての意地と技術を示したい」

という信念です。

時も金も手間も惜しまず開発を続ける事が出来たのは、社員一丸となってこの信念を貫いたから。

生産終了となった2017年までマイナーチェンジすら一切なかったのは、持ちうる全ての技術を出した妥協のないものだから。

ヤマハの至宝

そしてVMAXを『ヤマハの至宝』と言っていたのは

「自分たちの意地を形にした自慢のバイクだから」

主要諸元
全長/幅/高 2395/820/1190mm
シート高 775mm
車軸距離 1700mm
車体重量 311kg(装)
[310kg(装) ]
燃料消費率 16.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1679cc
最高出力 151ps/7500rpm
[200ps/9000rpm]
最高トルク 15.1kg-m/6000rpm
[17.0kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70-18(59V)
後200/50-18(76V)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
または
IU27D
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.9L
交換時4.3L
フィルター交換時4.7L
スプロケ
チェーン
車体価格 2,200,000円(税別)
※[]内はEU仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)

Vmax1200(1FK~) -since 1985-

vmax1200

「スーパースプリント アメリカン」

対北米戦略車として造られたVmaxまたはVMX1200。

昔はV-MAXとハイフンが付いたりしていたのでハイフンがあったり大文字だったりしても間違いではないんだけど、一応いまはVmaxと小文字で書かれるように統一されているようです。

さて

「アメリカを造る」

という目標から始まったプロジェクトは、当時としては最高馬力となる145馬力を引き下げたドラッガーへとたどり着きました。

Vmax1200リア

まずこうなった経緯から説明すると、この頃のヤマハは日欧でこそ人気を獲得していたけど北米では今ひとつ波に乗れていない状態だった。

そんな中でUSヤマハからある提案がされました。

「V8のマッスルバイクを造れ」

という言っている意味がよく分からない提案。

しかしヤマハは郷に入っては郷に従えと、開発チームをアメリカに送り出した。

そこで目にしたものは若者から年配の人まで夢中になってドラッグレースを楽しんでいる姿だった。

Vmaxプロトタイプ

そういう事かと理解したヤマハは

「ゼロヨン10秒を切るバイク」

という目標を掲げ、当時最大排気量だったベンチャーロイヤルのV4エンジンをベースに145馬力という当時としては最高となる馬力を叩き出すエンジンを開発したというわけ。

VMAX1200エンジン

しかし見てもらうと分かる通り、VmaxのエンジンはVの挟み角が90°ではなく少し狭い70°になっている。

だから点火タイミングも180-270-470-720と、180°の直四とも、同じ180°クランクのV4とも、ハーレーなどに代表される45°Vツインとも違う独特なもの。

VMAX1200点火タイミング

何故70°なのかというと

・狭くして間延び感を抑え生きたサウンドを出したい

・でもキャブレターは4つ積みたい

という反比例する二つの狙いを両立させるために導き出した挟み角が70°だったから。

ただし90°でないため一次振動という大きな振動が発生する。だからVmaxはその振動を消すために馬力ロスとなる一次バランサーを採用しています。

つまり馬力を出すにはVmaxのエンジンは不利な形・・・にも関わらずVmaxが145馬力を叩き出せたのは、有名なコレのおかげ。

ブイブースト

「V-BOOST」

ですね。

V-BOOSTというのは一気筒に一つ付いているキャブの下にある混合気の通路インテークマニホールドの前後を連結(貫通)させて擬似的に一気筒デュアルキャブにする仕組み。

V-BOOSTの仕組み

簡単に表すとこんな感じで、6000rpmから徐々に開き、8500rpmで全開となります。

これはキャブレターが横並びな直四ではなく前後にあるV4だから可能となった仕組みであり、微塵もガソリンを惜しまないアメリカ向けらしい仕組みですね。ちなみに燃費は街乗りで10km/L前後。

そして合わせて必須となるのがW吸気でも枯渇しない大容量エアクリーナーボックス。

1986VMAX1200

そのためVmaxはタンク下が全面エアクリボックスとなっておりガソリンタンクはシート下。

これは低重心にするためでもあるんだけど、この関係でタンク容量はリザーブ込みで15Lしかない。

つまり10km/L×15Lで街乗りしていると満タンでも150km/Lしか走れないという割り切りっぷり。

ちなみ吸気はVmaxのトレードマークでもある大きなエアダクトから・・・と思いがちだけど実はこれダミーで、本当はこのダミー同士の間から普通に吸っていたりします。

VMAX1200サイド吸気口

ここで少し面白い小話をすると、このVブーストはフルパワーの逆輸入車のみに付けられた構造で、国内仕様には付いておらず95.2馬力しかなかった。

そのことから日本でも年を追うごとに(後にワイズギアからV-BOOSTキットが出たものの)逆輸入が人気となりました。

しかし逆輸入と一重にいってもVmaxだけで主に7つの仕様地があり馬力はバラバラ。

カナダ仕様145馬力
アメリカ仕様143馬力
カリフォルニア仕様135馬力
南アフリカ仕様135馬力
欧州仕様
※V-BOOST無
100馬力
日本仕様
※V-BOOST無
97馬力

他にもフランス仕様などもありますが、代表的な仕様地はこれくらい。つまり最高馬力のフルパワー仕様はカナダ仕様という事になる。

そのため

カナダ仕様

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識が広まった。

ただし差があると言っても数馬力で、晩年には横並びとなったのに

「カナダ仕様こそ真のVmax」

という認識は生産終了まで覆る事はなくカナダ仕様だけが突出して人気でした。

どうしてここまで仕様地へのこだわりが生まれたのかと言えばもちろん

「怒涛の加速」

を最高の形で味わいたい人が多かったからでしょう。

VMX1200エンジンカタログ

発売当時フルスロットルに出来る人は誰も居ないんじゃないかと言われるほどでした。

「SSの方が速いんじゃないの」

と思う人が居るかもしれませんね。

たしかにタイムや実速度だけで見ると昨今のSSの方が速い。でも乗り比べてどちらが速く感じるかと言えば10人中10人がVmaxと答えるでしょう。

VMX1200ポジション

それはこの伏せようにも伏せられない体感的な速度やGを考慮していない低いポジション。

そこに合わせられる6000rpmからターボのようにドッカン加速するVブーストがあるから。

Vmaxは

「”乗る”ではなく”しがみ付く”バイク」

と言ったほうが正しい感じです。

VMX1200パンフレット

ただそんな狂気さにはもう一役買っている要素があります・・・それはヘロヘロなフレーム。

普通に走っていても剛性が足りていないのを感じ取れるほどヘロヘロだったから

「設計ミスじゃないのか」

とか

「リコールしろ」

とか言われる始末でした・・・が、これはワザとそうしているんです。

その狙いはコンセプトの一つにあります。

VMAX1200魔神

「何よりもエンジン」

というコンセプト。

「とにかくエンジンを、エンジンだけを感じ取って欲しい」

という思惑があり、それにはエンジンを受け止めるフレームの包容力は邪魔な存在。

だから可能な限り剛性を落とし存在感を消しているというわけ。

ただこれにはVmaxが歴史に名を残す事となったもう一つの理由、デザインにも関係しています。

Vmaxコンセプト

Vmaxは見て分かる通り

「アメリカの具現化」

がデザインコンセプトです。

そこで開発チームの一員でもあったGKデザインの一条さんは、アメリカでアメ車の代名詞であるV8エンジンの車を中古で購入。

そして乗り回しているうちに

「デカいエンジンに緩いボディで力任せに地面を蹴る愛おしい感覚こそアメリカ」

という事に気付かされた。

VMX12

Vmaxのフレームが弱い理由はここにも繋がっているというわけ。

ちなみにVmaxを手掛ける上で一条さんが大事にしたのは

「マイナスのデザイン」

という考え。

VMX1200ファイナルモデル

Vmaxというと”マッチョ”という言葉がピッタリなんですが、よく見てみるとシート回りやエキゾーストなど絞る所は徹底的に絞ってある。

これが

「膨らみを持たせる程、膨らんでいないマイナスの部分が際立つ」

というマイナスのデザイン。

センスの次元が違いすぎて今ひとつピンと来ない人も多いと思います。

しかしそんな人も一条さんがVmaxのデザインで強く影響されていると言った物を見れば、その意味が分かります。

そしてその強く影響されている物も、これまた実にアメリカらしい物。

F102

米空軍の戦闘機F102です。

言われてみれば確かにボディ後部のクビレと前方にあるエアダクトなどVmaxと通ずる所がありますね。

ちなみに一条さんは根っからの飛行機好き。

言い忘れていましたが、タイトルに型式を書いていないのは物凄い数になるからで・・・モデルチェンジの略歴を含め箇条書きで書いていこうと思います。

初期型 1985~1986

1985年式

フロント5本スポークホイール。

カナダ仕様:1GR/1VM

アメリカ仕様:1FK/1UT

カリフォルニア仕様:1JH/1UR

二型 1987~1989

1987年式

フロントのディッシュホイール化。

カナダ仕様:2LT/3JP3

アメリカ仕様:2WE/3JP1

カリフォルニア仕様:2WF/3JP2

三型 1990~1992

1990年式

デジタル進角&吸排気見直し

カナダ仕様:欠番

アメリカ仕様:3JP-4/7/9

カリフォルニア仕様:3JP-5/8/A

日本仕様:3UF-1/2

四型 1993~1994

1994年式

フロントフォーク大径化&ディスクローターの大径化&4POTキャリパー化など。

カナダ仕様:3JP-B/E

アメリカ仕様:3JP-C/F

カリフォルニア仕様:3JP-D/G

日本仕様:3UF3/4

五型 1995~2002

1996年式

レギュレーター・クランクケース変更&カートリッジ式オイルフィルターへ変更

翌96年にはドライブシャフト周りが見直されカナダが140馬力に、アメリカ仕様が135馬力にダウン。

カナダ仕様:3JP-J/K/L/R/U/|5GK-1/4/7/B

アメリカ仕様:3JP-H/M/S/V/X|5GK-2/5/9

カリフォルニア仕様:3JP-J/N/T/W/Y|5GK-3/6/A

日本仕様:3UF-5/6 ※1998年モデルをもって廃止

最終型 2003~2007

最終型

点火方式をデジタル化とサスペンションのリセッティング。

カナダ仕様140馬力(最終年度135馬力)、アメリカ仕様&南アフリカ仕様135馬力

カナダ仕様:5GK-E/N/T/Y|4C4-5

アメリカ仕様:5GK-C/L/R/W|4C4-3

南アフリカ仕様:5GK-G/H/P/U/V|4C4-1/2

となっています。

オーナー間では通称型式ではわかりにくいので、認定型式で区別するのが広まっているようですね。

補足:車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~

最後に

改めてVmaxを振り返ってみると、最後の最後まで変わらずとも色褪せなかった名車ですね。

歴代VMAX1200

何がそんなに人を惹きつけたのかと言えばデザインと、そのデザインに負けない

「怒涛の加速」

でしょう。

この怒涛の加速が一体どんなものなのかというのは実は簡単に説明できるんですよ・・・なぜならVmaxに乗ったことがない人も怒涛の加速を知ってるから。

VMAX1200ポスター

それは初めてバイクに乗ってアクセルを捻った時です。

首がモゲると思ったその感覚、ウィリーして吹っ飛ぶと思ったその感覚。

ブイマックス1200カタログ写真

Vmaxはそんな懐かしい感覚を思い出させてくれる怒涛の加速を持ったドラッガー。

病み付きになる人が多いのも納得でしょう。

主要諸元
全長/幅/高 2300/795/1160mm
シート高 765mm
車軸距離 1590mm
車体重量 283kg(装)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1197cc
最高出力 145ps/9000rpm
最高トルク 12.4kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90-18(61V)
後150/90-15(74V)
バッテリー YB16AL-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
または
X24EPR-U9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.5L
フィルター交換時3.8L
スプロケ
チェーン
車体価格 890,000円(税別)
※スペックはフルパワー仕様
※価格は90年国内仕様
系譜図
Vmax1200 1985年
Vmax
(1FK~4C4)
1700 2008年
VMAX
(2S3/2CE)

XJR1300/C(5UXB~|2PN) -since 2006-

XJR1300ファイナル

「空冷イズム」

排ガス規制で終わるかと思いきや、FI化で存続を果たしたXJR1300の5UXC~型。

しかもただ新開発のO2センサーと触媒入りの4-2-1マフラーを搭載し排ガスをパスしただけでなく、加えてトルクを約10%アップさせるという心意気。

他にも足付きを考慮した新作シートとサイドカバーやポジションの変更、LEDテールなどこだわりポイント多数・・・

変更点

なんですが、このモデルで一番のこだわりポイントは何を隠そうメインフレームです。

実はXJR1300はこの代でメインフレームを一から作り直しているんです。これ知らなかった人も多いんじゃないかと。

それも無理もない話で、このメインフレーム作り直したにも関わらずキャスター角などの数値が一切変わってないんです。

「じゃあ何のために変えたのか」

というとハンドリングを更に磨くため。剛性の最適化です。

5UXB

これのおかげでXJR1300は再びハンドリングが少し変わりました。

語弊を恐れずに言うと、曲げてやって初めて気持ちよく曲がる

「ビッグバイクらしいハンドリング」

を更に強調させる形になりました。

これはキャッチにもある通り

2007XJR1300

「スポーツは、深く、広く。」

というコンセプトから来ているもの。

もともとXJRが誕生する際に用いられたヒューマノニクスが編み出されたのは

「最近のバイクはマシンが勝ちすぎている」

という考えがヤマハの社内でもあったから。

そして

『マン・マシンの一体』

を念頭に置いて開発されたのがXJRであり、それが好評を博したわけです。

5UX

それを更に深めるためにわざわざフレームを作り直した。

「XJRにおけるマン・マシンの一体って何よ」

って話ですが、この代を担当された開発責任者の桜田さんいわく

「オレ上手くなったんじゃないかな」

と思わせてくれる過不足のない応答力と走り、まるで草野球をした時のような楽しさと汗をかける走りが出来る事。

XJR1300壁紙

ちなみにこの桜田さんはWGP500やMotoGPでエンジン設計や監督を務められていた凄い方。

「次期型XJR1300を造れ」

と社命を受けて市販車グループに呼び寄せられたそう。どれだけヤマハがXJR1300を大事にしていたか分かりますね。

合わせて紹介で申し訳ないですが、こちらは2015年に出た海外向けのカフェレーサーXJR1300C/2PN型。

XJR1300C

改めて見るとXJR1200のレーサーコンセプトを20年の越しに実現させた様な佇まいですね。

さて・・・XJR1300は残念ながら2015年モデルをもって排ガス規制を機に生産終了となりました。

XJR1300black

最後の最後で音叉マークではなくYAMAHAと書体をあしらって一気に渋くするというニクさ。

肝心な事を言い忘れていたんですが、XJRのトレードマークといえば何と言っても

『手前は細く、奥は大きく膨らんだタンク』

ですね。

XJR1300タンク

これはビッグバイクのたくましさを拳の形で表現したものです。

そして面白いことにXJR1200の頃から関わり先代の開発責任者だった松木さんが知ってか知らずか偶然にもBS誌00/06号のインタビューでこんな事を当時仰っていました。

「XJRは確かに後出しジャンケン。でも我々はグーが一番良いと思ったからグーを出した。だからこれからもグーしか出さない。」

その言葉通りXJRは初代からずっと、どんな時代になろうと最終型まで大きく変えること無く『マン・マシンの一体』というグーを貫き通した。

XJR1300最終カラー

ヒューマノニクスというコンセプト、硬派なデザイン、そして開発者が込めた思い。

この握りしめた拳の様なタンクにはその全てが詰まっていたんです。

主要諸元
全長/幅/高 2175/765/1115mm
[2190/820/1120mm]
シート高 765mm
[829mm]
車軸距離 1500mm
車体重量 245kg(装)
[240kg(装)]
燃料消費率 21.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
[14.5L]
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1250cc
最高出力 100ps/8000rpm
[97.8ps/8000rpm]
最高トルク 11.0kg-m/6000rpm
[11.1kg-m/6000rpm]
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時2.8L
フィルター交換時3.15L
スプロケ 前17|後38
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 1,081,500円(税別)
[1,250,000円(税別)]
※[]内はXJR1300C(プレスト)
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)

【関連車種】
CB1300の系譜Bandit1250の系譜ZRX1200DAEGの系譜

XJR1300(5EA後期|5UX前期)-since 2001-

2000年型XJR1300

「We have Spirit.」

1300としては二代目となるXJR1300の中期型。

パット見で目につく所としてはBremboからヤマハ自慢のMOS(モノブロック)キャリパーへの変更ですが、それ以上に見えない部分が大きく変わりました。

中期型XJR1300

-8kgという大幅な減量が物語っているのですが、その減量も足回りつまりバネした減量が中心。

FZRベースだったホイールをYZFからのフィードバックで造られた新設計の軽量タイプにし、MOSキャリパーと合わせてディスクローターを320mmから297mmに小径化するという英断もあって足回りだけで6kg近い軽量化。

他にもステップホルダーやイグナイターなど200箇所の部品をグラム単位で見直した事で合計8kgも軽くなりました。

そしてもう一つ大事なのが軽量化と同時にアクスルやスイングアームの剛性を高めサスペンションのダンパーを強くしたこと。

XJR1300カットモデル

これは開発責任者の松木さんいわく

「YZF-R1のヒット」

が要因なんだそう。

これがどういう事かというと、どちらかと言うと欧米向けだったYZF-R1が国内でも受け入れられ大ヒットしたから。

この事で日本国内でもスポーツ需要が高い事が分かり

「日本専売のXJRこそ応えるべきだ」

としてこれらの変更をしワインディング志向になったわけです。

XJR1300リアビュー

エンジンはそのままにYZF-R1と同じMOSキャリパーを採用した背景にはこういう理由があったわけですね。

合わせて紹介で申し訳ないのですが、2005年/5UX8型では新設計のマフラーとメーターに加えイモビライザーが標準装備。

2005XJR1300

そしてホイールが再び改められ更に-2kgの軽量化となっています。

XJR1300としてはこれがキャブ最終モデル。

主要諸元
全長/幅/高 2175/780/1115mm
シート高 775mm
車軸距離 1500mm
車体重量 222kg(乾)
燃料消費率 26.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1250cc
最高出力 100ps/8000rpm
最高トルク 10.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー GT14B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.0L
フィルター交換時3.35L
スプロケ 前17|後38
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 950,000円(税別)
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)

XJR1300(5EA前期) -since 1998-

初期型XJR1300

「21世紀のビッグバイクスタンダード」

低速トルクの厚みを増すためにボアを2mm拡大し1250ccまでアップしたXJR1300こと5EA型。

一番の変更点はこのエンジンで、新たにメッキシリンダーと鍛造ピストンを採用することで摺動性を改善。要するに真円率が高くなって上下するピストンの摩擦が改善したわけです。

XJR1300エンジン

これはもともとYZFなどスーパースポーツ系のために編み出された技術なんですが

「空冷でもオイル消費量も減らせるメリットがある」

という事から採用された背景があります。

水冷の為に生まれた新技術を空冷に持ってくるっていうのは何とも面白い話ですね。

これらの変更からXJR1300は自主規制上限の100馬力を発揮するパワフルなモノになりました。

XJR1300カットモデル

他にもメーターも電気式になったりサスのセッティングなども変わっているんですが、もう一つ大きな変更点がタイヤサイズ。

【130/70/R17・170/60R17】から【120/70R17・180/55】

と現代のメジャーとなるサイズに変更し操縦性が向上。

初期型XJR1300

もちろんブレンボとオーリンズのセットも健在です。

ちなみに1200時代からそうですが、これはbremboやOhlinsが設計してヤマハがライセンス生産しているモノ。

厳密に言うとBremboは住友電工(現アドヴィックス)、Ohlinsは創輝(現ヤマハモーターパワープロダクツ)が生産。

だからヤマンボとかヤマリンズとか言われていますが偽物とかラベルだけとかいうわけではありません。

XJR1300初期型ホワイト

ところで最初にも言った通りエンジンの排気量が上がった事でナンバリングが変わったんですが、実はその割には先代XJR1200から大きく変わっていない。

それは見た目もそうだし性格もそう。チーム一丸となって造ったバイクだから余計な変更は要らないという事なんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2175/780/1115mm
シート高 775mm
車軸距離 1500mm
車体重量 230kg(乾)
燃料消費率 25.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1250cc
最高出力 100ps/8000rpm
最高トルク 10.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー GT14B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.0L
フィルター交換時3.35L
スプロケ 前17|後38
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 930,000円(税別)
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)

XJR1200/R(4KG) -since 1994-

XJR1200初期

「ワイルドダイナミックパフォーマンス」

ヤマハのビッグネイキッドとして登場したXJR1200/4KG型。

欧州向けFJ1200のエンジンをベースに給排気を見直し、カムカバーやシリンダーブロックなどを魅せる部分を新設計。

そのエンジンを王道のダブルクレードルフレームに積み、リアサスには贅沢にもオーリンズを標準採用。

YAMAHA XJR1200

ところでXJR1200が誕生した背景には90年頃から始まっていたネイキッドブームが大型二輪免許の規制緩和を機に大型にも波及した事が大きな要因。

その波に乗ったのがZEPHYR1100やCB1000SFなどですね。

だからヤマハも対抗馬としてXJR1200を出したんですが、出たのは1994年と最後発の類でした。

4KGカタログ

何故これほど遅れたのかというと

「どう造ればいいのか分からなかった」

というのが大きな理由だったよう。

これまでヤマハと言えばスポーツ性や快適性など比較的数値や言葉で表すことが出来る性能を高めたビッグバイクを造り好評だった。

それに対しビッグネイキッドに求められるものは何かと言えば

『ビッグネイキッドらしい味』

という非常に難しい性能。

そこでヤマハ、宮地開発責任者が何をしたのかというと『ビッグネイキッドらしい味』を明確にする事でした。

そのために用いられたのが

ヒューマノニクス

『ヒューマノニクス』

と銘打たれた手法。

多くのライダーからサンプリングを取り

・トルクに厚みがある

・加速に安心感がある

・ハンドリングが鋭い

・低速なバンク中も安定している

といった

『良い要素だけど数値化が難しい要素』

を明確に数値化し曖昧さを排除する事にしたんです。これに凄く時間がかかった。

ちなみにこれはXJR400とこのXJR1200で初めて取り入れられた手法。

何故これが大事なのかというと、ユーザーに満足してもらう為という単純な事ではなく、開発チームの目標を明確にするためでもあったんです。

XJR1200カタログ写真

そうして各々が思い描くビッグネイキッド像を擦り合わせて造るのではなく、明確にビジュアル化されたビッグネイキッド像を立て目指すことでチームが一丸となれた。

後はもうチームみんなで走り込んでは調整の繰り返し。

そうして誕生したのが迷いも曖昧さもないヤマハのビッグネイキッドXJR1200というわけです。

XJR1200パンフレット

ちなみにこれは余談ですが、皆で走って調整してまた皆で走って調整して目標を繰り返し・・・というチーム全員がテストライダーという事もあって開発がとっても楽しいバイクだったそう。

楽しすぎて悪ノリしたのかこんなコンセプトまで造っています。

XJR1200レーサー

なぜ楽しかったのかと言えば

「アウトバーンを考慮しなくてよかったから」

です。

欧州で売る場合は平均時速180kmで路面もボコボコなアウトバーンをキッチリ真っ直ぐ走れる様にフレームやパワーを補強する必要がある。

アウトバーン

そうするとどうしてもそれ以下の速度域でのフィーリングが犠牲になる。

しかしビッグネイキッドのXJR1200は開発段階から日本専用と決まっていた。だからアウトバーンを考慮せず、時速50~100km域でのフィーリングを主体に考える事が出来た。

そしてその域というのはチーム全員が使える、チーム全員が感じ取れる域だったから開発が楽しかったというわけ。

その狙いが伝わったのかXJR1200はデビューと同時にビッグネイキッドの話題を独り占めするほどの人気となりました。

デビュー後も1995年にBremboキャリパーを採用、1996年にはリアサスのスプリングを黄色にするマイナーチェンジが入っています。

XJR1200R

ちなみに上の写真は同年に出たフレームマウントの大型カウル付きのちょっとレアなXJR1200R。

主要諸元
全長/幅/高 2175/765/1120mm
[2175/765/1255mm]
シート高 780mm
車軸距離 1500mm
車体重量 232kg(乾)
[233kg(乾)]
燃料消費率 25.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 1188cc
最高出力 97ps/8000rpm
最高トルク 9.3kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前130/70ZR17
後170/60ZR17
バッテリー YTX14-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.0L
フィルター交換時3.35L
スプロケ 前17|後38
チェーン サイズ532|リンク110
車体価格 930,000円(税別)
[950,000円(税別)]
※[]内はXJR1200R
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)

XJ900/S/F(31A/58L/4BB)-since 1983-

XJ750

「Love at first ride」

XJシリーズ最大排気量モデルとなるXJ900。

同じエンジンのまま650から750とスケールアップし遂に900となったわけですが、実は当初の予定では750までのハズでした。

しかし欧州市場から

「もっと排気量があるライトウェイトを」

という声が多くなり853ccにまで拡大し登場したのがこのXJ900。

XJ900カタログ

結果的に853ccに出来たものの、もともと750までしか想定していなかったエンジンという事で技術的な問題が山積でした。

だからXJシリーズを担当してきた水谷さんも排気量を上げろという社命に対し最初は

「無理、出来ません」

と断ったそう。

しかし社命には逆らえず、コンロッドボルトを上締めにしてスペースを稼ぐなどあの手この手で問題をクリアし排気量アップに成功。

XJ900F初期型

ちなみに上の写真はカウル付きのXJ900Fです。

しかし市場とは無情なもので、これで一件落着かと思いきや再びすぐに

「もっと排気量を上げろ」

という要望が。

XJ900S

また水谷さんは頭を抱え、結局シリンダーライナー(ピストンが触れる燃焼室内壁の筒)の製法を変更し650時代の半分以下の厚さにする事で1984年にはなんとか891ccにまで拡大。

そんな苦労の甲斐あってかXJ900は欧州の定番へと成長。

XJ900ディバージョン

後継に当たるXJ900Diversionに至っては敵なしのロングセラーとなりました。

主要諸元
全長/幅/高 2190/735/1240mm
シート高 790mm
車軸距離 1480mm
車体重量 242kg(装)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 853cc
最高出力 70ps/9000rpm
最高トルク 6.2kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90R18
後120/90R18
バッテリー YB14L
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR8ES
推奨オイル SAE 20W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.8L
交換時2.5L
フィルター交換時2.8L
スプロケ
チェーン
車体価格
※国内正規販売なしのため
※スペックはXJ900SECA
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)

XJ750A/E/D(5G8/5G9/29R/22N)-since 1981-

XJ750

「スーパーファイター」

日本でも正式に取り扱う事となったXJ750E/5G9型。

基本的に先代XJ650からボアとストロークを上げて748ccとし、クラストップとなる70馬力を叩き出したモデル。

XJ750E

そもそも先代の時点で

「軽量コンパクトで素晴らしいハンドリング」

という高い評価を欧米で獲得していたのでソコにトップクラスのパワーで悪い評価になるわけもなく。

ただしネイキッドにEと付いている事からも分かる通り、実はこれはバリエーションの一つ。

どちらかと言うとヤマハが推していたのはXJ750A/5G8型です。

XJ750A

「コンピューター・クルーザー」

という謳い文句が付いている通り コンピューターが付いています。

XJ750Aメーター

いわゆる”マイコン”というやつでバッテリーやガソリン量、水温などに異常があった場合メーターで知らせてくれる。

他にもアンチノーズダイブやライト下のフォグランプなどの豪華版で、実際アメリカではこのA型はセカの名で売られ非常に人気だったそう。

ただこのA型以上に忘れられているのがビキニカウル付きのXJ750E-II/29R型もそうだけど、何よりXJ750D/22N型。

XJ750D

「XJ750にもターボがあったのか」

と思ってしまうけど、これはターボの外装を使ったNAモデル。しかも何故かこっちはFIっていう。

悪いバイクじゃないのに何故かガッカリ感が生まれてしまう少し可哀想なモデルですね。

主要諸元
全長/幅/高 2135/860/1120mm
[2175/725/1135mm]
シート高 770mm
[780mm]
車軸距離 1445mm
[1440mm]
車体重量 218kg(乾)
[214kg(乾)]
燃料消費率 42.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 19.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 748cc
最高出力 70ps/9000rpm
最高トルク 6.2kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19-4PR
後120/90-18(65H)
バッテリー YB14L-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP7ES
または
W22EP
推奨オイル SAE 20W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
スプロケ
チェーン
車体価格 595,000円(税別)
[560,000円(税別)]
※スペックはXJ750A
※[]内はXJ750E
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)

XJ650SPECIAL(4L6) -since 1980-

XJ750E

「人間バイク」

国内向けとしては初の直四となるXJ650SPECIAL。先に紹介したXS1100の弟分的なモデルです。

ただこれまたXS1100とは全く系統が違うモデル。XS1100は初の直四ということで、とにかく頑丈さと静寂性が第一でした。

それで成功を収め直四のノウハウを得たので、今度はもっとコンパクトで扱いやすい直四を造ろうとなったわけです。

エンジン

特にエンジンは

「とにかく軽く、とにかく小さく」

をコンセプトに設計。

背面ジェネレーターに一体クランクのウエブに直接歯切りしたドライブ・ドリブンなど随所にコンパクト化の技術が散りばめられています。

そしてそれによって得られた取り回しの良さ、ハンドリングの素晴らしさは欧州を中心に非常に高い評価を獲得。

ペケジェ650SP

もう既にこの頃からヤマハはハンドリングに非常に力を入れていたんですね。

ちなみに海外向けにはいわゆるネイキッド然としたXJ650Eというモデルもありました。

ペケジェ650

「なんでコッチじゃなくて日本はアメリカンなのか」

というと、70年代半ばの大型車というのはスポーツというより大型らしいドッシリ感がステータスだったんです。

このバイクを覚えている人は少ないと思いますが、1981年に出たこれは知っている人も多いでしょう。

XJ650ターボ

空冷でキャブでターボっていうアナログとハイテクが入り混じったターボモデル。

ただ残念ながら認可が下りず国内で正規取扱されることはありませんでした。

主要諸元
全長/幅/高 2165/860/1180mm
シート高 750mm
車軸距離 1445mm
車体重量 203kg(乾)
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 13.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 653cc
最高出力 64ps/9000rpm
最高トルク 5.2kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19-4PR
後130/90-16(67H)
バッテリー 12N12A-4A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BP7ES
または
W22EP
推奨オイル SAE 20W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
スプロケ
チェーン
車体価格 480,000円(税別)
系譜図
XS11001978年
XS1100/E/S/SF
(2H7~9)
XJ650スペシャル1980年
XJ650SPECIAL
(4L6)
XJ7501981年
XJ750A/E/D
(5G8/5G9/29R/22N)
XJ9001983年
XJ900/S/F
(31A/58L/4BB)
XJR1200前期1994年
XJR1200/R
(4KG)
XJR1300前期1998年
XJR1300
(5EA前期)
XJR1300中期2001年
XJR1300
(5EA後期|5UX前期)
現行XJR13002006年
XJR1300/C
(5UX後期|2PN)