YZF-R6(13S後期/1JS/2CX) -since 2010-

2010R6

「CATCH THE EXTREME」

2010年モデルからとなる13S、

型式がたくさんあるのはカラーコードが尽きたから(1SJで例えると1SJ1~1SJWまで)で13S~2CXまでの間で目立った変更はありません。

2016R6

基本的な構造はそのままですが、エアクリーナーの変更とマフラーのロング化で馬力を5馬力落とした代わりにパワーバンドを更に拡大。

ただ非常に残念なことにこのモデルは最初の一年だけ(13S後期だけ)で2011年モデルからは正規(プレスト扱い)で入ってこず。これは国産SSとしては初。理由としては騒音規制に対応できなくなったから。マフラーを伸ばして近接騒音対策したけどそれでも日本では無理だったんだろうね。

プレストYZF-R6

なんか2011年から今までザルだった逆輸入の規制(並行輸入自動車審査制度)が厳しくなったとのこと。確かに(言い忘れてたけど)2C0以降は純正マフラーとは思えないほど良い排気音をさせてましたもんね。

しかし国内で生産されているにも関わらず国内では買えないとは何とも悲しい話。

YZF-R6WGP50th

当然ながらこのWGP50周年モデル(2012年モデル)もヤマハ60周年のイエローストロボ(2016年モデル)も指を加えて見ている事しかできなかった・・・唯一正規で買えたのは保安部品が外されたレースベース車だけっていう。

YZF-R6ヤマハ60周年モデル

ちょっと気になって某バイク販売サイトを覗いてみたら並列輸入車(個人輸入みたいなもの)はチラホラ入ってきてるみたいですね。ゴニョゴニョして通したんだろうけど、メリット&デメリットを知らずに買って失敗する人がいたら可哀想なので少し説明。

プレストが取り扱わない事が大きく話題になりましたが何が問題なのかというと、実質的にヤマハの逆輸入部門であるプレストが扱わないということは国内ヤマハのサポートが受けられないという事。つまりパーツ(特に外装など)で思わぬ躓きをしたり、リコールが行われても並列物は受けられなかったりする。

プレストYZF-R6取扱

保証もヤマハ/プレストが2年なのに対し、並列物は基本的にありません。ショップ1年保証と書いてあるところもありましたがヤマハやプレストが取り合わないバイクを何処まで保証するのかショップのさじ加減なのでなんとも。買う時は気をつけてください。

あと驚いたのがフランス仕様が売られていたこと。フランス仕様はEU/UK仕様と違って106馬力だろと思ったんですが2016年に撤廃されたよう。フランス仕様を買おうと思ってる人は確認を忘れずに。

ついでにいうと今更ですが一重に逆輸入といっても仕様地によってパワーは変わってきます。これはR6に限った話ではないのですが基本的に

EU/UK(ユーロ仕様)>US/CA(米やカナダ仕様で同等か少し低い)>>>その他の仕様地

となってます。ちなみにヤマハの逆輸入(プレスト扱い)は2004年モデル以降はほぼUS/CA仕様。

このサイトでは基本的にスペックはフルパワーのEU仕様を載せてるからこの13S後期も「124ps/14500rpm」と書いてるけど日本に正規で入ってきてるCAモデルは「123ps/14000rpm」だったり・・・あんまり変わらないか。

WGP50R6

なんかあんまりR6の話をしてなくてスイマセン。

話を戻すと・・・YZF-R6はこの13S型になった08年にAMA(アメリカの市販車レース)で優勝、さらに翌2009年には遂にWSS(600cc市販車世界レース)で初代の00年以来となる優勝を果たしました。(ライダーはクラッチロー選手#35)。

WSSチャンピオン

その快進撃は止まらず11年、13年も優勝。サーキットに絞ったマシンなので当然といえば当然かもしれませんね。

13S型はデザインから見ても分かる通り荷重分布【52.5:47.5】とかなりフロント荷重なバイク。ちなみに同時期のR1は【50:50】です。

2CXR6

これがどういうことか少し大げさに言うと

「とにかく突っ込んでナンボ、フルバンクさせてナンボ、アクセルすぐ開けてナンボ」

という感じ。ポジションやサスペンションの硬さもそうなんだけど、このバイクで眠い走りをしてると、曲がらないし、遅いし、フロント掬われて転ぶ。

ただこれがサーキットに通い詰めるようなある程度使える上級者になると評価が逆転するんです。

2010年式YZF-R6

従順なエンジン、突き抜ける吸排気音、寝かし込みや切り返しの圧倒的な軽さ、そしてラインを自由自在に選べる機敏なハンドリング。

だからサーキット好きは勿論のこと、生計を立てているレーサーからも非常に評価が高い。長く手を加えられず販売され続けたのにはこういった理由があるわけです。

だから公道ではあまり見ないR6もサーキットにいくとハイエースからウジャウジャ出てきたりします。

主要諸元
全長/幅/高 2040/705/1100mm
シート高 850mm
車軸距離 1380mm
車体重量 189kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.3L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 599cc
最高出力 124ps/14500rpm
最高トルク 6.7kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR10EK
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 1,120,000円(税別)
※プレスト価格

系譜図

1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)
系譜図
1985FZ600 1985年
FZ600
(2AX/2AY)
1989FZR600 1989年
FZR600
(3HE/4HJ)
1994YZF600R 1994年
YZF600R
(4WE)
1999YZF-R6 1999年
YZF-R6
(5EB)
2001YZF-R6 2001年
YZF-R6
(5MT)
2003YZF-R6 2003年
YZF-R6
(5SL)
2006YZF-R6 2006年
YZF-R6
(2C0)
2008YZF-R6 2008年
YZF-R6
(13S/1JS/2CX)
2017YZF-R6 2017年
YZF-R6
(BN6)

YZF-R1/M(B3L/4BS)-since 2019-

2019年型YZF-R1

「Full Control Evolution of Track Master」

4年ぶりのモデルチェンジで2020年の排ガス規制に対応した八代目のYZF-R1/B3L型とYZF-R1M/4BS型。

最初に変更点を上げると

・シリンダーヘッドを新設計
・新型FI&レイアウト変更で低中速改善
・ロッカーアームの軽量化
・オイルポンプの変更
・チタンアンダーガード
・電スロの完全ワイヤレス化(電子化)
・ABSコントロール
・エンブレコントロール
・電子制御全般を見直し
・改良型フロントフォーク
・改良型クイックシフター
・シリアルナンバー(Mのみ)

などなど。

YZF-R1

変更点から見ても分かる通り改良が今回の主な目的となっており、国内正規販売になった為かMモデル含め先代より5万円ほど安くなっていたりします。

YZF-R1

カウルデザインも”纏う”をキーコンセプトに変更。

その中でも個人的に気になったのが膝が当たる部分までカウルで覆われているフルカバードチックになった事。

YZF-R1

これはもしやSS屈指の熱さだと評判だった事への配慮なんじゃないかと邪推。

そんなYZF-R1なんですが正直に言うと馬力が上がっていない事に対し、少し肩透かし感を食らった人も多いかと思います。

YZF-R1正面

時代の進化というのは恐ろしいものでYZF-R1の200馬力というのは2020年時点の同クラスでは低い方というか一番下だからですね。

これね・・・失礼ながら本当にヤマハらしいというか面白い話なんですよ。

というのもヤマハはMotoGPという世界最高峰レースにYZR-M1というマシンで2002年からずっと参戦し続けているんですが、同時に現在進行系でずっと言われ続けてる事がある。

2019YZR-M1

「M1はパワーが無い」

観客やファンはもちろん、ロッシを始めとした選手からも、そして社内からも言われ続けてる。

そう言われる理由はMotoGPを見ている人なら分かると思うんですが、ホームストレートなどで離されたり抜き返されたりして負けるというファンにとってはショッキングな展開が日常茶飯事だから。

だから負けるたびにそういう言われるし社内からも

「せめてストレート(最高速)だけでも勝つバイクにしろ」

っていうクレームが絶えずあってる。何故ならそれが一番分かりやすい性能アピールだから。

ところがM1は頑なにそれ拒み続けた・・・その象徴たるものがYZF-R1にも採用されている

『直4クロスプレーンエンジン』

です。

CP4エンジン

直4はV型よりも幅があるので前方投影面積が広くなり空気抵抗が増加するし、クロスプレーンは慣性トルクが無く振動面でも不利なのでピークパワーを稼げない。このWの要素があるからそうなる。

だから負けるたびにシングルプレーンにしろと言われたり、V型にしろと言われたり、V型を検討中とか噂を立てられたりしたんだけど直4クロスプレーンを貫き通した。

何故そうまでして貫き通したのかといえば

「コーナリングで勝つ」

という美学にも近い信念があったから。

そしてそれがYZF-R1にも色濃く反映されるから面白いという話。

B3Lディメンション

なぜ直4なのかといえばエンジンの前後長を抑える事でホイールベースを伸ばすことなくスイングアーム長を稼ぎ挙動変化を穏やかにするため。

なぜクロスプレーンなのかといえば慣性トルク(トルクの雑味)を無くす事で求められたトルクを求められただけ出すため。

補足:クロスプレーンだと何が良いのか

そしてなぜ新型YZF-R1の馬力が上がっていないのかといえばピークパワーよりもそれらがもたらすライダーとのシンクロ率を上げることを優先したから。

『フルコントロールエボリューション オブ トラックマスター』

というコンセプトの意味はここ。

M1の魂を纏う

そして公式が”M1の魂を纏う”と表現をしてる意味もここ。

M1の開発者が関わっているからとか見た目が似ているからとかではなく、信念までもがYZR-M1と同じで生き写しのようになってる。

だからメディアなどで同世代やこれから出てくるライバルと

「ヨーイドン」

と加速勝負をして負ける姿をM1と同じ様に目にする事もあると思いますが、R1の真骨頂はそこではないという事だけは覚えておいて欲しい。

例えストレートで先に行かれようと、その先にあるコーナーを抜けた時に先頭に立つポテンシャルを持っているのがYZF-R1の真骨頂なんです。

YZF-R1

「誰よりも速くコーナーを駆け抜けてこそのスーパースポーツ」

ハンドリングのヤマハをこれほどまでに具現化しているモデルは他にないかと。

【関連車種】

CBR1000RRの系譜GSX-R1000の系譜ZX-10Rの系譜SuperBikeの系譜

主要諸元
全長/幅/高 2055/690/1165mm
シート高 855mm
[860mm]
車軸距離 1405mm
車体重量 199kg(装)
[201kg(装)]
燃料消費率 15.2km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 997cc
最高出力 200ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
[後200/55ZR17(78W)]
バッテリー YTZ7S(F)
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブRS4GP
※フルシンセのみ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.9L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア41
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 2,150,000円(税別)
[2,900,000円(税別)]
※[]内はYZF-R1M
系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)

YZF-R1/M(2CR/2KS/BX4)-since 2015-

15YZF-R1

「High tech armed Pure Sport」

大幅に生まれ変わった2015年からの七代目R1こと2CR(15-17北米仕様)とBX4(18-19欧州仕様)型。

外装もエンジンもフレームもホイールも何もかも変わったから大幅というより全面維新というかもう別のバイクというか。

まずもって見た目が明らかにそれまでのR1と違いますよね。

2015YZF-R1ヤマハブルー

今までMotoGPマシンのM1とR1は似ても似つかないデザインだったんだけど、このモデルは明らかにYZR-M1に限りなく近い。

クロスプレーンもそうだけどもうスーパースポーツというよりレーサーレプリカと言ったほうが正しい気がしないでもない。

中でもライトを意識させないデザインは流石ヤマハGKと言える所。

R1LED

ちなみに本当のライトはダクトの左右にある六角形のような物でローでは片目、ハイで両方が点く様になっているわけですが、あまりにも攻めたデザインだったので社内コンペでも結構反対意見があったそう。

テールカウル

でもプロジェクトリーダーの藤原さんが一目見て

「コレでいこう」

と即決してこの形になったんだとか。

肝心の中身の方ですが、これがまた見た目に負けないくらい凄い。

2015YZF-R1ディメンション

何と言っても上げるべきは市販車初となる六軸姿勢制御センサー。

出力を上げることが苦手なクロスプレーンで200馬力を叩き出したエンジンも凄いけどそれ以上にコレが凄い。

sensor

「ピッチ」「ロール」「ヨー」と「前後」「左右」「上下」

つまり全方位をセンサーで自動的に感知しECUが自動で演算、それに合わせた出力を行なう。

これにより
1.バンク角に合わせた出力を行なうTCS(トラクションコントロールシステム)
2.横滑りを防止するSCS(スライドコントロールシステム)、
3.タイムロスに繋がる不用意なウィリーを防ぐLIF(リフトコントロール)
4.ロケットスタートを支援するLCS(ロウンチコントロール)
5.機敏なシフトアップを支援するQSS(クイックシフト)
※2018年モデルからはシフトダウンにも対応したQSSへ

これらを実現。

2015YZF-R1メーター

それに合わせてメーターも完全なデジタルへと変更。

もうサーキットでタイムを出すよりコケる方が難しいんじゃないかと思えるほどの数々・・・マシンに乗っているではなく、乗せられているというのはこのR1で現実のものになりましたね。

ディメンションリアビュー

さてサラッと言った200馬力ですが、それを可能にするために行ったのが更なるビッグボア化。

先代も1mmボアアップしてたんだけど、ソコから更に1mmボアを広げストロークを短くし、圧縮比アップとフィンガーフォロワー式による高回転化で200馬力を達成。

ギア比の変更

さらに恐ろしいことにビックボア化、つまりピストンやシリンダーは横に広くなっているにも関わらずエンジン幅が広がるどころか34mmも縮小し、ついでに4kg減。

でも一番の驚きはチタンコンロッドでしょうね・・・チタンコンロッドってこれまたサラッと言ってるけどそんなバイクは海外メーカーの300万も400万もする超高級バイクくらい。

CP4エンジンカットモデル

ヤマハ自身もチタンコンロッドなんてYZF-R7(4本で100万)くらいだったはず。

ただ驚きはこれに留まらず一つの目玉がマグネシウムホイール。

コストの面から量産化が難しいので敬遠されがちなのに標準採用。

マグホイール

大幅なバネ下の軽量化によるハンドリングの向上に繋がる物なので、何としても絶対に採用する事を決めていたんだそう。

ちなみにコレは小話なんですがこのマグホイールを実現するのに一番大変だったのは社内にいる

「マグは燃えるから危ない」

という偏見というか誇大解釈を持った人達だったとか何とか。言うほど燃えないそうです。

R1ネイキッド

他にもアルミタンクだったりとブレーキキャリパーが6potから新時代のMOSキャリパーっぽい4potになってたりと書ききれない。何でもこのキャリパーはBremboへの換装が容易に出来るようにピッチを同じにしてるんだとか。

ヤマハ自身も書ききれないのかR1としては初になるABSについては何も振れない始末。

そしてこのモデルから「Mモデル(2KS)」が登場しました。

YZF-R1Mカタログ

標準モデルとの違いは走行に応じて勝手に減衰力を自動調整してくれるという反則のような機能を持ったオーリンズの電子制御サスペンション。

YZF-R1M

さらに専用カーボンカウルに加えCCU(Communication control unit)も搭載。

これは走行を記録するものでサーキットなどでのタイム測定をしてくれるもの。何でもスマートフォンと連動してるとか。

アッパーカウル内部

これだけの造りしてるだけあってノーマルでも2,376,000円、Mになると3,186,000円ともはや高級車に。

あまりにも高くなった為か廉価モデルのYZF-R1Sも登場。

YZF-R1S

コンロッド:チタン→鋼鉄
EGカバー:マグ→アルミ
ホイール:マグ→アルミ
エキパイ:チタン→ステン

と材質を変更してコストを抑えたぶん少し重くてピークパワーも抑えられてるけど電子制御はクイックシフター以外はそのまま揃えてる。

マットブラック

ただ残念ながら日本への入荷予定は無し。

2016年にはヤマハ創立60周年としてUSヤマハインターカラーが再び登場。

2016インターカラー

大人気だった4.5代目5VYインターから10年も経っている事に驚きですね。

しかし勢い止まらず2018年にはR1生誕20周年を記念してYZF-R1 GYTRも発売。

YZF-R1 GYTR

GYTRというのは『GENUINE YAMAHA TECHNOLOGY RACING』の略で、要するに純正チューニングマシン。

・ohlinsのFGRTとTTX

・Brembo

・アクラフルエキ

・レース用チューニング

・カーボンカウル

・ヤマハレーシングのコーチング

などなどで限定20台で約500万円。限定R1と言っていいのか微妙なところですね。

さて津々浦々と書きなぐりましたがまとめると、変更点を見れば分かってもらえる通りYZF-R1は完全に『サーキット』にターゲットを潔いくらい絞ったモデルとなりました。

赤モデル

造りから見ても開発陣の発言から見てもそれが見て取れますね。

シート高なんて先代から一気に3cmアップでR6も真っ青な足つきです。

YZF-R1はレース規格に囚われずツイスティロード最速というコンセプトとして生まれたバイクだったものの、それが見事に大成功しレースの規格がR1に合わせてきた事でR1も方向性を変える事となった。

そしてそれはこの2015年モデルで決定的なモノに。

歴代R1

R1が作った分野をR1が終わらせる・・・皮肉な話というか何というか、考え深い事です。

一体どうしてこうしたのかプロジェクトリーダーの藤原さんはこう仰ってました。

プロジェクトリーダー藤原さん

「スピード違反が厳しくなって楽しめるシーンが無くなったから。」

・・・まあそうですよね。

もうSSを公道で楽しめる時代でもないし場所も無い。それに社会的責任が大きくなっている以上避けられない。

「これで峠を攻め込んで楽しんでね」

なんてもう今の時代口が裂けても言えないですし。

サーキット

「それならもういっそのことをサーキットで楽しむことだけを主観に作ったほうが良い」

となるのも分かる話。

ただこれは年を追うごとに需要が落ち込んで台数を見込めなくなった事も大きく関係していると思います。

スーパースポーツが予約しないと生産されずに買えなくなるなんて全盛からすると考えられない話。

さて・・・最後に

このR1を造られたプロジェクトリーダーの藤原さんは初代R1の頃からエンジン担当として深く関わってきた方です。

フェイス

そんな藤原さんがこのR1を造る際に決めたことがあります。

「No Excuse(言い訳しない)」

これは初代のコンセプト

「妥協しない」

から習ったもの。

開発コンセプト

方向性こそ違えどそんな初代から続く精神はこのR1にも受け継がれているんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2055/690/1150mm
シート高 855mm
[860mm]
車軸距離 1405mm
車体重量 199kg(装)
[201kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 200ps/13500rpm
最高トルク 11.5kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
[後200/55ZR17(78W)]
バッテリー YTZ7S(F)
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブRS4GP
※フルシンセのみ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.9L
フィルター交換時4.1L
スプロケ 前16|リア41
チェーン サイズ525|リンク114
車体価格 2,200,000円(税別)
[2,950,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内はYZF-R1M

年次改良

2018年
・クイックシフターのダウン対応
・ECUの見直し
・電子制御サスをEC2.0にアップ

系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)

YZF-R1(45B/1KB後期/2SG)-since 2012-

12YZF-R1

「至高のコーナーリングへ」

三年ぶりのモデルチェンジというか型式が変わらない事からもマイナーチェンジなんだろうけど大きく変わってる六代目の45B型(国内仕様)と1KB~2SG型(カナダ仕様)

「逆輸入車は2014年から2SGに型式変わってるじゃん」

と突っ込まれそうなので説明しておくと、型式が変わっているのは年次改良などが入ったというわけではなく単純に型式コード(機種コード)が足りなくなったから。

このR1で例えるなら逆車の型式は1KB。その型式にカラーコードの一文字が加わります。

ブルーイッシュホワイトカクテルなら1KBG、ブラックメタリックXなら1KBD、これは仕様地によって分かれていて1~9その次はA~Zという流れ。

ブラックメタリックX

しかしこのR1の場合、2009年から五年近く色んな色を出した為にカラーコードが不足してしまった。

日本では2013年のビビッドレッドカクテル1の1KBYが最期。Yという文字が付いてる通り後はZしか残ってないわけです。

Zがどこの国のどのカラーリングなのかは分かりませんでしたが、要するにカラーコードが枯渇してしまったから型式を改めたという特に深い意味は無い形式変更なわけです。

まあ詳しくは

『車名に続く記号(型式)について~認定型式と通称型式~』

をどうぞ。

話を戻します・・・

2014年式R1

このR1で一番のアピールポイントは7段階のTCS(トラクション・コントロール・システム)の採用です。

トラコンっていうのはタイヤの空転を抑える装置で、要するにスリップダウンを防いでくれる安全装置の事。

2014YZF-R1

車の方では既にメジャーですが、バイクの場合は前輪と後輪で常に回転数が違ってくるので一般的な車のように

「大きく滑ったからトラコン発動」

なんて悠長な事をやってたら手遅れだったりします。

だからバイクの場合は0.005秒間隔で常にタイヤの回転数を図っており、それこそ怪しくなったら発動する予測型。だから車と違って段階調整が付いてる。

2012YZF-R1

他にもフレームの横剛性を更に落とす事でコーナーリングでのトラクション感の向上を始めとした各部の見直し、そしてマッピング見直しによる燃費と低速トルクの改善などが入ったんですが、SS人気が下火になり始めた事もあってか価格は据え置きでした。

09-12比較

パッと見で分かる通り外見もシャープさが増してハンサム顔に。今風のLEDアイラインが入ってます。

ただこのモデルで一番の驚きであり、一番の激震であり、一番のドラマが詰まっているのはトラコンでもLEDポジションでもなくトップブリッジ。

トップブリッジ

見るからに凄いのが伝わってくるYZR-M1とソックリな大胆な肉抜き加工されているアルミ鋳造製ハンドルクラウン。

これは見た目だけでなくハンドリングを更に鋭く研ぎ澄ませる為にある肉抜きなんですが、それは言い換えるとハンドリングに大きな影響力を持つ重要な部分でもある。

そしてこれを担当したのは平野さんという方なんですが、造っても造ってもダメ出しの嵐だった。ダメ出しというのはテストライダーから『悪(要改善)』という評価を貰ってしまう事。

2014年式YZF-R1リア

何度作り直しても駄目で仕舞いには先代のままになりつつあった中で平野さんが最後の最後に

「もうこれ駄目だったら辞職しよう」

と考えて造った物を出したらテストライダーからやっと『良』の評価を獲得して採用されることになった。

ついつい見た目だけで判断しがちですか、この大胆に肉抜きされたトップブリッジはそんな試行錯誤の末というか塊な物なんです。

2014年式YZF-R1カタログ

YZF-R1というのはヤマハにとっても特別と公言されているんですが、そんなYZF-R1の開発となると良く言えば花形ですが同時に血気迫る凄まじいものがあるんでしょうね。

そしてこの代といえばもう一つ紹介しないといけないのがWGP50周年記念車。

国内仕様120台、逆輸入仕様30台という06のSPより少ない限定車。予約開始5分で売り切れたそうです。

WGP50周年R1

スピードブロックを知る世代にはどストライクだろうし、レースに興味がない人から見てもカッコイイ配色だから人気も頷けますね。

主要諸元
全長/幅/高 2070/715/1130mm
シート高 835mm
車軸距離 1415mm
車体重量 212kg(装)
[206kg(装) ]
燃料消費率 25.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 998cc
最高出力 145ps/11000rpm
[182ps/12500rpm]
最高トルク 10.0kg-m/10000rpm
[11.7kg-m/10000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR9E-J
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.58L
交換時3.73L
フィルター交換時3.93L
スプロケ 前17|リア47
チェーン サイズ530|リンク120
車体価格 1,350,000円(税別)
[1,590,000円(税別)]
※[]内はプレスト取扱い車両
系譜図
fz750 1985年
FZ750
(1FM)
fzr1000 1987年
FZR1000
(3GM/3LK/3LG)
yzf1000r 1996年
YZF1000R Thunder Ace
(4SV)
4xv 1998年
YZF-R1
(4XV)
5jj 2000年
YZF-R1
(5JJ)
5pw 2002年
YZF-R1
(5PW)
5vy 2004年
YZF-R1
(5VY前期)
5vy後期 2006年
YZF-R1
(5VY後期/4B1)
4C8 2007年
YZF-R1
(4C8)
14b 2009年
YZF-R1
(14B~1KB/45B)
2012YZF-R1 2012年
YZF-R1
(45B/1KB/2SG)
2015YZF-R1 2015年
YZF-R1/M
(2CR/2KS/BX4)
2019YZF-R1 2019年
YZF-R1/M
(B3L/4BS)

YZF-R125(BR6)-since 2014-

2014YZF-R125

フルモデルチェンジとなった二代目R125はアッパーの真ん中にはR6でお馴染みのラムエアダクトらしきものが・・・と思ったけどやっぱり繋がってない。ラムエアなんて200km/h以上でしか効果ないって言われてるし当たり前か。

R125フェイス

R125はもともと凛々しい顔でしたが、ダクトが付いた事でより戦闘的なイメージが付きましたね。

この顔なんかと被るな~?って思って調べてみたんですが、コレですね。

新旧デイトナ675

09のDAYTONA675に似てる。

特にウィンカーなんて・・・って思ったらこれ同じやつを付けてるみたい。どうりで似て、、、いや並べてみると思いのほか似てないですね。スイマセン。

個人的な意見を述べるとR125のデザイン特に顔はガトリングヘッドライトを採用する前のR1に通ずるところがあると思うんです。

5PW

この頃です。2002年ごろ。ツリ目二眼のパイオニアであったR1の最終形態ですね。

ですがご存知の様にこの後R1はラムエアダクトをサイドに付けたガトリングヘッドライトの5VY、そしてプロジェクター式の14Bと変貌を遂げていったわけ(詳しくはR1の系譜をどうぞ)ですが、もしR6の様なセンターラムエアダクトを採用してたらこのR125の様になってたでしょう。

2016年モデル

だからR125を見ると別の道を辿ったR1みたいで面白くもあり、カウルを贅沢に何枚も使ってるだけあってR1よりカッコいいと言ってもいいくらい纏まってる。

まあそれより中身ですねハイ。

ラジアルマウントキャリパー

見て分かる通り倒立サスにラジアルマウントキャリパーが付きました。ホイールデザインも新しくなってますね。125ということでABS非搭載モデルもあるみたいですね。

YZF-R125メーター

他にはメーターがフルデジタルになり外装も少変更が加わってます。

エンジンは馬力やトルクこそ変わってないんだけど見直された上にタンク容量が13.8Lから11.5Lに減った事からカタログ燃費が10%ほど改善されてます。

エンジン

作りは完璧にSSな125でブン回せるSSが欲しいならR125は間違いないでしょうが、やっぱりモデルチェンジしても正規販売は今のところ無いみたいです。レッドバロンが入れてるみたいだけどね。

そういえば前にもこういう事を言って

「何故レッドバロンを勧めるのか?レッドバロンの回し者か?」

と問われた事を思い出しました。

レッドバロン

別にレッドバロンで買えとステルスマーケティング(?)してるわけではありません。

まず最初に知っておかなければいけないのは並行輸入車(ショップが独自に海外から輸入したバイク)というのは基本的に保証を受けられません。

例えばもし並行輸入のR125を買って、走行に支障が出る設計ミスによるトラブルが判明しリコールが行われたとしても保証は受けられません。

欧州ヤマハ

車両に関する保証内容には「それぞれ(仕様地)の国内使用に限る」と明記されているからです。

要するに

「ヤマハでR125のリコールがあったみたいだからコレもリコールして!」

とR125をYSPといったバイク屋に持って行っても店も基本的に出来ないんです。

良心的な店やノウハウを持ってる店、現地メーカーと直接繋がりを持ってる店ならやってくれる事もありますが、基本的に日本のヤマハは知ったこっちゃないというスタンス。これはヤマハに限らずホンダやスズキやカワサキも同じ。

つまり”並行車=保証が全くない外車”と同じなので、いくら信頼性のある日本メーカーの物だからといって安直に買ってしまうと痛い目を見ます。

じゃあ逆輸入車の場合はどうなってるの?

と思う方も居るかもしれないので説明しておくと逆輸入車もメーカーの保証はありません。

ただし逆輸入車の場合は正規の場合は取り扱いメーカーの保証があるわけです。

プレスト

ヤマハならプレスト、ホンダならパッセージ、スズキならモトマップ、カワサキならブライトなど。

これらのメーカーが

「メーカーは保証は無いけど、ウチで買えばウチがメーカー並の保証するよ。」

としてるわけです。

そしてレッドバロンもそれと同じなんですが、レッドバロンの場合はそれに加えR125などを上で挙げた逆輸入車取扱メーカーが取り扱わない車種も独自に輸入したりしているから名前を挙げてるわけです。

つまり後で泣きを見ないためにも並行輸入車を買うときは、売りっぱなしの店ではなくアフターもキチンと対応してくれる店で買うように気をつけてください。

ブルー

プレストがしっかり取り扱ってくれればこんな心配も要らないんですけどね。

だいぶ話が脱線して申し訳ないです。

最後にR125の小ネタですが、人気色はやっぱりダントツでブルーだそうです。やはりヤマハといえば青のイメージが強いんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 1955/680/1065mm
シート高 825mm
車軸距離 1355mm
車体重量 140kg(装)
燃料消費率
燃料容量 11.5L
エンジン 水冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 15ps/9000rpm
最高トルク 1.3kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/80-17(52H)
後130/70-17(62H)
バッテリー 12N5.5-3B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.15L
交換時0.95L
フィルター交換時1.00L
スプロケ 前14|リア48
チェーン サイズ428|リンク132
車体価格
※国内正規販売なしのため
系譜図
2008yzf-r125 2008年
YZF-R125(5D7前期)
MT-125 2014年
MT-125(5D7/BR3)
2014yzf-r125 2014年
YZF-R125(5D7/BR6)

【関連車種】
GROMの系譜Z125の系譜Small DUKEの系譜RS4 125の系譜

MT-125(BR3)-since 2014-

MT-125

世間がMT-07とMT-09、それにYZF-R25に騒いでいてノーマークだったのか、隠し球なのか分かりませんがいつの間にか発表されたMT-125

数字通り125ccいうMTシリーズの末っ子的なモデルで搭載しているエンジンは単気筒。

いやはや・・・01はVツイン、03は単気筒デュアル排気ポート、07はパラツイン、09はトリプル、そして125は単気筒ですか。

ここまで車名とエンジンがバラバラなバイクは他に無いんではなかろうか。

まあただこれはMTシリーズの根底である「Master of TORQUE」に沿うためなわけだから分からないでもない。

エンジンはYZF-R125の物。ちなみにこのエンジンはR125の系譜でも言っていますがヤマハのエンジンではなくMotori Minarelliというイタリアメーカーの物。

MT-125engine

それをフランスにあるMBKという子会社に作らせているモデル。最初イタリアと書いてましたスイマセン。

ボディの方はデルタボックスフレームに倒立サスに六速MTに角材じゃないスイングアームに凝った造形など125とは思えない本気っぷり。

MT125

しかし実は紹介しようか迷ったんですこのバイク。というのもコレは日本での販売は無いじゃないかと思われます。値段がですね、現地で4200ユーロつまり60万円弱もするんですよ。

まあこんだけ凝ればそんな値段にもなるわって話ですけどね。

イタリアヤマハMT-125

「YZF-R125といい、なんで125をこんな値段で売るの?」

って思われる方も多いと思いますが、欧州では125&15馬力までのA1免許が16歳から比較的容易に取れるんです。だから人気がある。

更に言うなら向こうは日本とは比べ物にならない程、バイクに対する理解があります。

イタリアの駅前

バイク人口で言っても日本の100人あたりの二輪保有台数が9.5人なのに対しイタリアでは14.5人でEU内はおろか全先進国でトップ。

ちなみにシェア一位はホンダで二位はピアジオ、三位にヤマハとなってます。

主要諸元
全長/幅/高 1950/745/1025mm
シート高 810mm
車軸距離 1350mm
車体重量 138kg(装)
[140kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 11.5L
エンジン 水冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 124.7cc
最高出力 15ps/9000rpm
最高トルク 1.25kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/80-17(52H/52S)
後130/70-17(62H/62S)
バッテリー 12N5.5-4A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
推奨オイル SAE 10W-30から20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
交換時0.95L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前14|リア48
チェーン サイズ428|リンク132
車体価格
※国内取扱いなしのため
系譜図
2008yzf-r125 2008年
YZF-R125(5D7前期)
MT-125 2014年
MT-125(5D7/BR3)
2014yzf-r125 2014年
YZF-R125(5D7/BR6)

TMAX530SX/DX(BX3/BC3) -since 2017-

六代目TMAX

「Master of Scooter」

先代でTMAXモデルチェンジが早すぎるなんて言ってたら熱も冷めぬ内にまたモデルチェンジとなった六代目のTMAX530SX/BX3型とDX/BC3型。

最初に変更点を上げると

・デザインを一新
・ABSを標準化
・YCC-T(電子制御スロットル化)
・D-MODE(2モード出力切り替え)
・トラクションコントロール
・新設計アルミフレーム
・新設計アルミロングリアアーム
・新設計二連アナログ&TFTメーター
・可変スクリーン(二段階55mm差)
・プーリーとベルトの再設計
・マフラーの再設計
・リアホイールのリムを0.50縮めバネ下軽量化

という感じで電子制御だけでなく車体の方も大きく見直されました。

TMAX530SX/TMAX530DX

DXは上記に加え更に
・グリップヒーター(SXも別売で用意)
・シートヒーター(SXも別売で用意)
・クルーズコントロールシステム
・プリロード&伸側減衰力アジャスター付きリアサス
・電動スクリーン(無段階135mm差)
・+3kg

が装備された上位版になります。

特筆すべき変更点としてはまずフレームが新しく作り直された事。

2017TMAXフレーム

青いほうが2017年式の方なのですが肉を削ぎ落として9kgの軽量化。

更にベルトやホイールのリム幅をワンサイズ細く(タイヤサイズは変わらず)し合計で10kgの軽量化。

リアまわり

フレームを短くしてホイールベースが短くなった分、スイングアームを一気に40mm伸ばし脚長モデルへと変貌。コレにともなってリアサスペンションもリセッティングされています。

更に電子スロットル化も恩恵が大きく、電子制御はもちろんのこと挙動もかなり調教されたものに。

2017年式TMAXメーター

ところで日本は関係ないんですが欧州ではこのモデルから

『My TMAX Connect』

『D-Air』

への対応も追加されました。

My TMAX Connectというのは日本にとっては懐かしいボーダフォンとヤマハの提携サービスで、データロガーはもちろん追跡はもちろん遠隔でホーンを鳴らしたりウインカーを付けたり出来る早い話が監視サービス。

My TMAX Connect

そしてもう一つのD-Airはダイネーゼというイタリアのバイク用ウェアを中心に作っているスポーツウェアメーカーが10年掛けて開発したエアバッグシステムの事で凄いのはワイヤレスだという点。

エアバッグシステム自体は前からあるしレースなんかではもう常識なんですが、一般用途においてはランニングマシンのように作動用コードでバイクと繋ぐ必要性があったりする煩わしさがあった。

それをダイネーゼはセンサーをジャケット(背中プロテクター)に内蔵する事でワイヤレス化に成功したというわけ。

2017年式TMAX

1秒につき約800回ライダーの動きを収集し、転倒と判断したら僅か0.045秒という速さで展開するエアバッグシステム。これは自動車のエアバッグと同等の速さ。

そしてTMAX530はそんなD-Airシステムの正確性を更に増すため、TMAXからも作動信号を送れるコントローラーを内蔵出来るようした(コントローラーはオプション)というわけ。

2017年式TMAX

当然ながらタンデムの事も考えて2名までコントロール出来るようになってます。

イタリアで絶大な人気を誇る車種らしい装備って感じですね。日本のウェアメーカーも早く追い付いて欲しい物です。

ちなみにMy TMAX Connectも向こうの人にとっては保険のクラスが下がるから非常にありがたい装備。

2017年式TMAX SX

向こうは車種によって保険料が違うのでバイク選びに保険が直結するんですが、今回のモデル分けでそのアプリ機能が付かない無印は今までのTMAX同様にA2ライセンス(日本でいう普通二輪扱い)。

それに対しMy TMAX Connectによる速度警告機能やGPSによる追跡といった機能と、Aライセンス(日本でいう大型)扱いのおかげで保険が更に下げられる事になっています・・・まあつまり日本で乗る分にはあまり重要ではないです。

ちなみに向こうでは先代も名前をTMAX LUX MAXと変えて併売しました。

2017年式TMAX DX

これはEURO4(規制)の猶予が現行車の場合1年あるから。写真に載ってる通りイタリアなどでは低金利キャンペーンをやってるみたいです。

先代もそうだけどTMAXが凄いのは新型が出てもこういったキャンペーンで型落ちだろうが同じくらい売れる事。日用品としての広く認知されている事の証ですね。

ちなみにこのモデル大きく変更したためかヤマハも主戦場であるイタリアのEICMAモーターショー2016で特別に別の会場を用意する力の入れっぷりでした。

EICMA-TMAX

会場の駐輪場は案の定TMAXだらけに・・・。

最後にちょっと余談ですがTMAXで外せない要素なのに書き損ねた事があるので書かせてもらいます。

2017年式TMAX顔

みなさん

「TMAXは実は三気筒」

というのをご存知でしょうか。これは初代から一貫してです。

諸元をみてもらうと分かる通りスペック上はパラツイン(並列二気筒)と書かれている。

一体どういうことかというとTMAXは面白い事にパラツインでも稀な360度クランクを採用しています。

※補足:二気筒エンジンが七変化した理由-クランク角について-

つまり本来ならシングル顔負けの振動を起こすわけですがTMAXは振動は起こりません。それは当然ながらバランサーがあるから。

バランサーというのはその名の通り振動を相殺してくれる重りの付いた棒でバランサーシャフトとも言われています。下の写真は同じ360度ツインエンジンを搭載しているW800のエンジン。

バランサーシャフト

これが振動を消してくれる事で振動を抑えているわけです・・・が、ではここでTMAXのエンジンを改めて見てみるとバランサーが見当たらない。

バランサーシャフト

それもそのハズTMAXにバランサーシャフトは付いておらず代わりにもう一つシリンダー(赤い矢印の部分)が付いている。

『往復式ピストンバランサー』

と呼ばれる方法で、プラグやバルブといった内燃機関は持っておらずバランサーとして前の二気筒と反対のストローク運動をして振動を消しているというわけ。

バランサーピストン

360度で等間隔だから等間隔に二気筒分のカウンターを当ててやれば綺麗に消せるという事。

これは自動車の水平対向四気筒エンジン等と同じ思想。

だからTMAXのエンジンは

「水平対向と同じ特性を持つ水平対向三気筒・・・のような横型並列二気筒」

という実に面白い形なんですね。非常にややこしい言い回しですが。

リアスタイル

「そもそも何故そうまでして360度に拘ったのか、180度じゃ駄目なのか」

って話になりますよね。

スポーツバイクは基本的に180度クランク。それに対し360度クランクは振動面(重量やスペース)で不利なのでノスタルジックなモデルに採用されるエンジン。

それなのにスポーツスクーターのTMAXは何故360度なのかって・・・これは360度という等間隔燃焼による穏やかなトルク変動がコミューターには必須だと判断されたから。

しかしエンジンの高さは抑えないとシート高が更に高くなったり、メットインスペースを犠牲にする問題が出てくる。しかし振動を嫌ってラバーマウントにしてしまうと剛性が落ちてしまう。

TMAX三気筒

そこで考えられたのがピストンを水平に寝かせつつ反対側にバランサーピストンを仕込むことで高さを抑えた世にも奇妙なエンジンというわけ。

これ本当に面白い話でTMAXは

「電動と思わせるほどエンジンの存在感を消す事」

というのがコンセプトにあるんですが、何度も言うように360度クランクっていうのはどちらかというとエンジンの存在感を出す際に採用される主張の強いタイプ。

それを隠れピストンで完全に取り除き、360度本来の武器であるトルク変動の少ない等間隔燃焼という特性だけを残した。

2017tmax壁紙

つまりTMAXというのはスポーツコミューターであると同時にノスタルジックの対極に居る

「フューチャリスティック360度ツインスポーツ」

なんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/765/1420~1475mm
[2200/765/1420~1555mm]
シート高 800mm
車軸距離 1575mm
車体重量 215kg(装)
[218kg(装)]
燃料消費率 20.6km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 530cc
最高出力 46ps/6750rpm
最高トルク 5.4kg-m/5250rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.6L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 1,150,000円(税別)
[1,250,000円(税別)]
※スペックはSX(BX3)
※[]内はDX(BC3)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX530(2PW)-since 2015-

五代目TMAX

「上質を、堪能しよう。」

熱も冷めぬ内にマイナーとはいえモデルチェンジされ五代目となったTMAX/2PW型。調べてみたら先代が日本では2013年の6月発売、そしてこの後期モデルの2PWは2015年1月でなんと2年も経ってない。

変更点を上げると

・LEDヘッドライト
・倒立フォーク
・ラジアルマウントキャリパー
・インテリジェントキー(スマートキー)

などなど。

五代目TMAX

ドレスアップの意味合いが強い変更となったわけですが、やはり目につくのは倒立フォーク。しかもYZF-R1の初期モデルと同径の太いタイプでラジアルマウントキャリパーまで装備。

倒立サス

「コミューターなんだから正立の方が切れ角とか稼げるし良いのでは」

と思うんですが、これは主戦場である欧州のTMAXユーザーに対し

「変更するならどこを変更して欲しいか」

というアンケートを取ったところ

「倒立フォーク、LEDヘッドライト、インテリジェントキー」

という結果が出たことから搭載されることになったという話。やはりコミューターとして人気なのでそこら辺の声には敏感なんですね。

イタリアモデル

それに初代で説明した通り気持ちはYZF-R5でもあるのでまあ倒立フォークも不思議なことでもないのか。

ただTMAX界隈に一番衝撃を与えたのは倒立フロントフォークでもラジアルマウントキャリパーでもない・・・LEDヘッドライトです。

LEDヘッドライト

「そんなことが衝撃なのか」

と思うかも知れませんがLEDになってTMAXは大きく変わった事があるんです・・・それは

LED点灯

『両眼点灯』

になったことです。

TMAXはこれまで歴代全部片眼点灯でした。

片眼点灯の理由についてネットでは

「両眼点灯だと眼の間隔が狭いため、距離が遠いと勘違いされて事故が起こるから」

などが言われてますが、少なくともTMAXは難解な理由じゃない・・・その理由とはズバリ

「欧州では片眼点灯が流行ってるから(ヤマハ談)」

至極単純ですね。

2015TMAX顔

これは欧州で大人気の耐久レース影響。向こうでは片眼点灯がスポーツの証みたいなイメージがあるから、ただのビッグスクーターではなくビッグスクーターの皮を被ったスポーツバイクみたいなTMAXも採用されていたという話。

しかし一方で日本ではあまり耐久レース文化が根付いていない事もあってか

「球切れみたいで見窄らしい」

という意見が多く自分で両眼点灯に改造したり。まあこれはTMAX530に限った話ではないですが。

2015TMAX530

それが今回LED化に伴い高級感を出すためか欧州での流行りが終わったのか定かではありませんが、両眼点灯に生まれ変わったわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/775/1420mm
シート高 800mm
車軸距離 1580mm
車体重量 222kg(装)
[218kg(装)]
燃料消費率 21.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 530cc
最高出力 48ps/6750rpm
最高トルク 5.4kg-m/5250rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 980,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX530(59C)-since 2013-

四代目TMAX

「Try the Maximum」

四代目になったTMAXの59C型。このモデルからは正確に言うとTMAX530という名前になりました。

ちなみにグッドデザイン賞に続いてこのモデルでは権威あるドイツのレッドドット・デザインアワードで見事

『プロダクトデザイン2012』

を受賞しました。確かに格好良いですもんね。

話を戻して最初に変更点を上げると

・ボアを2mm拡大し530ccに
・合わせて吸気バルブも1mm拡大
・アルミ鍛造ピストン
・バランサーにアルミスリーブ追加
・メインフレームの見直し
・新設計アルミスイングアーム
・チェーンドライブからベルトドライブに
・282mmの大径リアブレーキ
・プロジェクターヘッドライト
・LEDテールライト
・アルミサイドスタンド
・ABSモデルの追加

などとなっています。

四代目TMAXカタログ写真

このモデルで特筆すべき点はエンジンを530ccまで上げ加速性能を向上させた事もそうなんですが、TMAXの特徴の一つであった2段掛けチェーン駆動がベルト駆動になった事。

ベルトドライブ

これは騒音規制への対応とバネ下のさらなる軽量化(-3.5kg)、そして遊びが少ないことによるリニアな反応が狙い。

そんなTMAX530なんですが先行発売していた欧州でどうだったかと言えば2012年には販売台数一位(約16000台)を記録したようです。販売台数一位というのは125cc等の原付も含めた数。

もう凄いとしか言いようがないですね。10年4代で人気が全く落ちない。

XP530

書き忘れましたがこのTMAXは逆輸入モデルより国内仕様のほうがカタログスペックが上という珍しいバイクだったりします。

これは2013年から国内の騒音規制が欧州に順従する形となった事と、元々TMAXの開発コンセプトにエンジンの存在を消すという目的があった事。

そしてベルトドライブになった事などが挙げられ国内用マッピングに合わせた際に変わった物かと。

TMAX_giro

あとイタリアの一番有名な自転車レース『ジロ・デ・イタリア』では伴走車として活躍したりしました。

ピンクも意外と合いますね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/775/1425~1475mm
シート高 800mm
車軸距離 1580mm
車体重量 217kg(装)
[221kg(装)]
燃料消費率 27.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 530cc
最高出力 48ps/6750rpm
最高トルク 5.4kg-m/5250rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 920,000円(税別)
[970,00円(税別)]
※[]内はABSモデル
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TRICITY155(BB8)-since 2017-

トリシティ155

「Leaning Multi Wheel 第二弾」

高速道路も乗れてしまうTRICITYの155ccモデル。

「これで高速はちょっと・・・」

と思う人もいるかもしれませんが、高速道路を乗ったことがある人なら誰もが経験する横風による煽りも反対側のタイヤで踏ん張るので強かったりします。

というかトリシティというと前二輪でコケないというアピールとイメージが強すぎて、”横風に強い”とか”実質Wディスクで制動性に優れる”とか”乗り心地が凄く良い”というその他のメリットが全くもって伝わってないですよね。

トリシティ155UK仕様

まあコレばっかりは乗らないと分からないから仕方ないか。ちなみにブレーキもちょっと変わってて、本来ならリアブレーキの役割を担う左レバーが前後を担う前後ブレーキとなっています。

さて155はただ125の排気量アップかなと思ったらコチラのモデルはブルーコアエンジンなんですね。

ブルーコア

ブルーコアエンジンというのはヤマハが社内のエンジニアを総動員して作ったとされる新世代の低フリクション(低燃費)エンジン。

ブルーコアエンジンにもバリエーションが幾つかあるんですが、TRICITY155に積まれている物はNMAXの物と同様ブルーコアエンジンの中でも最上位の水冷モデル。

ブルーコアエンジン

燃焼時にピストンとコンロッドが一直線上になるオフセットシリンダー、冷却性に富んだオールアルミのDiASil(ダイアジル)シリンダー、エンジン横に設けられたコンパクトなラジエーター、低中速域と高速域での燃焼効率を両立する可変バルブVVAなどなど。

ブルーコアエンジン

最近可変バルブを取り上げる機会が多いですね。ちなみにこれもCBのVTECやBanditのVCとも動きは違います。

可変するのは吸気側のみで、BanditのVCエンジンのように中低速用と高速用のカムとロッカーアームの両方を備えており6000rpmを超えると中低速用のロッカーアームと高速用のロッカーアームを連結させる事で高速用に切り替えてる。

ヤマハVVAシステム

車の方では一昔前までメジャーだった方法。

これらの装備により従来モデルに比べ燃焼効率が50%も伸びたそう。MotoGPのエンジニアも呼び寄せたと言うだけの事はありますね。

既存の5種類以上ある小排気量エンジンを3種類のブルーコアエンジンに集約する為、1基辺りにお金かかってる事もありますが。

tricity155白

まあそんなメカニズムの話ばかりしても面白くないのでちょっと蛇足。TRICITYに対する声で多いのが

「屋根つけろ」

という意見。

確かにこれに屋根をつければ車代わりになれそうな気がしないでもない。

法律でも全長は車体長以内、高さは2m以内なら認められています・・・では何故メーカーは屋根を用意しないのかですが、恐らく2つ理由あると思います。

理由その1:車体価格が高くなってしまう

非常にシンプルかつ有力な理由。

屋根付きバイクとして現存している国産車にホンダの商用原付GYROがあります。ピザ屋でおなじみですね。

ジャイロ

ジャイロは屋根のついていないジャイロXが358,050円なのに対し、屋根付きのジャイロキャノピーは523,950円。その差16万円ほど。装備が若干異なっていますが基本的に同じバイクです。

これをTRICITYに当てはめると50万円を超える。50万円を超える125/155を買う人は125最速のYZF-R125/MT-125の売れ行きを見てもほぼ居ない。

理由その2:転んだ時に危ない

バイクというのは転倒する危険性があります。それは三輪のTRICITYでも可能性は既存のバイクよりも低いけどある。

プロであるバイクレーサーの転倒シーンを思い浮かべてもらうとわかりますが、転倒した時には必ずバイクから手を離しリリースしています。これはバイクに巻き込まれる事が一番危ないことを知っているから。

転倒

もし屋根があったら横になった屋根と車体に閉じ込められてシェイクされてしまう危険性が非常に高くなるわけです。バイクメーカーはちゃんと転倒時の事も考えて作ってるんですよ。

だから社会的責任を伴う規模の大きい日本メーカーとしては

「屋根が欲しいなら自分で付けて」

というスタンスで屋根付きを出さないのではないかと思います。

そういう事に一番うるさいホンダがGYROで出してるのは30km/hしか出せない商用の原付だからかと。

余談ですがイタリアのADVIA(アディバ)というメーカーが電動開閉機能の付いたバイクを出しています。

ジャイロ

電動開閉のオープンカーならぬオープンバイク。世界で特許を取得済み。

ただ当然ながらお高く、125でも50万円を超えます。しかも重い。

あと屋根をつけろと言ってる人に言っておきたいのが、屋根をつけても普通に濡れます。濡れないのは上半身だけで肩から手、下半身への浸水は防げません。大人しく合羽着るのが安くて確実です。

トリシティに関係ない話ばかりですね。

MW155

でも恐らくバイクに乗られてる方はTRICITYに興味のない、または一度乗ってみただけの興味本位の人、ぶっちゃげると

「これ買うくらいならNMAX買う」

って人が多いかと思います。

でもそれはヤマハも狙い通りというか織り込み済みで、このバイクは新規需要掘り起こしを狙って作られた側面が強いバイク。国内新車販売台数100万台という目標に向けてヤマハが出したバイクでもあります。

というのもヤマハが過去に行った調査でバイクに乗らない人の乗らない理由を聞いたところ

「転倒が怖い」

という意見が大多数を占めていた。

つまりトリシティというのはそういった声を聞いて作られたバイクなんです。自立しないので前二輪であろうとコケる時はコケる。でも前にタイヤが2つあるから”転倒しなさそう”というイメージが湧いて転倒の怖さを軽減してる。後ろに乗る人も前が二輪だと安心でしょう。

二人乗り

芸能人の多用など普通では見ないような方法で宣伝をしている事を見ても、ターゲットが我々バイク乗りでは無いことは明白ですね。

そういった層がメインターゲットだからトリシティ(125)は原二クラスの中でも年間8000台前後と新型原二としては今ひとつな販売台数なんだけど、新規(またはリターン)ライダーの割合は恐らくトップかと思われます。

欧州モデル

トリシティでリーンというバイクでしか味わえない面白さを安全に知り、バイクに目覚めている人が増えているのは間違いない。

そう考えるとトリシティが市場に与える影響というのは”販売台数”という数字だけで片付けられる簡単な物ではないでしょう。

余談:トリシティに興味のない既存のバイク乗りへ

関係のない話ばかりしてきたのはあんまり興味が無かったからなのですが、密かにブームの兆しを見せている遊びを見て改めました。

それはトリシティによるオフ路走行。発端はタンデムスタイルさん(参照)かな?

トリシティオフ走行

もともと石畳やギャップを物ともしない走りが武器だから、多少の悪路はそつなくこなせる走破性を持ってる。

最低地上高が低いから岩だらけのガレ場とかの極端な場所は流石に無理だけど、多少の悪路なら写真のようなブロックタイヤを履かずとも難なく走れるしチェーンを巻けば雪道でも走れるATV(四輪バギー)のようなバイクに早変わり。

デュアルパーパス顔負けな走りが出来るかもしれない。

でも元々そういう走行を前提にしているわけではないので、走行した場合は汚れ(特に砂など)をちゃんと落とすようにしましょう。

主要諸元
全長/幅/高 1980/750/1210mm
シート高 780mm
車軸距離 1350mm
車体重量 165kg(装)
燃料消費率 41.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.2L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 155cc
最高出力 15ps/8000rpm
最高トルク 1.4kg-m/6000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.0L
交換時0.9L
スプロケ
Vベルト BB8-E7641-00
車体価格 420,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)

【関連車種】
PCXの系譜LEADの系譜CYGNUSの系譜Addressの系譜