TRICITY125/A(2CM)-since 2014-

トリシティ125

「Leaning Multi Wheel」

2013年の東京モーターショーで発表され話題になった前二輪の三輪車。でも一応原付二種というバイク扱いなので小型二輪以上の免許が入ります。これくらいなら自動車免許でも良いような気も・・・。

知らない人の為に補足しておくと、この前二輪のバイクを一番最初に出したのはイタリア最大手のPIAGGIO(傘下にVespa・aprilia・MOTO GUZZI)というバイクメーカーから出たMP3というバイクが初出。

PIAGGIO MP3

2007年に発売され、欧州でヒットを飛ばしました。

向こうでは国によっては車の免許で乗れたり、数時間の講習を受けるだけで乗れたりする事もヒットの要因だったりします。フランスが正にそれで、2015年時点で70000台も売れるほどの大ヒット。

という事でフランスのメーカーでスクーターを作ってたプジョーからもMETROPOLISという同じタイプのバイクをトリシティが出る2年前の2012年から発売。

プジョー メトロポリス

つまりトリシティは遅い登場だったわけですが、ヨーロッパでの評価やシェアが高いヤマハとプジョーに市場を奪われたピアジオが怒って2015年に特許侵害で訴訟。判決は探しても見つからなかったのですが、今でも普通にヤマハもプジョーも売っているので敗訴か和解をしたんでしょう。

というかそれが特許侵害になるとテレスコピックサスペンション(一般的なフロントフォーク)を採用しているバイクは全部BMWの特許侵害になっちゃいますし。※テレスコピックサスペンションはBMWが発祥

ヤマハとしてはトリシティの元になっているのは実は34年前に作っていたパッソル。

三輪パッソル

HY戦争でもっと台数を稼ぐために考えた案の一つにコレがあった。もしもHY戦争が長引いてたり勝ったりしてたらもっと前に出てたかもしれませんね。

ちなみに三輪の初出は1974年にダイハツが造った

『ハロー』

というモデル。

ダイハツハロー

今でこそピザ屋やヤクルトで多少は見慣れている形ですが当時は異端車でした。

って、いい加減トリシティの話をしろと怒られそうなのでトリシティに話を戻しましょう。

トリシティで語ることと言ったらLMW(Leaning Multi Wheel)つまり前輪が2つあることですね。

LMW

これは片持テレスコピックサスペンションとそれを支えるハンガー状のパラレログラムリンクというレイアウトになっており、バイクのようでバイクじゃない様なフロントまわりをしてる。

一つのホイールにつき二本を付けてるのでなかなか迫力のある足回りですが、片側二本のうち前の方はガイドのみの役割でサスペンションとしての仕事は後ろのフォークが担っているとの事。

LMWメカニズム

片持ちだからタイヤ交換が凄く楽そうに見えるけどキャリパーも内側だから逆に大変なのかな。恐らくタイヤライフも荷重が二分するのでタイヤ交換の機会は減りそうですが。

どうしてパラレログラムリンクなんていう仕組みになってるのかというと、左右のタイヤを車体と同様に左右を狂いなくリーン(傾け)させて曲がるため。大島優子さんが”り~ん”と言って手を傾けていたのが記憶に新しいと思います。

大島優子トリシティ

ちなみに当時トリシティに試乗したら大島優子さんのクリアファイルがもらえるっていうキャンペーンがあったんですが、バイク屋に在庫の電凸する人や、(免許を持っていない事から)クリアファイルだけクレと交渉しに来る人などで溢れかえり一部のバイク屋は大変だったとか・・・AKBの力恐るべしですね。

さっきから脱線してばかりですね。スイマセン。

じゃあこのパラレログラムリンクがどういう仕組みなのかって事ですが、前にタイヤが二輪もあるからといって左右のタイヤの動きがバラバラだったり、片方が接地しなくなる事があると安定せずに危ない。

トリシティ車体構成

両方同じように傾き、同じように設置する必要がある。つまり今まで一輪で100担っていた仕事量を左右で綺麗に50:50にしないといけないわけです。その為のパラレログラムリンク・・・って言っても分からないですよね。

まあとにかくこうしたのは何度も言いますがリーンするため。

トリシティハンドリング

「トリシティってどんなハンドリングなんだろう?」

と考えている方も多いと思いますが、若干安定性重視ながら基本的にバイクと一緒。それはパラレログラムリンクによって一般的なバイクと同じようにリーンで曲がるからです。

主要諸元
全長/幅/高 1905/735/1215mm
シート高 780mm
車軸距離 1310mm
車体重量 152kg(装)
[156kg(装)]
燃料消費率 38.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 6.6L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 11ps/9000rpm
最高トルク 1.0kg-m/9000rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前90/80-14(43P)
後130/70-13(57P)
バッテリー YTZ7V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.9L
交換時0.8L
スプロケ
Vベルト 2CM-E7641-00
[BB8-E7641-00※18以降]
車体価格 330,000円(税別)
系譜図
トリシティ125 2014年
TRICITY125/A
(2CM)
トリシティ155 2017年
TRICITY155
(BB8)

TRICKER(B8C)-since 2018-

2018年式トリッカー

「FREE RIDE PLAY BIKE」

一度生産終了を迎えつつも復活した2018年型からの実質Sモデルのみとなった三代目TRICKER/B8C型。

主な変更点は

・排ガスを監視するO2センサー

・蒸発ガソリンを防ぐキャニスター

・エアインダクションの廃止

など排ガス規制に対応したもの。

2018年式XG250

聞き慣れないであろうキャニスターというものを少し説明すると、これは車体から漏れ出てくる蒸発ガス対策のもの。

ガソリンスタンドとかで臭ってくるあれと同じでガソリンベーパーとかとも言われていますね。

仲間であるセローやSR400にも付くようになったこの箱がキャニスターといって中には脱臭炭・・・じゃなくて活性炭が入っています。

トリッカーのキャニスター

早い話が排ガス規制(正確にはエバポ規制)に対応するために蒸発ガスを大気放出するのではなくキャニスターに一時的に吸わせることで漏れを抑えているという話。

キャニスターのフロー

ちなみにエンジン始動の有無にかかわらず働く装置なので、トランポや屋内に置いても臭くなりにくい・・・ハズ。

ただずっと乗らないと破過といって容量オーバーで大気放出するようになります。乗れば戻りますが。

エアクリーナーからバイパスさせてエキゾースト内で漏れ出た燃料を再燃焼させるエアインダクションが廃止されたのはこれのおかげで漏れ出るガスが減った事が要因かと。

2018トリッカーエンジン

ただそんな事より目につくのがカタログスペック。

ガスケットの変更により圧縮比が0.2上げられた事で2馬力UP。更にはトルクも0.1kgf-m上がってピーク回転数が500rpm低くなっている。

2018トリッカーカタログ写真

つまり更に振り回せる様になったというこの上ない改良が行われているわけです。

さて・・・繰り返しになりますがトリッカーというバイクは若者にバイクを振り回して遊ぶ事の楽しさを伝える為に生まれたバイク。

2018年式トリッカーカタログ写真

しかしじゃあトリッカーは若者限定バイクなのかと実はそうでもない。

というのもトリッカーの生みの親で自身も乗って遊んでいる近藤PLいわくトリッカーには裏コンセプトというか参考モデルがありました。

「振り回して楽しいバイク」

という企画を見て近藤PLはあるバイクを思い出し

「”アレ”を造ればいいじゃん」

と、昔のヤマハ車を思い出しトリッカーを造った・・・そのモデルとなった”アレ”とは何か。

トリッカーTY-S

「外装で復刻したTY250だろ」

とトリッカーマニアやトレールマニアなら思うでしょう・・・が、残念ながら違います。

正解はこれ。

GT50

そう『ミニトレ』です。

知らない人の為に補足するとミニトレというのは一大トレールブームを巻き起こした250DT1の原付版として70年代に登場したFT50やGT50の事。

ミニトレールということからミニトレという相性で多くの若者に支持され、また多くの若者をトレールの世界へ誘いました。

何を隠そうプロジェクトリーダーの近藤さんもその一人。

2018年式トリッカー壁紙

「自分がミニトレに出会って夢中で走り回った楽しさを、ずっと走り続けたいと思った感動をもう一度」

という秘めたる思いが込められているんです。

つまりトリッカーというのは現代のミニトレとも言えるバイクなんですよ。

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 790mm
車軸距離 1330mm
車体重量 127kg(装)
燃料消費率 38.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 6.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 20ps/7500rpm
最高トルク 2.1kg-m/6,000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 433,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

【関連車種】
CRF250RALLY/L/Mの系譜SEROWの系譜KLX250/D-TRACER Xの系譜スモールDUKEの系譜

SR400(RH16J)-since 2018-

RH16J

「SRで、あり続ける。」

再び規制によって生産終了を迎えつつも復活してきた七代目にあたるRH16J/B9F型。

こちらは40周年を記念して出されたSRの十八番である40周年モデルで、SRではお馴染みとなるサンバースト塗装と真鍮エンブレムになっています。

40周年モデル

昭和53年に生まれから40年、つまり平成の世を横断して令和になっても存続という偉業を達成した事になります。

最初にこの七代目モデルの変更点を上げると

・キャタライザーの改良

・キャニスターの装着

・電装/灯火系

・新設計マフラー

・新型ECU

などなど平成28年度(ユーロ4)排ガス規制への対応がメインとなっています。見分ける際に分かりやすいのがキャニスターですね。

キャニスター

これは蒸発ガスを大気放出させず吸収するためのもの。

キャニスターについてはトリッカーの方でしたので省きますが、この七代目SR400はセローと同じく2018年10月からのABS義務化に該当しないよう9月に滑り込むようにリリースされたモデルなので最長でも2021年9月までの販売になると思われます。

SR400の規制

要するに2年程度のモデルライフである事がほぼ確定しているわけですね。

だからもしも

「リアがディスクブレーキになるのは嫌だ」

と思ってるのならこのモデルがラストモデルになるのでお急ぎを。

もちろんそう思ってない人にもSRが欲しいなら間違いなく”買い”といえます・・・何故なら規制を逆手に取って激変した部分があるからです。

2018年式RH16J

SRに興味のある方ならこの2018年型に対してこういう意見を耳にした事があると思います。

「新型は音が凄く良い」

これは騒音規制の測定方式が(欧州準拠に)変わったことで実質的に少し緩和された事が理由の一つにあります。

それに伴い七代目SRはマフラーの内部構造が変更され排気口も先代よりも一回り大きくなっています。

2018年式SR400のマフラー

こうして抜けが良いマフラーにした事で音が格段に良くなった・・・という単純な話ではないのがクラフトマンシップ溢れるSRらしいところ。

前モデルにこの新型マフラーを付けたら同じ音になるのかというと残念ながらならないんです。というのも今回のモデルチェンジにおける最も大きい変更点はマフラーだけではなくバイクの脳にあたるECUにあります。

RH16JのECU

今回の排ガス規制ではOBD1(異常を知らせる機能)を装着する必要があり、そのためECUを処理能力の高いモデルに変更する必要があった。

これによりそのままでは入らないほどの大きさとなりレイアウトとシートサイドカバーを相変わらず変わっていない様に変えているんですが、同時にエンジンをこれまで以上に事細かに制御出来る様になったわけです。

そのおかげでこの七代目は中回転域にあったトルクの谷を解消する事が可能になったと同時に、高い演算能力と各種センサーを活用して”意図的な制御”を仕込むことが出来た。

2018年式SR400のエンジン

「僅かに燃料を多く吹いて僅かに点火時期を遅らせる」

という制御です。

燃料が余る状態で点火時期を遅らせるとまだ燃焼中だったり燃焼されず排気されるガスが出てきます。これは暖気中などに近い状態。

そしてそのまま排気されたガスはエキゾースト内で燃焼するんですが、燃焼するということは音や振動が出る。

RH16Jのマフラー

そう、これが良い音の正体なんです。

規制で必須となった高性能なECUを活用する形で『鼓動感』を出している。

「昔のバイクの方が音が良かったな」

という声を聞く事があると思いますが、この七代目は精密な制御によってそんな

『ちょっと燃調がファジーだったキャブ時代』

に限りなく近い音を出す様に出来たんです。

SR400キック

「精密な曖昧さで奏でる鼓動と音色」

これが七代目最大の変更点であり評判を呼んでいる魅力です。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1100mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 175kg(装)
燃料消費率 29.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
最高出力 24ps/6500rpm
最高トルク 2.9kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/100-18(54S)
後110/90-18(61S)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6ES
推奨オイル ヤマハルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前19|後56
チェーン サイズ428|リンク130
車体価格 530,000円(税別)
※40thは+110,000円
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

【関連車種】
GB250CLUBMANの系譜ST250の系譜ESTRELLAの系譜

SR400(RH03J)-since 2010-

RH03J

「日本の、スタンダードです。」

2008年に実施された厳しい排ガス規制で

『空冷×単気筒×400』

という三大要素を全て兼ね備えていた為にカタログ落ちとなってしまったものの、およそ2年の歳月の後に復活した六代目SR400のRH03J型。

SR400wallpaper

ここでも型式は変わらず3HTのままで3HTRから3HTXまでと、2017年モデルから新コードのB0Hとなっています。

大きな変更点としてはキャブからFI(電子制御燃料噴射装置)になった事。

それだけかと思うかも知れませんが、これSRにとっては死活問題。

SR400フューエルポンプ

FIということは燃料を加圧する必要があるので、拳ほどの大きさもある燃料ポンプが必要になる。

スリムなSRにとってこれは非常に重荷。これをもしそのまま燃料タンクに突っ込むとタンクが盛り上がってしまうから。

SR400インジェクション

だからSRはわざわざ電装系の配置を全て見直し、なんとかサイドカバー部にスペースを設けてそこに押し込むことでサイドカバーを左右10mm高くするだけで済ませてある。

排ガスをクリーンにするために欠かせないマフラーもそう。このモデルから触媒とO2センサーを付けたものになり重量が変わりました。

SR400

だから取り付け位置を変える必要が生まれた。

でも単純に変えただけでは”変わってしまう”のでガードを付けたりしてそれを感じさせない様にしている。

しかしここまで電子制御化してもなおキックだけという潔さ。セルも検討したそうですが結局キックだけ。現存する市販車でキックだけってもうSR400だけじゃないかな。

今や伝統化して『儀式』と呼ばれるまでになりました。

キックスタート

ちなみにSRが欲しいけどキックが不安だと思ってる人に断っておきますが、SR400はデコンプ(キックを軽くするレバー)とキックインジケーター(キック位置の目印)が付いているのでかなり簡単です。

慣れると座ったまま3秒で掛けられるくらい簡単。

話を戻しますが、2年もの月日が空いてしまったのはこれら排ガス規制による変更だけでなく、製造ラインの問題も大きく関わっています。

というのも2008年規制で多くのモデルが販売不可になってしまった事を機にヤマハは製造ラインを集約したんですが、SRをそのラインに入れることが出来なかった。

これが何故かというと簡単な話で

B0H

「ハンドメイド過ぎるから」

です。

例えば今どき珍しいクリア塗装のクランクケースは三工程も掛けて手で磨く必要がある。スペシャルエディションになると八工程にもなる。

クランクは組立式だし、マフラーも仕上げは手溶接。そして何より組立に必要な治具もほとんどが昔からの古い専用品。

もっと細かい事を言うと、プロジェクトリーダーの山本さんが悩んだというのがピボットに付いているグリスニップルという今どき考えられない部品。

グリースニップル

グリスニップルというのはグリス注入口が付いたボルトの事なんですが

「これ要るんだろうか・・・」

と悩まれたそう。

これは錆びによる固着(ピボットシャフトが抜けなくなるのを)防止するのが狙いで1983年モデルから付けられたもの。

あくまでも当時の話であって品質が上がった今となっては無くても大丈夫なんでしょうが、悩んだ結果

「変える必要がないならそのままにしよう」

という事で結局そのまま。

35周年

こういう細かいながらも変えていない部分が非常に多いから今どきのバイクと一緒に造るのが難しかった。

それが仇となってしまったわけですが、じゃあどうやったのかというとゴルフカートの製造ラインにねじ込んだんです。

ヤマハのゴルフカート

幸運な事にゴルフカートが4st化に伴い製造ラインが見直されていた。そこで全く部署が違うにも関わらず何とかお願いしてSRも一緒に造ってもらえるように根回し。

復活に少し時間が掛かってしまったのはこれが理由。

最後に。

系譜を読まれて初めてSRが意外と手を加えられている事を知った人も多いかと思います。

ただそう思うのも当たり前な話。

1978と2018

『変えずに変える』

SRはこの難題に四半世紀以上も向き合い、どんなに厳しい時代になろうと逃げずに磨き上げて来たからです。

SINCE1978

今やその歴史の長さから

『ヤマハを体現したバイク』

と言われるまでになったわけですが・・・なんかちょっと安直で伝わり難いですよね。

それより

2018SR400

『ヤマハのクラフトマンシップを体現したバイク』

と言ったほうがしっくり来るかと。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1110mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 174kg(装)
燃料消費率 41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
最高出力 26ps/6500rpm
最高トルク 2.9kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/100-18(54S)
後110/90-18(61S)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6ES
または
W20EPR
推奨オイル ヤマハルーブ
プレミアム/スポーツ/ベーシック
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前19|後56
チェーン サイズ428|リンク130
車体価格 550,000円(税別)
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

XT1200Z/ZE SUPER TÉNÉRÉ(2BS/2KB/BP9)-since 2014-

XT1200Z/2BS

「ステージは、世界。挑むは、未開。」

マイナーチェンジが施された2014年からのスッテネ。

最初に変更点をあげると

・エンジン見直しによる2馬力アップ

・クルコン機能

・可変式スクリーン

・小型LEDウィンカー

・フルデジタルメーター

・アルミサイドスタンド

などの変更が加わり、更にこのモデルからZEモデル『XT1200ZE/2KB』が追加。

XT1200ZE

Zとの違いとしては

・電子制御サスペンション

・グリップウォーマー

・サイドカバー

・リアキャリア兼アシストグリップ

・メインスタンド

などが新たに追加された+10万円の上位グレード版。

XT1200ZとZE

電子制御サスなどの豪華付属品を見たら割安ですけどね。逆に言うとZは装備をOP化して先代比10万円安です。

補足として加えると欧州では更に

・ブロックタイヤ

・LEDフォグ

・スキッドプレート

を装備しオフロード性能を上げた

スーパーテネレ ワールドクロッサー

『XT1200Z/ZE Worldcrosser』

が先代から発売されていました。

更に2018年からは

・専用ハイスクリーン

・ウィンドディフレクター

・スキッドプレート

・37Lアルミサイドケース×2

・カーボンサイドカウル

・専用グラフィック

などフル装備モデルとなる

レイドエディション

『XT1200ZE RAID EDITION』

も発売されています。

さてさて・・・先のページで解説した通りこの新世代スーパーテネレは快適に長距離を走れるような強い車体構成をしているわけですが、一方でパリダカを制した750時代の頃と比べるとフロントが19インチになっていたり、排気量が大きくなっている事から見ても分かる通り

「若干オンロード寄りのアドベンチャー」

となっています。

2015XT1200Zワールドクロッサー

もちろんこういう道なき道を走れるポテンシャルも持ってますけどね。

どうしてスーパーテネレというヤマハが誇るラリーマシンの名を冠しているにも関わらずこうしたのかといえば、系譜を辿るとわかるようにXTZ750SUPER TÉNÉRÉとTDM850/TDM900によって

ZEモデル

「ユーザーが本当に求めているアドベンチャーとは何か」

をヤマハは知ったからではないかと。

ユーザーが求めているビッグアドベンチャーというのはそのままラリーに出場できる様なゴリゴリのラリーレイドではない。

2014年モデル

「ツーリングもスポーツも楽しめる万能ビッグアドベンチャー」

という事をXTZ750とTDM850で学んで知ったからこそオンロード性能を高めてる。

他にもフロント荷重を増してハンドリングを良くしたり、またシート高も845mmというアドベンチャーとしては決して高くない値に収めるなどの配慮もあります。

わざわざ自動でダンパー調整していくれる電制サスを割安価格で用意したのもこの万能性を更に高めるためにあるんじゃないかと。

スッテネ

これは

『ダカールラリーマシンXTZ750』

『ストリートラリーマシンTDM850』

2つのラリーを造った経験を持つヤマハだからこそ出来た経験に裏打ちされたアドベンチャー。

例えるならばXT1200Z/ZE SUPER TÉNÉRÉはダカールとストリートを湧かせた2つのラリーマシンを一つにした

XT1200ZEスーパーテネレ

『デュアルラリーマシン』

と言えるのではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2250/980/1410~1470mm
[2255/980/1410~1470mm]
シート高 845~870mm
車軸距離 1540mm
車体重量 257kg(装)
[265kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 1199cc
最高出力 112ps/7250rpm
最高トルク 11.9kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-19(59V)
後150/70-17(69V)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EB9
推奨オイル YAMALUBE
SAE 10W-40~20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L
スプロケ

チェーン
車体価格 1,530,000円(税別)
[1,630,000円(税別)]
※プレスト価格
※[]内はXT1200ZE
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

【関連車種】
Africa Twinの系譜V-STROM1000の系譜VERSYS1000の系譜R1200GSの系譜

XT1200Z SUPER TÉNÉRÉ(23P)-since 2010-

XT1200Zスーパーテネレ

「Ultimate Gear for Intercontinental Adventure」

おおよそ20年ぶりに復活を果たした二代目と言っていいのか分からないほど何もかもが変わったスーパーテネレ。

何と言ってもまず排気量で1199ccと大スケールアップ。

270度位相クランク

他にも

・新設計バックボーンフレーム

・フルアジャスタブルサス

・YCC-T(電スロ)

・トラクションコントロール

・ハイポイドギアのシャフトドライブ

・高さ調整機能付きシート(845~870mm)

・前後連動機能付きABS

などなどスーパーテネレを名乗るだけあり足りないものは何もないと言っていい全部載せアドベンチャー状態になり税別で1,600,000円に。

割高に感じるかもしれませんが決してそんなことはない。目に見える装備だけでなく細部まで丁寧に作り込まれているからです。

XT1200Zストロボ

例えばまずエンジンはラリーで実証済みの270度クランク。

・穏やかな出力特性で疲労を軽減

・メンテナンス性に優れつつ信頼性のあるエンジン

・長距離を走り切る低燃費

アドベンチャーとしての上限を完璧に満たしたエンジンになっています。

XT1200デザインスケッチ

わざわざこのモデルの為だけに用意した専用エンジンなんだから当たり前といえば当たり前ですけどね。

他にも倒立のフルアジャスタブルサスはもちろんオーソドックスながらダンパー付きの補強&防塵防水仕様メーター。

XT1200Zメーター

ナビを付けろと言わんばかりの位置にあるシガソケ標準搭載もありがたいですね。

車体の方でもスーパーテネレはお金が掛かっています。

その代表例がシャフトドライブ。

XT1200Zシャフトドライブ

『横向きのエンジンに縦向きのシャフトドライブ』

という手間とコストが掛かる事から一部の高額車しか採用していない方法を取っているんですが、何故そうまでしてシャフトドライブにしたのかというと一番はメンテナンス性と耐久性を上げるため。

ただスーパーテネレの場合はシャフトドライブも通常のシャフトドライブではなく非常に高い精度を求められるハイポイド式のもの。

スーパーテネレのシャフトドライブ

中心から少しオフセットされてるのがわかるかと思いますが、これは簡単に説明すると複数枚の歯が常に噛みあう(噛み合い率が上がる)ので振動や騒音が減る上に強度的にも有利になる。

そしてそれが結果としてバネ下重量の軽減という多大なメリットを生んでいる。

もう少し分かりやすい所でいうと各部品のレイアウトでこれも非常に考えられている。

ライトカウル

ライダーから見て右側のサイドカウルを外すと

・バッテリー

・ヒューズボックス

・ECU

などなど電装系が纏められててアクセス性が抜群。

では反対の左側の方には何が入っているのかというとラジエーターが鎮座しています。

ラジエーター

実はサイドラジエーター方式なんですね。

VTR1000の系譜の方でサイドラジエーターについて知った人は

「パラツインなのに何故サイドラジエーターなのか」

と疑問に思われるかもしれませんが、もちろんコレにも理由があります。

普通なら飛び石対策と考える所ですがスーパーテネレがサイドラジエーター式になっているのはリアヘビーになりがちな荷重配分の適正化。簡単にいうと前輪荷重を稼ぐためです。

XT1200Zのフロント

そのためにラジエーターを横にズラしエンジンを更に前輪に近づけることでフロントへの荷重を稼いでいるんです。

それらの工夫によってスーパーテネレはビッグアドベンチャーの中でもワインディングは得意な方。

バンクセンサー

だから結構みんな当たり前のようにバンクセンサーを削るくらい寝かせて走っていたりします。

ちなみにプロジェクトリーダーの森さん曰くバンクセンサーが左側にだけあるのもこの為で、これ以上寝かせるとラジエーターぶつけちゃうぞって警告のために左側だけ付けたそう。

バンクセンサー

まあ元々補強されている上に、壊れたという話も聞かないので神経質になる必要はないかと思いますが。

話を戻すとサイドラジエーターにはもう一つ別の箇所のアクセス性を向上させる狙いがあります・・・それは吸気周り。

スーパーテネレはタンクを外すとそこはもうエアクリーナーボックスがあり、更にその下にはスロットルバルブとエンジンヘッドというスーパースポーツの様なストレートレイアウトになっています。

フレーム

加えてフレームがセンターを避けており、先程話したとおり電装系は右に、冷却系は左に纏められてるからアクセスを妨げるものが無く整備性が非常に良い。

新世代のスッテネにはこういった一見すると見えないカタログスペックにも表れない小さい工夫の数々が詰め込まれているわけです。

狙いはもちろん

2011XT1200スーパーテネレ

「快適かつ軽快に大陸横断すら可能にするため」

これだけの作り込みを見れば1,600,000円(OP別売り)という値段も頷けるのではないかと。

ちなみにTDM900のページでも言いましたが、バイクに乗って何日もキャンプツーリングしたりするのが結構当たり前な欧州で再びアドベンチャーと言いますかビッグオフ需要が沸き起こって来たことでスーパーテネレは復活した背景があります。

XT1200Zカタログ写真

しかし向こうの人はその付き合い方の関係から

「バイクはツール」

という考えが強く、まして何日も共にするアドベンチャーとなると非常に厳しい目を持っている。

じゃあそんな本場でこのXT1200Zはどういう評価だったのだろうかと調べてみたところ

XT1200スッテネ

「かつて地球を支配したスーパーテネレの名を冠するに相応しい。ネックがあるとすれば価格が高い事だ。」

だそうです・・・やっぱり高いですねスイマセン。これだけ作り込んでいるんだから当たり前なんですけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2255/980/1410mm
シート高 845~870mm
車軸距離 1540mm
車体重量 261kg(装)
燃料消費率
燃料容量 23.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 1199cc
最高出力 110ps/7250rpm
最高トルク 11.6kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80-19(59V)
後150/70-17(69V)
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR8EB9
推奨オイル YAMALUBE
SAE 10W-40から20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.2L
交換時3.1L
フィルター交換時3.4L
スプロケ

チェーン
車体価格 1,530,000円(税別)
※プレスト価格
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

MT-25/MT-03(B04/B05) -since 2015-

MT-25

「大都会のチーター」

市街地での軽快性、日常での使い勝手、俊敏なスタイリングを調和させた新しいネイキッド。

MT-25デザインスケッチ

簡単に言ってしまうとYZF-R2/R3のネイキッド版となる2モデルで、エンジンや足回りなどに変更点はありません。

MT-25|MT-03

決定的に違うのはハンドルがバーハンドルになってポジションになっている事ですね。

ポジション比較

回してナンボなエンジンでありながらも上半身をフリーにすることでアグレッシブな視点移動を楽にしつつ、後輪に荷重を残せることで中低速での扱いやすさを向上。

MT-25バーハンドル

『大都会のチーター』

というコンセプトはこれから来ているんでしょう。

あと外装についてなんですが・・・

MT-25フェイス

なにげにインパクトある顔というかポジションランプなのもそうなんですが、何より取り上げたいのがタンクです。

MT-25タンク造形

YZF-Rもそうなんですが燃料タンクにプラスチックのカバーを被せる形になっているのでプレスでは到底成しえない凝った形状をしています。

プラスチックカバーというとマイナスなイメージを持たれるかもしれませんが、実はこれかなりメリットが大きい。

というのもプラスチックカバーということはつまり安いという事。3ピース構造で一枚あたり3000円もしない。

だから万が一立ちごけしたりして傷つけても簡単に新品に変えられるし、ちょっとしたカスタムならぬ衣替えも簡単に出来る。

日本のMT

これはプラスチックカバーだから出来ること。

違うカラーのタンクにしてもいいし、3ピースを活かしてバラバラな色気にも出来る・・・これ何気に凄い特権ではなかろうか。

主要諸元
全長/幅/高 2090/745/1035mm
シート高 780mm
車軸距離 1380mm
車体重量 165kg(装)
燃料消費率 24.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 249cc
[320cc]
最高出力 36ps/12000rpm
[42ps/10750rpm]
最高トルク 2.3kg-m/10000rpm
[3.0kg-m/9000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54S)
後140/70-17(66S)
[前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)]
バッテリー GTZ8V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
[CR8E]
{LMAR8A-9}
推奨オイル SAE 10W-30から20W-50
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前14|リア48
チェーン サイズ428|リンク132
車体価格 485,000円(税別)
[515,000円(税別)]
※[]内はMT-03
※{}内は2018年モデル(B1E/B0B)
系譜図
yzf-r252014年
YZF-R25
(1WD/2WD/BS8/B0E)
yzf-r32014年
YZF-R3
(B02)
mt-25|mt-032015年
MT-25|MT-03
(B04/B05)
2019年式YZF-R252019年
YZF-R25/R3
(B3P/B6P/B7P)
2020mt-25|mt-032020年
MT-25|MT-03
(B4W/B6W)

TRACER900/GT(B5C/B1J) -since 2018-

TRACER900/B5C

「Two Sides of the Same Coin: Sports and Travel」

2018年からのMT-09TRACER改めTRACER900となったB5C型。

最初に変更をあげると

・大型フロントスクリーン

・新設計ハンドル&シート

・6馬力アップ

・60mm延長されたスイングアーム

・新デザインのフロントカウル/マウントステー/フットレスト

などなどとなっており、このモデルからは新たにTRACER900GT/B1J型というグレードも登場。

TRACER900GT/B1J

・フルアジャスタブルフロントフォーク

・リモートアジャスター付きリアサス

・多機能フルカラー液晶メーター

・クイックシフター(アップのみ)

・クルーズコントロール

・グリップヒーター

などを装備しています。

TRACER900の変更点

ホイールベースの60mm延長などからもわかるよう従来のMT-09路線から更に少し離れて快適性と巡航性能を向上させたツーリング寄りなモデルになりました。

基本的にデザインは先代を継承している形なんですが

・ハイスクリーンとアッパーカウル

・ウィンカーの位置

・ブッシュガード形状

・パニアマウントステー形状

などの見た目が変わっています。

MT-09TRACERとTRACER900

こうやって見るとTRACERはデザインが纏まっててキメラバイクがベースには見えないですね。

ちなみにTRACERは安くない派生モデルながら人気があって本家のMT-09と変わらないほど売れていたりするんですが、人気といえばコンフォートシートと同時に

『パフォーマンスダンパー(旧名パワービーム)』

を付けるのが流行っているみたいですね。

パフォーマンスダンパーのメカニズム

これはヤマハが開発したフレーム用の制振ダンパーで

『世界初の粘性技術』

として注目されTOYOTAのクラウンアスリートVXを皮切りにクルマの方ではスポーツモデルでの採用が進んでいます。

パフォーマンスダンパーのメカニズム

一体このダンパーが何なのかという話ですが、フレームというのは路面から伝わる力を吸収変形し減衰するという事を繰り返しながら走行している。

この変形には剛性という聞いた事があるであろう要素が関係しており剛性を高くするほど変形に強くなるんですが、高くしすぎると吸収しないのでゴツゴツした乗り心地になる。スポーツ性が高いモデルなんかが正にそれですよね。

しかし吸収できるよう剛性を低くしすぎるとフレームの変形が収まらず(減衰しきれず)真っ直ぐ走るのも大変になるという二律背反のような問題がある。

だからこそ画期的だと言われたのがこのパフォーマンスダンパーで。

TRACERのパフォーマンスダンパー

「直進安定性が増した」

「振動が減った」

という肯定的な意見が多いですが、分かりやすい例がハンドルが振られてまっすぐ走れなくなってしまうウォブルという現象。

これが起こる1番の原因はフレームの剛性不足により減衰しきれず共振を起こしてしまうから。ヤマハのパフォーマンスダンパーを付けると安定するのは、こういったフレームの減衰を補助してくれる(和らげてくれる)から安定する。

「フレーム剛性ではなくフレームの減衰力を上げるのがパフォーマンスダンパー」

という話で、フレームに粘着性を持たせたという意味も何となく分かるかと。

TRACERのカタログ写真

ただし直進安定性が増すという事はそれを崩す事がキッカケであるコーナリングが若干硬くなる面もある。

それでもTRACERで人気なのはパッタンパッタンと右へ左へ寝かし込んで駆け抜ける走りよりも、色々と積載しつつ程よいスポーツ巡航というフレームに少し辛い用途をする人が多いからじゃないかと。

TRACER900GT壁紙

ちなみにこのパフォーマンスダンパーは簡単に脱着出来る上に作用ストローク量が1mm以下なので、サスペンションのように熱やダストによるシール劣化からのオイル漏れやガス抜けという心配がほとんど無い。

もう一つの敵である紫外線もカバーが付いてるので圧倒的にメンテナンスフリーという要素も持っていたりします。だから車の方でも純正採用されたりしているんでしょうね。

値段は約3万円と安くは無いけど高くもなく長寿命なので試してみるのもあり・・・というTRACERというよりもパフォーマンスダンパーのセールページでした。

主要諸元
全長/幅/高 2160/850/1375mm
シート高 850~865mm
車軸距離 1440mm
車体重量 214kg(装)
[215kg(装)]
燃料消費率 19.7m/L
※WMTCモード値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 846cc
最高出力 116ps/10,000rpm
最高トルク 8.9kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 1,030,000円(税別)
[1,110,000円(税別)]
系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

MT-09/SP(BS2/B6C)-since 2017-

2017MT-09

「Multi performance Neo roadster」

大成功を収めたMT-09の二代目となるBS2型。

MT-09

大きく変わったのは見て分かるようにデザインですが最初に纏めると

・フルLEDヘッドライト

・ショートテール

・片持ちアルミリアフェンダー

・シート形状の変更

・マフラーエンドの変更

・クイックシフター(シフトアップのみ)

・アシスト&スリッパークラッチ

・圧側減衰調整機能付き倒立フロントフォーク

・新規制に合わせ6馬力アップ

となっています。

MT-09

それにしたってデザイン攻め過ぎじゃないかと思うわけですが、これ本当はもう少し違うデザインでした。

しかしクレイモデル(粘土で造った等身大モデル)を目の前にした時に

「なんか違うよな」

となりデザインをやり直す事になったのですが、その際に

・エンジニア用のクレイモデル

・デザイナー用のクレイモデル

の2つを用意し各々が思う次期MT-09を削ったら、それを互いに交換してまた削っていくという作業を行った。

こうして両者の意見を擦り合わせていった結果この形になったんですが、自分の好きに削れるという事で守谷デザイナーいわく

「こうすればもっと過激になるねという感じで少し悪ノリになった。批判は甘んじて受け入れます。」

との事。※ミーティングにて

2017MT09

一気にワルっぽくなった理由にはこういう背景があったんですね。

テールも前にも増してとんでもない形になった事で前にも増してデザインコンセプトである異種混合(モタードとネイキッドのハイブリッド)感が凄い事になってる。

2018MT-09

ただ実はMT-09が異種なのは中身もそうなんです。

初代で話した通りMT-09はCP3(クロスプレーン三気筒)というエンジンを積んでいるクロスプレーンコンセプトのモデルなんですが・・・これ正確に言うと少し違うんですよね。

クロスプレーンコンセプトというのは簡単に説明するとピストンの往復運動中の速度差による慣性トルクを別のピストンで相殺する事で

「求められたトルクを求められただけ出す」

というのが狙い。

だからMT-07のCP2エンジンやMT-10のCP4エンジンはタイミングが直角になってる。

クロスプレーンクランク

ところがCP3エンジンは120°毎だから実は完全に相殺出来ているわけじゃない。だから完璧なクロスプレーンではない・・・んですが同時にこれにはメリットもある。

「スクリーム感(マルチ感)が生まれる」

という事です。

CP2やCP4ほどまではいかないものの一般的な四気筒などと比べると慣性トルクは遥かに小さく同じようなメリットがある一方で、点火タイミングが等間隔だから回すとモーターの様に駆け上がる四気筒っぽさも持ってる。

つまりMT09は見た目はトレールとネイキッドのハイブリッドであり、中身はフラットプレーンとクロスプレーンのハイブリッド。

2017MT-09カタログ写真

異種混合というコンセプトの通り、中も外も相反するものが混じっている

『正真正銘のキメラバイク』

と言えるかと。

頭のネジが外れている人が予想以上に多くて人気モデルとなったためか2018年からは豪華装備でスポーツ性を高めたMT-09SP/B6C型を追加販売。

MT-09SP/B6C

・OHLINS製リモートアジャスター付きリアサス

・KYB製SP専用3ウェイアジャスター倒立フォーク

・黒背景の反転液晶メーター

・専用塗装&グラフィック

・専用表皮シート

となっているモデルで差額は僅か10万円。

MT-09SPの変更点

コストが許されるならここまでやっていたんだろうなという雰囲気が伝わってくるモデルで、購入層もそれを感じ取っているのかSPに注文が殺到しているんだとか。

主要諸元
全長/幅/高 2075/815/1120mm
シート高 820mm
車軸距離 1440mm
車体重量 193kg(装)
燃料消費率 19.7m/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 845cc
最高出力 116ps/10000rpm
最高トルク 8.9kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 930,000円(税別)
[1,030,000円(税別)]
※[]内はMT-09SP/B6C
系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)

XSR900(B09/BAE)-since 2016-

XSR900

「The Performance Retroster」

MT-09プラットフォーム展開の最後にして最大の鬼門だったと思われるネオレオロ、ヤマハ的にいうとヘリテイジ版となるXSR900/B09型。

当初MT-09はTRACERとの二本立てでXSR900の予定は無かった。しかし欧州でネオレトロブームが起きていた事から造る事になった。

最初MT-09でネオレトロを造ると発表された時は開発陣にどよめきが走ったそう。

それもそのはずMT-09は

・アルミダイキャストの有機的なフレーム

・前傾した水冷三気筒エンジン

・コンパクトな車体

・リンク式モノサス

などなど、その道のカスタムビルダーならまず選択肢から外すであろう要素しかない造りだったから。

加えてビュンビュン回るスポーツ性能も持ち合わせていたので

「これはもう全力でカフェレーサーにするしかない」

として開発。

そうして出来上がったXSR900は1,042,200円とフルオプションMT-09ことTRACERとほぼ変わらない値段でした。

しかしTRACERと違ってなにか利便性を上げる装備が付いてるわけではない・・・じゃあ何にそんなコストを掛けたのかといえば見て分かるように外装。

XSR900細部

これでもかというほどアルミパーツを各部に散りばめている。

例えばXSR900のトレードマークになっていフレームのブランケットステー部分。

サイドカバーステー

ここは元々サイドカバーをつける部分で中にはヒューズボックスも入っているんですが

「ネオレトロにおいてそんなものは絶対に見せてはいけない」

という事で蓋を用意した・・・・だけじゃない。その蓋単純に隠すのではなくヘアライン&ブラックアルマイト加工でアクセントに変更。

更にはシートやらボルトの一本に至るまで魅せることを意識して造られている。ただXSR900で何よりも取り上げないといけないのがバイクの顔と言われているタンク。

XSR900とXS-1

前後に長くすることでハンドルやステップを変えることなく後ろ寄りに乗れる様にしたアイディア品なんですが、なんとこれ一つ一つ職人による手作業によるバフとヘアライン加工がされている。

つまり厳密に言うと一つとして同じタンクがないハンドメイド品なんです。

XSR900壁紙

結構いい値段がする犯人というか理由が分かってもらえたと思いますがこれが実にヤマハらしい。

「ヤマハらしいとは何か」

という話を少しさせてもらうと感動創造企業やRevs your Heartという言葉が有名ですが、もう少し細かく言うと

『発・悦・信・魅・結』

という五文字でヤマハは表しています。

発・悦・信・魅・結

そしてXSR900はこれが色濃く出ているからヤマハらしいという事。

『発:独創性に挑む』

非常識とすらいえるアルミフレームのカフェレーサー

『悦:感動を与える』

MT-09譲りのハイレスポンスな性能

『信:信頼性を信条とする』

少数精鋭のメイドインジャパン

『魅:魅了する』

カバーからボルト一本に至るまでデザイン

『結:お客様基点の価値観』

量販車でありながら手仕上げというハンドメイド要素

B90

大所帯の量販車メーカーでありながら設計から生産に至るまで職人気質を持っているヤマハらしいバイク。

ファミリーの中でも年間計画800台前後と数が出ない派生モデルだから得た技でしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2075/815/1140mm
シート高 830mm
車軸距離 1440mm
車体重量 195kg(装)
燃料消費率 19.4km/L
[19.7km/L]
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC三気筒
総排気量 845cc
最高出力 110ps/9000rpm
[116ps/1000rpm]
最高トルク 9.0kg-m/8500rpm
[8.9kg-m/8500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR9EA9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.4L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前16|リア45
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 965,000円(税別)
※[]内は2018年~BAEモデル

年次改良

2018年:出力見直し

2020年:ポジションランプ装着

系譜図
MT-09 2014年
MT-09/A
(1RC/2DR)
mt-09トレーサー 2015年
MT-09TRACER
(2SC)
XSR900 2016年
XSR900
(B09)
2017MT-09 2017年
MT-09/SP
(BS2/B6C)
TRACER900 2018年
TRACER/GT
(B5C/B1J)
2021mt-09 2021年
MT-09/SP
(B7N/BAM)
TRACER9GT 2021年
TRACER9GT
(BAP)