Z250(ER250C/D)-since 2013-

Z250

「唯一無二のクオーターストリートファイター」

Ninja250のストリートファイター版として登場したZ250。

中身は丸々Ninja250と同じかと思いきや実はそうでもなく、バーハンに変更されてるのはもちろんサスペンションを柔らかめにリセッティング。これはNinja250より更に街乗りに振っている証。

Z250

何度も言ってるようですが250もここまで来たかという感じですね。カウルの造形もそうだしZのトレンドの一つである盛り上がったタンクまでしっかり継承。

ところで系譜を追ってもらうと分かるんですが、Ninja250も元を辿ると1979年のZ250FTが始まり。

Z250比較

そして30年以上の月日を経って再びZ250。

まさしくリボーンなわけで。だとするとNinja250ではなくZ250の方がカワサキ250ccの本流とも言えなくもないですね。

更に小言が続きますが、カワサキの調査によるとZ250はNinja250より更にエントリーユーザー率が高いそうです。

誰かが言っててナルホドと思ったんですが

「フルカウルに興味を示すのはリピーター。ネイキッドに興味を示すのはニューカマー。」

という話。

Z250カタログ写真

カワサキが率先して出してきたZ250というバイクは

「もっとカワサキに興味を持ってほしい」

という思いの現れなんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2015/750/1025mm
シート高 785mm
車軸距離 1410mm
車体重量 168kg(装)
[170kg(装)]
燃料消費率 38.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 31ps/11000rpm
最高トルク 2.1kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54S)
後140/70-17(66S)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.2L
スプロケ 前14|後44
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 488,000円(税込)
[553,500円(税込)]
※[]内はABSモデル(ER250D)
系譜図
Z250FT1979年
Z250FT
(KZ250A)
GPZ250BeltDrive1983年
GPz250BeltDrive
(EX250C)
GPZ250R1986年
GPZ250R
(EX250E)
gpx250r

1988年
GPX250R/R2
(EX250F/G)

ZZR250前期1990年

ZZR250
(EX250H前期)

ZZR250後期

2002年
ZZR250
(EX250H後期)

Ninja250R

2008年
Ninja250R
(EX250K)

2013Ninja250

2013年
Ninja250
(EX250L/M)

Z250

2013年
Z250
(ER250C/D)

2018Ninja2502018年
Ninja250
(EX250P)

Ninja250(EX250L/M)-since 2013-

二代目Ninja250

「クラスを超越」

売れると見るやいなや競合車が出てくるのは歴史から見ても当然のことで、Ninja250Rの大ヒットにより小排気量スポーツバイクが群雄割拠に。

Ninja250デザインスケッチ

そんな中でカワサキが下した決断は、守りに入るのではなく追いつかれる前に引き離す事。

そうして誕生したのがこの二代目となるNinja250のEX250L型とEX250M型。M型はABS搭載モデルの事です。

2013Ninja250R

ZX-10Rの流れを汲むどっからどう見てもSSな見た目となりました。

一見すると中身の方は変わっていないように見えますが、実は大きく変わっています。

まずエンジンはシリンダー部をアルミダイキャストのメッキシリンダー化によりパワーを下げることなく圧縮比を落とし中低速トルクを向上。

2013Ninja250のフレームとエンジン

更にフレームも、このモデルから追加された300ccモデル(ABS無しのEX300Aと有りのEX300B)との併用を考え、材質をスチールからハイテンスチールへ変更することで剛性をアップ。

代わりにそれまで剛性メンバーとしてリジットだったエンジンマウントの一部をラバーマウントとすることで振動を軽減。それに伴いサスペンションも見直されています。

更に2015年モデルからはスリッパークラッチも搭載されました。

スリッパークラッチ

「250でスリッパークラッチなんて要らないでしょ・・・」

って思ってる人も多いと思いますが、スリッパークラッチというのは急激なシフトダウン時のホッピングを防ぐだけでなく発進時もサポートしてくれるんです。

詳細は「スリッパークラッチに対する誤解|バイク豆知識」で書いてるので割愛。

Ninja250ウィンターエディション

そして晩年にはラジアルタイヤに対応したWinterEditionも発売。リアは10mmアップの150mmにワイド化されています。

そんなNinja250ですが、スリッパークラッチより要らないと思えるのがヒートマネージメント技術とよばれるもの。

ヒートマネージメント技術

これは停車中にエンジンから来る熱風をライダーに当てないようにしている技術。

これこそ

「250では要らないでしょ」

と思うわけですが、実はこれ日本ではなくメイン市場であるインドネシアなど日本よりも熱い地域の人達の為の装備。

我々や欧米人は信号待ちで熱風を浴びるのは仕方がないと考えるのですが、アジアの人達にとっては我慢ならない事なんだとか。

まあ向こうは平均気温が30℃近いですからね。

Ninja250カラーバリエーション

そう、先代の時に言いそびれたんですがNinja250は日本向けロードスポーツではなく世界戦略車・・・というかアジア向けハイパフォーマンスモデルという立ち位置がメイン。

実際インドネシアでは一月で日本の一年分に相当する3000台以上を売り上げます。向こうの人にとってはこのNinja250が憧れのスーパースポーツなんです。

マレーシアの白バイ仕様

ちなみにこれはマレーシアで採用された白バイ仕様。

アジアの人がこれだけ買ってくれるから、250でこれだけのルックスと装備を持ったバイクが50万円ちょっとで買えるわけ。

「じゃあ日本はオマケなのか」

というと否定は出来ないけど、ちょっと違う。

田中邦博さん

この大事な二代目Ninja250の開発責任者はER-6などを担当された田中邦博さんなんですが、この方は学生時代にアルバイトでお金を貯めてZXR250を買ったのがバイク人生の始まり。

その時に自分が感じた

Ninja250ヘッダー

「初めてスポーツ車に乗った感動」

を今の日本の若者にも味わって欲しいという熱意を糧にNinja250を作ったとの事。

反響から見るにその熱意はちゃんと伝わったようですね。

主要諸元
全長/幅/高 2020/715/1110mm
シート高 785mm
車軸距離 1410mm
車体重量 172kg(装)
[174kg(装)]
燃料消費率 25.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 31ps/11000rpm
最高トルク 2.1kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.2L
スプロケ 前14|後44
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 583,000円(税別)
系譜図
Z250FT1979年
Z250FT
(KZ250A)
GPZ250BeltDrive1983年
GPz250BeltDrive
(EX250C)
GPZ250R1986年
GPZ250R
(EX250E)
gpx250r

1988年
GPX250R/R2
(EX250F/G)

ZZR250前期1990年

ZZR250
(EX250H前期)

ZZR250後期

2002年
ZZR250
(EX250H後期)

Ninja250R

2008年
Ninja250R
(EX250K)

2013Ninja250

2013年
Ninja250
(EX250L/M)

Z250

2013年
Z250
(ER250C/D)

2018Ninja2502018年
Ninja250
(EX250P)

エストレヤ(BJ250L) -since 2014-

エストレヤBJ250L

「カワサキのエストレヤが2013年で生産終了らしい」

そういう噂が広まり右往左往した人も多いのではないでしょうか。

蓋を開けてみたら生産終了なのは250TRでエストレヤはモデルチェンジというオチ。いやまあ250TRは残念ですが。

んで無事にFI化の流れを乗り切ったエストレヤが2014年モデルで何をしたかと言えばシート形状やマッピングの見直し、ヒートガードの装備、立体エンブレムなど・・・などっていうかこれくらい。

エストレヤシート

メインはモデルチェンジじゃなくてバリエーションの追加。エンジンガードやパニアケースなどオプションパーツが多数用意されるようになりました。

快適装備を全部載せた状態がコレ。

エストレヤツーリングスタイル

その名もエストレヤツーリングスタイル。うーん実にオッサン臭い(良い意味で)

しかしです。

これはこれで良いんですが、エストレヤというのは脚付きの良さから女性にも人気のある数少ないカワサキ車だったりするわけで、こんなオッサン臭い仕様がレディーにウケるわけないだろと思ってたらもう一つあるんですね。

エストレヤカフェスタイル

エストレヤのカフェスタイルです。

おお、何か不二子チャンが乗ってそう。不二子ちゃんの愛車はソフティルですが。って何かWLAになってるし・・・どうなってるんだ。

話が反れました。

エストレヤ

エストレヤの歴史を振り返ると2013年に20周年を迎えた非常にロングセラーなバイクなわけですが、人気があるバイクかと言われれば微妙なラインだったりします。

最初はエンジン新造までしたのにサッパリでした。

ゼファーで調子に乗ったカワサキがやらかしたとか言われる程。しかし数年でそのメグロジュニアを髣髴とさせるレトロなルックスや取り回しの良さから徐々に人気が出てきたわけで、販売台数は20年で5万台を超えています。

恐らくこの販売台数を聞いて驚かれている方が多いと思います。

エストレヤのロゴ

何故かといえば(失礼ながら)エストレヤというバイクは20年以上売っていますけど影がちょっと薄いですもんね。販売台数で見てもそれが見て取れてて、爆発的に売れた年というのが無いんです。

ただチョコチョコ売れる。今でもコンスタントに毎月100台ちょっと売れてる。んで気付いたら20年越えてたって感じ。

チョコチョコとか軽い感じで言いましたが凄いことなんですよ。名車というのはそういう持続的な売れ方をするもので、そんな売れ方をしているバイクは全社入れても数えるほどしかありませんし、商業的に言っても新型で一発ドカンと売れるより大成功なわけです。

開発者の三宅さんも最初コケた時はどうしたものかと思ったそうですが、年月を重ねてもコンスタントに売れ続けるのを見てエストレヤは間違っていなかったと確信したそうです。

エストレヤ

そんなエストレヤなんですが・・・実はバイク歴が浅い、若しくはバイクに乗ったこともない学生の声を多く取り入れて造られ、改良されてきた歴史があります。

つまり、よく若者が初バイクの選択肢として安いわけでもないエストレヤをチョイスするのにはこういうちゃんとした裏打ちがあるからなんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2075/755/1055mm
シート高 735mm
車軸距離 1400mm
車体重量 146kg(乾)
燃料消費率 31.5km/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 18ps/7500rpm
最高トルク 2.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/90-18(51P)
後110/90-17(60P)
バッテリー YTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
または
X27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
SE~SG級SAE10W40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.0L
交換時1.8L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前15|後38
チェーン サイズ520|リンク102
車体価格 518,700円(税別)
系譜図
BJ250B1950年
メグロ ジュニアシリーズ
BJ250B1992年
ESTRELLA
(BJ250B)
BJ250C1995年
ESTRELLA
CUSTOM/RS CUSTOM
(BJ250C/D/E/G/H)
BJ250F2002年
250TR
(BJ250F)
BJ250K2007年
250TR
(BJ250K)
BJ250J2007年
ESTRELLA
(BJ250J)
BJ250L2014年
ESTRELLA
(BJ250L)

H2SX(ZX1002A/B/D) -since 2018-

H2SX SE

「SUPERCHARGE YOUR JOURNEY」

H2のツアラーモデルになるH2SXとSE。

2017年型H2RがZX1000Yで、ZX-10RRがZX1000Z。アルファベット使い切ったから次から何になるのかなと思ったらZX1002A(無印)とZX1002B(SE)でした。まあそんな事はどうでもいいか。

H2とNINJA1000を掛け合わせた様な見た目で、価格とポジションとがH2よりも優しくなっています。

ポジション

ハンドルがH2よりも上げられてZX-14Rより優しいくらい。NINJA1000ほど優しくないしシート高は変わりません。

車体価格の方もH2が$28,000なのに対しH2SXは$19,000なので日本ではSXが210万円、SEが240万円・・・H2よりは現実的な価格ですね。

フルアジャスタブルサス、トラコン、クルーズドコントロールといったフル電子制御+スーパーチャージャーと考えれば、お買い得か。

シートレール一体のトレリスフレームはもちろん、エンジンもタービンもSX用に新たに設計されたもので、吸排気を絞ることで中低速の厚みと燃費を改善。といっても200馬力ですが。

車重が増えている事から見ても、各部のアルミを鉄へ置き換えて価格を抑えている様ですね。

コンフォートシート

装備としては乗り心地の良さそうなコンフォートシートやハンドルグリップ、ハイプロテクションスクリーンなどツアラーとしてのツボは抑えてある。

オプションはフルフェイスがスッポリ入る28Lパニアケース、そしてなんとセンタースタンド。

H2SX/SE

豪華版であるSEにはそれに加えて

・フルカラーTFTメーター

・コーナリングLEDライト

・ハイスクリーン

・クイックシフター

などを装備しています。

H2SXとSEの違い

サイドカウルに付いているのはウィンカーではなくLEDライトです。

そして2019年からはSEの豪華版としてH2SX SE+(ZX1002D)も登場。

H2SX SEプラス

SEに加えSHOWAと共同開発した電子制御サスペンションKECSと最新のブレンボキャリパーを装備したモデル。

他にもスマホ連動アプリRIDEOLOGYへの対応なども加わっています。

それにしてもツアラーまでもがクイックシフターの時代なんですね。

クイックシフターっていうのはクラッチ操作無しでギアチェンジ出来る装備。しかもH2SX SEに付いてるのはアップダウン両対応の良いやつ。

スーパーコンピューター京

ところで唐突ですがバイク乗りの間でKといえばKAWASAKIですよね。

しかしIT業界でKといえば筐体数864台、CPU9万個を並列に連結しているスーパーコンピューター京です。

スーパーコンピューター京

1秒間に1京回の計算をする事から

「京(K computer)」

と名付けられました。

家庭用のハイスペックパソコンで200年以上かかる計算を1日でやってのけるんだとか。

それがなんだって話ですが、スーパーコンピューターは計算速度が段違いなら消費電力も段違い。

比較的エコとされる京ですらフルロードさせると最大で約1万3000kw(約4,500世帯分の電力)が必要。

そんな膨大な電力をどうしているのかというと、半分は関西電力から、そしてもう半分は実は川崎重工業のガスタービンが担っているんです。

PUC60内部

6000kW級の発電機二機が京を支えています。

節電と片方が切れても大丈夫なように交互運転してるわけですが、凄いのはそれだけじゃないんです。

このガスタービン、UPS(無停電電源装置)の役割も備えている。

PUC60

万が一、何らかの理由で電力が届かなくなってもカワサキのガスタービンがフル稼働して保護。

最悪の場合このガスタービンだけで運用できる様になっているというわけ。設計ももちろん川崎重工業。

「H2関係ないじゃん」

と言われそうですが実はそうでもないんです。

スーパーコンピューター京は2012年から共用運用、つまり

「京の力が必要なら審査の上で使用許可を出す」

という感じで公募が始めました。

そんな中で京の発電部分を担ったコネを活かしたのか川崎重工業は見事に選定。

そして京を使って何をしたかというと

カワサキガスタービン

「タービンの気流解析」

を行なったんです。

究極の空気圧縮機を目指し、通常の何倍もの速さでシミュレーションを熟すスーパーコンピューター京でそんな事をやっていた。

H2SXカタログ写真

そう、2015年に登場したH2のペラは京を使ってシミュレーションした世界最高の発電効率技術を持つガスタービン部門の技術。

つまりH2の中にはスーパーコンピューター京の力も含まれているというわけ。

これが本当のKKコンビ・・・なんちゃって。

主要諸元
全長/幅/高 2135/775/1205mm
[2135/775/1260mm]
シート高 820mm
車軸距離 1480mm
車体重量 256kg(装)
[258kg(装)]
{262kg(装)}
燃料消費率 17.9km/L
※WMTCモード値
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 200ps/11000rpm
最高トルク 14.0kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55ZR17(75W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
SILMAR9E9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.5L
フィルター交換時4.3L
スプロケ 前18|後44
チェーン サイズ525|リンク120
車体価格 1,850,000円(税別)
[2,220,000円(税別)]
{2,570,000円(税別)}
※[]内はSE(ZX1002B)
※{}内はSE+(ZX1002D)
系譜図
マッハ31969年
500SS MACH3
(H1)
マッハ41972年
750SS MACH4
(H2)
H22015年
Ninja H2
(ZX1000N/X/ZX1002J)
H2R2015年
Ninja H2R
(ZX1000P/Y)
H2SX2018年
Ninja H2SX/SE
(ZX1002A/B/D)
zh22022年
Z H2/SE
(ZR1000K/L)

H2R(ZX1000P/Y) -since 2015-

H2R

クローズド専用タイプになるH2R。

H2の200馬力に対して310馬力と一気に100馬力以上のアップ。いやアップというかH2Rの上をカットしたのがH2と言ったほうが正しいです。

なんでカットしてるのかって言うと騒音は勿論なんだけどそれより耐久性の問題で、H2に対しこのH2Rはクローズド専用って事でその耐久性を無視してる。

H2Rディメンション

だからH2Rはマニュアルによると

「8000rpm以上での走行時間が15時間に達する毎にオーバーホール」

だそうです。

さぞスペシャルなエンジンをしているんだろうなと思ったんですが、意外なことにH2とH2Rの主要部品はカムとクランクが違うくらいでほとんど同じ。

H2Rタービン

H2から+100馬力の過給というのは、それだけ負担があるということですね。

そんなH2Rの最大の特徴はやっぱりウィング。

始まりはZZR1100のテールカウルだったでしょうか。それから12Rのサイドカウルに採用され、H2Rで遂にアッパーカウルまで付いた。

H2Rフェイス

クローズド専用なだけあって遠慮なく伸びてます・・・

「ここまで来ると飛べそうだな」

なんて思ったら後のカワサキモーターサイクルフェア2017でこんなCGが。

H2-AIR

「H2-AIR Type-1」

航空宇宙部門が手がければ本当に飛べるみたい・・・冗談に聞こえない悪ノリですね。

H2Rサイドフェイス

話を戻すと、H2Rはアッパーカウルは勿論のことインナーパネルまでもカーボンを使い、触媒も保安部品も取っ払ったおかげでH2より20kg以上軽い216kgとなってます。

ちなみに斜めにカットされたフルチタンサイレンサーは直管だから120dbと物凄く音がデカい。

H2Rサイレンサー

飛行機のエンジンを間近で聞くのと変わらず会話も出来ないレベルです。

だから公道はおろかサーキットでも場所によっては走れない。鈴鹿や茂木も無理じゃないかな。

それじゃ駄目だろと思うのですが

「引っ掛かる時は社外に変えてね」

との事・・・いや逆ですよね普通。

そんな川重の結晶の様なH2Rですが実は唯一、川崎重工グループ外で開発に多大な貢献をしたメーカーがあります。

ブリジストン

皆さんご存知ブリヂストンです。

カワサキからH2/H2R製作にあたって

「最高時速350kmに耐えるタイヤが無いから作って」

とお願いされたんです。

BS開発部の青木さんいわく、タイヤへの負担というのは速度に対して二次曲線的に挙がってしまう特性。だから300km/hと310km/hでもタイヤへの負担は全く違う。

それを踏まえた上でもう一度。

H2Rアタック

「最高時速350kmに耐えるタイヤを作って」

なんて言われたら目ン玉が飛び出るほど驚いても無理がない話。

「Kawasakiは一体何を・・・」

となる。MotoGPとほぼ変わらない速度レンジなわけですから。

でもソコは流石ブリヂストンと言うべきでしょうか、MotoGP用のタイヤ設備でMotoGPで培った技術を元にH2開発チームに飛び入り参加し開発。

H2Rタイヤ

そして出来上がったのがレーシングバトラックスV01というクローズド専用タイヤ。

しかも市販品よりも先に作られた先行品でH2R専用のオーダーメイドタイヤです。

ローレット加工ホイール

時速350kmが如何に厳しい域なのかをローレット加工(リムの滑り止め)が表していますね。

ちなみにH2Rも2017年にマイナーチェンジが入りZX1000Y型となりました。

2017年型H2R

内容はH2と同様なので割愛します。

ところでH2/H2RといえばTeam38という言葉を目にした事があると思います。

チーム38(サンパチ)

このTeam38(サンパチ)は1975年にカワサキ社員が自主的に集まって結成された歴史あるチーム。

名前の由来は拠点が川崎重工の第38工場だから。

カワサキが84年にワークス撤退を決めた際も

GPZ750Rチーム38

「バイクメーカーがレースを止めてはいけない」

と自社のバックアップやお金が無い中でもプライベーターとして参戦し続け、ワークス復活までライムグリーンを途絶えさせなかった熱いチーム。

チーム38メンバー

H2/H2Rはそんな熱い人達が中心となって作ったバイク・・・ですが、何故にここまで突き抜けたバイクを作ったかというと

「最近のバイクは高性能だけど面白くない」

という声が多く聞かれるようになったから。

だからこそのスーパーチャージャー。どの速度域からでも、蹴られるような、乗り手を振り落とすような加速を持たせたかった。

未亡人製造バイクと言われ今も愛されるマッハ3の様なバイクを作ろうとなった。

H2/H2Rはラップタイムを縮める事が目的のSSではありません。フレームもヘナヘナだし従順でもない。

川崎重工製H2

でもそれでこその”H”なんです。

いつの間にか消えてしまったジャジャ馬バイクの再来というわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2070/770/1160mm
[2070/850/1160mm]
シート高 830mm
車軸距離 1450mm
車体重量 216kg(装)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 310ps/14000rpm
最高トルク 16.8kg-m/12500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/600R17
後190/650R17
バッテリー
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
SILMAR9B9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.0L
交換時3.9L
フィルター交換時4.4L
スプロケ 前18|後42
チェーン サイズ525|リンク116
車体価格 5,400,000円(税込)
[5,940,000円(税込)]
※[]内は17以降(ZX1000Y)
系譜図
マッハ31969年
500SS MACH3
(H1)
マッハ41972年
750SS MACH4
(H2)
H22015年
Ninja H2
(ZX1000N/X/ZX1002J)
H2R2015年
Ninja H2R
(ZX1000P/Y)
H2SX2018年
Ninja H2SX/SE
(ZX1002A/B/D)
zh22022年
Z H2/SE
(ZR1000K/L)

H2(ZX1000N/X) -since 2015-

H2

「何の制約も無しに自由に二輪車を作れるなら何を作るか」

Ninjaシリーズ30周年を記念して発売されたH2とH2R。

カワサキが出した答えはスーパーチャージャー付きのバイクでした。

H2サイド

「直四でトレリスフレームにプロアームに星形ホイール」

これだけ聞くとアグスタF4かと思いますね。

「カワサキなのに何故バックボーンでもツインスパーでもなく、トレリスフレームなんだ」

という所なんですが、これだけのパワーを真正面から受け止める事は不可能、だから”耐えるアルミ”ではなく”撓って吸収する鉄”のトレリスフレームで行くと決めたようです。

H2吸気口

専用設計で剛性をフルオーダーメイドのように細かく設定出来る事や、排熱やダクトを考えると塞いでしまうツインスパーよりもトレリスの方が相性が良いという事もあったかと思います。

まあそれより何より量販車初となるスーパーチャージャー。

車では聞き慣れた技術だけど、バイク一辺倒な人はスーパーチャージャーって聞いてもピンと来ない人も居ると思うので簡単に説明すると。

H2Rスーパーチャージャー

エンジンの最大の課題の一つは吸気なわけですが、如何に効率よく空気をエンジンに送り込めるかが大事なわけで。

最近のハイパワー車では当たり前となった大きく口の空いたラムエアダクトも空気を吸って走行風を利用して空気を無理やり送り込む為にある。でも当然ながら走行風も相当な強さのものが必要なので効果があるのは200km/h以上出てる時だけ。

「強制的に押し込めるようにタービン(コンプレッサー)を付ければいい」

っていうのがターボチャージャーとスーパーチャージャー。

H2タービン

ターボはエンジンから勢いよく出て行く排気ガスの力を使ってタービン(プロペラ)を回して空気を送り込む方法。

排気ガス(排気圧)って燃焼運動において一番無駄にしてるエネルギーだったりします。

ただ排気ガスを利用しているだけあってどうやってもターボは

吸気

燃焼

排気

タービン

ターボ吸気

となるのでタイムラグが出来てしまう。

対してこのH2でも採用されてるスーパーチャージャーっていうのはピストンが付いているクランクの回転を使って回す方法。

H2スーパーチャージャー

ターボの様に排気ではなくエンジンから直接動力を取ってるので

吸気

燃焼(クランク)

タービン

ターボ吸気

となるのでラグが少ない。

その変わり捨てていた排気エネルギーを使っているターボと違い、クランクから取っているので効率はターボと程は良くない。

ただバイクに限って言うと間違いなくスーパーチャージャーの方が相性が良いでしょう。アクセルワークでタイムラグがあるというのはバイクにとっては致命的。

タービンを回すためにエキゾースト(排気)をすぐに収束する必要があって糞詰まりしてしまうターボと違って排気系が自然吸気と同じ様に出来る事も大きいです。

GPZ750ターボ

ターボについては>>750TURBOをどうぞ

ただし、恐らく車に詳しい方ならH2のスーパーチャージャーを見て疑問に感じると思います。

一般的にスーパーチャージャーというのは、ローターを回転させて圧縮する容量形(リショルム式やルーツブロア式)が基本。

コンプレッサー

ところがH2のコンプレッサーはペラを回し遠心式で圧縮する遠心形なんです。これ本来ながらターボで使われる方法。

H2スーパーチャージャー

なんでこんな事をしてるのかというと、自動車の多く採用されている容量式は嵩張って重い上に、クランクの高回転についていけずレスポンスが落ちるから。

だからペラで圧縮する回転式にした。

簡単に言っていますがクルマと違いバイクはクランク自体が超高回転。H2Rでは16000rpmまで回ります。

そしてこのペラはその更に8倍速、最大13万回転/分で回る。これを達成させるにはミクロン単位の精度を出さないといけない。

ガスタービンエンジン

これはカワサキが高いガスタービン技術を持っていたから可能だったこと。

「カワサキではなく川崎重工(全体)の製品」

と言っているのはこういう所からなんですね。

H2インペラ

そんなターボみたいなスーパーチャージャーなんですが、更に凄い事があります。

空気は圧縮すると物凄く熱くなる性質があります。それをエンジン内で更に圧縮すると更に高温になり、意図しない異常燃焼(ノッキング)の問題が起こる。

熱くなるほど膨張するので吸気充填効率も悪くなります。

インタークーラー

だからターボもスーパーチャージャーも圧縮した空気をエンジンに送る前にインタークーラーという一旦冷やす冷却器を通すのが一般的。

車のボンネットにある郵便ポストとかもですね、昔はそれがターボの証でした。

WRX

話を戻すと、H2にはその大事なインタークーラーが付いてないんです。

正確に言うと

“付けなくても冷やせるようにしている”

です。

H2エンジン

普通ならばプラスチックを使う部分であるエアクリーナーボックスやファンネルをH2ではアルミ製にしている。

熱伝導率が高いアルミを使うことで

吸気口

チャージャー

アルミインテーク(ここで熱を奪う)

アルミファンネルネット(ここでも奪う)

エンジン

となってるわけ。

H2エンジンサイド

これにシリンダーヘッド周りの冷却経路を使った冷却も加わっています。

本当にそれで大丈夫なのかと一部で話題となりました。当たり前ですが、本当に大丈夫でした。

H2サイドビュー

徹底的な吸気効率を上げることで熱を篭もらせない様にしているそうです。アンダーカウルを付けなかったにも、熱を篭もらせないためなんだとか。

当たり前ですが、凄いのはエンジンだけじゃありません。

H2フェイス

他にもまだまだ色々あるんですが、もう一つ挙げるとするならカウル造形。

これは航空宇宙部門の技術に基いて設計したもの。

リバーマーク

チャージャーのガスタービン技術もそうですがH2が凄いのは

「部門に作らせた」

ではなく

「二輪に技術移管させて作った」

つまり、川崎重工の技術を全て二輪部門に集約して作ったというのが凄いんです。

H2広告

川崎重工の技術力とブランド力を知らしめる為のバイクであり、川崎重工の技術自慢バイクでもあるわけです。

生産ももちろん少数または一人一人が一台を担う手作業での組み立て、部品の選別も手作業です。

これで3,024,000円(2017年時点)。安くは無いけど、決して暴利ではないかと。

2017年にはマイナーチェンジが入りZX1000X型に。

ちなみに下のの写真はアッパーカウルがカーボン仕様となっている限定モデル。

H2カーボン

目立つ変更点としては

・5馬力アップ
・KCMF(コーナリングマネジメント制御)
・OHLINSリアサスペンション
・アップダウン両対応クイックシフター
・メーターやエンブレムの変更

といったところです。

更に2019年モデルでは再びモデルチェンジされZX1002J型に。

ZX1002J

・231馬力にUP
・ブレンボキャリパーをM50からStylemaに
・自己修復塗装
フルカラーTFTメーター
・フルLED化
・RIDEOLOGYアプリ対応
などなどの変更が入っています。

なんだかモデルチェンジの流れが完全にスーパーカーと同じですね。

主要諸元
全長/幅/高 2085/770/1125mm
シート高 825mm
車軸距離 1445mm
車体重量 238kg(装)
燃料消費率 {15.3km/L
※WMTCモード値}
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 998cc
最高出力 200ps/10000rpm
[205ps/11000rpm]
{231ps/11500rpm}
最高トルク 14.3kg-m/10000rpm
[13.6kg-m/10000rpm]
{14.4kg-m/11000rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後200/55ZR17(78W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
SILMAR9B9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量5.0L
交換時3.9L
フィルター交換時4.4L
スプロケ 前18|後44
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 2,500,000円(税別)
[3,100,000円(税別)]
{3,300,000円(税別)}
※[]内は17以降(ZX1000N)
※{}内は19以降カーボン(ZX1002J)
系譜図
マッハ31969年
500SS MACH3
(H1)
マッハ41972年
750SS MACH4
(H2)
H22015年
Ninja H2
(ZX1000N/X/ZX1002J)
H2R2015年
Ninja H2R
(ZX1000P/Y)
H2SX2018年
Ninja H2SX/SE
(ZX1002A/B/D)
zh22022年
Z H2/SE
(ZR1000K/L)

MT-07(B4C)-since 2018-

MT-07

「Dark Attraction」

2018年モデルにあたるMT-07のB4C型。

遂にヘッドライトレンズまでMT-09から拝借かという顔になり、サイドのタンクカバーやテールライトも合わせてスラント系に変更。

新旧MT-07

中身の方はサスペンションやタンク前まで伸びたシート形状などの小変更のみとなっています。

新旧MT-07リア

要するに化粧直しに近いから正直これと言って書くことが無いのでMT-07のコンセプトについて少しお話を。

MT-07は大型MTシリーズで唯一のスチールフレームバイク。XJR1300が生産終了になり今ではヤマハの大型スポーツバイクで唯一に。

これが何故かと言うとヤマハはアルミにとっても力を入れてるから。

CFアルミダイキャスト

ヤマハは大きい物も作れる大規模なアルミダイキャスト設備を自前で持っており、自動車のエンジンヘッドやサージタンクなど他業種にも供給している。

つまりヤマハにとってアルミというのは内製の強みを活かせる得意分野。だからスポーツバイクがアルミだらけなのは当たり前なわけ。

にも関わらずMT-07がスチールフレームなのはプロジェクトリーダーの白石さんが”絶対にスチールフレームで行く”と決めていたから。

MT-07プロジェクトリーダー

この白石さんは元々サンダーキャットやYZF-R6などガチガチアルミフレームなミドルSSを好んで乗っていたんですが、峠やサーキットなどでは最高のファンライドを味わった一方で、日常でファンライドを体感出来ないことに悩みを抱いていた。

それはモード切り替えや姿勢制御などが当たり前になりだした近年になると更に強く考えるように。

そんな時に任されたのがこのMT-07プロジェクト。

モヤモヤしていた思いを具現化させるチャンスだとして導き出した答えが

MT-07ブラック

「普通の人が普通に楽しめるバイク」

そうして誕生したのが、フロント荷重を重視していない車体バランスに、ハイテンスチールにも関わらずアルミの足元にも及ばないヘロヘロなフレームを持ったMT-07です。

MT-07メインフレーム

そんなヘロヘロフレームに対して

「剛性が低すぎる」

という声を聞いたりします・・・が、それこそMT-07が狙ったこと。当たり前ですがヘロヘロなのはわざとです。

2018MT-07ヘッドライト

そもそもフレームというのはアルミにしろスチールにしろ、適切なスポーツ走行をすると撓るもの。

つまりMT-07でフレームの撓りを感じるのは、慣れないレベルですら無意識の内に適切なスポーツ走行をしていた証。

そんな撓りに不安や不信を持つのは、簡単には撓らず、また弾くように戻る高剛性アルミフレームに慣れすぎて麻痺しているだけ。

2018FZ-07

大型バイクでフレームの撓りを感じ取れるほどスポーツ出来るバイクが、乗り手主導でスポーツ出来るバイクが今どれだけあるかって話。

その狙いは日本のみならず海外でも見事に当たり、MCNという英語圏最大のバイク情報誌の2014年最優秀バイクを筆頭に様々な賞を獲得しました。

国際サーキットで膝擦りながら

「MT-07は最高だ」

と評価されたわけじゃないですよ。

そんな高負荷に耐えられるフレームは持ち合わせていない。

山を幾つも越える旅をして

「MT-07は最高だ」

と評価されたわけでもない。

長距離を走れるほど落ち着いたハンドリングではありません。

2018MT07

そこらへんをテキトーに走って

「MT-07は最高だ」

と評価されたんです。

何が言いたいかというと、百戦錬磨のプロをも唸らせたMT-07のスイートスポットは

「普通の人が使う普通の中にある」

ということ。

そんな普通の人が普通に乗って最高に楽しめるMT-07ですが、高く評価された事はもう一つあります。

2018MT-07壁紙

「普通の人が買える値段で売っている」

という事です。

主要諸元
全長/幅/高 2085/745/1090mm
シート高 805mm
車軸距離 1400mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率 23.9m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 720,000円(税別)
※国内モデルは18年から
系譜図
MT-07 2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR700 2016年
XSR700
(B34)
2018MT-07 2018年
MT-07
(B4C)

XSR700(B2G)-since 2016-

XSR700

「Urban Casual Retro-ster」

MT-07のスポーツヘリテイジ(伝承)版となるXSR700。

基本的にはMT-07そのままで、アルミのワイドテーパーハンドル採用でハンドルを手前の高い位置に設定。

シートも質感とボリュームのあるレーザーダブルシートとなりシート高が3cmアップ。

MT-07とXSR700

ハンドリングに落ち着きを持たせる為にキャスター角を若干寝かせてあるのでホイールベースも5mmですが伸びています。

見た目の方も各部ステーやカバーをアルミ製、タンクカバーに至っては職人手作業によるバフ仕上げの物を付ける等など

XSR700カタログ写真

「金が無いぶん知恵を出そう」

というMT-07の裏テーマは何だったのかと思うのような造りに・・・まあその分89万9,640円と20万円近く値段も上がってるわけですが。

ところでXSRもMTと同じように兄貴分のXSR900が居るんだけど、これまた似て非なるヘリテイジに仕上げています。

XSR900がカフェスタイルなのに対し、XSR700はスクランブラースタイル。

XSR700

というのが公式の説明なんだけど、正直それほど違いが・・・でも似て非なるのは確かです。似て非なるのは見た目ではなく中身のほう。

これはベースのMTに依存している事が由来なんだけど、XSR900は見た目に反してアルミフレームにトラコンやモード切り替え等の最先端技術が散りばめられた俗にいうネオレトロ。

イギリス版XSR700

対してXSR700はMT-07を見ても分かる通り、特に変わった物は付いておらず何の変哲も無いスチールフレームというオーソドックスな作り。

これが何を意味するのかというと

「カスタムベースにもってこい」

ということ。

だからメーカーも色々と考えて造っているんですね。その最もたる部分がシートフレーム。

XSR700のフレーム

メインフレームが中途半端な所で終わっており、シートフレームを被せるようにボルトオンする形になっている。これはMT-07にも付いていないXSR700だけの構造。

何でわざわざこんな事をしているのかというと、カスタムの定番ながら後には引けなくなるシートフレームのぶった斬りをしなくてもいいように。

XSR700シートフレーム

つまりシートフレームが脱着式になってるんです。

XSR700は見た目だけでなく中身までもヘリテイジであり、カスタム事情に最大限配慮した最新カスタムベースというわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2075/820/1130mm
シート高 835mm
車軸距離 1405mm
車体重量 186kg(装)
燃料消費率 23.9m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58V)
後180/55ZR17(73V)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 833,000円(税別)
※国内モデルは18年から
系譜図
2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR7002016年
XSR700
(B34)
20182018年

MT-07(B4C)

MT-07(1WS/1XB/BU2) -since 2014-

MT-07

「COOL URBAN SPORT」

兄貴分であるMT-09から少し遅れて登場したMT-07。

ABS無しが1WSで、ABS有りが1XBとカラーコード枯渇から2017年のみBU2。

ちなみに09と07は統括する人こそ同じだったものの、開発チームは別々だったから

「”今までにない面白い物(※MTのテーマ)”を具現化させるのはウチだ」

と互いに火花を散らしながら開発していたんだとか。

MT-07

MT-09の方が先に出た上に珍しい三気筒だった事から話題を持っていかれた感がありますが、このMT-07も負けず劣らずな物を持っている。

何よりまず挙げられるのが新開発のクランク角270度並列二気筒エンジンですね。

CP2エンジン

ヤマハ自身もCP2(クロスプレーン二気筒)と言っている通り、YZF-R1のCP4(クロスプレーン四気筒)を真っ二つにしたようなエンジンで点火タイミングはVツインと同じ。

まあクランクとか点火タイミングについては「二気筒エンジンが七変化した理由|バイク豆知識」で書いたので割愛しますが

270度クランクのトルク

”二気筒=ガサツに回る”という先入観を持って乗ると、点火タイミングはもちろんクロスプレーンによる慣性トルク(回転ムラ)の無いスムーズなトルクに肩透かしを喰らいます。

昔を知っている人は市販車初の270度クランクパラレルツインのTRX850やTDMを思い出す人も多いかと。

TRX850

「現代パラツインスポーツのパイオニアTRX850|系譜の外側」

ただこれらのバイクとMT-07は点火タイミングが同じだけで全く違うエンジンです。

シリンダーのB/S比や前傾や材質も勿論そうなんだけど一番分かりやすいのが振動を打ち消すバランサーで、TRXやTDMが二本だったのに対しMT-07は一本になっています。

MT-07エンジン

簡単に言うと二本だと振動を完全に消せるけど、一本にすると少し残る。

なんでわざわざ一本減らしたのかというと、MT-07の開発においての最重要項目が

”徹底的に軽く作ること”

だったから。

MT-07サイド

つまり軽さを取るためにバランサーを一本抜いたわけ。

当たり前ですが抜いた事によって消せなかった振動もそのままではなく、クランクとのバランスを計算し心地よく残すよう調整。

こうするためにヤマハが定めたクランクの最低重量より軽くすることになり猛反対にあったそう。結局は押し通したみたいですけどね。

2014YAMAHAMT-07

だからMT-07は予想を遥かに超えるほどタコメーターがビュンビュン動きます。

バランサーを抜いた理由は軽量化のためと開発者(小林さん)も言っているんですが、当然これはコスト面もあると思います。

実際MT-07は装備重量で179kgという圧倒的な軽さだけでなく

「税込69万9840円(※初年度)」

という破格のような安さも持っていた。このおかげで2015年の大型部門で販売台数一位を記録しています。

1WS

なんでMT-07がコレほど安いのかというと、トラクションコントロールや電子スロットルや走行モード切り替え等の最先端デバイスを付けなかった事。

そしてもう一つはアルミやチタンなどの高価な素材を極力使っていない事です。

2016年カラー

・・・しかしここで疑問に思う人も多いと思います。

何故アルミやチタンを使うかというと

「軽くする事が出来るから」

ですよね。

にも関わらずMT-07は装備重量で179kgとかなり軽い。これには”今までに無いもの”というテーマとは別の裏テーマが関係しています。

ヘッドライトとテールライト

それは車体価格を抑えないといけない事から生まれた

「金が使えないぶん知恵を使おう」

という要するに創意工夫でコストを抑えようというテーマ。

マウントプレート

それが見て取れるのが例えば公式でも説明されているサス、マフラー、ピボット部のマウントプレートの一体化。

MT-07ハンドル周り

他にもスイッチボックスなど流用できるものはMT-09から拝借し、デコンプ(圧縮を少し逃がすことで始動性を上げる)機能を設けることでバッテリーとセルモーターをダウンサイジングなどなど。

単に安物にグレードダウンするのではなく知恵と工夫を用いることで、軽く且つ安く造ることが出来たわけ。もちろんグローバル展開によるスケールメリットも大きいですけどね。

2015年カラー

車体価格の割に安っぽく見えないのが何よりの証拠なんですが、実はこれにもちゃんと配慮があるです。

その配慮が特に現れている部分が、アルミ素材の凝った形をしたピボットカバーやクランクケースカバー。

MT-07リアビュー

そして明らかに不相応なスイングアームと180/55というワイドタイヤ。

これらはハッキリ言ってデザイン有りきの物。

これらを採用しなければ車体価格はもっと抑えられたし知恵を絞り出す苦労も緩和されるのに譲らなかった。

MT07

「眺める楽しさも絶対に必要だ」

とプロジェクトリーダーの白石さんが考えていたからです・・・が、少し別の効果も持ったと思うんですよ。

MT-07がなんで売れたかって言うとやっぱり乗って楽しかったから。

長くなったので2018年型で話しますがMT-07が誰のために作られたバイクかというと

「何処にでも居る普通のライダー」

です。

MT07のターゲット

でもだからといって見るからに安っぽいと”普通のライダー”は乗る前から安物バイクという結論を出し選択肢から外してしまう。

MT-07は価格を少し上げてでもデザインを取ったから門前払いされることなく、実際に乗ってくれて感動する普通のライダーが多かった。

だからこれだけ売れたんではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2085/745/1090mm
シート高 805mm
車軸距離 1400mm
車体重量 179kg(装)
[182kg(装)]
燃料消費率 24.1m/L
※WMTCモード値
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 689cc
最高出力 73.4ps/9000rpm
最高トルク 6.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.0L
交換時2.3L
フィルター交換時2.6L
スプロケ 前16|リア43
チェーン サイズ525|リンク108
車体価格 648,000円(税別)
[694,000円(税別)]
※[]内はABSモデル(1XB/BU2)
系譜図
2014年
MT-07/A
(1WS/1XB/BU2)
XSR7002016年
XSR700
(B34)
20182018年

MT-07(B4C)

MAJESTY250(4D9後期) -since 2012-

DT-1

現行の4D9後期

ものすごく釣り上がった眼は影を潜めブラックアウトされた比較的大人しめな二眼に戻った。
アジャスターレバーになったこと以外は機能的に目立った変更点はなく、その分うなぎ登りだった価格も据え置き。ビッグスクーターブームが去った事の影響かな?

先述の4D9前期からそうだけどマジェスティは他社のビッグスクーターに比べ非常に地味なメーターをしてる。

メーター周り

若くなりすぎた客層年齢を上げる目的だろう。元々がマジェスティは「大人のスポーツセダン」というコンセプトだったしね。

でもまあ、だとすると個人的に解せない部分がある。それはマフラー。

現行マジェスティ

もうなんか「自分で好きなのに換えてね」って言ってるような原付並みの貧弱さ。グラマラスなボディに対しマッチしてない・・・

ビッグスクーターが他のバイク乗りに嫌われる原因はATだからとかじゃなく、JMCA非認定マフラーを始めとする違法改造率の高さだと個人的には思う。

爆発的に人口が増えモラルハザードが起こってしまったのは仕方のない事なのかもしれない。
でもその問題に対しホンダもヤマハもスズキも販売優先で見て見ぬふりをしてきた感は否めない。(警察もそうけどね)
そんな違法マフラー問題を放棄してると言われても仕方ない作り。
少なくともビッグスクーターのパイオニアであるマジェスティがすることじゃないと思うんだけどなあ。コストの兼ね合いもあるんだろうけど、もうちょっと何とかならなかったものか。

と、まあ個人的見解はここまでにして。最後に数字で語るとマジェスティはもはや後から追ってきたフォルツァに販売台数で負けてしまっています。

ヤマハはビッグスクーターというジャンルを生み出したマジェスティをどうするでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2175/770/1185mm
シート高 700mm
車軸距離 1550mm
車体重量 188kg(装)
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 水冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 19ps/6500rpm
最高トルク 2.2kg-m/5500rpm
変速機 Vベルト式
タイヤサイズ 前110/90-13(55P)
後140/70-12(65L)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CPR7EA-9
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/ベーシック
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.7L
交換時1.5L
フィルター交換時1.7L
スプロケ
Vベルト 4D9-17641-00
車体価格 669,000円(税別)
系譜図
SG01J1995年
マジェスティ(4HC)
SG03J前期2000年
マジェスティ(5GM)
SG03J2002年
マジェスティ/C/ABS(5SJ)
SG15J2004年
グランドマジェスティ(5VG)
SG20J前期2007年
マジェスティ(4D9前期)
SG20J現行2012年
マジェスティ(4D9後期)

【関連車種】
フォルツァの系譜スカイウェイブ250の系譜