NZ250/S(NJ44A)-since 1986-

NZ250

「URBAN RUNABOUT」

RG250ガンマやGF250などにより2stレーサーレプリカ250や四気筒250熱狂時代が訪れていた1980年代半ばにスズキがポンっと出してきた全く違う流れのNZ250/NJ44A型。

NZ250エンジン

このモデルはトレールバイクDR250Sに積まれていた空冷OHCエンジンの上を丸ごと新造し

・SACS(油冷システム)
・TSCC(DOHC多球型燃焼室)

で33ps/10000rpmというゴリゴリのチューニングを施したエンジンを、125ccかと思うほど細く短いバックボーンフレームそれも丸パイプとハイテン鋼角パイプのハイブリッドになっている非常に凝ったものへ積んだシングルスポーツ。

NZ250のディメンション

リアサスペンションもEフローターという当時としては最新テクノロジー。おまけに(当時としては)軽量化を考えてかホイールはキャストではなくアルミリムのスポークホイールという一風変わった組み合わせでした。

こちらはハーフカウルを付けたバージョンになるNZ250S。車重が+2kgになっていること以外は基本的に同じ。

NZ250S

そもそもなんでこんなバイクを出したのかと言うと、レーサーレプリカブームだったとはいえ一方で

「スマートに町を走れる250が欲しい」

「(足つきなどや車重面で)優しい250が欲しい」

という声なき声ならぬ声なき需要が一定数あり、各社からそういったモデルが出ていたから。

それに負けじとスズキも出した面が強いんですが、乾燥重量118kgな事からも分かる通り気軽に乗れるというより

『軽すぎるウルトラライトウェイトシングル』

という形。

NZ250S

そして何より当時のスポーツバイクのトレンドだったエアロフォルムを合わせてアーバン仕立てのデザイン・・・これは結果論でしかないんだけど、当時のユーザーが求めていた(マーケティング的に正解だった)のはアーバンではなくどちらかというとルーラル。

分かりやすく言うとクラシックやカフェレーサーみたいな温故知新バイクだったのでNZ250/Sは正直に言うとかなりの不人気に終わりました。

NZ250S

スズキはこのNZ250/Sが空振りに終わった事がトラウマとなりシングルスポーツを封印した・・・んですが、諦めないどころか開き直ったように尖らせたグースで再チャレンジ。

一部の好き者からは絶大な評価を得たものの数字的な結果を残せなかったというか魅力が多くの人に伝わらず、またVoltyやST250などが成功した事でスズキのシングルライトウェイトスポーツは一旦途切れる事に。

※グースについては系譜の外側
『決めつけられたシングルの正解Goose250/350(NJ46A/NK42A)』
で先に書いてしまったので今回は割愛させてもらいます。

主要諸元
全長/幅/高 1935/685/1020mm
[1935/685/1075mm]
シート高 740mm
車軸距離 1325mm
車体重量 118kg(乾)
[120kg(乾)]
燃料消費率 60.1km/L
※定地モード値
燃料容量 11.0L
エンジン 油冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 33ps/10000rpm
最高トルク 2.5kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-17(49S)
後10/80-17(52S)
バッテリー FB10L-B2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.3L
スプロケ 前14|後43
チェーン サイズ520
車体価格 379,000円(税別)
[399,000円(税別)]
※[]内はNZ250S
系譜図
NZ250 1986年
NZ250/S
(NJ44A)
ジクサー250 2020年
GIXXER250
(ED22B)
ジクサーSF250 2020年
GIXXER
SF250
(ED22B)

WOLF(VJ21A)-since 1988-

ウルフ250

「街はウルフだ。」

RGV250ガンマと同年デビューしたネイキッド版にあたるWOLF/VJ21A型。

型式がガンマと同じことからカウルを剥いただけと勘違いされがちですが実は結構変わっています。

まず中低速域での使い勝手を考えリアスプロケットを46Tに変更。更にネイキッドという事でエンジンをブラックアウト化。そして軽快なハンドリングを実現させるために、わざわざフロントディスクをシングル化してバネ下重量の軽減まで。

スズキウルフ

もちろん市街地などでの仕様を考えてポジションも起きたものになっています。

翌89年には先に紹介したガンマと同じ電子制御化を中心とした変更点に加えステップ位置を更に前進させポジションが更に楽なものに。

三年目にして最終モデルである90年型ではキャブセッティングやフューエル周りの改良が加わっています。

ちなみに何故ウルフを出したのか疑問だったんですが、これについては横内さん曰く

ウルフ250カタログ写真

「(レプリカ)ブームはいつか去る、だからブームに甘んじない新しい物を作る必要があると考えた」

とのこと。

ウルフはレプリカブームに沿ったものではなかったので人気は出ませんでした。

でもその割に今でも一部で根強い人気がある事や

「あの時に買っておけばよかった」

と言われるのはブームに流されていない新しい2stスポーツの形だったからでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 1990/700/995mm
シート高 755mm
車軸距離 1380mm
車体重量 125kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(53H)
後140/60-18(64H)
バッテリー FT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
スプロケ 前14|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 509,000円(税別)
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

RGV250Γ/SP/SP2(VJ21A)-since 1988-

RGV250Γ/VJ21A

「BRAND-NEW V」

後出しジャンケンに苦汁をなめさせられていた状況を打開するためVツイン型へと生まれ変わったRGV250Γ/VJ21A型の通称Vガン。

先代までの並列二気筒モデルはパラレルツインだからパラガンと言います。

VJ21Aエンジン

ちなみに何故レーサーレプリカがV型に落ち着いたのか簡単に言うと、2stスポーツのクランクケース式は混合器が下から上に行く仕組みなので燃焼室とは別に混合器が上に行く通路が必要になる。横に二つ並んだ並列でそれをやろうと思うとエンジンが大きくなる上にクランクシャフトも長くなるので重量や剛性、それにフリクションロスが発生してしまう。

だからシリンダーを前後に分けるV型にしたほうが何かと都合が良いんですね。250cc程度ならVツイン特有の全高も問題にならないですし。

VJ21Aフレーム

それに合わせられるフレームもエンジン同様に完全新設計の高剛性アルミツインスパーフレーム。

もちろん見て分かる様に外装も大きくスラント化された新設計のもの。

VJ21A SP

ちなみにこのモデルから市販車レース(SP250/F3)向けのSP仕様も登場。

・クロスミッション
・フルアジャスタのフロントフォーク
・リザーバー別体式リアサスペンション
・シングルシート
・専用キャブ(前期のみ)
となっています。ちなみにクロスミッションだけ採用していないモデルがSP2です。

そしてそしてVJ21A型と言えばこれですね。

pepsi

一時撤退していたWGPに復帰したRGV-Γ500と同じカラーリングのシュワンツペプシバージョン。

世界レースでこのペプシカラーを纏い、赤白カラーリングのライバル(意味深)と熾烈なバトルを繰り広げた当時を知る人にはたまらないカラーリング。

なお型式は同じVJ21A型でも翌89年モデル(コードK)では
・スロットルポジションセンサー
・エアソレノイドバルブ
など吸気/点火/排気系のデジタル制御化が加わっています。

主要諸元
全長/幅/高 2015/695/1065mm
シート高 755mm
車軸距離 1375mm
車体重量 128kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17
後140/60-18
バッテリー YT4L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 569,000円(税別)
[609,000円(税別)]
※[]内はSP
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

RG250Γ(GJ21B)-since 1985-

250ガンマ三型

「第三章、豊饒のガンマ」

外見も中身も大幅に変更された後期モデルのB型。

キャスターやトレール角の見直し。そしてフロントサスにはプリロード調整機能を新たに追加しリアにはフルフローターサスペンションを搭載。

RG250三型

更に排気デバイスSAEC(Suzuki Automatic Exhaust Control)を採用する事で排気脈動の最適化を図り、中低速のトルクの谷間を解消。

これにより走りに更に磨きが掛かったわけです・・・が、まあアチコチで言われている様にこの頃からRG250Γは立場が危うくなります。

というのもRG250Γの爆発的なヒットで公道レーサー需要の高さが分かった事から、TZR250(1KT)やNSR250R(MC16)といったライバル車が登場したからです。RG250で話したRZ250の悪夢再びです。

この三つ巴(後にカワサキも参戦)になった事から、250でレーサーレプリカブームが巻き起こる事になります。

RG250GAMMA四型

スズキも対抗するため、翌86年の四型ではウィンカーのプッシュキャンセル化、サイドスタンドの警告灯装備など使い勝手を向上する改良。

更にはウォルターウルフカラーも限定販売。

ウォルターウルフ250ガンマ

ちなみにウォルターウルフっていうのはオイルビジネスで成功したオーストリア出身の実業家の事。

大のランボルギーニ好きでF1にも参戦していました。

当時スズキは全日本500クラスをこのカラーリングを纏ったRG-Γで戦っており、そのカラーリングを市販車にも持ってきたというわけ。

ウォルターウルフ

レーサーと同じカラーリングを纏ったバイクというのは今でこそ珍しくないけど、その始まりは実はこれ。

ただ厳密に言うとこれはスポンサーカラーではなくスズキから申し出て採用されたカラーリングなんです。だからカタログにも”参戦”とは書かれず”登場”とか”共鳴”とか書かれている・・・あまりにも似合いすぎてて知りませんでした。

RG250GAMMA五型

最終となる87年の五型ではアンチノーズダイブが廃止され、ディスクローターの大径化や中空キャストホイール&リアタイヤのワイドリム化など足回りが強化されました。

主要諸元
全長/幅/高 2010/675/1170mm
シート高 735mm
車軸距離 1355mm
車体重量 128kg(乾)
[130kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 247cc
最高出力 45ps/8500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後110/80-18(58H)
バッテリー FB5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後37
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 460,000円(税別)
[480,000円(税別)]
※[]内はアンダーカウル付き
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

RG250Γ(GJ21A)-since 1983-

RG250Γ

「SUPER CHAMPION」

レーサーレプリカブームの火付け役として今も語り継がれる『栄光のΓ(ガンマ)』ことRG250Γ/GJ21A型。

そもそも何故ガンマが栄光なのかと言うと

一つは”栄光や勝利”という意味の古代ギリシャ語

『ゲライロウ:ΓεραIρω』

の頭文字から。

そしてもう一つはWGP500(今で言うMotoGP)チャンピオンマシンがRG-Γだから『栄光のΓ』なんです。

ウィニングヒストリーオブRG

このカタログ裏にズラッと並んでいるのがRG-Γが勝ったレース。

1976~1977年、1981~1982年と世界チャンピオンを獲得。恐らくスズキがレースで一番輝いていた時期。

では何故RG250Γが誕生することになったのかというと、二年ほど時代をさかのぼります。

海外カタログ

当時スズキの二輪部門はHY戦争の巻き添えにより100億円近い赤字を出していました。

>>HY戦争の解説

そのため活躍していたWGPからの撤退を余儀なくされるだけでなく、二輪事業そのものの撤退まで検討されるように。

そんな折に耳に入ったのが

「国土交通省がフェアリング(カウル)を認めるようになった」

という情報。

横内さん

これを二輪事業挽回のチャンスだと捉えた横内さんは、今までにないフェアリング付きのスポーツバイクを造る企画を始動。

その企画会議である若手が放った一言

「ガンマという名にしよう」

この一言で企画の方向性が決定的なものになりました。

いま説明したようにガンマという名前はスズキのGPレーサーを意味する名前。つまりガンマという名前のバイクにするということは公道を走れるGPレーサーにするという事。

しかしこれに反対する人は一人も居なかったそうです。それどころかチームはやる気に満ち溢れ

「ガンマと名乗る以上は絶対にその名を汚してはいけない」

として速さはもちろん絶対条件として採用されたのが有名な

『市販車初のアルミフレーム』

であるAL-BOXフレームです。

AL-BOXフレーム

当時はフレームといえば鉄が当たり前。アルミフレームなんてワンオフのレーサーくらい。

コストも10倍ほど違う事から当然ながら上から大反対に合い

「絶対にダメだ、クビにするぞ」

と常務から釘を差されるほどだったんですが横内さんが

「このままでは二輪事業が撤退になる。まだ何処も挑戦していないアルミフレームで勝負すれば成功するだけでなくスズキのブランドと技術力のアピールにもなる。」

と譲らず何度も説得する事でなんとか了承を得ることに成功し、溶接技師を掻き集め教育する事からスタート。

※当時はアルミ溶接機械が無かった時代

GJ21A壁紙

この市販車初のアルミフレームにはそんなドラマが詰まっているんです。

もちろんアルミフレームやフェアリングだけでなく

・クラストップの45馬力
・アルミバックステップ
・多段テーパーチャンバー
・フロント16インチホイール
・セパレートハンドル

など絢爛豪華な造りで圧倒的なマシンになりました。

しかし同時に車体価格も46万円(400クラス並)という圧倒的な高さになってしまった・・・絶対に成功させないといけない車種でこの高値。

横内さんも迷ったそうですが

「これだけの性能なんだからみんな分かってくれる。」

とユーザーを信じコストカットすることなく発売。

GJ21Aカタログ写真

結果はこうして歴史に大きく名を刻んでいる通り

「公道を走れるGPレーサーだ」

として大きく話題となり大ヒット。レース界隈ではこのバイクじゃないと勝負ならないほどでした。

そしてその勢いは留まる事を知らず翌84年には通常2型にマイナーチェンジ。

HBガンマ

カウルデザインが全体的にスラント化され、アルミフレームも剛性が上がったAL-BOXからMR-ALBOXへ進化。

更には対向4POTキャリパーとリア2POTのDECA(10の意味)PISTONを採用。

GJ21A壁紙

これらの改良で、既にクラスナンバー1だったパワーウェイトレシオから更に4kgも軽量化。

窮地に陥っていたスズキ二輪を救うと共に、スズキの技術力とブランド力を大いに示す結果となりました。

主要諸元
全長/幅/高 2050/685/1195mm
シート高 785mm
車軸距離 1385mm
車体重量 131kg(乾)
燃料消費率 45.3km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷2サイクル2気筒
総排気量 247cc
最高出力 45ps/8500rpm
最高トルク 3.8kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54S)
後100/90-18(56S)
バッテリー FB5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
スプロケ 前14|後37
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 460,000円(税別)
系譜図
RG250/E1978年
RG250/E
(GT250/2)
RG250Γ1983年
RG250Γ
(GJ21A)
RG250Γ1985年
RG250Γ
(GJ21B)
VJ211988年
RGV250Γ/SP
(VJ21A)
VJ211988年
WOLF
(VJ21A)
VJ221990年
RGV250Γ/SP/SP2
(VJ22A)
VJ231996年
RGV-Γ250SP
(VJ23A)

ZXR250/R(ZX250A/B) -since 1989-

ZXR250A

「Racing Super Weapon」

1989年に登場したクラス最後発でありカワサキとしては初でもあるクオーターマルチ250のZXR250/ZX250A型とZX250R/ZX250B型。

・前傾35°水冷DOHC16バルブ直四(完全新設計)
・伸/圧独立カートリッジ式の倒立フォークをクラス初採用
・K-RAS(ラムエア)を量販車初採用
・車高調機能付き7段階可変可能なリアサス
・E-BOX(オールアルミ)フレーム
・大径Wディスク(300mm)&対向4ポットキャリパー

などなど同時に登場したZXR400に負けず劣らずの初っ端フルスペック状態。もちろん馬力は規制上限の45馬力。

ZXR250R/ZX250A

更に上の写真にあるRモデルのZXR250R/ZX250BはSP250Fという4st/250ccレースを考慮し

・クロスミッション
・32mmのビッグキャブ
・4段階の伸側調節と無段階プリロード調整が可能なアルミボディのリアサス
・前後ラジアルタイヤ
・シートカウルにSPORT PRODUCTION

など変更が禁じられていた箇所をレース向けに予め変更したモデル。もう本当にこれでレース負けてもマシンのせいには出来ないと言えるほどの性能でした。

基本的にZXRは本気でレースでの勝利を狙ったスパルタンモデルといえ、それはこの250も変わらず。

たとえばフレームはもちろん高剛性のリブ付きアルミフレーム。

ZXR250トップ

更に足回りも捻じれに強い倒立フォークでカッチリしたもの。おまけにポジションもかなりの前傾とヤル気全開。

エンジンも8000rpm前後までは本当に250かと疑いたくなるほどパワーが無い反面、それ以降は目の覚める加速が19000rpmまで続く形。

兄貴分が採用している中空3本スポークではなく5本スポークだったり、スクリーンをカウルの上からマウントしているなど若干の違いこそあれど、サーキットに一番主軸を置いているSP250F用の250レーサーレプリカはこのZXR250/Rだったと言い切れるんじゃないかと。

ZX250Aサイド

その証拠にレースでもZXR250Rはとっても大活躍しました。

大活躍したというか人気だったと言ったほうが正しいかもしれないですね。というのもこのSP250Fというのはワークスではなくバイクショップなどのアマチュアレースという意味合いが強いレースだったから。でもだからこそカワサキはこんな本気モデルを出したんじゃないかと。

ワークス対決になるとやはりどうしてもカワサキはお金が無い事もあって非常に厳しい。しかしアマチュアレースなら純粋な市販車としての性能が物を言うからこそ250もここまで作り込んで出した。

初代ZXR250

この姿勢は二年目にも現れています。

ZXR250/Rはわずか11ヶ月後に
・エンジン含む各部の軽量化
・フロントラジアルタイヤ化(ノーマルモデル)
・剛性が見直された新設計スイングアーム
・上記に伴いサスのリセッティング
・湾曲シフトペダル
・シート変更で高さが-10mm
・クランクシャフトを軽量化(Rモデルのみ)

というフルモデルチェンジ級の改良を行いました。

ZXR250カタログ写真

ZX250/Rは

『本気だった250レーサーレプリカ』

と言えるモデルでしたね。

主要諸元
全長/幅/高 2020/695/1105mm
シート高 740mm
車軸距離 1370mm
車体重量 144kg(乾)
燃料消費率 50.0km/L
[48.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 249cc
最高出力 45ps/15000rpm
最高トルク 2.6kg-m/11500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後140/60R18(64H)
バッテリー YB9L-A2
プラグ CR9E
または
U27ESR-N
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.6L
交換時2.1L
フィルター交換時2.55L
スプロケ 前14|後48
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 580,000円(税別)
[630,000円(税別)]
※[]内はZXR250R(ZX250B)
系譜図
ZXR250A1989年
ZXR250/R
(ZX250A/B)
ZXR250C1991年
ZXR250/R
(ZX250C/D)
バリオス1991年
BALIUS
(ZR250A)
バリオス21997年
BALIUS2
(ZR250B)
2020年
ZX-25R
(ZX250E)

ZXR400/R(ZX400H/J) -since1989-

ZX400H

「Racing Super Weapon」

何処からどう見てもZXRレプリカにしか見えない姿に変貌し車名も同じZXRとなったZXR400。奇しくもレーサーレプリカブームを止めたゼファーと同年(一ヶ月先)デビューです。

ZXR400に限った話ではないんだけどアンチレーサーレプリカを貫いていた事もあってカワサキはレーサーレプリカに乗り出すのが一番遅かった。

90ZXR400

もうこの頃になると各社ともモデルチェンジや年次改良を何代も重ねてきて最終型に近い形になっていた状況。当たり前だけど分が悪いにきまっている話。

ZX400Hカタログ

ところが要らぬ心配と言いますが後出しというハードルをクリアするどころか楽々と飛び越える性能と装備で登場したわけです。

ZXRのトレードマークでもあるフレッシュエアをエンジンヘッドに吹き付ける為アッパーからチューブが伸びているK-CASはもちろんの事、250と並んでクラス初となる倒立フロントフォークを標準で採用。レースで拝む事しかできなかったフロントフォークを最初から付けてきたわけです。 ZXR400カタログ

先代ZX-4には付いていたハザードや燃料計といった速く走ることに必要のないものも全て撤去。今までのアンチレーサーレプリカ路線は何だったのかと言えるモデル。

翌年の年次改良でもカム・バルブ・ピストン、スイングアームやサスペンション、バックトルクリミッター(K-BATL)と留まることを知らない改良。

少し遅れて出たプロダクション(レース)モデルのZXR400R(ZX400J)もこれまた凄くて、ハイカム、クロスミッション、シングルシートリアカウルを標準装備。

ZXR400R/ZX400J

翌90年には加速ポンプ付きFCRキャブレーターにフルアジャスタブル倒立フロントフォーク&別体リザーバー付きリアサスペンションなどなど本当に限度を知らない年次改良。

そのおかげかレースの方も全日本選手権F3(4st400部門)でカワサキとしては初となる優勝を90年に果たしました。ちなみにこの時のライダー鶴田さん(TEAM GREEN)は後のトリックスターレーシング創設メンバーで代表でもあります。

主要諸元
全長/幅/高 2035/705/1125mm
シート高 765mm
車軸距離 1395mm
車体重量 162kg(乾)
[159kg(乾)]
燃料消費率 45.5km/L
[46.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 398cc
最高出力 59ps/12000rpm
最高トルク 4.0kg-m/10000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/60R17(55H)
後160/60R17(69H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.6L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク110
[サイズ520|リンク108※89及びR]
車体価格 686,000円(税別)
[723,000円(税別)]
※[]内はRモデル
系譜図
ZX400G1988年
ZX-4
(ZX400G)
ZX400H1989年
ZXR400
(ZX400H/J)
ZX400L

1991年
ZXR400
(ZX400L/M)

ZXR400最終

1993年
ZXR400
(ZX400L/M最終)

ZX-4(ZX400G) -since1988-

ZX400G

「時代に流されない魅力」

性能ではなくコンセプトの関係からカワサキ初の400レーサーレプリカと言っていいのか微妙な立ち位置だったZX-4。

これは既にあったGPZ400R(ZZR400/ZRX400の系譜)の派生ではなく全く別の400プラットフォームで作られたバイク。つまり当時カワサキは別々の四気筒400ccフルカウルバイクを2つもラインナップしていたということ。

ZX-4の最大の特徴はクラストップの車重。乾燥重量152kgは84年に出たGSX-R(400)と並んで今もなお破られていない軽さ。

ZX400G

これはE-BOXフレームというアルミツインスパーフレームなのと、GPZ400系のセンターカムチェーンと違いサイドカムチェーン方式を取り入れた新設計エンジンによるもの。

たしかGSX-R750の方でも言ったけどサイドカムチェーンだと何が良いのかというとまず吸気の流れがストレートになることで吸気効率が上がる事。そしてもう一つはコンパクト、つまり軽く出来るという事。

センターカムチェーンとサイドカムチェーン

センターカムチェーンの場合シリンダーとシリンダーの間に敷居を設けトンネルを開けてやらないといけないんですが、サイドカムチェーンだとその壁が一枚で済む。結果として幅と軸受を減らせてコンパクト軽量化に繋がるというわけです。

チームグリーンZX-4

これらによって59ps/152kgという驚異的な軽さと速さを持っていたことからZX-4ベースのワークス車両ZXR-4は鈴鹿四時間耐久レース(当時は600ではなく400)で見事優勝。

名実ともに誇れるレーサーレプリカ・・・になるはずだったのですが、不人気さから僅か1年ほどでZXR400へとモデルチェンジし生産終了となりました。

チームグリーンZX-4レプリカ

最新の造り、クラストップの軽さ、レースで優勝、これだけの要素を持っていながらも売れなかったのは正直デザインかな。

4st400ccのレーサーレプリカといえば今で言えば600ccのスーパースポーツ的な立ち位置。そんなカリカリのスーパースポーツ市場でこの良く言えば落ち着いたデザイン、悪く言えば野暮ったいデザインはとても軽そうにも速そうには見えなかった。

ZX-4とGPX400

同時期にラインナップしていたスポーツツアラーのGPX400Rと同系なデザインだった事もあると思います。

最初のキャッチコピーもあるようにアンチレーサーレプリカという信念とレーサーレプリカを作りたい開発のズレが生んだバイクなのかもね。

主要諸元
全長/幅/高 2035/715/1130mm
シート高 765mm
車軸距離 1395mm
車体重量 152kg(乾)
燃料消費率 45.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 398cc
最高出力 59ps/12000rpm
最高トルク 3.9kg-m/10500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(53H)
後140/60R18(64H)
バッテリー YB12A-AK
プラグ CR9EK
または
U27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.6L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前15|後44
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 698,000円(税別)
系譜図
ZX400G1988年
ZX-4
(ZX400G)
ZX400H1989年
ZXR400
(ZX400H/J)
ZX400L

1991年
ZXR400
(ZX400L/M)

ZXR400最終

1993年
ZXR400
(ZX400L/M最終)

ZXR750(ZX750H/J/L)-since 1989-

ZXR750

「レーシング・スーパーウェポン」

ワークスマシンZXR-7のレプリカとして登場したZXR750。

アルミツインスパーフレームからも分かる通りレーサーレプリカライクなマシンではあるんですが一つだけ面白いというかカワサキらしい店としてアンダーチューブフレームが付いている事があります。

ZXR750ディメンション

これは振動対策が主な狙いでアンダー側はラバーマウントとなっています。

こちらはR仕様のZXR750RでFCRキャブに倒立専用サスとシングルシート仕様というコテコテなレーサーでアンダーチューブも付いていません。

ZXR750Ninja

ちなみにアイデンティティでもあるタンクに刺さっているホースはラムエアではなく

『K-CAS(Kawasaki Cool Air System)』

と呼ばれ、エンジンの熱ダレを防ぐためヘッドに走行風を積極的に送って冷やすためのダクト。

激化する競争に勝つため僅か二年でフルモデルチェンジされJ型に。

zxr750

サイドカムチェーンの新設計エンジン、倒立フォーク、Rはフルアジャスタブル化などの改良。

ちなみに1993年にこのZXR750の発展形であるワークスマシンZXR-7でカワサキは世界耐久選手権のチャンピオンを獲得しました。

zxr-7

ちなみに鈴鹿8耐も勝っています。

というかカワサキが八耐で勝ったのは唯一のマシンがこのZXR-7。

その後1993年に各部が見直されカーボンマフラーを採用したL型(写真下)となり、更にフルモデルチェンジでSBKのZX-7Rとなり、そして最終的にはMotoGP車両ZX-RRとまさに出世魚の様なバイクでした。

ZXR750Rカタログ写真

ZX-7Rについては

「問題児レーサー ZX-7R/RR(ZX750P/N)」

をどうぞ。

主要諸元
全長/幅/高 2090/745/1165mm
[2085/730/1120mm]
<2095/730/1140mm>
シート高 770mm
<780mm>
車軸距離 1445mm
[1420mm]
<1430mm>
車体重量 205kg(乾)
[194kg(乾)]
<205kg(乾)>
燃料消費率 34.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 77ps/9000rpm
最高トルク 6.7kg-m/7500rpm
[<6.9kg-m/6500rpm>]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70R17(58H)
後170/60R17(72H)
<前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)>
バッテリー YB12AL-A2
[<YTX12-BS>]
プラグ CR8E
または
U24ESR-N
<CR9E
または
U27ESR-N>
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.7L
交換時2.7L
フィルター交換時2.9L
[<全容量4.0L
交換時3.4L
フィルター交換時3.5L>]
スプロケ 前16|後46
{前16|後45}
<前16|後43>
チェーン サイズ530|リンク112
[{<サイズ530|リンク110>}]
車体価格 859,000円(税別)
{879,000円(税別)}
<879,000円(税別)>
※[]内は90モデル
※{}内は91-92モデル(J型)
※<>内は93以降モデル(L型)
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)

GPX750R(ZX750F)-since 1986-

GPX750R

「突き詰めればカワサキ」

カワサキ初となる完全新設計のフラッグシップ750であるGPX750R・・・なんと車名にZと付いてない。

ZX750F

これは当時としては非常にコンパクトなサイズや造りから見て分かる通り、これまでとは違う

『Xの思想』

で造られたバイクだから。

Xというのは”究極のZ”に対する”親しみのX”という意味です。

GPX750Rカタログ写真

新設計のダブルクレードルフレームに新設計のセンターカムチェーンエンジン。

目を引くための装備や技術を設けず

「枯れた技術のみで最新の開発力を用いて造る」

というアンチレーサーレプリカを体現するようなバイク。

GPX750Rパンフレット

でもその思想は過激化していた時代には受け入れられる事なく・・・GPXシリーズはクラス問わず一代限りとなってしまいました。

主要諸元
全長/幅/高 2115/715/1185mm
シート高 775mm
車軸距離 1460mm
車体重量 195kg(乾)
燃料消費率 34.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 748cc
最高出力 77ps/9000rpm
最高トルク 7.0kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/90-16(59H)
後140/70-18(66H)
バッテリー YB12L-A2
プラグ D8EA
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量4.0L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前16|後47
チェーン サイズ530|リンク110
車体価格 799,000円(税別)
系譜図
GPZ750R1986年
GPX750R
(ZX750F)
ZXR7501989年
ZXR750
(ZX750H/J/L)
1996ZX-9R1994年
ZX-9R
(ZX900B)
1998ZX-9R1998年
ZX-9R
(ZX900C/D)
2000ZX-9R

2000年
ZX-9R
(ZX900E)

2002ZX-9R2002年
ZX-9R
(ZX900F)
2004ZX-10R2004年
ZX-10R
(ZX1000C)
2006ZX-10R2006年
ZX-10R
(ZX1000D)
2008ZX-10R2008年
ZX-10R
(ZX1000E)
2010ZX-10R2010年
ZX-10R
(ZX1000F)
2011ZX-10R2011年
ZX-10R
(ZX1000J/K)
2016ZX-10R2016年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1000R/S/Z/C)
2019ZX-10R2019年
ZX-10R/RR/SE
(ZX1002E/G/H)
2021ZX-10R2021年
ZX-10R/RR
(ZX1002L/N/)