Ninja400(EX400G)-Since2018-

2018NINJA400

250と共有することで先代比-37kgと大幅な減量がされたNinja400のEX400G型。

キャスターも立てられツアラーからライトウェイトスポーツへと大変貌。650がモデルチェンジされても音沙汰なしだったのはこのためだったんですね。

2018NINJA400

従来の面白構造から打って変わり、新設計のダイヤモンドトラスフレームに新型エンジンという王道な作り。ただメインフレームがピボットレス構造になっていますね。

ちなみにABSやアシストスリッパークラッチも当然ながら標準装備。

NINJA400LEDヘッドライト

他にもトップブリッジの肉抜きやギアポジションインジケーター付きのデジタルメーター等など、カワサキは250や400だからといってとデザインをケチるような事を全くしなくなりましたね。

ちなみに最近流行している逆スラントになったわけですが・・・

NINJA400LEDヘッドライト

「なんでこうも逆スラントが増えているんだろう」

と思って調べてみたところ、どうも流行だけではなくLEDヘッドライトが関係している様。

従来の(中央にバルブがある)スラントノーズ系マルチリフレクターとLEDは相性が良くないそうです。

NINJA400LEDヘッドライト

言われてみれば確かに綺麗に別れている。技術的な話はもう少し調べてから書きたいと思います。

話をNINJA400に戻すと・・・そもそもなんで好評だったツアラー路線からスーパースポーツ路線に変えたのかという話ですが、これは世界的にライトウェイトミドルの人気が高まりだしたら。

NINJA400リアビュー

つまりこのモデルからは日本専売ではなく世界で売られるワールドモデルに昇格となったわけです。

面白いことに先代の頃から既にイタリアのコミュニティなどで日本向けの400モデルを取り上げ

「コッチのほうが回せて面白そう」

と紹介されたりもしていました。

根気強く国内のために出し続けていた400に、日本ではなく海外が振り向くっていう。

そしてもう一つ大事なこと。

市場の人気が高まるということは・・・レースが始まるんですね。これも理由の1つ。

スーパースポーツ300

ZX-10Rなどでお馴染みのWSB(市販車世界レース)において

「SUPERSPORT300」

という新しいクラスが2017年から始まりました。

300と銘打たれていますがレギュレーションは排気量ではなくA2免許クラス(47馬力以下)で協会が認めた車両。初年度はCBR500R、NINJA300、YZF-R3の三つ巴で優勝車両はYZF-R3でした。

2018年式ニンジャ400

つまり2018年からこのNINJA400でZX-10Rの様に勝ちを取りに来たというわけ。さすがSBKに社運を賭けてるメーカー。

もちろんあくまでも市販ロードスポーツとしてがメインなのでポジションもそれほどキツいわけではないんですが、ダブルディスクという見栄を捨てて軽さのシングルディスクを選んだのを見ても、スポーツを意識しているのが伺えます。

2018年式黒

色々言われていますがこのシングルディスク化は本当に英断。

見栄えするダブルディスクの方が良いと思う気持ちも痛いほど分かります。でも新しいNINJA400の魅力はライトウェイトです。

2018年式エンジン

250と共有なんだけど基本的にエンジンクランクやフレームといった主要部は250をベースにしたから167kgと軽く出来た。

だから本当にそれで大丈夫なのかと思う細身のフレームもそうですが、共有というよりNINJA250をどうにかこうにかして400cc化したようなバイク。

2018年式サイドビュー

このシングルディスクブレーキというのはそれを無駄にしない為のシングルディスク。

ライトウェイトスポーツの証という事です。

主要諸元
全長/幅/高 1990/710/1120mm
シート高 785mm
車軸距離 1370mm
車体重量 167kg(装)
燃料消費率 24.8km/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 48ps/10000rpm
最高トルク 3.9kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後150/60R17(66H)
バッテリー FTX9-BS
プラグ LMAR9G
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.3L
交換時1.6L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前14|後41
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 663,000円(税別)
系譜図
GPZ400S1986年
GPZ400S
(EX400A)
EN4001985年
EN400-TWIN
(EN400A/B/C)
KLE4001991年
KLE400
(LE400A)
EX-41994年
EX-4
(EX400B)
R2010年
Ninja400R
(EX400C/D)
ER-4n
(ER400B/C)
2014年
Ninja400
(EX400E/F)
2018ニンジャ4002018年
Ninja400
(EX400G)

Ninja400(EX400E/F) -Since2014-

Ninja400

兄貴分のER-6がNinja650へフルモデルチェンジし、遅れること二年後にモデルチェンジされNinja400と改名されたEX400E型とABS装備のF型。

先代が思わぬ好調なセールスだったから引っ張ったんでしょうかね。ただ残念ながらネイキッドタイプのER-4nはモデルチェンジされることなく・・・。

作りは基本的にNinja650に順従するもので、斬新で面白いダブルぺリメターフレームの形も同じ。

足つき性

シートフレームも途中から別れるセミダブルクレードルの様な形にして足つき性が大幅に改善。

カウルも大型の650と共有するだけあって本当に凄い。400もここまで来たかというような形状と塗り分け。

EX400E

ZX-14Rの流れを汲む、刺さっているようなサイドフェアリングですが、なんでもカウル形状は排熱がライダーの膝へ直撃しない狙いがあるんだとか。

EX400F

少し話が反れますがKawasakiのNinja650のページで

「レースで認められたパフォーマンス」

と言われていたのを見逃してました。

兄貴分の650は欧州ではカワサキを代表するNinjaとして多くの人に親しまれているため、Ninja650のワンメイクレースが盛ん。

ただカワサキが言いたいレースパフォーマンスはどうも別で

「AMAフラットトラックレーシング」

というアメリカではメジャーなダートレースの「GNCツインズ」の事。

GNCツインズ

“550cc~700ccの車両にはリストリクター(吸入規制)、重量規定なし”
“701cc~1000ccの車両にはリストリクター(吸入規制)及び重量規定”

日本でいうオートレースのダート版ですね。さすがオフ大国アメリカ。

でカワサキのninja650の車両がこれ。

6モンスター

原型を留めてない・・・というか使われているのはほぼエンジンだけ。

昔からハーレーの一強だったカテゴリで一矢報いた事から誇っているわけですね。

ガチャピンエンジン

まさかNinja400/650の一部でガチャピンと親しまれる形のエンジンがアメリカのダートで活躍してるなんて誰が想像できるだろう・・・

主要諸元
全長/幅/高 2110/770/1180mm
シート高 805mm
車軸距離 1410mm
車体重量 209kg(装)
[211kg(装)]
燃料消費率 24.0km/L
※WMTCモード値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 44ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.6L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 668,520円(税込)
740,880円(税込)
※[]内はABSモデル(EX400F)
系譜図
GPZ400S1986年
GPZ400S
(EX400A)
EN4001985年
EN400-TWIN
(EN400A/B/C)
KLE4001991年
KLE400
(LE400A)
EX-41994年
EX-4
(EX400B)
R2010年
Ninja400R
(EX400C/D)
ER-4n
(ER400B/C)
2014年
Ninja400
(EX400E/F)
2018ニンジャ4002018年
Ninja400
(EX400G)

Ninja400R(EX400C/D) -since 2010-

Ninja400R

「FULLFAIRING SPORT」

タイカワサキに生産を移設されたER-6をベースに400cc化したNINJA400R。

Ninja400Rキャンペーンポスター

十数年ぶりな上にNINJAということで見た目はかなり戦闘的なスタイリングに。

特に顔には拘ったようで、ビルドインウィンカーやヘッドライトのバルブカバーを装着するほどのこだわり。

ヘッドライトバルブカバー

このバルブカバーは後にNINJA1000にも採用されました。機会があったら覗いてみましょう。

NINJA400Rは完全新設計の新しいモデルなんですが、順当なスポーツツアラーで正に21世紀のEX-4といえるバイク。

ボディも大型の650と共通なだけあり新設計トラスフレームやサスなどなかなか良いものというか面白いものを持ってる。

レイダウンサスペンション

中でも特徴的なのがレイダウンサスペンション。

これはリンク無しでもプログレッシブな(二次曲線的な)働きをさせるためのレイアウト。

要はネイキッドの二本サスを一本にして思いっきり寝かせた様なものなんですが、丸見えで良いアクセントになっていますね。

ER-4n
(ER400B/C)
-since 2010-

ER-4n

コチラはヨーロピアンテイストを取り入れたネイキッドモデルにあたるER-4n。

ガンダム顔なNinja400Rとは対照的にコチラはザク顔ですね。新しいバイクなのに走っているところを先ず見ない。

このNinja400R/ER-4nはGPZ400SやEX-4の不人気さが嘘のように人気を呼び、2012年度には年間販売二位を記録しました。

この要因は正直に言うとカワサキの四気筒が既に死滅していた事が大きいかと。もしも同じようなルックスでZZR400なんかがまだあったらソッチを選んでた人が多いと思います。

それが無かったから(言葉が悪いですが)仕方なしにNinja400R/ER-4nが見られるようになった。

Ninja400Rスペシャルエディション

しかしいざ見てみると意外とスポーツが出来て、何より使い勝手が良いという今まで気付かなかったパラツインの魅力を知る事に。

要するにセールスが好調だったのは低い期待値を裏切る感動があったから。執念深く続けてきたパラツイン400という訴えがやっと認められたわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2100/760/1200mm
[2100/760/1100mm]
シート高 790mm
[785mm]
車軸距離 1410mm
[1405mm]
車体重量 203kg(装)
[199kg(装) ]
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 44ps/9500rpm
最高トルク 3.8kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 649,000円(税込)
[629,000円(税込)]
※[]内はER-4n
※ABS(EX400D/ER400C)は+4kg/7万円
系譜図
GPZ400S1986年
GPZ400S
(EX400A)
EN4001985年
EN400-TWIN
(EN400A/B/C)
KLE4001991年
KLE400
(LE400A)
EX-41994年
EX-4
(EX400B)
R2010年
Ninja400R
(EX400C/D)
ER-4n
(ER400B/C)
2014年
Ninja400
(EX400E/F)
2018ニンジャ4002018年
Ninja400
(EX400G)

Z125/PRO(BR125H)-since 2016-

Z125PRO

グロムに対抗すべくFI化しボアを3mm拡大で遂にフルスケールとなったKSR125ならぬZ125。

KSRの名前が無くなっちゃったのは少し残念。

このミニモタード市場はみんな止めちゃっててKSRしか残ってなかったんだけど、先に言った通りホンダからグロム、更にイタリアのベネリからもTNT125というライバル登場でKSRも左団扇ではいられなくなった。

TNT125

そこで対抗すべくフルスケール化というわけ。上の写真がTNT125(日本未入荷)です。

んでまあTNT125は置いとくとしてグロムとの比較だけど、これがまあ見事にほぼ互角。

Z125 グロム 比較

Z125が優っている点は航続距離。なんかモンキーとゴリラの関係に似てるね。

パッと見だと先代KSR110とは別のバイクに見えるけど、中身で言うとフレームや足回りも基本的にKSRのまま。違って見えるのはフレームカバーとアンダーカウルが付いたから。

Z125フロント

なおのことKSRのままでいいじゃんと思うけど、いい加減しつこいのでもう言いません。まあ社内でもKSRのまま行くかZに改名するか揉めたみたいだけどね。

Z125メーター

しかしホント125のメーターじゃないですね。3000rpmまでが短いとかスポーティでカッコいい。旧型乗りからの嫉妬が凄そう。

ただ、気を悪くされる人が居たら申し訳ないんですがKSR(Z)好きとして個人的な事を言わせてもらえば見た目もこれだけ凄いんだからスペックももう少し頑張って欲しかったなというのが正直な所。

Z125

というのも今125ccで速いバイクといえばMT-125やYZF-R125の15馬力車。

なんで15馬力かって言うと欧州の上限が15馬力だからなんですがそれは置いとくとして、125ccにおいて15馬力と10馬力の差っていうのはハッキリ言って誰が乗っても分かるレベル。だからKSRもといZ125には是非とも15馬力かそれに近い馬力を発揮するエンジンを積んでKSR2時代の”小さいのに速い”というかつての勇姿を取り戻して欲しかった。

Z125エンジン

Z125の横型エンジンで15馬力まで持って行くには水冷化を始めとしたエンジン見直しが必要で車重増やコスト面で難しいのは分かるんですが、Zファミリーに仲間入りしたわけだしトコトコ系のグロムと差別化するためにも・・・って言っても後の祭りか。

Zファミリー

でもこうやって勇ましい兄者達と並べると末っ子らしくて可愛いですね。時代はトコトコミニモタなのか。

ところで今回はクラッチ付きのMTグレード(PRO)のみ。更に二人乗り出来るようになったんですね。二人乗りなんてKSRシリーズとしては初です。乗る人が居るかは別問題としても乗ろうと思えば乗れるというのは大きいかと。

主要諸元
全長/幅/高 1700/750/1005mm
シート高 780mm
車軸距離 1175mm
車体重量 102kg(装)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト
燃料容量 7.4L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 9.7ps/8000rpm
最高トルク 0.98kgf-m/6500rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前100/90-12(49J)
後120/70-12(51J)
バッテリー FTH4L-BS
プラグ CR6HSA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量1.0L
交換時0.8L
フィルター交換時0.9L
スプロケ 前14|後30
チェーン サイズ420|リンク100
車体価格 320,000円(税別)
系譜図
90SS/S1968年
90S/SS
(G8)
KH901977年
KH90
(KH90C)
AR50-801981年
AR50/80
(AR50/AR80)
KS-1/21987年
KS-1/2
(MX50A/80A)
KSR-1/21990年
KSR-1/2
(MX50B/80B)
KSR110国内モデル2002年
KSR110
(KL110A)
KSR110後期モデル2012年
KSR110
(KL110D)
KSR110プロ2014年
KSR PRO
(KL110E)
2016年
Z125/PRO
(BR125H)

【関連車種】
GROMの系譜YZF-R125の系譜Small DUKEの系譜RS4 125の系譜

KSR PRO(KL110E)-since 2014-

KSR110PRO

「なんで遊びのバイクで自動遠心クラッチなんだ!」

マニュアル仕様を追加してきたあたりそう思ってた人が多かったのかもしれない。

マニュアル化

GROMへの対抗か。

その他の部分は幅が15mm広くなった事以外はD型とはほぼ変わりません。

このモデルがキャブとしては最終モデルになります。

主要諸元
全長/幅/高 1725/740/1020mm
シート高 750mm
車軸距離 1170mm
車体重量 95kg(装)
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト
燃料容量 7.3L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 111cc
最高出力 8.6ps/8000rpm
最高トルク 0.86kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前後100/90-12(49J)
バッテリー FTH4L-BS
プラグ CR6HSA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量1.1L
交換時0.9L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前14|後31
チェーン サイズ420|リンク100
車体価格 275,000円(税別)
系譜図
90SS/S1968年
90S/SS
(G8)
KH901977年
KH90
(KH90C)
AR50-801981年
AR50/80
(AR50/AR80)
KS-1/21987年
KS-1/2
(MX50A/80A)
KSR-1/21990年
KSR-1/2
(MX50B/80B)
KSR110国内モデル2002年
KSR110
(KL110A)
KSR110後期モデル2012年
KSR110
(KL110D)
KSR110プロ2014年
KSR PRO
(KL110E)
2016年
Z125/PRO
(BR125H)

KSR110(KL110D)-since 2012-

KSR110後期

これまた排ガス規制で生産終了となったもののアジアでは継続して売られていたKSR110。

だから国内ライダー達は2012年にフルモデルチェンジされても指を加えて眺めるしか無かったんだけど、再販を望む声に答えて2013年になって急に国内へ逆輸入する形に。

外見はグッと新しくDトラ125風の攻撃的なデザインになったほか、ホイールのキャスト化などの変更。

タイ製KSR110

そしてなんとセルまで(D型)付きなんですが、それより驚きなのが「FIじゃなくキャブ」だと言う事。

かつてNinja250Rの開発者インタビューで中の人が言ってたんだけど

「実際問題としてキャブでも排ガス規制を通そうと思えば通せる。でもそうすると仕様地によってセッティングを出す手間とコストが増えるからしない。」

と言っていました。

つまりその手間を掛けてでも日本仕様に合わせてきたということ。よっぽど再販の声が強かったんでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 1725/725/1020mm
シート高 750mm
車軸距離 1170mm
車体重量 95kg(装)
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト
燃料容量 7.3L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 111cc
最高出力 8.6ps/8000rpm
最高トルク 8.8kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前後100/90-12(49J)
バッテリー FTH4L-BS
プラグ CR6HSA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量1.1L
交換時0.9L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前14|後31
チェーン サイズ420|リンク100
車体価格 274,286円(税別)
系譜図
90SS/S1968年
90S/SS
(G8)
KH901977年
KH90
(KH90C)
AR50-801981年
AR50/80
(AR50/AR80)
KS-1/21987年
KS-1/2
(MX50A/80A)
KSR-1/21990年
KSR-1/2
(MX50B/80B)
KSR110国内モデル2002年
KSR110
(KL110A)
KSR110後期モデル2012年
KSR110
(KL110D)
KSR110プロ2014年
KSR PRO
(KL110E)
2016年
Z125/PRO
(BR125H)

VTR(JBK-MC33後期) -since 2013-

2013VTR

「Urban Sport Style」

サスセッティングとマッピング見直しによる低域レスポンスの改善が行われたJBK-MC33の後期・・・いや後期って分かりやすくするために勝手に言ってるだけですけどね。

ブラックアウト化されたエンジンが特徴的なんですが、それよりも重要なのがハーフカウルを纏ったVTR-Fが追加というか復活したこと。

VTR-F

これが出た時ちょっと話題になりましたけど、初代のVT250Fが話題になることはありませんでしたね。

この系譜を辿ってもらうと分かるようにVTの始まりはこのメーターバイザーならぬビキニカウルが始まりなので、何も不思議ではない話。

VTRF

そしてこのモデルがVTシリーズのラストモデルとなったわけで・・・初代に通ずるモデルで最後を迎えたと思うとセンチメンタルな気分になりますね。

厳密に言うと2014年のラジアルタイヤ化がラストモデルとなるわけですが、ラジアルタイヤに変更した理由がこれまた面白い。

なんでラジアルタイヤにしたのかっていうと、スポーツ走行への対応はもちろんなんですが、低扁平化で足付きを更に良くするため。

ラジアルタイヤモデル

もう十分だろうと思うシート高から更に15mm下げられて740mmという低さになりました。

もちろんラジアル化によるグリップ力の上昇に合わせてブレーキやサスペンション、果てはギア比まで見直す細かい改良も加えられています。

VTR広告

ところでVTRっていうと

「バイク便御用達バイク」

っていうイメージを持っている人が多いと思います。そして何故かこれを悪いイメージと捉えてる人が多い。

バイク便

何故バイク便の人たちの多くがVTRを買うか考えた事があるでしょうか。

「取り回しが優れているから」

「振動が少ないVツインだから」

「燃費が良いから」

「頑丈だから」

色々あります・・・

VTRF

が、結局これらを纏めると一つなんです。

「最も贅沢な250ccだから」

という事です。

VTRのエンジン

ブームだったからこそ許された専用設計エンジンを積んでます。

VTRのフレーム

ブームとは無縁になったから許されたオーダーメイドスーツの様なトラスフレームを持っています。

大量に売れるからこそ許される心臓と、大量に売れないからこそ許される骨格。VTRはその両方を持っているんです。

これは長い歴史を持っているからこそ出来た芸当であり、造れたバイク。

Vツインエンジン

もう二度とこんな贅沢な250は出ないでしょうね。

※2017年をもって生産終了

主要諸元
全長/幅/高 2080/725/1055<1045>mm
[2080/725/1115mm]
シート高 760mm
{755<745>mm}
車軸距離 1405mm
車体重量 161kg (装)
[164kg (装)]
{160kg(装)}
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 249cc
最高出力 30ps/10500rpm
最高トルク 2.2kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)
{前110/70-17(54H)
後140/60-17(63H)}
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8EH9
または
U24FER9
推奨オイル ウルトラG1(10W-30)
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.9L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前14|後41
チェーン サイズ520|リンク104
車体価格 540,000円(税別)
[560,000円(税別)]
{554,000円(税別)}
<564,000円(税別)>
※[]内はVTR-F
※{}内は14年7月以降モデル
※<>内はType LD(Low Down)
系譜図
VT250F1982年
VT250F
(MC08前期)
MC08後期1984年
VT250F/Z
(MC08後期)
MC151986年
VT250F/Z
(MC15)
MC201988年
VT250SPADA
(MC20)
MC251991年
XELVIS
(MC25)
BA-MC33前期1997年
VTR
(BA-MC33前期)
BA-MC33後期2002年
VTR
(BA-MC33後期)
JBK-MC33前期2009年
VTR
(JBK-MC33前期)
JBK-MC33後期2013年
VTR
(JBK-MC33後期)

VFR800F(RC79) -since 2014-

VFR800F

「大人のスポーツバイク 〜Elegant Sport〜」

2013年の東京モーターショーでお披露目となったVFR(RC46)の後継モデルにあたるVFR800F(RC79)。VFR1200Fが登場したことから車名に再び800Fと入りました。

基本的には先代のブラッシュアップモデル。中身の方をいうとシートフレームとプロアームを作り直し剛性を最適化。さらにサイドだったラジエーターを再び前に持ってきました。やっぱりサイドじゃ苦しかったのかな。

新旧VFR

その他にもマフラーが右の一本出しになったのを見て分かる通り吸排気が見直され全体で4kgの軽量化。ちなみにフロントフォークは正立のままだけど無段階ダンパーアジャスター付きなのに加えてアウターチューブはアルミ削り出しにアルマイト加工してる錆知らずな物。ラジアルマウントキャリパーにもされていますね。

右一本出しになった事については賛否両論あったし、確かにダイキャスト製の凄いホイールがちょっと隠れちゃうのは残念だけどテーマは「大人のエレガント」なのでセンターアップマフラーは子供っぽいという判断なんでしょうね。

VFR800Fスケッチ

まあセンターアップマフラーにしちゃうと荷物も積み辛い。SSならそれでもいいんだろうけどVFRはオールマイティに使えないといけないわけですから。

他にもトラクションコントロールシステムやABS、車輪速で判断するハイテクウィンカーオートキャンセラーなど利便性を高めた改良が加わってます・・・・が、一番力を入れたであろう部分はどう見てもデザイン。

LEDフェイス

大人ということでV4ハイテクマシンである事を猛烈アピールというよりは、然りげなく主張。スーツの隙間から高級時計がチラ見えする感じ。

誤魔化しの効かない単色カラーしか用意しない点もデザイナーの自信の現れでしょう。VFR1200もそうだけど画像で見るとノッペリして見えるのが玉にキズかな。

そういえばラルフローレンのお店に展示した事でちょっと話題になりましたね。

VFR800Fラルフローレン

こうやって見ると”大人”という狙いがハッキリ分かりますね・・・いや分かりすぎて逆に用途や走る道を選ぶ気もしますが。

大人過ぎてVTECという童心をくすぐる要素を忘れてしまうくらい。

VFR800X
(RC80)
-since 2014-

RC80

「Jump & Go !」

ちょっと息切れしてきたので合わせて紹介で申し訳ないけどVFR800Fの足を伸ばしクロスオーバータイプにしたVFR800X(RC80)。

VFR800X

VFR1200Xでも言ったけど、VFRのクロスオーバータイプが用意されるようになったのは成功し人気のあった欧州市場でクロスオーバータイプの需要が伸びてきたから。

「万能=クロスオーバー」

という認識が広まり元祖万能のVFRは窮地に立ってしまった。そこで万能車として定評のあったVFRを万能感あふれるクロスオーバーとして、万能車の万能モデルといった感じで作られたのがXモデル。

だから向こうのホームページとか見たら分かるけどFよりこのXモデルの方を大々的にアピールしてます。

2017VFR800F/X

2017年にVFR800Fはフレームを始めとした細部をブラックアウト化しアクセサリーソケットを標準装備。VFR800Xの方も細部のブラックアウト化と可変式スクリーン、アクセサリーソケットを標準装備するモデルチェンジが入ってます。あと何故か書かれていないけど馬力とトルクが少しアップ。

さて、最後に・・・リピート率が高い事から一度乗ると病み付きになると言われるV4に既に病み付きになってるオーナーの方には申し訳ないのですが、日本においてVFRというバイクはホンダの大型バイクの中では比較的影が薄い方かと。

それは

「GOLDWINGの持つ存在感」

「RRの持つ速さ」

「CBの持つ所有感」

など消費者にとって分かりやすい物をVFRは持っていないから。なんでも器用にできる事から大成しない”器用貧乏”という言葉がこれ程似合うバイクは無いんじゃないかと。

ただホンダにとってVFRというバイクは大成し人気を呼んだそれら主要モデルと同じくらい大事なバイクなんです。その証拠がタンクに貼られているプレミアムバッチ。

プレミアムバッチ

2010年頃から貼られ始めたこのタンクバッチは何のバイクにでも付けられる物ではありません。ホンダの中でも限られたバイクにしか付けられない物。

今このバッチを付ける事を許されているのは、GOLDWING系、RR、CB1300/1100、CRF1200、NT1100・・・

VFRプレミアムバッチ

・・・そしてVFRだけ。

主要諸元
全長/幅/高 2140/750/1210mm
[2190/870/1360mm]
シート高 789~809mm
[815~835mm]
車軸距離 1460mm
[1475mm]
車体重量 242kg(装)
[244kg(装)]
※17年以降は+1kg
燃料消費率 18.9km/L
※WMTCモード値
燃料容量 21.0L
[20.0L]
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 781cc
最高出力 105ps/10250rpm
{107ps/10250rpm}
最高トルク 7.6kg-m/8500rpm
{7.9kg-m/8500rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後180/55ZR17(73W)
[前120/70R17(58V)
後180/55R17(73V)]
バッテリー YTZ12S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
IMR9D-9H
または
VNH27ZB
推奨オイル ホンダ純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.9L
交換時2.9L
フィルター交換時3.1L
スプロケ 前16|後43
チェーン サイズ525|リンク110
車体価格 1,250,000円(税別)
[1,280,000円(税別)]
※[]内はVFR800X
※{}内は17年以降モデル
系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)

VFR1200X(SC70) -since 2012-

VFR1200X

「Adventure starts here.」

VFR1200Fのクロスオーバーモデル。最初は無限仕様(VFR1200X、DCTモデルはXD)として100台限定で発売し、2014年からDCTモデルのみ国内正規取り扱いとなりました。

車もバイクもそうですが、DCTって一般的なATやCVTと違ってあんまり批判されないというかMT至上主義者にも認められる印象を受けますね。それは恐らくMTと変わらないダイレクト感があるからでしょう。

じゃあどういう仕組なのかって話ですが、DCTというのはデュアル・クラッチ・トランスミッションといってザックリ言ってクラッチを二つ付けているという文字通りの仕組み。

SC63E DCT

まず一般的なミッションの仕組みを知らないと分からないと思うので説明すると、一般的なバイクは常時噛み合い式というミッションです。車の選択摺動式とも違います。

常時噛合式というのはこれまた文字通り、ローからトップまで全てのギアが常に噛み合って回っている状態。

常時噛合式トランスミッション

じゃあどうやって変速してるのかというと常時噛み合ってはいるけど全部が空回りしている状態なんです。

常時噛合式トランスミッション

なかなか酷い塗り絵ですが、赤く塗られたギアはシャフトに繋がっていてシャフトと一緒に回るギア、青く塗られたギアはシャフトに繋がっておらず空回りするギアになっている。分かりやすいようにメインとカウンターを離しています。

色分けを見てもらうとわかる通りキッチリ青の反対側は赤、赤の反対側は青と別れており、全部が空回りする状態なのが分かるかと。ちなみにこれはニュートラルの状態です。

じゃあ発進する時はどうなってるのかというと左下の緑枠の部分に注目。

常時噛合式トランスミッション

シフトペダルでカコンと一速に入れると、カウンターシャフトに直結している空回りしない赤い五速カウンターの黄色の部分が、空回りする青い一速カウンターに連結されます。

すると空回りしていた青い一速のカウンター側の回転につられて五速のカウンターが回り、結果カウンターシャフトが回る(動力が伝わる)というわけ。

ここから二速に入れようとしたら繋がっている五速カウンターがまた中央に戻り、今度は六速のカウンターが二速のカウンターに連結する・・・分かりますかね。

シフトチェンジで蹴られたりするのはこの黄色の部分が上手く入れなかったりするからです。

SC70エンジン

んで本題のDCTですが常時噛合式の仕組みが分かれば簡単です。

DCTはクラッチが二つあるわけですが、担当しているギアが違います。一つは1-3-5速でこれは二重構造になっているシャフトの内側(奥側)に付いてる、もう一つは2-4-6速でこれはシャフトの外側(手前側)と交互に担当するように付いている。

DCTの仕組み

もうお分かりだと思いますが、こうすることで二つのギアを繋げた状態に出来る。

1速を連結させて走っている時でも、二速も連結させクラッチを切って動力を伝えない状態で走る事が可能なわけです。そして二速にシフトアップする時は一速担当のクラッチを切りつつ二速担当のクラッチを繋ぐだけ。

マニュアルとDCT

回転数の落ち込みが低いのはこうやって次のギアが既に繋がっておりクラッチを切り替えるだけだから。そしてダイレクト感がMTと変わらないのは基本的にMTと同じ構造だからというわけです。

なんかVFR1200Xの話ではなくDCTの話になって申し訳ないです。

SC70

ただVFR1200XにはDCTが本当によく合ってると思います。

道をあまり選ばないとはいえ流石にこのクラスを道を選ばずに振り回せる人なんてほとんど居ない。どちらかというとおっかなびっくりは人がほとんどでしょう。

そういう状況で一番起こるのが恐れすぎてエンストを起こし転けてしまう事。DCTならそれが防げるわけですから。

再編に伴いページがどっかに消えちゃったのでここに追記しておくと、一応800(RC46)ベースの方もXモデルとしてCrossrunner(RC60)がありました。

VFR1200X

コチラは正規販売されることなく無限が逆輸入しVFR800X Crossrunnerという名前で200台用意したのみ・・・ついでの紹介で申し訳ないです。

主要諸元
全長/幅/高 2280/915/1320mm
シート高 810mm
車軸距離 1590mm
車体重量 288kg(装)
燃料消費率 16.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 21.0L
エンジン 水冷4サイクルOHC4気筒
総排気量 1236cc
最高出力 106ps/6000rpm
最高トルク 12.7kg-m/5500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/80R19(59V)
後150/70R17(69V)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
IMR8E-9HES
または
VUH24ES
推奨オイル ホンダ純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.9L
交換時3.6L
フィルター交換時3.9L
フィルター&クラッチ交換時4.0L
スプロケ
チェーン
車体価格 1,750,000円(税別)
系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)

VFR1200F(SC63) -since 2010-

VFR1200F

「ランチは300km先の高原ホテルで」

型式がRCからSCに変わった通り、排気量がリッター超えの1237ccと大幅にアップし、完膚なきまでにツアラーとなったVFR1200F(SC63)。

これは先代(RC46)を振り返った開発者がインタビューで漏らしてたんだけど

「先代はツアラーでありつつスポーツ性も取ってしまったので不鮮明な特性になってしまった」

という事があったから。

ホンダとしてはなんでもこなせるスーパーオールラウンダーとして作ったけど、消費者には器用貧乏に見えてしまったんだね。

SC63

VFR1200Fが完全なツアラーになったのはそういった背景があったからなんだけど

「新型VFRはSOHC」

という事が凄く批判されたのを覚えています。

VFR1200Fエンジンヘッド

バルブを動かすカムシャフトが一本なのがSOHC、二本なのがDOHC。

二本のほうがバルブを正確に動かせるから高回転まで回せる=馬力を上げられる・・・つまり

「DOHC=高性能|SOHC=低性能」

という事。だから騒がれたんですね。読んでる人も

「SOHCとかショッパイなあ」

とか思った人も多いでしょう・・・が、これが実に甘い考え。これは異性を髪型だけで判断する様なものです。

VFR1200Fリア

このSOHCはユニカムバルブトレインといってバルブを狭角に出来る上にDOHC並みのバルブ駆動を可能としたホンダの新しいSOHC・・・ってそんな最先端SOHCかどうかは重要じゃない。

重要なのは”何故SOHCにしたのか”という事。

これは先代エンジンベースではなくVFR1200Fの為に作られた専用エンジンなんですが、これまでのVFR史を覆すハイテクで意欲的なエンジンなんですよ。恐らくオーナーですらよく理解してないでしょう。

SC63エンジン

エンジンをよく見てください・・・Vバンク角(シリンダーの開き角)が理想とされる90度じゃない。これまでずっと守ってきた(というか当たり前だった)90°ではなく76°という狭角になっている。

何故バランスが取れている90°から狭角にしたのかといえばV型のデメリットである前後長を抑えるため。

ただ狭角にするというのはV字を立てるわけなので今度は全高が伸びてくる。そこで伸びた全高を抑えるため吸気側一本で駆動するSOHCにすることで排気側(エンジンの外側)のヘッドを削りコンパクトにしたというわけ。

ちなみにこのエンジンを作られたのは石井勉さんという方なんですが、MotoGP車両RCV(V5やV4)のエンジニアやHRCの総監督をされた結構偉い方でMotoGP車両同様に”エンジンを球形に収める”という事を徹底されたようです。

SC63E

SOHC化によるエキゾースト側のコンパクト化が如何に生きているかが、そしてそれによってエンジンがかなり前方へ寄せられているのがわかりますね。

90度と76度

が、しかし狭角にすることの問題は全高だけではありません。

90°以外では相殺し合っていた振動のバランスが崩れて大きな振動が生まれてしまうんです。そこで崩れたバランスを補う為に考えられたのがホンダが昔からやってた位相クランクとよばれる一風変わったクランク。

V4クランク

本来ならば一つのクランクピンに二つの前後用ピストン(コンロッド)を付けるVツイン+VツインでV4とする所を、2つ目のピンを付ける部分を28°ズラして付けている。

VFR1200F位相クランク

「76°と28°だと90°にならないじゃない」

と思われるかもしれませんが、位相角の求め方は”180-(シリンダー挟み角×2)”で、VFR1200Fの狭角76°に当てはめると

180-(76×2)=28

だから28°位相というわけ。

これで振動の問題はクリア出来てるわけですが、新たなデメリットとして2つ目のコンロッドを付ける際にクランクウェブと呼ばれる仕切りが必要になってしまう分エンジンの幅が大きくなってしまう。

そこでVFR1200Fのエンジンではさらなる工夫として左右対称シリンダーを採用。

左右対称シリンダーV4

従来のV4は左からピストンが後(1番)→前(2番)→後(3番)→前(4番)という”後→前”を二つ並べたようなレイアウト。対してVFR1200Fは前(1番)→後(2番)→後(3番)→前(4番)と並べた形ではなく逆に付けている。

V4ピストンレイアウト

こうすることで後(2番)→後(3番)をリアバンクつまりライダー側に持ってくる事で大幅なシェイプアップをしている。

だから見た目ではデカくて難しそうなイメージを抱きがちだけど、跨ってみると意外と細身で、乗ってみると意外と気を使わない優しいバイクだったりします。

そしてVFR1200Fで語るべき事がもう一つ。それは唯一無二のV4ビート。

これは

「V型360°クランク76°狭角28°位相クランクピン四気筒」

という呪文のようなエンジンだから成せた技。

V4クランク角

256°→360°→616°→720°という180°クランクとも360°クランクとも、Vツインとも直四とも違う、このVFR1200Fだけの点火タイミング。そしてエンジンフィーリング。

VFR1200F_DCT

こだわり抜いたエンジンが奏でるV4ビートと銘打たれている理由はここにあります。

半年後にDCTモデルを追加し、更に2012年にはトラクションコントロールシステム、LEDテールランプ。燃料タンクの1L増量などのマイナーチェンジが入っています。

他にも電子制御スロットルやタンクとサイドカウルが一体化したようなデザイン面とか色々あるんだけど長くなってしまったので申し訳ないですが割愛させてもらいます。DCTについても次の車種で。

ただ最後に・・・

VFR1200Fファイナルモデル

VFR1200Fの短所はSOHCや111馬力(海外172馬力)という事。長所はそうすることで成し得たコンパクト化や唯一無二のV4フィーリング。

つまりVFR1200Fというバイクは

“買われる為の要素を捨て、使われる為の要素を取ったバイク”

ということ。ただ残念ながらソコまでの狙いを汲み取って買った人が多かったかというと・・・商売って難しいですね。

主要諸元
全長/幅/高 2250/755/1220mm
シート高 790mm
車軸距離 1545mm
車体重量 268kg(装)
[278kg(装)]
燃料消費率 20.5km/L
[22.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 水冷4サイクルOHC4気筒
総排気量 1236cc
最高出力 111ps/8500rpm
{172ps/10000rpm}
最高トルク 11.3kg-m/6000rpm
{13.1kg-m/8750rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後190/55R17(75W)
バッテリー YTZ14S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
IMR8E-9HES
または
VUH24ES
推奨オイル ホンダ純正ウルトラG1
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時3.0L
フィルター交換時3.2L
[全容量4.9L
交換時3.6L
フィルター交換時3.9L
フィルター&クラッチ交換時4.0L]
スプロケ
チェーン
車体価格 1,500,000円(税別)
[1,600,000円(税別)]
※[]内はDCTモデル
※{}内は海外仕様
系譜図
VF750S/M1982年
VF750
SABRE/MAGNA
(RC07/RC09)
VF750F1982年
VF750F
(RC15)
VF1000R1984年
VF1000F/R
(SC16)
750F1986年
VFR750F
(RC24)
750R1987年
VFR750R
(RC30)
RC361990年
VFR750F
(RC36)
RVF1994年
RVF
(RC45)
前期1998年
VFR
(RC46前期)
8002002年
VFR
(RC46後期)
1200F2010年
VFR1200F
(SC63)
1200X2012年
VFR1200X
(SC70)
800F2014年
VFR800F/X
(RC79/RC80)