TMAX(4B5)-since 2008-

三代目TMAX

「スポーツコミューターの進化」

初めてのフルモデルチェンジとなった三代目のTMAX/4B5型。

最初に変更点を上げると

・アルミフレーム
・モノブロックMOSキャリパー
・エンジンのリセッティング
・新設計アルミホイール
・フロントも15インチへ
・キャスター角やホイールベースの見直し
・燃料タンクを+1Lで15Lに

などとなっていますが、何より特筆すべきはフレーム。

SJ08J

なんとフレームがアルミのしかもダイキャスト製というスクーターにあるまじき豪華なものになりスポーツ性が更に向上。

加えてブレーキキャリパーもR1と同じ住友のMOSキャリパーを奢られ、もう本当に

「お前はスーパースポーツか」

と突っ込みたくなるような構造に。

2008TMAX

ヤマハの資料によるとこの頃は欧州だけで20000台/年という更にありえないほどの売れっぷり。当時の欧州ビッグスクーター市場は50000台前後なので約半数をTMAXが占めてる事になる。どんだけ・・・ちなみにメインはイタリアやフランス。

向こうのヤマハ販売店は一店舗でTMAXを年間300台売ることも珍しくないんだとか。

TMAX WGPカラー

念の為に言っておきますが向こうでも決して安い乗り物ではないです。日本と変わらない値段。

じゃあなんで売れるのかっていうとA2免許(日本でいう普通二輪)という事もあるんでしょうが、一番はスクーターに対する認識の違いでしょうね。

主要諸元
全長/幅/高 2195/775/1445mm
シート高 800mm
車軸距離 1580mm
車体重量 222kg(装)
燃料消費率 25.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 499cc
最高出力 38ps/7000rpm
最高トルク 4.5kg-m/5500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-15(56H)
後160/60-15(67H)
バッテリー YTZ10S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 900,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX(5UV)-since 2004-

二代目TMAX

「より高いライディングプレジャー」

僅か三年足らずでモデルチェンジとなった二代目のTMAX/5UV型。

最初に変更点を上げると

・フロントフォークのインナーチューブ径アップ
・5本スポークホイール
・リアホイールを14インチから15インチへアップ
・フロントWディスクブレーキ化
・前後ラジアルタイヤ化
・FI化と圧縮比の向上
・三元触媒の採用
・新設計デジタルメーター
・パーキングブレーキ

などとなっています。

二代目TMAXカラーバリエーション

この頃もう既にTMAXによって欧州でもビッグスクーターブームが起きててライバル車が数多く出ていたんですが、一番人気キングオブスクーターの座はパイオニアだったTMAXで変わらず。

理由はもちろん初代でも話した通りビッグスクーターの延長線上にいるスポーツモデルではなく、スポーツバイクの延長に居るようなビッグスクーターだったから。

SJ04J

結果としてTMAX人気は留まるところを知らず発売から僅か三年で4万台を超える販売台数を記録。その後も一万台以上/年をコンスタントに売り上げ欧州ヤマハの顔にまで成長しました。

売れるから開発費が掛けられる、開発費が掛けられるから良いモデルが造れるという正のスパイラルに突入したわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2235/775/1235mm
シート高 795mm
車軸距離 1575mm
車体重量 225kg(装)
燃料消費率 27.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 499cc
最高出力 38ps/7500rpm
最高トルク 4.6kg-m/4500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-14(55H)
後160/60-15(67H)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 809,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TMAX(5GJ)-since 2001-

初代TMAX

「ニュー・オートマチック・スポーツ」

キングオブスクーターことTMAXの初代モデルである5GJ型。

当時のヤマハとしてはTMAXはビッグスクーターじゃないという旨の事を言っていて、公式サイトでもスクーターカテゴリじゃなくスポーツバイクカテゴリに入れていました。

その根拠は何かって話ですが、それは構造にあります。

初代TMAX

確かにTMAXはオートマチックに加え33Lのトランクスペースというビッグスクーターの武器を備えているんですが、ビッグスクーターらしさがあるのはほぼそれだけ。

まず第一にビッグスクーターといえばフレームはネイキッドのフレームを押し下げたアンダーボーンやダブルクレードルフレームが一般的なんですが、TMAXは水平に寝かせた並列二気筒エンジンを剛性メンバーとして積極的に使うダイヤモンドフレームに積んでいる。

TMAX500内部

そしてフロントフォークもブラケットで懸架されたオートバイタイプ。

さらに駆動方式もスイングアームとエンジンが一体になっているスイングユニット式が一般的なのに対し、リアアームが分かれているスイングアーム式で最終駆動もチェーン。

これはスイングユニット式だとエンジンをダイレクトマウントして剛性メンバーとして使うことが出来なくなる上に、バネ下重量が激増してしまい路面追従性が悪くなってしまうから。

チェーン式無段階変速機

つまり簡単にいうとTMAXっていうのは見た目はスクーターのなんだけど造りは完全にスポーツバイクなんですね。

これがTMAXがスクーターじゃないと言われる所以で開発者は

『YZF-R5』

を目指して造ったとの事。

XP500

「そもそも何故こんなモデルを造ろうと思ったのか」

という話ですが、これはヤマハが1995年に出したビッグスクーターの代表格としてお馴染みマジェスティにあります。元々マジェスティは日本向けに出した面が強かったんですが欧州でも販売したところ

「荷物も詰めてソコソコ機敏に走れる楽ちんバイク」

として予想外のヒットとなった。

しかし向こうの人は体格の大きくスポーツ性にもうるさいのでソコを狙って開発されたのが

「テクノロジーをマックスで詰め込んだTMAX(Tech MAX)」

というわけ。

2003TMAXブラックエディション

その狙いは見事に的中し、初年度の欧州だけで9000台も販売。キングオブスクーターとして大好評となりました。

ちなみに日本のグッドデザイン賞を受賞したバイクでもあるんですが、その中でも金賞を獲得したのは国産バイクではこのTMAXだけだったりします。

主要諸元
全長/幅/高 2235/775/1235mm
シート高 795mm
車軸距離 1575mm
車体重量 218kg(装)
燃料消費率 30.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 499cc
最高出力 38ps/7000rpm
最高トルク 4.5kg-m/5500rpm
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前120/70-14(55S)
後150/70-14(66S)
バッテリー GT9B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.6L
交換時2.8L
フィルター交換時2.9L
スプロケ
チェーン
車体価格 740,000円(税別)
系譜図
SJ02J 2001年
TMAX
(5GJ)
SJ04J 2004年
TMAX
(5VU)
SJ08J 2008年
TMAX
(4B5)
SJ12J 2012年
TMAX530
(59C)
2015SJ12J 2015年
TMAX530
(2PW)
2017TMAX 2017年
TMAX530SX/DX
(BX3/BC3)
2020TMAX 2020年
TMAX560/TECH MAX
(B3T/B7M)

TRICKER(5XT後期)-since 2008-

二代目トリッカー

「Ride on!」

二代目にあたる2008年からの5XT後期型。

排ガス規制に対応するためFI化と吸気ポートの形状変更で対応しつつトルク感を更に向上。

他にもタンク容量を1.2L上げて7.2Lにすることで航続距離まで伸び、サスとシートの見直しが入っています。

二代目トリッカーのフューチャーマップ

さて・・・先代で話しそびれたのですがTRICKERは一言で表すならば

『街中トライアルバイク』

と言える良い意味で非常識なバイクなんですが、その印象に一役買っているのがデザインでこれも非常に考えられているわけです。

デザインしたのはもちろんGKで飯村さんという方なんですがテーマは『CD/MDウォークマン』だったそう。

二代目トリッカーS

「常に一緒にあり楽しませてくれる」

という事からなんですが確かに言われてみればガジェットな感じがありますね。

ただそれだけじゃなくてもう一つミソなのが縦のデザインというやつ。

二代目トリッカーS

通常バイクというのはフレームの上にタンクやシートを載せるような形なので『横基調のデザイン』になっているわけですが、このトリッカーはその常識を破り『縦基調のデザイン』にする事を大事にされたわけです。

それを最もよく表しているのが何を隠そう突き刺さる様に立っている細長いタンク。

トリッカーのタンク

ニーグリップもスタンディングも出来て、なおかつ縦基調にするという非常に考えられた形状。

この形状を実現させるためにトリッカーのタンクは一般的な3ピース構造ではなくモナカ合わせの2ピースになっています。

どうしてそこまで縦に拘ったのかと言えばもちろんTRICKERというバイクは

黒トリッカー

「飛んだり跳ねたりして遊ぶバイクだから」

ですね。

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 810mm
車軸距離 1330mm
車体重量 125kg(装)
燃料消費率 39.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.2L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 18ps/7500rpm
最高トルク 1.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 436,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

TRICKER(5XT)-since 2004-

2004年式トリッカー

「遊びの天才」

2004年に登場したBMXをバイク化したようなトライアル系ともフリースタイル系ともX系とも言える佇まいの初代トリッカーことXG250 TRICKERの5XT型。

プロジェクトリーダーがセローの生みの親である近藤さんである事や、少し後に同じエンジンを積んだセローが出たことから

『セローの派生モデル』

というイメージで片付けてしまいがちですが全くもって異なるモデルです。

このトリッカーは

コンセプトスケッチ

「みんなが夢中になって楽しめるバイク」

という開発コンセプトを元に造られたモデルで、下の写真は最初に登場した2003年東京モーターショーモデル。

トリッカープロ

真ん中にいるのはコンセプトを先鋭化したPROモデルで右にあるのは原付版のチビッカー。

そもそもこのプロジェクトの発端となったのが何処にあるのかというと商品企画の樋口さんが

「ストリート軽二輪の売れ筋がTWしかない」

という状況に懸念を抱いた事がキッカケ。

そこで幾つか案を出してプレゼンしたところ社内で一番人気が高かったのが

『コンパクト&パワフルで振り回せるバイク』

というコンセプトだった。

これがトリッカーの素案になります。

ヤマハTRICKER

そうしてセローの生みの親でありかつてはトライアル選手でもあった近藤さんをプロジェクトリーダーに据え開発が開始。

「振り回して楽しいとはなんぞや」

と議論と数々の試走を重ねた結果

・スムーズにターン出来る

・段差を楽に超えられる

・ウイリーが簡単に出来る

などの小排気量が得意とする要素から大排気量が得意とする要素まで様々な意見が出された。

そしてこれらの意見をまとめる際にベンチマークとなったのがキッズ向け2stモトクロッサーYZ80とSEROW225の二台。

トリッカーとYZ80とセロー

同じ取り回しの良さを持ちつつもパンチがあるYZ80と安心感のあるSEROW225。

「この二台の良い所取りをしたバイクを」

となったわけです。

それを実現するためにTRICKERは本当に無茶な事をやっています。

何が無茶ってセローよりも小さく短いフレームにセローより大きいエンジンを押し込んだから。

トリッカーのディティール

しかもシート高もセローより低くするという無茶なオマケ付き。

このレイアウトはフレームを何百回もミリ単位でやり直した末に何とか形に出来たもので、プロジェクトリーダーの近藤さんも

初代トリッカー

「このバイクはシート下に凝縮という名の芸術が詰まっている」

と豪語するほど。

そうしてセローより20mmも低い全長とシート高のコンパクトで足つきベッタリな、更には125かと思うほど短かいホイールベースとパンチがあるエンジンで振り回せるトリッカーが完成した。

トリッカーのフューチャーマップ

ただトリッカーにはもう一つ絶対条件がありました・・・それは

「40万円を切ること」

です。

これがどうしてかというと近藤PLを始めチームのみんなが

「若者にバイクの本当の楽しさを伝える必要がある」

という危機感を持っていたから。

TRICKER

若者に乗ってもらうにはシート高を始めとした取り回しはもちろんのこと車体価格も安くしないと選んでもらえない。

だから車体価格もギリギリまで詰めて40万円を切ることも絶対で、実際に車体価格は税別ながら399,000円を切った安さだった。

そのため質感への予算はほとんど設けられず、それらは翌年から発売された特別塗装やメッキなどが施された+2万円のトリッカーSでカバー。

TRICKER-S

一体なぜそんなに若者に対する危機感を持っていたのかというと少子化・・・じゃない。

当時の若者に圧倒的に支持されていたバイクがビッグスクーターだったからです。

ビッグスクーターブーム

この頃は空前のビッグスクーターブーム。まだ記憶に新しい人も多いと思います。

そんな状況に対し

「ビッグスクーターでは若者のバイク愛は育たない」

という危機感を覚えた開発チームの思いが振り回して遊べるトリッカーを生んだわけです。

広報の加藤さんいわくトリッカーは

TRICKER/5XT

「打倒ビッグスクーターの意気込みで造った」

との事・・・自分たちがマジェスティで生んだブームを自分たちで倒しにかかるっていう。

※インタビュー記事:別冊モーターサイクリスト317

主要諸元
全長/幅/高 1980/800/1145mm
シート高 790mm
車軸距離 1330mm
車体重量 120kg(装)
燃料消費率 50.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 6.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 21ps/7500rpm
最高トルク 2.14kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-19(49P)
後120/90-16(63P)
バッテリー TYZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク124
車体価格 399,000円(税別)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)
系譜図
2004トリッカー2004年
Tricker
(5XT)
2009トリッカー2008年
Tricker
(5XT後期)
2018トリッカー2018年
Tricker
(B8C)

SR400(RH01J) -since 2001-

RH01J

「シンプルであること」

五代目SR400ことRH01J型。このRH01Jというのは車検証やフレームに刻印されている車体型式で、これまで言っていた2H6や1JRといったモデルコードではありません。

というのも何故かこのモデルではモデルコードが変わらず先代同様3HTのままだから。(正確には3HTC~3HTS型)

主な変更点としてはキャブレターのセッティングの変更とエアインジェクションによる排ガス規制対応、更にドラムだったブレーキは再びディスクになりました。

初代とは反対の右側に付いてるのが特徴です。

RH01Jカタログ写真

2003年にはイモビアラーム、スロットルポジションセンサー、マフラー構造の変更などのマイナーチェンジが入っています。

少し残念な事にSR400は続いたものの、SR500は21世紀を迎えること無くカタログ落ちとなりました。

SR500最終モデル

ここでちょっとSR500の話をすると、排気量から見ても分かる通り日本の免許制度が変わった後は主に輸出向けとして展開していました。

最初は北米に向けて出していたんですが・・・

「なんだこのバイクは」

と全く理解されず数年でカタログ落ち。

しかしその一方で欧州では保険料の兼ね合いもあり

「気軽に楽しめるファンバイクだ」

として好評でした。

SR500ドイツ

中でもドイツで非常に人気を呼び、なんと意外な事に一時期は日本より売れていました。

ただその欧州向けも1999年モデルを最後に生産終了。

後にSR400が輸出されるようになるんですが、向こうの人からしたら

「なんで400なんだ」

と思っているでしょうね。

あともう一つ話しておかないといけない事があります・・・

SRミヤビ

SRは排ガス規制強化によりこのモデルで一度生産終了を迎える事になるのですが、実はこのRH01J型が誕生する少し前の1995年に一度生産終了しているんです。

理由はエンジンの金型が老朽化して使えなくなってしまったから。

SRのエンジン

もう四半世紀以上に渡って造り続けた故の問題。

金型というのは用意するのにはお金が、所有するのには税金が掛かる物。ロングセラー車の生産終了や部品欠品が相次ぐのはこれが理由です。

でもヤマハはわざわざ新たに金型を用意した・・・それもダメになった四半世紀前の金型と同じものを。

SR400三十周年

これはもう製造ではなくクラフトの域ですよね。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1105mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 168kg(装)
燃料消費率 48.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
最高出力 27ps/7000rpm
最高トルク 3.0kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/100-18(54S)
後110/90-18(61S)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6ES
または
W20EPR
推奨オイル ヤマハ純正オイル
エフェロSJ/SG/SF
10W-40から20W-40まで
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前19|後56
チェーン サイズ428|リンク130
車体価格 450,000円(税別)
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

TDM900/A(5PS/2B0)-since 2002-

TDM900

「SPORTS ALL ROUNDER」

排気量を更に上げて897ccとなったTDM900/5PSとABS付きのTDM900A/2B0。

・アルミ鍛造ピストンとメッキシリンダー

・フューエルインジェクション化

・アルミダイヤモンドフレーム

などなど人気車種なだけありお金がかかってるモデルチェンジ内容になっています。

変更点から見ても分かる通り更にオンロード性能と使い勝手を向上させており欧州では相変わらず好評で

TDM900サイド

「コミューターからスポーツツアラーまで色んなバイクの要素が詰まってる一台」

という高い評価でした。

2004年には小変更のマイナーチェンジとなり、更に2008年にはABS付きのTDM900Aも発売など非常に息が長いモデルに。

850と900を合わせると累計生産台数は10万台を超えるほどだったそう。

TDM900A

そんなTDM900は一部の国を除き8年間も販売され2010年モデルをもって後継を出すこと無く生産終了となりました。

「人気車種なのになんで」

とも思う話なんですが、実はこの頃になると再びオフロード(アドベンチャー)ブームが巻き起こっていたんです。つまり市場が再びTDMではなくスッテネを求めるようになったというわけ。

TDM900Aカタログ写真

そのため多くの人の下駄として、ツアラーとして、そしてワインディングマシンとして活躍したオンロードテネレ・・・言い換えるなら

「オンロードラリーのTDM」

の役割はここで終える事になりました。

主要諸元
全長/幅/高 2180/800/1290mm
シート高 825mm
車軸距離 1485mm
車体重量 221kg(装)
[224kg(装)]
燃料消費率
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 897cc
最高出力 86.2ps/7500rpm
最高トルク 9.1kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR18(59W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー GT12B-4
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.7L
交換時3.8L
フィルター交換時3.9L
スプロケ 前16|リア42
チェーン サイズ525|リンク118
車体価格 950,000円(税別)
※プレスト価格
※[]内はABSモデル(2B0)
系譜図
XTZ750 1989年
XTZ750SUPER TÉNÉRÉ
(3LD/3TD/3VA)
TDM850前期 1991年
TDM850
(4EP/3VD)
XTZ850R 1995年
XTZ850R/TRX
RDM850後期 1996年
TDM850
(5GG/4XT)
TDM900 2002年
TDM900/A
(5PS/2B0)
XT1200z 2010年
XT1200Z
SUPER TÉNÉRÉ
(23P)
XT1200ze 2014年
XT1200ZE
SUPER TÉNÉRÉ
(2BS/2KB)

SEROW250(DG17J) -since 2008-

七代目セロー

「ようこそSEROW WORLDへ」

七代目セローことSEROW250/DG17J型。通称型式でいうと3C56~B1H1まで。

最大の特徴はFI化ですが同時に吸気ポート形状変更等で環境性能だけでなくトルク感も向上。フロントフォークなども見直されています。

DG17Jフューチャーマップ

そしてこのモデルでもう一つ紹介しておかないといけないが長距離走行を考慮したモデル。

その名もツーリングセロー。

ツーリングセローDG17J

セローをベースに

・大型スクリーン

・ブラッシュガード

・大型リアキャリア

・アルミアンダーガード

を採用したモデル。

先代の時点でもワイズギアから色々出ていたんですが、それを取捨選択して上手くパッケージングした事から人気が出ました。

一番最初に紹介したAG200を彷彿とさせますね。

これが出たのももちろんユーザーからの要求というかフィードバックが理由。

ツーセロー

取り回しの良さからマルチに使われるようになったセローを、今度は長距離のツーリングやそれこそ旅に使う人が増えてきたから。

20年以上経ってもなおユーザーと共に成長している事の証のようなモデルです。

さてさて、セローの証といえばここで一つクイズというか小ネタを。

大事に造られているセローですが、初代から一貫して守り続けているパーツがある事をご存知でしょうか。

2015年式セロー

それは目立たないけどセローを象徴する、またセローにとっては命綱の様な部品。

正解はフロントに一つ、リアの両サイドに二つ付いているスタンディングハンドルです。

スタンディングハンドル

これは車体を引き起こす際に取っ手として役に立つパーツ。

見て分かるようにリアは重心から遠いシートに、そしてフロントはステア回りについています。

”とにかく細く・軽く・低く”が大事なセローでこの三本ものスタンディングハンドルは非常に重荷・・・でもセローは初代から例え250になろうと絶対に外される事はありませんでした。

セローワールド

何故かといえば

「安心して森を走る事ができる」

というコンセプトに絶対欠かす事が出来ないパーツだからです。

このスタンディングハンドルがあれば、どんな場所でもどんな角度からでも簡単に安全に起こせる。

セロー250DG17J

それはつまりどんな時も安心して転べる、安心して前に進めるという事。

セローがどんなバイクを最もよく表している部分はこのスタンディングハンドルなのかもしれないですね。

主要諸元
全長/幅/高 2100/805/1160mm
シート高 830mm
車軸距離 1360mm
車体重量 130kg(装)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.6L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 18ps/7500rpm
最高トルク 1.9kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21(45P)
後120/80-18(62P)
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル ヤマルーブ プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア48
チェーン サイズ428|リンク128
車体価格 470,000円(税別)
[490,000円(税別)]
※[]内はSモデル
系譜図
XT2001982年
XT200
(23J/47J)
セロー225-1kh/1rf/2ln1985年
XT225SEROW
(1KH/1RF/2LN)
セロー2253RW1~41989年
XT225SEROW
(3RW)
セロー225-3RW5/4JG1~41993年
SEROW225W
(4JG)
セロー225-5MP2000年
SEROW225WE
(5MP)
セロー250-DG112005年
SEROW250
(DG11J)
セロー250-DG172008年
SEROW250
(DG17J)
セロー250-DG312018年
SEROW250
(DG31J)

SEROW250(DG11J) -since 2005-

六代目セロー

「SEROW is SEROW」

250となった六代目セローことSEROW250/DG11J型。

DG11Jというのは認定型式で通称型式でいうと3C51~3C55まで。分かりにくいので認定型式を書いています。

【補足:認定型式と通称型式について|バイクのはてな

新フレーム及び高性能軽量サスペンション、スーパーローも廃止され若干オンロード寄りになりました。

何故250にしたのかというと、これまた理由が二つあります。

一つは開発チームいわく

「225は先代でほぼ完成してしまった」

という事。20年近い改良の積み重ねの賜物ですね。

DG11J壁紙

そしてもう一つは

「多目的に使う人が増えた」

という事。

多目的というのは要するに公道をメインに使う人が増えてきたという事。

これらの理由から250へのスケールアップが決まったわけです。

マウンテントレールSEROW

で、これが出た時

「250なんてセローじゃない」

って声が多く聞かれました。

225がセローの証だったから無理もない話ではありますが、実はそれ開発でも言われていたんです。

3C5各部詳細

この250セローからプロジェクトリーダーは車体設計を担当していた石塚さんになったんですが、土台となるプロトタイプを造って社内の色んな人間に試乗してもらったところ

「こんなのセローじゃない」

という声が多く返ってきた・・・理由はもちろん250化による重量増が原因。

オーナーを始めとしたセローファンのセローに対する思い入れに負けずとも劣らないほどヤマハの中にもセローに思い入れがある人が多かったわけですね。

だから石塚さんを始めとした開発チームは250でもセローだと認めてもらうために必死になって開発。

デジタルメーター

例えばセロー250からメーターはデジタルになりましたが、これ新しいからデジタルにしたわけじゃないんですよ。メーターケーブルなどを省略できて軽量化になるからデジタルメーターにしたんです。

これ自体は僅か800gの軽量化にしかならないんですが、操舵周りなので体感的な軽さは800g以上ある。

3C5壁紙

他にもフロントフォークの材質を高強度なものにし肉薄化する事で500gの軽量化など徹底的なマスの集中化をよる軽快感を出すために、ひと目では分かりにくい部分まで様々な部分をプロトタイプから大幅に見直し。

そのおかげで車重は僅か+4kgに留まり、軽快感は先代以上に向上。

「セローじゃない」

と言っていた並々ならぬセロー愛を持つ社内の人間を納得させるセローが完成したわけです。

ちなみにこのモデルからワンランク上の塗装を施したSモデルが追加。

20thセロー

これはその中の一つ・・・ちょっと森とは友だちになれそうにないカラーリングですね。

主要諸元
全長/幅/高 2100/805/1160mm
シート高 830mm
車軸距離 1360mm
車体重量 126kg(装)
燃料消費率 45.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 9.8L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 21ps/7500rpm
最高トルク 2.1kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21(45P)
後120/80-18(62P)
バッテリー YTZ7S
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR7EA
推奨オイル エフェロ プレミアム/スポーツ/ベーシック
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.4L
交換時1.2L
フィルター交換時1.3L
スプロケ 前15|リア48
チェーン サイズ428|リンク128
車体価格 440,000円(税別)
系譜図
XT2001982年
XT200
(23J/47J)
セロー225-1kh/1rf/2ln1985年
XT225SEROW
(1KH/1RF/2LN)
セロー2253RW1~41989年
XT225SEROW
(3RW)
セロー225-3RW5/4JG1~41993年
SEROW225W
(4JG)
セロー225-5MP2000年
SEROW225WE
(5MP)
セロー250-DG112005年
SEROW250
(DG11J)
セロー250-DG172008年
SEROW250
(DG17J)
セロー250-DG312018年
SEROW250
(DG31J)

SEROW225WE(5MP) -since 2000-

五代目セロー

「MASTER OF FIELDS」

五代目セローの5MP型。このモデルからXTの名が取られSEROW225WEとなりました。

まあ元々セローと呼ばれていたので全く違和感が無いんですが・・・ちなみに何故”SEROW”と付けられたのかというと

「岩場を軽快に渡るカモシカの様に」

というコンセプトを伝えるために採用されたわけですが、カモシカが選ばれた理由はもう一つ理由あります。それはカモシカは群れない性質を持ってたから。

発売当時は集団暴走行為が問題となっていた時期で、山の方もバイク乗り入れがどんどん禁止されていた時代だったんです。

ブラックセロー

そういうマナーがなっていないバイクになってほしくないという意味も込められているんです。

ちなみに最初はセローではなくシルバーフォックスだったそう・・・なんかイメージと違いますね。

それより5MPの主な変更点ですが

・アルミ鍛造ピストン採用

・メッキシリンダー

・エアインダクション(二次エア)

・スロポジ付き33mmBSRキャブレター

・リアホイールダンパー

となっています。

5MP壁紙

そんなWEで一つ紹介したいセローらしいエピソードがあります・・・それは車体テストの担当が渡辺さんという方になった事。

実は渡辺さんオフとは縁が無かった中で、いきなりセローの車体テストを担当に抜擢されたわけです。

そして右も左も分からない中で気になった点を開発に伝えていったわけですが、その声がちゃんと聞き届けられ市販化に反映された事に驚いたと仰っていました。

5MPカタログ写真

いかにもSEROWらしい話ですよね。

要するにオフロードに慣れている人なら気にならない事

「オフなんだから当たり前」

と片付けられてしまう常識という名の盲点を潰してこそのセロー、常識を破ったからこそのセローという考えをチームが持ち続けている事を示すようなエピソード。

SEROW225WE壁紙

SEROW225シリーズはこの5MP型で最後となります。

オーナーの間ではここまでのモデルを旧型セロー、略して旧セロ(キュセロ)と愛着を込めて呼んでいます。

ところで何で225(223cc)という中途半端な排気量だったのかというと

「軽さを犠牲にしないギリギリの排気量」

だったから。

SEROW225WE

企画にとらわれずマウンテントレールとして絶妙だった排気量。

それなだけあって225、いわゆる旧セロのファンは今でも多いです。

主要諸元
全長/幅/高 2070/805/1140mm
シート高 810mm
車軸距離 1350mm
車体重量 122kg(装)
燃料消費率 60km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 10.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 223cc
最高出力 20ps/8000rpm
最高トルク 1.9kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前2.75-21(45P)
後120/80-18(62P)
バッテリー GT6B-3
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
または
X24ESR-U
推奨オイル ヤマハ純正エフェロ
SJ/SG/SF
(10W-30から10W-40)
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.3L
交換時1.0L
フィルター交換時1.1L
スプロケ 前15|リア45
チェーン サイズ428|リンク120
車体価格 389,000円(税別)
系譜図
XT2001982年
XT200
(23J/47J)
セロー225-1kh/1rf/2ln1985年
XT225SEROW
(1KH/1RF/2LN)
セロー2253RW1~41989年
XT225SEROW
(3RW)
セロー225-3RW5/4JG1~41993年
SEROW225W
(4JG)
セロー225-5MP2000年
SEROW225WE
(5MP)
セロー250-DG112005年
SEROW250
(DG11J)
セロー250-DG172008年
SEROW250
(DG17J)
セロー250-DG312018年
SEROW250
(DG31J)