W400(EJ400A) -since 2006-

カワサキW400

「自己主張のあるモーターサイクル」

手堅い人気とセールスを記録していたW650の400cc版となるW400ことダブヨン。

W400カタログ写真

拘りは相変わらずで、単純に排気量を下げるだけでなくシート高も抑えるなど取り回し性への配慮が施されています。

そうしたのはW400は普通二輪で乗れるエントリー向けWだった事もあるんですが、それとは別にもう一つありました・・・それは女性ライダー需要です。

EJ400Aカタログ

W650は女性にも好評だったのですが如何せん大型。

そこで取り回しの優れたW400を用意し、カワサキ最大の弱点である女性ライダーに振り向いて貰おうと考えたわけです。

だからカタログも女性を起用し、積極的にアピール。

W400パンフレット

果たしてW400で女カワサキ・・・というか『姉御カワサキ』がどれくらい増えたのかは定かではありませんが、デビュー時は半年待ちになるほどの人気が出たことを鑑みても少なからず貢献しているのは間違いないでしょう。

そんなW400ですが実はもう一つ大きな貢献をしました・・・それは先に話したベベルギア製造設備のペイです。

W400ファイナルエディション

押し通すことでベベルギアとなったW650は人気だったんですが、設備をペイできるほどの台数では無かった。

そんな中で納車待ちになるほどの人気と台数が出たW400はカワサキにとって救世主ならぬ救世車だった。

EJ400A

2009年の生産終了となるまでW650と共にコツコツ造って売り、約10年を掛けて設備の減価償却が出来たんだそう。

主要諸元
全長/幅/高 2175/855/1115mm
シート高 765mm
車軸距離 1460mm
車体重量 193kg(乾)
燃料消費率 37.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC2気筒
総排気量 399cc
最高出力 29ps/7500rpm
最高トルク 3.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57H)
後130/80-18(66H)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CPR8EA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.5L
フィルター交換時2.8L
スプロケ 前15|後42
チェーン サイズ525|リンク106
車体価格 628,950円(税込)
系譜図
メグロ1960年
メグロシリーズ
W11966年
650-W1
(W1/S/SA)
650RS1973年
650-RS
(W3)
EJ6501999年
W650
(EJ650A/C/D/E)
EJ4002006年
W400
(EJ400A)
EJ8002011年
W800
(EJ800A)
EJ800A2019年
W800
STREET/CAFE
(EJ800B/C)

Ninja650R/ER-6n(EX650C/ER650C) -since 2009-

Ninj650R

基本的なコンセプトや設計は変えずデザインとエンジンマッピング見直しでスムーズさが増したC型。

2010年まではER-6fで2011年からNinja650Rとなってます。少しややこしいですね。

このモデルから生産がタイに移管されたわけですが、これには当然ながら川崎重工業の事情があります。

ZX150

このモデルが出る前からカワサキは現地資本との合併会社でタイ工場にて2stの小型バイクなどを作っていたんですが、90年代後半に起きたアジア通貨危機により現地資本側(問屋/小売側)が資金調達に行き詰まり会社の維持が困難に。

SOSを受けたカワサキは出資比率を高め、工場と販売権を買い取り。Kawasaki Motors Enterprise Thailand(KMT)として完全子会社する事になったわけです。

カワサキタイ工場

本当にタイミングが良かったと言うべきか

・KMT(タイカワサキ)ではアジア通貨危機によるアジア不況でバイクが売れず工場が遊んでる

・本社のある明石では車体価格を抑えるためのコスト削減をどうするかが課題になっている

という問題があった。

つまり予定には無かったKMTの誕生により本社とタイで思惑が一致しタイでグローバルモデルを作るという結論に至ったんですね。なんでも、タイで作ると明石工場(カワサキの国内工場)で作った場合と比べ労務費(要するに人件費)が1/10で済むそうです・・・そりゃ移管するわって話。

そしてそんなKMT発グローバルモデル第一弾のトップエンドとして選ばれたのが、厳しいコストパフォーマンスが求められるER-6になったというわけ。

ER650C

当時はまだアジア製が珍しかったら、日本のライダーも懐疑的でした。アジアで作ったバイクで品質は大丈夫なのかと。

実際のところカワサキも最初が肝心だと相当神経を尖らせたようで、明石から大量の応援を送った上に何重もの品質チェックを課すというコスト面よりも品質に重きを起きを置いたそうです。

EX650C

今では当たり前になってきたKMT(タイカワサキ)のバイクですが、このNinja650/ER-6nはそんなカワサキの新たな一歩となるグローバル戦略を象徴するバイクだったわけ。

主要諸元
全長/幅/高 2100/760/1200mm
[2100/760/1100mm]
シート高 790mm
[785mm]
車軸距離 1410mm
[1405mm]
車体重量 204kg(装)
[200kg(装)]
燃料消費率 -km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649cc
最高出力 72ps/8500rpm
最高トルク 6.7kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 780,000円(税別)
[760,000円(税別)]
※[]内はER-6n
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

ER-6f/n(EX650A/ER650A) -since 2006-

ER-6f

「Fun. Style. Easy.」
エンジン、フレーム共に新設計し磨きをかけた新生パラレルツインスポーツ。上の写真はフルカウルのER-6f(EX650A)です。

ER-6nカタログ写真

これは規制強化により主要市場だった欧州でずーっと売ってたGPZ500/Ninja500を売る事が難しくなったから。長いこと設計を変えないままでも高い評価を得ていたGPZ500/Ninja500のモデルチェンジはプレッシャーがすごかっただろうなと思う。クラスがクラスだからイタズラに性能上げればいいってわけでもないしね。

ネイキッドのnモデル(ER650A)はとっても個性的なデザイン。

ER-6n

面白いことに向こうでは日本とは対照的にネイキッドモデルのnの方がデザイン性の良さから人気が高かったみたいです。何でこの路線を止めたんだっていう批判もチラホラ見受けられるほど。

ER-6nフレーム

さて、このER-6でスポットライトを当てる箇所といえばやっぱりオフセットレイダウンリアサスペンションですかね。凄く目につくし。

今ではもっと寝かせたホリゾンタル・バックリンク・リアサスペンションですが、何でリアサスペンションをこんな寝かせてるのか簡単にお話。

分かりやすいように二本サスの新旧ネイキッド(Z1-RとZRX)で説明します。

Z1RとZRX

写真を見てもらうと分かる通りサスペンションの角度がZ1Rは立っててZRXは寝て(オフセットされて)います。

同じネイキッドなのに何故オフセットをするようになったのかというと・・・角度が付いてる方が沈みにくいから。

コーナリング時などのリアサスが沈む時を想像して欲しいんですが、沈むと黄点と赤点の距離が近くなりますよね。沈めば沈むほど同時に角度が更についてくるわけですが、元々の角度が浅い(立ってる)とスイングアームから来る力をそのまま受け取ってしまう為にサスペンション(ショックアブソーバー)の限界(底付き)が近くなってしまう。

それに対し角度が深い(寝ている)とスイングアームの力をそのまま受け取らないので動ける範囲が上がる(奥で踏ん張れる)というわけ。

ER-6fライムグリーン

まあしかしER-6の場合、限界を上げるためのオフセットというよりは足付きを良くするため(高さを抑えつつもストローク量を確保するため)のオフセットと言ったほうがいいと思います・・・じゃあ最初からそう言えよって話ですね。すいません。

主要諸元
全長/幅/高 2105/760/1210mm
[2100/760/1095mm]
シート高 785mm
車軸距離 1410mm
[1405mm]
車体重量 178kg(乾)
[174kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 15.5L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 649cc
最高出力 62.5ps/7000rpm
最高トルク 6.4kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YT12A-BS
プラグ CR9EIA-9
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格 780,000円(税別)
[760,000円(税別)]
※[]内はER-6n
系譜図
GPZ500S1987年
GPZ500S
EX500R
Ninja500R
(EX500A)
ER-51997年
ER-5
(ER500A/C)
ER-62006年
ER-6f
(EX650A)
ER-6n
(ER650A)
Ninja650R2009年
Ninja650R
(EX650C)
ER-6n
(ER650C)
Ninja6502012年
Ninja650
(EX650E)
ER-6n
(ER650E)
2017Ninja6502017年
Ninja650
(EX650K)
Z650
(ER650H)

VERSYS/ABS(LE650A/B) -since 2007-

KLE650A

「ストリートサーフィン」

ここで登場するのが今も続くヴェルシス650の始まりとなるVERSYS/LE650A型とABS付きのLE650B型で、日本に入ってきていた(ブライトが取り扱った)のはA型のみになります。

チラリと顔を覗かせるガチャピンエンジンからも分かる通りER-6がベースになったもののヴェルシスだけ特別に

・低中速に厚みをもたせるチューニング
・フルアジャスタブル倒立フォーク
・7段階プリロード及び13段階伸側減衰力の調節機能付きリアサス
・アルミスイングアーム
・19Lフューエルタンク

などのVIP待遇を受けています。

ガチャピンエンジン

念の為に補足しておくとガチャピンと言われる様になった理由はこれ。

先代比べて何が大きく変わったのかといえば共有の17インチホイールが採用されデュアルパーパスながらストリート色が強いモデルになったこと。

KLE650A壁紙

・・・なんですが、じゃあなんで特別な装備がわざわざ奢られたという話。

その理由は

『ストリートサーフィン』

というヴェルシスのコンセプトを実現するため。

これは簡単に言うと、とにかくライダーに自由なライディングをしてもらうという狙いになります。

KLE650Aサイド

ヴェルシスはER-6とほぼ共有ながら決定的に違う部分があります・・・それはポジションです。

「デュアルパーパスなんだから当たり前でしょ」

と怒られそうですがそう単純な事ではありません。

その違いを最も象徴している部分はシートになります。

KLE650A各部

ヴェルシスはER-6ベースながらわざわざ絞って反って跳ね返らせ、タンデムシートを切り離したセパレートタイプが新たに用意されている。

こうすることでライダーの有効着座面積を広げると共に高さにも差を付け、シチュエーションによって前乗りや後ろ乗りなど誰が活用する着座位置による荷重変化幅を凄く大きく取れるようになっている。

そしてここに合わせられるのがVIP待遇の各部。

極端な走行でもアンダーコントロール出来るよう掌握しやすいワイドハンドル、そしてストローク量を稼げる倒立フォーク、簡単にはヨレないアルミスイングアームなど許容量を上げるような装備が奢られてる。

LE650A壁紙

『どんな乗り方も許容する』

というデュアルパーパスの根本を大事にした結果がこれだけの特別な装備であり、ストリートサーフィンというヴェルシスの魅力なんですね。

主要諸元
全長/幅/高 2125/840/1315mm
シート高 840mm
車軸距離 1415mm
車体重量 207kg(装)
燃料消費率
燃料容量 19.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 649cc
最高出力 64.0ps/8000rpm
最高トルク 6.2kg-m/6800rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/70ZR17(58W)
後160/60ZR17(69W)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9EIA-9
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.7L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク114
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLE500(LE500B) -since 2005-

KLE500日本仕様

「Multi-Fun machines」

EURO2という欧州の排ガス規制を機に、実に14年ぶりというとんでもない年月の後にモデルチェンジした二代目のKLE500/LE500B型。

誰も覚えてない、もしくは知らず

「とんでもない形をしたZ1000みたいだ・・・」

と驚愕してる人も多いと思いますが、このモデルは先代と違いブライトが逆輸入車として取り扱いをしていました。

ブライト正規取り扱い

ちゃんと国内にも売ってたんです。

まず走ってるのを見た事ない人が大半だと思いますが、一部の超物好きにはフロント21インチの軽量デュアルパーパスという事で今も名前が上がったり。

KLE500Bサイド

先代からの主な変更点としては外見とシートの改良でエンジンはハーフニンジャを続投。

規制に合わせて3馬力/200rpmほど抑えられていますが、それ以外は基本的に先代を続投する形になっています。

ダカールラリーを皮切りにまさかのご長寿モデルとなったKLE500なんですが、KLE500がラリーに参戦したのはそれっきりで再戦する事はありませんでした。

では一体どうしてこんな何年も販売される事になったのか、一体何処らへんが評価されて10年以上も続くモデルになったのか気になったので欧州レビューを読み漁ってみたところ

「何の気兼ねもなく乗れる日常万能車」

という感じで評価されていました。

KLE500B

並列二気筒エンジンを中低速寄りにチューニングしたものだからコンパクトで、トルクも回転数に依存せず出てくれるから取り回しが良い。

加えて6速だから街乗りだけではなくツーリングもお手の物だし、オフロードの方もフロントが21インチな事もあって多少のことなら難なくこなせる。

オマケにハンドルガードやアンダーガードまで標準装備で車体価格も安いという事も相まって一番気軽に乗れる下駄車&エントリーモデルというミドルデュアルパーパス冥利に尽きるような需要があったようです。

余談ですけどこれなにが面白いってベースとなっているEX-5/GPZ500も向こうでは

「買って間違いないロードスポーツのエントリーモデル」

みたいな評価だった事。

兄弟車

やはり血が繋がっているだけの事はある。出来る兄弟ですね。

ちなみにKLE500はGPZ500向けのハイカムやピストンなどでパワーアップが出来るちょっと美味しい思いを出来る立場でもありました。

主要諸元
全長/幅/高 2215/880/1270mm
シート高 850mm
車軸距離 1500mm
車体重量 181kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 15.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 498cc
最高出力 44.9ps/8300rpm
最高トルク 4.2kg-m/7500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前90/90-21(54S)
後130/80-17(65S)
バッテリー YTX12-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR9EA
または
X27ESR-U
推奨オイル JASO MA
SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.4L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後44
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格
系譜図
LE500A1991年
KLE500
(LE500A)
LE500B2005年
KLE500
(LE500B)
KLE650A/B2007年
VERSYS/ABS
(LE650A/B)
KLE650C/D2010年
VERSYS/ABS
(LE650C/D)
KLE650E2015年
VERSYS650/ABS
(LE650E/F)

KLX125(LX125C) -since 2009-

KLX125

「Fun to ride」

80年代にあれだけ流行っていた林道ブームが完全に去ってしまった事と、排気ガス規制により死滅状態になってしまった市場に登場したKLX125。

それまでのフルサイズと違い75%くらいのミニモトサイズ。タイを中心に発売されているKLX150をベースがベースです。

KLX150

スチール製ペリメターフレームや5速ミッション、フルデジタルメーターなど125としては結構上等な装備をつけています。更にISC(アイドルスピードコントロール)付きのFIとセルも装備。

125オフが実質KLX125一択だったこともあり初動は良かったようです。

D-TRACKER125
(LX125D) 
-since 2009-

D-TRACKER125

「easy to ride」

こちらはモタードモデルのD-TRACKER125(LX125D)。KLXとの違いは倒立フォークと前後14インチのホイールを履いている事。ミラーなどの細部も変更されていたりします。一部では小虎という愛称で親しまれていますね。

LX125C/LX125D

2012年にレギュレーターやシートが改良され、2014年にはサスペンションの変更が入っています。

残念ながらD-TRACKER125の方は2015年、KLX125の方は2016年モデルをもって生産終了(店頭在庫のみ)となりました。後継が控えてるとは思いますが。

LX125D

さて・・・4st空冷2バルブエンジンで10.2馬力という点を見てもらうと分かる通り、KLX125/D-TRACKER125はお世辞にも速いとはいえない125です。場合によっては昨今のスクーターより遅いです。今時の125MTにしては走る方ですけどね。

それは4stになったという事が大きいわけですが、ご存知の通り2stと4stでは抗えないほどの差があります。馬力で比べるとKDX125SRの22馬力から10馬力と半減。加えて言うとオフロード車というのは軽さも非常に大事なわけで、これも4st/2stではエンジンの構造上どうして重量差がある。

排ガス規制の煽りを一番受けているクラスはこの125オフでしょう。2stの頃は250に負けない性能が当たり前だったわけですから。

KLX125/D-TRACKER125

ただ悪いことばかりではありません。カワサキもパワーを出せないなら出せないなりに考えています。

まず分かりやすいのが最初に言ったフルではなくミニモトな車体サイズ。このおかげで足つきも小回りも良い上に車重もそれなりに抑えられている。D-TRACKERなら14インチホイールだから更に良くなります。

そしてFI採用による正確な燃焼により空冷ながら40km/Lが当たり前という恐るべき低燃費性能。パワーが2st時代の半分になったぶん燃費が二倍に伸びてるわけです。

マフラーからオイルも吹かないし、FIということでキャブのように神経質になる必要もない。更には125だから維持費も安い・・・と考えるとオフ/モタというより通勤通学に非常に使えるMTバイク。

サスペンションなどが柔めに設定されていることを見ても、カワサキもそこら辺を狙ったんだろうと思います。原付二種の需要が日に日に高まっていた中でカワサキはスクーター持っていませんからね。

LX125C

ただ通勤通学に打ってつけの125MTとはいえ腐ってもオフ/モタです。特化したモデルほどの走破性は持ち合わせていないけどそれなりのものは持っている。行こうと思えば道を選ばずに行けるわけです。

毎日の通勤通学で気にも止めていなかったあぜ道、誰も通らないガレた道、そういった道と認識していなかった道を

「通れるのかな。何処に繋がっているのかな。」

と足つきの良さと、小ささと、大人しいエンジンで両足をペタペタと付きながら走ってみる事が出来る。そうすれば全て知っているつもりだった地元の知らなかった新しい一面や遊び場を発見出来る。

D-TRACKER125/KLX125

皆が一分一秒を争う通勤通学レースに勤しむ中、トコトコとコースアウトしてあらぬ場所に出てしまうという楽しいタイムロスができる道草バイク。

主要諸元
全長/幅/高 1980/770/1090mm
[1900/770/1060mm]
シート高 830mm
[805mm]
車軸距離 1285mm
[1255mm]
車体重量 112kg(装)
[113kg(装)]
燃料消費率 46.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 124cc
最高出力 10.2ps/8000rpm
最高トルク 1.0kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前70/100-19(42P)
後90/100-16(51P)
[前100/80-14(48P)
後120/80-14(58P)]
バッテリー FTX7L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR7HSA
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.1L
交換時0.9L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前14|後47
[前14|後44]
チェーン サイズ428|リンク124
[サイズ428|リンク122]
車体価格 339,000円(税込)
[359,000円(税込)]
※[]内はD-TRACKER125
系譜図
125TR

1970年
125TR
(F6)

KE125

1975年
KE125
(KE125A)

KMX125

1986年
KMX125
(MX125A)

KDX125SR

1990年
KDX125SR
(DX125A)

KLX125

2009年
KLX/D-TRACER125
(LX125C/D)

KLX250(LX250S)D-TRACKER X(LX250V)-since 2008-

2008KLX250

排ガス規制の強化を機にフルモデルチェンジとなったKLX250と車名にXが付いたD-TRACKER X

FI、新設計D型断面スイングアーム、外装の変更、足回りの強化、足つきの改善などなど。

実はDトラッカーが思わぬ大ヒットを成し遂げた事もあって2008年のフルモデルチェンジからはDトラッカーXがメインという逆転現象が起きました。

D-TRACKER Xカタログ

先代がただオンロードタイヤを履かせてハンドルを変えただけだったのに対し、Xからは足回りも専用設計の物になりモタードとしての性能を向上。

(そしてちゃっかりスクランブラーとは言わずモタードと言い始めた)

DトラッカーX前期

規制強化で6馬力ダウンと若干の車重増になっちゃったんだけどギア比を中低速寄りに変更することでカバー。

もちろん高回転まで綺麗に吹け上がるモトクロッサーKX譲りのエンジンはそのまま。

他社に先駆けて水冷化した事もあって気付けば250オフではこのエンジンがいつの間にか最年長になっちゃいましたね。

デジタルメーター

さてそんな吹け上がりの軽いモトクロッサーエンジンを誇示するためか演出かわからないけど2008年モデルからは無駄にタコメーターが付いてる。

ところでこの2008年型が出た時、オフ車らしくないガンダムチックな二灯フェイスは賛否両論だった。

実は仕様地によってKLX250は保安の関係でライトが大型の物に変えられてる。

地域によっては車名にSが付いてKLX250Sとなってたり。

KLX250S

何かパチモン臭い・・・CRF250がそうだった様に普通はコストの関係で何処の国でも通るように統一したライト形状にするのが一般的です。

それでもわざわざ日本向けがガンダム顔なのはカワサキ自身コッチが好きなんでしょうね。

余談

有名なので知ってる方も多いと思いますが、KLX250は(2015年現在)自衛隊の偵察用オートバイに採用されています。

自衛隊KLX250

もはや”闘う4st”というより”戦う4st”ですね。

主要諸元
全長/幅/高 2200/820/1190mm
[2130/795/1125mm]
シート高 890mm
[860mm]
車軸距離 1430mm
[1420mm]
車体重量 136kg(装)
[138kg(装)]
燃料消費率 29.5km/L
※WMTCモード値
燃料容量 7.7L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 24ps/9000rpm
最高トルク 2.1kg-m/7000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.00-21(51P)
後4.60-18(63P)
[前110/70-17(54S)
後130/70-17(62S)]
バッテリー YTX7L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L
{全容量1.3L
交換時1.3L
フィルター交換時1.4L}
スプロケ 前14|後42
[前14|後39]
チェーン サイズ520|リンク106
[サイズ520|リンク104]
車体価格 528,000円(税込)
[548,000円(税込)]
※[]内はD-TRACKER X
※{}内は11年以降モデル
系譜図
KL250

1977年
KL250
(KL250A/C)

KLR

1984年
KL250R/KLR250
(KL250D)

ES|SR

1993年
KLX250ES/SR
(LX250E/F)

スーパーシェルパ

1997年
SUPER SHERPA
(KL250G/H)

H型、J型、M型

1998年
KLX250
D-TRACKER
(LX250H/J)

S/V型前期

2008年
KLX250
(LX250S)
D-TRACKER X
(LX250V)

【関連車種】
CRF250RALLY/L/Mの系譜WR250R/Xの系譜SEROW250の系譜

Ninja250R(EX250K) -since 2008-

Ninja250R

「NEXT GENERATION」

2008年の排ガス規制強化により先代ZZR250を始め多くのバイクが生産終了となり、閑古鳥が鳴くほど寂しくなっていた時代にカワサキが出してきたNinja250R。

中身の方は先代ZZR250のエンジンをベースに新排ガス規制に対応し、ダイヤモンドスチールフレームに搭載したもの。

小忍

ただ意外だったのが、ZZR250が築いてきたツアラー路線ではなくセパレートシートなどスポーツ路線だった事。

お世辞にもハイスペックと言えるバイクではなかった為、Ninjaの名を冠した事に当時はアレコレ言われましたね。

でもNinja250RがNinjaシリーズである証がちゃんとあるのをご存知でしょうか。見た目や名前の話ではありませんよ・・・その部分は骨格であるフレームです。

Ninja250Rフレーム

これ左のフレームはNinja250Rの物。そして右側のフレームはGPZ900Rのもの。

そう外見からは想像が付きませんが、Ninja250Rは元祖Ninjaとして有名なGPZ900Rと瓜二つなダイヤモンドフレームを持っているんです。

EX250K

それにこのNinja250Rは従来の二倍にあたる4年を掛けて大事に開発したと言うだけの事はあり、扱いやすいパラレルツインに取り回し易いポジション、そして何より発売当初50万円を切る安さという、エントリーモデルとしては文句の付け所がなかった。

ちなみにこの50万円を切る値段だったのは初年度のみ。

これはインパクトを出すためで本当はそんな値段で売るバイクじゃなかったんだとか。それだけカワサキはこのNinja250Rの成功に賭けていたわけです。

Ninja250Rカタログ写真

結果は皆さん御存知の通り、当時としては異例の一年納車待ちが起こるほど売れに売れ、世界累計20万台を突破する大ヒットとなりました。

Ninja250Rは間違いなく2000年代を代表する偉大なバイク。

そしてリピーターが多くニューカマーが少ないというカワサキの悩みを大きく解消した偉大なNinjaです。

主要諸元
全長/幅/高 2085/715/1110mm
シート高 775mm
車軸距離 1400mm
車体重量 168kg(装)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 31ps/11000rpm
最高トルク 2.1kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54S)
後130/70-17(62S)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR8E
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量1.7L
交換時1.3L
フィルター交換時1.6L
スプロケ 前14|後43
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 498,096円(税別)
系譜図
Z250FT1979年
Z250FT
(KZ250A)
GPZ250BeltDrive1983年
GPz250BeltDrive
(EX250C)
GPZ250R1986年
GPZ250R
(EX250E)
gpx250r

1988年
GPX250R/R2
(EX250F/G)

ZZR250前期1990年

ZZR250
(EX250H前期)

ZZR250後期

2002年
ZZR250
(EX250H後期)

Ninja250R

2008年
Ninja250R
(EX250K)

2013Ninja250

2013年
Ninja250
(EX250L/M)

Z250

2013年
Z250
(ER250C/D)

2018Ninja2502018年
Ninja250
(EX250P)

ZZR250(EX250H) -since 2002-

1990ZZR250

「International Touring」

1999年の規制強化に伴い一度はカタログ落ちするも、ファンからの強い要望もありタイ生産として復活したZZR250の後期モデル。規制に対応するためパワーが40馬力から35馬力まで下がりました。

ZZR250後期

簡単な見分け方としてはミラーが同色から黒になり、タンクのロゴがシールから凹凸のあるメッキの立体物に変わっている事。更に末期モデルでは黒ホイールになりました。

ZZR250Hカタログ写真

ただ元々スペック競争ともブームとも無縁なバイクだったうえに、前期型であった小さな不具合も改善された事から既に鉄板扱いだった250ツアラーとしての地位が不動のものに。

終わってみれば13年もの間フルモデルチェンジされずとも、多くの人に重宝されたロングセラー車でした。

主要諸元
全長/幅/高 2050/700/1125mm
シート高 760mm
車軸距離 1400mm
車体重量 148kg(乾)
燃料消費率 42.0km/L
※定地走行テスト
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 248cc
最高出力 36ps/12000rpm
最高トルク 2.2kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/80-17(52S)
後140/70-17(66S)
バッテリー TYX7-BS
{YTX9-BS※H6のみ}
プラグ CR8SA
または
U27FSR-U
推奨オイル カワサキ純正オイルR4/S4/T4
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量1.9L
交換時1.5L
フィルター交換時1.9L
スプロケ 前14|後44
チェーン サイズ520|リンク106
車体価格 509,000円(税別)
系譜図
Z250FT1979年
Z250FT
(KZ250A)
GPZ250BeltDrive1983年
GPz250BeltDrive
(EX250C)
GPZ250R1986年
GPZ250R
(EX250E)
gpx250r

1988年
GPX250R/R2
(EX250F/G)

ZZR250前期1990年

ZZR250
(EX250H前期)

ZZR250後期

2002年
ZZR250
(EX250H後期)

Ninja250R

2008年
Ninja250R
(EX250K)

2013Ninja250

2013年
Ninja250
(EX250L/M)

Z250

2013年
Z250
(ER250C/D)

2018Ninja2502018年
Ninja250
(EX250P)

エストレヤ(BJ250J) -since 2007-

エストレヤBJ250J

250TRと同じようにFI化されたエストレヤのFIモデル。モデルの一本化で実質的にRSの一択になりました。厳密に言うと先代エストレヤの生産終了から少しだけブランクがありました。

さて、SR400やST250EもそうですがクラシックにとってFIというのは最大の敵というかハードルなわけです。何故ならFI化するということはバイクを電脳化しないといけないから。

そしてもう一つ、それは振動。

空冷シングルというのは(Vツインなんかもそうだけど)振動も大事な要素なわけです。

本当はメーカーもドコドコ言わせたい。でも五月蝿いと規制に通らない。そういったジレンマというか難問も抱えてるわけです。

2011年式エストレヤ

幸い、エストレヤは今時珍しいバーチカル(垂直)エンジンなのでかなり残せてる方です。

ルックスの方もシリンダー周りが少し変わったものの全体的なシルエットは変えなかった。キャブトンマフラーもそのまま。

この”変えずに変える”ってのが難しいんだよねえ。評価も注目もされないし。

2014年モデルメーター

細かいことを言うとメーターがタコメーターまで付いた二眼タイプになり、ウィンカースイッチがプッシュキャンセル式に。さらにイラズラ防止機能付きイグニッションスイッチにシート形状も見直されて座り心地が向上しました。

主要諸元
全長/幅/高 2075/755/1030mm
シート高 735mm
車軸距離 1400mm
車体重量 146kg(乾)
燃料消費率 41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 13.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 249cc
最高出力 20ps/8000rpm
最高トルク 2.0kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/90-18(51P)
後110/90-17(60P)
バッテリー YTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DR8EA
または
X27ESR-U
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
SE~SG級SAE10W40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.0L
交換時1.8L
フィルター交換時2.0L
スプロケ 前15|後38
チェーン サイズ520|リンク102
車体価格 518,000円(税別)
系譜図
BJ250B1950年
メグロ ジュニアシリーズ
BJ250B1992年
ESTRELLA
(BJ250B)
BJ250C1995年
ESTRELLA
CUSTOM/RS CUSTOM
(BJ250C/D/E/G/H)
BJ250F2002年
250TR
(BJ250F)
BJ250K2007年
250TR
(BJ250K)
BJ250J2007年
ESTRELLA
(BJ250J)
BJ250L2014年
ESTRELLA
(BJ250L)