「BIG V-TWIN SPORT」
プロトタイプの紆余曲折があって遂に形になったVTR1000F/SC36型。
長く掛けすぎたせいで実は発売時に一つアクシデントが発生します。それはこのVTR1000Fが出る数ヶ月前にスズキからTL1000Sというモロ被りバイクが登場した事。
これはホンダも寝耳に水だったらしく、慌ててプレスリリース日を(TL1000Rの約二ヶ月後に)一ヶ月ほど早めた経緯があったりします。
ちなみに下の写真のモデルは北米向けのSUPERHAWK996。
まあそれよりVTR1000の話ですが、VTR1000というとどうしても話題になるのは後述するSPモデルの方ですが、個人的にはこのFモデルこそVTR1000だと思っています。
VTR1000Fの特徴といえばアルミピボットレスフレームとサイドラジエーター。
ピボットレスっていうのはスイングアームをフレームに繋ぐのではなくエンジンに直接つける手法。
VTR1000以外にもCBR954RRやVFRに使われた技術でしなやかさを生むわけですが、VTR1000Fの場合はホイールベースを縮めるという狙いが強くあります。
これについては・・・少しVツインについて説明。
まずVTR1000FのVツインエンジンは挟み角が理想とされる90°なわけです。
90°にすれば互いが互いの運動の振動を打ち消し合って振動を0にできる。
振動が0なら振動を打ち消すバランサーが要らない。そしてバランサーが要らないという事はエンジンを軽く出来るし、馬力を稼げる。
更にVツインは直列型と違いシリンダーを横に並べずに済むのでとってもスリムに出来る。
つまり90度Vツインはまさにバイクにうってつけの理想的なエンジン・・・と思いきや実は問題もあります。
90度っていうのはつまり直角。
直角になるとそれだけエンジンの全長が長くなってしまう。
エンジンの全長が長くなればそれだけバイクの全長、ホイールベースも比例して長くなって(鈍重になって)しまう。
それをなんとかするためのピボットレスフレームというわけ。
ただしVツインにはもう一つ問題がある。
それは前輪に干渉しないよう後ろの方に積む必要があること。
エンジンという重要物を後ろに持っていくと、前後の荷重分布が後輪寄りになってしまいハンドリングの安定性が確保できないという問題が出る。
エンジンを前に持っていくには・・・前にある物をどかせばいい。前にあるものそれはラジエーター。
量販車初となるサイドラジエーターを採用した狙いはソコにある。
VTR1000FというバイクはVツインのデメリットをピボットレスフレームとサイドラジエーターで解消したバイク。
「創意工夫でなんとかする」
というホンダの信念を体現しているバイクなんです。
しかしラジエーターが横向きで本当に冷えるのか疑問に思う人もいるでしょう。
実際のところVTR1000Fを始めとしたサイドラジエーター式は冷却性能があまりよろしくないです。
二個もラジエーターを付けたのもその為ですし、カウルで覆っているのも単に保護するためだけでなく気圧差や整流効果を出すため。
ちゃんと意味あるんですよこのカウル。
主要諸元
全長/幅/高 |
2050/710/1155mm |
シート高 |
810mm |
車軸距離 |
1430mm |
車体重量 |
215kg(装) |
燃料消費率 |
22.1km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 |
16L |
エンジン |
水冷4サイクルDOHC2気筒 |
総排気量 |
995cc |
最高出力 |
93ps/8500rpm [110ps/9000rpm] |
最高トルク |
8.7kg-m/7000rpm [9.9kg-m/8500rpm] |
変速機 |
常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ |
前120/70-17 後180/55-17 |
バッテリー |
FTX12-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EVX9 [DPR9EVX9] |
推奨オイル |
ウルトラG2/G3(10W-40) |
オイル容量 |
全容量4.5L 交換時3.7L フィルター交換時3.9L |
スプロケ |
前16|後41 |
チェーン |
サイズ525|リンク102 |
車体価格 |
870,000円(税別) ※[]内はUS仕様 |
系譜図