「The Concept from GP Technology」
WGP500でいきなり15年ぶりの勝利をもたらし、翌年の1983年には世界チャンピオンにまでなったNS500のレプリカモデルと登場したのがこのNS400R(NC19)です。
これがそのチャンピオンマシンNS500。
開発者は福井さんで後に六代目ホンダ社長に就任されました。
NS400Rはそんなとんでもないマシンのレプリカということで
・2st水冷V型90度バンク三気筒
・三連フラットバルブ
・スラントキャブ
・アルミ一体成型NSシリンダー
・電子制御排気デバイス
それを積む車体も
・専用設計角型フレーム
・リモートアジャスター付きプロリンクサス
・各部にアルミてんこ盛り
などなど豪勢な作りでした。
馬力も59馬力(海外仕様は72馬力)と申し分ないものを持っていたのですが
「NSR250Rは知ってるけどNS400Rはあんまり聞いた事ない」
という人が多いのが正直な所かと思います。
そうなるのも無理もない話でこのNS400は今ひとつ人気が出ず、当時を振り返る企画などでもほとんど触れられないから。
理由は色々ありますが、一番あげられるのが一年前に出ていたMVX250Fという存在が大きいです。
MVX250FもNS400Rと同じV型2st三気筒を積んだスポーツバイクだったのですが、これが焼き付きを起こしやすいなどの問題から数ヶ月で生産終了。既に生産を開始し発売寸前だったMVX400Fも急遽お蔵入り。
そんな経緯の後に出てきたのがこのNS400R。再設計され問題は解決されていたとはいえMVXの焼き直しである事は明白で出る前からイメージが悪くマイナススタートだった。
NS400RがMVX400の焼き直しというイメージを持たれた理由はエンジンにあります。
確かにNS500はV型三気筒で世界を制しました。そしてNS400Rも世界を制した同じV型三気筒・・・なんだけど形が全く違うんです。NS500はバンク角を稼ぐため前1/後2というV型三気筒でした。それに対してNS400Rは前2/後1という正反対の形をしている。
これは保安部品の関係。
そしてこのレイアウトMVX250Fと同じレイアウトなんです。更にNS500は文字通り500なのにNS400Rは387ccと500ではないばかりか400というのもちょっと微妙な寸足らずな排気量。何処からどう見てもMVXにしか見えなかったというわけ。
加えて車体を見てもらうと分かりますが、アルミだらけという豪華さの中にもダブルシートやゴムラバー付きステップ、110という1クラス下の細いリアタイヤなどレプリカ路線とは少し離れた箇所が随所にあった。
それなのにNS400RをNS500のレプリカだと強く推すから尚のこと疑問に思う人が多かった。
もちろん400というモンスターパワーに気が引ける人が多かった事や、まだこの頃はレーサーレプリカの黎明期だったから仕方のない面もあるんですけどね。
そこで気になるのが
「何故こういう形になったのか」
という事。これは当時を振り返ったエンジニア達のインタビューを読むに、エンジニア達に戸惑いがあった事が最大の理由かと。
当時ホンダのエンジニア達は本田宗一郎の信念に従って
『未来ある技術4st』
で戦っていました。CB50、XL250、VT250F、そして400でもVF400Fなどライバルが2stだろうが真正面から4stをぶつけていた。
確かにホンダの4stスポーツは爆発的なヒットとなった。しかし同時に2stスポーツの需要は伸びる一方で永遠のライバルであるヤマハのRZにはHY戦争を持ってしても潰すことが出来ず、営業からの圧力は凄まじいものがあったわけです。
これはレースでも同じ。
NS400Rの元である2stレーサーNS500は、楕円ピストンでお馴染み4stレーサーNRがあまりにも不甲斐ない戦績だったから作られた経緯があります。※詳しくはNRの系譜を参照
「まず勝て、道楽なら金の無駄だから辞めろ」
という圧力があったから生まれたマシンです。
これが見事チャンピオンに輝いたわけですが、同時期に市販車のフルカウルも国土交通省から認可されるようになった・・・となると営業は
「NS500の公道モデルを出せ」
となりますよね。
2stの売れ筋モデルが喉から手が出るほど欲しいとなった時、2stのチャンピオンマシンレプリカのアイディアが出るのはもはや必然。
ただ事はそう簡単じゃなかった。
というのもNS500はファクトリーマシンで作ったのはホンダの中でもHRC(Honda Racing Corporation)というレース部門。市販車部門とは全く別のところです。
「NS500の公道版作る」
と言ったところで触る事すら許されないほどHRCは門外不出の部門。
つまり
営業部門「NS500のレプリカが欲しい」
HRC部門「NS500技術は教えられない」
市販部門「ホンダは4st屋だろう」
こういう見事に噛み合ってない状況になってしまったんですね。
「2stが人気だからNS500の市販車を作れ」
と市販車部門に言った所でNS500を造ったわけではないし、HRCは何も教えてくれないという八方塞がり状態。
それでも何とか必死の思いで完成させたら今度は市場から
「何故もっとNS500ライクにしなかった」
と責めたてられてしまったというオチ。酷な話ですが部外者から見れば同じホンダが作ったバイクですからね。
噛み合っていない歯車が生んだNS400R。
でもこの一件があったから後に登場するNSR250RはHRCと市販という垣根を越えた試み(共同開発)がなされ大成功を収めた。
NS400Rは人気もそれほどだし、お世辞にも褒められるバイクとは言い難いけど、同じホンダながら離れていく一方だった市販とHRCという関係を取り持つキッカケとなったバイク。
つまり決して名車では無いけど、決して無視は出来ないホンダ2stレプリカの礎みたいなモデルでもある。まあだからこうやって書いてるんですけどね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2025/720/1125mm |
シート高 | 780mm |
車軸距離 | 1385mm |
車体重量 | 183kg(装) |
燃料消費率 | 29.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 19L |
エンジン | 水冷2サイクルピストンリードバルブ3気筒 |
総排気量 | 387cc |
最高出力 | 59ps/8500rpm |
最高トルク | 5.1kg-m/8000rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前100/90-16(54H) 後110/90-17(60H) |
バッテリー | FTX5L-BS |
プラグ | B8ES |
推奨オイル | ウルトラ2スーパー |
オイル容量 | – |
スプロケ | 前16|後40 |
チェーン | サイズ530|リンク108 |
車体価格 | 629,000円(税別) |
NS400Rと4ガンは何度も乗らせてもらいましたが、パワーと軽さのガンマに対して、NSはバランスが良くトルクもここという立ち上がりできれいに乗ってくれました。ブレーキの利きも良く安心して突っ込めました。
上手い人はガンマの方が速いとは思いましたが自分の腕ではNSがトータルで速かった。
排気音は濁ったダミ声で美しくなかったけどね。
当時の4ストレプリカを含め400でノーマルならNSに一票です。
今は939cc乗っているので解るのですが。
パワーバンド入ってからの2stの加速性能は同等ですね。
排気音、ケロケロからのぶんもーがノーマルならそうなりますね。
ただ…ブレーキがねスクーターspasy と同じキャリパーでまじ止まってくれない。Rzv とはなかなか会えません。Γ500さんはいるのですが、RZさんとかKRさんとかWolfさんとか。ケムケム隊復活したいなぁ