「HYPER SPRINTER」
ビッグレプリカシリーズの最後になるRG500Γ。
仕様地によって型式が違う
『RG500Γ(HM31A/B:通称ゴガン)』
と国内向けの
『RG400Γ(HK31A:通称ヨンガン)』
がありました。
このバイクはその凄まじさから知名度は結構ある方かと思います。
何が凄まじいって中身がファクトリーレーサーRGΓ500のレプリカだったからなんですが・・・
排気量はもちろんのことエンジンの形式からボア・ストローク比、ロータリーディスクバルブ、アルミフレームに至るまでRGΓ500とほぼ同じ。
つまりレプリカを通り越してフルコピーとも言える作りだったんです。
RGΓ500のファクトリーライダーで1980年のWPGチャンピオンだったフランコ・ウンチーニですら
「本当にそのまま出すとは・・・」
と漏らすほど。
先に紹介したNS400RやRZV500Rを読んでいただいた方なら疑問に感じると思うのですが
「何故スズキだけファクトリーマシン直系な市販車を出せたのか」
という話ですよね。
これはスズキだから出せた事なんです。
スズキというのは中の人いわく
良く言うと
「自由で柵の無い環境」
悪く言うと
「何でもしないといけない環境」
という環境にある。
これがどういう事かというとRG500/400Γのプロジェクトリーダーはカタナを含むGSシリーズやGSX-R750等を生み出された横内悦夫さんというスズキマニアなら知らぬ人は居ないレジェンドな方だったのですが、そんな横内さんを始め開発メンバーは皆ファクトリーマシン開発に携わっていた方々なんです。
要するにファクトリーと市販の壁らしい壁が無かった。
その証拠にこのRG500/400Γを作るにあたって先ず最初にしたことは、元となるファクトリーマシンRGΓ500をテスト・分析する為に持ち出した事。
つまりファクトリーマシンで培ったノウハウを元に、公道版RGΓ500を造ったからほとんどRGΓ500なマシンが仕上がったというわけ。
ガンマの名を冠したフラッグシップモデルである以上、頭一つ抜きん出た95馬力(逆車)という高馬力は当たり前。
・接合点を減らし美しくかつ10kgを切るほど軽量化されたアルミフレームや、砂型鋳造アルマイト加工な上に栄光の証であるΓの刻印(赤丸)まで付いているコスト度外視なステアリングヘッド等などで乾燥重量156kgという圧倒的な軽さ。
レーサーと同じようにトップブリッジより下にマウントされたセパレートハンドルも日本ではこのガンマが初です。
8km/Lを切るほどの凶悪な燃費を除けばチャンピオンマシンレプリカとして恥ずかしくないマシンとなっているRG400/500Γ。
今では200万円というプレミア価格が付いていますが、発売当時は
『RG400Γ:65万9000円』
『RG500Γ:75万9000円』
と性能を考えるとかなり安かったので予約が殺到。
500が約9000台、400が約6000台と2stビッグレプリカとしては一番台数が出ました。
プロジェクトリーダーの横内さんも採算が取れてるのかという質問には笑って誤魔化す始末。
スズキは1981~1982年にWGP500(今で言うMotoGP)でチャンピオンに輝きました。
RG500Γはそんなスズキロードレースの黄金期を象徴するレーサーのレプリカでもあるわけです・・・が、スズキは1983年のロードレースをもってワークスとしての活動を休止します。
年々戦闘力を増していった中での撤退なんですが、これ勝ち逃げじゃないんです。
これはHY戦争の巻き添え(薄利多売による市場の焦土化)を受けて業績が著しく悪化したから。業績が悪化すると真っ先に切られるのがモータースポーツ部門なのはどこも同じ。
ではどうして市販化したのかというと実は前例があるから。
このRG500/400の元ネタとなっているファクトリーマシンはファクトリーレプリカRG500として販売された経緯があります。
ややこしいんですがファクトリーマシンと瓜二つ(細部が少し違うだけ)のレーサーを惜しまず売ったんです。これにレース界隈は度肝を抜かれました。本来ならば門外不出なテクノロジーの塊であるファクトリーマシンを売るわけですから。
だから世界レースであるWGPではRG500が大人気だった。
今回はそれの延長線上。それを市場でもやってのけたという話。
本当に気前がいいと言うか何というか・・・
もちろん根源にあるのはそんなWGPの姿を応援してくれた人たちに応えるため。
RG500Γ/RG400Γについて横内さんはこう仰っています。
「これはガンマを愛してくれる人のために作ったチャンピオンマシン。チャンピオンマシンであることを自覚して大事に乗ってほしい。」
補足:敵を減らすのではなく仲間を増やしたスズキ~マニュファクチャラー7連覇の栄光~
主要諸元
全長/幅/高 | 2100/695/1185mm |
シート高 | 770mm |
車軸距離 | 1425mm |
車体重量 | 154kg(乾) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 22.0L |
エンジン | 水冷2サイクル4気筒 |
総排気量 | 498cc {397cc} |
最高出力 | 64ps/8500rpm [95ps/9500rpm] {59ps/9000rpm} |
最高トルク | 5.8kg-m/7500rpm [7.3kg-m/9000rpm] {4.9kg-m/8500rpm} |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前110/90V-16 後120/90V-17 {前100/90V-16 後120/90V-17} |
バッテリー | YTX5L-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
B9ES |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.5L |
スプロケ | 前16|後40 {前15|後41} |
チェーン | サイズ530|リンク106 {サイズ525|リンク106} |
車体価格 | 759,000円(税別) {659,000円(税別)} ※[]内は輸出仕様 ※{}内はRG400ガンマ |
変態スズキの真骨頂。
ホントにコレ買って良いの?って若干引く位のバイクでした。
400Γの方でも、下手なシグナルダッシュで竿立ちになる程のえげつないパワー。
大排気量の2ストを甘く見てはいけません。本当に乗り手を選びます。
しかしよく発売したもんだ。今の時代だったら、やれコンプライアンスだの製造責任だの小うるさい事を言われるだろうな。
大体バイクなんて自己責任の乗り物だったはず。自分の身は自分で守れ。死にたく無ければどうするか自分で考えろってんだ。
ライダーがそれを弁えていた昭和時代はパワフルで面白かったなぁ。