「THE POWER SCOOTER」
スズキが若者向けに出したストリートマジック略してストマジことTR-50とTR-110。若者向けということでトキオの長瀬智也さんをドラマとカタログのタイアップで起用するという力の入れっぷり。
せっかく決まっているのにキャッチがダジャレなのがちょっとアレですね。
ストマジは1997年から2006年までとモデルライフは意外と長く、少しややこしい事にバリエーションが色々ありました。
最初に出たのはノーマル(CA1LA)とS(CA1LB)の2モデル。Sの方はアルミキャストホイールやリザーブタンク付きサスペンションといった豪華装備モデル。
更に半年後にはストリートマジック2(型式はSと同じ)が追加。
コチラはSをベースに丸目ヘッドライトやアップハンドルやディスクブレーキカバー等を装備したオフロード感を出したモデル。2000年からはこの丸目のストリートマジック2だけになりました。
兄貴分の110(CF12A)は50の一年遅れで登場。
エンジンは50がアドレスやセピア等の2st原付にも使われているものがベースだったのに対し、110は同一ボディながらマウント変更でAddress110ベースの物・・・そう、ストリートマジックはスクーターのエンジンを積んでいる異端モデルです。ちなみに110も一人乗り専用。
スクーターのエンジンというのはユニットスイング懸架方式といって、簡単に言うとエンジンとスイングアームが一体になっている。
我ながら分かりにくい絵ですが、要するにエンジンもスイングアームも一体なので全部が動くわけです。マフラーも動きますしキャブなんかも一緒に動きます。
エンジンがスクーターなので当然ながら駆動はVベルトによる無段階つまりATというかCVT。Vベルト無段変速っていうのはプーリー・・・って口で説明するよりWikipediaのgifを見たほうが早いですね。
エンジン(クランク)シャフトの端に付いているコマみたいな物の中にウェイトローラーという重石が入っていて、エンジン回転数が上がるとその重石が外に押しやられ幅が狭まりベルトが押し上げられるというわけです。すごくザックリした説明ですが。
で、スクーターというかユニットスイング式というのはフレームへはリンクを介してラバーマウントするのが基本です。これは一体型ゆえにエンジンの振動はもちろん、駆動の振動や路面の振動といったありとあらゆる振動が起こるから。
そしてラバーマウントするということは、一切フレーム剛性に関与しないということ。そのため原付スクーターに乗ったことがある方なら分かると思いますが基本的にフレーム剛性はヘロヘロです。
これにはアンダーボーンといってスペースを稼ぐために採用されているフレーム(赤部分)も大きく関係しています。
ちなみに図を見て何となくでも分かって欲しいんですが、こういったアンダーボーンフレームは前後の力に凄く弱いです。だから過走行や手荒な運転、追突などがあると簡単に曲がります。
少し大げさですが、こんな感じに曲がったりします。フロントを浮かせてフォークを掴み左右に振ってみればガタが来ているか大体分かります・・・ってそんな話がしたいわけではない。
じゃあストリートマジックがどうなっているのかというとこうなっています。
これがどういう形かというと剛性を求められるスーパースポーツに広く採用されているツインチューブ(ツインスパー)というフレームの形。
つまりストリートマジックはかなりヤル気な形をしたフレームを積んでいるわけですが、もう一つ注目してほしいのがステム(フロントフォーク)周り。
トップブリッジ~ステムシャフト~アンダーブラケットというスポーツモデル同様の三叉構造になっています。
フロントフォークを三叉でいう下だけで留めているスクータータイプと違い、上中下で留めると剛性が増します。ステム剛性が上がるという事は簡単に言うとハンドリングがクイックになります。ロードスポーツは基本的にこれ。
辛い絵が続きますが、左のスクータータイプと右のスポーツタイプどっちがガッチリしているかは一目瞭然かと思います。しかもストマジは更に倒立サスなので尚のことステアリング周りの剛性がガッチリキッチリ。
スクーターのエンジンを積んだスポーツバイク・・・と簡単に片付けられがちなストリートマジックだけど、これだけフレームを作り上げて来ているんです。後期モデルでは更に補強が入りました。
ただスズキとしてはストリートマジックはスポーツバイクではなくスクーター。謳い文句も「THE POWER SCOOTER」だし、ラインナップ位置もスクーターの所でした。
これは移動手段としてバイクを見ている原付(特に一種)層に、一般的なロードスポーツと同じ骨格を持つストマジで楽だけでなく操る楽しさも知ってもらおうという意図があったのかなと。
既存バイク乗りの立場から見るとストリートマジックというのは本当に立派なフレームを持ったスクーター。スクーターのスポーツ性を突き詰めていくとストマジの形になると言っても過言ではないかと。
ところでベースとなっているスクーターの一つであるAddressの名前の由来は
「add(加える)+dress(ドレス ※メットインスペースの事)」
でアドレスなわけですが、どうもストリートマジックの方がアドレスという名前がピッタリな気がします。
アドレスは紛うことなきスズキの名スクーターですが、じゃあみんな可愛がっているかといえば暖気すらせず走り出す等の手荒な扱いをする人が大半かと思います。
ところがストマジとなると、アレやコレやと弄って可愛がるのはもちろん、終いにはストマジのワンメイクレースが開催されるまでに。
なんでこんなにチヤホヤされたのかと言えば、いま説明してきたツインチューブフレームというドレスを着たからに他ならない。
ドレスを積むのではなく、ドレスを着ちゃったスクーターSTREET MAGIC。
主要諸元
全長/幅/高 | 1635/710/965mm [1700/710/975mm] |
シート高 | 710mm |
車軸距離 | 1080mm [1150mm] |
車体重量 | 73kg(乾) [85kg(乾)] |
燃料消費率 | 47.0km/L [40.1km/L] ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 6.4L |
エンジン | 空冷2サイクル単気筒 |
総排気量 | 49cc |
最高出力 | 7.2ps/6750rpm [10.0ps/6500rpm] |
最高トルク | 0.82kg-m/6000rpm [1.2kg-m/6000rpm] |
変速機 | Vベルト |
タイヤサイズ | 前110/80-12(51J) 後120/80-12(54J) [前120/70-12(44L) 後130/70-12(49L)] |
バッテリー | YT4B-BS [YTX5L-BS] |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
BPR6HS |
推奨オイル | スズキ純正CCISオイル |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.2L |
Vベルト | 27601-06F10 [27601-16F12] |
車体価格 | 179,000円(税別) [249,000円(税別)] |
50Sに3年ほど乗っていました。1年ちょい通勤や近所への足として毎日乗って、結婚したあとは放ったらかしになってしまって、足回りに錆びが出たので譲ってしまいました。大事に乗っていれば今でもちょい乗りで楽しめたのにもったいないことをしました。
ユニットスイングであることを意識はさせますが、スクーターとは異なる乗り味でした。エンジンの振動も敢えて残している感じだったのかな?トルクフルで30km/h前後はアクセルに呼応して速度がグイグイ伸びるので楽しかったですね。