楽し危なし QA50 ポッケ(4U1) QB50フォーゲル(4U7) -since 1980-

ポッケとフォーゲル

「男のリトルバイク」

ヤマハが1980年に出したPOCKEとVOGEL。

ハンドルを折り畳め小さく出来る事から車に乗せてレジャー先で乗れる・・・言ってしまえばホンダのモンキー/ゴリラに対抗したバイク。当時は目には”目を歯には歯を”なHY戦争真っ只中でしたから。

先に紹介するのはポケットに入りそうなほど小さいことからポッケと名付けられたQA50 POCKE。

ポッケ

これにより全長1280mm、軸距885mm、車重52kgというとてつもないミニマムさを持っているわけですが、最大の特徴は何と言っても当時市販車最小となる6インチホイールを履いている事と、それによる特性。

ポッケカタログ

ホイールのインチ数(大きさ)というのは簡単に言うと直進安定性に密接に関係しています。大きいほど直進安定性が増すけど、代わりにハンドリングが眠くなります。小さくなるとその逆。

つまりPOCKEは恐ろしいほど機敏なハンドリングで小回りが効くけど、直進安定性が無いに等しいので轍などを踏むと簡単に斜めの方向へ飛んでいきます。

ちなみにモンキーも60年代の最初期は5インチでしたが、これは市販するつもりは無かったモンキーの原型であるZ100(アトラクション用)がそうだったから。でも流石に危ないとして数年で8インチ化されているわけです。

対してヤマハはどう見ても8インチ履けそうな車体に敢えて6インチというタブーを選んでる。ルックス優先やモンキーのインチダウンが流行っていたのも関係していると思われます。

ポッケmidnight

この黒金ポッケは二年目に限定発売されたミッドナイトモデル(4U2)。

兄貴達とお揃いのカラーリングなのが可愛いですね。

ポッケミッドナイト

ちなみにこのリミテッドポッケも兄貴達同様、塗装部はハンドメイド塗装という贅沢な仕様。

でも本当に何度見ても何かの間違いじゃないかと思うホイールサイズ。公道を走れるアトラクション用の遊具みたいですね。

そしてもう一つのモデルであるQB50 VOGEL(フォーゲル)。VOGELとはドイツ語で”鳥”という意味。

フォーゲル

タウンユースのポッケとは違い、アウトドアでも活躍できるデュアルパーパス系レジャーバイク。

ゴリラの対抗馬でオフも走れるように8インチホイールとブロックタイヤを履き、ゴムブーツ付きフロントフォークに大型キャリア付き。

そして燃料タンクもポッケの5.3Lから10Lへ大幅アップ。だから直進安定性しかり航続距離しかりポッケよりはまだ実用性がある。

QA50/QB50カタログ

しかしながらポッケ/フォーゲルどちらにも言えるんですが、最大の特徴というか問題点としてショートホイールベースで軽い上にシートが完全にリアタイヤの上という事から簡単にウィリーしてしまう点があります。

次元とフォーゲル

上の絵はルパン三世などに携わったアニメーターの大塚康生さんが描かれたフォーゲルに乗る次元。

ミニトレの相性で親しまれたGT50の物をデチューンした物とはいえ、2st特有のパンチ力のある加速は健在なので本当に簡単にポンポンとフロントが浮く。

ボトムニュートラル式(一番下がN)の4速ミッションを積んでいるんですが、2速だろうが3速だろうがズボラな操作だと簡単に浮く。

小径ホイールが生み出す何処に向かうかわからない機敏過ぎるハンドリングも相まって、レジャーバイクと言って大丈夫なのか心配になるトリッキーさ。

ポッケカタログ2

ヤマハがポッケ&フォーゲルを

「男のリトルバイク」

と謳っていたのはこのせいもあるでしょうね。

鳥山明とポッケ

ちなみに漫画家として有名な鳥山明さんもこれに乗って買い物に出かけていたそう。

ポッケとフォーゲルのカタログ写真

ホンダとヤマハによる原付市場での殴り合いによって生まれたレジャー4mini。

倫理性の欠片もないトリッキーさの為か、僅か3年で生産終了に。

ポッケとフォーゲルの広告

楽し危なしポッケとフォーゲル。

ポンポン飛び跳ねてる可愛いバイクが居たら十中八九コイツです。

主要諸元
全長/幅/高 1280/690/920mm
[1485/690/950mm]
シート高 660mm
[674mm]
車軸距離 885mm
車体重量 52kg(乾)
[57kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 5.3L
[10.0L]
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 3.0ps/5500rpm
最高トルク 0.42kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前後3.50-6-2PR
[前後3.50-8-2PR]
バッテリー 6N2-2A-7
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B6HS
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.7L
[全容量0.8L]
スプロケ
チェーン
車体価格 114,000円(税別)
[119,000円(税別)]
※[]内はQB50 VOGEL
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

なぜなにカワサキ AV50 (AV050A) -since 1982-

AV50

「ジャストアメリカン」

カワサキ唯一となる4miniレジャーバイクで、何故かアメリカンスタイルなAV50。

立ち位置としては当時カワサキが力を入れていたクルーザーモデルZ-LTDの末っ子的な存在。

Z-LTDファミリー

デザインも兄に倣ってるわけですが小さい分カワイイですね。写真では伝わりにくいですがKSRと同じくらいでZ125より一回りほど小さいです。

でもそんな見た目に反し結構本格的な作りをしています。

AV050Aカタログ

4st50ccながら放熱に優れるアルミヘッドを採用し5馬力(後期4.3馬力)を発揮する上に、CDI点火のエンジンに四速ミッション。贅沢なチューブレスアルミキャストホイールに、メガホンマフラーとティアドロップタンクなど文句の付けどころか無い。

そんな中でも面白いのが前後40mm動く、三段階のスライド式シート。

AV50スライドシート

ちゃんとポジションもアメリカンに出来るようカワサキらしからぬ優しさ。

そんなAV50なんですが、本当に謎だらけ。

まず挙げられるのが横型4st50ccエンジン。一体なぜこのエンジンを使ったのかと言うこと。

AV50エンジン

このエンジンは恐らく本来ならタイを始めとしたアジア向け(MAX/Sunny/Joy等のカブ系)に用意された100cc前後のビジネスバイク用の物。

※追伸 AN80Aジョイがベース

AN80A

凄く広く捉えるとKSR110やZ125も親戚といえば親戚になりますが50cc版が積まれているのは後にも先にもAV50だけ。

謎に思えるのはこの時カワサキは原付エンジンを二つほど持っていたから。

Z-LTDファミリー

一つは原付にあるまじき速さを誇りヒットしたAR50/80の2stエンジン。しかもこれAV50が出た年にモデルチェンジまでされています。

「いやそれ縦型エンジンだし」

と思うかもしれませんが、横型エンジンも持っていたんです。もはや誰も覚えていない1977年登場のKV-75。

Z-LTDファミリー

知る人ぞ知るカワサキのモンキー。海外でも75MTという名で販売されていました。

これらのバイクやKSRの流れも見ると分かる通り、カワサキは小排気量は2stに拘っていました。昔あったカワサキのカブことM50もビジネスバイクなのに2stだったんですよ。

一体なぜこれらのエンジンを使わずタイ向けのエンジンをベースにわざわざ50ccにまで落とした物を使ったのか。

AV050A

憶測の域を出ませんが、残る理由は4stしかない事を考えても恐らく4stの武器である低速の粘りが欲しかったのかと。全くふざけていないレジャーバイクですね。

これはまだいいです。もう一つ浮かぶ謎。それは1982年という発売したタイミングです。

当時原付アメリカンは珍しい物ではありませんでした。原付アメリカンのパイオニアといえば1977年に出たスズキのマメタンことOR50でしょう。

マメタンとRX50

非常に人気を呼び、それを追いかけるようにヤマハからもRX50が出たんですが、マメタンは1980年、RX50は1982年を最後に生産終了となりました。

これはHY戦争があったからです。

ニューモデルラッシュと薄利多売によるシェア争いで原付市場が焦土化。勝ったホンダですら終戦するやいなや発売予定だったニューモデルを急遽取りやめる程の状態でした。

カワサキAV50

更にもう一つネガティブな要素として原付一種の最高速60km/h規制が設けられたことがあります。

上で紹介したAR50など加熱していた原付スポーツが当たり前の様に100km/h出ることによる事故増が原因で、AV50が出た年と同じ1983年から施行されました。

AV50カタログ裏面

つまりAV50は出る前から失敗が決まっていた状態で登場したわけです。これの発売に関してはユーザーよりライバルメーカーの方がビックリしたと思います。

比較的シェア争いに沈黙を守ってきたカワサキが最後の最後に出してきたレジャーバイク。もちろん売れなかったわけですが・・・謎はまだ続きます。

奇しくもAV50が出て暫くすると、当時の中型で起こっていたアメリカンブームの波及で原付アメリカンがライバルから登場し人気を呼びました。

原付市場の復調も相まって需要は高く、90年代半ばまで人気が続きました・・・が、カワサキはその需要に応えるような後継や派生を出すこともなく、AV50の一世一代でブームが来ると同事に終わらせ再び沈黙したんです。

カタログぎ表紙

いったい何故このタイミングで出したのか、いったい何故ブーム到来と同事に販売をやめたのか。

人気が出ることも、ピックアップされることも、後継が出ることも無かった以上、もう一生わからない謎だらけな原付なのがこのAV50なんです。

主要諸元
全長/幅/高 1665/695/1030mm
シート高 -mm
車軸距離 1100mm
車体重量 76kg(装)
燃料消費率 81.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.6L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.0ps/9500rpm
[4.3ps/7000rpm]
最高トルク 0.4kg-m/7000rpm
[0.45kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前2.75-14-4PR
後4.00-10-4PR
バッテリー 6N6-1D-2
プラグ D7EA
[C6HSA]
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40から20W-50
オイル容量 全容量0.7L
スプロケ 前14|後39
チェーン サイズ420|リンク92
車体価格 156,000円(税別)
※[]内は84年モデル以降
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

チャンピオンの重み RG500/400Γ (HM31A/B/HK31A) -since 1985-

RG500ガンマ

「HYPER SPRINTER」

ビッグレプリカシリーズの最後になるRG500Γ。

仕様地によって型式が違う

『RG500Γ(HM31A/B:通称ゴガン)』

と国内向けの

『RG400Γ(HK31A:通称ヨンガン)』

がありました。

このバイクはその凄まじさから知名度は結構ある方かと思います。

何が凄まじいって中身がファクトリーレーサーRGΓ500のレプリカだったからなんですが・・・

RG500ガンマエンジン

排気量はもちろんのことエンジンの形式からボア・ストローク比、ロータリーディスクバルブ、アルミフレームに至るまでRGΓ500とほぼ同じ。

つまりレプリカを通り越してフルコピーとも言える作りだったんです。

RGΓ500のファクトリーライダーで1980年のWPGチャンピオンだったフランコ・ウンチーニですら

「本当にそのまま出すとは・・・」

と漏らすほど。

RG400センター

先に紹介したNS400RやRZV500Rを読んでいただいた方なら疑問に感じると思うのですが

「何故スズキだけファクトリーマシン直系な市販車を出せたのか」

という話ですよね。

これはスズキだから出せた事なんです。

RG400ガンマカタログ写真

スズキというのは中の人いわく

良く言うと

「自由で柵の無い環境」

悪く言うと

「何でもしないといけない環境」

という環境にある。

これがどういう事かというとRG500/400Γのプロジェクトリーダーはカタナを含むGSシリーズやGSX-R750等を生み出された横内悦夫さんというスズキマニアなら知らぬ人は居ないレジェンドな方だったのですが、そんな横内さんを始め開発メンバーは皆ファクトリーマシン開発に携わっていた方々なんです。

要するにファクトリーと市販の壁らしい壁が無かった。

その証拠にこのRG500/400Γを作るにあたって先ず最初にしたことは、元となるファクトリーマシンRGΓ500をテスト・分析する為に持ち出した事。

RG400ガンマカタログ写真

つまりファクトリーマシンで培ったノウハウを元に、公道版RGΓ500を造ったからほとんどRGΓ500なマシンが仕上がったというわけ。

ガンマの名を冠したフラッグシップモデルである以上、頭一つ抜きん出た95馬力(逆車)という高馬力は当たり前。

RG400ガンマフレーム

・接合点を減らし美しくかつ10kgを切るほど軽量化されたアルミフレームや、砂型鋳造アルマイト加工な上に栄光の証であるΓの刻印(赤丸)まで付いているコスト度外視なステアリングヘッド等などで乾燥重量156kgという圧倒的な軽さ。

レーサーと同じようにトップブリッジより下にマウントされたセパレートハンドルも日本ではこのガンマが初です。

RG400ガンマ透視図

8km/Lを切るほどの凶悪な燃費を除けばチャンピオンマシンレプリカとして恥ずかしくないマシンとなっているRG400/500Γ。

今では200万円というプレミア価格が付いていますが、発売当時は

『RG400Γ:65万9000円』

『RG500Γ:75万9000円』

と性能を考えるとかなり安かったので予約が殺到。

500が約9000台、400が約6000台と2stビッグレプリカとしては一番台数が出ました。

プロジェクトリーダーの横内さんも採算が取れてるのかという質問には笑って誤魔化す始末。

RGガンマ

スズキは1981~1982年にWGP500(今で言うMotoGP)でチャンピオンに輝きました。

RG500Γはそんなスズキロードレースの黄金期を象徴するレーサーのレプリカでもあるわけです・・・が、スズキは1983年のロードレースをもってワークスとしての活動を休止します。

スズキWGP500

年々戦闘力を増していった中での撤退なんですが、これ勝ち逃げじゃないんです。

これはHY戦争の巻き添え(薄利多売による市場の焦土化)を受けて業績が著しく悪化したから。業績が悪化すると真っ先に切られるのがモータースポーツ部門なのはどこも同じ。

ではどうして市販化したのかというと実は前例があるから。

RG500GAMMAカタログ写真

このRG500/400の元ネタとなっているファクトリーマシンはファクトリーレプリカRG500として販売された経緯があります。

ややこしいんですがファクトリーマシンと瓜二つ(細部が少し違うだけ)のレーサーを惜しまず売ったんです。これにレース界隈は度肝を抜かれました。本来ならば門外不出なテクノロジーの塊であるファクトリーマシンを売るわけですから。

だから世界レースであるWGPではRG500が大人気だった。

RG500ウォルターウルフ

今回はそれの延長線上。それを市場でもやってのけたという話。

本当に気前がいいと言うか何というか・・・

もちろん根源にあるのはそんなWGPの姿を応援してくれた人たちに応えるため。

RG500Γ/RG400Γについて横内さんはこう仰っています。

チャンピオンマシン

「これはガンマを愛してくれる人のために作ったチャンピオンマシン。チャンピオンマシンであることを自覚して大事に乗ってほしい。」

補足:敵を減らすのではなく仲間を増やしたスズキ~マニュファクチャラー7連覇の栄光~

主要諸元
全長/幅/高 2100/695/1185mm
シート高 770mm
車軸距離 1425mm
車体重量 154kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷2サイクル4気筒
総排気量 498cc
{397cc}
最高出力 64ps/8500rpm
[95ps/9500rpm]
{59ps/9000rpm}
最高トルク 5.8kg-m/7500rpm
[7.3kg-m/9000rpm]
{4.9kg-m/8500rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/90V-16
後120/90V-17
{前100/90V-16
後120/90V-17}
バッテリー YTX5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
スプロケ 前16|後40
{前15|後41}
チェーン サイズ530|リンク106
{サイズ525|リンク106}
車体価格 759,000円(税別)
{659,000円(税別)}
※[]内は輸出仕様
※{}内はRG400ガンマ
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

手負いの獅子の恐ろしさ RZV500R (51X/1GG) -since 1984-

RZV500R

「Prologue」

WGP500(MotoGPの前身)用に開発されケニー・ロバーツが1982年の途中から乗ったヤマハ初のV4ファクトリーマシンYZR500/0W61のレプリカとして登場したRZV500R。

・2スト499ccのV4エンジン
・四本出しマフラー
・四連キャブ
・アルミフレーム(ヤマハ市販車初)
・ベンチレーテッドディスクブレーキ
・ジュラルミンステップ

などなどYZR500レプリカと呼ぶに相応しい市販車とは思えない出で立ちで、第25回東京モーターショーでは話題を独占しました。

RZV500R東京モーターショー

そもそもWGP500のマシンを市販車にするということ事態が前代未聞だったので当たり前なんですが、しかしではYZR500と同じような構造なのかというと厳密には違います。

例えばリアサスペンション。

リアサスペンション

YZR500が車体上部に横向きでリンクに挟まれるように鎮座する”ホリゾンタルフルフローター式(通称:蟹挟み式)”なのに対し、RZV500Rはエンジンの真下にある”ニューリンク式モノサス”に。

もう一つ大きく違うのがV4エンジンでYZR500が”バンク角40°ロータリーディスクバルブ”なのに対し、RZV500Rは”バンク角50°クランク・ピストンリードバルブ”になっています。

YZR500とRZV500のV4

何故この差異が生まれるのかと言うと、前にも書きましたが

「レーサーと市販車は開発陣も求められる性能も別だから」

レーサーが企業秘密の塊で市販車に使うというのは流出するも同然なのが一つ。そしてもう一つはレーサーと市販車は耐久性や補機など求められるものが大きく違うからです。

そういった制約にも近いこの違いはRZV500Rでも例外ではなく、そのためこういった差異が生まれるというわけなんです・・・が、ここがRZV500Rの凄い所。

RZV500R透視図

そういった差異がいま話した部分しかなく、しかもそれはそれで市販車らしかぬとんでもないものだったからです。

市販車部門の人たちがYZR500レプリカを目指す上で絶対条件に据えていたのは

「V4の500ccでYZR500と同じホイールベース」

そこでとんでもない事になったのがいま話したエンジンで、市販車という事もありエンジンのVバンクにはエアクリーナーボックスやキャブなどレーサー以上にスペースが必要になる。

RD500LC

加えてYZR500と同じ用に後チャンバーをクロスさせ容量を稼ぐ必要もあって、前も中も後もカツカツ。

そこでこのV4エンジンは

・前二気筒はクランクケースリードバルブ

・後二気筒はピストンリードバルブ

という前後バラバラな吸気弁方式を採用しました。

前後で全く違う吸気弁というのはすわなち前後で違うエンジンを積んでいるという事と同義。しかもV型だから左右で吸気も変わってくる。

RD500LCエアフロー

つまり『吸気』『点火』『排気(掃気)』の全てがバラバラで同じセッティングをしても同じようには動かない。

それを最終的に一本のクランクに繋げて綺麗に回るニコイチエンジンにするなんて前例が無く、素人から見ても無謀とも言える話。しかもエンジンは前後で違うメンバーが開発。

実際にエンジン実験を担当された鈴木さんいわく

「全然違う単気筒を4つ繋げたような状態」

という話でバックラッシュ(ギアのズレや衝撃)それにキャブセッティングなど、普通なら諦めるよう事を休日返上で途方も無い数のトライ・アンド・エラーを繰り返した。

RZV500Rのエンジン

そうして完成した奇跡のバランスのようなエンジンがRZV500Rに積まれているこれ。

YZR500とは少し違うけどYZR500レプリカを造るためだけに開発された通常なら絶対に市販化されないようなエンジン。

ここから余談というか本題というか。

RZV500R写真

「そもそも何故こんなモデルを造ったのか」

という点について話すと、これはRZ250/350など市販車を担っていたエンジニア達がYZR500のレプリカを空想した事がきっかけ。それを知った社長がプレゼンするように命令し、実際にやったらGOサインが出てエンジニア達がウキウキで血眼になりながら開発したという話。

でもRZV500RにGOサインが出されたのは単純に凄いバイクになりそうだったからとかエンジニアが駄々をこねたからではなく、ヤマハの裏事情が大きく関係している。これが個人的にRZV500Rで一番知ってほしい部分。

RZV500Rの開発が始まる少し前にあたる1982年頃にヤマハはHY戦争といってホンダと国内シェア争いを繰り広げていました。

「目には目を歯には歯を作戦」

で最終的にヤマハは会社が傾くほどボコボコにやられてしまったんですがそんな中で一つだけ、たった一つだけ最後まで負けなかったところがあった。

『2stスポーツバイク』

です。

RZ250/350を筆頭にこのクラスだけはどれだけ劣勢になろうと人気が衰える事なく最後まで戦えていた。

これは大敗を期したことで失意のどん底にあったヤマハにとって唯一残された希望であり武器だった。

RZV500Rのカタログ

そう、だからこそヤマハは自らの存在を内外に示す象徴、文字通り旗頭になるモデルとしてRZV500Rが開発されたんです。RZV500Rがここまでとんでもない専用品の塊になったのはこれが理由。

2stスポーツのヤマハとして絶対に恥ずべきものは出せない背水の陣だったからこそエンジニア達も奮起し、結果としてYZR500レプリカであり市販車とは思えぬスペシャルなマシンを市販車が完成した。

『825,000円(現在でいえば200万円強)』

という超高価な車体価格、そして大型二輪免許が難しかった時代に500オンリーだったのもこれが要因。RZV500Rは一人でも多くの人に買って乗ってもらうためにモデルではなく、一人でも多くの人にヤマハを知らしめるためのモデルだったからこうなったんです。

カタログ写真

その事が色濃く出ているのがフレーム。

RZV500Rは海外でもRD500LC(欧州)やRZ500(カナダ)という名で発売されたんですが、海外仕様はフレームとリアサスのシリンダーが鉄でした。

RD500LCキャブフロー

というか元々RZV500Rは鉄フレームで開発が進んでいたんですが、国内仕様だけ後からアルミフレームが奢られる事になった形です。

これは国内仕様が自主規制のために排気を絞って馬力を下げる必要性がありそのぶん軽量化したかった事もあるんですが、それだけではなく

「2stスポーツのヤマハとして高くなってもいいから本物を」

という理由から。※Replica Vol.1|内外出版社より

RZV500Rの紙面

実際このモデルの登場でヤマハの2stスポーツの地位は確固たるものとなり、親しいルックスのRZ250RR(開発はコチラが後)やYSR、そしてTZ/TZRと2stスポーツ展開で成功を収め見事に再起しました。

しかし・・・最後にちょっと野暮な事を言わせてもらうと、これ本当に罪づくりなモデルなんですよ。

というのもRZV500Rが発売された時期はケニーロバーツ(ヤマハ)とフレディスペンサー(ホンダ)の激闘によりWGP500が人気絶頂だった・・・と思ったらキングケニーが突然の引退発表という頃。

ケニーとYZR500

そんな中で発売されたYZR500レプリカのRZV500R。さぞや売れた事だろうと思いきや国内販売台数は僅か3700台ほど。

理由はお分かりの通り、高額かつ厳しい限定解除が必要で簡単に買えるバイクではなく販売期間も僅か二年ほどだったから・・・これがRZV500Rの罪。

1984RZV500R

そんな少ない販売台数の裏に買いたくても買えなかったライダーを何万人も生んだんです。

そしてそれを今もなお後悔しているライダーが無数に居る。それどころかそういう人たちが居るからRZV500Rは今もなお色褪せずあろうことか当時を知らない世代にまでその存在を誇示する。

多くのライダーに指を加えて見てもらい脳裏に焼き付けて去っていったなんとも”いけず”なキングレプリカそれがRZV500Rでした。

参考:RZV500R 開発ストーリー|ヤマハ発動機

主要諸元
全長/幅/高 2085/685/1145mm
シート高 780mm
車軸距離 1375mm
車体重量 173kg(乾)
[177kg(乾)]
燃料消費率 31.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷2サイクル4気筒
総排気量 499cc
最高出力 64ps/7500rpm
[88ps/9500rpm]
最高トルク 5.7kg-m/8500rpm
[6.75kg-m/8500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/80-16(60H)
後130/80-18(66H)
バッテリー 12N5.5-3B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8HS
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.0L
スプロケ 前15|後38
チェーン サイズ530|リンク102
車体価格 825,000円(税別)
※[]内は海外仕様
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

狂った時代が生んだ不幸 NS400R (NC19) -since 1984-

NS400R

「The Concept from GP Technology」

WGP500でいきなり15年ぶりの勝利をもたらし、翌年の1983年には世界チャンピオンにまでなったNS500のレプリカモデルと登場したのがこのNS400R(NC19)です。

NS500

これがそのチャンピオンマシンNS500。

開発者は福井さんで後に六代目ホンダ社長に就任されました。

NS400Rはそんなとんでもないマシンのレプリカということで

・2st水冷V型90度バンク三気筒
・三連フラットバルブ
・スラントキャブ
・アルミ一体成型NSシリンダー
・電子制御排気デバイス

それを積む車体も

・専用設計角型フレーム
・リモートアジャスター付きプロリンクサス
・各部にアルミてんこ盛り

などなど豪勢な作りでした。

NC19

馬力も59馬力(海外仕様は72馬力)と申し分ないものを持っていたのですが

「NSR250Rは知ってるけどNS400Rはあんまり聞いた事ない」

という人が多いのが正直な所かと思います。

そうなるのも無理もない話でこのNS400は今ひとつ人気が出ず、当時を振り返る企画などでもほとんど触れられないから。

理由は色々ありますが、一番あげられるのが一年前に出ていたMVX250Fという存在が大きいです。

NS400Rロスマンズカラー

MVX250FもNS400Rと同じV型2st三気筒を積んだスポーツバイクだったのですが、これが焼き付きを起こしやすいなどの問題から数ヶ月で生産終了。既に生産を開始し発売寸前だったMVX400Fも急遽お蔵入り。

そんな経緯の後に出てきたのがこのNS400R。再設計され問題は解決されていたとはいえMVXの焼き直しである事は明白で出る前からイメージが悪くマイナススタートだった。

NS400RがMVX400の焼き直しというイメージを持たれた理由はエンジンにあります。

確かにNS500はV型三気筒で世界を制しました。そしてNS400Rも世界を制した同じV型三気筒・・・なんだけど形が全く違うんです。NS500はバンク角を稼ぐため前1/後2というV型三気筒でした。それに対してNS400Rは前2/後1という正反対の形をしている。

NS500-NS400Rエンジン

これは保安部品の関係。

そしてこのレイアウトMVX250Fと同じレイアウトなんです。更にNS500は文字通り500なのにNS400Rは387ccと500ではないばかりか400というのもちょっと微妙な寸足らずな排気量。何処からどう見てもMVXにしか見えなかったというわけ。

加えて車体を見てもらうと分かりますが、アルミだらけという豪華さの中にもダブルシートやゴムラバー付きステップ、110という1クラス下の細いリアタイヤなどレプリカ路線とは少し離れた箇所が随所にあった。

NS400Rロスマンズカラー

それなのにNS400RをNS500のレプリカだと強く推すから尚のこと疑問に思う人が多かった。

もちろん400というモンスターパワーに気が引ける人が多かった事や、まだこの頃はレーサーレプリカの黎明期だったから仕方のない面もあるんですけどね。

そこで気になるのが

「何故こういう形になったのか」

という事。これは当時を振り返ったエンジニア達のインタビューを読むに、エンジニア達に戸惑いがあった事が最大の理由かと。

VF400F

当時ホンダのエンジニア達は本田宗一郎の信念に従って

『未来ある技術4st』

で戦っていました。CB50、XL250、VT250F、そして400でもVF400Fなどライバルが2stだろうが真正面から4stをぶつけていた。

確かにホンダの4stスポーツは爆発的なヒットとなった。しかし同時に2stスポーツの需要は伸びる一方で永遠のライバルであるヤマハのRZにはHY戦争を持ってしても潰すことが出来ず、営業からの圧力は凄まじいものがあったわけです。

これはレースでも同じ。

NS400Rの元である2stレーサーNS500は、楕円ピストンでお馴染み4stレーサーNRがあまりにも不甲斐ない戦績だったから作られた経緯があります。※詳しくはNRの系譜を参照

歴代NR

「まず勝て、道楽なら金の無駄だから辞めろ」

という圧力があったから生まれたマシンです。

これが見事チャンピオンに輝いたわけですが、同時期に市販車のフルカウルも国土交通省から認可されるようになった・・・となると営業は

「NS500の公道モデルを出せ」

となりますよね。

2stの売れ筋モデルが喉から手が出るほど欲しいとなった時、2stのチャンピオンマシンレプリカのアイディアが出るのはもはや必然。

ただ事はそう簡単じゃなかった。

HRC

というのもNS500はファクトリーマシンで作ったのはホンダの中でもHRC(Honda Racing Corporation)というレース部門。市販車部門とは全く別のところです。

「NS500の公道版作る」

と言ったところで触る事すら許されないほどHRCは門外不出の部門。

つまり

営業部門「NS500のレプリカが欲しい」

HRC部門「NS500技術は教えられない」

市販部門「ホンダは4st屋だろう」

こういう見事に噛み合ってない状況になってしまったんですね。

「2stが人気だからNS500の市販車を作れ」

と市販車部門に言った所でNS500を造ったわけではないし、HRCは何も教えてくれないという八方塞がり状態。

それでも何とか必死の思いで完成させたら今度は市場から

「何故もっとNS500ライクにしなかった」

と責めたてられてしまったというオチ。酷な話ですが部外者から見れば同じホンダが作ったバイクですからね。

噛み合っていない歯車が生んだNS400R。

でもこの一件があったから後に登場するNSR250RはHRCと市販という垣根を越えた試み(共同開発)がなされ大成功を収めた。

NC19表紙

NS400Rは人気もそれほどだし、お世辞にも褒められるバイクとは言い難いけど、同じホンダながら離れていく一方だった市販とHRCという関係を取り持つキッカケとなったバイク。

つまり決して名車では無いけど、決して無視は出来ないホンダ2stレプリカの礎みたいなモデルでもある。まあだからこうやって書いてるんですけどね。

主要諸元
全長/幅/高 2025/720/1125mm
シート高 780mm
車軸距離 1385mm
車体重量 183kg(装)
燃料消費率 29.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 19L
エンジン 水冷2サイクルピストンリードバルブ3気筒
総排気量 387cc
最高出力 59ps/8500rpm
最高トルク 5.1kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-16(54H)
後110/90-17(60H)
バッテリー FTX5L-BS
プラグ B8ES
推奨オイル ウルトラ2スーパー
オイル容量
スプロケ 前16|後40
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格 629,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

タブーを犯したターボ 750turbo (ZX750E) -since 1984-

750ターボ

「Like a Fire Engine」

750turboは簡単に言うとザッパーことZ650系譜のZ750FX(KZ750E)のエンジンをターボ化してGPz1100に積んだようなバイク。

でも何故かGPzとは付かない。上の写真のカバーを見れば分かるようにGPzの文字が入ってるのにね。

750turboは

・最高性能かつ扱い易いこと

・レースに耐えうる特性をもつこと

・ターボシステムは極力簡素化すること

・整備性と信頼性を確保すること

という嘘じゃないのかと思えるコンセプトで作られました。

ご存知の方も多いと思いますが一番最初にターボバイクを出したのはホンダで1981年のCX500/650TURBO。

CX500TC

IHIが作った世界最小のターボを積んでいます。

そんなCX500の翌年にヤマハが追いかけるように出したのが三菱重工のターボを採用したXJ650turbo。

XJ650ターボ

ホンダと喧嘩(HY戦争)中だったヤマハとしては”目には目を歯には歯を”だったんでしょうが、同じ所のを使うのはプライドが許さなかったんでしょうね。いやまあコレはこれで世界初のキャブターボなんですが。

一方でホンダと同じくIHIのターボを積んだスズキのXN85TURBOも同年発売。

XN85

85という名前から850ccと思いきや673cc。85というのは85馬力から来ています。紛らわしいですね。

そしてこのページの主役であるカワサキの750turboはというと、まだ誠心誠意製作中でプロトタイプを1981~82年のモーターショーで発表するまでに留まっていました。

750ターボプロトタイプ

プロトタイプの顔はすごく野暮ったいですね。

出遅れていたカワサキですが、実は1978年と何処よりも早い段階から(非公式ながら)アメリカでターボ車を売っていたのをご存知でしょうか。

それはZ1Rベースでその名もZ1R-TCというバイク。

Z1Rターボチャージャー

これはアメリカのサードパーティ製のターボチャージャーを積んだチューニングバイクなんですが、手掛けたのは元カワサキ社員でカリフォルニアのカワサキディーラーで発売されていたようです。

しかし州が危険と判断し、後付過給を付けたバイクの販売を禁止したため78~79年の二年間しか発売されませんでした。250台/年で計500台ほど売れたようです。

750ターボメーターまわり

話を750turboに戻すと・・・CX/XJ/XN/750と僅か数年でターボモデルが相次いで出たのは、自動車メーカーが上位モデルにターボを積むようになった事で

「ターボ=高性能の証」

という認識が広まり、世界中でターボブームが起きていた。そこでバイクもターボブームの波に乗れとなったわけですね。

でもバイクの場合もう一つ理由があります。

CX500/650(498cc/673cc)
XJ650(653cc)
XN85(673cc)

皆さんコレ見て

「中途半端な排気量だな」

って思いませんか。実はこれアメリカが関係しています。

この頃アメリカでは海外メーカーのバイク(特に日本車)が90%近いシェアを誇っており、唯一の自国メーカーだったハーレーのシェアが10%を切るまでに落ちていた。そこで当時のアメリカ大統領だったレーガンが1982年に

大型バイク関税

「5年間700cc以上の輸入バイクの関税を4%から45%に上げる」

という完全な輸入車潰し政策を打ち出してきたわけです。

これをキッカケにハーレーは大復活を遂げましたが、代償として多くの海外バイクメーカーが消えました。

あのBMWですら会社が傾き、トライアンフに至っては耐えきれずに倒れました。幸い実業家に拾われ九死に一生、これが現在のトライアンフです。

つまり実質的に700cc以上のバイクは売れないに等しい状況の中で700cc以上のパワーを出すためにターボを積んだ・・・という面もあるんです。

トランプさんが同じような事を再びしようとしている事から向こうではレーガンの再来とか言われています。

となるとおかしいですよね。750turboは738ccと完全に排気量をオーバーしてる。

750ターボプロトタイプ

どうしたのかなと思って調べてみると、どうも750turboの一部はアメリカのネブラスカ州にある工場で組み立てられていたようです。部品を送って向こうで作ることで関税を回避したんですね。

ライバルメーカーより車体価格が高かったのはこういう理由もあったからなんでしょう。

さてそんな750turboですが、タブーに近い事をやっています。

750ターボエンジン

それはいわゆる”ドッカンターボ”な特性にしたこと。

いきなりドカンとターボ(トルク)が効くと危ないのは説明しなくても分かると思います。コーナリングの途中とかだったら絶対コケますよね。

同じ時代、同じターボ車ということで一纏めにして語られる事が多いですが、この750turboだけはちょっと別格というか斜め上なターボです。

バイクはターボが無いに等しいので知らない人の為にもターボの簡単な説明。

ターボの仕組み

汚く分かり難い絵で申し訳ないですが、要するに排気ガス(茶色)の力でタービンというプロペラを回し、反対側に付いてる吸気(コンプレッサー側)のプロペラを共回りさせ空気(青色)を圧縮しているわけです。

そうすることで本来なら1000ccしか吸えないハズのエンジンが(1000ccにまで圧縮された)1500cc分の空気を吸える。1500cc分の空気が吸えるという事は、1500cc分の燃料を吹いて燃焼させる事が出来る。だからターボは自然吸気のエンジンよりパワーが出る。

ただ流れを見てもらうと分かる通り、排気ガスが動力だから最初からターボが効くわけじゃない。

アクセルを開けて排気ガスを出す

ある程度の排気(流速)が出ると排気側のタービンが回り始める

対になった吸気側のタービン(コンプレッサー)も回り空気を圧縮する

圧縮された空気がエンジンに入る

過給で一クラス上のトルクを生む

と結構なステップがある。排気という最後のステップで吸気という最初のステップをアシストするわけだからターボの反応はエンジン回転数に少し遅れて反応する。

これがターボラグといわれているターボのネガな部分。他にノッキングなどの問題もあります。

ターボの仕組み

ちなみにこれが750turboに付いている日立製のHT10-Bというターボチャージャー。右下の長い棒はアクチュエーターといって丸い壁のような敷居(ウェイストゲートバルブ)の開閉をし、排気ガスをタービンに当てるか当てないかを負圧で切り替えるユニット。

タービンが許容回転数以上にならないように(壊れないように)コントロールするストッパー的な物です。

じゃあ「ドッカンターボ」と「ドッカンじゃないターボ」はどうやって決まるのかというと、タービンサイズで大方決まる。

H2のペラ

タービンが大きいほど1回転辺りの仕事量が上がるので、回り始めるとガンガン圧縮して馬力がグングン伸びる。その代わり簡単には回らないので低回転時の弱い排気ではターボが全く効かないからドッカンターボになる。

逆に小さければ小さいほど弱い排気ガスでも簡単に回るのでターボが効くからスムーズ。そのかわり仕事量はそれなりだし、回転数が上がっていくと排気を邪魔する足枷になるので馬力を出せない。

ZX750E

CX500Turbo:82ps/8000rpm

XJ650Turbo:90ps/5~8000rpm

XN85Turbo:85ps/7500rpm

750turbo:112ps/9000rpm

こうやって並べてみると明らかに750turboだけが頭一つ抜きん出た馬力を持っているのが分かると思います。

ライバルが皆ターボのメリットよりもデメリットを考慮しバイクに合った小さいターボを採用したのに対し、カワサキはターボのメリットを伸ばすために大きいターボを採用したということ。 聞こえは良いですが普通はありえないです。

750ターボカタログ

750Turboに対する評価は基本的にどの国もほぼ変わらない。

“最もターボを味わえ、最もターボの危うさ味わえるバイク”

正直このバイクはお世辞にも褒められたバイクでは無い・・・なのに今でも世界中で根強い知名度と人気を誇ってる。

750ターボ北米カタログ

それは結局750Turboが皆がイメージする”TURBO”を理屈抜きで実現させたバイクだからでしょう。

※ターボについては「バイク豆知識:夢のダウンサイジングターボ」もどうぞ。

主要諸元
全長/幅/高 2220/740/1260mm
シート高 780mm
車軸距離 1490mm
車体重量 233kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 17.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 738cc
最高出力 112ps/9000rpm
最高トルク 10.1kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前110/90V18
後130/80V18
バッテリー SYB14L-A2
プラグ BR9EV
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40から20W-50
オイル容量 全容量3.5L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ630|リンク98
車体価格
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

大きな親切 大きなお世話 FZX750 (2AK/3XF) -since 1986-

FZX750

「ニューテイスト・オブ・ジェネシス」

サイドエアインテークの形からヤマハの名車Vmaxを彷彿とさせるものの、何かが違うネイキッドのようでクルーザーのようでもあるFZX750。

と言うのも似ているのは当たり前で、一年先に海外向けに作られ好評だったVmax(VMX12)の弟分、そして国内上限の750ccに合わせて作られたVmax750みたいなバイクだからです。ちゃんとUSヤマハの意見も取り入れて作られています。

ちなみにナナハンですが海外でも発売されていました。

FZX750

海外モデルは国民性の違いか日本と違ってかなりハイカラ。上の写真は欧州仕様で、旅好き欧州人に欠かせないグラブバーを装備しています。

向こうの人って当たり前のように過積載をするからグラブバーは必須なうえにシートフレームのアルミ化に対しては結構否定的だったりします。それはアルミだとポキっと逝って修正できないから。日本では喜ばれるのにね。お国柄って面白い。

ちなみにFZX750はダブルクレードルのメインフレーム共々堅牢なスチール。専用設計でシート高も750mmと抑えられています。

ジェネシスエンジン

そのフレームに搭載されているエンジンはFZ750で登場した大きく前傾しているのが特徴の初代ジェネシスエンジン。勿論そのままではなくカムを変更し中低速寄りにリセッティング。

・・・が、ご存知の通り非常に不人気でした。

FZX750海外モデル

「Vmaxに見えないから」

です。そもそもなんで直四でしかも低速よりに77馬力まで落とした物を載せたのかって話ですが、これヤマハの配慮なんですよ。

Vmaxは海外向けで逆輸入というまだメジャーではない方法でしか買うことができなかったので値段も100万円ほどでした。

Vmaxエンジン

それに対してFZX750はFZ750のエンジンを流用する事でコストを抑え75万円と当時の大型バイク(ナナハン)の平均的価格に抑えた。この頃のナナハンは80万円が一定のリミットライン。VmaxのV4はそのままにスケールダウンなんてしてたらそんな値段では無理な話。

そしてもう一つ、それは日本人の大型バイクの用途。

FZX750

日本のライダーが大型バイクで何をしているのかメーカーは昔からちゃんとリサーチしています。そしてその統計を見ると今も昔も半数以上がツーリング。残りも軽いワインディングと街乗りが占める。

そうなった時にVmaxはタンク容量が15Lしかなく燃費も10km/Lちょっとで航続距離がかなり短い。しかも燃料油キャップはシートの下だから荷物も多く積めない。オマケに145馬力のモンスタードラッガーなのにフレーム剛性が弱くて安定性に難がある。

要するにVmaxというのはそれらが最も苦手な部類のバイクで日本の大型ユーザーには非常にアンマッチだった。そこで日本のライダーの用途にマッチする柔軟性を持たせたのがFZX750というわけ。

FZX750後期モデル

1990年にはミッションが五速にされた後期モデルの3XFにモデルチェンジし更に使い勝手が向上しています。

FZX750の人気が出なかったかといえば兄貴分であるVmaxがナナハン解禁前からバブルの波に乗って逆輸入され始めていた点から

「Vmaxの偽物or廉価版」

という捉えられ方をされてしまった事が大きいかと思います。

そう捉えられてしまったのは見た目が違った事もありますが、ユーザーへの配慮としてカタログスペックよりも使い勝手を取ったから。

FZX750

結局そのまま鳴かず飛ばずで1993年に生産終了したわけですが、実はFZX750は1998年に再販を遂げています。

それは同じく再販を遂げた名立たる名車にありがちな”再販を望む声が多かったから”ではありません。再販される事となった最大の理由は教習車の存在。

一般ライダーには悪く捉えられてしまった柔軟性でしたが、一方で良く捉えられたのが教習所。

扱いやすさや癖の無さが高く評価され、教習車としてロングセラーを記録していたわけです。

FZX750L

これが大型の教習車だった人も多いのではないでしょうか。もしそうならこのバイクの懐の広さも実感されているはず。

ヤマハも大型バイクユーザーの為に作ったFZX750を受け入れて欲しくてもう一度賭けました・・・しかし残念ながら十年目の正直も実らず。

教習車としての評価が高かった一方、市場の評価が悪かったのは、ヤマハがツーリング用途がメインである大型バイクユーザーを理解しているようで理解していなかったからでしょう。

FZX750カタログ表紙

「あなたに合わせたVmaxですよ」

この親切心が大型バイクユーザーにとって大きなお世話だったという事です。

主要諸元
全長/幅/高 2230/785/1110mm
シート高 750mm
車軸距離 1530mm
車体重量 203kg(乾)
[208kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 13.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 749cc
最高出力 77ps/8500rpm
[74ps/9000rpm]
最高トルク 7.1kg-m/6000rpm
[6.4kg-m/6000rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/90-16(59H)
後140/90-15(70H)
バッテリー YB14L
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA-9
推奨オイル SAE 10W/30~20W/40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.5L
交換時2.7L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前17|後39
[前17|後43]
チェーン サイズ530|リンク108
車体価格 745,000円(税別)
※[]内は90年以降モデル(3XF)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

SUZUKIのZUZUKI GAG (LA41A) -since 1986-

GAG

「遊び心をフルカウル」

400ccの59馬力規制を生むキッカケとなったGSX-R(400)やナナハンの常識を破ったGSX-R750にそっくりな外見の初フルカウル原付ことGAG。ツインスパー風スチールバックボーンフレームにビジネスバイクであるバーディの横型エンジンを積んでます。

このバイクは知ってる人も多いと思います。ちなみに海外ではRB50やGSX-R50という名前で売られていました。

solifer-r

その中でも一番違うのはフィンランドで

「Solifer R」

という全く違う車名なのに加え2st縦型エンジンを搭載。ただしお国の関係でわずか1.5馬力と、ただでさえ遅い事に定評のある4stのGAG(5.2馬力)をも凌ぐ遅さです。

話を日本の4stGAGに戻すと・・・

アメージングマシンGAG

「見た目はバッチリレプリカだけど中身は至って普通の原付」

っていう車名からも分かる通り”おふざけバイク”なんだけど、その中でもGAGはフルカウルでディスクブレーキやモノサスなど原付にしてはそれなりの装備をしていた”少し行き過ぎたおふざけバイク”でした。

更に行き過ぎていたのは走行性能に関する部品だけでなく、ウィンカーはGSX-Rのものそのままとか。

ギャグ構造

他にはシートカウルに付いてるこれまたGSX-Rと同じ”SACS”のシールなんだけど、これは正式にはSuzuki Advanced Cooling Systemの略で要するに油冷という意味。

しかしGAG(というかバーディ)のエンジンは空冷だから本当ならSACSじゃない。

「GSX-Rパロのギャグなんだから別に良いじゃん」

と思うんだけど実はこれも徹底していて、同じSACSの略なんだけどGAGの場合Suzuki Advanced “Comical” Systemと書いてる・・・スズキ高度喜劇システム。

RB50

そんな清々しいおふざけバイクなGAGの最大のターゲットはお金のない学生や若者。エンジンが耐久性のある4stバーディの物だったり7Lも入るタンク容量だったりするのはそのため。

実際のところ出た時は憧れのGSX-Rやガンマのようだと若者に売れました。しかしそれ以上にウケたのが既にバイクに熱中していたオッサン達。それは上で言った通り原付としては中々の装備をしていたから。

今にして思うとこれが幸か不幸かGAGが二年足らずで終わってしまった事の始まり。GAGは本来の狙いとは違う道へ進んでいったわけですが、その向きを決定づけたのはヨシムラやタケガワといったチューニングメーカーがGAG向けに多くのチューニングパーツを出したこと。ヨシムラに至ってはコンプリートマシンまで出す始末。

若者の足として生まれたGAGによるワンメイクレースが開催されるほどの異常な盛り上がりに。ギャグが通じない人たちのオモチャになったわけです。

マニュアル

ナンバーが取れて公道を走れるポケバイみたいなものだから人気が出るのも分かるけどね。

ただ覚えておいて欲しいのはそんなミニレーサーレプリカというジャンルであり需要を開拓したのはGAGということ。

需要のある新ジャンルというのは・・・当然ライバルが出てきます。好事魔多しですね。

同年末にヤマハからYSR50/80というGAGと同じおふざけバイクが出ました。GAGと同じようにふざけているわけですが、コチラは7馬力を発揮する2stエンジンに加え12インチホイール。走行性能はGAGよりも優れていました。

YSR50/80

これだけならまだ良かった。

問題は翌1987年に出たNSR50/80です。レーサーマシンNSR500をそのままサイズダウンしたといわれる本当のミニレーサーレプリカ。

NSR50

最高速は勿論のこと、足回りやフレームまでもしっかり作り込まれておりコーナリング性能も頭一つ飛び抜けていた名車で何一つふざけてないミニレーサーレプリカ。

こうなると誰もがNSRを買うのは当たり前の事で、それでもヤマハはYSRや晩年にはTZM50Rで徹底抗戦した一方、スズキのGAGは僅か2年でカタログ落ちし後継が出ることもなく終わりました。それでも3万台ほど売れたみたいだけどね。

GSX-R400の系譜でも書きましたが、この流れはGAGだけじゃないんです。250ガンマと全く一緒。

RG250

2st250ccレーサーレプリカとしてRG250Γが出てヒットしたと思えば

NSR250|TZR250

後からやってきたヤマハに追い抜かれ、最後はホンダが全部持っていった。

他にも

GSX-R

GSX-Rという4st400レーサーレプリカという新しいジャンルで出してヒットしたかと思えば

CBR400RR|FZR400|ZXR400

やっぱりホンダとヤマハ、そしてカワサキまでにも追いかけられ抜かれていった。

誰だってどんなクラスだって同クラスのバイクなら速い方が良いに決まってるのは世の常で、後出しジャンケンが有利なのは仕方ない事。

しかし少しスズキに対して疑問・・・それは

「どうしてスズキはやり返さないのか?対抗しないのか?」

です。

世界的レースになったGSX-R1000やGSX-R600といった世界レースの競技車の役目も担うバイクにおいては全力で戦う一方、関係のない完全な市販車でライバルが現れても何一つ抗わない。250ガンマは最後の最後でモデルチェンジしましたが既に競争が終わったあとの事。

最近の有名所でいえばスズキを代表するバイクであるハヤブサ。

HAYABUSA1300

ロングモデルライフということもあり販売台数が落ちてきたにも関わらず一向にモデルチェンジしない。

いま熱い250ccでもそう。

GSR250F

GSR250やGSX250Rというバイクをスズキは売ってるわけですが、CBR250R/RR|YZF-R25|Ninja250/SLといったライバルメーカーの250とは立ち位置が少し違う。

更に言うなれば原付二種も。

アドレスV125

アドレスV125という原付一種サイズでしかも速い二種という他にはない原二で成功したものの、125が活気づきPCXやNMAXといったアドレスより高くて速くて低燃費の125が現れても対抗せず、アドレス110というちょっと下のスクーターを出しただけでV125は大きく手を加えること無く生産終了。

この対抗しない事についてスズキの人がなにか言うわけもなく・・・ただそのヒントになるんではなかろうかと思う事があります。それは会長である鈴木修会長がHY戦争の取材に対し言われた教訓のようなこと。

「業界1位と業界2位(ホンダとヤマハ)が喧嘩したら3位以下は木っ端みじんに吹き飛ぶ」

ホンダとヤマハのHY戦争という喧嘩に巻き込まれてしまったスズキは二輪撤退も検討されるほど減産&赤字に陥りました。

鈴木修会長はスズキがどういう立ち位置なのか、どう立ち回ればいいかを一番良くわかっている方。続けてこうも言われていました。

「実力を客観的に見極める冷静さが必要」

と。

ホンダとヤマハ

スズキよりも開発や販売網などに大きなアドバンテージのあるホンダやヤマハと真正面からぶつかって無傷で済むハズはない。いい勝負が出来たとしても消耗戦となり、そうなったときに一番ダメージを受けるのはスズキ。

じゃあどうするかと言えば他所には無いバイクを作ること。

実際HY戦争以降のスズキを代表する大ヒット車といえば
説明不要なケルンの衝撃カタナ
レーサーを公道に持ち込んだレーサーレプリカの始まりであるガンマ
大型ライトウェイトスポーツの元祖GSX-R750
初めて時速300/kmの壁を超えたアルティメットスポーツHAYABUSA

どれもオリジナリティ溢れる初尽くしなバイクばかり・・・ただネタにもされるようにオリジナリティがあろうがなかろうが売れて認めらなくてはならない。上に紹介した認められたオリジナリティ溢れる名車がある一方で認められなかったオリジナリティ溢れるバイクも多く出してきました。

今で言えばGSR400やグラディウス400なんかがそうですね。何故存続できているのか分からないほど売れてません。

実はサイトに対する問い合わせでHY戦争の最前線におられた某メーカー系代理店の元社員さんから(ありがたいことに)感想をいただいた時に教えていただいたのですが

そこでは当時SUZUKIの事を”ZUZUKI”と言っていたそうです。※あくまでも当時の話

ズズキ

由来は頭突きです。なんで頭突きかといえば

「基本的に自爆するけど極稀にクリーンヒットさせてくるから」

だそうです。

いわゆる業界隠語で今は使われていないと思いますが、これを聞いた時(良い意味で)非常によくスズキの事を表していると思いました。上記車種もそうですし、このページで紹介しているGAGもそう。他社から追っかけれる程のクリーンヒット。

ギャグ

最近はモデル整理が課題だった事もあり頭突きの回数が減りクリーンヒットが少ない印象ですが、頭突きを止める事はないでしょう。

「スズキはセールスマーケティングが下手」

とよく言われますがそれは情勢やライバルを見るのではなく、どうすれば頭突きをクリーンヒットさせられるかを考えて作っているからかも知れませんね。

主要諸元
全長/幅/高 1540/610/870mm
シート高 610mm
車軸距離 1080mm
車体重量 64kg(乾)
燃料消費率 121.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.2ps/7000rpm
最高トルク 0.57kg-m/6000rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前後3.50-10-2PR
バッテリー 6N4-2A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
C6HSA
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.8L
スプロケ 前14|後37
チェーン サイズ420|リンク100
車体価格 183,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

30年経ってCBXと認められたアメリカン CBX400Custom (NC11) -since 1983-

YZF-R25

CBXと聞くと誰もが大ヒットし今も伝説のように語り継がれるCBX400F、またはCB750FOURの次世代を担うフラッグシップとして登場したCBX1000を思い浮かべるでしょう。

このCBX400CUSTOMはCBX400Fの二年後、CBX400INTEGRAに次いで登場したCBX400ベースでハンドルとシート変えただけのナンチャッテアメリカン・・・かと思いきやそうでもない。

CBX400Custom エンジン

このCBX400Fは兄貴分でこの400CUSTOMに勝るとも劣らない不人気さを誇ったCBX650がベース。一部の国ではナイトホークという名で売られていました。

CBX650

その650と基本的に同じだから背面ジェネレーター、油圧式バルブクリアランスオートアジャスタ、油圧クラッチ、シャフトドライブというCBX400Fとは名前こそ同じだけど造りは違うCUSTOM。そして驚きなのはCBX400Fよりもショートストロークという事。

だから馬力もFと同じ48馬力という申し分ないものを持ってるんだけど、スケールダウン版の宿命というべきか代償として非常に重くなった。CBX400Fに+11kgで大台の200kgに到達。更にルックスのためにティアドロップタンクにしたことでタンク容量も5L減って12Lしか入らない。

CBX400CUSTOMエンジン

足も硬いしシートも足付きを良くするため非常に硬く薄い。まあコレは見た目を優先したと思えば許せないこともない話なんだけど、ここに書いてる事から察して欲しいんだけど人気は出なかった。

CBX400カスタム

CBX400Fの方はCUSTOMが出た後もマイナーチェンジされたりしたんだけど、これは出たっきり。兄貴の650はまだ白バイや教習車に採用されたから救われてるんだけどね。

理由は言うまでもないけどクルーザーというよりネイキッドな腰高ショートフレームだったこと、そしてもう一つは他所だけでなく身内にもライバルがいた事。

NV400カスタム

Vツインを積んだNV400Custom。CBX400カスタムの二年後に登場したVツインアメリカン。CBXよりも(まだ)クルーザーらしい見た目。まあコレもヒュンヒュン回るアメリカンらしからぬスポーツ性でそれほど人気は出なかったんだけどね。

結局第二次クルーザーブームのきっかけとなった1988年のスティードを出すまでホンダはCBX400CUSTOMとNV400CUSTOMで食い合い、ヤマハのビラーゴとカワサキのエリミネーターによって共倒れする事に。

ちょっと不幸ですよね。でもCBX400CUSTOMが不幸なのはそんな不幸要素が一つじゃないということ。

なんでCBX400CUSTOMなんて出したのかと言えば、このナンチャッテアメリカンタイプは(ホンダに限った話じゃないけど)欧米向けの400オーバーモデルとの二台体制。

言葉が悪いけどフレームもエンジンも基本は同じで、日本でもクルーザー人気が高まりつつあったからスケールダウンしてついでに売ってしまえという感じ。つまりホンダにとっても本命モデルではない。

CBX400Fカタログ

そして悲しい事にこのバイクのエンジンのベースとなった650は更にスケールアップしてCBX750(コッチも不人気っていう)と続いたのに対し、400の方はCBX400CUSTOMだけ。

理由は半年後にCBR400Fというド本命車が控えてたから。CBX400を10馬力も上回る58馬力を引き下げて登場したCBX400Fの後継車です。

CBR400F

こうなるともう”CBX”というネームバリューも無くなりホンダ400はCBR-Fの一色に。もう誰もCBXなんて気にも止めてませんでした。

今では考えられないけど当時はCBX400Fですら型落ち二束三文だったんですよ。

そしてもう一つの不幸要素はその”CBX”という名前。CBX400Fカタログ

CBX400Fが盗難率の高さ、車体価格の高騰により盗難保険への加入が大手保険会社において不可になったのは記憶に新しいと思いますが、何故かその加入不可車両の中にCBX400CUSTOMも含まれているんです。

現役時代には

「こんなのCBX400じゃない」

と言われ認められず

生産終了した今になって

「これもCBX400」

と認められた。

CBX400カスタム

これほど不幸なバイクは珍しいかと。

主要諸元
全長/幅/高 2150/830/1160mm
シート高 780mm
車軸距離 1440mm
車体重量 200kg(装)
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 12L
エンジン 水冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 398cc
最高出力 48ps/10500rpm
最高トルク 3.4kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前100/90-19(57S)
後130/90-16(67S)
バッテリー FB12AL-A
プラグ DP7EA-9/DP8EA-9/DP9EA-9
または
X22EP-U9/X24EP-U9/X27EP-U9
推奨オイル ウルトラ-U(10W-30)
オイル容量 全容量3.2L
交換時2.2L
フィルター交換時2.5L
スプロケ
チェーン
車体価格 525,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

カタナと名乗れなかったカタナ GSX750S (GS75X) -since 1982-

スズキGSX750S

「”KATANA” in Japan」

当時を知らない人でも知ってる”カタナ”というスズキの名車。

「スズキはカタナを出せ」
「バイクはカタナが一番かっこいい」
「カタナを超えるバイクは存在しない」

など復活を望む大合唱が起こっているのを誰しも一度は耳にしたことがあると思います。2019年に復活してからはあまり言われなくなりましたけどね。

ただしここで注意しなければならないのがこういう時のカタナは海外向けに作られた長男坊GSX1100Sの事で、決してGSX750Sではないという事。

何故そう言い切れるのか知ってる方も多いと思いますが改めてザックリ説明。

GSX750Sは自主規制により上限750ccだった日本国内市場に合わせて造られたナナハンカタナになります。Z1に対するZ2みたいな感じですね。

カタナプロトタイプ

プロトタイプのカタナがドイツのケルンモーターショーで発表された時の衝撃は凄まじく

「スズキは早くこれを出せ」

と待ち望む人たちも大勢居ました。そして満を持して国内市場向けに発売されたのがこれ。

GSX750Sカタナ

・・・なんか違う。

その理由はスクリーンが付いていないこともありますが、一番はハンドルがグイッと上に伸びてアップライトな物になっているからで何故こうなったのかというと運輸省が

「低いハンドルとスクリーンはレーサー(暴走)を連想させて危険」

として認可しなかったのが理由。

更に下のカタログ写真をよく見て欲しいんですがKATANAというペットネームも刃というサイドデカールも無い。

GSX750Sカタナ

これすらも過激で危険として許可されなかったんですね。苦肉の策として購入後にオーナーが自分で貼れるようデカールを用意することになりました。

当然ながら待ち望んでいた国内ユーザーからは落胆の声が聞かれ、無理やり上げられたハンドルは耕うん機ハンドルだと揶揄される始末。

「じゃあ1100の逆輸入車を買えばいいじゃない」

と現代なら言えるんですが当時はまだ逆輸入車という文化が根付いておらず並列輸入が基本。200万オーバーで保証なしが当たり前という世界だったので簡単に購入できる状況ではなかった。

GSX1100SZ

つまりカタナに乗りたいライダーが取れる選択肢は3つあった。

選択肢1:大枚をはたいてGSX1100Sを買う

選択肢2:GSX750Sで妥協する

選択肢3:諦める

この中で一番多かったのは・・・選択肢3の諦める。その根拠はある大ヒット商品を生んだから。

GSX1100Sのプラモデル

『タミヤのプラモデル版カタナ』

です。

タミヤが発売したプラモデル版カタナ(当然ながらGSX1100S)が大ヒットした。あまりの売れっぷりにタミヤ模型の田宮専務が鈴木修社長に直々にお礼を言いにいったほど。

ヒットの要因はもちろん本物が簡単に買えない状況だったから。※中免小僧の憧れも含む

次に多かったのが選択肢2のGSX750Sでの妥協案。

GSX750S 1型

ただし黙ってGSX750Sに乗るわけはなく、GSX1100S用やそれに通ずるスクリーンやセパレートハンドルを流用し本来のあるべき姿に戻すカタナ化が流行りました。

ちょっと前に流行った国内仕様をフルパワー化にする流れと親しい感じですが、カタナの場合は国が認可していない装備を付けて走るわけでトドのつまり分かりやすい不正改造車状態。

そりゃもうポジション見れば一目瞭然だったから簡単に警察に目をつけられてバシバシ切符を切られた。これがカタナ界で有名な『刀狩り』というやつで、その部品需要の高さから高確率で盗まれるという二次被害まで出る始末。場合によってはコチラを刀狩りと言って恐れるオーナーいたほど。

つまり当時のオーナーたちはいつ辻斬にあっても文句は言えない正にサムライみたいな覚悟で乗るしかなかった。

GSX750S2

さすがにスズキもまずいのは分かっており翌1983年には3馬力アップと共にハンドルやシートの変更し16インチを装備したGSX750S2(上の写真)を発売。

名目上メーターバイザーにすることで何とかスクリーンの認可も得ることに成功しカタナらしいルックスとなったものの、やはり低いセパハンとカタナという文字を入れることは許されず。

そんな中で1980年代半ばになると日本がバブル景気となり自動車業界も輸入車事業が拡大。それに合わせて逆輸入車も活性化しGSX1100Sが良心的な価格で入手できるようになり多くのライダーが1100に飛びつきました。

今でこそ当たり前な逆輸入車という言葉(抜け道)が広く認知されるようになったのはこのカタナによるものだったりします・・・が、しかしそうなると当然ながらGSX750Sは要らない子に。

1100と750

実際GSX750Sは累計1.7万台ほど出たんですがそのほとんどは1100が買えなかった頃の初年度モデルでした。

というのがGSX750Sについてよく語られるストーリーなんですが

「じゃあバイクとしてはどうだったの」

という話。実はここまで前置きでこれからが本題。

750カタナカタログ写真

その話をするには系譜を少し紹介する必要があるのですが、GSX-S750の系譜で書いているので大きく割愛すると

1976年GS750
※スズキ初の直4ナナハン

1980年GSX750E
※4バルブ化

1982年GSX750S
※カタナ

という流れでカタナが生まれたのは

「スズキは地味」

という評判であり課題を克服する狙いから。

GSのデザインの流れ

こうやってみるとカタナで激変したのがよく分かるかと思います。

ただし、ここからが重要なんですがGSX750Sにはカタナデザインとは別にもう一つ課題があった。

GSX750Sは既にかなりのスポーツだったGSX750Eを更に

・圧縮比アップ
・ピストンリング見直し
・カムを高回転型に

など手を加えることにより1100以上に極端な高回転化チューニングが施されました。これこそがその課題であり改題を解決するためにとった手段。

750カタナ

「鋭い見た目に負けない鋭い楽しさを持たせる」

GSX750Sにはカタナデザインを守ることと同時この課題があった。そして開発陣はそのために一丸となった。※ClubMan242の横内さんより

何故そんな課題が生まれたのか・・・それはスズキの空冷四発ナナハンの名車と聞いてもパッと名前が出ない人が多い事からも分かる通り当時スズキは

「スズキのナナハンは速い」

という評価は得られたものの

「スズキのナナハンは面白い」

という評価を得られずにいた。これは何よりも速さを追い求めた為に得意なロングストロークエンジンを採用していたから。確かにそのおかげで速かったんですがファンライドの側面でいうとメリハリが無いともいえるものだった。

GSX750Sではそれを克服するためカタナであると同時に

「このナナハン面白いじゃん」

と言ってもらうことを狙って開発されたモデルでもあるんです。

だから実はGSX1100SとGSX750Sっていうのは性格が全く違う。

1100はハイパワーのガッチリ系で当時のスズキらしいフラッグシップだったのに対し、750Sは回すことで初めて弾けるようにパワーが出るスーパースポーツタイプ。絵に描いたような直4スポーツで日本人好みな特性だった。

GSX750S1カタログ写真

しかし残念ながらそれを知るものはあまり居ない。

理由は前置きで話した通りカタナと名乗れず、まるで偽物かのような扱いが先行し誰もGSX750Sが持つエモーションに目を向けなかったから。これはモデルチェンジしたことで更に顕著になりました。

GSX750S3
(GR72A)
-since 1983-

GSX750S3

GSX750S3という機種名から三型と言われているモデルであり、初めてカタナを名乗る事が出来たGSX750S/GR72A型。

・リトラクタブルヘッドライト(二輪初)
・流体解析で生み出されたエアロボディ
・自主規制上限の77馬力
・角フレーム
・フロント16インチ
・対向2ポットキャリパー
・ポジティブダンピングフォーク
・リンク式モノサス
・10kgの軽量化

などなどスポーツバイクとしての鋭さと楽しさを更に増す改良が施されたんですが

GSX750S3カタログ

「ますますカタナじゃなくなったな」

と一蹴され、1985年のS4(シルバーフレーム)が出る頃には話題にすらならず750カタナはひっそりと姿を消すこととなりました。

S3カタログ写真

何故こんなことになったのか・・・それは何度も言いますがGSX750Sが鋭いナナハンスポーツだということを誰も知らなかったから。一方でカタナに成り損なったカタナという事は誰もが知っていた。

それは今もそう。750カタナといえばこのページの前半で書いたことしか言われない。これは本当に不幸だし不平だし不運。

GSX750Sカタナ

もしも最初からセパハンとスクリーンの認可が下りてカタナとして出ていたら絶対にこんな事にはならなかった。

見て笑うのではなく乗って笑う人がいっぱい生まれ・・・やがてそれが

「スズキはGSX750Sを出せ」

という大合唱を間違いなく起こしていただろうと。

主要諸元
全長/幅/高 2250/810/1105mm
[2210/830/1095mm]
{2190/760/1160mm}
シート高 770mm
車軸距離 1515mm
車体重量 223kg(乾)
[222kg(乾)]
{212kg(乾)}
燃料消費率 38.1km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 21.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 747cc
最高出力 69ps/8500rpm
[72ps/9000rpm]
{77ps/9000rpm}
最高トルク 6.2kg-m/7000rpm
[6.3kg-m/7000rpm]
{6.4kg-m/7500rpm}
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19-4PR
後4.00H18-4PR
{[前100/90-16
後120/90-17]}
バッテリー FB14L-A2
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
D7EA
{[D8EA]}
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量4.0L
交換時3.2L
スプロケ 前16|後43
[前16|後42]
{前14|後43}
チェーン サイズ530|リンク110
{サイズ530|リンク114}
車体価格 598,000円(税別)
[647,000円(税別)]
{699,000円(税別)}
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

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