スクーター部門 | |
第五位 BEVERLY300 4421台 | |
第四位 AGILITY 125 R16 4960台 | |
第三位 SH125 7890台 | |
第二位 SH300 8392台 | |
第一位 SH150 8586台 | |
ネイキッド部門 | |
第五位 MT-09 920台 >>MT-09の系譜 | |
第四位 Z800 1052台 >>Z800の系譜 | |
第三位 XSR700 1120台 | |
第二位 MT-07 1404台 >>MT-07の系譜 | |
第一位 SCRAMBLER 800 2264台 ※2016年販売台数 第5位 | |
マルチパーパス部門 | |
第五位 VERSYS650 954台 | |
第四位 R1200GS ADV 2071台 >>R1200GSの系譜 | |
第三位 NC750X 2355台 ※2016年販売台数 第4位 >>NC750の系譜 | |
第二位 AFRICA TWIN 2840台 ※2016年販売台数 第2位 >>アフリカツインの系譜 | |
第一位 R1200GS 3329台 ※2016年販売台数 第1位 >>R1200GSの系譜 |
投稿者: etc
フランス2013年度カテゴリ別車種別販売台数ベスト5(その2)
ROUTIÈRE (ツアラー部門) | |
第五位 Tiger1050 268台 | |
第四位 Deauville 287台 | |
第三位 Z1000SX 465台 | |
第二位 CBF1000F 479台 | |
第一位 F800GT 696台 | |
ROUTIÈRE GT (GTツアラー部門) | |
第五位 Road KING 349台 | |
第四位 Street Glide 395台 | |
第三位 K1600GT/GTL 948台 | |
第二位 FJR1300/A 1079台 | |
第一位 R1200RT 1268台 | |
Supersport (ミドルSS部門) | |
第五位 GSX-R600 119台 | |
第四位 YZF-R6 200台 | |
第三位 ZX-6R/636 228台 | |
第二位 CBR600RR 292台 | |
第一位 Daytona675 330台 | |
Superbike (リッターSS部門) | |
第五位 Panigale 334台 | |
第四位 GSX-R1000 374台 | |
第三位 CBR1000RR 420台 | |
第二位 YZF-R1 432台 | |
第一位 S1000RR/HP4 495台 | |
年間販売台数ベスト5 | |
第五位 XJ6 2792台 | |
第四位 R1200GS/Adv 2970台 | |
第三位 Z800 3139台 | |
第二位 ER-6 3809台 | |
第一位 TMAX530 4355台 |
参照:MOTO-NET.COM
フランス2013年度カテゴリ別車種別販売台数ベスト5(その1)
MAXI SCOOTER (大型スクーター部門) | |
第五位 C600Sport 550台 | |
第四位 C650GT 609台 | |
第三位 Xmax400 966台 | |
第二位 Burgman650 1353台 | |
第一位 Tmax530 4355台 | |
Roadstar (ミドルストリート) | |
第五位 Street Triple 2246台 | |
第四位 GSR750 2680台 | |
第三位 XJ6 2792台 | |
第二位 Z800 3139台 | |
第一位 ER-6 3809台 | |
Maxi Roadstar (ビッグストリート部門) | |
第五位 CB1100 500台 | |
第四位 Speed Triple 602台 | |
第三位 R1200R 657台 | |
第二位 CB1000R 722台 | |
第一位 Z1000 908台 | |
TRAIL (デュアルパーパス部門) | |
第五位 CB500X 481台 | |
第四位 F800GS/Adv 532台 | |
第三位 V-Strom650 549台 | |
第二位 Tiger 800/XC 662台 | |
第一位 NC700X/DCT 825台 | |
Maxi TRAIL (大型デュアルパーパス部門) | |
第五位 Explorer 354台 | |
第四位 Multistrada 496台 | |
第三位 Crosstourer/DCT 543台 | |
第二位 1190Adv 604台 | |
第一位 R1200GS/Adv 825台 |
オーストラリア2014年度販売台数ベスト10
第十位 KLX110(-Since2009-) 販売台数1157台
第九位 FXSB(-Since2013-) 販売台数1319台
第八位 CRF110F(-Since2012-) 販売台数1401台
第七位 WR450F(-Since2012-) 販売台数1522台
第六位 PW50(-Since2005-) 販売台数1572台
第五位 CBR500R(-Since2013-) 販売台数1946台
第四位 TT-R50(-Since2006-) 販売台数1999台
第三位 CRF50F(-Since2010-) 販売台数189台
第二位 CT110X(-Since1999-) 販売台数2867台
第一位 Ninja300(-Since2013-) 販売台数2897台
インド2016年度販売台数ベスト10
第十位 Bajaj CT100 販売台数452,712台
第九位 Bajaj Pulsar 販売台数582,912台
第八位 TVS Jupiter 販売台数613,817台
第七位 Hero Glamour 販売台数743,798台
第六位 Honda CB Shine 販売台数749,026台
第五位 Hero Passsion 販売台数870,382台
第四位 TVS XL Super 販売台数890,367台
第三位 Hero HF Deluxe 販売台数1,408,356台
第二位 Hero Splendor 販売台数2,550,830台
第一位 HONDA Activa 販売台数2,759,835台
参照:AUTOCAR.in
水牛であり闘牛である GT750(GT750J~N)-since 1971-
「大いなる余裕。男の王座―――」
1971年の東京モーターショーにて登場したスズキ初のナナハンとなるGT750。
ツルツルなエンジンを見てもらうとわかる通り、この時代としては非常に珍しく、国産車としては初となる水冷エンジンを搭載しているのが特徴です。
ナナハンという言葉を生みだしたCB750FOURから2年後の話といえばどれだけ最先端だったのかが分かるかと。ちなみにGT750の販売価格はフォアと同じ385,000円と、バチバチな感じでした。
そんなGT750ですが
『2st/水冷3気筒/738cc』
という要素を見ると、さぞやとんでもない速さだったのだろうと思うわけですが、実際は最大トルクを5500rpmで発揮しつつ67馬力となっている怒涛のトルク型で、比較的重めの車重も相まってドッシリ威風堂々と走るビッグネイキッドらしいモデルでした。
そんな性格な事に加え、水冷エンジンということから
「ウォーターバッファロー」
という愛称で呼ばれていた事をご存じの方も多いと思いますが、この愛称はアメリカで付けられたもの。オーストラリアではウォーターボトル、そしてイギリスでは
「ケトル(やかん)」
という愛称で呼ばれていました。それだけ水冷が珍しかったという話ですね。
そもそも何故このバイクを造ることになったのかというと、時代を少し遡った1960年代後半。この頃、スズキのフラッグシップとして君臨していたのは2stツインのT500というモデルでした。
レーサーとして活躍していたT20のレプリカ的な立ち位置で最高時速180kmオーバーの超スポーツモデル。性能への疑いが一切無いことから北米を中心に海外で大ヒット。
そんな中でナナハンが登場したもんだから
「対抗すべく新型を投入しなければ。もちろんウチは2st、今度は水冷に挑戦しよう。」
とスズキの顔としてお馴染みの横内さんが考えていた時にスズキの二代目社長だった鈴木實次郎さん、のちに三代目社長になる鈴木修さんの叔父(義姉の夫)だった社長が
「T500にもう一気筒足せ。そうすればナナハンになる。」
という単純明解なアイディアを出した事で、水冷&トリプルというGT750の開発がスタート。※紺碧の天空を仰いで横内悦夫・回想録より
しかし前代未聞のコンセプトだったので当然ながら開発は難航。何が一番大変だったかといえばもちろん水冷システム。
何度もいうように当時はまだ水冷の量販車がほぼ存在しない時代。塩梅など全くわからない状態だった。
そんな中で水冷開発において最も重視されたのが
「冷却水沸騰による噴き出しを絶対に防ぐ事」
でした。
ご存じの方も多いと思いますが、冷却水がエンジンの熱を奪って温まり膨張するんですが、それを閉じ込めることで圧力を高めるようになっている。そうすることでキャビテーション(気泡)や沸点上昇による外気との温度差などを利用して冷却性能を高めるわけですが、圧力が掛かっているので一歩間違うと熱い冷却水が噴射してしまう恐れがある。
GT750にはそれを防ぐための配慮がこれでもかというほど込められているんです。
例えばラジエーターの蓋であるプレッシャーバルブですが、並列エンジンを積んだバイクのラジエーターキャップはアクセスしやすいようにサイドに付いているのが一般的なのに対し、GT750はなんと車体のセンター、タンク前方に付いている。
「そこにはフレームがあるので」
と思うんですが、クレードルフレームに穴を設けてホースを貫通させる形で備え付けられており、更にその上からタンクカバーで蓋をしている。
ここまでしている理由は転倒によるキャップ破損を防ぐため。
さらに注がれる冷却水にも余念がない。
何度も言いますが水冷が珍しい時代ということで当然ながらクーラント液というものもそうそう売ってない。そのため水道水前提で開発されていたのですが、アメリカなど海外の水道水を入れると塩素や不純物によりアルミラジエーターに腐食や溶解が起こる事が発覚。
そこで急遽サービスマニュアルに蒸留水、国によってはタンクシールに
「Drink water」
と記載する事に。
そして極めつけはGT750のトレードマークでもある立派なガードまで付いている超巨大なアルミラジエーター。
現代からすると明らかにオーバーサイズでGT750のトレードマークとも言えるわけですが、これほどのモノを備えたのももちろん冷却の沸騰を起こさせない為。
100度を超えると更にセーフティとして水冷ではお馴染みの電動ファンも付けました・・・が、ラジエーターがこれほどのサイズだったため、どれだけ炎天下で走ろうともファンが回らない(100度以上にならない)という圧倒的な冷却性能となりました。
ちなみにこれはアメリカでのテストで判明したものの、それでも念のためラジエーターファンは備え付けられる事に。
ただしあまりにも回らなかった為かL型(3型)にてファンは撤去されました。
さて、3型という言葉が出てきたのでここでちょっとGT750のモデルチェンジ史を簡単におさらいしたいと思います。
1972年 GT750J型(1型)
タッチがグニャグニャで当たり調整が難しいバイク屋泣かせの2リーディングWドラムブレーキが特徴。
1973年 GT750K型(2型)
通称えんぴつマフラーの最終モデルで、フューエルタンクの開閉をキー式に変更。さらに量販車初となるダブルディスクブレーキを搭載しているのが特徴。そう・・・何を隠そうWディスクの始まりは実はGT750なんですね。
1974年 GT750L型(3型)
負圧キャブと新型マフラーを採用しレスポンスを向上。回らないラジエーターファンが外されたのもこのモデルから。
1975年GT750M型(4型)
吸排気と圧縮比を見直した事で3馬力アップ。
1976年GT750N型(5型)
ガソリンタンクおよび上部カバーの形状を変更
などなどとなっています。ちなみにGT750は北米など海外の一部では
『GT-750 Le Mans』
という名前で販売されていました。
グランツーリスモ感を出す狙いがあったかと思われます。
そんな水牛ことGT750ですが、日本ではそれほど知名度が無い一方、欧米では今でも一部に根強い人気があり、旧車イベントなどでは必ずと言っていいほど愛好家によるモデルが飾られたりします。
何故か・・・それには2stビッグツアラーという顔に加え、もう一つの顔があったから。
こう見えて(というと失礼ですが)GT750はT50の後継ということで、シリンダーピッチを詰めるなど市販車レースまで考えられて開発されたモデルなんですね。そして中でも狙いを定めていた本命レースは当然ながらメイン市場でもあるアメリカ最大のレースDaytona200マイル。
『TR750 XR11』
GT750デビュー翌年の1972年に参戦。先に紹介したT500のレーサーモデルTR500のボディに、フルチューンされたGT750のエンジンを積んだ形。
その速さは凄まじく、Daytona200では最高時速280kmという圧倒的な最速を記録しました・・・が、とてつもないパワーにタイヤが耐え切れずバーストを起こしリタイアが続出。
最終的にレギュレーションの翻訳・解釈ミスもあり、唯一4位という好成績で完走したグラントというライダーも失格扱いに。
しかし翌年には欧州始まった200台以上生産されたバイクのみで行われるフォーミュラ750にも参戦。そのレースで見事初代チャンピオンになりGT750ともども有名に。
ちなみにその時のライダーは、後にWGP500でもスズキを優勝に導くバリーシーン。
しかしこれだけで終わる単純な話じゃない。
スズキはDaytonaレースに挑むプライベーター用にKITを用意していました。さらにイタリアではそのポテンシャルを見込んで市販車レース向けに輸入を請け負っていたSAIADという業者がそれらKITを組み込んだコンプリートマシンを発売。
『1973~ GT750S VALLELUNGA』
大きなアッパーフェアリングとシングルシートでとてつもなく速く、そしてオシャレになったGT750。ちなみにヴァレルンガというのはイタリアにあるサーキット場の名前です。
このように欧米でレースを視野に入れたGT750レース仕様が出たんですが、あまりのパワーに、チェーンが切れるわ、フレームが負けるわ、重量配分が難しいわで、バリーですら苦戦を強いられ終いには強烈なハイサイドを起こして九死に一生を得るクラッシュを起こすなど凶暴な代物だった。
ここまで来るともはや水牛というより闘牛と言ったほうが正しいような大艦巨砲主義だったものの、そんな姿にもまた心を奪われる人が増え、いつしかTR750はGT750とはまた別の愛称
「Flexi-Flyer(簡単に吹っ飛ぶやつ)」
と呼ばれるようになり、今もなお
「2stレーサーといえばGT750(TR750)」
と言われるほど歴史に名を刻む結果となりました。
その後の市販車レースは1976年にはスズキの代名詞でもあるGSという4stモデルにバトンタッチする事となり、そちらがレースでも大いに活躍した事から日本では記憶に残っている人も少ないGT750。
しかし当時を知る人にとっては2stなのにドッシリ乗れるグランドツアラーとして、またある人にとっては乗り手を振り落としにかかるレーサーとして今もなお鮮明に記憶として残っている。そんなモデルでした。
主要諸元
全長/幅/高 | 2215/865/1125mm |
シート高 | – |
車軸距離 | 1470mm |
車体重量 | 214kg(乾) |
燃料消費率 | – |
燃料容量 | 17L |
エンジン | 水冷2サイクル三気筒 |
総排気量 | 738cc |
最高出力 | 67ps/6500rpm |
最高トルク | 7.7kg-m/5500rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前3.25-19-4PR 後4.00-18-4PR |
バッテリー | YB14L-A2 |
プラグ | B-7ES または W22ES |
推奨オイル | – |
オイル容量 | 全容量1.8L |
スプロケ | 前15|後47 |
チェーン | サイズ530|リンク106 |
車体価格 | 385,000円(税別) |
単槍匹馬のラストDT LANZA (4TP) -since 1997-
「SUPER TRAIL」
1997年にヤマハから登場したDT230 LANZA/4TP型。
このモデルはDT200Rのエンジンをベースに新設計の鍛造ピストンとシリンダーにより224ccまで拡大したロングストロークなものを、軽量コンパクトなセミダブルクレードルフレームに搭載している2stオフローダーになります。
サスペンションもストローク量を前250mm/後240mmと少し短めにすることで乗車時のシート高が820mmと抑えていることに加え、ポジションも起き気味で楽ちん。
加えて多機能デジタルメーターだけでなく、なんとセルモーターまで付いてデザインも大人しめという2stオフらしからぬ優しさに包まれたモデルとなっているのが特徴。
これはヤマハ内で
「足付きが良くてセルも付いた2st版セローを造れないか」
という話が持ち上がった事がキッカケにあります・・・と書いても当時の状況を知らないと何故そんな考えに至ったのか理解しづらいと思うので少し説明させてもらいます。
90年代のオフロードバイクはまだ2stと4stが混在していたんですが、1980年代後半から始まった林道ブームなどによる全盛期も終わりを迎えていた頃でどちらもかなり煮詰まったモデルになっていました。
どう煮詰まっていたのか簡単に言うと、2stのオフロードバイクはパワーと軽さを稼げる事からモトクロッサー(ナンバーが取れないレーサー)に負けないポテンシャルを持つ
『勝ちにこだわったオフロードバイク』
という立ち位置で一時代を築いていた。
一方で4stは低中速から粘りのあるパワーが出せる事を武器に林道から街乗りやツーリングまで使える
『使い勝手にこだわったオフロードバイク』
という立ち位置、ヤマハでいうところのトレール路線で一時代を築いていた。
だから同じオフロードモデルでも2stと4stには良くも悪くも大きな隔たりというか少し誇張して言うと”似て非なるもの”という常識があり
「色んな事に使いたいから4st」
「最強最速のオフが欲しいから2st」
「そこまで腕に自信がないから4st」
という感じでバイクもライダーも棲み分けのようなものが生まれていた。
その趣向を示す最も分かりやすい部分がいま話したセルモーター。
2stは軽さを追求するため付いていないのが(キックスターが)当たり前で、反対に4stは利便性のために付いているのが当たり前だったわけです。
そして話を再びランツァへ戻すと
「足付きや優しいポテンシャルそしてセルを付けた2stオフ車」
・・・そう、ランツァはこの隔たりとも固定概念とも言える部分に向けて作り出されたモデルなんです。
両極端な形になっていくオフロードバイクを見て林道向けがおざなりになっている
「林道などを気軽に楽しくスポーツ出来るモデルが無くなっている」
ということに気づいたというか危惧したんですね。
だからこそ2stが持つ軽さという武器を速さではなく、気軽さと楽しさに繋げる形でこのランツァを生み出した。
40馬力というスペックを見ると分かるように2stだからこそ出せるパワーはそのままに振り回せる楽しをとことん追求。
そのために採用されたのが時代的にもジャンル的にも非常に珍しかったトラクションコントロールシステム。
何故わざわざこんなものを付けたのかというと、単純に速く走るためや滑って怖い思いをしないためじゃない。
遅角制御によってスライドを消すのではなく穏やかに猶予を延ばすことで
「オフロードの醍醐味の一つであるカウンターステアによるバランス取りも気軽に楽しめるように」
という考え、要するにこれも気軽に振り回すために備え付けられた装備なんです。
そんな何よりも気軽に楽しめる事に重点を置いて開発された2stオフロードのランツァですが、わずか1年にはマイナーチェンジが入りました。
オイル消費量を抑えるYCLSとアルミスイングアームという贅沢な変更。シルバーモデルに至ってはリムにブラックアルマイトのまで奢られました。
一般的に4TP2型または後期型と言われています。
ちなみに1997年の第32回東京モーターショーでは
『ランツァ スーパーバイカーズ』
というモデルも参考出品されていました。
倒立フォークと17インチのオンロード仕様、さらにアップチャンバーにショートフェンダーなどイケイケなモタード。残念ながらこれが市販化される事はありませんでしたが、17インチホイールはオプションで用意されモタード仕様に出来るようになりました。
これらを見てもヤマハがランツァに力を入れていたのは明白なんです・・・が、残念ながらランツァは2年間しか販売されませんでした。
これはコンセプトが理解されなかったわけではなく、1998年に排ガス規制という今でこそ当たり前なものが初めて設けられることになったから。2stはこれにより販売することが厳しくなったんですが、それはランツァも例外ではなかったという話。
それにしてもトレールというジャンルを生み出したオフロードバイク界のパイオニア的な存在でありオフロードにも一番精力的だったヤマハが、迫りくる排ガス規制という名の2st終焉を迎える最後の最後に出した公道向け2stオフロードバイクがモトクロッサー顔負けの高性能モデルではなく
「オフロードを楽しむ事を最重視したモデルだった」
というのは本当にカッコいいし本当に相応しいと思います。
何故ならこのランツァのコンセプトはヤマハトレールの出発点であるDT-1が評価されていた要素
『絶対的な速さではなく絶対的な軽快さ』
を再び突き詰めた形だから。
最後のDTであるDT230 LANZAが最初のDTであるDT-1を彷彿とさせるコンセプトっていうのはロマンとしか言いようがない。
でも更にカッコいいのはそんなDTというブランドネームを押し出さなかった事。
これは市場に蔓延っていた
「2stオフローダーは玄人向け」
「2stオフローダーは速さが全て」
という先入観や固定概念で判断して欲しくなかったからでしょう。
歴史あるブランドネームよりもオフロードスポーツの面白さ、振り回す楽しさを知ってほしいという思いが上回ったから
『ランツァ(スペイン語で槍)』
という名前になったんじゃないかと。
主要諸元
全長/幅/高 | 2140/800/1200mm |
シート高 | 865mm |
車軸距離 | 1410mm |
車体重量 | 130kg(装) |
燃料消費率 | 40.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 11.0L |
エンジン | 水冷2サイクルクランク室リードバルブ単気筒 |
総排気量 | 224cc |
最高出力 | 40ps/8500rpm |
最高トルク | 3.7kg-m/7500rpm |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前3.00-21(51P) 後4.60-18(63P) |
バッテリー | GT6B |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
BR9ES |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量1.3L |
スプロケ | 前16|後55 |
チェーン | サイズ428|リンク132 |
車体価格 | 435,000円(税別) [449,000円(税別)] ※[]内は後期/4TP2 |
泥遊びなら任せろ DAX (ST50/ST70/AB26) -since 1969-
「気軽に気ままに、自由自在。」
ホンダが1969年に発売した特徴的な原付であり、1970年代レジャーバイクブームの火付け役でもあるDAX/ST50Z。
名前の由来は細長い胴回りが特徴のダックスフンドというドイツの犬から。
だからダックスって説明は言うまでもないと思いますが細かいことを言うと正確には
『ダックスホンダ』
といって名前も微妙に掛かったものになっています。
あと意外と知られていないんですがダックスはハンドル分離機能も備えていました。
HONDA1300(を始めとした車)に載せる事が出来ますと当時のカタログでもアピール。
「なにこれモンキーと一緒じゃん」
という話ですが、それもそのはずDAXは約2年前に出て(主に海外で)思わぬヒットを飛ばしたモンキーに続けと開発された第二弾なんですね。
ただダックスの場合この取り外し機構が無いバージョンを始め多彩なモデル展開&併売していた歴史があり、語る上でも欠かせない要素なので最初にザックリですが歴代の系譜をご紹介しようと思います。
【1969年】
ST50Z/ST70Z
(通称I型)
フロント取り外し機能を持ったダックスの初代モデル。
・大きなフェンダー(通称カブトフェンダー)
・モナカマフラー(通称ツチノコマフラー)
・HONDAの立体エンブレム
が特徴。
【1969年】
ST50EX・Z/70EX・Z
ST50EX/70EX
(通称II型)
初代の半年後に追加で登場したスクランブラー(エクスポート)スタイルのダックス。
・アップフェンダー
・アップマフラー
・プリントエンブレム
を採用しているのが特徴。
恐らく多くの人が思い浮かべるであろうダックスのスタイルはこれじゃないかと思います。ちなみに末尾にZが付くEX・Zはフロント取り外し機構付きで、付かないEXはそれをオミットしたモデル。
※これをIII型としている場合もある
【1970年】
ST50T/ST70T
(通称III型)
ハンドル非分離のエキスポートモデルEXをベースにしたトレール版ダックス。
・4速MT
・タイヤサイズを3.50から4.00に変更
・ブロックタイヤの採用
・リアキャリアを標準装備
・バー付きアップハンドル
・ブラックアップマフラー
・フレームエンブレムをDaxに変更
などの変更が施された初のマニュアルクラッチモデル。一年足らずしか併売されず公式にも載ってない界隈では有名な幻のダックス。
【1971年】
ST50SPORT-I/ST70SPORT-I(通称IV型)
上記トレールモデルの後継(別称)に当たるモデルで
・ハンドルロックの機能
・ウィンカーの変更
などの変更が加えられたスポーツ版モデル。
【1972年】
ST50SPORT-II/ST70SPORT-II(通称V型)
SPORT-Iをベースに
・オイルダンパー式フロントフォーク
・エンジンガード
・別体式スピードメーター
を装備した上位版スポーツモデル。
1976年:ST50/ST70(通称VI型またはVII型)
ノーマルモデルであるI型の実質的な後継(マイナーチェンジ)になるVI型とVII型。
・可変式フェンダー
・スクランブラースタイル
・エンジンプロテクター
・油圧フロントフォーク
などエキスポートに対してメッキが控えられている分、キャリアやガードなどのオプションパーツを装備しているのが特徴。
ノーマル版のVI型が自動遠心クラッチの三速仕様で、VII型がマニュアル四速仕様でした。
ここまでが第一世代DAXなんですが、混乱している人も多いと思うので端的に纏めると
『ノーマル(自動遠心3速、後に4速も登場)』
『エクスポート(スクランブラー)』
『スポーツ1(ハンドル非分離のスポーツ)』
『スポーツ2(スポーツ1の上位グレード)』
という大きく分けて4バリエーション展開を行なっていました。
ちなみにシリーズの中で人気だったのが一番左のホワイトダックスというやつで、これは1971年からのエキスポートモデルとスポーツモデルに用意された花柄シートなどが特徴のスペシャルカラーバージョン。
公式カタログいわく『フランス仕込み』なんだとか何とか。※上の写真は海外仕様
【1979年】
ST50M/C(通称M型またはC型)
70が廃止され50のみになった第二世代ダックス。
・段付きシート
・プルバックハンドル
・ロングストロークフォーク
・メガホンマフラー
・透過式メーター
・DAXロゴを変更
などなど大幅な改良でアメリカンスタイルなのが特徴。人によってはコッチのほうがピンとくるかもしれないですね。
M型はマニュアル四速の正立フォーク、C型は自動遠心クラッチ三速の倒立フォークとなっています。
【1981年】
ST50M/Cの販売終了
【1995年】
ダックス(通称AB26型)
再販を望む声に応える形で14年ぶりに復活した初代デザインの第3世代ダックス。
・名前をダックスホンダからホンダダックスに変更
・MFバッテリー
・12V/CDIマグネット点火
など電装系の現代化が行われているのが主な特徴。
フレームから何から変わっており実質的に歴代とは全く別物なものの、見た目も寸法も限りなく近づけており復刻魂を感じるモデル。ミッションは自動遠心クラッチの三速リターン式のみ。
【1999年】
ホンダダックスの販売終了
だいぶ飛ばし気味に書きましたがこれが大まかですがダックスの系譜()になっています。※マイティとノーティを除く
「ダックスってこんなに歴史と系譜があったんだな」
と思ってもらえたなら幸いなんですが、もう一つダックスについてどうしても知ってほしい事があるので書いていきます。
そもそもなんでこんないっぱいバリエーションが出たのかというと
「国内のみならず世界中で大ヒットしたから」
というのがあります。
ダックスは日本だけではなく欧米にも50と70が主に輸出され、特に70の方が絶大な人気を獲得しました。
そのおかげで第一世代(約10年)だけで累計72万台という驚異的な生産台数を記録する事になった。
この人気は現在進行系で国内外問わず今でも非公開ファンクラブやミーティングがあるほど人気のミニバイクなんですが
「じゃあダックスの何がそんなにウケたのか」
という話をすると既存のバイクとは、それこそ先輩であるモンキーとも決定的に違う部分があったから・・・それが何処か分かりますか。
正解はガソリンタンク。バイクの顔と呼ばれる部分をダックスは持っていなかったんです。
これはガソリンタンクをフレームに被せるのではなく、フレームの中に隠すという通常とは真逆の思い切ったレイアウトによるもの。
「そんな勿体ぶって言うほどの事か」
とお思いかもしれませんが後に出てくるライバル勢を見てもこの要素が非常に重要なのは明白。バイク乗りからするとなかなか理解できない話なんですが、バイクにそれほど高い関心といいますか見慣れていない人にとってタンクは邪魔な異物でしかなくそれが躊躇や窮屈さを生むという話。
こうやってモンキーと並んでいる姿を見ると志向の違いが分かりやすいですね。
小さいサイズでバイクっぽい雰囲気を出してマニアを唸らせたモンキーに対し、ダックスは小さいサイズでバイクっぽさを消した。どちらかというと小径ホイールの折りたたみ自転車に近い雰囲気を出して既存とは違う層を唸らせた。
だからモンキーという存在が居るにも関わらず成功し共存することが出来たという話。
犬猿の仲ならぬ犬猿のデザインといったところですかね。
ちなみにこれは上のコンセプトデザインはもちろん検討段階のデザイン案などを見ても最初からそれを狙ってた意図が伝わってくる。
どれもこれもガソリンタンクが何処にあるのか分からないバイク乗りからすると違和感すらあるデザインばかり。
これがダックスの肝であり知って欲しかった事・・・じゃない。
やっぱりダックスっていうとどうしてもその愛くるしいデザインの話題になりがちなんですが、個人的にダックスについて本当に知って欲しい事というか本当に偉大な事は別にある。
現代においてダックスというと有り余ったスペースに物を言わせてカスタムする4miniの代表格というイメージを持たれている人が多いと思います。
実際そういうカスタムに最初に火を付けたのもダックス。理由は横型エンジンながら70モデルが登場した事にあります。
・72ccのピストン&シリンダー
・4速ミッション
・大径バルブヘッド
・二枚クラッチ
などなど70という名の純正強化横型エンジン。
これはモンキーやダックスなどの横型50cc乗りにとって見ればほぼ入れ替えるだけで耐久性を犠牲にすることなく大幅強化になるキットパーツみたいなもの。使わない手は無いですよね。
実際そういうカスタムが流行し、これが4miniカスタムという文化の始まりになったという話。
でもですね一番紹介したい事、ダックスがどう人気だったかっていうのは別にあります。
「多くの人が思い浮かべるダックスはこれ」
と最初に書いた系譜でスクランブラースタイルのエクスポートを紹介した通り、ダックスはスクランブラースタイルが人気だった・・・その理由は
『庶民派レジャー原付』
と評判だったからです。
DAXが出た1970年頃は高度経済成長末期。国民がどんどん豊かになった事でレジャー産業の需要が強くなっていました。
ツーリングというバイク乗りなら誰もが知る移動を楽しむ文化が国内で根付いたのもこの頃。これは道路の舗装がバンバン進んでいた事も関係しています。
とはいえコンクリートやアスファルトでバッチリ舗装された道路というのは都市部の幹線道路くらいで全国の舗装率は国道を含めても僅か15%程度の時代。
だから少し道を外れたら砂利道やあぜ道や草道がそこら中に広がっていた。
そういう背景があったからホンダで言えばCLシリーズのようにトレールバイクの前身ともいえる
『スクランブラータイプ(未舗装路も走れるオンロードバイク)』
がこの頃は人気カテゴリだったんですがそんな中で出てきたのが
・ノーヘルで乗れた原付
・ミニバイクらしく車重は60kgちょっとで足ベタベタ
・カブエンジンで燃費も馬力も十分
・前後にサスペンションが付いている
・サイズの割に車軸距離が長く挙動が穏やか
・10インチながらブロックタイヤ装備
というスクランブラー要素をそれなりに兼ね添えた形のダックス。
つまり当時のダックスっていうのはオシャレな原付という意味も勿論あったんだけどそれと同時に
『スクランブラーの超々エントリーモデル』
という存在でもあったんです。
もちろんオフロード性能は決して高いわけじゃない。でも軽くて小さくて上のクラスに比べれば安い原付だったから多少の無理も無茶も笑ってやり過ごせる”ゆとり”みたいなものを持っていた。
だから当時多くの若者がダックスで土手を無駄に登り下りしてひっくり返ったり、砂地でズリズリやって転けたり、段差を飛んで強打したり、農道でスタックして泥だらけになったりする
『高度経済成長期らしい庶民派バイクレジャー』
を楽しんでいたんです。
これがダックスの本当に知ってほしい事であり本当に偉大なこと。
ダックスっていうのはお金がない多くの若者にオフロードというツーリングとはまた違う走る楽しさを手軽さと気軽さを武器に教え広めたバイクでもあるんです。
1970年代後半から起こったオフロード(トレッキング)ブームは間違いなくこのダックスが、ダックスでオフロードの楽しさを知った若者のステップアップが絡んでる。
走って転けて泥をかぶるミニトレールの草分け的な存在として多くの若者に重宝されたのがダックス。
ダックスフンドが本来は狩猟犬だったように、ダックスホンダもただの愛玩として生まれ人気犬になったわけじゃないんですね。
主要諸元
全長/幅/高 | 1510/580/960mm {1610/705/1005mm} <1510/590/980mm> |
シート高 | – |
車軸距離 | 1035mm {1085mm} <1045mm> |
車体重量 | 64kg(乾) {73kg(乾)} <75kg(乾)> |
燃料消費率 | 90.0km/L <80.0km/L> ※定地テスト値 |
燃料容量 | 2.5L |
エンジン | 空冷4サイクルOHC単気筒 |
総排気量 | 49cc [72cc] {49cc} <49cc> |
最高出力 | 4.5ps/9000rpm [6.0ps/9000rpm] {4.1ps/8000rpm} <2.6ps/7000rpm> |
最高トルク | 0.37kg-m/8000rpm [0.51kg-m/7000rpm] {0.37kg-m/6000rpm} <0.29kg-m/4500rpm> |
変速機 | 常時噛合式3速 {常時噛合式4速/3速} <常時噛合式3速> |
タイヤサイズ | 前後3.50-10-2RP {前後4.00-10-2RP} <前後3.50-10-51J> |
バッテリー | 6N2A-2C-3 [6N2-2A-8] <FT4L-BS> |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
C5HSA {C6HA} <CR6HSA> |
推奨オイル | <ホンダ純正オイル ウルトラU> |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量0.7L <全容量0.8L 交換時0.6L> |
スプロケ | 前15|後41 [前15|後38] <前15|後41> <前14|後40> |
チェーン | サイズ420|リンク90 [サイズ420|リンク88] {サイズ420|リンク90} <サイズ420|リンク88> |
車体価格 | 66,000円(税別) [69,000円(税別)] {120,000円(税別)} <198,000円(税別)> ※スペックはST50Z ※[]内はST70Z ※{}内はST50M/C ※<>内はAB26 |
混ぜるなキケン 75MT/KV-75 (KV075A) -since 1971-
「DYNAMITE BABY」
このモデルを知ってる人は相当な通じゃないかと思う75MTとKV-75というモデル。
車名が二車種ありますが先に出たのは1970年の75MTというモデルの方で
・2st/73cc/4.3ps
・三速ミッション
・バックボーンフレーム
・テレスコフォーク&スイングアーム
・8インチホイール
・最高時速40km
・折りたたみ式ハンドル
という70年にしては非常に高性能なミニバイクでした。ただこれはアメリカ向けに開発されたモデルで日本国内では売っていません。
「big is biggerのアメリカで何故こんなミニマムバイクを」
と意外に思うかも知れませんが当時アメリカでこういったミニバイクが流行っていたんです。
もともと向こうでは60年代から上の写真のような鉄パイプフレームに汎用エンジンを積んだだけの『ミニバイク(ミニサイクル)』という
・子供のオモチャ
・ゴルフカートの代わり
・AGI(農作業)バイク
などの用途に適した乗物が存在しており、カワサキも(米カワサキ主導で)1969年にコヨーテという正にそれ向けのモデルを出していました。
ちなみにこっちは汎用エンジンな事もあり4st/132cc/3.4psというスペック。
あくまでも下駄中の下駄なのでライトも何も付いておらずスペックもこれくらいがメジャーでした。
しかし75MTが取り入れている折りたたみ式ハンドルというギミックからも察せる通り、ホンダが『MINI TRAIL(モンキー)という汎用ではなくちゃんとバイクになってるミニバイクを1967年から本格的に販売を始めるとミニバイク人気が急上昇。
その需要に向けてカワサキが造ったのが1970年からの75MTという話。
この頃のカワサキはバイク事業を軌道に乗せるため何が何でもアメリカで成功を収める必要があった事もののZ1すらまだの時代だった事もあり、ミニバイクとは思えないほど宣伝に力を入れていました。
『75MT Parnelli “Kawasaki” Jones』
なんだかよく分からない名が入っていると感じるかも知れませんが、このパーネリ・ジョーンズというのはトランザムレース(アメ車のストックレース)や佐藤琢磨さんで有名な世界三大レースのインディ500などで優勝されたアメリカレース界におけるレジェンドの名前。
ミニバイクを売るため、そしてカワサキというメーカーを広く認知してもらうために名前まで抱き合わせるように起用したんですね。サイドデカールも単純なフライングKではなくPJを織り交ぜたオリジナルの物でした。
実際これアメリカでどうだったかというと、クラスの中でも元気ハツラツだったことや知名度が結構あること、そして10年近く販売が続いた点から見ても結構人気だったみたいです。
さて、そんな75MTの登場から約6年後となる1976年に国内仕様が登場します。
それが
『KV-75/KV075A』
という日本向けのモデル。
75MTとの違いとしては
・スプリング内蔵フォーク(75MTも72年に同変更)
・キャブレターを変更
・キャリアの装着
・オイルタンクガードを兼ねたゼッケンプレート
・ロングフェンダー
などなど変更が加えられています。
遅れるというかだいぶ経って国内に投入したのはアメリカに続くように日本でもレジャーバイクのブームが起こったから。
これは社会史の話になってしまうんですが簡単に説明すると、1970年代に入ると高度経済成長の影響も相まって多産多死の戦後家族モデルが終わりを告げ、現在の形に近い集団よりも個を尊重する少産少死な家族モデルの社会へ変化。
その影響で若者感でファッションを中心に多様化や個性化が起こりました。
これは1970年の国鉄CMなんですがオシャレな格好をした若者が蒸気機関車に乗るっていう。それほど当時の若者はファッションに対する価値観が尖ってたんですね。
そんな個を大事にする若者たちにとってはバイク(原付)も例外じゃなかった。
『原付もファッションの延長線上にある個性を主張するもの』
と考える若者が増えたから見た目がオシャレだったり遊び心に溢れていたりするレジャーバイクが人気になったという話であり、カワサキもアメリカ向けだった75MTをわざわざKV-75として国内に投入したという話。
・・・だったんですが、KV-75という車名からも分かる通りアメリカと同じ73ccのままだった。
当時は既に今でいう一種と二種で別れている時代。車の免許さえあれば誰でも気軽に乗れるというレジャーバイク最大の武器ともいえる要素を持ってない致命傷ともいえる欠点があった。
ミニバイクが好きな人は
「小さくて元気な二種のレジャーバイクとか最高じゃん」
と思うかも知れない。確かにそうなんですがKV-75はそんなミニバイク好きすら躊躇させる特徴があった。
少しわかりにくいんですがKV-75には左ハンドルにレバーが付いています。
「クラッチがどうかしたのか」
と思われるでしょう・・・でも違うんです。これリアブレーキなんです。
KV-75はKSRと同じ自動遠心クラッチ。そこまでで止めておけばいいのに何故か空いた左手にリアブレーキを持ってきてる。だから後から手動クラッチ化とかも出来ない。
一方でギアチェンジはシーソー式やロータリー式ではなく一般的なMTバイクと同じリターン式という本格的仕様。
だから知らない人が乗ったら間違いなくギアチェンジで左手にあるリアブレーキレバーを思い切り握って大惨事を招くを起こす。
たとえその構造を理解してもいざ運転すると違和感が凄い。ギアチェンジの度に左手がソワソワする、気分はまるでクイックシフター。
「あれクラッチじゃなくてリアブレーキなんだぜ」
「えーっ」
っていうやり取りが間違いなく全国各地で繰り広げられたであろう、スクーターのハンドブレーキとMTバイクのギアチェンジが混じってるレジャーバイクでした。
主要諸元
全長/幅/高 | 1390/610/890mm [1348/600/873mm] |
シート高 | – |
車軸距離 | 950mm |
車体重量 | 59kg(乾) [55kg(乾)] |
燃料消費率 | 76.0km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 3.0L |
エンジン | 空冷2サイクル単気筒 |
総排気量 | 73cc |
最高出力 | 4.3ps/5750rpm [4.2ps/6200rpm] |
最高トルク | 0.59kg-m/2000rpm |
変速機 | 常時噛合式3速リターン |
タイヤサイズ | 前3.50-8(2PR) 後3.50-8(2PR) |
バッテリー | – |
プラグ | B7HS |
推奨オイル | – |
オイル容量 | 全容量1.1L |
スプロケ | 前13|後33 |
チェーン | サイズ420|リンク88 |
車体価格 | 104,000円(税別) ※スペックはKV-75 ※[]内は75MT-1 |
ツールドジェベル DJEBEL250/XC/GPS (SJ44A/SJ45A) -since 1992-
「進路は、自分で決める。」
スズキの4stオフ車の中でも有名な方というか人気があった1992年からのDJEBEL250/SJ44A型。
最初にDJEBELという名前の意味を説明すると、これはアラビア語で”山”を指す言葉。
一時期ネタで言われていましたがドジェベルではなく”ジェベル”です。
※ネイティブ的にはジャベル
そんなジェベルですが、こはDR250Sというモデルがベースにあります。
4st/250ccオフでスズキらしく一次バランサー付きの油冷OHC単気筒でメインフレームをオイルタンクにしたドライサンプもので、飛躍的な性能向上を果たしたモデル。
これはアル・ベイカーというMUGEN取扱&スーパークロスディレクターのアメリカ人(全米モトクロス界のレジェンド)とスタッフを引き抜いて開発に関わらせた事が要因だったりします。
ちなみにこのDR250Sはそんなアルベイカーさんの遺作でもあります。というのも残念な事にアルベイカーさんはDR250Sの発売前に飛行機事故に見舞われ亡くなられてしまったからです。
意外なバックボーンだと思うんですが、話を戻すとそんなDR250Sをベースに
・正立フロントフォーク
・ガード付き丸目ヘッドライト
・ハンドガード
・フラット形リアキャリア
・ギア比をロングに
・キャスター角を27°から28°に
などなど少し落ち着きを持たせる変更を加える事でツーリング等にも使えるようし、併売という形で登場させたのがDJEBEL250/SJ44A型というわけ。
このDR250S/DJEBEL250(SJ44A型)といえばチラチラ見えている変な形をしたスイングアームが特徴的なんですが、これはボルトと接着剤で2つのパーツを結合してるから。
強度と重量のバランスを考え鋳造のボディと鍛造のアームに分けて製造されているんです。決して飾りではありません。
しかし・・・恐らく多くの人はそれよりも
「DJEBEL250ってこんな形だったっけ」
と思われているんじゃないかと思います。
皆が思うDJEBEL250は4年後の1996年に登場した次のモデルからになります。
『DJEBEL250XC/SJ45A』
先に紹介したDJEBEL250の元となっているDR250Sがクラストップのスペックを誇るDR250Rへとモデルチェンジした事で、それに引っ張られる形で新しくなったジェベル。
だから同じDJEBEL250といえど実はかなり別バイクというか、変更点も相まって性格は大きく違います。
それを象徴するのが車名末尾に新たに付けられた
『XC(クロスカントリー)』
という記号で、これが非常に評価されたから根強い人気を獲得する事に成功。力を入れている割に今ひとつパッとしなかったスズキオフにおいて2008年まで発売され続けるというロングセラー車となりました。
じゃあ具体的にDJEBEL250XCの何が評価されたのかというのをザックリご紹介。
【1.驚異の17Lガソリンタンク】
そこら辺のオンロードモデルを鼻で笑える驚異的な大容量ガソリンタンクを装備。
航続距離はカタログ読みで驚異の799km。もちろんスムーズな体重移動とニーグリップも考慮し、シート側は大きく絞られた形。
そしてそのシートも三角木馬(写真左)で定評があるスズキとは思えぬ柔らかさとフラットさで乗り心地もクラスにしては上々なものだった。
【2.もはやオーパーツ多機能デジタルメーター】
一見するとただのデジタルメーターかと思いきや
・スピードメーター
・オドメーター
・時計
・トリップメーター
・ストップウォッチ
・減算タイマー機能
と、本来ならばこれはGSX-Rに付けるべきではないかと思うほど多機能なものを装備。
更にXCから2年後となる1998年には二輪史上初となるGPSを搭載したDJEBEL250GPSver.まで発売。
従来の多機能デジタルメーターの上に目的地までの方角(道順ではなく方角)とおおよその距離を示すGPSディスプレイを搭載。
「逆に迷う」
「山に入ると見失う」
などなど大きな反響をよびました。
【3.大きすぎて特注になった200mmヘッドライト】
丸目ヘッドライト好きすら閉口してしまうほどの大きさを持ったアルミガード付きヘッドライトを装備。
バッテリーを吸い尽くすほどの大発光面積&大光量により暗いのが当たり前というオフロードの常識を払拭。
「これだけ大きいとハンドリングに悪影響が・・・」
と思いきや大きすぎて特注になってしまった超薄型樹脂レンズによりギリギリまで軽量化、更にハンドルにベタ付けするほど近づける事で操舵慣性モーメント(ハンドリングが鈍くなる)問題も解消。
【4.トコトコ系と思いきやビュンビュン系】
ハード系であるDR250R譲りな事からも分かる通り、走行風に完全依存する空冷ほど熱にシビアではなく、水路と水が必要な水冷ほど重くならない油冷DOHCエンジンのおかげで31ps/8500rpmというパワフルさに加え、これだけのクロカン装備を兼ね備えて置きながら乾燥重量でわずか119kg。
足回りもカートリッジ式フロントフォークとリンク式リザーブタンク付きリアサスというオーバークオリティなものを備えていたので走りも良好。
などなど少しおふざけが入りましたが、要するにクロスカントリーらしく長距離走にも耐えられるようになっているのはもちろん、単純なポテンシャルも高かった事からストップアンドゴーの街乗りなどの短距離走もイケる性能も持っていたからDJEBEL250XCは人気になったという話。
DJEBEL250XCがこれほどまでの完成度を誇っていたのはDR250Rという優秀なベースがあった面も当然あるんですが、こういうタイプのモデルはDJEBEL250が最初じゃないからという面もあります。
ブームと言えるほどではないものの90年代に入ってオフロード人気が再燃し始めたんですが、
「走破性を上げてナンボ」
という80年代初期のオフロードブームとは傾向が違い
「マルチに便利な乗り物として」
という傾向が生まれ強くなっていた。
分かりやすいのがセルモーター付きが当たり前になった事なんですが、その延長線上で
「苦手な長距離や夜間も走れるオフロード車」
としてビッグタンクや強化ヘッドライトなどラリーレイド感を出した派生モデルみたいなものが各社から出ていた。
DJEBEL250XCはそんなジャンルに向けて出されたどちらかというと後追いに近いモデル。でもだからこそここまでのモデルが造れたんだろうなとも思うわけです。
タンク、ヘッドライト、メーター、スペック、いま紹介してきたように様々な要素でクラストップや最大という言葉が並ぶ事が何よりの証拠で
「これくらいでいいだろう」
という要素が見て取れないどころか、やり過ぎのようにも感じるクロカン要素の最大化がオフロードの懸念点を分かりやすく払拭する形となった。
DJEBEL250XCが多くの人に認められた魅力というのはそういう
『加減を知らない安心感』
だったんじゃないかと。
だからこそクラスとして2008年の最後まで唯一生き残ったモデルとなったし、復活を希望する声は今も聞こえてくる。
特に近年のキャンプブームを見るたびこのバイクを思い出す人は少なくないんじゃないかと思います。星空を探しに行くのに最高のバイクでしたからね。
主要諸元
全長/幅/高 | 2230/885/1250mm [2230/890/1220mm] (2205/890/1180mm) |
シート高 | 880mm <[885mm]> (845mm) |
車軸距離 | 1445mm [1450mm] (1435mm) |
車体重量 | 116kg(乾) [118kg(乾)] <119kg(乾)> |
燃料消費率 | 50.0km/L <[47.0km/L]> ※定地走行燃費 |
燃料容量 | 9.0L <[17.0L]> |
エンジン | 油冷4サイクルOHC単気筒 <[油冷4サイクルDOHC単気筒]> |
総排気量 | 249cc |
最高出力 | 29ps/8500rpm <[31ps/8500rpm]> |
最高トルク | 2.5kg-m/7000rpm <[2.8kg-m/7000rpm]> |
変速機 | 常時噛合式6速リターン |
タイヤサイズ | 前80/10-21 後110/90-18 <[前3.00-21-51P 後4.60-18-63P]> |
バッテリー | YTX7L-BS <[YTX5L-BS]> |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR9EA-9 <[CR9E]> |
推奨オイル | スズキ純正 エクスター |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量2.3L 交換時1.7L フィルター交換時1.9L <[全容量1.6L 交換時1.1L フィルター交換時1.3L]> |
スプロケ | 前14|後42 |
チェーン | サイズ520|リンク108 |
車体価格 | 439,000円(税別) [499,000円(税別)] <539,000円(税別)> ※[]内はXC ※()内は低車高仕様 ※<>内はGPS |