「コンチネンタルトレール」
ヤマハが1991年から1995年まで発売したアルティシア(XT400E)/4DW型。
TT250Rやランツァとかならまだしもアルティシアのリクエストが結構あってて何事かと思って調べたら名探偵コナンで登場したんですね。
世良真純(せらますみ)という登場人物が乗ってるらしい・・・まんまセイラ(アルテイシア)さんネタだなって話なんですが、一応説明しておくとヤマハが出したアルティシアの名前の由来は違います。
これはフランス北部のアルトワ地方に住む自由奔放な人々を指す言葉で自由人という意味。そして細かい事を言うとアルティシアのイは小さいィです
アルテイシア・ソム・ダイクンから取ったわけではないです。
それでこのバイクがどういうモデルか入ると、見て分かるように400トレールで一年先に出ていた欧州向けXT600Eの日本版。実質的な先代にあたるXT400とXT600(SRX4とSRX6)の関係から続いていた流れですね。
中身を具体的にいうと
・SRX4譲りのバランサー&セル付きエンジン
・点火タイミングを変更しクランクマスを軽量化
・キャブを小径化などで非常に緩やかなトルクフィール
・前後ディスクブレーキ(フロントは大径267mmに2ポット)
・ハンドルガード
・ロングシート
・高剛性ダイヤモンドフレーム
・リンク式モノクロスサスペンション
・フロント21インチ
・フロント225mm/リア200mmnのロングストロークサス
・ハンドルが近くて高いオフロードスタイル
などなど分かりやすく言うと少し乱暴ですが400版セローという感じ。
この頃ミドルアドベンチャーが欧州で人気を呼んでいて、その流れで日本国内でも400にスケールダウンしたモデルが各社からチラホラ出ていました。
アドベンチャーというと道なき道をゴリゴリ突き進むイメージが湧くかも知れませんが欧州でも基本的に高速道を含むオンロードが主体で、オフロード性能は舗装路と舗装路の間に稀にある砂利舗装などの軽微なグラベルをやり過ごせる程度でよかった。ここら辺は日本と同じですね。
だからオンとオフという両立できない要素の振り分けではどのメーカーも基本的にオンロードが主体でオフロードはおまけ程度なのが当たり前でした。防風性を考えたカウルが付いていたりするのがその象徴。
しかしそんな中でアルティシアだけは明らかに違った。
上記したようにオンロードでの走行も考えてはいるもののオフへの振り幅が大きく、オンとオフが50:50に近かった。
これはオフロードライクな見た目からも分かるかと思います。
翌92年モデルでは
・サスペンションのセッティング変更
・アルミリムの採用
・可倒式ブレーキペダル
・機能重視キャリアやキックセット(OP)
などのマイナーチェンジも加わっています。ちなみに世良ファンのために説明するとモデルになってるのはこの1992年モデル(4DW2)です。
そんなオフを妥協しなかったアルティシアに対する反応がどうだったかというと、兄貴分にあたるXT600Eは欧州だけで10年間92,000台超の登録という爆発的な人気を記録。
しかし一方で国内では
『車検がある400ccのトレール』
という不人気クラスだった事もあり最初こそ話題になったもののロングセラーにはなりませんでした。
このクラスが売れない事はヤマハ自身も分かっていたと思うんですが、じゃあなんで出したのかという話というか考察。
アルティシアが出る少し前にあたる1980年代後半といえばレーサーレプリカブームですが、一方でそこまでではないもののオフロードの人気も今よりは高かった。
その皮切りとなったのはご存知セローなんですがヤマハはさらに畳み掛けるように
・DT50/125R
・TT250R
・TW200
・TDR250
など色んな角度のオフロードバイクを出すだけではなく、初心者にオフロードの楽しさを知ってもらうための体験イベントなども精力的に開催していました。
正直ここまでの攻勢を仕掛けていたメーカーはヤマハくらい。
理由はもちろんトレールという言葉を生み出した事からも分かる通り、オフという楽しみを大衆に開拓した歴史を持つのがヤマハだから。
ただもう一つ重要な要素が当時ヤマハは
『レーサーレプリカの次に来るのはオフロード』
と捉えてる節があった事。
レーサーレプリカという競争に疲弊する人達が続出するのはどのメーカーも分かっていた。各社がレーレプブーム真っ只中に外したバイクを出したりしたのもそのためで、結果的にオールドスタイルのネイキッドが次のブームを担う存在になったのは周知の事実かと思います。
そんな中でヤマハは明らかにオフロード推しというか呼び寄せる気満々でした・・・だからニューモデルを次々と投入していったわけですが、そうした時に競争疲れを起こしたオンロードユーザーをいきなりオフの世界へ引っ張るのではなく、マイペースで入ってこれるように用意したのが舗装も未舗装も決して速くはないけど熟せるアルティシアだったのではないかと。
XT400Eではなく
『ARTESIA(アルティシア)』
という名前を掲げた理由もここにあると思います。
XTというブランドネームは強みな一方でオフロード色が強く、先入観や固定概念を生んでしまう。これではオンもオフも捨てていないXT400Eの魅力を見えにくくしてしまう。
だからこそXTという本当の名前ではなくアルティシアと、オンオフ縛られずまた競わない自由奔放を意味する名前を与えられたのではないかと。
主要諸元
全長/幅/高 | 2225/830/1240mm |
シート高 | 860mm |
車軸距離 | 1445mm |
車体重量 | 155kg(乾) |
燃料消費率 | 52km/L ※定地走行テスト値 |
燃料容量 | 13.0L |
エンジン | 空冷4サイクルOHC単気筒 |
総排気量 | 399cc |
最高出力 | 31ps/7000rpm |
最高トルク | 3.3kg-m/6000rpm |
変速機 | 常時噛合式5速リターン |
タイヤサイズ | 前90/90-21(54S) 後120/90-17(64S) |
バッテリー | YTX9-BS |
プラグ ※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価 |
DPR8EA-9 |
推奨オイル | – |
オイル容量 ※ゲージ確認を忘れずに |
全容量2.6L 交換時2.5L フィルター交換時2.6L |
スプロケ | 前15|後45 |
チェーン | サイズ520|リンク106 |
車体価格 | 449,000円(税別) |