最初で最後のフルスペック DR-Z400S/SM (SK43A/SK44A) -since 2000-

SK43A

「GO TO THE TOP」

水冷400オフロードではスズキ唯一の車種となるDR-Z400S(SK43A)

このモデルは2stモトクロッサーRM250の4st版というコンセプトで作られた経緯があります。

RM250

そしてもう一つ大事なのは保安部品やセルが無いエンデューロレーサーDR-Z400(写真下:DK42A)との共同開発だった事。

DR-Z400

これは欧州を中心にして始まったエンデューロレースに合わせたもの。

・大口径バルブ
・鍛造ピストン
・メッキシリンダー
・マグエンジンカバー

を採用し40馬力を発揮する単気筒エンジンはもちろん、フレームもクロモリ鋼管製ダブルクレードルにアルミアーム。

他にも大径49mmで圧側14段・伸側18段調節可能な正立カートリッジタイプとアルミガードにアルミペダル等など本当に余念がない豪華な作り。

DR-Z400S

DR-Z400SはそんなDR-Zの公道版モデル。

だから400最速クラスであると同時に628,000円(税別)とクラス最高値の高級な部類でもありました。

DR-Z400S公式フォト

DR-Z400Sは油断すると簡単にウィリーするほど明らかにとてつもないパワーを持っていました・・・が、だからこそ手に余ると考る人達が続出した。

これはエンデューロレーサーレプリカだったからです。

レーシングポテンシャルDR-Z400S

タンクが10Lだったり、一部で三角木馬と揶揄されるほど固く薄く細いシートだったのもそういう事から。

ただシートに関しては足つきを考えて日本仕様はローシートを標準にしたのもあります。

DR-Z400S後期

一方、オフロード大国でガタイがいいアメリカやオーストラリアの人はナンバー付きのエンデュランスとして大歓迎。

向こうでは2017年時点で継続販売されており、オーストラリアに至っては陸軍にも採用されるほど。

ちなみに日本では発売されていませんが、向こうでは緑バージョンも存在しました。

KLX400R

カワサキへOEM供給されたDR-Z400Sその名もKLX400。2002年から2年間ほど売っていた様です。

しかし驚くのはまだ早い。

これのお返しとして用意されたのがLT-Z400というバイク・・・じゃなくてATV。

LT-Z400

若干傾斜していますが何処からどう見てもDR-Z400のエンジンですね。

ちなみにこっちはカワサキバージョンのKFX400。

KFX400

GSX250FX/BALIUS2やD-TRACKER/250SBといった一時期やっていたOEM提携ですが、海外でもこういう事をやっていたわけです。

DR-Z400のエンジンがタフだと言われる事や、ヨシムラがフルチューンしたのも頷ける話。

M450R

これはヨシムラが手掛けたスーパーモタード仕様のM450R。

限定13台で198.8万円(SPEC3)という超高級DR-Z400Sです。

話を戻すと・・・日本ではあまりのスペックから躊躇されたDR-Zですが、2004年から発売されたDR-Z400SM(SK44A)の方は有名じゃないかと思います。

DR-Z400SMカタログ

モトクロッサーRM用の大径倒立フォークに17インチスポークホイール。スイングアームも専用のアルミ製という相も変わらず贅沢な仕様。

DR-Z400Sがピカイチな速さを持っていた事は誰もが知っていたので、そのオンロード仕様ということで

「これなら自分でも乗れる」

と東京モーターショーで大反響を獲得しました。

DR-Z400SMz

これはブルーアルマイト加工されたホイールやハンドルバー、カシマコーティングされたフロントフォーク等を装備した限定300台の特別仕様DR-Z400SMzです。今となっては超希少・

言い忘れていましたがDR-Z400は水冷400エンデュランスとして、DR-Z400SMは水冷400モタードとして国産車初であり最後でもあるモデル。

一体なぜ続かなかったのかというとレギュレーション(クラス上限)が450ccにアップされたから。

DR-Z400SMファイナル

上で紹介したM450Rが449cc化されているのもそのためで、要するに該当するクラスがすぐに無くなってしまった。

非常に残念な事でもあるんですが、これがDR-Z400S/SMを唯一無二に近い存在にしている事でもある。

DR-Z400S/SMはスペックが凄い・・・何故そうなのか。

DR-Z400SMファイナル

「日本の免許事情に奇跡的にマッチしたフルスペック400だから凄い」

という話。

だから、ある人はレース用の450ccモトクロッサーとの勝負に用い、またある人は排気量の規格がない無差別級なジムカーナでストリートファイター達との勝負に用いる。

それだけのポテンシャルを持っていたからこんな飛び級のような事が出来た。

SK44A

普通二輪で乗れるチャンピオンイエローに恥じぬ公道最速クラスの400。

「もう二度と出ないであろうフルスペック400」

それがDR-Z400/SMというモデルでした。

主要諸元
全長/幅/高 2310/875/1235mm
[2225/870/1195mm]
シート高 895mm
[870mm]
車軸距離 1475mm
[1460mm]
車体重量 129kg(乾)
[133kg(乾)]
燃料消費率 40.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 10.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 398cc
最高出力 40ps/7500rpm
最高トルク 4.0kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前80/100-21(51P)
後120/90-18(65P)
[前120/70-17(58H)
後140/70-17(66H)]
バッテリー YT7B-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
推奨オイル スズキ純正
エクスター
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.9L
交換時1.7L
フィルター交換時1.8L
スプロケ 前15|後43
[前15|後41]
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 628,000円(税別)
[698,000円(税別)]
※[]内はDR-Z400SM

01年:各種ガード追加と小変更

03年:カムチェーンテンショナー見直し

04年:Sモデルのスプロケやマフラー形状の変更

06年:イグニッションスイッチやキーの変更、レンサルファットバーとアクスルスライダーを装備(SMのみ)

07年:フューエルコックの負圧化

08年:モデルをもって排ガス規制により生産終了

系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

決して多くない人たちへ SRX-6(1JK~) SRX-4(1JL~) -since 1985-

初代SRX-6

「Taste of the world」

今もなお一部のライダーから絶大な支持を得ているSRX。

このバイクは販売台数が低迷してきたSR400の後継機として開発がスタートした経緯があります。

1982XT400

エンジンはSRの物ではなくXT600/400のもの。

SR400の元がXT600/400のご先祖であるXT500だったことを考えると、SRXは従兄弟というか腹違いの兄弟の様なバイクですね。

SRXエンジン

いきなりですがSRXは特にこれと言って目立ったメカニズムがありません。

エンジンも振動を打ち消す一軸バランサーを装着している事くらい。

フレームも至ってシンプルなダブルクレードルフレームです・・・が、そう単純な話ではない。

SRXフレーム

当時はレーサーレプリカ全盛期で、次々と新装備や高いスペック、そして

“カウル付きにあらずんばバイクにあらず”

という時代だった。

SRXプロジェクト(SRの後継プロジェクト)はそんな風潮に納得がいかないエンジニアが自主的に集まったのが始まり。

決まりごとは一つ。

1988SRX-6

「必要なものにはコストを惜しまず、不必要なものは絶対につけない」

ということ。

「DOHCなんて飾り」

「カウルなんて整備しにくいだけ」

「セルなんて軟派な奴が使うモノ」

SRX-6カタログ写真

「同じ考えを持った決して多くない人たちに向けた本物のバイクを」

という事を至上命題に。売れる売れないは最初から頭になかった。

SRXは基本に忠実に磨き上げたような車体構造だから

「ここが凄いんだぜ」

と言えるようなメカニズムが無い。

SRXカタログ

その代わり乗れば如何にギミックを捨てて、基礎を磨き上げたバイクか分かります。

そしてそんなこだわりも持っていたのはエンジニアだけでなくデザイナーも同じ。

SRXラフデザイン

SRXは一条さんというGKデザインでVmaxなどを手がけられた方がデザイン。

この方もそれらのバイクを生み出しただけの事はあり、絶対にデザイン面で譲らなかった。

2NX

例えばこのエンジンを舐めるように囲っているフレーム。

本当はもう少しエンジンとフレームに余裕を持たせないと組む事が出来ない。でもそれではデザインが崩れるとして譲らず、アンダー部をボルトマウント(サブフレーム)に変更。

SRX-6ジャケット写真

他にも正面から見た時にフロントフォークからタンクがハミ出てるのが気に食わないとして、正月休みの間にクレイモデルを勝手に持って帰り、シレっと削るという暴挙に出てエンジニアと口論。

更には当時としては非常に珍しかったショートマフラーも肝心要だとして絶対に譲らなかった。

POTENTIAL SINGLE

だからこのマフラーは性能から導き出される本来のマフラーの作り方ではなく、この形を前提とした開発。

その努力の跡は素人目で見ても分かります。

SRXマフラー

ちなみにSRXとVmaxは同じ1985年に発売されたバイクでデザインは同時進行。

「洋(アメリカ)のVmax」

「和のSRX」

という表裏なテーマを持たせたそう。

他にも軽量化や質感の為にアルミを奢ったりしているわけですが、ここで少し話しておかないといけない事があります。

「ロードボンバー」

というバイクについてです。

ロードボンバー

「大事なのはパワーではなく操縦性」

という考えを持っていた島英彦さんという方がXT500のエンジンをベースに作り上げたシングルレーサー。

1978年の第一回鈴鹿8時間耐久ロードレースにこのバイクで出場したわけですが、四気筒1000ccが当たり前だった状況で単気筒500cc。

当然ながら誰もが無謀と思っていましたが、単気筒の武器である軽さや低燃費性など

「少ないリソースを最大限活かす」

という考えで見事8位入賞という快挙を成し遂げ一躍注目の的に。

BSA

既に開発中だったSR500/400はBSA系のデザインで行く予定だったのですが、このロードボンバーへの大反響が後押しする形でこうなった経緯があります。

初代SR400

しかしどちらかというとSRXの方がスポーツ志向でロードボンバーに近いことから

「SRXこそロードボンバーでは」

という声が広まりました・・・が、どうもSRXの開発に対しては島さんは初期に少し関わったのみで市販されたSRXとはほぼ無関係との事。

SRX-6銀

もちろんSRやSRXが生まれる事が出来たのはロードボンバーの追い風があったからなのは間違いないでしょうけどね。

話をSRXに戻します。

初代SRX-6

「俺達と同じように分かるやつだけ乗ってくれればいい」

という気兼ねで作られたSRXのモデルチェンジについてザックリ説明。

1987年
SRX-6(2NX)/SRX-4(2NY)

二代目SRX-6

・キャブやエンジン周りの見直し
・タンデムステップの移設
・18インチから17インチへ
・シングルディスク化
・4ポットキャリパー
・-2kgの軽量化

1988年
SRX-6(3GV)/SRX-4(3HU)

三代目SRX-6

・ラジアルタイヤ装備
・給排気系の見直し
チェーンを520から428にコンバート

1990年
SRX600(3SX)/
SRX400(3NV)

四代目SRX

フルモデルチェンジされた後期型モデル。

多くの人に日常の足としても親しまれる様になったことからセルを装備し、モノサス化とアルミスイングアームなどフレームの大幅な見直し。

デザインも上村国三郎さんに変更されガラッと雰囲気が変わって車名もSRX400とSRX600に改名(※海外では最初からコッチ)。

1991年
SRX600(3SX後期)
SRX400(3NV後期)

五代目SRX

最後のモデルチェンジになる91年モデルではサスペンションの見直し・・・等など。

ちなみに言い忘れていましたが400と600の違いはオイルクーラーが付いておらずシングルディスクなのが400。

※YSP限定は400もダブルディスク

SRX400

ただ後期400にはオイルクーラーが装着されています。

何故こんな細かなモデルチェンジを繰り返したのかというと、幸運なことにそんなエンジニアの想定を大きく超えるヒットとなったから。

ヤマハによるとSRX-6が世界累計で19,000台、SRX-4も国内だけで30,000台も生産されています。

そして売れたことで

SRX-6アメリカ

「必要なものに更にお金をかけることが可能となった」

との事。

結局、数を売ろうという考えは最後までありませんでした。

SRX400カタログ写真

しかし残念ながら91年モデルを最後にフェードアウトするように生産終了に。

その道のプロをも唸らせる作りと人気だったにも関わらず生産終了となってしまった理由・・・それは

「SRがいたから」

です。

SR400UK

もはやヤマハ史の生き証人となっていたSRを途絶えさてはいけないという判断が、よりもよって後継となるはずだったSRXの開発の終わり際に決定。

つまりSRXは世に出る前から消える事を運命づけられていた。

SRX400

なんとも悲しい話なんですが、SRを責めないでやってください。SRがいたからこそSRXのプロジェクトが始動したわけですから。

そもそもこれが市販化出来たのは、開発チームが自分が欲しかった事と

“同じ考えを持った決して多くない人たちに届けたい”

という強い思いがあったから。

絶対にプレゼンを通すために、等身大のデザインスケッチや、塗装ではなく質感を出すために本物のアルミを奢ったスペシャルモデルなどまで用意。

SRX1/1スケッチ

「そこまで言うなら・・・」

と上を物怖じさせるほど熱弁し訴えることで市販化に漕ぎ着けたわけです。

そして消える運命なのになかなか消えず、発売後も改良が続けられたのは

“同じ考えを持った決して多くない人たち”

が買い支えてくれたから。

SRX-6カタログ写真

SRの存在によって生み出され、SRの存在によって消えていった、SRとは似て非なる格調高きポテンシャルシングル。

それがSRXというバイクです。

主要諸元
全長/幅/高 2085/705/1055mm
2090/720/1045mm※3SX/3VN
シート高 760mm
車軸距離 1385mm
1425mm※3SX/3VN
車体重量 170kg(装)※1JK/3SX/3VN
166kg(装)※2NX/3GV
(168kg(装)※1JL)
(165kg(装)※2NY/3HU)
燃料消費率 40(51.0)km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 15.0L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 608cc
(399cc)
最高出力 42ps/6500rpm
(33ps/7000rpm)
最高トルク 4.9kg-m/5500rpm
(3.4kg-m/6000rpm)
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ

前100/80-18(53S)|後120/80-18(62S)※1JK/1JL
前100/90-17(55S)|後120/80-18(62S)※2NX/2NY
前110/80-17(57H)|後120/80-18(62H)※3GV/3HU
前110/70-17(54H)|後140/70-17(66H)※3SX/3VN

バッテリー YB5L-B
YTX9-BS※3SX/3VN
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DP7EA-9
DPR8EA-9※3SX/3VN
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L|交換時2.0L|フィルター交換時2.1L
全容量2.8L|交換時2.4L|フィルター交換時2.5L※3SX/3VN
スプロケ 前15|後37※1JK
前19|後47※2NX/3GV/3SX
(前14|後41※1JL/2NY)
(前17|後50※3HU/3VN)
チェーン サイズ520|リンク104※1JK
サイズ520|リンク104※2NX
サイズ428|リンク132※3GV/3HU
サイズ428|リンク138※3SX/3VN
(サイズ520|リンク106※1JL/2NY)
車体価格 548,000円(税別)/SRX600(1JK)
498,000円(税別)/SRX400(1JL)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

市民権の象徴 FORZA125 (JF60) -since 2015-

フォルツァ125

「More of everything」

フルスペック125スクーターとして登場したフォルツァシリーズの末っ子FORZA125。

FORZA125は開発設計は日本だけど製造はイタリア。だから日本では並列輸入のみで正規販売されていませんが、2015年の東京モーターショーでは出品されたので覚えている方も多いと思います。

キーレス

・前後ディスクブレーキABS
・6段階可変スクリーン
・フルLEDライト
・ヘルメットが二個入る48L大容量メットイン
・多機能LCD付きメーター
・120/70-15|140/70-14の太いタイヤ
・最高速度160km/h

もうこれ以上ないというほどの装備と性能。

フォルツァ125アクセサリー

プラスαで付けたいアクセサリーといえばグリップヒーターと防水スマホマウントケースくらい。

しかしそのゴージャス路線は留まる所を知らず、2017年モデル(JF69)からは各部の改良に加えキーレスまで装備。

キーレス

もはや125の装備じゃないを通り越してバイクの装備じゃないとも言えるような内容で、残っているのはSマチック(疑似MTモード)とトラコンくらいですね・・・要らない気もしますが。

見た目だけでなくエンジンも凄くて、PCXでも使われているeSPを4バルブ化した事によって、43.5km/L(WMTC値)という低燃費を誇りつつもクラス上限の15馬力を発揮します。

これだけのスペックと装備をしているだけあって車体価格も約5000ユーロ(日本円で65万円)とかなり高め。

フランス

65万もする125なので向こうでも

「高い」とか「これ買うなら300買う」

と言った声も結構ある。しかしそんな中で飛ぶように売れている国があります・・・それはメインターゲットであるフランスです。

FORZA125_fr

ホンダも大成功したと自信満々に言っていたので調べてみました。

バイク情報サイトscooter-station.comによると、フランスにおけるFORZA125(NSS125AD)の2015年度販売台数は9月(発売から5ヶ月)時点で4608台。PCXやX-MAXはもちろん王者TMAXをも抜き去る程のトップセールスで本当に大成功していた。

「何故65万円もする125ccスクーターをフランス人はそんなに買うのか」

という話ですが、一つは自動車の免許を取得し数年すると125cc/15馬力までのバイクに無条件(または簡単な実習)で乗れる容易さにあります。

フランス

日本で小型免許の取得簡略化の話が出てきているのは、排ガス規制や騒音規制と同じようにEU(国連)と足並みを揃えるためでもあるんですよ。

ちなみに緩和に対して”事故が増える”と否定的な意見を見たりしますが、90年中頃に緩和をしたドイツやフランスでも同じような意見がありました。

125cc緩和による事故率

しかしいざ実施してみると増えるどころか減っています。

この理由については後述するとして話を戻すと・・・フランス人がFORZA125を何に使っているかというと、日本と変わらず通勤など日常の足として。

ただ日本と大きく違う点として向こうはオートルート(フランス)やアウトバーン(ドイツ~スイス)等の日本でいうところの高速道路を125でも走ることが出来ます。

オートルートとアウトバーン

つまり向こうの人にとって125ccというのは維持費が安く、渋滞知らずで、高速も乗れるコストパフォーマンス抜群の乗り物というわけ。

でもこれはEEC(EUの道路交通法)に加盟しているEU全体で言えることで、フランスで人気がある事の答えになってませんよね。

フランス

フランスでFORZA125が人気な理由の一つはフランス人の生活、平均走行距離にあります。

ホンダはFORZA125の前にも日本でお馴染みPCXを出していました。日本と同じように欧州でもドッカンドッカン売れたんですが何故かフランスだけ今ひとつ人気が出ず。

何故なのかホンダが調査をしてみると

「長距離が辛そう」

という声が多かった。

更に調べてみるとフランス人は平均走行距離がEU諸国の中でも飛び抜けて高いことが分かった。

パリ

これはフランスが30年連続観光客第一位になるほどの観光大国なのが大きな理由です。

パリ、リヨン、マルセイユ、リール、主要都市が全て人気観光都市な国。そんな観光都市に住むのは大変です。賃貸で貸すよりも観光客に宿として貸した方が儲かるという理由から家賃が非常に高いからです。

パリで1DKを借りようと思ったら20万円/月はします。街外れに行くと安くなるけど、そうすると今度は治安がものすごく悪くなる。

その結果フランスは大きなドーナツ化現象を招いた。遠く離れた郊外から高速を乗って都市部へ長距離通勤する人ばかりになったというわけ。

そしてもう一つ。

観光都市という事で渋滞や歩行者の道路占領が本当に酷い。入るのも出るのも大変。車で移動していたら途方もない時間が掛かる。

シャンゼリゼ通り

だから通勤だけでなく街中の移動も125のスクーターという人が多い。

つまり郊外から都市部までの長距離と、都市部に入ってからの渋滞の両方を熟す必要があるフランス人にとってFORZA125のパワーとサイズはドンピシャというわけ。

でもこれ日本でも当てはまると思いませんか。ドーナツ化現象といい都市部の慢性的な渋滞といい。

しかし日本とフランスでは決定的に違う所があります。それは駐輪場です。

フランスの駐輪場

フランスは駐車場を追い出すほど駐輪場が充実しています。観光と取り合いになる駐車場より駐輪場を見つける方が簡単な程。だから皆125ccのスクーターで移動する。

これは国が渋滞緩和を目的として駐輪場を大量に設けた面もあります。バイク率が増えると一人あたりの道路占有面積が減るので。

駐輪場が無いにも関わらず駐禁取締でスクーター(コミューター)を死滅させてしまった日本とは大違いですね。

駐禁

話を戻すとコレはA2免許取得が必要な126cc~や、高速を走れない50でなく、自動車の付帯で乗れる125じゃないとダメなんです。

フランスの人にとって”125″というのはバイクではなく自動車乗りのツール。正にツール・ド・フラ….すいません。

だから65万円もしようと売れるわけ。

「65万出せるならもっと良いバイクがある」

という話ではないんです。そもそも層が違うから。

しかしこれが126cc以上のバイクに乗るライダーにとっても実に良い方向に働いています。

車乗りの多くが(簡単に乗れる事で)二輪を知るキッカケになったからです。

このおかげでフランスでは

「バイクは社会悪だ」

と目の敵にする人は少なく、その有用性や利便性を認めている”車乗り”が多い。

フランスの道路

日本のように

「バイクなんて禁止にしろ」

と知る機会が無いことから有用性を認めず目の敵にする人が少ない。本当にバイクを禁止にしたら必然的に車が増えるので渋滞がとんでもない事になるのに。

表参道

上で少し話した125cc免許の規制緩和をしたにも関わらず事故が減ったというのも

“車乗りのバイクに対する理解が広がった”

からです。

フォルツァ125リア

日本とフランスで大きく違うのは”車乗りのバイクに対する理解”が進んでいるか遅れているかという事。

でもまだ間に合う。

日本も駐輪場の充実と小型二輪免許の緩和によって、バイクに理解がある車乗りが増えれば、125で通勤する車乗りが増えれば事故も渋滞も減る。

フォルツァ125壁紙

そうやって125への理解が少しづつでも進み、市民権を得ることができれば、FORZA125が発売される日が必ず来る。

主要諸元
全長/幅/高 2140/755/1470mm
シート高 780mm
車軸距離 1470mm
車体重量 159kg(装)
燃料消費率
燃料容量 6.2L
エンジン 水冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 125cc
最高出力 15.0ps/8500rpm
最高トルク 1.28kg-m/8250rpm
変速機 Vマチック
タイヤサイズ 前120/70-15(56P)
後140/70-14(62P)
バッテリー YTZ8V
プラグ SILMAR8C9
推奨オイル ウルトラGP(10W-40)
オイル容量 全容量0.9L
交換時0.8L
フィルター交換時0.8L
スプロケ
チェーン
車体価格
※国内正規販売なしのため
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

鼓動と振動 Z750TWIN (KZ750B) -since 1976-

Z750TWIN

「Tボーンステーキ作戦」

Z2の登場から3年後の1976年に登場したZ750TWIN。その名の通り並列二気筒エンジンを積んでいます。

直列4気筒のZ2が既にあり人気だったにも関わらず何故このバイクを出したのかというと、トライアンフを始めとした対ブリティッシュツインに対抗するため。

Z750T

四気筒というのは確かに性能は良いけど、どうしても重いし幅もあるから取り回しに難がある。

そういった理由からZ1やZ650だけでは拾いきれない層をトライアンフやBSAに持って行かれていた。

W2

既にWというZ750TWINに近いツインのスポーツバイクを出していましたが、いかんせん設計が古すぎる事もあり苦戦していた。

そこでカワサキはZ1のニューヨークステーキ作戦に次ぎ、ブリティッシュツインとは一線を画するツインを作る作戦

「Tボーンステーキ作戦」

を打ち立てたわけです。カワサキはステーキが好きですね。

Z1とZ750ツイン

だから360度クランク二気筒というWと同タイプのエンジンを積んでいるわけだけど、W系ではなくZ系の見た目になっている。クランクが分からない人は「二気筒エンジンが七変化した理由-クランク角について-」をどうぞ

もちろん見た目が違うだけではないです。当時としては中々ハイメカなエンジン。

Z750TWINポスター写真

というのもこのZ750TWINはエンジンのクランクが通常とは反対、つまり逆回転するようになっています。

なぜ逆回転クランクを採用したのかというと、振動を消すバランサーを二本も(二軸バランサー)を追加するため。

Z750B

二軸バランサーというのは余計なシャフトを二本も追加するわけなので、当然ながらエンジンが大きくなってしまう。

通常のバイクはタイヤと同じ方向に回り、メインシャフトが逆回転、それをカウンターシャフトが戻してチェーンを介しタイヤを回す正→逆→正の三軸となっています。Z1やZ2もこれです。

三軸

しかしこれではギア同士を噛み合わせないといけないので、クランクを挟むように配置する必要がある二軸バランサーを入れるスペースが無い。

そのスペースを設けるにはクランクからメイン(一次伝達)までの距離を稼げるチェーン方式(プライマリーチェーン方式)を採用する必要があった・・・ただそうすると問題が生じます。

逆方向

正→正→逆と回転方向が進行方向と反対になってしまうんです。

だからプライマリーチェーン方式の場合は基本的にこうなります。

チェーン

正→正→逆→正と正回転に戻すためにもう一つシャフトを追加する四軸構造となるわけです。

しかしながらこれに更にバランサーシャフト二本を加えようとなるとこうなる。

チェーンプライマリー二軸バランサー

これでは二気筒の武器であるコンパクトさが無くなってしまう。

そこでカワサキ閃きました。

「最初を逆回転させればいい」

チェーン

逆→逆→正。こうすれば正転用のシャフトが要らずバランサーを追加しつつ三軸に収める事が出来る。

逆回転クランクにはこういった狙いがあった・・・・わけですが、これが仇になりました。

当時二軸バランサーというのはまだまだ珍しく、ノウハウが乏しかった事もありエンジンの回転数に対しバランサーやチェーンの耐久性が追いついていなかった。

Z750B

ではどうするかといえばエンジンの回転数を落とすしかない。

Z750TはDOHCの大排気量にも関わらずエンジンのB/S比がスクエア(78mm×78mm)で、まるでハーレーかと思うほど圧倒的に下が太く、上が伸びないエンジンになった。

Z750TWINカタログ写真

だからといって決して遅いわけでもない上に、もともと360度ツインで高回転なんて不合理な話。それに二軸バランサーを組み込んだおかげで他にないシルキーなツインエンジンにも出来た。

しかしツインスポーツとして人気を得ることは出来ませんでした・・・何故なら弾けるようなパンチが無かったから。

カワサキが振動と捉え消していたのは、振動ではなく鼓動だったという話。

主要諸元
全長/幅/高 2180/815/1150mm
シート高 -mm
車軸距離 1450mm
車体重量 218kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 14.5L
エンジン 空冷4サイクルDOHC二気筒
総排気量 745cc
最高出力 55ps/7000rpm
最高トルク 6.0kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前3.25H19-4PR
後4.00H18-4PR
バッテリー YB14L-A2
プラグ B8ES
[B6ES※78年以降モデル]
推奨オイル
オイル容量
スプロケ
チェーン
車体価格
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

シンデレラスクーター TR-50/110 (CA1LA~B/CF12A) -since 1997-

ストマジ50

「THE POWER SCOOTER」

スズキが若者向けに出したストリートマジック略してストマジことTR-50とTR-110。若者向けということでトキオの長瀬智也さんをドラマとカタログのタイアップで起用するという力の入れっぷり。

長瀬智也とストリートマジック

せっかく決まっているのにキャッチがダジャレなのがちょっとアレですね。

ストマジは1997年から2006年までとモデルライフは意外と長く、少しややこしい事にバリエーションが色々ありました。

ストマジ50/S

最初に出たのはノーマル(CA1LA)とS(CA1LB)の2モデル。Sの方はアルミキャストホイールやリザーブタンク付きサスペンションといった豪華装備モデル。

更に半年後にはストリートマジック2(型式はSと同じ)が追加。

ストリートマジック2

コチラはSをベースに丸目ヘッドライトやアップハンドルやディスクブレーキカバー等を装備したオフロード感を出したモデル。2000年からはこの丸目のストリートマジック2だけになりました。

兄貴分の110(CF12A)は50の一年遅れで登場。

ストマジ110

エンジンは50がアドレスやセピア等の2st原付にも使われているものがベースだったのに対し、110は同一ボディながらマウント変更でAddress110ベースの物・・・そう、ストリートマジックはスクーターのエンジンを積んでいる異端モデルです。ちなみに110も一人乗り専用。

スクーターのエンジンというのはユニットスイング懸架方式といって、簡単に言うとエンジンとスイングアームが一体になっている。

スイングユニット式

我ながら分かりにくい絵ですが、要するにエンジンもスイングアームも一体なので全部が動くわけです。マフラーも動きますしキャブなんかも一緒に動きます。

エンジンがスクーターなので当然ながら駆動はVベルトによる無段階つまりATというかCVT。Vベルト無段変速っていうのはプーリー・・・って口で説明するよりWikipediaのgifを見たほうが早いですね。

スイングユニット式

エンジン(クランク)シャフトの端に付いているコマみたいな物の中にウェイトローラーという重石が入っていて、エンジン回転数が上がるとその重石が外に押しやられ幅が狭まりベルトが押し上げられるというわけです。すごくザックリした説明ですが。

で、スクーターというかユニットスイング式というのはフレームへはリンクを介してラバーマウントするのが基本です。これは一体型ゆえにエンジンの振動はもちろん、駆動の振動や路面の振動といったありとあらゆる振動が起こるから。

そしてラバーマウントするということは、一切フレーム剛性に関与しないということ。そのため原付スクーターに乗ったことがある方なら分かると思いますが基本的にフレーム剛性はヘロヘロです。

原付のフレーム

これにはアンダーボーンといってスペースを稼ぐために採用されているフレーム(赤部分)も大きく関係しています。

ちなみに図を見て何となくでも分かって欲しいんですが、こういったアンダーボーンフレームは前後の力に凄く弱いです。だから過走行や手荒な運転、追突などがあると簡単に曲がります。

原付のフレーム

少し大げさですが、こんな感じに曲がったりします。フロントを浮かせてフォークを掴み左右に振ってみればガタが来ているか大体分かります・・・ってそんな話がしたいわけではない。

じゃあストリートマジックがどうなっているのかというとこうなっています。

ストマジのフレーム

これがどういう形かというと剛性を求められるスーパースポーツに広く採用されているツインチューブ(ツインスパー)というフレームの形。

つまりストリートマジックはかなりヤル気な形をしたフレームを積んでいるわけですが、もう一つ注目してほしいのがステム(フロントフォーク)周り。

原付のフレーム

トップブリッジ~ステムシャフト~アンダーブラケットというスポーツモデル同様の三叉構造になっています。

フロントフォークを三叉でいう下だけで留めているスクータータイプと違い、上中下で留めると剛性が増します。ステム剛性が上がるという事は簡単に言うとハンドリングがクイックになります。ロードスポーツは基本的にこれ。

三叉フォーク

辛い絵が続きますが、左のスクータータイプと右のスポーツタイプどっちがガッチリしているかは一目瞭然かと思います。しかもストマジは更に倒立サスなので尚のことステアリング周りの剛性がガッチリキッチリ。

スクーターのエンジンを積んだスポーツバイク・・・と簡単に片付けられがちなストリートマジックだけど、これだけフレームを作り上げて来ているんです。後期モデルでは更に補強が入りました。

TR-50/TR-50S

ただスズキとしてはストリートマジックはスポーツバイクではなくスクーター。謳い文句も「THE POWER SCOOTER」だし、ラインナップ位置もスクーターの所でした。

これは移動手段としてバイクを見ている原付(特に一種)層に、一般的なロードスポーツと同じ骨格を持つストマジで楽だけでなく操る楽しさも知ってもらおうという意図があったのかなと。

既存バイク乗りの立場から見るとストリートマジックというのは本当に立派なフレームを持ったスクーター。スクーターのスポーツ性を突き詰めていくとストマジの形になると言っても過言ではないかと。

アドレス110

ところでベースとなっているスクーターの一つであるAddressの名前の由来は
「add(加える)+dress(ドレス ※メットインスペースの事)」
でアドレスなわけですが、どうもストリートマジックの方がアドレスという名前がピッタリな気がします。

ストリートマジック装備

アドレスは紛うことなきスズキの名スクーターですが、じゃあみんな可愛がっているかといえば暖気すらせず走り出す等の手荒な扱いをする人が大半かと思います。

ところがストマジとなると、アレやコレやと弄って可愛がるのはもちろん、終いにはストマジのワンメイクレースが開催されるまでに。

ストリートマジック50

なんでこんなにチヤホヤされたのかと言えば、いま説明してきたツインチューブフレームというドレスを着たからに他ならない。

ドレスを積むのではなく、ドレスを着ちゃったスクーターSTREET MAGIC。

主要諸元
全長/幅/高 1635/710/965mm
[1700/710/975mm]
シート高 710mm
車軸距離 1080mm
[1150mm]
車体重量 73kg(乾)
[85kg(乾)]
燃料消費率 47.0km/L
[40.1km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 6.4L
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 7.2ps/6750rpm
[10.0ps/6500rpm]
最高トルク 0.82kg-m/6000rpm
[1.2kg-m/6000rpm]
変速機 Vベルト
タイヤサイズ 前110/80-12(51J)
後120/80-12(54J)
[前120/70-12(44L)
後130/70-12(49L)]
バッテリー YT4B-BS
[YTX5L-BS]
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6HS
推奨オイル スズキ純正CCISオイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.2L
Vベルト 27601-06F10
[27601-16F12]
車体価格 179,000円(税別)
[249,000円(税別)]
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

楽し危なし QA50 ポッケ(4U1) QB50フォーゲル(4U7) -since 1980-

ポッケとフォーゲル

「男のリトルバイク」

ヤマハが1980年に出したPOCKEとVOGEL。

ハンドルを折り畳め小さく出来る事から車に乗せてレジャー先で乗れる・・・言ってしまえばホンダのモンキー/ゴリラに対抗したバイク。当時は目には”目を歯には歯を”なHY戦争真っ只中でしたから。

先に紹介するのはポケットに入りそうなほど小さいことからポッケと名付けられたQA50 POCKE。

ポッケ

これにより全長1280mm、軸距885mm、車重52kgというとてつもないミニマムさを持っているわけですが、最大の特徴は何と言っても当時市販車最小となる6インチホイールを履いている事と、それによる特性。

ポッケカタログ

ホイールのインチ数(大きさ)というのは簡単に言うと直進安定性に密接に関係しています。大きいほど直進安定性が増すけど、代わりにハンドリングが眠くなります。小さくなるとその逆。

つまりPOCKEは恐ろしいほど機敏なハンドリングで小回りが効くけど、直進安定性が無いに等しいので轍などを踏むと簡単に斜めの方向へ飛んでいきます。

ちなみにモンキーも60年代の最初期は5インチでしたが、これは市販するつもりは無かったモンキーの原型であるZ100(アトラクション用)がそうだったから。でも流石に危ないとして数年で8インチ化されているわけです。

対してヤマハはどう見ても8インチ履けそうな車体に敢えて6インチというタブーを選んでる。ルックス優先やモンキーのインチダウンが流行っていたのも関係していると思われます。

ポッケmidnight

この黒金ポッケは二年目に限定発売されたミッドナイトモデル(4U2)。

兄貴達とお揃いのカラーリングなのが可愛いですね。

ポッケミッドナイト

ちなみにこのリミテッドポッケも兄貴達同様、塗装部はハンドメイド塗装という贅沢な仕様。

でも本当に何度見ても何かの間違いじゃないかと思うホイールサイズ。公道を走れるアトラクション用の遊具みたいですね。

そしてもう一つのモデルであるQB50 VOGEL(フォーゲル)。VOGELとはドイツ語で”鳥”という意味。

フォーゲル

タウンユースのポッケとは違い、アウトドアでも活躍できるデュアルパーパス系レジャーバイク。

ゴリラの対抗馬でオフも走れるように8インチホイールとブロックタイヤを履き、ゴムブーツ付きフロントフォークに大型キャリア付き。

そして燃料タンクもポッケの5.3Lから10Lへ大幅アップ。だから直進安定性しかり航続距離しかりポッケよりはまだ実用性がある。

QA50/QB50カタログ

しかしながらポッケ/フォーゲルどちらにも言えるんですが、最大の特徴というか問題点としてショートホイールベースで軽い上にシートが完全にリアタイヤの上という事から簡単にウィリーしてしまう点があります。

次元とフォーゲル

上の絵はルパン三世などに携わったアニメーターの大塚康生さんが描かれたフォーゲルに乗る次元。

ミニトレの相性で親しまれたGT50の物をデチューンした物とはいえ、2st特有のパンチ力のある加速は健在なので本当に簡単にポンポンとフロントが浮く。

ボトムニュートラル式(一番下がN)の4速ミッションを積んでいるんですが、2速だろうが3速だろうがズボラな操作だと簡単に浮く。

小径ホイールが生み出す何処に向かうかわからない機敏過ぎるハンドリングも相まって、レジャーバイクと言って大丈夫なのか心配になるトリッキーさ。

ポッケカタログ2

ヤマハがポッケ&フォーゲルを

「男のリトルバイク」

と謳っていたのはこのせいもあるでしょうね。

鳥山明とポッケ

ちなみに漫画家として有名な鳥山明さんもこれに乗って買い物に出かけていたそう。

ポッケとフォーゲルのカタログ写真

ホンダとヤマハによる原付市場での殴り合いによって生まれたレジャー4mini。

倫理性の欠片もないトリッキーさの為か、僅か3年で生産終了に。

ポッケとフォーゲルの広告

楽し危なしポッケとフォーゲル。

ポンポン飛び跳ねてる可愛いバイクが居たら十中八九コイツです。

主要諸元
全長/幅/高 1280/690/920mm
[1485/690/950mm]
シート高 660mm
[674mm]
車軸距離 885mm
車体重量 52kg(乾)
[57kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 5.3L
[10.0L]
エンジン 空冷2サイクル単気筒
総排気量 49cc
最高出力 3.0ps/5500rpm
最高トルク 0.42kg-m/4000rpm
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前後3.50-6-2PR
[前後3.50-8-2PR]
バッテリー 6N2-2A-7
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B6HS
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量0.7L
[全容量0.8L]
スプロケ
チェーン
車体価格 114,000円(税別)
[119,000円(税別)]
※[]内はQB50 VOGEL
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

五十路の夢 DREAM50 (AC15) -since 1997-

ドリーム50

「Dream of DREAM」

知らない人から見るとDOHCエンジンを積んだ頭のおかしい原付にしか見えないDream50。

まあその通りなんだけどホンダもこれを意味もなく出したわけではありません。ちゃんと背景があるわけです・・・が、それには歴史を説明しないといけません、というかそれがメインになると思います。

このバイクは1962年に出たCR110カブレーシングというバイクの復刻モデル。110と書かれていますが50ccです。なので”ヒャクジュウ”ではなく”ヒャクトー”と呼ばれていたりします。

CR110

ちなみにCR110の元となっているバイクは1960年のスポーツカブC110。

エルヴィス・プレスリー主演映画「ラスベガス万才」で登場し、広告塔にもなりました。

スポーツカブC110とエルヴィス

CR110がカブレーシングと付けられているのはこのため。更に辿るとC110の元はもちろん1958年に出た初代スーパーカブことC100。

じゃあDream50の元になっているこのCR110は何なのかというと、CR110が出る3年前の1959年に遡ります。

この年はホンダがマン島TTを始めとした世界グランプリレースに挑戦を始めた年。何故マン島TTなのかというと最も過酷な国際レース場だったから。つまりここで勝てば技術力が優れていることを証明できるわけです。

マン島とニュルブルクリンク

車でいうところのニュルブルクリンク(北コース)みたいな存在というわけですが全長もコーナー数も高低差も全てマン島が上。まあマン島はサーキット場ではなく本来は公道なので比べるのも酷な話ですが。

そしてホンダは見事に参戦3年目にして250cc/125ccクラスのW優勝を成し遂げます。

2RC143とRC162

これがそのチャンピオンマシンの空冷並列4気筒40ps/13500rpmの2RC162(写真左)と、空冷並列2二気筒23ps/14000rpmの2RC143(写真右)です。

この快挙により欧州を中心にホンダの名が世界へ轟くことになったわけですが、当時欧州では日本でいうところの原付一種が生活の一部として根付いており非常に人気でした。

モペットに消極的だった本田宗一郎も、それを見てスーパーカブを作る事になります。ちなみにそう仕向けたのは影の本田宗一郎こと副社長の藤沢武夫さんだったり。

そのことから欧州では50ccの草レースも盛んになり、世界選手権へ格上げされるのも時間の問題でした。

125/250を制覇しイケイケだったホンダとしては

「この勢いで50ccクラスも取るぞ」

と考えるのは当然な話。

世界レースが始まる前から上で言ったスポーツカブC110をベースに世界レース用のワークスマシンの製作に取り掛かっていた。

RC110

そして1962年の第一回50ccクラスに出てきたのがこの最小排気量のDOHCマシン

『RC110』

というわけです。紛らわしいですがカブレーシングのCR110ではありませんよ、今でいうRC213Vと同じファクトリーレーサーRC110です。

DOHC化するために肥大になったヘッドを覆うミッキー○ウスのようなヘッドカバーが特徴的でホンダの十八番であるカムギアトレインまで採用している。でも最初はベベルギアで進めていたそうです。

そんな世界レースの一方で国内では市販車レースが人気を呼び始めていました。

全日本クラブマンレース

市販車のレースというのはつまり公道を走れるように認可を取ったバイク。更に出場するには50台以上販売したものしか走れないという制約付き。現在でいうところのスーパースポーツによるスーパーバイクレースと同じ。

そこでホンダはマン島で勝つために作ったファクトリーマシンRC110に保安部品を付けただけのバイクを発売・・・それがこれ。

CR110スクランブラー

『CR110カブレーシング』

スタイルも国内のクラブマンレースがフラットダートだったのでスクランブラースタイル。当時の値段で17万円は同クラスの3倍の値段(今で言うと80万円程)だったのですが、それよりも公道を走れるワークスマシンが買える事が衝撃でした。

ただホンダもあくまでも市販車と認可させるためであり、これで公道を走るのは如何なものかと考えたのか生産台数はキッチリ49台だけ。

※1台はホンダが購入しフルパワーKITも別売

ちなみに保安部品が付いていないレーサータイプ(今でいうレースベース)も販売されました。公道モデルが希少すぎてCR110といえばコッチを思い浮かべる人が大半だと思います。

CR110カブレーシング

ただ一発勝負用のマシンで生産期間が短かったためこれも246台しか生産されていません。

ちなみに市販レーサーのCRではなくファクトリーマシンRCの方は最終的にRC116(1966年)まで開発され

RC116

・DOHC4バルブ

・カムギアトレイン

・並列二気筒

・14馬力/21500rpm

・9速ミッション

・車重50kg

という、もうこれ以上ないスペックを誇る50ccでホンダの世界レース全制覇に貢献しました。

RC116エンジン

シリンダーより大きいヘッド・・・まるでVツインのように見えますね。

話が反れたので戻します。

つまり要約するとCR110カブレーシングというのはRC30/45やVTR-SPといったホモロゲモデルと同じくレースに勝つために作られた最小クラスのホモロゲーションモデルという事。

ここまで説明すればもうDream50がどういう原付か分かりますよね。

ドリーム50サイド

そう、Dream50は原付スーパースポーツであるCR110をもう一度現代に蘇らせたバイクなんです。

今でこそネオレトロなカフェレーサーに見えるかも知れないけど、これは当時のレーサーの形そのままなんです。そして単にDOHC積んだ頭のおかしい原付ではない事が分かってもらえたかと。

ちなみにこれが製作されるきっかけはホンダが創立50周年という節目を迎えたから。その50周年を飾るバイクとして作られたんです。

ドリーム50とS800

ちなみに車の方ではS2000がその役目を担っていました。上のカタログにチラリと載っている車はその元となったS800。

「世界最少の4サイクル・DOHC・4バルブエンジンを再び」

を合言葉に

・穴空きラバーベルト

・当時の形そのままの長いタンク

・お椀型のシートカウル

・アルミのステップやトップブリッジ

・樹脂でなくスチールのフェンダー

・アルマイト加工ホイール

・各部バフ仕上げ

などなど大型でもここまでしないレベルで仕上げられている。

AC15カタログ写真

ただしDream50は単純に似せるのではなく

『最新技術のCR110』

というのがコンセプトでした。復興じゃないんです、復活なんです。

だからブレーキがドラムからディスクになっているし、エンジンも同じDOHCながらXR80Rの物をベースにオートテンショナー付きセミカムギアトレイン化しメンテナンスフリーにしたものになってる。

AC15E

それでも15000rpmまで刻まれているタコメーターと、驚異的な吹け上がりの軽さという単気筒50ccにあるまじき物を持っています。

ちゃんと進化しているんです。

これで32万9000円・・・まあ簡単には買えませんよね。

年間販売目標8000台は捌けなかったみたいで、その後も彼方此方で新車が残っていました。

赤銀

こちらは同年末に値段据え置きで登場したワークスマシンと同じ赤黒モデル。

こちらも1000台限定だったようですが恐らく1000台も売れていない。

そんなお世辞にも褒められたセールスを残せていないDream50ですがエンジニアは本当に楽しく作っただろうなと思います。

CR110カブレーシング

よくモンキーやエイプなどを原型を留めないほど弄ってる比較的年齢の高い人を見たことがあると思います。いわゆる4miniというジャンルで大人のミニ四駆みたいなジャンルですね。

わからない人には一生わからないジャンルですが、分かってしまうと一生ハマってしまう恐ろしいジャンル。ハマってる人は耳が痛いでしょう。

Dream50を見ると

「そういう事が大好きな人がホンダ50周年を祝うというよりそれを利用して好きに作ったんじゃないか」

という感じが凄くある。

ドリーム50にエンジン

というよりも、そうでなければ精密機械と呼ばれるセミカムギアトレインのDOHCの50ccエンジンだの、スチールフェンダーだの、オフセットタンクキャップだの、溶接痕を見せないフレームワークだのを採用する理由がない。

しかもこれで終わらないんです。現代のCR110を作るという悪ノリにも似た勢いはまだ続きます。

HRCドリーム50

ホンダの中でも先鋭集団であるHRCからKITパーツ及びKIT組み込み済マシンDream50R、そしてフルキットのコンプリートマシンDream50TT(限定)が発売。

・アルミ製フェンダー

・オイルキャッチタンク

・専用カム

・専用クランク

・ビッグキャブ

・1.4馬力UP

・レッド18000rpm

・6速クロスミッション

という一切遊びのない構成。

AR02

そしてHRCが開発するということは・・・レースですね。

『Dream/レトロ50CUP』

が開催されました。

これはDreamの開発が始まる前から決まっていた既定路線。モノクロで見るとその光景は正に1960年代レースそのもの。

ドリーム50レース

とても2000年代に行われたレースには見えないオッサンによるオッサンのためのオッサンのレース。

・・・と長いこと説明したわけですが、だからといってDream50に惚れる若者が居るかといえば残念ながら余り居ないでしょう。

『最高のオッサンほいほいバイク』

くらいの認識でもまあ構わないと思います、実際その通りなわけですから。でももう少ししたらそんなオッサン達の気持ちがわかる日が必ず来ますよ。

ドリーム50カタログ写真

ホンダは2047年に創立100周年を迎えます。気が早いですが必ず何かしら出してくるハズ。

そしてその頃はオッサンになってるでしょう。ということは今度はホイホイされる側になっているという事です。

主要諸元
全長/幅/高 1830/615/945mm
シート高 740mm
車軸距離 1195mm
車体重量 88kg(装)
燃料消費率 83.3km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 6.2L
エンジン 空冷4サイクルDOHC単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.6ps/10500rpm
最高トルク 0.42kg-m/8500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前後2.50-18(45L)
バッテリー FTR4A-BS
プラグ CR8EH-9
推奨オイル ウルトラGP(10W-40)
オイル容量 全容量1.1L
交換時0.9L
フィルター交換時1.0L
スプロケ 前12|後43
チェーン サイズ420|リンク112
車体価格 329,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

なぜなにカワサキ AV50 (AV050A) -since 1982-

AV50

「ジャストアメリカン」

カワサキ唯一となる4miniレジャーバイクで、何故かアメリカンスタイルなAV50。

立ち位置としては当時カワサキが力を入れていたクルーザーモデルZ-LTDの末っ子的な存在。

Z-LTDファミリー

デザインも兄に倣ってるわけですが小さい分カワイイですね。写真では伝わりにくいですがKSRと同じくらいでZ125より一回りほど小さいです。

でもそんな見た目に反し結構本格的な作りをしています。

AV050Aカタログ

4st50ccながら放熱に優れるアルミヘッドを採用し5馬力(後期4.3馬力)を発揮する上に、CDI点火のエンジンに四速ミッション。贅沢なチューブレスアルミキャストホイールに、メガホンマフラーとティアドロップタンクなど文句の付けどころか無い。

そんな中でも面白いのが前後40mm動く、三段階のスライド式シート。

AV50スライドシート

ちゃんとポジションもアメリカンに出来るようカワサキらしからぬ優しさ。

そんなAV50なんですが、本当に謎だらけ。

まず挙げられるのが横型4st50ccエンジン。一体なぜこのエンジンを使ったのかと言うこと。

AV50エンジン

このエンジンは恐らく本来ならタイを始めとしたアジア向け(MAX/Sunny/Joy等のカブ系)に用意された100cc前後のビジネスバイク用の物。

※追伸 AN80Aジョイがベース

AN80A

凄く広く捉えるとKSR110やZ125も親戚といえば親戚になりますが50cc版が積まれているのは後にも先にもAV50だけ。

謎に思えるのはこの時カワサキは原付エンジンを二つほど持っていたから。

Z-LTDファミリー

一つは原付にあるまじき速さを誇りヒットしたAR50/80の2stエンジン。しかもこれAV50が出た年にモデルチェンジまでされています。

「いやそれ縦型エンジンだし」

と思うかもしれませんが、横型エンジンも持っていたんです。もはや誰も覚えていない1977年登場のKV-75。

Z-LTDファミリー

知る人ぞ知るカワサキのモンキー。海外でも75MTという名で販売されていました。

これらのバイクやKSRの流れも見ると分かる通り、カワサキは小排気量は2stに拘っていました。昔あったカワサキのカブことM50もビジネスバイクなのに2stだったんですよ。

一体なぜこれらのエンジンを使わずタイ向けのエンジンをベースにわざわざ50ccにまで落とした物を使ったのか。

AV050A

憶測の域を出ませんが、残る理由は4stしかない事を考えても恐らく4stの武器である低速の粘りが欲しかったのかと。全くふざけていないレジャーバイクですね。

これはまだいいです。もう一つ浮かぶ謎。それは1982年という発売したタイミングです。

当時原付アメリカンは珍しい物ではありませんでした。原付アメリカンのパイオニアといえば1977年に出たスズキのマメタンことOR50でしょう。

マメタンとRX50

非常に人気を呼び、それを追いかけるようにヤマハからもRX50が出たんですが、マメタンは1980年、RX50は1982年を最後に生産終了となりました。

これはHY戦争があったからです。

ニューモデルラッシュと薄利多売によるシェア争いで原付市場が焦土化。勝ったホンダですら終戦するやいなや発売予定だったニューモデルを急遽取りやめる程の状態でした。

カワサキAV50

更にもう一つネガティブな要素として原付一種の最高速60km/h規制が設けられたことがあります。

上で紹介したAR50など加熱していた原付スポーツが当たり前の様に100km/h出ることによる事故増が原因で、AV50が出た年と同じ1983年から施行されました。

AV50カタログ裏面

つまりAV50は出る前から失敗が決まっていた状態で登場したわけです。これの発売に関してはユーザーよりライバルメーカーの方がビックリしたと思います。

比較的シェア争いに沈黙を守ってきたカワサキが最後の最後に出してきたレジャーバイク。もちろん売れなかったわけですが・・・謎はまだ続きます。

奇しくもAV50が出て暫くすると、当時の中型で起こっていたアメリカンブームの波及で原付アメリカンがライバルから登場し人気を呼びました。

原付市場の復調も相まって需要は高く、90年代半ばまで人気が続きました・・・が、カワサキはその需要に応えるような後継や派生を出すこともなく、AV50の一世一代でブームが来ると同事に終わらせ再び沈黙したんです。

カタログぎ表紙

いったい何故このタイミングで出したのか、いったい何故ブーム到来と同事に販売をやめたのか。

人気が出ることも、ピックアップされることも、後継が出ることも無かった以上、もう一生わからない謎だらけな原付なのがこのAV50なんです。

主要諸元
全長/幅/高 1665/695/1030mm
シート高 -mm
車軸距離 1100mm
車体重量 76kg(装)
燃料消費率 81.5km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 7.6L
エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒
総排気量 49cc
最高出力 5.0ps/9500rpm
[4.3ps/7000rpm]
最高トルク 0.4kg-m/7000rpm
[0.45kg-m/6500rpm]
変速機 常時噛合式4速リターン
タイヤサイズ 前2.75-14-4PR
後4.00-10-4PR
バッテリー 6N6-1D-2
プラグ D7EA
[C6HSA]
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40から20W-50
オイル容量 全容量0.7L
スプロケ 前14|後39
チェーン サイズ420|リンク92
車体価格 156,000円(税別)
※[]内は84年モデル以降
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

チャンピオンの重み RG500/400Γ (HM31A/B/HK31A) -since 1985-

RG500ガンマ

「HYPER SPRINTER」

ビッグレプリカシリーズの最後になるRG500Γ。

仕様地によって型式が違う

『RG500Γ(HM31A/B:通称ゴガン)』

と国内向けの

『RG400Γ(HK31A:通称ヨンガン)』

がありました。

このバイクはその凄まじさから知名度は結構ある方かと思います。

何が凄まじいって中身がファクトリーレーサーRGΓ500のレプリカだったからなんですが・・・

RG500ガンマエンジン

排気量はもちろんのことエンジンの形式からボア・ストローク比、ロータリーディスクバルブ、アルミフレームに至るまでRGΓ500とほぼ同じ。

つまりレプリカを通り越してフルコピーとも言える作りだったんです。

RGΓ500のファクトリーライダーで1980年のWPGチャンピオンだったフランコ・ウンチーニですら

「本当にそのまま出すとは・・・」

と漏らすほど。

RG400センター

先に紹介したNS400RやRZV500Rを読んでいただいた方なら疑問に感じると思うのですが

「何故スズキだけファクトリーマシン直系な市販車を出せたのか」

という話ですよね。

これはスズキだから出せた事なんです。

RG400ガンマカタログ写真

スズキというのは中の人いわく

良く言うと

「自由で柵の無い環境」

悪く言うと

「何でもしないといけない環境」

という環境にある。

これがどういう事かというとRG500/400Γのプロジェクトリーダーはカタナを含むGSシリーズやGSX-R750等を生み出された横内悦夫さんというスズキマニアなら知らぬ人は居ないレジェンドな方だったのですが、そんな横内さんを始め開発メンバーは皆ファクトリーマシン開発に携わっていた方々なんです。

要するにファクトリーと市販の壁らしい壁が無かった。

その証拠にこのRG500/400Γを作るにあたって先ず最初にしたことは、元となるファクトリーマシンRGΓ500をテスト・分析する為に持ち出した事。

RG400ガンマカタログ写真

つまりファクトリーマシンで培ったノウハウを元に、公道版RGΓ500を造ったからほとんどRGΓ500なマシンが仕上がったというわけ。

ガンマの名を冠したフラッグシップモデルである以上、頭一つ抜きん出た95馬力(逆車)という高馬力は当たり前。

RG400ガンマフレーム

・接合点を減らし美しくかつ10kgを切るほど軽量化されたアルミフレームや、砂型鋳造アルマイト加工な上に栄光の証であるΓの刻印(赤丸)まで付いているコスト度外視なステアリングヘッド等などで乾燥重量156kgという圧倒的な軽さ。

レーサーと同じようにトップブリッジより下にマウントされたセパレートハンドルも日本ではこのガンマが初です。

RG400ガンマ透視図

8km/Lを切るほどの凶悪な燃費を除けばチャンピオンマシンレプリカとして恥ずかしくないマシンとなっているRG400/500Γ。

今では200万円というプレミア価格が付いていますが、発売当時は

『RG400Γ:65万9000円』

『RG500Γ:75万9000円』

と性能を考えるとかなり安かったので予約が殺到。

500が約9000台、400が約6000台と2stビッグレプリカとしては一番台数が出ました。

プロジェクトリーダーの横内さんも採算が取れてるのかという質問には笑って誤魔化す始末。

RGガンマ

スズキは1981~1982年にWGP500(今で言うMotoGP)でチャンピオンに輝きました。

RG500Γはそんなスズキロードレースの黄金期を象徴するレーサーのレプリカでもあるわけです・・・が、スズキは1983年のロードレースをもってワークスとしての活動を休止します。

スズキWGP500

年々戦闘力を増していった中での撤退なんですが、これ勝ち逃げじゃないんです。

これはHY戦争の巻き添え(薄利多売による市場の焦土化)を受けて業績が著しく悪化したから。業績が悪化すると真っ先に切られるのがモータースポーツ部門なのはどこも同じ。

ではどうして市販化したのかというと実は前例があるから。

RG500GAMMAカタログ写真

このRG500/400の元ネタとなっているファクトリーマシンはファクトリーレプリカRG500として販売された経緯があります。

ややこしいんですがファクトリーマシンと瓜二つ(細部が少し違うだけ)のレーサーを惜しまず売ったんです。これにレース界隈は度肝を抜かれました。本来ならば門外不出なテクノロジーの塊であるファクトリーマシンを売るわけですから。

だから世界レースであるWGPではRG500が大人気だった。

RG500ウォルターウルフ

今回はそれの延長線上。それを市場でもやってのけたという話。

本当に気前がいいと言うか何というか・・・

もちろん根源にあるのはそんなWGPの姿を応援してくれた人たちに応えるため。

RG500Γ/RG400Γについて横内さんはこう仰っています。

チャンピオンマシン

「これはガンマを愛してくれる人のために作ったチャンピオンマシン。チャンピオンマシンであることを自覚して大事に乗ってほしい。」

補足:敵を減らすのではなく仲間を増やしたスズキ~マニュファクチャラー7連覇の栄光~

主要諸元
全長/幅/高 2100/695/1185mm
シート高 770mm
車軸距離 1425mm
車体重量 154kg(乾)
燃料消費率
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷2サイクル4気筒
総排気量 498cc
{397cc}
最高出力 64ps/8500rpm
[95ps/9500rpm]
{59ps/9000rpm}
最高トルク 5.8kg-m/7500rpm
[7.3kg-m/9000rpm]
{4.9kg-m/8500rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/90V-16
後120/90V-17
{前100/90V-16
後120/90V-17}
バッテリー YTX5L-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
B9ES
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量1.5L
スプロケ 前16|後40
{前15|後41}
チェーン サイズ530|リンク106
{サイズ525|リンク106}
車体価格 759,000円(税別)
{659,000円(税別)}
※[]内は輸出仕様
※{}内はRG400ガンマ
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

手負いの獅子の恐ろしさ RZV500R (51X/1GG) -since 1984-

RZV500R

「Prologue」

WGP500(MotoGPの前身)用に開発されケニー・ロバーツが1982年の途中から乗ったヤマハ初のV4ファクトリーマシンYZR500/0W61のレプリカとして登場したRZV500R。

・2スト499ccのV4エンジン
・四本出しマフラー
・四連キャブ
・アルミフレーム(ヤマハ市販車初)
・ベンチレーテッドディスクブレーキ
・ジュラルミンステップ

などなどYZR500レプリカと呼ぶに相応しい市販車とは思えない出で立ちで、第25回東京モーターショーでは話題を独占しました。

RZV500R東京モーターショー

そもそもWGP500のマシンを市販車にするということ事態が前代未聞だったので当たり前なんですが、しかしではYZR500と同じような構造なのかというと厳密には違います。

例えばリアサスペンション。

リアサスペンション

YZR500が車体上部に横向きでリンクに挟まれるように鎮座する”ホリゾンタルフルフローター式(通称:蟹挟み式)”なのに対し、RZV500Rはエンジンの真下にある”ニューリンク式モノサス”に。

もう一つ大きく違うのがV4エンジンでYZR500が”バンク角40°ロータリーディスクバルブ”なのに対し、RZV500Rは”バンク角50°クランク・ピストンリードバルブ”になっています。

YZR500とRZV500のV4

何故この差異が生まれるのかと言うと、前にも書きましたが

「レーサーと市販車は開発陣も求められる性能も別だから」

レーサーが企業秘密の塊で市販車に使うというのは流出するも同然なのが一つ。そしてもう一つはレーサーと市販車は耐久性や補機など求められるものが大きく違うからです。

そういった制約にも近いこの違いはRZV500Rでも例外ではなく、そのためこういった差異が生まれるというわけなんです・・・が、ここがRZV500Rの凄い所。

RZV500R透視図

そういった差異がいま話した部分しかなく、しかもそれはそれで市販車らしかぬとんでもないものだったからです。

市販車部門の人たちがYZR500レプリカを目指す上で絶対条件に据えていたのは

「V4の500ccでYZR500と同じホイールベース」

そこでとんでもない事になったのがいま話したエンジンで、市販車という事もありエンジンのVバンクにはエアクリーナーボックスやキャブなどレーサー以上にスペースが必要になる。

RD500LC

加えてYZR500と同じ用に後チャンバーをクロスさせ容量を稼ぐ必要もあって、前も中も後もカツカツ。

そこでこのV4エンジンは

・前二気筒はクランクケースリードバルブ

・後二気筒はピストンリードバルブ

という前後バラバラな吸気弁方式を採用しました。

前後で全く違う吸気弁というのはすわなち前後で違うエンジンを積んでいるという事と同義。しかもV型だから左右で吸気も変わってくる。

RD500LCエアフロー

つまり『吸気』『点火』『排気(掃気)』の全てがバラバラで同じセッティングをしても同じようには動かない。

それを最終的に一本のクランクに繋げて綺麗に回るニコイチエンジンにするなんて前例が無く、素人から見ても無謀とも言える話。しかもエンジンは前後で違うメンバーが開発。

実際にエンジン実験を担当された鈴木さんいわく

「全然違う単気筒を4つ繋げたような状態」

という話でバックラッシュ(ギアのズレや衝撃)それにキャブセッティングなど、普通なら諦めるよう事を休日返上で途方も無い数のトライ・アンド・エラーを繰り返した。

RZV500Rのエンジン

そうして完成した奇跡のバランスのようなエンジンがRZV500Rに積まれているこれ。

YZR500とは少し違うけどYZR500レプリカを造るためだけに開発された通常なら絶対に市販化されないようなエンジン。

ここから余談というか本題というか。

RZV500R写真

「そもそも何故こんなモデルを造ったのか」

という点について話すと、これはRZ250/350など市販車を担っていたエンジニア達がYZR500のレプリカを空想した事がきっかけ。それを知った社長がプレゼンするように命令し、実際にやったらGOサインが出てエンジニア達がウキウキで血眼になりながら開発したという話。

でもRZV500RにGOサインが出されたのは単純に凄いバイクになりそうだったからとかエンジニアが駄々をこねたからではなく、ヤマハの裏事情が大きく関係している。これが個人的にRZV500Rで一番知ってほしい部分。

RZV500Rの開発が始まる少し前にあたる1982年頃にヤマハはHY戦争といってホンダと国内シェア争いを繰り広げていました。

「目には目を歯には歯を作戦」

で最終的にヤマハは会社が傾くほどボコボコにやられてしまったんですがそんな中で一つだけ、たった一つだけ最後まで負けなかったところがあった。

『2stスポーツバイク』

です。

RZ250/350を筆頭にこのクラスだけはどれだけ劣勢になろうと人気が衰える事なく最後まで戦えていた。

これは大敗を期したことで失意のどん底にあったヤマハにとって唯一残された希望であり武器だった。

RZV500Rのカタログ

そう、だからこそヤマハは自らの存在を内外に示す象徴、文字通り旗頭になるモデルとしてRZV500Rが開発されたんです。RZV500Rがここまでとんでもない専用品の塊になったのはこれが理由。

2stスポーツのヤマハとして絶対に恥ずべきものは出せない背水の陣だったからこそエンジニア達も奮起し、結果としてYZR500レプリカであり市販車とは思えぬスペシャルなマシンを市販車が完成した。

『825,000円(現在でいえば200万円強)』

という超高価な車体価格、そして大型二輪免許が難しかった時代に500オンリーだったのもこれが要因。RZV500Rは一人でも多くの人に買って乗ってもらうためにモデルではなく、一人でも多くの人にヤマハを知らしめるためのモデルだったからこうなったんです。

カタログ写真

その事が色濃く出ているのがフレーム。

RZV500Rは海外でもRD500LC(欧州)やRZ500(カナダ)という名で発売されたんですが、海外仕様はフレームとリアサスのシリンダーが鉄でした。

RD500LCキャブフロー

というか元々RZV500Rは鉄フレームで開発が進んでいたんですが、国内仕様だけ後からアルミフレームが奢られる事になった形です。

これは国内仕様が自主規制のために排気を絞って馬力を下げる必要性がありそのぶん軽量化したかった事もあるんですが、それだけではなく

「2stスポーツのヤマハとして高くなってもいいから本物を」

という理由から。※Replica Vol.1|内外出版社より

RZV500Rの紙面

実際このモデルの登場でヤマハの2stスポーツの地位は確固たるものとなり、親しいルックスのRZ250RR(開発はコチラが後)やYSR、そしてTZ/TZRと2stスポーツ展開で成功を収め見事に再起しました。

しかし・・・最後にちょっと野暮な事を言わせてもらうと、これ本当に罪づくりなモデルなんですよ。

というのもRZV500Rが発売された時期はケニーロバーツ(ヤマハ)とフレディスペンサー(ホンダ)の激闘によりWGP500が人気絶頂だった・・・と思ったらキングケニーが突然の引退発表という頃。

ケニーとYZR500

そんな中で発売されたYZR500レプリカのRZV500R。さぞや売れた事だろうと思いきや国内販売台数は僅か3700台ほど。

理由はお分かりの通り、高額かつ厳しい限定解除が必要で簡単に買えるバイクではなく販売期間も僅か二年ほどだったから・・・これがRZV500Rの罪。

1984RZV500R

そんな少ない販売台数の裏に買いたくても買えなかったライダーを何万人も生んだんです。

そしてそれを今もなお後悔しているライダーが無数に居る。それどころかそういう人たちが居るからRZV500Rは今もなお色褪せずあろうことか当時を知らない世代にまでその存在を誇示する。

多くのライダーに指を加えて見てもらい脳裏に焼き付けて去っていったなんとも”いけず”なキングレプリカそれがRZV500Rでした。

参考:RZV500R 開発ストーリー|ヤマハ発動機

主要諸元
全長/幅/高 2085/685/1145mm
シート高 780mm
車軸距離 1375mm
車体重量 173kg(乾)
[177kg(乾)]
燃料消費率 31.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 22.0L
エンジン 水冷2サイクル4気筒
総排気量 499cc
最高出力 64ps/7500rpm
[88ps/9500rpm]
最高トルク 5.7kg-m/8500rpm
[6.75kg-m/8500rpm]
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前120/80-16(60H)
後130/80-18(66H)
バッテリー 12N5.5-3B
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BR8HS
推奨オイル オートルーブ
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.0L
スプロケ 前15|後38
チェーン サイズ530|リンク102
車体価格 825,000円(税別)
※[]内は海外仕様
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)