Zの亡霊と戦ったZ XANTHUS (ZR400D) -since 1992-

ザンザス

「ニューマッハウェーブ」

カワサキが1992年に出した今では珍しくもなんともないストリートファイターなザンザス。

エンジンはZXR400の物をベースにカム角とバルブタイミング、そしてピストンヘッドを変更して更に低速寄りにリセッティングしたもの。

それでも上限の53ps/11500rpmを発生させるのを見れば分かる通り、ローギアード化も相まって下からとてつもなく速いネイキッド。

ザンザスのエンジンとフレーム

それもそのはずで何を隠そうザンザスは

「シグナルGPでワンクラス上に勝つ」

という目標の元に開発されたバイクだから。

少し話をザンザスが出る前まで遡ると、カワサキはザンザスを出す3年前の1989年に皆さんご存知『ZEPHYR』を造り出しました。

ゼファー

「肩肘張らずに付き合えるジャパニーズスタンダード」

という狙いが見事に的中し大ヒット。

旧来のZを髣髴とさせるその姿に惚れた人は非常に多いでしょう。

そんな状況だったからカワサキはこの路線で行くのかと思ったら、ザンザスなんていうゼファーの対極なバイクを出してきたんだから驚きなわけです。

そこで少し野暮な推測、それは

ZR400D

「現代版マッハと言われているけど本当はZを造ったのでは」

という事。

というのもZというのはカワサキのフラッグシップモデルだから・・・知らない人の為にも少しZの歴史を振り返ってみましょう。

Zの始まりは川崎重工業を世界のKAWASAKIにした1972年のZ1やZ2です。

Z1

「世界初のDOHC直列4気筒」

として登場し、圧倒的な速さを持っていたことで大ヒットしました。

そしてその流れは400においても同じで、400におけるZの始まりは1979年に出たZ400FX。

Z400FX

「クラス初のDOHC直列4気筒」

というZに通ずるものをもち、年間販売台数トップに躍り出るほどの大ヒットしました。

しかしいつ頃からか

「Z=オールドネイキッド」

という少し違った方向へとZブランドは進みました。

これは道を切り開いたZ1/Z2や400FXがデザインや性能があまりにもセンセーショナルだった。

しかしZというのは元々

『究極のZ』

もっとわかりやすく言うと

『世界最高のロードスポーツ』

というのが本来のコンセプトであって、空冷2バルブ直四のオールドネイキッドを表す意味では無い。

カワサキザンザス

そんな中で出たザンザスは400としては最高のロードスポーツと言っても遜色のないネイキッド。

だから

「これこそ本来あるべきZの道では」

と思うわけです。

※追記

当時のプレスリリースや資料諸々を手に入れて読んだところ、商品企画の吉田さん曰く

「ゼファーとは違う次世代のZがイメージ」

と明言されていました。やはりザンザスの狙いはソコにあった。

1992年ザンザス

ザンザスは周囲の反対を押し切り企画会議で猛プッシュした事でGOサインを貰い始まったプロジェクト。

贅肉を削ぎ落とし機能美に徹するというデザインテーマのスケッチ(特にマフラー)を見た時は、大変な仕事になると頭を抱えたエンジン担当の渡辺さん。

シグナルGPでワンクラス上に勝つという高すぎる目標に妥協なく挑み、予定には無かった新型ラジアルタイヤを強行採用した車体担当の本多さん。

「過激なほど皆が開発努力をしてくれたお陰で完成することが出来た」

と開発部門チーフの藤井さんも仰るほど、チームは”次世代のZ”を造ることに全力だった。

ザンザスの販促ポスター

「やはりザンザスはZだった」

という推測が当たった事を喜んだものの、同時に半分ハズレとなる少し悲しくなる事も分かりました。

過激なほどの努力によって造られたザンザスでしたが、オールドネイキッドブームの前には人気も出ず、4年余りで生産終了という冷ややかな市場反応だったのは周知の事実かと思います。

ザンザスリア

しかし、この冷ややかな反応は市場だけでなく社内でもそうだったんです。

当時カワサキはゼファーシリーズでイケイケだった事に加え、後にロングセラーとなるエストレヤも同時開発中だった。

だから社内の人間も皆そっちに夢中で、誰もザンザスのプロジェクトやコンセプトに興味を示さなかった。

ZR400Dカタログ

「みんな頑張っているのに誰も興味を示してくれないのが可哀想だった」

と藤井さんも漏らすほどチームと社内の温度差は大きかったんです。

市場からも身内からも理解されなかった可哀想なバイク・・・が、時代が少し進んで10年後の2003年。

カワサキが水冷Z1000を出したのはまだ記憶に新しいと思います。

水冷Z1000

新世代のZという事でしたが、開発段階ではザンザス900という名前で進んでいました。

Zの商標が切れそうだった事からZ1000と名前を改められたのは有名な話ですが、それだけの理由ではないと思います。

だって水冷モノサスのカッ飛び系なんてそれまでのZのイメージを覆す事になるんですから。

ZR1000A

どう見てもザンザスの系譜といえる造り。

そしてミソはそんなバイクをZにするというザンザス時代では考えられない事をやったということ。

これはひとえにザンザスが持っていた”次世代のZ”というコンセプトを身内が理解してくれた事、そしてザンザスが生産終了後に再評価される流れが出来た事からでしょう。

ザンザスカタログ写真

だからこそザンザス900改めZ1000はまだストファイブームとは言い難い中で成功を収めただけでなく、遺産であると同時に亡霊でもあったZのイメージを塗り替える事も出来たのではないかと。

主要諸元
全長/幅/高 2030/745/1070mm
シート高 775mm
車軸距離 1380mm
車体重量 168kg(乾)
燃料消費率 44.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 398cc
最高出力 53ps/11500rpm
最高トルク 3.7kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70R17(54H)
後160/60R17(69H)
バッテリー YTX9-BS
プラグ CR9EK
または
X27ETR
推奨オイル カワサキ純正オイル
または
MA適合品SAE10W-40
オイル容量 全容量3.0L
交換時2.8L
フィルター交換時3.0L
スプロケ 前15|後46
チェーン サイズ520|リンク108
車体価格 629,000円(税別)
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

DUKE390 -since 2014-

DUKE390

DUKE125の構造からDUKE200の影を見抜き、見事に当てて満足していたマニア達もこの390は予知できなかった事でしょう。

まあでも無理もない話です。125cc並の車体に誰が400のエンジンを積んで来ると予想できたでしょうか。

デューク390

そんなスモールDUKEシリーズの長男になるDUKE390ですが厳密に言うと排気量は375ccです。何で390なのかといえばKTMが90という数字が好きなだけっていう単純な理由。

そしてこの390は200や250のDUKEに比べてちょっと異質。っていうかかなり異質。

DUKEシリーズのボディは全て共通なんですが、超短いホイールベースもスマートで軽量な車体も小排気量のライトウェイトスポーツだから成せた事。

トラスフレーム

トラスフレームも、というかトラスフレームというのは他のフレームよりも”載せるエンジン有りき”に一から考えて作られるフレームなので流用性が非常に乏しい。それなのに有りきのはずのエンジンを変えちゃったら元も子もない話。

この390を出すにあたって共通である車体の方も見直しが入ったんですけど、それでも375ccのエンジンが収まりきれず、KTMがどうしたかといえば・・・

DUKE390エキゾースト

干渉する部分のエキパイを凹ませるという荒業に出ました。日本メーカーなら絶対にしないような荒業というか力技ですよね。

90って数字を使いたいためか分からないですけど本当は350ccくらいで想定したのを無理矢理+25cc拡大したみたい。

そうまでして積まれたエンジンは375ccで44馬力も発揮するパワフルな物なので足回りも合わせて硬くしてるですけど、もともと上で言った通りとても400クラスの車体じゃない事と軽すぎる事で非常に玄人仕様な出来になってる。

なんか初代ファイヤーブレードであるCBR900RR(SC28)やビューエルのXBシリーズを思い出しますね。軽くてショートホイールベースでパワフルだった事からエキスパート向けでした。

どういうことか分からない人に言うと簡単に吹っ飛ぶと言う事です。

エンジン:水冷4サイクルDOHC単気筒
排気量:375cc
最高出力:
44ps/8500rpm
最大トルク:
3.56kg-m/7250rpm
車両重量:139kg(乾)

系譜図
KTMとDUKEについて

KTMについておさらい

デューク125

2011年
DUKE125

デューク200

2012年
DUKE200

デューク390

2014年
DUKE390

デューク250

2015年
DUKE250

YZF-R25/3(B3P/B6P/B7P)-since 2019-

YZF-R25

「Ride the Excitement」

二代目となるYZF-R25とYZF-R3。

・YZF-R25/B3P型

・YZF-R25ABS/B6P型

・YZF-R3/B7P型※ABSのみ

となっています。

パッと見でも分かる通り見た目が大きく変わりましたがまず変更点を上げると

・LEDヘッドライトとテールライト

・倒立フロントフォーク

・ハンドルマウント周りの変更

・液晶メーター

・外装の一新

・ラジアルタイヤ(※R3のみ)

などなどがあります。

中でも特徴的なのが倒立フロントフォークによるハンドリングの向上ですね。倒立というのは外筒のアウターチューブと内筒のインナーチューブがひっくり返した形になっているフロントフォークの事。

YZF-R25ボディワーク

キャビテーションという安定性の問題に強い事や、太いアウターチューブを長く取って車体側にマウントすることで剛性を上げる事が出来るメリット。

簡単に言うと路面からのショックによる曲げに強くなるのでブレーキング時や旋回時の安定性を上げる事が出来るわけですが、ただ剛性を上げるという事は必ずしも良い事とは限らず切り返し時などで機敏すぎて(撓ってくれないので)不安定に感じたりもする。

そこでYZF-R25/R3が行ったのがステム周りの改良。それが分かりやすく現れているのがR1に倣うように採用されたトップブリッジ。

YZF-R25トップブリッジ

ガチガチになりすぎない様にフォークを挟んでいるトップブリッジの剛性を落としてメインフレームはそのままでも良い塩梅になるように調整。

これに伴いポジションも少し見直されていて、ハンドルがブリッジの上ではなくスーパースポーツらしく下に付くようになりました。

YZF-R25ポジション比較

とはいえそこまで前傾がキツいわけでもなく先代比で-22mmとの事。

そしてもう一つ上げたい特徴が外装。

YZF-R25赤

幾枚ものカウルが重なったように見えるレイヤードカウルデザインなんですが更に凝った形になりましたね。

ちなみに空気抵抗を減らす事を重視されたようで結果として最高速が8km/hほどアップ。更にはヤマハとしては珍しいダウンフォースを稼ぐウィングまで装着しています。

YZF-R25ウィング

『クロスレイヤード ウィング』

という名前だそうです。

それにしても

「ヤマハはレイヤードカウルが好きだな」

って話なんですが、ここでちょっと小話を。

YZF-R25黒

「レイヤードカウルの狙いは何か」

という事について少し話というか考察を。

2006年ごろから始まったレイヤードカウルの魅力はもちろんそのデザイン性なんですが、これ単なる飾りというわけではなく機能面を考慮した造形をしています。

それを理解するために見てほしいのが市販車とは決定的に異なるカウル造形をしているレーサー。

レーサーのカウル

レーサーのカウルはサイドダクト(サイドカウルの切れ込み)がほとんどありません。

これはレーサーは空気抵抗を抑える事が第一なので抵抗になるサイドダクトはラジエーター(フロント)を通った風を捌く最低限に収めるのがベターだから。

しかし一方で市販車はサイドダクトが必ず大きく設けられています・・・というか設けないといけない。何故なら市販車は信号待ちなど止まる事があるから。

YZF-R3エンジン

停車時というのは風がないのですぐ熱くなります。そして風が無いということはラジエーターで熱せられた熱風は後ろではなく横に広がる。

そんな熱風を車体内に留めておくのはエンジンにとって非常にマズいので外に逃がすために大きなサイドダクトを設ける必要があるんですね。

だからヤマハもレイヤードカウルを始める前はサイドダクトをアレンジして魅せる造形にしていました。

サイドカウルの切れ込み

これはこれでカッコ良いと思うんですが空気抵抗が上がるしレーサーとも少し外れてしまう・・・そこで登場した新世代のカウル造形がレイヤードカウル。

レイヤードカウル

サイドダクトを大きく設けつつもその上から覆い隠すようにカウルを敷くことで

「サイドダクトを確保しつつ、空気抵抗を下げつつ、サイドダクトの存在感も消す」

という一石三鳥の様な事をやっている。

これがレイヤードカウルの狙い。決して自己満足的な飾りではなく機能美でもあるという話。

YZF-R25倒立フロントフォーク

さすがデザインのヤマハと言えるわけですが、R25/R3ではもう取り上げておきたい一つある・・・んですがただこれ写真や言葉では言い表すのが非常に難しい。

このモデルが出た時に

「なんか頭でっかちでノッペリしてるな」

と思われた方も多いかと思います。

そう思われた方こそ是非とも実車を見て欲しい。何故なら印象がガラッと変わるから。

YZF-R25青

これ写真のアイポイントをよく見て欲しいんですが普通に見る高さじゃないんですよね。フェンダーくらいの高さから見た写真になってる。

だから実車を見る場合もっと上から見下ろすようになるから写真とは全く違うバイクに見える。

俯瞰で見た場合

この写真でもまだ低いので再現しきれてないんですが、要するに大きなヘッドライトで少しマヌケに思えてたイメージが、実車を前にすると先鋭なレーサーのイメージに一変する。

これはもちろん狙ってやっている事で

「俯瞰で見るとヘッドライトの存在感が消える」

という意匠を更に強くしているから。だからカタログの表紙でもサイドスタンド側から撮った珍しい構図になっています。

カタログ写真

つまり傾けている時が一番カッコいいバイクというわけ。

「ワインディング中が一番カッコよく見えるデザイン」

というYZF-Rシリーズの特徴を更に研ぎ澄ませたデザインになっているんですね。

ちなみにカタログスペック的な方は先代からほとんど変わっていません・・・最後に少し個人的な事を言わせてもらうと正直このモデルは意外でした。

というのもこのクラスは今ではレースと密接に関係していて、市場だけではなくレース界隈でも盛り上がりが見られる状態。

AP250

つまりもうスーパースポーツとしての道を歩み始めているわけですね。

※R25はAP250やJP250(250ccレース)

※R3はSSP300(世界スーパースポーツ選手権)

そして正直に言うとR25/R3はスペック的に(レースベースが無いことを含め)既にレースで少し引けを取ってる状態にあります。

JP250リザルト

ところが紹介してきた変更点からも分かる通り改良は足回りと装備に特化してきた。

そういう状況下にありながら

『絶対的な速さ』

ではなく

『ドラバビリティ』

を上げてきたわけです。しかもありがたい事に車体価格もそれほど上げてない。

YZF-R3イギリス仕様

要するに

「SSに片足突っ込んでるけど、体はストリートに残した」

ということが意外という話。

これは先代の

「毎日乗れるスーパースポーツ」

というコンセプトが非常に高評価だった事が影響しているのかも知れませんが、ここで思い出すのがYZF-Rシリーズの始まりとなる1998年のYZF-R1/4XV型。

YZF-R25

元々YZF-Rシリーズというのは

『ツイスティ(ワインディング)ロード最速』

という公道で楽しむことをコンセプトとしたモデルでした。

ただ時代と共に環境が変化したことでYZF-Rシリーズはサーキット志向なバイクになっていきました。

そんな中でのYZF-R25/R3だけ明らかに方向性が違う。

YZF-R的に言うと

B3P

「ツイスティロードがサーキットよりも前に来ている」

そう考えるとこのYZF-R25/R3っていうのはYZF-Rシリーズである事は間違いないんだけど、それは今ではなく黎明期のYZF-Rシリーズに近いと言えるのではないかと。

もちろんお世辞にもYZF-R1の様に

『ツイスティロード最速バイク』

とは言えないけども

YAMAHA YZF-R25

『ツイスティロード最高バイク』

とは言えるんじゃないかと。

まあ何にせよ騙されたと思って一度見に行ってください。

主要諸元
全長/幅/高2090/730/1140mm
シート高780mm
車軸距離1380mm
車体重量167kg(装)
<170kg(装)>
[170kg(装)]
燃料消費率27.2km/L
[27.6km/L]
※WMTCモード値
燃料容量14.0L
エンジン水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量249cc
最高出力35ps/12000rpm
[42ps/10750rpm]
最高トルク2.3kg-m/10000pm
変速機常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ前110/70-17(54S)
後140/70-17(66S)
バッテリーGTZ8V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
LMAR8A-9
推奨オイルヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.1L
スプロケ前14|リア43
チェーンサイズ520|リンク112
車体価格599,400円(税別)
<642,600円(税別)>
[675,000円(税別)]
※<>内はR25ABS/B6P型
系譜図
yzf-r252014年
YZF-R25
(1WD/2WD/BS8/B0E)
yzf-r32014年
YZF-R3
(B02)
mt-25|mt-032015年
MT-25|MT-03
(B04/B05)
2019年式YZF-R252019年
YZF-R25/R3
(B3P/B6P/B7P)
2020mt-25|mt-032020年
MT-25|MT-03
(B4W/B6W)

YZF-R3(B02/BR5)-since 2014-

YZF-R3

「YOUR WORLD STARTS, WHERE R WORLD BEGINS」

R25よりもピストンのボア(内径)が8mm大きくし320ccとしたYZF-R3。

基本的に造りはR25と同じで違う所はと何故かヒールガードの肉抜きがR3では無くなっており、ギア比とタイヤ銘柄も違います。

R25とR3の違い

「R25が日本とアジア向けなのは分かるけどR3は何処向けなのか」

という話をするとR3はどちらかというと250ccという区切りがない欧米向けです。

向こうではR3のみでR25は売られていません。

これは欧州ではボアだけ変更したバイクを同時に売ってはいけない決まりがあるから。簡単に載せ替えを行わせない為でしょうね。

それより話を戻すと

YZF-R3かYZF-R25か

「結局R25とR3どっちが良いの」

って話なんですが、一つ言えることはR3がR25の上位互換かと言えば必ずしもそうじゃないということ。

ハッキリ言ってパワーはR3の方がかなりあります。80ccも多いんだから当たり前なんですが、そのぶん回転数は抑えられています。

YZF-R25|3メーター

これは簡単に言うとピストン径が大きくなると重量や面積が上がる事で首振りやデトネーションといった問題が起こるから。

そのマージンの為に1500rpmほどレッドゾーンが下げられているんですね。

つまりザックリ言うと

「回してナンボなのがR25、全域パワーなのがR3」

という感じ。

どっちが速くて乗り易いかと言えば間違いなくR3の方だと思いますが、回してナンボな小排気量スポーツ特有の面白さがあるのはR25の方でしょう。

yamaha YZF-R3

まあトドのつまり車検が許せるならR3、許せないならR25って所かと。

主要諸元
全長/幅/高 2090/720/1135mm
シート高 780mm
車軸距離 1380mm
車体重量 169kg(装)
燃料消費率 24.4km/L
※WMTCモード値
燃料容量 14.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC2気筒
総排気量 320cc
最高出力 42ps/10750rpm
最高トルク 3.0kg-m/9000pm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後140/70-17(66H)
バッテリー GTZ8V
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR8E
{LMAR8A-9}
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時1.8L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前14|リア48
チェーン サイズ520|リンク112
車体価格 585,000円(税別)
※{}内は18年モデル/BR5型
系譜図
yzf-r252014年
YZF-R25
(1WD/2WD/BS8/B0E)
yzf-r32014年
YZF-R3
(B02)
mt-25|mt-032015年
MT-25|MT-03
(B04/B05)
2019年式YZF-R252019年
YZF-R25/R3
(B3P/B6P/B7P)
2020mt-25|mt-032020年
MT-25|MT-03
(B4W/B6W)

XJR400R(4HM最終期)-since 2001-

2001年式XJR400R

「マン・マシン・コミュニケーション」

XJR400Rとしては最後の世代。

・クラス唯一となるBSRキャブ

・新設計ホイール&ラジアルタイヤ

・新設計スイングアーム

・2次空気導入装置

・MOS(モノブロック)キャリパー

・大型マフラー

その他シートやミラーや何やらで250にも及ぶ改良が加わりました。

XJR400Rカタログ写真

更に2004年モデルからは騒音規制に合わせて

・イモビライザー

・マフラー内部の変更

・イグナイター変更

・XJR1300と同じメーター

などの改良が加わっています。

XJR400R黄色

しかしながらまあ皆さんご存知と思いますがXJR400Rはこの代の2007年モデルを最後に生産終了となりました。

ちなみにコレが2007年のファイナルモデル。

XJR400Rファイナルモデル

楕円形ミラーとピンストライプ付きでした。

何故生産終了になってしまったのかというと2008年から排ガス規制が厳しくなったから。そしてその条件をクリアするのに空冷は非常に難しかったからです。

XJR400Rファイナル

なぜ空冷だと厳しいのか簡単に説明すると、空冷は水冷に比べ冷却性が悪いので燃料を濃く出して冷ます必要がある。

何故多く出すのかと言うと、気化潜熱という現象(液体が蒸発する際に周りから熱を奪う現象)を利用しているから。

しかしそうすると排ガスも汚くなっちゃうんですね。

もうひとつ問題があります。それは空冷美の象徴でもある冷却フィン。

XJR400R初代カラー

いわゆる放熱板なんですが、エンジンを回すとこれが振動して音を出してしまう。

それはつまり騒音なので騒音規制の方でも難しくなってしまう。

XJR400Rに限らず空冷が絶滅危惧種となってしまったのはこれらの理由から。

でも、これはXJR400Rがカタログ落ちする事になったキッカケであり原因ではないというのが正直なところかと・・・何故ならXJR1300はFI化されて存続したからです。

つまりXJR400Rも出そうと思えば出せた。でも終わってしまった。

それどころかヤマハは2011年に

「国内専用モデルは売れないからもう作らない。」

との声明まで発表しました。

これは正確に言うと国別専用モデルをやめてグローバルモデルにしていくという事。まあヤマハに限った話ではないですが。

そう言われたのは400ccのしかもネイキッドというのは実質日本だけの正にその専用クラスを見れば分かります。

400cc需要

これはライバルだったCB400SFの資料なんですが、十数年連続で400販売台数一位のCB400ですらこんな状況なのが現実なんです。

しかも規制強化は待ってくれないので状況は悪化する一方。

だからもう国内専用の典型である400のしかもネイキッドの更には空冷のXJR400Rは終わってしまったし、もう復活することも限りなくない。

空冷400最速

でもこれはXJR400Rに限った話では無いので良い方に捉えるとXJR400Rというのは

「空冷400ネイキッド終身最速車」

とも言えますよね。

主要諸元
全長/幅/高 2085/735/1090mm
シート高 780mm
車軸距離 1435mm
車体重量 198kg(装)
燃料消費率 31.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11000rpm
最高トルク 3.6kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54W)
後150/70-17(69W)
バッテリー YTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.8L
交換時2.0L
フィルター交換時2.4L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 609,000円(税別)
系譜図
xj4001980年
XJ400
(5M8)
XJ400Z1981年
XJ400D/Z/SP
(5L8/33M)
XJR4001993年
XJR400/S/R/R2
(4HM)
XJR400R1998年
XJR400R
(4HM中期)
XJR400R最終2001年
XJR400R
(4HM最終期)

【関連車種】
CB400の系譜GSR400の系譜ZRX/ZZR400の系譜

XJR400R(4HM中期)-since 1998-

二代目XJR400R

「Fight or Sleep!」

Rモデルに一本化された第二世代のXJR400Rの4HM9~型。

・燃料タンクが+2Lされて20L

・フォークガード

・多機能メーター

・跳ね上がったテールカウル

・マルチリフレクターテールライト

・新設計シート

などなど。

1995XJR400R

改良は多岐にわたりました。

ちなみにシルバー塗装エンジンも特徴なんですが、これは最初の数年だけで再びブラック化。

さて少し話が逸れますが、XJR400はライバル車に対しサスが硬めに設定されています。

これは早い話がXJR400Rがスポーツネイキッドだから。

先のページでも話したと思いますが、XJR400Rは”わざと”トルクの谷を設けている。これはスポーツフィーリングを高めるため。

そしてその最高のスポーツフィーリングを活かすため、最高のスポーツフィーリングを台無しにしない為にサスペンションが高めに設定されているんです。

当然ながら回さない走り方だと乗り心地が硬い、そのかわり回して走るとそれがピタッとハマる。

それを空冷エンジンの街乗りメインのネイキッドで、発売前のテストでも硬いと言われたにも関わらず譲らず貫いたわけです。

主要諸元
全長/幅/高 2085/735/1090mm
シート高 760mm
車軸距離 1435mm
車体重量 201kg(装)
燃料消費率 41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 20.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11000rpm
最高トルク 3.6kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後150/70-17(69H)
バッテリー GTX9-BS
または
TYX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.8L
交換時2.0L
フィルター交換時2.4L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 599,000円(税別)
系譜図
xj4001980年
XJ400
(5M8)
XJ400Z1981年
XJ400D/Z/SP
(5L8/33M)
XJR4001993年
XJR400/S/R/R2
(4HM)
XJR400R1998年
XJR400R
(4HM中期)
XJR400R最終2001年
XJR400R
(4HM最終期)

XJR400/S/R/R2(4HM)-since 1993-

初代XJR400

「The Fighting Spirit」

1990年後になるとレーサーレプリカブームに疲弊する人たちが多くなり、レーサーとは無縁のスタンダートバイク(いわゆるネイキッド)の時代が到来。

そうなると当然ながら各社がネイキッドを出すのがセオリーでXJR400もそんな時代によって生まれた一台。

ヤマハXJR400

なんだけど、実はXJR400の開発自体はゼファーが登場する半年前から始まってた。

だからとっても開発が大変だったと開発責任者だった猪崎さんが仰っていました。

何が大変ってゼファーというネイキッドの正解が誕生してしまったから。

初期型XJR400カタログ

「ゼファーみたいなバイクを作れ」

という風潮に社内もなってしまったわけです。

だから

「ゼファーを作らないといけないのか」

と悩んだものの結局XJR400の目指す道はそっちじゃないと考え、ベンチマークにしたのはゼファーではなくCB-1やBandit400。

要するにスポーツネイキッドの道を選んだ。

XJR400カタログ

その結果として生まれたのが空冷スポーツネイキッドのXJR400。

深く刻まれたフィンが特徴の新設計空冷エンジンに挟角64度のDOHC4バルブ。そのおかげで馬力は自主規制値いっぱいの53馬力。

味付けもXJ400のコンセプトに沿ってて、空冷にも関わらずクロスレシオミッションで”回してナンボ”な味付け。

しかもわざとパワーに谷を作り二次曲線的な加速をする特性、そしてサスもΦ41の極太フォーク。空冷スポーツを空冷らしく楽しめるように造り込まれてる。

XJR400S

翌年の1994年には後にXJRのトレードマークとなるオーリンズのリアサスが付いたSモデルを限定4,000台で販売。

更に1995年にはピストン&コンロッド、イグナイター(点火制御)やマフラーなどの見直しが入り、それと同時にRモデルが登場。

オーリンズサスのスプリングも黄色になり、ブレーキにはブレンボが奢られた上位モデルです。

XJR400R2

その勢いは留まること無く1996年にはXJR400RIIも登場。

Rモデルに加えビキニカウルと多機能デジタルメーター、更に新設計の低反発シートであるワイラックスシート(この年から全車)を装備しシート高も10mmダウン。

XJR400R2カタログ

ただあんまり人気が無かった事と、後から丸目にする人が多かった事からまず見ることはないかと・・・ライバルだったCB400SF ver.Rと同じですね。

まあそれはさておき、XJR400は削りだしトップブリッジやオーリンズなどヤマハらしい質の高さと、拳をイメージしたとされるたくましいタンクや大きなヘッドを持った空冷エンジンなどヤマハらしからぬ無骨さが人気を呼びました。

1993XJR400カタログ

正に『平成のペケジェイ』だったわけですね。

主要諸元
全長/幅/高 2075/735/1080mm
[2075/735/1090mm]
シート高 770mm
{760mm}
車軸距離 1435mm
車体重量 178kg(乾)
燃料消費率 41.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 18.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 399cc
最高出力 53ps/11000rpm
最高トルク 3.6kg-m/9500rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前110/70-17(54H)
後150/70-17(69H)
バッテリー GTX9-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
CR9E
推奨オイル ヤマルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.8L
交換時2.0L
フィルター交換時2.4L
スプロケ 前15|後45
チェーン サイズ520|リンク110
車体価格 579,000円(税別)
{609,000円(税別)}
※{}内はXJR400RII
系譜図
xj4001980年
XJ400
(5M8)
XJ400Z1981年
XJ400D/Z/SP
(5L8/33M)
XJR4001993年
XJR400/S/R/R2
(4HM)
XJR400R1998年
XJR400R
(4HM中期)
XJR400R最終2001年
XJR400R
(4HM最終期)

XJ400D/Z/SP(5L8)-since 1981-

XJ400D

クラストップの馬力で鮮烈デビューしたXJ400は一年で吸気デバイスのYICSを採用など熟成を図りました。

そしてXJ400二年目の1981年の事。

「クラスが加熱=ライバルも増える」

というのは歴史の習わしと言いますか、四メーカーの後出しジャンケン合戦といいますか、今度はスズキからGSX400Fというバイクが登場しました。

GSX400Fカタログ

クラス初となる16バルブでXJ400と同じ45馬力を発揮するスポーツネイキッド。コチラもGSR400の系譜でご紹介しましたGSR400のご先祖といいますかスズキ四気筒400ネイキッドの始まりのバイクですね。

同馬力ながらスズキは4バルブエンジン。これは負けられないとヤマハはマイナーチェンジとしてXJ400Dを発売することになります。

XJ400Dリミテッド

Dというのは上の写真のモデルがそうですが、敢えて四本出しマフラーに変更し調節機能付きリアサスという豪華装備。更にエンジンはブラックアウト化とルックスに磨きを掛けてきたわけです・・・が。

わけですが・・・当時を知っている人なら何を言いたいのかわかると思います。

1981年末期にアレが登場するわけですね。

CBX400F

そう、ホンダの究極後出しジャンケンCBX400Fです。

世に初めて四気筒を出したホンダのヨンフォア以来となる400cc四気筒ネイキッド。

しかも馬力はXJ400やGSX400Fの45馬力を超える48馬力というトップのスペック。

もうそれまでの三社の争いは何だったのかと言うほどCBXの一強に。それどころかホンダの他の新型が出てもCBXしか売れない様な状態にまでなりました。

XJ400Z

そんな状況に対しヤマハはXJ400Dをやめ、XJ400Z(水冷XJ)を出して対抗するんだけど今度はネイキッドブームが去ってレプリカブームに入っちゃったから結局XJシリーズは1984年のXJ400ZEを最後に一旦途切れることとなりました。

XJ400Z-E

確かにCBX400Fという絶対的人気を誇るライバル車がいた事もあるんだけど、XJ400の人気があまり出なかった理由を少し擁護すると

RZ250

ヤマハの場合RZ250そしてRZ350という大型キラーと呼ばれる程の性能を持ち、後のレーサーレプリカブームの土台を作ったとも言える大ヒット2stスポーツネイキッドが存在していて、ヤマハといえばRZと言うような状態だったのも大きい。

忘れてましたがXJ400にはXJ400スペシャルというモデルもXJ400Dに合わせて出ました。

XJ400スペシャル

若者のアメリカンブームに合わせたクルーザーですね。

主要諸元
全長/幅/高 2060/760/1130mm
[2145/830/1135mm]
{2100/725/1235mm}
シート高 785mm
[760mm]
{785mm}
車軸距離 1405mm
[1420mm]
{1420mm}
車体重量 180kg(乾)
{179kg(乾)}
燃料消費率 52.0km/L
[54.0km/L]
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
[13.0L]
{19.0L}
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 398cc
最高出力 45ps/10000rpm
[42ps/10000rpm]
{55ps/11500rpm}
最高トルク 3.5kg-m/8000rpm
[3.4kg-m/8000rpm]
{3.5kg-m/10000rpm}
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.00S19-4PR
後110/90-18(61S)
[前3.25S-19-4PR
後130/90-16(67S)]
{前90/90-18(51H)
後110/90-18(61H) }
バッテリー FB12A-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
D8EA/D7EA
または
X24ES-U
{D8EA}
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.9L
交換時2.2L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前16|後45
[-]
{前16|後46}
チェーン サイズ530|リンク104
[-]
{サイズ520|リンク106}
車体価格 452,000円(税別)
[465,000円(税別)]
{538,000円(税別)}
※スペックはXJ400D
※[]内はXJ400SPECIAL
※{}内はXJ400ZS
系譜図
xj4001980年
XJ400
(5M8)
XJ400Z1981年
XJ400D/Z/SP
(5L8/33M)
XJR4001993年
XJR400/S/R/R2
(4HM)
XJR400R1998年
XJR400R
(4HM中期)
XJR400R最終2001年
XJR400R
(4HM最終期)

XJ400(5M8)-since 1980-

XJ400

ヤマハの400ccとしては初の四気筒となるXJ400。ペケジェイ400とか言われてたりしましたね。

いきなり話が反れますが、XJ400を語る前にXJ400が出る前の話を少し。

400cc初の四気筒バイクといえば1971年のCB350です。そこから1974年に出たのが有名なCB400FOUR(通称ヨンフォア)、そして中型免許制度が出来たことによって生まれた1976年の398ccバージョンのヨンフォア1と2ですね。

ヨンフォア

実は四気筒400ccというのはこのヨンフォアを最後に市場から消えました。

CB400の系譜の方でも言いましたが「採算が合わない」という理由から。

それでも四気筒400ccを望む声は多く、そしてその期待に応えたのがXJ400・・・じゃなくてZ400FXなんですね。

Z400FX

輸出仕様のZ500のスケールダウン版とすることで採算性をクリアしたバイク。

「ついに400cc四気筒が復活した!しかも43馬力!しかもカッコイイZ!」

とそりゃもう話題になりました。当時38万円(今で言うと70万円弱)と結構いい値段だったんだけど、限定解除が難しかった時代なのも加わって大ヒットしました。

そしてそんなZ400FXから遅れること一年で登場したのがこのXJ400。

5M8

四気筒ながらコンパクトに造られた幅、電子進角フルトランジスタ点火、燃料計、SUキャブにバンク角を稼ぐために屈折させた4-1-2の集合管などなど。

そのおかげでZ400FXの43馬力を超える45馬力で登場という血も涙もない後出しジャンケン。

性能を追い求めるあまり、上で言った様にお金かかりまくりでZ400FXより3万円も高い41万円。

性能が良ければ高くても売れる精神のヤマハらしいですね。

主要諸元
全長/幅/高 2060/760/1130mm
シート高 785mm
車軸距離 1405mm
車体重量 176kg(乾)
燃料消費率 42.0km/L
※定地走行テスト値
燃料容量 16.0L
エンジン 空冷4サイクルDOHC四気筒
総排気量 398cc
最高出力 45ps/10000rpm
最高トルク 3.5kg-m/8000rpm
変速機 常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ 前3.00S19-4PR
後110/90-18(61S)
バッテリー FB12A-A
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
D8EA/D7EA
または
X24ES-U/X22ES-U
推奨オイル
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.9L
交換時2.2L
フィルター交換時2.5L
スプロケ 前16|後45
チェーン サイズ530|リンク104
車体価格 432,000円(税別)
系譜図
xj4001980年
XJ400
(5M8)
XJ400Z1981年
XJ400D/Z/SP
(5L8/33M)
XJR4001993年
XJR400/S/R/R2
(4HM)
XJR400R1998年
XJR400R
(4HM中期)
XJR400R最終2001年
XJR400R
(4HM最終期)

SR400(RH16J)-since 2018-

RH16J

「SRで、あり続ける。」

再び規制によって生産終了を迎えつつも復活してきた七代目にあたるRH16J/B9F型。

こちらは40周年を記念して出されたSRの十八番である40周年モデルで、SRではお馴染みとなるサンバースト塗装と真鍮エンブレムになっています。

40周年モデル

昭和53年に生まれから40年、つまり平成の世を横断して令和になっても存続という偉業を達成した事になります。

最初にこの七代目モデルの変更点を上げると

・キャタライザーの改良

・キャニスターの装着

・電装/灯火系

・新設計マフラー

・新型ECU

などなど平成28年度(ユーロ4)排ガス規制への対応がメインとなっています。見分ける際に分かりやすいのがキャニスターですね。

キャニスター

これは蒸発ガスを大気放出させず吸収するためのもの。

キャニスターについてはトリッカーの方でしたので省きますが、この七代目SR400はセローと同じく2018年10月からのABS義務化に該当しないよう9月に滑り込むようにリリースされたモデルなので最長でも2021年9月までの販売になると思われます。

SR400の規制

要するに2年程度のモデルライフである事がほぼ確定しているわけですね。

だからもしも

「リアがディスクブレーキになるのは嫌だ」

と思ってるのならこのモデルがラストモデルになるのでお急ぎを。

もちろんそう思ってない人にもSRが欲しいなら間違いなく”買い”といえます・・・何故なら規制を逆手に取って激変した部分があるからです。

2018年式RH16J

SRに興味のある方ならこの2018年型に対してこういう意見を耳にした事があると思います。

「新型は音が凄く良い」

これは騒音規制の測定方式が(欧州準拠に)変わったことで実質的に少し緩和された事が理由の一つにあります。

それに伴い七代目SRはマフラーの内部構造が変更され排気口も先代よりも一回り大きくなっています。

2018年式SR400のマフラー

こうして抜けが良いマフラーにした事で音が格段に良くなった・・・という単純な話ではないのがクラフトマンシップ溢れるSRらしいところ。

前モデルにこの新型マフラーを付けたら同じ音になるのかというと残念ながらならないんです。というのも今回のモデルチェンジにおける最も大きい変更点はマフラーだけではなくバイクの脳にあたるECUにあります。

RH16JのECU

今回の排ガス規制ではOBD1(異常を知らせる機能)を装着する必要があり、そのためECUを処理能力の高いモデルに変更する必要があった。

これによりそのままでは入らないほどの大きさとなりレイアウトとシートサイドカバーを相変わらず変わっていない様に変えているんですが、同時にエンジンをこれまで以上に事細かに制御出来る様になったわけです。

そのおかげでこの七代目は中回転域にあったトルクの谷を解消する事が可能になったと同時に、高い演算能力と各種センサーを活用して”意図的な制御”を仕込むことが出来た。

2018年式SR400のエンジン

「僅かに燃料を多く吹いて僅かに点火時期を遅らせる」

という制御です。

燃料が余る状態で点火時期を遅らせるとまだ燃焼中だったり燃焼されず排気されるガスが出てきます。これは暖気中などに近い状態。

そしてそのまま排気されたガスはエキゾースト内で燃焼するんですが、燃焼するということは音や振動が出る。

RH16Jのマフラー

そう、これが良い音の正体なんです。

規制で必須となった高性能なECUを活用する形で『鼓動感』を出している。

「昔のバイクの方が音が良かったな」

という声を聞く事があると思いますが、この七代目は精密な制御によってそんな

『ちょっと燃調がファジーだったキャブ時代』

に限りなく近い音を出す様に出来たんです。

SR400キック

「精密な曖昧さで奏でる鼓動と音色」

これが七代目最大の変更点であり評判を呼んでいる魅力です。

主要諸元
全長/幅/高 2085/750/1100mm
シート高 790mm
車軸距離 1410mm
車体重量 175kg(装)
燃料消費率 29.7km/L
※WMTCモード値
燃料容量 12.0L
エンジン 空冷4サイクルSOHC単気筒
総排気量 399cc
最高出力 24ps/6500rpm
最高トルク 2.9kg-m/3000rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前90/100-18(54S)
後110/90-18(61S)
バッテリー GT4B-5
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
BPR6ES
推奨オイル ヤマハルーブ
プレミアム/スポーツ/スタンダードプラス
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量2.4L
交換時2.0L
フィルター交換時2.1L
スプロケ 前19|後56
チェーン サイズ428|リンク130
車体価格 530,000円(税別)
※40thは+110,000円
系譜図
XT500 1976年
XT500
(1E6)
2H6 1978年
SR400(2H6)
SR500
(2J3)
3X6 1979年
SR400/SP
(3X7/3X6)
SR500SP
(3X4)
34F 1983年
SR400/SP
(34F/34E)
SR500/SP
(34A/33Y)
1JR 1985年
SR400
(1JR/3HT)
SR500
(1JN/3GW)
RH01 2001年
SR400
(RH01J)
RH03 2010年
SR400
(RH03J)
RH16J 2018年
SR400
(RH16J)

【関連車種】
GB250CLUBMANの系譜ST250の系譜ESTRELLAの系譜