悪いのは人か技術か GTS1000/A (4BH/4FE) -since 1993-

GTS1000

「Ride into the future.」

ヤマハが1993年に出したGTS1000/4BHとABS仕様のGTS1000A/4FE型。

当時フラッグシップだったFZR1000をベースにEFI(電子制御燃料噴射装置)と日本車として初となる三元触媒を採用した欧州向けのヨーロピアンツアラーです。

GTS1000オプション

これは欧州市場でロングツーリングまで何でも熟せる一台が求められていた事と、環境破壊が問題視されていた事を鑑みて造られた背景があります。

そんなGTS1000最大の特徴は何と言ってもリアだけでなくフロントもスイングアーム方式を採用していること。

デザインスケッチ

『ニューフロントサスペンション』

というのが公式名なんですが・・・コレの狙いについて怒られそうなくらい簡略化して長々と。

我々がよく知るフロントサスペンションは望遠鏡の様に伸び縮みするテレスコピック方式と呼ばれるもので

「サスペンションがステアリングも兼ねている」

というのが特徴です。

GTS

しかしこれには少しいただけない問題がある。

サスペンションがステアリングを兼ねているという事は

「サスペンションの動きがそのままステアリングにも影響する」

という事でもあるからです。

分かりやすいのはノーズダイブというフロントブレーキを強く握ると前のめりになってしまう現象。あれはフロントフォークが縮むから起こる現象なんですが、それが起こるとステアリング(キャスター角)が立ってしまう。

キャスター角というのはザックリ言うとフロントフォークの角度で、これが直進安定性に大きく関係しています。

寝ているほど(トレール量が大きくなり)直進安定性が増すし、反対に立っていると安定しない。だからクルーザーなんかは寝かせ気味な一方で、スーパースポーツなどは直進安定性がコーナリングの邪魔をしないよう立ってる場合が多い。

キャスター角とトレール

問題になるのはサスペンションの動き(ノーズダイブなど)でこの要素が大きく変わってしまうという事。急ブレーキをかけるとハンドルが左右に切れ込んで転倒してしまうのもこのキャスター角(トレール量)の急減によるものが大きいんです。もちろんホイールベースも。

GTS

対してスイングアーム式というのはどんなに強くブレーキをかけてもそれらの変化がほとんど起こらない。なぜならステアリングとサスペンションが分離されているから。

テレスコとスイングアーム

どれだけブレーキをかけようがドッタンバッタンしようが車体のディメンションは大きく変わらないんです。

それをよく現してるのがオメガシェープドフレーム(別名 オメガクレードル)と呼ばれる独特な形をしたフレーム。

オメガフレーム

メインフレームが下側だけでハンドルまで繋がっていないのが分かると思います。

これはテレスコピックがトップブリッジ(フロントフォークの一番上)で荷重を受けるのに対して、スイングアーム式はピボット(フレームの下側)部分だけだから。分かりやすく言うとフロントもリアと同じ様になっているということ。

オメガフレーム

「じゃあどうやってハンドル切るの」

という話なんですが、ビモータのテージなど一般的な前後スイングアーム式のバイクはセンターハブステアリングなんですがGTS1000は違います。

GTS1000のステアリングはユニバーサルジョイントとボールベアリングを用いたボールナット式です。

GTS1000ステアリング

早い話が一昔前の四輪に使われていた方式。

サスペンションとステアリングが分離しててステアリングはボールナット式・・・つまり四輪から取ってきて90度回して付けている形なんですね。

そんなGTS1000なんですが一代限りで終わってしまった事からも分かる通り、市場評価はお世辞にも賛美で溢れてたものではありませんでした。本当に鳴り物入りだったんですけどね。

始まりは1986年アメリカのサスペンションメーカーRADDがFZ750のエンジンをベースにフロントをスイングアームにしたMC2というモデル。

RADD MC2

ヤマハの出資で開発されたGTS1000プロトタイプと言えるモデルです。

そこから3年後の1989年東京モーターショーにMorpho(モルフォ)というコンセプトモデルを展示。

コンセプトモデルモルフォ

それはそれは注目の的で翌年の1990年にはMorpho2に発展。覚えている人も多いのではないでしょうか。

モルフォ2

そして1993年にGTS1000/Aとして市販化された。

絵空事だと言われていたショーモデルが本当に市販化された瞬間だったわけですが、それにも関わらず評判はそれほど良くなかった・・・何故か。

GTS1000カタログ写真

「テレスコピックじゃなかったから」

です・・・なんだか矛盾しているように聞こえますよね。

「テレスコピックじゃなかったら反響が良かったんだろ」

って。でもこれが受け入れられなかった。

スイングアーム式はハンドルの切れ角を稼げない事を除けばテレスコピック式より優秀とも言われています。

サスペンションの動きにディメンションは影響されないし、フレームの下の方で受け止めるからステア周りの剛性も要らずフレームやエンジンの自由度も高い。

でもそれがダメだった。

『あまりにも優れている構造』

だったからダメだったんです。

4FE

スイングアーム式はこのライトアップされている下部ですべて受け止め抑え込んでくれます。

それが運転するライダーに何をもたらすか

『接地感の希薄さ』

をもたらすんです。キャスター角が変わらないのはもちろんのこと

・ロードノイズ
・フレームの捻じれ
・サスペンションのキックバック

などなどテレスコピックだとライダーにまで伝わってくるものが、全てライダーのはるか下部で完結してしまい伝わってこない。

四輪のフロントタイヤがバイクほど正確に感じ取れないのと一緒です。箸で例えると分かりやすいかもしれないですね。

接地感の差

一般的な箸とリンクを介して手に直接的な荷重が掛からないように突き出ている箸、どっちが箸先を正確に感じやすいか一目瞭然だと思います。

スイングアーム式にもこれが当てはまり、乗り手を不安にさせるんです。人によっては平衡感覚を失う事もある。バランスを取らないといけないバイクにとってこれは致命的。

ちなみに昔、GTS1000オーナーの方から

「いやそんなに乗り辛くないよ」

っていう声を頂いた事があります。

それもそのはず実はGTS1000はピボットに差異を付けストロークに応じてキャスター角が変化する意図的な設計をしているんです。

理由はもちろん

『テレスコピックに近い挙動』

になるようにです。

他にも130/60というワイドタイヤをフロントに履かせる事で接地感を増すなどの創意工夫がされていました。

GTS1000Aカタログ写真

ただそこまでしてもテレスコピック並の接地感を得ることは出来ず

「ふわふわしてる」

「丸太に乗ってるよう」

「何も応答がない」

「フロントが信用できない」

というインプレが多々聞かれ、次世代を担うフロントサスペンションだと認められる事はなかったんです。

GTS1000はショーモデルで拍手喝采を浴びるフロントスイングアームの理想とその現実をまざまざと見せつけたモデルじゃないかなと思います。

カタログ写真

でもこの問題の原因って何処にあるんでしょうね。

接地感を希薄にしてしまうスイングアーム式という構造が悪いんでしょうか、それともテレスコピックじゃないと感じ取れない人間の感性が悪いんでしょうか。

主要諸元
全長/幅/高 2165/700/1255~1320mm
シート高 795mm
車軸距離 1495mm
車体重量 246kg(乾)
[251kg(乾)]
燃料消費率
燃料容量 20.0L
エンジン 水冷4サイクルDOHC4気筒
総排気量 1002cc
最高出力 100.6ps/9000rpm
最高トルク 10.8kg-m/6500rpm
変速機 常時噛合式5速リターン
タイヤサイズ 前130/60ZR17
後170/60ZR17
バッテリー YTX14-BS
プラグ
※2つの場合は手前が、3つの場合は中央が標準熱価
DPR8EA/DPR7EA
または
X24EPR-U9/X22EPR-U9
推奨オイル SAE 10W/30~20W/40
オイル容量
※ゲージ確認を忘れずに
全容量3.2L
交換時2.5L
フィルター交換時2.7L
スプロケ 前17|後47
チェーン サイズ532|リンク118
車体価格
※[]内はABS仕様
系譜の外側
DN-01

拒絶された渾身のATスポーツクルーザー
DN-01
(RC55)

gts1000

悪いのは人か技術か
GTS1000/A
(4BH/4FE)

750カタナ

カタナと名乗れなかったカタナ
GSX750S
(GS75X)

ザンザス

Zの亡霊と戦ったZ
XANTHUS
(ZR400D)

CBX400カスタム

30年経ってCBXと認められたアメリカン
CBX400CUSTOM
(NC11)

BT1100

イタリア魂が生んだもう一つのMT
BT1100 BULLDOG
(5JN)

GSX1300BK

本当の怪物は誰も求めていなかった
GSX1300BK B-KING
(GX71A)

ZR750F/H

死せるザッパー生ける仲間を走らす
ZR-7/S
(ZR750F/H)

ホンダCBX1000

大きすぎた赤い夢
CBX1000
(CB1/SC03/06)

GX750/XS750

ブランドは1台にしてならず
GX750
(1J7)

スズキGAG

SUZUKIのZUZUKI
GAG
(LA41A)

Z1300

独走のレジェンダリー6
Z1300/KZ1300
(KZ1300A/B/ZG1300A)

NM-4

アキラバイクという非常識
NM4-01/02
(RC82)

FZX750

大きな親切 大きなお世話
FZX750
(2AK/3XF)

GSX1400

踏みにじられたプライド
GSX1400
(GY71A)

750Turbo

タブーを犯したターボ
750Turbo
(ZX750E)

NR750

無冠のレーシングスピリット
NR
(RC40)

TRX850

現代パラツインスポーツのパイオニア
TRX850
(4NX)

GS1200SS

嘲笑される伝説
GS1200SS
(GV78A)

ゼファー1100

ZEPHYRがZEPHYRに
ZEPHYR1100/RS
(ZR1100A/B)

NS400R

狂った時代が生んだ不幸
NS400R
(NC19)

RZV500R

手負いの獅子の恐ろしさ
RZV500R
(51X/1GG)

RG500Γ

チャンピオンの重み
RG500/400Γ
(HM31A~B/HK31A)

AV50

なぜなにカワサキ
AV50
(AV050A)

ドリーム50

五十路の夢
DREAM50
(AC15)

フォーゲル

楽し危なし
POCKE/VOGEL
(4U1/7)

ストリートマジック

シンデレラスクーター
TR-50/TR-110
(CA1L/CF12)

Z750ツイン

鼓動と振動
Z750TWIN
(KZ750B)

フォルツァ125

市民権の象徴
FORZA125
(JF60)

SRX4/6

決して多くない人たちへ
SRX-6/SRX-4
(1JK/1JL~)

DR-Z400SM

最初で最後のフルスペック
DR-Z400S/SM
(SK43A/SK44A)

ZX-7R/RR

問題児レーサー
ZX-7R/RR
(ZX750P/N)

RC213V-S

2190万円の妥協と志向
RC213V-S
(SC75)

YZF-R7

7と1でWE/R1
YZF-R7
(5FL)

バーグマンFCS

エコの裏で蠢くエゴ
BURGMAN FCS
(DR11A)

エリミネーター750/900

名は体を現す
ELIMINATOR750/900
(ZL750A/ZL900A)

モトコンポ

こう見えて宗一郎のお墨付き
MOTOCOMPO
(AB12)

TDR250

聖地突貫ダブルレプリカ
TDR250
(2YK)

グース

決めつけられたシングルの正解
Goose250/350
(NJ46A/NK42A)

Z650

小さく見えるか大きく見えるか
Z650
(KZ650B)

X4

単気筒
X4
(SC38)

SDR200

軽く見られた軽いやつ
SDR
(2TV)

チョイノリ

59,800円に込められた思い
choinori
(CZ41A)

ゼファー750

復刻ではなく集大成
ZEPHYR750/RS
(ZR750C/D)

PS250

モトラリピート
PS250
(MF09)

DT-1

冒険という感動創造
トレール250DT1
(214/233)

Vストローム250

二度ある事は三度ある
V-STROM250
(DS11A)

エリミネーター250

周期再び
ELIMINATOR250/SE/LX
(EL250B/A/C)

CX500ターボ

打倒2ストのブースト
CX500/650TURBO
(PC03/RC16)

YA-1

原点進行形
YAMAHA125
(YA-1)

rf400r

RでもFでもない
RF400R/RV
(GK78A)

250-A1

半世紀を迎えた吉凶のライムグリーン
250-A1/SAMURAI

Vツインマグナ

氷河期 of Liberty
V-TWIN MAGNA(MC29)

TDR50

RALLYってしまった原付
TDR50/80(3FY/3GA)

SW-1

オシャレは我慢
SW-1(NJ45A)

ボイジャー1200

可愛い娘は旅をせよ
Voyger XII
(ZG1200A/B)

WING

Twist and Shaft
WING
(GL400/GL500)

ビーノ

その愛嬌は天然か計算か
VINO
(SA10J/SA26J/SA37J/SA54J/AY02)

DRビッグ

爪痕を残し飛び去った怪鳥
DR750S/DR800S
(SK43A/SR43A)

テンガイ

愛おぼえていますか
Tengai
(KL650B)

CB92

雪辱のSSその名はシービー
CB92

XT400E

本当の名前は
ARTESIA
(4DW)

ジェベル250

ツールドジェベル
DJEBEL250/XC/GPS
(SJ44A/SJ45A)

KV75

混ぜるなキケン
75MT/KV75
(KV075A)

ダックス

泥遊びなら任せろ
DAX
(ST50/ST70/AB26)

ランツァ

単槍匹馬のラストDT
LANZA
(4TP)

GT750

水牛であり闘牛である
GT750
(GT750J~N)

Daytona T595/955i -since 1997-

daytona T595

さてカワサキの技術提供もありノウハウを吸収したトライアンフが蓄積した自分達のノウハウで設計し作り上げたスーパースポーツがこのT595と955i

アルミフレームや片持ちスイングアーム等、トライアンフ初となる技術が詰め込まれている。

750&1000→900&1200→595&955?何で急にスケールダウン?

と思うことでしょう。

でも実はT595は595ccではなく955ccも排気量があります。

じゃあ955iはというと955ccです。

「・・・うん?」

ですよね。

最初はT595として売っていたんですよ。でも消費者であるライダー達から

「955ccなのにT595とか紛らわしいぞー!」

って声が相次いだことで955iに改名されたんです。だからT595も955iも同じバイク。

daytona955i中期

上が955i前期モデルで下が後期モデル。

daytona955i後期

つまり最初期がT595でその後955iに改名され、2002年と2005年にマイナーチェンジ。

実は675が登場する2006年までトップモデルとして生産されました。

エンジン:水冷4サイクルDOHC3気筒
排気量:955cc
最高出力:
130[149]ps/10700rpm
最大トルク:
9.1[10.2]kg-m/8200rpm
車両重量:192[191]kg(乾)
※[]内は955i後期モデル

系譜図
タイガーT100Rデイトナ

1967年
Tiger 100T/R Daytona

デイトナ1000

1990年
Daytona 750/1000

デイトナ900

1993年
Daytona 900/1200

デイトナT595

1997年
Daytona T595/955i

デイトナ600

2002年
Daytona 600

デイトナ650

2005年
Daytona 650

デイトナ675前期2006年
Daytona 675/SE(前期)
デイトナ675R後期

2009年
Daytona 675/SE/R(後期)

デイトナ675ABS

2014年
Daytona 675 ABS/R

Daytona 900/1200 SuperⅢ -since 1993-

デイトナ900

二年後さらに排気量を上げスポーツ性を増した900と1200になったデイトナ。

スペックを見ると当時一世を風靡していたZZR1100と同等の物があるけど実測ではちょっと違ったみたい。

このモデルで特筆すべきは「スーパー3」と呼ばれる限定仕様のモデルでしょう。

デイトナ900スーパー3

見た目の違いはブラックアウトされたマフラーとカーボンフェンダー、そして同じくブラックのラインが入ったテールカウルにSUPER3というロゴが入ったことくらい。でも中身は別物。

あの有名なF1エンジンビルダーのコスワースが手を加えたチューニングマシンで113馬力を叩き出すエンジンになっている。

限定500台でその内、日本に入ってきているのは僅か20台足らずだったとか。

トライアンフすら中々見ないのにこんな超限定車を見る機会は先ず無いでしょうね。

エンジン:水冷4サイクルDOHC3[4]気筒
排気量:885[1180]cc
最高出力:
113[149]ps/9500rpm
最大トルク:
8.3[11.7]kg-m/8000rpm
車両重量:211[228]kg(乾)
※[]内は1200

系譜図
タイガーT100Rデイトナ

1967年
Tiger 100T/R Daytona

デイトナ1000

1990年
Daytona 750/1000

デイトナ900

1993年
Daytona 900/1200

デイトナT595

1997年
Daytona T595/955i

デイトナ600

2002年
Daytona 600

デイトナ650

2005年
Daytona 650

デイトナ675前期2006年
Daytona 675/SE(前期)
デイトナ675R後期

2009年
Daytona 675/SE/R(後期)

デイトナ675ABS

2014年
Daytona 675 ABS/R

Daytona 750/1000 -since 1990-

デイトナ750

次にトライアンフがデイトナと名の付いたバイクを出したのは何と20年以上も経った後だった。

コレには勿論ワケがある。

70年代に入るとそれまで小排気量だけだった日本メーカーが大型バイクに進出し始めた。

すると大型バイクといえばトライアンフかハーレーだった情勢も大きく変わり、「安い」「速い」「壊れない」と三拍子揃った和製大型バイクにどんどんシェアを奪われた。
レースでも結果を残せず、アメリカにおいてもハーレー救済策として高い関税が敷かれるという不運が重なり経営危機を迎え遂に破綻しました。

しかし実業家がそんなトライアンフを拾い上げ「ボンネビルコヴェントリー」と社名を改め再起・・・でもトライアンフの方が知名度も歴史もあると言うことで結局すぐに社名もトライアンフに戻りました。

デイトナ1000フォア

そしてそんな再起をかけ作った車種の一つがこの「デイトナ750トリプル」と「デイトナ1000フォア」です。

デイトナの名を復活させるだけありトライアンフとしては初となるフルカウルスポーツになります。
750は三気筒で1000は四気筒。

勘の良い方はこの750や1000の造り見て何か違和感を覚えると思います。

というのもこのデイトナ750と1000はカワサキの技術提供を受けて作られたバイクなんです。

トライアンフプラットフォーム

サイドカムチェーンのエンジンやダイヤモンドモノコックフレーム、チェーンアジャスターなんてカワサキお得意のエキセン式そのままですね。

この頃のトライアンフはこのカワサキの助力で作ったプラットフォームでほぼ全車種を作っていました。徹底的な部品の共有化「モジュラーコンセプト」というやつです。

歴史を見ると分かりますが、トライアンフは世界大戦の前から目黒製作所(詳しくはWの系譜へ)という日本の大型バイクメーカーと繋がりを持ってたから、カワサキに目黒製作所が吸収合併された後もパイプが残っていたんでしょうね。

エンジン:水冷4サイクルDOHC3[4]気筒
排気量:749[998]cc
最高出力:
97[120]ps/8750[10500]rpm
最大トルク:
6.7[9.0]kg-m/8500rpm
車両重量:218[235]kg(乾)
※[]内は1000

系譜図
タイガーT100Rデイトナ

1967年
Tiger 100T/R Daytona

デイトナ1000

1990年
Daytona 750/1000

デイトナ900

1993年
Daytona 900/1200

デイトナT595

1997年
Daytona T595/955i

デイトナ600

2002年
Daytona 600

デイトナ650

2005年
Daytona 650

デイトナ675前期2006年
Daytona 675/SE(前期)
デイトナ675R後期

2009年
Daytona 675/SE/R(後期)

デイトナ675ABS

2014年
Daytona 675 ABS/R

V11シリーズ -since 1999-

V11

人気を博した1100Sの後継モデルとして登場したのがV11シリーズ。

先代1100Sの流線的なカウルをまとったデザインは何処にいったのかと言いたくなる変貌となりました。

フレームこそ1100スポルトがベースだけど、エンジン・ミッションは新設計で若干コンパクトになりました。そのおかげでそれまでの大きく重厚だったイメージから軽快なイメージへと変貌。

さて、話が続かないので脱線しますが・・・

モトグッツィのバイクは今まで製造されてきたバイクの中でも非常に特異というか特徴のあるバイク。その理由は皆さんも見て分かる通りV型エンジンが縦に積まれている事にあります。

V11エンジン

エンジンが縦に積まれると一体どういう違いが生まれるのかというと横に比べて左右に対するジャイロ効果が小さくなります。

ジャイロ効果というのは

「自動回転する物体が姿勢を乱されにくくなる現象」

回ってるコマ(今はベイブレードというんだろうか)を横から突っついたりぶつけ合っても倒れずに真っ直ぐに戻ろうとしますよね。アレがジャイロ効果。

中国駒(ディアボロ)の方が分かりやすいか。

ジャイロ効果

回し続けるかぎり落ちないのは正にジャイロ効果によるもの。回転速度が上がれば上がるほど安定します。プロがやってるのを見ると分かりますが、色んな動きをしつつも駒の回転は止めずにもの凄い速さで回してます。

そしてこれはバイクでも働いてる。その部分は主にホイール。

ホイールジャイロ

そしてもう一つがクランクシャフト。

クランクシャフトジャイロ

ジャイロ効果は重ければ重いほど、直径が大きければ大きいほど、また回転が速ければ速いほど力が強くなります。因果なものでホイールとクランクというのはバイクの部品の中でもかなり重い部分。

直四のコーナリング中を想像すると分かりやすいと思います。

バンクとジャイロ

バイクにとって曲がるという事はバンク(傾ける)ということなので

「車体が傾く=クランクシャフトも傾く」

という構図になるわけなんですが、この状態でアクセルを開けるという事は”クランクシャフトに強い回転力を与える”という事になるわけです。

そうするとジャイロ効果が増すのでバイクが起きようとする。アクセルを開けるとマシンが起きるというのはこういう原理から。

ジャイロとコーナリング

「バイクはコーナリング時が苦手」

といわれるのもこういった理由があるからです。まあ事はそう単純ではないんですがバイクは真っ直ぐ・・・そんな事よりモトグッツィの話しろって話ですが、勘の良い方は言いたいことがもう分かると思います。

コッパイタリア

モトグッツィはV型を縦に積んでるわけです。縦に積んでいるという事はクランクも縦。つまり寝かせようが直進しようがクランクの横方向のジャイロ効果が働かない。

これはBMWの水平対向もそうですが、モトグッツィの場合は更にOHV空冷Vツインが相まってが非常に独特な乗り味を出してるというわけ。MotoGPの車両が逆クランク(クランクが逆回転)なのもホイールのジャイロを少しでも減らすため。

このジャイロ効果が弱いと

“クセがある”という人もいれば”自然体に限りなく近い”という人もいる。

モトグッツィの魅力といえば洗練されたデザインばかりが取り沙汰されるけど、実はこういった乗り味に魅了されている人が多いんです。

系譜図
モトグッチ

1921年
MOTO GUZZIというメーカーについて

初代V7

1966年~
V7 series

ル・マン

1976年~
Le Mans series

デイトナ1000

1992年~
DAYTONA1000

V11

2001年~
V11 series

V7レーサー

2015年~
V7-2/V9 series

DAYTONA/1100SPORTシリーズ -since 1991-

DAYTONA RS

ルマンというスポーツモデルで頑張っていたモトグッツィだったけど日本メーカーやドゥカティによる高性能化の激しい波に抗いきれなくなっていた。そこで対抗すべく作られたのがこの1000DAYTONAシリーズ。

これはMOTO GUZZIの車両(R/Vレーサー)でアメリカのレースをプライベーターとして戦っていたジョンの協力によって生まれたレーサー車両。

結論から言うと

1990 1000Daytona

1992 1000Daytona-FI

1996-99 1000Daytona-RS

と続いたわけですが、あまり台数も出なかった(出さなかった?)数少ないOHCモトグッツィだったのですが、MOTO GUZZIとしては転換期のバイクでもあり進むべき道が決まった特筆すべきバイクでもあります。

その見た目からしても分かる通り今までのグッツィの流れから逸脱した作り。

エンジン

エンジンはそれまでのOHVから4バルブOHCに改められ、カウルデザインも流動的な物に。更にパラレバーに加えフレームもバックボーンタイプへと変更。横置きVツインエンジンくらいしかソレまでのモトグッツィらしさがない異質なモデル。

OHC

レースでも勝てる車両として開発されたわけなんだけど市場からは

「こんなのMOTO GUZZIじゃない」

という声が多く聞かれたそうです。

そんな声から作られたのがDaytona1000の実質的な後継となる1994年からの1100スポルトシリーズ。

1100スポルト

後のV11のご先祖様であり歴代スポルトシリーズでも非常に人気の高いモデル。

フレームや足回りは先の1000Daytonaをベースにしつつもエンジンを4バルブOHCから2バルブOHVへと変更。

なんだか先祖返りな気がするけど、これはOHCだった1000Daytonaがあまりにもヒュンヒュン回ることへの違和感を覚える人が多かったから。

モトグッツィはもともとカリフォルニアの流れからアメリカで非常に人気のあるメーカーだったんだけどそれでもOHCは駄目だったんだね。アメリカ人のOHVへのこだわりっぷりは本当に凄いね。

だからこの1100スポルトは非常にドコドコといわせる味のあるエンジンになってる。

1100スポルトエンジン

結局この一件がMOTO GUZZIの方向性を決めたんじゃないかと思います。

その後のラインナップやDAYTONA1000の後釜になり得たMGS-1(デイトナ優勝レーサー)が市販化されなかった事からみても、MOTO GUZZIに求められることはドゥカティに勝つことではなく、味のある唯一無二なバイクを作ることだということが。

1200スポルト

ちなみにこの1100スポルトも非常に人気が高かったため、2007年にV1200スポルトとして復活し、2011年まで販売されました。

系譜図
モトグッチ

1921年

MOTO GUZZIというメーカーについて

初代V7

1966年~

V7 series

ル・マン

1976年~

Le Mans series

デイトナ1000

1992年~

DAYTONA1000

V11

2001年~

V11 series

V7レーサー

2015年~

V7-2/V9 series

RS125 (SF0/SF1) -since 1999-

SF型

目まぐるしく変わるRS125の中で最も長寿なSF型。

型式としてSF0とSF1と二種類あります。これには理由がありまして・・・

まずSF0(1999-2003)の方から。MP型の後継として登場したわけですが、大きな変更点は先代まで使われていたビッグキャブ(32mm)が28mmの小径に変えられ若干マイルドになりました。まあそれでもピーキーなのは相変わらずですが。

そして問題はSF1型(2003-2005)の方。

SFF

SF1型は2003年後半以降のモデルの事なんですが、何で分けられてるのかというと厳しくなった排ガス規制(EURO2)に対応するために、触媒入りチャンバー&エンジンヘッドの変更で馬力が28馬力にまで抑えられてるんです。それがSF1型です。

キャブを大径にしてCDIをゴニョゴニョすればパワーが上がるとか。まあ28馬力あれば十分な気もするけどね。

エンジン:水冷2サイクルピストンリードバルブ単気筒
排気量:125cc
最高出力:
34ps/11000rpm
最大トルク:
2.5kg-m/9000rpm
車両重量:115kg(乾)

AF-1

1987年
AF-1 125
(AF1)

R125EXTREMA

1991年
RS125
(Gs)

RS125MP型

1995年
RS125
(Mp)

RS125SF型

1999年
RS125
(SF)

RS125Py型

2006年
RS125
(Py/RD/RM)

RS4 125

2011年
RS4 125

RS125 (MP) -since 1995-

MP型

実質的に二代目となるRS125のMP型。

少しややこしい事に、見た目が新しくなったMPだけど二年後の1997年モデルからエンジンが新しいもの(ロータックス123からカセット式ミッションの122)へと変わりました。

スペック的には変わりがないんだけどあまりにもピーキー過ぎる特性が少しだけ緩和されています。いや少しですけどね。

さて少し余談をすると、この頃アプリリアはWGP(世界レース)の125と250で他を寄せ付けない圧倒的な速さを誇っていました。そんなアプリリアのWGP黄金時代で欠かせない人物と言えばレースを知らない人でも知ってるバレンティーノ・ロッシ選手。

ロッシ125

彼が初めて優勝したのは1995年でこのRS125レーサーによるもの。翌1996年には年間チャンピオンにまでなっています。

このあとWGP250そして500(現MotoGP)にステップアップしていったんだけど優勝を記念してロッシカラーのモデルが出たりしました。そんな歴史があるせいかアプリリアは「ロッシはアプリリアで育った」と自負してます。

坂田選手

ちなみにロッシだけでなく日本人ライダーでも坂田和人選手がいました。

彼もなんとWGP125においてRS125で二度の世界チャンピオンに。125でこの人の右に出る日本人は居ないんではなかろうか。

エンジン:水冷2サイクルクランクケースリードバルブ単気筒
排気量:125cc
最高出力:
34ps/11000rpm
最大トルク:
2.5kg-m/9000rpm
車両重量:115kg(乾)

AF-1

1987年
AF-1 125
(AF1)

R125EXTREMA

1991年
RS125
(Gs)

RS125MP型

1995年
RS125
(Mp)

RS125SF型

1999年
RS125
(SF)

RS125Py型

2006年
RS125
(Py/RD/RM)

RS4 125

2011年
RS4 125

RS125 (GS) -since 1991-

GS型

初代RS125のGS型。

といってもAF-1からフレーム、ROTAXエンジン、スイングアームといった基本的な構造は受け継いだモデル。ただスペックを見れば分かるけど125なのに34馬力というとんでもないパワーを持ってる。これは2stワークスレーサーに迫るほどのパワー。

市販車としては最高馬力になるんじゃないかな?

市販といえるのか微妙だけどね。だってこれは本当に公道の事なんて全く考えられてないホモロゲーションモデルみたいなものだから。

エクストリーマカタログ

その申し分ないポテンシャル故にRS125のこの基本設計は2st最終となるRM型まで変わる事なく使われました。

ただそんなRS125の中で最もピーキーなモデルはどれかと言われれば間違いなくこのGS型。カート用のエンジンがベースなだけの事はあります。

エンジン:水冷2サイクルクランクケースリードバルブ単気筒
排気量:125cc
最高出力:
34ps/11000rpm
最大トルク:
2.5kg-m/9000rpm
車両重量:115kg(乾)

AF-1

1987年
AF-1 125
(AF1)

R125EXTREMA

1991年
RS125
(Gs)

RS125MP型

1995年
RS125
(Mp)

RS125SF型

1999年
RS125
(SF)

RS125Py型

2006年
RS125
(Py/RD/RM)

RS4 125

2011年
RS4 125

1199series -since 2012-

1199パニガーレ

再び大変貌となった1199パニガーレ。

パニガーレというのはドゥカティ本社の所在地の名前から。

916系のデザインとLツインこそ継承していますが、トレリスフレームでも乾式クラッチでもセンターアップマフラーでも無い・・・1198の系譜で言った懸念をものともせずやってきました。

そんな中でも最大の変更点はトラスフレームを辞めてモノコックフレームになった事。

1199パニガーレ フレーム

これは簡単な話フレーム兼エアクリーナーボックスで、そこのスロットルボディを内蔵というか組み込んでいる形。

916のカーボンエアクリーナーボックスを思い出させますね。

1199パニガーレディメンション

もう半分フレームレス状態。

こうした理由は軽量化はもちろん前輪荷重割合を少しでも増やすため。

スーパークアドロ

エンジンも新世代『スーパークアドロ』になりました。

エンジンの方も大変貌で、コグドベルトを遂に辞めてカムチェーンとカムギアのハイブリッドであるセミカムギアトレイン方式に。

1199エンジン

元々コグドベルトを採用し続けた理由はチェーンより精度高く軽いからなんだけど、恐らくプーリーの小型化などのコンパクト化において強度が限界だったからじゃないかと。

ユーザーとしてはメンテンスフリーになるわけなのでありがたい話ですけどね。

セミカムギアトレイン

そしてスーパークアドロといえばもう一つ忘れちゃいけないのがビッグボア。

ボアが更に拡大され112mmとなり二気筒最大馬力となる195馬力に。

流石にデコンプが付きましたが・・・112mmですよ。

ピストン

身近なもので言えばカップヌードルのBIGサイズ(108mm)がスッポリ収まる直径。

どんだけデカイんだって話。

この他にもクイックシフター、TCSやEBC(エンブレコントロール)、モード切り替えなどなど。

Sモデル以上になるとオーリンズの電子制御サスペンションを装備しています。

1199トリコローレ

これはSのちょい上になるSトリコローレというモデルでOPのデータロガーを標準装備。

正直ドゥカティはグレードがありすぎてシンドいので割愛しますが、一つだけ外せないであろうグレードというかモデルが2014年に出たこれ。

1199スーパーレッジェーラ

『1199Superleggera』

スーパーレッジェーラとは凄く軽いという意味で、その名の通りパニガーレRより14kgも軽い乾燥重量155kg。

フレームやホイールの材質をアルミからマグネシウムに変更し、カーボンボディやらチタンボルトやらを奢って、SBK用のピストンをそのまま等など・・・で、限定500台の650万円。

ちなみにこはホモロゲではなく単にスペシャルなバイク。

ところでパニガーレが日本に入ってくる時マフラーが話題になりましたよね。

日本の規制を通すために特別仕様として消音カバーに加えスペシャルマフラーが・・・

パニガーレ日本仕様

・・・これテルミーニョ製のマフラーなんですけどね。

カムチェーンを始めとしたエンジンノイズを拾わせない為に伸ばしたんでしょうが、マフラー1つでデザインってここまで崩れるものとは。

そんなスーパーバイクとしてのブランドポイントを大きく変えてきた外してきたパニガーレでしたが市場の反応はとても良く、ドゥカティは業績を大きく伸ばす事に。

ドゥカティ1199パニガーレ

パニガーレが何故売れたのかって言えばデザインの素晴らしさの一言に尽きるでしょう。

エンジン:水冷4サイクルDOHC L型二気筒
排気量:1199cc
最高出力:195ps/10750rpm
最大トルク:13.4kg-m/9000rpm
車体重量:164kg(乾)
※スペックはEU仕様

種類一覧
ドゥカティ851シリーズ1988年
851 SERIES
ドゥカティ888シリーズ1991年
888 SERIES
ドゥカティ916シリーズ1993年
916 SERIES
ドゥカティ996シリーズ1999年
996 SERIES
ドゥカティ998シリーズ2002年
998 SERIES
ドゥカティ999シリーズ2003年
999 SERIES
ドゥカティ1098シリーズ2007年
1098 SERIES
ドゥカティ1198シリーズ2009年
1198 SERIES
1199パニガーレ2012年
1199Panigale
1299パニガーレ2015年
1299Panigale
パニガーレV42018年
Panigale V4